説明

集水装置、集水装置で使用される有孔ブロック

【課題】圧力損失が小さく、逆洗用媒体を均等に供給することができる有孔ブロックを提供する。
【解決手段】複数の上壁孔部a1が形成された上壁21aと、上壁21aに接続する一対の側壁21bと、側壁21bに接続する底壁21cとを有し、内部空間を形成する外壁21と、内部空間を、上壁孔部a1に連通する第一空間Bおよび、第二空間Aに仕切る内壁22とを備え、内壁22に第一空間Bと第二空間Aとを連通する複数の内壁孔部b1,b2,b3が形成してあり、以下の数式の関係を有する。
S/a + S/b ≦ 230 かつ a/b ≦ 1.2
S:上壁の面積、a:上壁孔部の開口面積の和、b:内壁孔部の開口面積の和

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水・用水・工業用水・生活廃水・工業廃水等などの被処理水に含まれる懸濁物などの被除去物を除去し、被除去物が除去された処理水を集水する集水装置及び集水装置で使用される有孔ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理設備で用いられる集水装置は、例えば粒状媒体を充填して濾過層(処理層)を備えて当該懸濁物を除去する濾過手段(除去手段)を支持し、濾過層を通過して被除去物が除去された処理水を集水する有孔ブロックを備える(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
有孔ブロックは、中空の断面が略矩形となる外壁(上壁・側壁・底壁)、および、当該外壁の内部において略逆V字形断面となる傾斜内壁が設けてある。この傾斜内壁により、有孔ブロックの内部空間を中央流通部および当該中央流通部の両側に位置する側方流通部に仕切っている。上壁の上方部と中央流通空間は上壁に形成された複数の上壁孔部により連通し、側方流通部と中央流通部とは傾斜内壁に形成された複数の内壁孔部を介して連通している。
【0004】
濾過層には、珪砂・アンスラサイト・粒状活性炭などの粒状媒体が充填してあり、被処理水を濾過手段の上方より下向流で濾過層に通水すると、被処理水中に含まれる懸濁物等が濾過層によって除去される。濾過層を通過して懸濁物が除去された処理水は、重力の作用により有孔ブロックの上壁に設けた上壁孔部を介して側方流通部に流下し、さらに内壁孔部を介して側方流通部から中央流通部に流下することにより集水される。
【0005】
集水装置で被処理水を濾過処理するに従い、経時的に濾過層が懸濁物によって目詰まりしてくる。当該目詰まりが発生すれば濾過層の濾過性能は低下する。そのため、定期的に逆洗処理を行って濾過層に詰まった懸濁物を除去している。当該逆洗処理を行うことで、濾過層の濾過性能を復活させることができる。
【0006】
逆洗処理は、逆洗用媒体である液体(水)あるいは空気を濾過手段の下方から上方に向けて供給する。逆洗用媒体は、有孔ブロックの下方に設けたフリューム(水路)等から有孔ブロックの底壁開口部を経て有孔ブロックの中央流通部に供給され、内壁孔部から側方流通部を通過し、上壁孔部を介して濾過手段に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−346574号公報
【特許文献2】特許第3053870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、効果的に逆洗処理行うためには、逆洗用媒体を有孔ブロックの長手方向のそれぞれの箇所から均等に供給する必要がある。また、逆洗処理の省エネの観点からは、有孔ブロックにおける圧力損失は小さい方が好ましい。
【0009】
