説明

集電体および非水系二次電池

【課題】安全性および信頼性を向上させることが可能な集電体を提供する。
【解決手段】この集電体(正極集電体11)は、樹脂層13を金属層14で挟んだ多層構造を有する集電体であって、その樹脂層13が樹脂材料と接着剤との混合材から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電体および非水系二次電池に関し、特に、絶縁層を有する集電体およびその集電体を用いた非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、高容量・高エネルギー密度を有し、かつ、貯蔵性能や充放電の繰り返し特性等にも優れるため、携帯機器などの民生機器に広く利用されている。また、近年では、環境問題や省エネルギーに関する意識の高まりから、電力貯蔵用途や、電気自動車などの車載用途にリチウムイオン二次電池が利用されるようになってきている。
【0003】
一方、非水系二次電池は、そのエネルギー密度の高さ故に、過充電状態や高温環境下にさらされた状態においては、異常過熱や発火などの危険性が高い。そのため、非水系二次電池では、安全性に対する種々の対応策が講じられている。
【0004】
また、従来、異常発熱による発火を防止するために、多層構造を有する集電体を用いたリチウムイオン二次電池が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
図16は、特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池の集電体を示した断面図である。図16を参照して、上記特許文献1の集電体500は、130℃〜170℃の低融点を持つ樹脂フィルム(絶縁層)501の両面に、接着剤層502を介して金属箔503が貼り付けられた構造を有している。このリチウムイオン二次電池では、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生すると、低融点の樹脂フィルム501が溶融し、この樹脂フィルム501の溶融により、電極が破損される。これにより、電流がカットされるので、電池内部の温度上昇が抑制されて、発火が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−102711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、特許文献1で提案されている集電体は、非水系二次電池の安全対策としては非常に有効である。
【0008】
しかしながら、本願発明者らが種々検討を重ねたところ、接着剤層によって金属箔を樹脂フィルムに貼り付けた場合、接着剤層の接着剤成分が電解液中に溶け出すという不都合が生じることを見出した。このため、従来の集電体では、接着剤層が電解液中に溶け出すことによって、接着剤層の接着力が低下するので、金属箔が樹脂フィルムから剥離するなどの不都合が生じる。これにより、従来の集電体では、電池の信頼性が低下するという問題点があることが分かった。特に、電池内部の温度が高くなると、接着剤が電解液中に溶け出し易くなるため、電池の信頼性が低下し易くなる。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、安全性および信頼性を向上させることが可能な集電体および非水系二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明者らが鋭意検討した結果、集電体の絶縁層自体に接着機能を持たせることにより、接着剤を電解液中に溶け出しにくくすることが可能となることを見出した。
【0011】
すなわち、この発明の第1の局面による集電体は、絶縁層を導電層で挟んだ多層構造を有する集電体であって、その絶縁層が、樹脂材料と接着剤との混合材から構成されている。
【0012】
この第1の局面による集電体では、上記のように、絶縁層を樹脂材料と接着剤との混合材から構成することによって、絶縁層に接着機能を持たせることができる。そのため、接着剤層を介さずに、絶縁層を導電層で挟むことができる。そして、このように構成することにより、絶縁層中の接着剤が電解液中に溶け出すのを抑制することができる。これにより、導電層が絶縁層から剥離するのを抑制することができる。したがって、このような集電体を用いて電池を作製することにより、電池の信頼性を向上させることができる。
【0013】
また、第1の局面では、上記のように、集電体を多層構造に構成することによって、たとえば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、集電体の絶縁層が溶融して電極が破損されるので、電流をカットすることができる。これにより、電池内部の温度上昇を抑制することができるので、たとえば、発火などの異常状態が生じるのを防止することができる。
【0014】
上記第1の局面による集電体において、絶縁層に含まれる接着剤は、絶縁層(たとえば絶縁層全体)に対して0wt%より大きく3wt%より小さい範囲であるのが好ましい。このように構成すれば、絶縁層中の接着剤が電解液中に溶け出すのを効果的に抑制することができる。このため、導電層の剥離等を効果的に抑制することができるので、電池の信頼性を効果的に向上させることができる。
