集水路と、該集水路に堆積する土砂の回収方法
【課題】砂防ダムの土砂が堆積する地盤に設置される集水路において、設置が容易で、目詰まりや土砂の流入が生じにくく、しかも砂防ダムに堆積した土砂を浸透する雨水を効率よく取水することができる集水路を提供する。
【解決手段】上面を開口した溝渠27の左右両側壁のうちの一側壁に開口し、上面の開口にアーム状の支骨6と該支骨6を連結するロッド7よりなる格子状構造物28を設置すると共に、一側壁の開口にV形状の支骨31と各支骨31を連結するロッド30よりなる別の格子状構造物29を差込んで外向きに突出した形態で設置し、取水面積を大きくして効率よく取水できるようにする。施工は地盤32上に集水路26を設置したのち、その周りに栗石35、36を敷き詰め、土砂混じりの雨水が栗石35、36を通ってろ過され、集水路26に流入する。
【解決手段】上面を開口した溝渠27の左右両側壁のうちの一側壁に開口し、上面の開口にアーム状の支骨6と該支骨6を連結するロッド7よりなる格子状構造物28を設置すると共に、一側壁の開口にV形状の支骨31と各支骨31を連結するロッド30よりなる別の格子状構造物29を差込んで外向きに突出した形態で設置し、取水面積を大きくして効率よく取水できるようにする。施工は地盤32上に集水路26を設置したのち、その周りに栗石35、36を敷き詰め、土砂混じりの雨水が栗石35、36を通ってろ過され、集水路26に流入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂防ダムに堆積した土砂を浸透した雨水或いは盛土を浸透した雨水を取水する集水路と、該集水路内に溜まる土砂を回収し排出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂防ダムの地盤上に溝渠を並設して、その上に針金で作った籠の中に栗石又は砕石(以下、栗石等という)を詰めてなるフトン籠を敷設し、その上に堆積した土砂を浸透した雨水をフトン籠を通して溝渠で取水し、小規模発電所に導水して発電する試みがなされている。
【0003】
また盛土では、一般に地滑り防止のため塩ビ管等の集水管を設置し、盛土を浸透した雨水を樹脂管を通して法面まで導いて水抜きすることが行われ、集水管に多数の取水口を設けたものも知られる(特許文献1)。
【0004】
集水管内に堆積した土砂の排水は、高圧水を通すことによって行われているが、下記特許文献1には、法面側より集水管内に送水ロッド先端に取付けたピストンを挿入し、該ピストンを回転しながら前後動させて送水ロッドより送水する高圧水で集水管を洗浄することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−52331号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溝渠上にフトン籠を設置し、該フトン籠を通して雨水を取水するものでは、フトン籠を作成するのに手間がかかる。
また集水管に多数の取水口を設ける場合、取水口の大きさによって目詰まりしたり、土砂が集水管内に入り込み易くなる。
また集水管の洗浄を洗浄水によって行う場合、堆積した土砂の排出を十分に行うことは容易でなく、ピストンの押込みにより土砂を押し出すのは、そのための設備を必要とし、大きな動力も必要である。
【0007】
本発明は、設置が容易で、目詰まりや土砂の流入が生じにくくした集水路を提供することを第1の目的とし、
集水路内に堆積した土砂を比較的簡単な設備でもって確実に回収し、集水路を清掃することができる清掃方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、第1の目的を達成する集水路に関するもので、砂防ダムの土砂が堆積する地盤或いは盛土の施工時、地盤や盛土内に設置される集水路であって、上面及び左右側面のうち、少なくとも上面を開口した溝渠と、該溝渠の開口に外向きに凸状に設置されるか、或いは平坦に設置され、堆積された土砂或いは盛土の土圧に耐えられる程の剛性の大なる格子状構造物よりなることを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、溝渠には上面のほか、左右の側壁のうち、少なくとも一方の側壁に開口を備え、上面と側壁の各開口に前記格子状構造物が外向きに凸状に設置されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明の集水路に堆積する土砂を回収して集水路を清掃する方法に関するもので、集水路に取付けた点検口を通してバケットを集水路に降し、バケットに連結したワイヤー等の索条によりバケットを牽引して集水路に堆積する土砂を掬い取って回収することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係わる発明は、請求項3に係わる発明において、バケットによる土砂の回収作業後、洗浄水による溝渠の洗浄を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係わる発明の集水路は、砂防ダムの土砂が堆積する地盤上或いは盛土内に設置され、格子状構造物上には雨水をろ過する栗石等を敷設されるが、栗石等は単に格子状構造物上に投入するだけで、その周りに囲いを設定するにしても囲い内に栗石等を投入するだけでよく、フトン籠を作成して、それを敷設するのに比べ、設置が容易であり、また栗石等を通しての集水は栗石等により土砂がろ過されるために土砂の流入が生じにくいうえ、目詰まりしにくい。とくに格子状構造物が外向きに凸状をなす場合、側溝の開口面積に比べ、格子状構造物の取水面積が大きくなり、そのため防砂ダムに堆積した土砂を浸透した雨水或いは盛土を浸透した雨水を効率よく取水することができる。
【0012】
請求項2に係わる発明によると、上面と側壁より取水されて取水面積が更に増大し、取水をより効率よく行うことができる。
【0013】
請求項3に係わる発明によると、集水路内でバケットを索条により牽引して集水路に堆積する土砂を掬い取ることにより集水路の清掃を行うことができる。
【0014】
請求項4に係わる発明によると、溝渠内の土砂をバケットで掘り起こしたのち洗浄が行われることにより、溝渠内の清掃をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わる集水路の一部の斜視図。
【図2】格子状構造物の別の態様を示す正面図。
【図3】格子状構造物の更に別の態様を示す正面図。
【図4】格子状構造物の他の態様を示す正面図。
【図5】溝渠の別の例を示す断面図。
【図6】集水路の別の例の断面図。
【図7】集水路の更に別の例の断面図。
【図8】集水路の他の例を示す断面図。
【図9】図8に示す集水路の施工例を示す断面図。
【図10】地盤上に設置した集水路の断面図。
【図11】図10のA−A線断面図。
【図12】溝渠の土砂を掬い取るバケットの斜視図。
【図13】バケットの別の例の斜視図。
【図14】図12に示すバケットを用いて溝渠の土砂を掬い取るときの態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係わる集水路の一部を示すもので、該集水路1は、上面を開口した溝渠2と、該溝渠2の開口3に外向きに凸状に設置される格子状構造物4よりなり、溝渠2は既存の側溝と同様のコンクリート製でも、合成樹脂製、鋼製でも良く、溝蓋が装着される受部5に前記格子状構造物4が載置して設置されている。
【0017】
格子状構造物4は、アーチ状をなす鋼製の多数の支骨6を適当間隔で並べて各支骨6を溝渠2と平行なロッド7で複数箇所において連結してなるもので、支骨6とロッド7のうち、少なくとも支骨6は格子状構造物上に栗石等が敷設され、更にその上に土砂が堆積されても、その重量や土圧に耐えられるほどの十分な剛性を備えている。なお上記格子状構造物は、十分な剛性を備えれば、鋼製以外の材質でも良い。
【0018】
図示する格子状構造物4は、支骨6がアーチ状をなしているが、格子状構造物4は外向きの凸状をなしていればどのような形態であってもよい。図2に示す格子状構造物8は、半円形の支骨9とロッド7よりなるものであり、図3に示す格子状構造物11は山形の支骨12とロッド7よりなるものである。また図4に示す格子状構造物13は門形の支骨14とロッド7よりなるもので、図示するいずれの格子状構造物4、8、11、13においてもロッド7は支骨6、9、12、14の外側を連結しているが、支骨の内側を連結していてもよい。
【0019】
前記集水路1では、溝渠2の溝底が平坦で、格子状構造物4は溝渠2の受部5に載置して設置されているが、溝渠は図5に示すように水路16の下面が円弧状であってもよい。また図6に示す溝渠18では、水路19が断面略半円形をなすと共に受部21に溝渠18の長手方向(紙面と直交する方向)に長溝22が形成され、該長溝22に格子状構造物4の支骨6の両脚端が嵌合して取付けられるようになっている。
【0020】
図7に示す集水路21は、平溝状の水路24を備えた溝渠23に格子状構造物4を図6に示す集水路と同様にして取付けた例を示すものである。
【0021】