逆洗用媒体を均等に供給するためには、上壁孔部及び内壁孔部の径を小さく設定する必要があり、有孔ブロックにおける圧力損失が増大する。一方、圧力損失を小さくするためには、上壁孔部及び内壁孔部の径を大きく設定する必要があり、逆洗用媒体を均等に供給することが困難であった。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、圧力損失が小さく、逆洗用媒体を均等に供給することができる集水装置及び有孔ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る有孔ブロックの特徴構成は、複数の上壁孔部が形成された上壁と、前記上壁に接続する一対の側壁と、前記側壁に接続する底壁とを有し、内部空間を形成する外壁と、前記内部空間を、前記上壁孔部に連通する第一空間および、第二空間に仕切る内壁とを備え、前記内壁に前記第一空間と前記第二空間とを連通する複数の内壁孔部が形成してあり、以下の数式の関係を有する点にある。
S/a + S/b ≦ 230 かつ a/b ≦ 1.2
ここで、Sは上壁の面積であり、aは全ての上壁孔部の開口面積の和であり、bは全ての内壁孔部の開口面積の和である。
【0012】
後述する実験例に示すように、S/a+S/b≦230かつa/b≦1.2に設定することにより、圧力損失を抑制しつつ、逆洗用媒体を均等に供給することができる。
【0013】
上述の実施形態において、S/a + S/b ≧ 80 であると好適である。
【0014】
圧力損失が小さくなりすぎると、逆洗用媒体を均等に供給することが困難になる。そこで、本構成のように、S/a+S/b≧80に設定することにより、逆洗用媒体をより一層均等に供給することができる。
【0015】
上述の構成において、a/b ≧ 0.1 であると好適である。
【0016】
a/bを小さくしてその値を0に近づける場合、上壁孔部の面積aを0に近づけることは現実的には想定しがたく、内壁孔部の面積bを大きくすることになる。このため、a/bを小さくしすぎると、内壁孔部の面積bが大きくなり内壁孔部での圧力損失が小さくなりすぎることとなり、その結果、逆洗用媒体を均等に供給することが困難になる。そこで、本構成のように、a/b≧0.1に設定することにより、圧力損失が小さくなりすぎることを防止して、逆洗用媒体をより一層均等に供給することができる。
【0017】
また、上述の構成において、100 ≦ S/a+S/b ≦ 180かつ0.3 ≦a/b ≦ 1.0であると一層好適である。
【0018】
後述する実験例に示すように、S/a+S/b及びa/bを上述の範囲に設定することにより、圧力損失の抑制と逆洗用媒体の均等な供給とをより一層良好に両立することができる。
【0019】
上述の構成において、前記内壁が前記上壁と前記側壁又は前記底壁とに亘って設けられ前記外壁を補強する補強部材として機能すると好適である。
【0020】
本構成によれば、内壁が外壁を補強する補強部材として機能するので、有孔ブロックの強度を高めることができ、処理層を確実に支持することができる。
【0021】
本発明に係る集水装置の特徴構成は、複数の上壁孔部が形成された上壁と、前記上壁に接続する一対の側壁と、前記側壁に接続する底壁とを有し、内部空間を形成する外壁と、前記内部空間を、前記上壁孔部に連通する第一空間および、第二空間に仕切る内壁とを有し、前記内壁に前記第一空間と前記第二空間とを連通する複数の内壁孔部が形成してある有孔ブロックと、複数の前記有孔ブロックを並置する際に、各有孔ブロックの間に充填する充填材と、を備え、以下の数式の関係を有する点にある。
S/a + S/b ≦ 230 かつ a/b ≦ 1.2
ここで、Sは上壁の面積であり、aは全ての上壁孔部の開口面積の和であり、bは全ての内壁孔部の開口面積の和である。
【0022】
後述する実験例に示すように、S/a+S/b≦230かつa/b≦1.2に設定することにより、圧力損失を抑制しつつ、逆洗用媒体を均等に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の集水装置の概略を一部切欠で示す斜視図である。
【図2】本発明の有孔ブロックの斜視図である。
【図3】有孔ブロック、充填材の配置を示した断面図である。
【図4】開口率比が逆洗用媒体の供給量の均一性に与える影響を示すグラフである。