【0015】
また、上記第1の局面による集電体において、絶縁層に含まれる接着剤は粘着付与剤としてロジンを有しているのが好ましい。このように構成すれば、容易に、絶縁層中の接着剤が電解液中に溶け出すのを抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面による集電体において、接着剤は粘着付与剤のみから構成されているのが好ましい。このように構成すれば、絶縁層中の接着剤濃度を容易に低減することができるので、接着機能を保持しつつ、より効果的に、縁層中の接着剤が電解液中に溶け出すのを抑制することができる。
【0017】
なお、上記導電層は、絶縁層と直接接触しているのが好ましい。また、上記導電層は、金属箔から構成されているのが好ましい。
【0018】
この発明の第2の局面による集電体は、絶縁層を金属箔で挟んだ多層構造を有する集電体であって、絶縁層が樹脂材料からなり、上記金属箔が絶縁層と直接接触している。
【0019】
この第2の局面による集電体では、上記のように、絶縁層を樹脂材料から構成することによって、樹脂材料はある程度の接着機能を有しているため、絶縁層に接着機能を持たせることができる。そして、金属箔を、接着剤層を介することなく絶縁層に直接貼り付けることによって、接着剤を含まない多層構造の集電体を得ることができる。このため、電解液中に溶け出す接着剤を有しないため、接着剤が電解液中に溶け出すことに起因する金属箔の剥離を防止することができる。
【0020】
また、第2の局面では、集電体を、絶縁層を金属箔で挟んだ多層構造としているため、安全性を向上させることができる。
【0021】
上記第1または第2の局面による集電体において、絶縁層の融点は120℃以上200℃以下であるのが好ましい。このように構成すれば、たとえば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、集電体の絶縁層を溶融させ易くすることができる。このため、電極を破損され易くすることができるので、安全性をより向上させることができる。
【0022】
この発明の第3の局面による非水系二次電池は、上記第1または第2の局面による集電体と、この集電体上に形成された活物質層とを含む電極を備えた非水系二次電池である。このように構成すれば、容易に、安全性および信頼性が向上された非水系二次電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、安全性および信頼性を向上させることが可能な集電体および非水系二次電池を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の電極群の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の全体斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極の断面図(図7のA−A線に沿った断面の一部に対応する図)である。
【図6】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極の平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極の斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池に用いられる正極集電体を説明するための断面図(正極集電体の製造工程の一部を示した図)である。
【図9】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池に用いられる正極の一部を模式的に示した平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の電極群の一部を模式的に示した斜視図である。
【図11】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の負極の断面図(図13のB−B線に沿った断面に対応する図)である。
【図12】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の負極の平面図である。
【図13】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の負極の斜視図である。
【図14】本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池のセパレータの平面図である。
【図15】本発明の第2実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。