図8に示す集水路26は、上面を開口した溝渠27の左右両側壁のうちの一側壁に開口し、上面の開口に格子状構造物28を設置すると共に、一側壁の開口に別の格子状構造物29を差込んで外向きに突出した形態で設置してなるもので、格子状構造物28は前記格子状構造物4の支骨6を、その内側においてロッド7により連結してなるものであり、また格子状構造物29は、V形状の支骨31と、各支骨31の周りに巻き付けて各支骨31を連結する複数のロッド30よりなるものである。
【0022】
図9は、図8に示す集水路26を用いて防砂ダムの地盤上に施工した例を示すもので、地盤32上にベース33を設置して、その上に集水路26を長手方向(紙面と直交する方向)に一直線上に並べて設置し、その周りに囲い34を設置して該囲い34内に格子状構造物29を通り抜けできない程のサイズの栗石35を投入して一直線上に並ぶ集水路26の全長に渡ってその周りに詰め込み、更にその周りの囲い(図示しない)との間、或いは地盤を掘削した凹溝側壁との間に前記栗石35よりサイズの大きな栗石36を詰め込んでなるもので、雨水が栗石36の間を通り、更に栗石35の間を浸透して格子状構造物28及び29より溝渠内に入り込むようになっている。
【0023】
前記格子状構造物28及び29はそれぞれ開口より突出したアーム状及び突状をなし、平面よりも取水面積が大きいため、効率よく取水することができること、泥混じりの雨水は栗石36、35を浸透するにつれ、ろ過されるため、格子状構造物での目詰まりを生ずることがなく、土砂の流入も生じにくい等の効果を有する。
【0024】
なお、図示する例において、栗石36はシート等37により複数に区画して仕切られているが、シート等37で仕切らないで、囲い34の外側に投入して単に詰め込むようにしてもよい。また栗石36は、サイズの小さな栗石35の周りに詰め込まれているが、全てをサイズの小さな栗石35又はサイズの大きな栗石36としてもよい。この場合、囲い34は省くことができる。
【0025】
図10は、地盤32上に一直線上に並べて設置される溝渠38と図2に示すような格子状構造物8よりなる集水路41に一定距離離れた点検口39を縦向きに取付け、集水路端に桝40を連結してなるものであり、図11は前記集水路41の格子状構造物8上に栗石35及び36を詰め込んだ図10のA−A線断面を示すもので、前記点検口39は断面角又は円形のコンクリート、硬質樹脂又は鋼管よりなって前記栗石36上面に達する高さとなっているが、栗石36より突出し、防砂ダムの堰とほぼ同じ高さをなすように設けてもよい。点検口39を堰とほぼ同じ高さに設ければ、栗石36上に土砂が堰と同じレベルまで堆積しても点検口39を見つけ出し、該点検口39を通して後述する土砂の回収作業が容易に行えるからである。桝40から土砂の回収作業を行う場合には、同様にして桝40も開口を上方に突出させて土砂が堆積しても開口が埋まらないようにしておくのが望ましい。なお、点検口上端の開口は常には取外可能、或いは開閉可能な蓋(図示しない)によって閉じられている。
【0026】
図14に示すように、防砂ダムの堰とほぼ同じ高さに延ばした点検口39を通して前記溝渠38内に堆積した土砂46を回収するときには、点検口39に取付けた図示しない蓋を取外すか、開けて一方の点検口39よりリード線42を差込み、溝渠38に通して他方の点検口39又は桝40より引上げる。このリード線42は集水路41の施工時に予め通しておき、その両端を一定量巻き込んで点検口39の入口付近及び桝40の開口付近に設けておいてもよい。
【0027】
次にリード線42の一端に図12又は図13に示すようなバケット44又は45を連結し(図14に示す例においては、点検口39は図示しない砂防ダムの堰と同じレベルの土砂の堆積層47上面に達し、またバケットには図12に示すバケット44を用いている)、リード線一端の引き出しを案内しながらリード線他端を引取り或いは巻き取ってバケット44を集水路41に着床させ(図14)、バケット先端を溝渠内に堆積する土砂46に食い込ませる。そしてそのまま更に強く引取り或いは巻き取ってバケット44を溝渠38に沿い、堆積する土砂46を掬い取りながら移動させる。バケット44が他方の点検口39又は桝40の開口に達すると、該点検口39又は桝40の開口を通して引上げられ、該点検口39又は桝40の開口を出たのち、掬い取った土砂がバケット44より除去される。こうした土砂の回収作業が複数回繰返され、その後洗浄水が点検口39から注入される。注入された洗浄水は、前記バケット44で掘り起こされ、溝渠内に残る土砂を洗い流して桝40内に土砂と共に排出される。そして枡内で土砂が沈殿したのち、上澄みが小規模発電所(図示しない)に導出される。