【図5】開口率比が逆洗用媒体の供給量の均一性に与える影響を示すグラフである。
【図6】開口率の逆数の和が圧力損失に与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の集水装置Xは、図1に示すように、上水・用水・工業用水・生活廃水・工業廃水等などの被処理水に含まれる懸濁物(被除去物)を除去する水処理設備Yにおいて、懸濁物が除去された処理水を集水するために用いられる。
【0025】
図1〜3に示したように、当該集水装置Xは、粒状媒体12を充填した処理層11の上方より下向流で被処理水を通水して被処理水中に含まれる被除去物を処理層11によって除去する除去手段10を支持し、処理層11を通過して被除去物が除去された処理水を中空の内部空間に集水する有孔ブロック20と、複数の有孔ブロック20を並置する際に、各有孔ブロック20の間に充填する充填材30と、を備える。充填材30の中には、補強部材(図示せず)が配設してある。
【0026】
(除去手段)
本実施形態の除去手段10は、濾過処理によって被処理水中に含まれる被除去物を除去する場合について説明する。従って、処理層11は濾過層となる。しかし、このような態様に限られるものではなく、生物処理によって被処理水中に含まれる被除去物を除去することも可能である。この場合、処理層11は生物処理層となり、例えば粒状媒体12の表面に被除去物を生物的に分解する微生物を担持させておく。
【0027】
処理層11には、珪砂・アンスラサイト・粒状活性炭などの粒状媒体12が充填してある。本実施形態では二層の処理層11を設けてあり、最下層から順に珪砂層11a・アンスラサイト層11bを配設したものを例示するが、これに限られるものではない。
被処理水を除去手段10の上方に設けた排水トラフ50より処理層11に給水して処理層11を通過させることで、被処理水中に含まれる被除去物が処理層11によって除去される。なお、排水トラフ50経由ではなく直接被処理水が供給される場合も有る。
【0028】
(有孔ブロック)
有孔ブロック20は除去手段10の下方に配置して除去手段10を支持する。本実施形態では、除去手段10と有孔ブロック20との間には、多孔プレート60を配設してある。なお、多孔プレート60に替えて砂利の支持層を設けてもよい。
【0029】
有孔ブロック20は、中空で断面が略矩形となる外壁21(上壁21a・側壁21b・底壁21c)、および、当該外壁21の内側に接続して有孔ブロック20の内部空間を複数の空間に分割する内壁(傾斜内壁22)が設けてある。
有孔ブロック20は、耐食性・耐圧性に優れた材質であれば、何れの材料で形成してもよいが、例えば、高密度ポリエチレンの発泡成形で成形すれば軽量化することができるため、運搬や施工面で作業性がよい。
【0030】
上壁21aは、除去手段10の下面に直接接触して、或いは、多孔プレート60を介して間接的に除去手段10を支持する。側壁21bは上壁21aに接続する一対の対向する壁であり、底壁21cは当該一対の側壁21bに接続する。また、傾斜内壁22は、その断面が略逆V字形となるように形成してある。これにより、有孔ブロック20の内部空間を、両側方に位置する第1空間(側方流通部B)と二つの側方流通部Bの間に位置する第二空間(中央流通部A)とに仕切っている。また、傾斜内壁22は、上壁21aと側壁21bとに亘って設けられ外壁21を補強する補強部材として機能する。なお、上壁21aと底壁21cとに亘って傾斜内壁22を設けてもよい。
このように、有孔ブロック20の内部空間は、傾斜内壁22によって三つの空間に分割されるが、この態様に限られるものではない。
【0031】
