説明

集水ますおよび建物排水システム

【課題】本発明の課題は、建物内排水設備からの排水を円滑に公共ますに導入することにある。
【解決手段】ます本体2内に1つまたは複数の隔壁203を設けて複数の集水部201,202を区画し、各集水部201,202からは複数の流入側接続部3,4,5,6,7,8を夫々差出し、更に各集水部201,202からは流出側接続部901,902を夫々差出した集水ます1を提供する。上記集水ます1にあっては、集水ます1に流入する排水が該隔壁203によって干渉することを防止されるので、逆流も起らず円滑に公共ます側に流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物内の排水設備からの排水を屋外に導くために使用される集水ますおよび該集水ますを使用した建物排水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図8に示すように建物Bの床下基盤に集水ます1Aを設置し、該集水ます1Aに建物B内の複数の排水設備10,11,12,13,14,15からの排水を床下排水枝管16,17,18,19,20,21を介して集水し、該集水ます1Aから一本の排水主管22によって建物B外側の屋外排水ます23に導入し、該屋外排水ます23から更に敷地S外側の公共ます24に導入する建物排水システムが提供されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記システムにあっては、複数の排水設備からの排水を集水ます1Aによって一箇所に集め、一本の排水主管22によって屋外排水ます23に導入するから、配管構造が簡略化されかつ排水主管を貫通させるための貫通孔Pを建物Bの外周基礎OFに一箇所のみ設ければよいので、工事が簡略化されかつ建物B外周基礎OFの強度も維持出来ると云う利点がある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−220792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記システムに使用される集水ます1Aには複数の床下排水枝管16,17,18,19,20,21が種々な方向から接続されており、したがって集水ます1A本体内で各枝管から流入する排水が干渉し合って逆流するおそれがあり、そのために図9に示すように集水ます1A本体2Aの流入側接続部3A,4A,5A,6A,7A,8Aの高さレベルを流出側接続部9Aの高さレベルよりも高位に設定して落差を設けた構成が採用されている。
【0006】
しかしこのような構成を採用すると、集水ます1Aの高さが高くなり、また流入側接続部の位置も高くなるので、建物Bの床Fと流入側接続部との高低差が少なくなる。しかし該集水ます1Aの各流入側接続部に接続される床下排水枝管は所定の勾配(例えば2/100〜5/100)をとることが要求されるが、該床下排水枝管にこのような勾配を設定すると、集水ます1Aの流入側接続部から、建物内排水枝管25までの距離l1 が短くなり、床下排水枝管の長さ(床下配管延長距離)が短くなり、集水ます1Aの設置位置の自由度が限られてしまうと云う問題点が生ずる。
【0007】
また更に該集水ます1Aへの排水流入量が該集水ます1Aからの排水流出量を上回ると該集水ます1A内に排水が充満して建物B内の排水設備側へ圧力が発生し、該排水設備側のトラップの封水破壊が生ずると云う問題も生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、ます本体2内に1つまたは複数の隔壁を設けて複数の集水部を区画し、各集水部からは複数の流入側接続部を夫々差出し、更に各集水部からは流出側接続部を夫々差出した集水ます1を提供するものである。
例えば、該隔壁203はます本体2内に1つ設けられ、該隔壁203によって左右一対の集水部201,202が区画され、上記一対の集水部201,202からは複数の流入側接続部3,4,5,6,7,8を夫々差出し、更に上記一対の集水部201,202からは流出側接続部901,902を夫々相互隣接状態で差出した集水ます1であり、また上記流入側接続部3,4,5,6,7,8と上記流出側接続部901,902とは略同一高さレベルに設定されており、更に上記流入側接続部3,4,5,6,7,8の口径よりも上記流出側接続部901,902の口径の方が大きく設定されていることが望ましい。
【0009】