【0028】
前記実施形態では、防砂ダムの地盤上に集水路を設置し、溝渠に堆積する土砂をバケットで回収する例を示したが、別の実施形態では盛土の施工時、盛土内に前述の集水路が設置され、点検口が盛土の頂面に達するまで形成される。
【0029】
本実施形態においては、集水路設置のため地盤を掘削する必要がなく、盛土の施工に伴って同時に集水路を組み込むことができる。
【0030】
本実施形態において、点検口は一つであってもよい。この場合、リード線に連結されるバケットは、好ましい態様では、点検口から挿入され、溝渠内の土砂を掬い取ったのち、法面に開口する集水路から取出される。
【0031】
前記各実施形態ではまた、格子状構造物4、8、11、13、28、29はいずれも外向きに凸状に構成されているが、別の実施形態では、格子状構造物として強度保持用のベアリングバーと、並設されるベアリングバーと直交してベアリングバーに固着される形状保持用のクロスバーより構成される溝蓋用のグレーチングよりなる平坦な格子状構造物が用いられる。
【符号の説明】
【0032】
1、21、26、41・・集水路
2、18、23、27、38・・溝渠
3・・開口
4、8、11、13、28、29・・格子状構造物
5、21・・受部
6、9、12、14、31・・支骨
7、30・・ロッド
16、19・・水路
22・・長溝
32・・地盤
33・・ベース
34・・囲い
35、36・・栗石又は砕石
39・・点検口
42・・リード線
44、45・・バケット
46・・溝渠内に堆積する土砂
47・・土砂の堆積層
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂防ダムに堆積した土砂を浸透した雨水或いは盛土を浸透した雨水を取水する集水路と、該集水路内に溜まる土砂を回収し排出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂防ダムの地盤上に溝渠を並設して、その上に針金で作った籠の中に栗石又は砕石(以下、栗石等という)を詰めてなるフトン籠を敷設し、その上に堆積した土砂を浸透した雨水をフトン籠を通して溝渠で取水し、小規模発電所に導水して発電する試みがなされている。
【0003】
また盛土では、一般に地滑り防止のため塩ビ管等の集水管を設置し、盛土を浸透した雨水を樹脂管を通して法面まで導いて水抜きすることが行われ、集水管に多数の取水口を設けたものも知られる(特許文献1)。
【0004】
集水管内に堆積した土砂の排水は、高圧水を通すことによって行われているが、下記特許文献1には、法面側より集水管内に送水ロッド先端に取付けたピストンを挿入し、該ピストンを回転しながら前後動させて送水ロッドより送水する高圧水で集水管を洗浄することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−52331号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溝渠上にフトン籠を設置し、該フトン籠を通して雨水を取水するものでは、フトン籠を作成するのに手間がかかる。
また集水管に多数の取水口を設ける場合、取水口の大きさによって目詰まりしたり、土砂が集水管内に入り込み易くなる。
また集水管の洗浄を洗浄水によって行う場合、堆積した土砂の排出を十分に行うことは容易でなく、ピストンの押込みにより土砂を押し出すのは、そのための設備を必要とし、大きな動力も必要である。
【0007】
本発明は、設置が容易で、目詰まりや土砂の流入が生じにくくした集水路を提供することを第1の目的とし、
集水路内に堆積した土砂を比較的簡単な設備でもって確実に回収し、集水路を清掃することができる清掃方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、第1の目的を達成する集水路に関するもので、砂防ダムの土砂が堆積する地盤或いは盛土の施工時、地盤や盛土内に設置される集水路であって、上面及び左右側面のうち、少なくとも上面を開口した溝渠と、該溝渠の開口に外向きに凸状に設置されるか、或いは平坦に設置され、堆積された土砂或いは盛土の土圧に耐えられる程の剛性の大なる格子状構造物よりなることを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、溝渠には上面のほか、左右の側壁のうち、少なくとも一方の側壁に開口を備え、上面と側壁の各開口に前記格子状構造物が外向きに凸状に設置されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明の集水路に堆積する土砂を回収して集水路を清掃する方法に関するもので、集水路に取付けた点検口を通してバケットを集水路に降し、バケットに連結したワイヤー等の索条によりバケットを牽引して集水路に堆積する土砂を掬い取って回収することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係わる発明は、請求項3に係わる発明において、バケットによる土砂の回収作業後、洗浄水による溝渠の洗浄を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係わる発明の集水路は、砂防ダムの土砂が堆積する地盤上或いは盛土内に設置され、格子状構造物上には雨水をろ過する栗石等を敷設されるが、栗石等は単に格子状構造物上に投入するだけで、その周りに囲いを設定するにしても囲い内に栗石等を投入するだけでよく、フトン籠を作成して、それを敷設するのに比べ、設置が容易であり、また栗石等を通しての集水は栗石等により土砂がろ過されるために土砂の流入が生じにくいうえ、目詰まりしにくい。とくに格子状構造物が外向きに凸状をなす場合、側溝の開口面積に比べ、格子状構造物の取水面積が大きくなり、そのため防砂ダムに堆積した土砂を浸透した雨水或いは盛土を浸透した雨水を効率よく取水することができる。
【0012】
請求項2に係わる発明によると、上面と側壁より取水されて取水面積が更に増大し、取水をより効率よく行うことができる。
【0013】
請求項3に係わる発明によると、集水路内でバケットを索条により牽引して集水路に堆積する土砂を掬い取ることにより集水路の清掃を行うことができる。
【0014】
請求項4に係わる発明によると、溝渠内の土砂をバケットで掘り起こしたのち洗浄が行われることにより、溝渠内の清掃をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わる集水路の一部の斜視図。
【図2】格子状構造物の別の態様を示す正面図。
【図3】格子状構造物の更に別の態様を示す正面図。
【図4】格子状構造物の他の態様を示す正面図。
【図5】溝渠の別の例を示す断面図。
【図6】集水路の別の例の断面図。
【図7】集水路の更に別の例の断面図。
【図8】集水路の他の例を示す断面図。
【図9】図8に示す集水路の施工例を示す断面図。
【図10】地盤上に設置した集水路の断面図。
【図11】図10のA−A線断面図。
【図12】溝渠の土砂を掬い取るバケットの斜視図。
【図13】バケットの別の例の斜視図。
【図14】図12に示すバケットを用いて溝渠の土砂を掬い取るときの態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係わる集水路の一部を示すもので、該集水路1は、上面を開口した溝渠2と、該溝渠2の開口3に外向きに凸状に設置される格子状構造物4よりなり、溝渠2は既存の側溝と同様のコンクリート製でも、合成樹脂製、鋼製でも良く、溝蓋が装着される受部5に前記格子状構造物4が載置して設置されている。
【0017】
格子状構造物4は、アーチ状をなす鋼製の多数の支骨6を適当間隔で並べて各支骨6を溝渠2と平行なロッド7で複数箇所において連結してなるもので、支骨6とロッド7のうち、少なくとも支骨6は格子状構造物上に栗石等が敷設され、更にその上に土砂が堆積されても、その重量や土圧に耐えられるほどの十分な剛性を備えている。なお上記格子状構造物は、十分な剛性を備えれば、鋼製以外の材質でも良い。
【0018】
図示する格子状構造物4は、支骨6がアーチ状をなしているが、格子状構造物4は外向きの凸状をなしていればどのような形態であってもよい。図2に示す格子状構造物8は、半円形の支骨9とロッド7よりなるものであり、図3に示す格子状構造物11は山形の支骨12とロッド7よりなるものである。また図4に示す格子状構造物13は門形の支骨14とロッド7よりなるもので、図示するいずれの格子状構造物4、8、11、13においてもロッド7は支骨6、9、12、14の外側を連結しているが、支骨の内側を連結していてもよい。
【0019】
前記集水路1では、溝渠2の溝底が平坦で、格子状構造物4は溝渠2の受部5に載置して設置されているが、溝渠は図5に示すように水路16の下面が円弧状であってもよい。また図6に示す溝渠18では、水路19が断面略半円形をなすと共に受部21に溝渠18の長手方向(紙面と直交する方向)に長溝22が形成され、該長溝22に格子状構造物4の支骨6の両脚端が嵌合して取付けられるようになっている。
【0020】