【図16】特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池の集電体を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、非水系二次電池の一例である積層型のリチウムイオン二次電池に本発明を適用した場合について説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の分解斜視図であり、図2は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の電極群の分解斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の全体斜視図であり、図4は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。図5〜図14は、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池を説明するための図である。まず、図1〜図14を参照して、本発明の第1実施形態によるリチウムイオン二次電池および集電体について説明する。
【0027】
第1実施形態によるリチウムイオン二次電池は、図1および図3に示すように、角形扁平形状を有する大型二次電池であり、複数の電極5を含む電極群50(図1参照)と、この電極群50を非水電解液とともに封入する金属製の外装容器100とを備えている。
【0028】
上記電極5は、図1および図2に示すように、正極10および負極20を含んで構成されており、正極10と負極20との間には、正極10と負極20との短絡を抑制するためのセパレータ30が配されている。具体的には、正極10および負極20が、セパレータ30を挟んで互いに対向するように配されており、正極10、セパレータ30および負極20が順次積層されることによって、積層構造(積層体)に構成されている。なお、正極10および負極20は、1つずつ交互に積層されている。また、上記電極群50は、隣り合う2つの負極20の間に、1つの正極10が位置するように構成されている。
【0029】
また、上記電極群50は、たとえば、正極10を13枚、負極20を14枚、セパレータ30を28枚含んで構成されており、正極10および負極20がセパレータ30を挟んで交互に積層されている。さらに、上記電極群50における最も外側(最外層の負極20の外側)には、セパレータ30が配されており、外装容器100との絶縁が図られている。
【0030】
電極群50を構成する正極10は、図4および図5に示すように、正極集電体11の両面に、正極活物質層12が担持された構成を有している。
【0031】
正極集電体11は、正極活物質層12から集電を行う機能を有している。
【0032】
ここで、第1実施形態では、上記正極集電体11は、2枚の金属層14で絶縁性の樹脂層13を挟んだ多層構造に形成されている。なお、金属層14は、本発明の「導電層」の一例であり、樹脂層13は、本発明の「絶縁層」の一例である。
【0033】
正極集電体11を構成する金属層14は、たとえば、約4μm〜約20μm(たとえば20μm)の厚みを有するアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔から構成されている。アルミニウムは不動態化し易いため、正極集電体11の金属層14として好適に用いることができる。なお、上記金属層14は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔以外であってもよく、たとえば、チタン、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属箔、または、これらの合金からなる合金箔などから構成されていてもよい。
【0034】
また、第1実施形態では、正極集電体11の樹脂層13が、樹脂(樹脂材料)と接着剤との混合材から構成されている。このような混合材としては、たとえば、樹脂接着剤を用いることができる。
【0035】
樹脂層13を構成する樹脂(樹脂材料)としては、たとえば、熱可塑性樹脂からなるプラスチック材料を用いることができる。プラスチック材料を構成する熱可塑性樹脂としては、たとえば、熱変形温度が150℃以下であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドなどが好適に用いられる。中でも、120℃での熱収縮率が平面方向のいずれかの方向で1.5%以上であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニルなどが好ましい。なお、熱収縮率は、絶縁層(樹脂層13)を構成する層状材料を一定温度下で、一定時間保持し、加熱処理前後で測定した2点間の距離から決定することができる。また、熱変形温度は、熱収縮率が10%以上となる温度のうち、最も低い温度と定義される(ここで、熱変形温度<融点)。
【0036】
樹脂層13を構成する接着剤としては、EVA(エチレンビニルアルコール)や、特殊オレフィン系を含む種々の接着剤を用いることができる。一般的な接着剤には、接着剤成分、粘着付与剤が含まれる。
【0037】
接着剤成分としては、たとえば、EVA、スチレン−ブタディエン−スチレン(SBS)とスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)との共重合体に基づく化合物、樹脂や誘導体(たとえば、ロジン、クマロン、インデン、脂肪族化合物や芳香族の炭化水素樹脂)に基づく化合物、スチレン−エチレン−ブチレン(SEB)とスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)との共重合体に基づく化合物、ポリエステルあるいはポリアミドに基づく化合物、上記の重合体と共重合体、重縮合体と共重縮合体との組み合わせによって作られる化合物などを用いることが可能である。