更に本発明では上記集水ます1は建物B内側の床F下に設置され、該集水ます1の複数の流入側接続部3,4,5,6,7,8の一部または全部には建物B内の各種排水設備10,11,12,13,14,15に連絡する床下排水枝管16,17,18,19,20,21が接続され、更に該集水ます1の一対の流出側接続部901,902には合流排水管221,222がそれぞれ接続され、上記合流排水管221,222の流出端には左右一対の流入側接続部27,28と一個の流出側接続部29とを有する継手部材26の流入側接続部27,28がそれぞれ接続され、更に該継手部材26の流出側接続部29には建物Bの外周基礎OFを貫通する排水主管22の内端が接続され、該排水主管22の外端は屋外排水ます23に接続されている建物排水システムおよび上記集水ます1は建物B内側の床F下に設置され、該集水ます1の複数の流入側接続部3,4,5,6,7,8の一部または全部には建物B内の各種排水設備10,11,12,13,14,15に連絡する床下排水枝管16,17,18,19,20,21が接続され、更に該集水ますの一対の流出側接続部901,902には左右一対の流入側接続部27,28と一個の流出側接続部29とを有する継手部材26の流入側接続部27,28がそれぞれ接続され、更に該継手部材26の流出側接続部29には建物Bの外周基礎OFを貫通する排水主管22の内端が接続され、該排水主管22の外端は屋外排水ます23に接続されている建物排水システムが提供される。
上記建物排水システムにおいて、上記床下排水枝管の口径よりも上記合流排水管の口径が大きく設定され、更に該合流排水管の口径よりも上記排水主管の口径が大きく設定されていることが望ましく、更に上記床下排水枝管の口径よりも上記上記排水主管の口径が大きく設定されていることが望ましい。
また更に上記集水ます1の複数の流入側接続部のうち床下排水枝管が接続されていない流入側接続部は栓体31によって閉鎖されることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
〔作用〕
本発明の集水ます1は本体2内に1つまたは複数の隔壁203を設けて複数の集水部201,202を区画するから、該ます本体2の各集水部201,202に流入する排水は該隔壁203によって相互干渉することを防止される。
したがって本発明にあっては、流入側と流出側との間に落差を設ける必要がなく、流入側接続部3,4,5,6,7,8と流出側接続部901,902を略同一高さレベルに設定することが出来るので、集水ます1の高さを低くすることが出来、したがって流入側接続部と建物Bの床Fとの高低差も拡がり、床下排水枝管の勾配を所定に設定しても該集水ます1の流入側接続部から、建物B内排水枝管25までの距離を長く確保することが出来る。
また流入側接続部の口径よりも上記流出側接続部の口径の方を大きく設定し、そして床下排水枝管の口径よりも上記合流排水管の口径を大きく設定し、更に該合流排水管の口径よりも上記排水主管の口径を大きく設定すると、排水が集水ます1へ流入する量が、排水が集水ます1から流出する量を上回りにくゝなり、集水ます1に排水が充満することが防止される。
この際、各集水部において床下排水枝管の断面積の和に対する合流排水管の断面積が大きくなるように設定すると集水ます1における排水の充満が確実に防止される。更に継手部材の配設位置が固定される場合でも、外周基礎OFと継手部材との間の距離が決められた場合であっても、施行現場にて合流排水管を所定の長さに切断して接続することにより、集水ます1を所望の場所に設置出来る。
【0011】
〔効果〕
したがって本発明においては、集水ます1から建物B内排水設備側への排水の逆流を確実に防止することが出来、排水を円滑に公共ますへ流出することが出来、また集水ます1から建物内排水設備側への圧力も発生しないから、トラップの封水破壊等の不具合も起らないし、集水ます1の設置位置の自由度も拡がる。特に、この種の圧力発生を防止出来ると、集水ます1の蓋に通気構造を設ける必要がなく、集水ます1の高さを一層低くすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を図1〜図4に示す一実施例によって以下に詳細に説明する。
図1に示すように、建物Bの床下の基礎G上には集水ます1が設置される。該集水ます1は、図2および図3に示すように本体2と該本体2の周壁から差出される複数の流入側接続部である流入側受口3,4,5,6,7,8と2つの流出側接続部である流出側受口901,902と、該本体2の中心部を通って左右一対の集水部201,202を区画する隔壁203と、蓋204とからなる。