図7に示す集水路21は、平溝状の水路24を備えた溝渠23に格子状構造物4を図6に示す集水路と同様にして取付けた例を示すものである。
【0021】
図8に示す集水路26は、上面を開口した溝渠27の左右両側壁のうちの一側壁に開口し、上面の開口に格子状構造物28を設置すると共に、一側壁の開口に別の格子状構造物29を差込んで外向きに突出した形態で設置してなるもので、格子状構造物28は前記格子状構造物4の支骨6を、その内側においてロッド7により連結してなるものであり、また格子状構造物29は、V形状の支骨31と、各支骨31の周りに巻き付けて各支骨31を連結する複数のロッド30よりなるものである。
【0022】
図9は、図8に示す集水路26を用いて防砂ダムの地盤上に施工した例を示すもので、地盤32上にベース33を設置して、その上に集水路26を長手方向(紙面と直交する方向)に一直線上に並べて設置し、その周りに囲い34を設置して該囲い34内に格子状構造物29を通り抜けできない程のサイズの栗石35を投入して一直線上に並ぶ集水路26の全長に渡ってその周りに詰め込み、更にその周りの囲い(図示しない)との間、或いは地盤を掘削した凹溝側壁との間に前記栗石35よりサイズの大きな栗石36を詰め込んでなるもので、雨水が栗石36の間を通り、更に栗石35の間を浸透して格子状構造物28及び29より溝渠内に入り込むようになっている。
【0023】
前記格子状構造物28及び29はそれぞれ開口より突出したアーム状及び突状をなし、平面よりも取水面積が大きいため、効率よく取水することができること、泥混じりの雨水は栗石36、35を浸透するにつれ、ろ過されるため、格子状構造物での目詰まりを生ずることがなく、土砂の流入も生じにくい等の効果を有する。
【0024】
なお、図示する例において、栗石36はシート等37により複数に区画して仕切られているが、シート等37で仕切らないで、囲い34の外側に投入して単に詰め込むようにしてもよい。また栗石36は、サイズの小さな栗石35の周りに詰め込まれているが、全てをサイズの小さな栗石35又はサイズの大きな栗石36としてもよい。この場合、囲い34は省くことができる。
【0025】
図10は、地盤32上に一直線上に並べて設置される溝渠38と図2に示すような格子状構造物8よりなる集水路41に一定距離離れた点検口39を縦向きに取付け、集水路端に桝40を連結してなるものであり、図11は前記集水路41の格子状構造物8上に栗石35及び36を詰め込んだ図10のA−A線断面を示すもので、前記点検口39は断面角又は円形のコンクリート、硬質樹脂又は鋼管よりなって前記栗石36上面に達する高さとなっているが、栗石36より突出し、防砂ダムの堰とほぼ同じ高さをなすように設けてもよい。点検口39を堰とほぼ同じ高さに設ければ、栗石36上に土砂が堰と同じレベルまで堆積しても点検口39を見つけ出し、該点検口39を通して後述する土砂の回収作業が容易に行えるからである。桝40から土砂の回収作業を行う場合には、同様にして桝40も開口を上方に突出させて土砂が堆積しても開口が埋まらないようにしておくのが望ましい。なお、点検口上端の開口は常には取外可能、或いは開閉可能な蓋(図示しない)によって閉じられている。
【0026】
図14に示すように、防砂ダムの堰とほぼ同じ高さに延ばした点検口39を通して前記溝渠38内に堆積した土砂46を回収するときには、点検口39に取付けた図示しない蓋を取外すか、開けて一方の点検口39よりリード線42を差込み、溝渠38に通して他方の点検口39又は桝40より引上げる。このリード線42は集水路41の施工時に予め通しておき、その両端を一定量巻き込んで点検口39の入口付近及び桝40の開口付近に設けておいてもよい。
【0027】
次にリード線42の一端に図12又は図13に示すようなバケット44又は45を連結し(図14に示す例においては、点検口39は図示しない砂防ダムの堰と同じレベルの土砂の堆積層47上面に達し、またバケットには図12に示すバケット44を用いている)、リード線一端の引き出しを案内しながらリード線他端を引取り或いは巻き取ってバケット44を集水路41に着床させ(図14)、バケット先端を溝渠内に堆積する土砂46に食い込ませる。そしてそのまま更に強く引取り或いは巻き取ってバケット44を溝渠38に沿い、堆積する土砂46を掬い取りながら移動させる。バケット44が他方の点検口39又は桝40の開口に達すると、該点検口39又は桝40の開口を通して引上げられ、該点検口39又は桝40の開口を出たのち、掬い取った土砂がバケット44より除去される。こうした土砂の回収作業が複数回繰返され、その後洗浄水が点検口39から注入される。注入された洗浄水は、前記バケット44で掘り起こされ、溝渠内に残る土砂を洗い流して桝40内に土砂と共に排出される。そして枡内で土砂が沈殿したのち、上澄みが小規模発電所(図示しない)に導出される。