【0038】
粘着付与剤としては、たとえば、ロジン、ロジンエステル、ポリテルペン、C5環式および非環式樹脂、芳香族樹脂、C9樹脂、α−メチルスチレンをベースとするような純粋のモノマー樹脂、上記モノマー相互のコポリマー樹脂および/またはフェノールとのコポリマー樹脂、スチレン化テルペン、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素、芳香族/脂肪族炭化水素、水素化粘着付与剤、および、αメチルスチレンなどを用いることが可能である。
【0039】
接着剤中に粘着付与剤成分として存在する量は、通常、約10wt%〜約45wt%であり、約20wt%〜約50wt%がより好ましく、約20wt%〜約40wt%がさらに好ましい。
【0040】
なお、樹脂層13に用いられる接着剤としては、接着剤成分および粘着付与剤の両方を含む接着剤でもよいし、接着剤成分および粘着付与剤のいずれか一方を含む接着剤でもよい。たとえば、粘着付与剤のみからなる接着剤を用いることもできる。また、樹脂(樹脂材料)と接着剤との混合材では、樹脂(樹脂材料)を接着剤成分として利用することが可能である。この場合、接着剤として粘着付与剤のみを混合することにより、樹脂層13中における接着剤の濃度を低減することができる。これにより、樹脂層13において、接着機能を保持しつつ、接着剤の電解液中への溶出を抑制することが可能となる。このような粘着付与剤としては、たとえば、ロジンなどが好ましい。
【0041】
そして、上記した樹脂(樹脂材料)と接着剤とを混合することによって混合材とし、この混合材から正極集電体11の樹脂層13を構成している。すなわち、正極集電体11の樹脂層13は、樹脂−接着剤混合体から構成されている。また、上記のように、樹脂層13中における接着剤の濃度が低濃度となるように、樹脂(樹脂材料)と接着剤とが混合されているのが好ましい。樹脂層13に含まれる接着剤の具体的な濃度としては、たとえば、樹脂層13(たとえば樹脂層13全体)に対して、0wt%より大きく3wt%未満であるのが好ましい。また、1wt%未満であればさらに好ましい。
【0042】
また、樹脂層13の厚みは、二次電池としてのエネルギー密度向上と強度維持とのバランスを取るべく、5μm以上70μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であればより好ましい。なお、樹脂層13は、一軸延伸、二軸延伸または無延伸などのいずれの方法で製造された樹脂フィルムでもかまわない。また、正極集電体11の樹脂層13は、フィルム状以外に、たとえば、繊維状であってもよい。
【0043】
さらに、樹脂層13の融点は、120℃以上200℃以下であるのが好ましい。
【0044】
正極活物質層12は、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を含んで構成されている。正極活物質としては、たとえば、リチウムを含有した酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoO、LiFeO、LiMnO、LiMn、および、これら酸化物中の遷移金属を一部他の金属元素で置換した化合物などが挙げられる。中でも、通常の使用において、正極が保有するリチウム量の80%以上を電池反応に利用し得るものを正極活物質に用いるのが好ましい。それにより過充電などの事故に対する二次電池の安全性を高めることが可能となる。このような正極活物質としては、たとえば、LiMnのようなスピネル構造を有する化合物、および、LiMPO(Mは、Co、Ni、Mn、Feから選択される少なくとも1種以上の元素)で表されるオリビン構造を有する化合物などが挙げられる。中でも、MnおよびFeの少なくとも一方を含む正極活物質がコストの観点から好ましい。さらに、安全性および充電電圧の観点からは、LiFePOを用いるのが好ましい。LiFePOは、全ての酸素(O)が強固な共有結合によって燐(P)と結合しているため、温度上昇による酸素の放出が起こりにくい。そのため、安全性に優れている。
【0045】
なお、上記正極活物質層12の厚みは、20μm〜2mm程度が好ましく、50μm〜1mm程度がより好ましい。具体的には、正極活物質層12の厚み(片面電極厚み)は、たとえば、約71μmとすることができる。この場合の片面電極塗布量は、たとえば、12mg/cmとすることができる。
【0046】
また、上記正極活物質層12は、正極活物質を少なくとも含んでいれば、その構成は特に制限されるものではない。たとえば、正極活物質層12は、正極活物質以外に、導電材、増粘材、結着材などの他の材料を含んでいてもよい。
【0047】
導電材は、正極10の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、炭素繊維などの炭素質材料または導電性金属酸化物などを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性および塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。