【0013】
該集水ます1の各流入側受口3,4,5,6,7,8には従来と同様、図8に示す建物B内の排水設備10,11,12,13,14,15に連絡する床下排水枝管16,17,18,19,20,21がそれぞれ接続される。該床下排水枝管16,17,18,19,20,21はコルゲート管であり可撓性を有する。
【0014】
該集水ます1の流出側受口901,902には二本の合流排水管221,222の流入端がそれぞれ接続され、該二本の合流排水管221,222の流出端には継手部材26の左右一対の流入側接続部である流入側受口27,28が接続している。該継手部材26の一個の流出側接続部である流出側受口29には、建物Bの外周基礎OFを貫通する一本の排水主管22が接続されている。この部分では排水システムは排水主管22に一本化されているので、外周基礎OFの排水主管貫通孔Pは一個設けるだけでよいので、配管工事が簡略化されかつ建物Bの外周基礎OFの強度も低下しない。
【0015】
該排水主管22の流出端には建物Bの外側で継手30を介して第2排水主管223が接続され、該第2排水主管223は敷地S内の屋外排水ます23に連絡し、更に該屋外排水ます23は第3排水主管224を介して公共ます24に接続する。
【0016】
上記排水システムにおいて、上記床下排水枝管16,17,18,19,20,21の口径よりも、上記合流排水管221,222の口径が大きく設定され、上記合流排水管221,222の口径よりも、上記排水主管22の口径が大きく設定されている。したがって上記集水ます1の流入側受口3,4,5,6,7,8の口径よりも流出側受口901,902の口径が大きく設定され、また継手部材26の流出側受口29の口径が大きく設定されている。例えば集水ます1流入側受口口径50mm、流出側受口口径65mm、継手部材流出側受口口径75mmである。
【0017】
図3に示すように、上記集水ます1の流入側受口(例えば受口6)には建物B内の排水設備の数によって、必ずしも床上排水管が接続されない場合がある。その場合には、該受口6に栓体31を嵌着して閉鎖する。このようにすれば、建物B内の排水設備の数の変動に一個の集水ます1で対応することが出来る。
【0018】
上記集水ます1にあっては、流入側受口3,4,5,6,7,8と流出側受口901,902とを略同一レベルの高さに設置出来るから、集水ます1の高さを縮小することが出来、図4に示すように建物Bの床Fと流入側受口6との高低差を充分確保出来る。したがって床下排水枝管19の勾配を例えば2/100〜5/100に設定しても、該集水ます1の流入側受口6と建物内排水枝管25までの距離l2 を長く確保することが出来、集水ます1の配置位置の自由度が広くなる。
【0019】
上記排水システムにおいて、建物B内の各排水設備10,11,12,13,14,15からの排水は、屋内排水枝管25を介して各床下排水枝管16,17,18,19,20,21に流入し、集水ます1に導入されるが、この時ますの左右から流入する排水は左右の集水部201,202に導かれ、隔壁203によって相互干渉を阻止されるので、排水設備側への排水の逆流は発生せず、円滑に左右一対の合流排水管221,222にそれぞれ流入する。
【0020】
そして集水ます流入側受口口径<集水ます流出側受口口径<継手部材流出側受口口径となるように設定されているから、集水ます1への排水流入量が集水ます1からの排水流出量を上回ることがなく、したがって該集水ます1内に排水が充満しないので、集水ます1から屋内排水設備側に圧力が発生せず、トラップの封水破壊も起らない。
【0021】
更に排水は合流排水管221,222から継手部材26を介して排水主管22に合一し、屋外排水ます23から公共ます24に導入される。
【0022】
本実施例では継手部材26の流出側受口29に直管である排水主管22を接続したが、図5に示すように、本発明においてはその他に該排水主管22をコルゲートタイプの可撓管225をスリーブ226で被覆して外周基礎OFを貫通させてもよい。
【0023】
本発明では上記実施例以外、例えば図6に示すように、集水ます1を複数の隔壁203,203によって複数の集水部に区画しても良いとの観点から、三以上の集水部を区画しても良い。この際図に示すように集水ます1の流入側受口の軸線方向を流出側受口の側に配向させると、排水の円滑な流れを促し有用である。
【0024】