上壁21aの上方部および側方流通部Bは、上壁21aに形成した複数の上壁孔部a1を介して連通している。また、側方流通部Bおよび中央流通部Aは、傾斜内壁22に形成した第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2および第三内壁孔部b3を介して連通している。処理層11を通過して被除去物が除去された処理水は、重力の作用により、多孔プレート60を通過した後に上壁孔部a1を介して側方流通部Bに流下し、さらに第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2および第三内壁孔部b3を介して中流通部Aに流下して集水される。処理水は、有孔ブロック20の底壁21cに形成した底壁開口部(図外)を経て有孔ブロック20の下方に設けたフリューム70を流下して、或いは、中央流通部Aに接続する配管(図外)を流下して、所定の貯水槽に搬送される。
【0032】
この有孔ブロック20において、Sを上壁21aの面積とし、aを全ての上壁孔部a1の開口面積の和とし、bを全ての内壁孔部の開口面積の和(すなわち、本実施形態の場合には、第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2及び、第三内壁孔部b3の開口面積の和)とした場合、S/a+S/b≦230になるように、上壁21a、第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2及び、第三内壁孔部b3の直径及びピッチ等が設定されている。 また、好ましくは、80≦S/a+S/b≦230であり、さらに好ましくは、100≦S/a+S/b≦180である。
【0033】
さらに、この有孔ブロック20において、a/b≦1.2となるように、第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2及び、第三内壁孔部b3の直径及びピッチ等が設定されている。また、好ましくは0.1≦a/b≦1.2であり、さらに好ましくは、0.3≦a/b≦1.0である。
【0034】
後述する実験例に示すように、S/a+S/b及びa/bを上述の範囲に設定することにより、有孔ブロック20の圧力損失、つまり、有孔ブロック20の流通抵抗を抑制しつつ、逆洗用媒体を処理層11に均等に供給することができる。
【0035】
上壁孔部a1の直径は、特に限定はされないが、2〜8mmに設定すると好適である。さらに、特に限定されないが、a/S=0.7%〜1.5%となるように、上壁孔部a1の直径・ピッチ等を設定すると好適である。
また、第一内壁孔部b1及び第二内壁孔部b2の直径は、特に限定はされないが、2〜20mmに設定すると好ましい。また、第三内壁孔部b3の直径は、特に限定はされないが、8〜60mmに設定すると好ましい。さらに、b/S=0.7%〜10%となるように、内壁孔部の直径・ピッチ等を設定すると好適である。
【0036】
内壁孔部は、必ずしも、第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2、第三内壁孔部b3の3種類を設ける必要はなく、1種類又は2種類であってもよく、又、4種類以上であってもよい。以下、適宜、第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2、第三内壁孔部b3を区別することなく、内壁孔部b1,b2,b3とも称する。
なお、上壁孔部a1及び内壁孔部b1,b2,b3の形状は、円形状に限らず、同等面積の長孔形、長方形、正方形、多角形など、円形状以外であってもよい。
【0037】
上壁21aの上面には、側壁21bから延設する上壁第一リブ部23a、上壁第一リブ部23aに平行な上壁第二リブ部23b、および、上壁第一リブ部23aと垂直に交差する上壁第三リブ部23cが設けてある。
これらリブ部23a〜23cによって、上壁21aの上面を複数の区画に分割してある。これらリブ部23a〜23cを設けることで上壁21aの耐圧性を強化することができ、除去手段10の荷重による上壁21aの撓みを防止できる。
多孔プレート60は、前記リブ部23a〜23cの上面に載置する。多孔プレート60は、ボルトによって前記リブ部23a〜23cに固定する。多孔プレート60は、例えば、直径数mmのペレットを多数接合して構成するとよい。当該ペレットとしては、ポリオレフィン等のプラスチックの他、セラミック、焼結金属等が使用可能である。