【0048】
増粘材としては、たとえば、ポリエチレングリコール類、セルロース類、ポリアクリルアミド類、ポリN−ビニルアミド類、ポリN−ビニルピロリドン類などを用いることができる。これらの中で、増粘材としては、ポリエチレングリコール類、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース類などが好ましく、CMCが特に好ましい。
【0049】
結着材は、活物質粒子および導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピリジン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー、スチレンブタジエンゴム(SBR)などを用いることができる。
【0050】
正極活物質、導電材、結着材などを分散させる溶剤としては、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。
【0051】
上記した正極10は、たとえば、正極活物質、導電材、増粘材および結着材を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合剤としたものを、正極集電体11の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成される。
【0052】
また、上記正極10は、図6に示すように、平面的に見て、略矩形形状を有している。具体的には、第1実施形態では、上記正極10は、Y方向の幅W1が、たとえば、約140mmとされており、X方向の長さL1が、たとえば、約295mmとされている。また、正極活物質層12の塗布領域(形成領域)は、Y方向の幅W11が、正極10の幅W1と同じ、たとえば、約140mmとされており、X方向の長さL11が、たとえば、約280mmとされている。
【0053】
また、図5〜図7に示すように、上記正極10は、X方向の一端側に、正極活物質層12が形成されずに正極集電体11の表面(金属層14)が露出された集電体露出部11aを有している。この集電体露出部11aには、外部に電流を取り出すための、タブ電極41が電気的に接続されている。なお、タブ電極41は、たとえば、幅約30mm、長さ約70mmの形状に形成されている。タブ電極41の厚みは、たとえば、約100μmである。
【0054】
ここで、上記正極集電体11は、図8に示すように、たとえば、樹脂(樹脂材料)と接着剤との混合材を熱で溶かし、2枚の金属層14で挟み込んだ後、混合材(樹脂層13)を乾燥させることによって形成される。そのため、樹脂層13と金属層14との間には、接着剤層が介在されていない。なお、正極集電体11は、上記以外の方法により形成することも可能である。たとえば、上記混合材を予めシート状(フィルム状)に形成することによって、シート状(フィルム状)の樹脂層13を形成し、このシート状(フィルム状)の樹脂層13を2枚の金属層14で挟み込むことで上記正極集電体11を形成することも可能である。いずれの方法で正極集電体11が形成されている場合も、樹脂層13と金属層14との間には、接着剤層が介在されない構成となる。
【0055】
樹脂(樹脂材料)と接着剤との混合材から構成した樹脂層13は、ある程度の接着機能を有するため、金属層14と接着することで、多層構造を有する正極集電体11が形成される。また、第1実施形態では、上記のように、樹脂層13中の接着剤を低濃度とすることで、高濃度に接着剤成分(粘着付与剤成分)を含む接着剤層を設けない構成とされている。
【0056】
そして、正極集電体11をこのように構成することによって、電解液中への接着剤(接着剤成分)の溶出量が低減される。これにより、金属層14(金属箔)のハガレ等が抑制される。また、接着剤(接着剤成分)が電解液中へ溶出した場合、電解液の劣化等が懸念される。しかしながら、第1実施形態では、上記のように、電解液中への接着剤(接着剤成分)の溶出が抑制されるため、電解液中に接着剤(接着剤成分)が溶出することに起因する電解液の劣化等が抑制される。
【0057】
電極群50を構成する負極20は、図11に示すように、負極集電体21の両面に、負極活物質層22が担持された構成を有している。
【0058】
負極集電体21は、負極活物質層22から集電を行う機能を有している。
【0059】
なお、第1実施形態では、負極集電体21は、上記正極集電体11(図5参照)とは異なり、樹脂層を含まない構成となっている。すなわち、この第1実施形態では、正極集電体11(図5参照)だけが樹脂層を含む多層構造に構成されている。
【0060】
具体的には、負極集電体21は、たとえば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、鉄、ニッケルメッキ層などの金属箔、または、これらの合金からなる合金箔から構成されており、約1μm〜約100μm(たとえば約12μm)の厚みを有している。なお、負極集電体21は、リチウムと合金化しにくいという観点から、銅または銅合金からなる金属箔が好ましく、その厚みは、4μm以上20μm以下であるのが好ましい。
【0061】
また、上記負極集電体21は、箔状以外に、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などの形状であってもよい。