また更に本発明では、複数の流出側接続部を集水ます1の下流側にて、接続部材により合流させることが出来れば良いとの観点から、図7に示すように合流排水管を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明では建物排水設備からの排水を公共ますに円滑に流出させることができるので、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1〜図4は本発明の一実施例を示すものである。
【図1】建物排水システムの説明平面図
【図2】集水ます部分の説明斜視図
【図3】集水ます部分の説明平面図
【図4】建物排水システムの説明側面図
【図5】他の実施例の排水主管部分説明側断面図
【図6】更に他の実施例の集水ます部分の説明平面図
【図7】更に他の実施例の集水ます部分の説明斜視図 図8および図9は従来例を示すものである。
【図8】建物排水システムの説明平面図
【図9】建物排水システムの説明側面図
【符号の説明】
【0027】
1 集水ます
2 集水ます本体
3,4,5,6,7,8 流入側受口(流入側接続部)
901,902 流出側受口(流出側接続部)
10,11,12,13,14,15 排水設備
16,17,18,19,20,21 床下排水枝管
22 排水主管
23 屋外排水ます
24 公共ます
26 継手部材
27,28 流入側受口(流入側接続部)
29 流出側受口(流出側接続部)
201,202 集水部
203 隔壁
221,222 合流排水管
225 可撓管
31 栓体
B 建物
F 床
OF 外周基礎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ます本体内に1つまたは複数の隔壁を設けて複数の集水部を区画し、各集水部からは複数の流入側接続部を夫々差出し、更に各集水部からは流出側接続部を夫々差出したことを特徴とする集水ます。
【請求項2】
該隔壁はます本体内に1つ設けられ、該隔壁によって左右一対の集水部が区画され、上記一対の集水部からは複数の流入側接続部を夫々差出し、更に上記一対の集水部からは流出側接続部を夫々相互隣接状態で差出した請求項1に記載の集水ます。
【請求項3】
上記流入側接続部と上記流出側接続部とは略同一高さレベルに設定されている請求項1または請求項2に記載の集水ます。
【請求項4】
上記流入側接続部の口径よりも上記流出側接続部の口径の方が大きく設定されている請求項1または請求項2または請求項3に記載の集水ます。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの集水ますは建物内側の床下に設置され、該集水ますの複数の流入側接続部の一部または全部には建物内の各種排水設備に連絡する床下排水枝管が接続され、更に該集水ますの一対の流出側接続部には合流排水管がそれぞれ接続され、上記合流排水管の流出端には左右一対の流入側接続部と一個の流出側接続部とを有する継手部材の流入側接続部がそれぞれ接続され、更に該継手部材の流出側接続部には建物の外周基礎を貫通する排水主管の内端が接続され、該排水主管の外端は屋外排水ますに接続されていることを特徴とする建物排水システム。
【請求項6】
上記床下排水枝管の口径よりも上記合流排水管の口径が大きく設定され、更に該合流排水管の口径よりも上記排水主管の口径が大きく設定されている請求項5に記載の建物排水システム。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかの集水ますは建物内側の床下に設置され、該集水ますの複数の流入側接続部の一部または全部には建物内の各種排水設備に連絡する床下排水枝管が接続され、更に該集水ますの一対の流出側接続部には左右一対の流入側接続部と一個の流出側接続部とを有する継手部材の流入側接続部がそれぞれ接続され、更に該継手部材の流出側接続部には建物の外周基礎を貫通する排水主管の内端が接続され、該排水主管の外端は屋外排水ますに接続されていることを特徴とする建物排水システム。
【請求項8】
上記床下排水枝管の口径よりも上記排水主管の口径が大きく設定されている請求項7に記載の建物排水システム。
【請求項9】
上記集水ますの複数の流入側接続部のうち床下排水枝管が接続されていない流入側接続部は栓体によって閉鎖される請求項5〜8のいずれか1項に記載の建物排水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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