【0028】
前記実施形態では、防砂ダムの地盤上に集水路を設置し、溝渠に堆積する土砂をバケットで回収する例を示したが、別の実施形態では盛土の施工時、盛土内に前述の集水路が設置され、点検口が盛土の頂面に達するまで形成される。
【0029】
本実施形態においては、集水路設置のため地盤を掘削する必要がなく、盛土の施工に伴って同時に集水路を組み込むことができる。
【0030】
本実施形態において、点検口は一つであってもよい。この場合、リード線に連結されるバケットは、好ましい態様では、点検口から挿入され、溝渠内の土砂を掬い取ったのち、法面に開口する集水路から取出される。
【0031】
前記各実施形態ではまた、格子状構造物4、8、11、13、28、29はいずれも外向きに凸状に構成されているが、別の実施形態では、格子状構造物として強度保持用のベアリングバーと、並設されるベアリングバーと直交してベアリングバーに固着される形状保持用のクロスバーより構成される溝蓋用のグレーチングよりなる平坦な格子状構造物が用いられる。
【符号の説明】
【0032】
1、21、26、41・・集水路
2、18、23、27、38・・溝渠
3・・開口
4、8、11、13、28、29・・格子状構造物
5、21・・受部
6、9、12、14、31・・支骨
7、30・・ロッド
16、19・・水路
22・・長溝
32・・地盤
33・・ベース
34・・囲い
35、36・・栗石又は砕石
39・・点検口
42・・リード線
44、45・・バケット
46・・溝渠内に堆積する土砂
47・・土砂の堆積層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂防ダムの土砂が堆積する地盤或いは盛土の施工時、地盤や盛土内に設置される集水路であって、上面及び左右側面のうち、少なくとも上面を開口した溝渠と、該溝渠の開口に外向きに凸状に設置されるか、或いは平坦に設置され、堆積された土砂或いは盛土の土圧に耐えられる程の剛性の大なる格子状構造物よりなることを特徴とする集水路。
【請求項2】
前記溝渠には上面のほか、左右の側壁のうち、少なくとも一方の側壁に開口を備え、上面と側壁の各開口に前記格子状構造物が外向きに凸状に設置されることを特徴とする請求項1記載の集水路。
【請求項3】
請求項1又は2記載の集水路内に堆積する土砂を回収して集水路を清掃する方法であって、集水路に取付けた点検口を通してバケットを集水路に降し、バケットに連結したワイヤー等の索条によりバケットを牽引して集水路に堆積する土砂を掬い取って回収することを特徴とする集水路の清掃方法。
【請求項4】
バケットによる土砂の回収作業後、洗浄水による溝渠の洗浄を行うことを特徴とする請求項3記載の集水路の清掃方法。
【請求項1】
砂防ダムの土砂が堆積する地盤或いは盛土の施工時、地盤や盛土内に設置される集水路であって、上面及び左右側面のうち、少なくとも上面を開口した溝渠と、該溝渠の開口に外向きに凸状に設置されるか、或いは平坦に設置され、堆積された土砂或いは盛土の土圧に耐えられる程の剛性の大なる格子状構造物よりなることを特徴とする集水路。
【請求項2】
前記溝渠には上面のほか、左右の側壁のうち、少なくとも一方の側壁に開口を備え、上面と側壁の各開口に前記格子状構造物が外向きに凸状に設置されることを特徴とする請求項1記載の集水路。
【請求項3】
請求項1又は2記載の集水路内に堆積する土砂を回収して集水路を清掃する方法であって、集水路に取付けた点検口を通してバケットを集水路に降し、バケットに連結したワイヤー等の索条によりバケットを牽引して集水路に堆積する土砂を掬い取って回収することを特徴とする集水路の清掃方法。
【請求項4】
バケットによる土砂の回収作業後、洗浄水による溝渠の洗浄を行うことを特徴とする請求項3記載の集水路の清掃方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−144867(P2012−144867A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2475(P2011−2475)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
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