説明

集積回路内蔵カード

【課題】従来の集積回路内蔵カードの場合、規格上の制限などで、困難であった集積回路内蔵カード購入者による印刷を、集積回路内蔵カードの規格を満足しつつ、集積回路内蔵カード購入者が、自由な図柄などを、容易にかつ自在に、集積回路内蔵カードに印刷できる様にした集積回路内蔵カードを提供する。
【解決手段】レーベル印刷を施す領域に凹部領域を形成し、凹部領域内に下地インクを塗布し、下地インクの上層部に受理インクを塗布する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリカードなどの集積回路を内蔵したカードに関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリーを内蔵したメモリカードなどは、切手台のカードサイズにもかかわらず、半導体集積回路の進歩に伴い、年々そのメモリ容量を増大させ、種々の電子コンテンツが格納でき、かつ、幅広い用途で活用できる様になって来た。また、同じく半導体集積回路の進歩に伴い、メモリ容量単位の販売価格も年々低下してきており、一次的な情報の記憶用途に留まらず、メモリカード自体で、記憶した電子コンテンツを長く保存する用途にも広く使われて来た。
【0003】
その一方で、カードサイズは従来の記憶メディア、即ち、テープや、光ディスクに比べて小さく、メモリカードに書き込まれた電子コンテンツなどの内容をカード表面にメモ書きしたくとも、充分に書ききれない問題や、そもそもメモリカード購入者がメモ書きしたラベルをメモリカードの貼ると、メモリカードが小さいが故に、メモリカード自体の寸法や、領域上の規格を満足しなくなり、機器にメモリカードを挿入した場合、メモリカード購入者が貼ったラベルが機器の中で捲れ上がることで剥がれしまい、その剥がれたラベルの一部が、メモリカードのコネクタ内部に附着する危険性がある。この様になると、メモリカードとコネクタの間で接触不良が発生し、コネクタのコンタクトピンなどの構造物を変形させ、致命的な故障に至る可能性が生じる。
【0004】
そこで、メモリカードにダメージを与えず、メモ書きする方法としては、フェルトペンで手書きするとか、先行文献1に示すように、特殊な表面処理を施した薄型ラベルをカード製造時に装着したメモリカードにボールペンなどで手書きする方法があるが、手書きで表現するには、書けるスペースが小さく不満が残っていた。また、他の保存メディアと同様にジャケットなど、より自由に表現したいという要望も多い。
【0005】
図10は、従来の集積回路内蔵カードの平面図を示す。
【0006】
従来の集積回路内蔵カード20は、凹部領域21、カード筐体22、ラベル23で構成される。
【0007】
凹部領域21は、カード20の表面にある。通常0.1mmの深さで、凹部を形成しており、ラベル23を貼る領域として利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−250101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、カードの購入者がカード20の凹部領域21にラベル23を貼り付けることには、以下の2つの問題があったため、厚さ0.1mm以下のラベル23に必要な印刷を施し、カード製造時に事前にラベル23を貼り付けていた。
(1)カード製造者は、このラベル23が貼られた状態で、カードの規格を満足させる必要がある。正しい厚さ、正しい位置にラベル23が貼られていないと、規格違反になるため、カード購入者が、ラベル23を貼ることを一般には禁じている。
【0010】
例えば、カード購入者が市販の紙製の粘着性シールをラベル23として貼りつけた場合、湿気を吸うとさらに厚くなり、また強度的にも弱いため、カードをコネクタに挿入した場合、紙製のラベル23の部分が、カードの規格より厚くなるため、コネクタの規制板で当り、捲れ上がる事がある。捲れ上がったラベル23の部分は紙製でありが故に強度が弱く、結果として、千切れ、一部に粘着部があると、容易にコネクタの内部に附着する可能性が高い。この状態で、カードの挿抜を繰り返すと、コネクタの機構部分にダメージを与えたり、カードと電気的に接続するコンタクトピンが変形し、接触不良にいたる可能性がある。