【0038】
側壁21bには、複数の有孔ブロック20を並置する際に、各有孔ブロック20の間に充填した充填材30に、有孔ブロック20が受けた上方及び下方からの荷重を伝達する側方リブ24を形成してある。側方リブ24は、水平方向に伸延する水平側方リブ24A、および、垂直方向に伸延する垂直側方リブ24Bとすることができる。何れのリブ形状であっても、その上端面24aによって有孔ブロック20が受けた上向荷重を充填材30に伝達し、その下端面24bによって有孔ブロック20が受けた下向荷重を充填材30に伝達する。
【0039】
(充填材)
充填材30は、複数の有孔ブロック20を並置する際に、各有孔ブロック20の間に充填する。
充填材30は、モルタル・コンクリート等、間隙等に流動状態で投入した後、経時的に固化する態様のものであれば、公知の充填材を使用することができる。固化した充填材30は、並置した有孔ブロック20の間隙を埋めると共に、各有孔ブロック20どうしを強固に接着して固定することで、有孔ブロック20の上方に載置した除去手段10を安定して支持することができる。
有孔ブロック20および充填材30の下方にフリューム70が形成してある場合、充填材30がフリューム70に落下するのを防止するため、有孔ブロック20どうしの間には、それぞれの側壁21bの下方にフリューム70を受けるブリッジング(図外)を配設する。
【0040】
(逆洗処理)
水処理設備Yで被処理水を濾過するに従い、経時的に処理層11が被除去物によって目詰まりする。当該目詰まりが発生すれば処理層の濾過性能は低下する。そのため、定期的に逆洗処理を行って処理層に詰まった被除去物を除去している。当該逆洗処理を行うことで、処理層の濾過性能を復活させることができる。
【0041】
本実施形態の逆洗処理は、有孔ブロック20の下方に設けたフリューム70や中央流通部Aに接続された配管等を介して、中央流通部A内に気体あるいは液体等の逆洗用媒体を流通させる。具体的には、当該逆洗用媒体を、中央流通部Aから、傾斜内壁22の内壁孔部b1〜b3、上壁21aの上壁孔部a1、および多孔プレート60を介して除去手段の処理層11に噴出させる。この噴出された逆洗用媒体によって、処理層11に詰まった異物(被除去物)を取り除くことができる。
尚、本実施形態では、集水処理時には処理水を配管によって所定の貯水槽に搬送しているが、逆洗処理時には、処理水を所定の貯水槽に搬送する方向とは逆方向に逆洗用媒体を当該配管によって流通させる。
【0042】
〔実験例〕
水槽内に有孔ブロック20を5個連結して有孔ブロック列を形成し、その有孔ブロック列の両端の有孔ブロックの端部を閉塞板で閉塞し、端部の一つの有孔ブロック20の下部に設けた開口部から逆洗用媒体を導入することで、有孔ブロック列の長手方向における種々の箇所において上壁孔部a1から流出する逆洗用媒体の流量を測定し、流量の標準偏差を求めて、逆洗用媒体の均一性を評価した。
S/a+S/b及びa/bをパラメータとして、逆洗処理の際の有孔ブロック20における圧力損失及び、上壁孔部a1から供給される逆洗用媒体の均一性に与える影響を調べた。なお、逆洗用媒体としては、水を用いた。また、圧力損失は、逆洗用媒体が有孔ブロック列に流入する前の逆洗用媒体の水頭圧と上壁孔部a1から供給される逆洗用媒体によって満たされる水槽の水頭圧との差をマノメータを用いて測定した。逆洗流速は有孔ブロック列に流入される逆洗用媒体の流量を測定し、式(1)により求めた。
つまり、有孔ブロック20に供給される逆洗用媒体の単位時間あたりの供給体積(流量)をQとすると、上壁孔部a1から処理層11に供給される逆洗用媒体の線速度(平均流速)Vは以下の式(1)となる。
V = Q / S (1)
【0043】
また、流れを一次元的に単純化して考えると、逆洗用媒体が上壁孔部a1を通過する際の圧力損失ΔP1は、逆洗用媒体が上壁孔部a1を通過する際の線速度v1を用いて、以下の式(2)で表すことができる。また、逆洗用媒体が内壁孔部を通過する際の圧力損失ΔP2は、逆洗用媒体が内壁孔部を通過する際の線速度v2を用いて、以下の式(3)で表すことができる。