【0062】
負極活物質層22は、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を含んで構成されている。負極活物質としては、たとえば、リチウムを含む物質、あるいは、リチウムの吸蔵・放出が可能な物質からなる。また、高エネルギー密度電池を構成するためには、リチウムの吸蔵/放出する電位が金属リチウムの析出/溶解電位に近いものが好ましい。その典型例としては、粒子状(鱗片状、塊状、繊維状、ウィスカー状、球状、粉砕粒子状など)の天然黒鉛もしくは人造黒鉛が挙げられる。なお、負極活物質として、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末などを黒鉛化して得られる人造黒鉛を使用してもよい。また、非晶質炭素を表面付着させた黒鉛粒子を使用することもできる。さらに、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物、遷移金属酸化物および酸化シリコンなども使用可能である。リチウム遷移金属酸化物としては、たとえば、LiTi12に代表されるチタン酸リチウムを使用すると、負極20の劣化が少なくなるため、電池の長寿命化を図ることが可能となる。
【0063】
なお、上記負極活物質層22の厚みは、20μm〜2mm程度が好ましく、40μm〜1mm程度がより好ましい。具体的には、負極活物質層22の厚み(片面電極厚み)は、たとえば、約45μmとすることができる。この場合の片面電極塗布量は、たとえば、6mg/cmとすることができる。
【0064】
また、上記負極活物質層22は、負極活物質を少なくとも含んでいれば、その構成は特に制限されるものではない。たとえば、負極活物質層22は、負極活物質以外に、導電材、増粘材、結着材などの他の材料を含んでいてもよい。なお、導電材、増粘材、結着材などの他の材料は、正極活物質層12と同じもの(正極活物質層12に用いることが可能なもの)を用いることができる。
【0065】
上記した負極20は、たとえば、負極活物質、導電材、増粘材および結着材を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合剤としたものを、負極集電体21の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成される。
【0066】
また、上記負極20は、図12に示すように、平面的に見て、略矩形形状を有しており、正極10(図6および図7参照)より少し大きく形成されている。具体的には、第1実施形態では、上記負極20は、Y方向の幅W2が、たとえば、約150mmとされており、X方向の長さL2が、たとえば、約300mmとされている。また、負極活物質層22の塗布領域(形成領域)は、Y方向の幅W21が、負極20の幅W2と同じ、たとえば、約150mmとされており、X方向の長さL21が、たとえば、約290mmとされている。
【0067】
また、図11〜図13に示すように、上記負極20は、正極10と同様、X方向の一端に、負極活物質層22が形成されずに負極集電体21の表面が露出された集電体露出部21aを有している。この集電体露出部21aには、外部に電流を取り出すためのタブ電極42が電気的に接続されている。なお、タブ電極42は、上記タブ電極41と同様、たとえば、幅約30mm、長さ約70mmの形状に形成されている。
【0068】
電極群50を構成するセパレータ30(図1および図2参照)は、たとえば、電気絶縁性の合成樹脂繊維、ガラス繊維、天然繊維等の不織布、織布または微多孔質膜などのなかから適宜選択可能である。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル系樹脂、アラミド系樹脂、セルロース系樹脂等の不織布、微多孔質膜が品質の安定性等の点から好ましく、特に、アラミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはセルロース系樹脂からなる不織布、微多孔質膜が好ましい。
【0069】
また、セパレータ30は、正極集電体11の樹脂層13よりも高い融点を有することが好ましい。たとえば、セパレータ30は、正極集電体11の樹脂層13の融点(熱変形温度としてもよい。(ここで、熱変形温度<融点))以下の温度において、その熱収縮率が1.0%以下であるのが好ましい。また、セパレータ30は、アラミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などを含む多孔質フィルムから構成され、180℃での熱収縮率が1.0%以下であるのが好ましい。なお、セパレータ30の熱収縮率の決定方法は、上記樹脂層13の場合と同様の方法を用いることができる。
【0070】
セパレータ30の厚みについては特に限定されるものではないが、必要量の電解液を保持することが可能であって、かつ、正極10と負極20との短絡を防ぐことが可能な厚みであるのが好ましい。具体的には、セパレータ30は、たとえば、0.02mm(20μm)〜0.1mm(100μm)の厚み(より具体的には、たとえば約65μm)とすることができる。なお、セパレータ30の厚みとしては、0.01mm〜1mm程度が好ましく、0.02mm〜0.05mm程度であればより好ましい。また、セパレータ30を構成する材質は、単位面積(1cm)当たりの透気度が0.1秒/cm〜500秒/cm程度であると、低い電池内部抵抗を維持しつつ、電池内部短絡を防ぐだけの強度を確保できるため好ましい。