(2)カード購入者が新しいラベル23を貼るために、既存のラベル23を剥がそうとした場合、ラベル23の下地であるプラスチックのカード筐体22にダメージを与える可能性がある。カード全体の厚さは、 2.1mm であることから、各部の厚さは大きく採れず、カード内部の集積回路が占める割合が大きくなる分、ラベル23の下地のプラスチックのカード筐体22の厚さを薄くする必要が生じる。通常、0.15mm で形成されていることが多く、既存のラベル23を剥がそうとした場合、下地のプラスチックのカード筐体22が伸びて変形してしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するため、本発明の集積回路内蔵カードは、表面の一部に凹部領域を形成し、前記凹部領域より内側に、粒状に飛来するインクを吸着させる受理インクが塗付する。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の集積回路内蔵カードによれば、集積回路内蔵カードの購入者がデザインした図柄を、容易にかつ指定の領域内であれば自在に、集積回路内蔵カードに印刷することが可能となる。これにより、集積回路内蔵カードの諸規格に反することなく、集積回路内蔵カード購入者が欲する印刷を集積回路内蔵カードに施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における集積回路内蔵カードの平面図、背面図、側面図及び前面図
【図2】本発明の実施の形態1における集積回路内蔵カードの平面図
【図3】本発明の実施の形態1における集積回路内蔵カードの断面図
【図4】本発明の実施の形態2における集積回路内蔵カードの平面図
【図5】本発明の実施の形態2における集積回路内蔵カードの断面図
【図6】本発明の実施の形態3における集積回路内蔵カードの平面図
【図7】本発明の実施の形態3における集積回路内蔵カードの断面図
【図8】印刷領域とレーベル領域との関係図
【図9】下地インクと受理インクとを同じ領域に塗布した時の印刷例を示す図
【図10】従来のカードの平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図10を用いて本発明の実施形態を説明する。
<1.カードの形状及びインク塗布領域>
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1にかかるSDメモリカード(以下「カード」と称す。)の平面図、背面図、側面図及び前面図を示す。ここで、平面図が示す面をカード表面30、背面図が示す面をカード背面50と称す。
【0015】
カード10(カード筐体32)は、カード表面30及びカード背面50で構成される。
【0016】
カード表面30に凹部領域31があり、カード背面50から段差を設けた領域にカードのコンタクトパッド群51がある。また、本実施の形態1では、カード10のロゴマーク52、メモリ容量表記53、挿入方向表記54、書込防止スイッチの機能表記55、ブランド表記56がなされている。これらの表記は、レザー印字や、タンポ印刷などの工法で、カード製造時に印刷される。
【0017】
凹部領域31は、まず下地インク33を塗布し、その上に受理インク34を塗布する。カード筐体32が白色であれば、受理インク34の下地に下地インク33を塗布する必要がない。ただし、カードの色を白にすると、使い込んでいくうちに汚れが目立つなどの問題が生じるために、黒っぽい色にすることが多いので、その場合は、下地インク33を塗布する必要がある。
【0018】
図2は、実施の形態1にかかるカードの平面図を示し、図53(a)は、その断面図を示す。ただし、構造物が薄いため、図3(b)で縦方向を3倍に拡大した断面図を示す。断面141は、レーベル領域131の断面を表している。下地インク133は、レーベル領域131の3.5mm内側に塗布し、受理インク134は、下地インク133の上に、レーベル領域131の1.5mm内側に重ねるように塗布している。
【0019】
受理インク134の上端の高さは、レーベル領域131の周辺であるプラスチックのカード筐体周辺部39の上端の高さより低い状態に塗布する。これにより、カード表面30を床に接する様に置き、カード全体を擦っても、受理インク134が床に接することがないため、レーベル印刷が擦れて汚れたり、剥がれたりする問題を回避できる。
【0020】