ΔP1 = k112/(2g) (2)
ΔP2 = k222/(2g) (3)
ここで、k1、k2は孔部の形態や逆洗用媒体の粘性等によって決まる定数であり、gは重力加速度である。
【0044】
また、v1、v2は、式(1)を用いて、それぞれ以下の式(4)、式(5)で表すことができる。
1 = Q/a
= (S/a) × V (4)
2 = Q/b
= (S/b) × V (5)
ここで、上述したa/S、b/Sの範囲において、有孔ブロック20にける逆洗用媒体の圧力損失が発生する主な要因は、逆洗用媒体が上壁孔部a1を通過する際の圧力損失ΔP1、逆洗用媒体が内壁孔部を通過する際の圧力損失ΔP2及び、逆洗用媒体が有孔ブロック20へ流入する際や有孔ブロック20の中央流通部Aを通過する際の圧力損失ΔP3である。従って、有孔ブロック20における圧力損失ΔPは、以下の式(6)で表すことができる。
ΔP ≒ ΔP1 + ΔP2 + ΔP3
= k112/(2g) + k222/(2g) + ΔP3
= k1(S/a)22/(2g)
+ k2(S/b)22/(2g) + ΔP3 (6)
【0045】
上述の式(6)から判るように、圧力損失ΔPは、上壁孔部a1の上壁21aに対する開口率a/Sの逆数及び、内壁孔部の上壁21aに対する開口率b/Sの逆数に相関がある。また、圧力損失ΔPが同程度の場合でも、上述の開口率a/S及びb/Sが変化することにより、上壁孔部a1から供給される逆洗用媒体の均一性が変化すると考えられる。
【0046】
そこで、本発明者らは、パラメータとして、上壁孔部a1の上壁21aに対する開口率a/Sの逆数と内壁孔部の上壁21aに対する開口率b/Sの逆数との和S/a+S/b、および、上述の開口率の比(a/S)/(b/S)、すなわち、a/bに着目して、逆洗処理の際の有孔ブロック20における圧力損失ΔP及び、上壁孔部a1から処理層11に供給される逆洗用媒体の供給量の均一性に対する影響を調べた。
【0047】
図4、5は、開口率比a/bが変化した場合の上壁孔部a1から供給される逆洗用媒体の均一性の変化を示す。図4、5において、有孔ブロック20の長手方向における種々の箇所において上壁孔部a1から流出する逆洗用媒体の流量を測定し流量の標準偏差を求め、当該標準偏差を均一性の指標とした。つまり、標準偏差が小さいほど有孔ブロック20の長手方向の各箇所における逆洗用媒体の流量が均一であることを示し、標準偏差が大きいほど各箇所における逆洗用媒体の流量がバラついていることを示す。図4は逆洗流速V=0.3m/sの場合の結果を示し、図5は逆洗流速V=0.6m/sの場合の結果を示す。
【0048】
図4、5から判るように、V=0.3m/s、V=0.6m/sの何れの場合にも、開口率の比a/b=1.0以下の領域においては、標準偏差が小さな値となるが、開口比a/b=1.0と開口比a/b=1.5との間の領域において、標準偏差が急激に増大した。従って、標準偏差を小さくするためには、開口比a/b=1.0と開口比a/b=1.5との略中間であるa/b≦1.2に設定する必要がある。また、開口率の比a/bが0に近づく場合、上述したa/S、b/Sの範囲においては、aが0となることはく、bが大きな値をとることとなる。この結果、有孔ブロック20における圧力損失ΔPが非常に小さくなり、標準偏差が大きくなると考えられる。従って、a/bが小さくなりすぎることは好ましくなく、好ましくは0.1≦a/b≦1.2、より好ましくは、0.3≦a/b≦1.0である。さらに好ましくは0.3≦a/b≦0.6である。
【0049】