受理インク134が、レーベル領域131より、1.5mm 内側に塗布されている理由は、シルク法で印刷した場合、凹部のエッジでは、シルクのマスクが、凹部の底部に上手く密着しにくく、印刷が滲み易いのを回避するためである。
【0021】
また、下地インク133が、受理インク134より、2mm 内側に塗布されている理由は、プリンタおよびプリンタへのカードのセット位置の誤差から来る要因による。詳細の説明は後述する。
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2にかかるカードの平面図を示し、図5(a)は、その断面図を示す。また、図5(b)で縦方向を3倍に拡大した断面図を示す。
【0022】
断面241は、レーベル領域231の断面を表している。下地インク233はレーベル領域231の2mm内側に塗布され、受理インク234はレーベル領域231に完全に充填する様に、下地インク233の上に重ねるように塗布している。受理インク234がレーベル領域231に完全に充填する様に塗布する方法は、例えば粘度の少ない受理インク235をレーベル領域231の内側に塗布し、その後受理インクの広がりで、受理インク236の形状になるのを待ち、その後のインク乾燥で、受理インク234になる条件にインク溶剤を調整して塗布する方法がある。この塗布方法で、受理インク234の上端の高さは、レーベル領域231の周辺であるプラスチックのカード筐体周辺部39の上端の高さより低い状態に塗布でき、実施の形態1にかかるカードと同様に、カード全体を擦っても、受理インク234が床に接することがないため、レーベル印刷が擦れて汚れたり、剥がれたりする問題を回避できる。
【0023】
以上のように受理インク234を塗布することで、実施の形態2にかかるカードは、実施の形態1にかかるカードよりも広い領域をレーベル印刷することができる。
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3にかかるカードの平面図を示し、図7(a)は、その断面図を示す。また、図7(b)で縦方向を3倍に拡大した断面図を示す。断面341は、レーベル領域331の断面を表している。下地インク333はレーベル領域331の2mm内側に塗布し、受理インク334はレーベル領域331より広範囲に下地インク333の上に重ねるように塗布している。
【0024】
受理インク334の上端の高さは、レーベル領域331のエッジで盛り上がり、周辺であるプラスチックのカード筐体周辺部39の上端の高さより高くなるが、下地インク333の塗布領域では、カード筐体周辺部39の上端の高さより低い状態に塗布でき、実施の形態1と同様に、カード全体を擦っても、レーベル印刷が見える領域が床に接することがないため、レーベル印刷が擦れて汚れたり、剥がれたりする問題を回避できる。
【0025】
実施の形態3では、実施の形態2と同様に、実施の形態1より広い領域をレーベル印刷できるメリットがあり、かつ容易に受理インクを塗布できるメリットがある。
<2.レーベル領域への印刷方法>
以上のような構成により、本発明は、カード購入者が既存のラベル23を剥がしたり、新しいラベル23を貼ったりする必要がないので、カードの規格を満足し、かつ信頼性を維持した状態で、新しいレーベルを印刷することができる。
【0026】
凹部領域31に受理インク34を塗布することにより、インクジェットプリンタで印刷したインクを受け止め、固定化し、転写や、滲みや、触れることによる汚れを防ぐことができる。
【0027】
図8は、インクジェットプリンタで印刷する領域と、カードのレーベル領域との関係を示した図である。
【0028】
プリンタそのものの印刷誤差や、プリンタへのカードのセット位置の誤差などで、下地インク33の領域に対し印刷範囲35は誤差を生じることがある。ここで、この誤差が±0.1mmあるとする。印刷範囲35と下地インク33とを同じ領域サイズにした場合、最大の誤差が生じた場合、下地インク33の一方の端には、プリントされず、0.1mm 幅の下地の線領域36が残ることになる。そのため、印刷範囲35は、下地インク33より、両側に0.1mmずつ広げる必要がある。
【0029】
この条件で、最大の誤差が生じた場合、下地インク33の一方の端には下地インク33の外側に、0.2mm 幅の印刷がなされ、印刷領域37が生じる。下地インク33の外側のプラスチックのカード筐体32の色を黒くすることにより、印刷領域37のはみ出した印刷は目立たなくすることができる。
【0030】
図9は、下地インク33と、受理インク34とが、同じサイズで、同じ領域に塗布した時の例を示す図である。印刷領域37に受理インク34がないことから、インクジェットプリンタは、プラスチックのカード筐体32に直接印刷することになる。この場合、インクを受け止めるものが無いため、インクが固定化できず、触れることによる汚れなどが発生し、レーベル印刷そのものを汚してしまい、台無しにしてしまう危険性がある。そのため、実施の形態1、2及び3で説明した通り、受理インク34は、下地インク33より、誤差の分以上に広範囲に塗布する必要がある。
<3.まとめ>
実施の形態1、2及び3によれば、従来のカードのラベルを貼るレーベル領域に、印刷の位置ズレ誤差も考慮した下地インク、および受理インクを塗布することにより、通常のインクジェットプリンタで、カード購入者が容易にレーベルなどを印刷することが可能となる。
【0031】
なお、カード筐体の色によっては、下地インクを省くことも可能である。
【0032】
また、受理インクは、防水性に富んだインクを用いることで、さらに、カードをハンドリングすることによる滲みや、汚れを防ぐことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の集積回路内蔵カードは、集積回路内蔵カードの諸規格に反することなく、容易かつ自在に印刷できるため、集積回路内蔵カード購入者が欲するデザインを集積回路内蔵カードに印刷することが要求されるアプリケーションにおいて有効である。
【符号の説明】
【0034】
10 カード
20 従来例のカード表面
21 凹部領域
22 カード筐体
23 ラベル
30 カード表面
31 凹部領域
32 カード筐体
33 下地インク
34 受理インク
35 印刷範囲
36 下地の線領域
37 印刷領域
39 カード筐体周辺部
50 カード背面
51 コンタクトパッド群
52 ロゴマーク
53 メモリ容量表記
54 挿入方向表記
55 書込防止スイッチの機能表記
56 ブランド表記
131 実施の形態1におけるカードのレーベル領域
231 実施の形態2におけるカードのレーベル領域
331 実施の形態3におけるカードのレーベル領域
133 実施の形態1におけるカードの下地インク
233 実施の形態2におけるカードの下地インク
333 実施の形態3におけるカードの下地インク
134 実施の形態1におけるカードの受理インク
234 実施の形態2おけるカードの受理インク
334 実施の形態3におけるカードの受理インク
141 実施の形態1におけるカードの断面
241 実施の形態2におけるカードの断面
341 実施の形態3におけるカードの断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の一部に凹部領域を形成し、前記凹部領域より内側に、粒状に飛来するインクを吸着させる受理インクが塗付されたことを特徴とする集積回路内蔵カード。
【請求項2】
前記受理インクが、前記凹部領域全体に充填されたことを特徴とする請求項1に記載の集積回路内蔵カード。
【請求項3】
前記受理インクが、前記凹部領域を覆い、さらに広い範囲に塗布されたことを特徴とする請求項1に記載の集積回路内蔵カード。
【請求項4】
前記凹部領域より内側で、かつ前記受理インクが塗付された領域より内側の領域に、下地となるメモリカード表面の色を隠すインクが、前記受理インクの下層部に塗布されたことを特徴とする請求項1から3に記載の集積回路内蔵カード。
【請求項5】
前記受理インクが塗布された面と反対の面に、カードのロゴマーク、メモリ容量表記、挿入方向表記、書込防止スイッチの機能表記、ブランド表記の一部もしくは、すべてを印字したことを特徴とする請求項1から4に記載の集積回路内蔵カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−65509(P2011−65509A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216660(P2009−216660)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】