図6は、V=0.6m/sの場合の上壁孔部a1の上壁21aに対する開口率a/Sの逆数と内壁孔部の上壁21aに対する開口率b/Sの逆数との和S/a+S/bが変化した場合の有孔ブロック20における圧力損失ΔPの変化を示す。図6から判るように、S/a+S/bが大きくなるほど圧力損失ΔPが大きくなり、S/a+S/b=200とS/a+S/b=250との間で圧力損失ΔPが急激に増大した。従って、S/a+S/b=200とS/a+S/b=250との略中間値であるS/a+S/b≦230に設定する必要がある。また、逆洗処理の省エネの観点からは、圧力損失ΔPは、200mmaq程度で抑える方が好ましく、この観点からもS/a+S/b≦230に設定する必要がある。
【0050】
一方で、圧力損失ΔPが小さくなりすぎると、上述したように、標準偏差が大きくなるので、圧力損失ΔPは少なくとも80mmaq程度である方が好ましい。従って、S/a+S/bが小さくなりすぎることは好ましくなく、好ましくは、80≦S/a+S/b≦230であり、より好ましくは、100≦S/a+S/b≦180である。さらに好ましくは、100≦S/a+S/b≦140である。
【0051】
S/a+S/b及びa/bを上述の範囲に設定することにより、有孔ブロック20における圧力損失ΔPを抑制しつつ、処理層11に逆洗用媒体を均等に供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、上水・用水・工業用水・生活廃水・工業廃水等などの被処理水に含まれる懸濁物(被除去物)を除去し、懸濁物が除去された処理水を集水する集水装置及び集水装置で使用される多孔ブロックに利用できる。
【符号の説明】
【0053】
X 集水装置
A 第二空間(側方流通部)
B 第一空間(中央流通部)
a1 上壁孔部
b1 内壁孔部(第一内壁孔部)
b2 内壁孔部(第二内壁孔部)
b3 内壁孔部(第三内壁孔部)
10 除去手段
11 処理層
12 粒状媒体
20 有孔ブロック
21a 上壁
21b 側壁
21c 底壁
21 外壁
22 内壁(傾斜内壁)
30 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の上壁孔部が形成された上壁と、前記上壁に接続する一対の側壁と、前記側壁に接続する底壁とを有し、内部空間を形成する外壁と、
前記内部空間を、前記上壁孔部に連通する第一空間および、第二空間に仕切る内壁とを備え、
前記内壁に前記第一空間と前記第二空間とを連通する複数の内壁孔部が形成してあり、以下の数式の関係を有する有孔ブロック。
S/a + S/b ≦ 230 かつ a/b ≦ 1.2
S:上壁の面積
a:全ての上壁孔部の開口面積の和
b:全ての内壁孔部の開口面積の和
【請求項2】
S/a + S/b ≧ 80 である請求項1に記載の有孔ブロック。
【請求項3】
a/b ≧ 0.1 である請求項1又は2に記載の有孔ブロック。
【請求項4】
100 ≦ S/a + S/b ≦ 180 かつ 0.3≦ a/b ≦ 1.0 である請求項1に記載の有孔ブロック。
【請求項5】
前記内壁が前記上壁と前記側壁又は前記底壁とに亘って設けられ前記外壁を補強する補強部材として機能する請求項1〜4の何れか一項に記載の有孔ブロック。
【請求項6】
複数の上壁孔部が形成された上壁と、前記上壁に接続する一対の側壁と、前記側壁に接続する底壁とを有し、内部空間を形成する外壁と、前記内部空間を、前記上壁孔部に連通する第一空間および、第二空間に仕切る内壁とを有し、前記内壁に前記第一空間と前記第二空間とを連通する複数の内壁孔部が形成してある有孔ブロックと、
複数の前記有孔ブロックを並置する際に、各有孔ブロックの間に充填する充填材と、を備え、以下の数式の関係を有する集水装置。
S/a + S/b ≦ 230 かつ a/b ≦ 1.2
S:上壁の面積
a:全ての上壁孔部の開口面積の和
b:全ての内壁孔部の開口面積の和

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−247031(P2010−247031A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97414(P2009−97414)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】