【0071】
また、上記セパレータ30は、正極活物質層12の塗布領域(形成領域)よりも大きい形状を有している。具体的には、図14に示すように、上記セパレータ30は、矩形形状に形成されており、そのY方向の幅W3がたとえば約110mm、X方向の長さL3がたとえば約150mmに構成されている。
【0072】
上記した正極10および負極20は、図1および図2に示すように、正極10の集電体露出部11aと負極20の集電体露出部21aとが互いに反対側に位置するように配され、正極負極間にセパレータ30を介在させて積層されている。
【0073】
また、第1実施形態では、図9および図10に示すように、上記複数の正極10は、集電体露出部11aが揃うように積層されている。そして、最も外側の正極10(正極集電体11の金属層14)に上記したタブ電極41が溶接固定されている。また、タブ電極41は、最外層ではなく、中間層の正極10に溶接固定されていてもよい。なお、上記タブ電極41は、正極集電体11(正極10)の幅方向(Y方向)の略中央部に溶接固定されている。
【0074】
また、正極集電体11は、絶縁性の樹脂層13の両面に金属層14が形成された構成を有するため、積層された正極10同士の導通がとれなくなる。そのため、たとえば、金属箔(図示せず)などにより(金属箔を正極10間に挟むことにより)、正極10同士(金属層14同士)の導通がとれるように構成するのが好ましい。
【0075】
複数の負極20は、図1および図2に示すように、正極10と同様、集電体露出部21aが揃うように積層されている。そして、最も外側の負極20(負極集電体21)に上記したタブ電極42が溶接固定されている。なお、正極の場合と同様、タブ電極42は、最外層ではなく、中間層の負極20に溶接固定されていてもよい。これにより、積層された全ての負極20が、タブ電極42に溶接固定され、タブ電極42と電気的に接続された状態となっている。なお、上記タブ電極42は、負極集電体21(負極20)の幅方向(Y方向)の略中央部に溶接固定されている。
【0076】
タブ電極41および42の溶接は、超音波溶接が好ましいが、超音波溶接以外であってもよく、たとえば、レーザ溶接や抵抗溶接、スポット溶接などを用いてもよい。ただし、樹脂層13を挟んだ正極集電体11にタブ電極41を溶接する場合、レーザ溶接や抵抗溶接、スポット溶接などの熱を加えて接合する手法では、樹脂層13が熔解してしまうおそれがある。そのため、上記タブ電極41の溶接には、熱を加えない超音波溶接を用いるのが好ましい。
【0077】
また、正極10に接続されるタブ電極41は、アルミニウムから構成されているのが好ましく、負極20に接続されるタブ電極42は、銅から構成されているのが好ましい。タブ電極41および42は、集電体と同材質のものを用いるのが好ましいが、異なる材質であってもよい。さらに、正極10に接続されるタブ電極41と負極20に接続されるタブ電極42とは、同材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。また、タブ電極41および42は、上記のように、正極集電体11および負極集電体21の幅方向の略中央部に溶接されているのが好ましいが、中央部以外の領域に溶接固定されていてもよい。
【0078】
外装容器100内に電極群50とともに封入される非水電解液は、特に限定されるものではないが、溶媒として、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどのエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチルなどの極性溶媒を使用することができる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して混合溶媒として使用してもよい。
【0079】
また、非水電解液には、電解質支持塩が含まれていてもよい。電解質支持塩としては、たとえば、LiClO、LiBF(ホウフッ化リチウム)、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiCFSO(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiF(フッ化リチウム)、LiCl(塩化リチウム)、LiBr(臭化リチウム)、LiI(ヨウ化リチウム)、LiAlCl(四塩化アルミン酸リチウム)などのリチウム塩が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0080】
なお、電解質支持塩の濃度は、特に限定されるものではないが、0.5mol/L〜2.5mol/Lが好ましく、1.0mol/L〜2.2mol/Lがより好ましい。電解質支持塩の濃度が、0.5mol/L未満の場合には、非水電解液中において電荷を運ぶキャリア濃度が低くなり、非水電解液の抵抗が高くなるおそれがある。また、電解質支持塩の濃度が、2.5mol/Lより高い場合には、塩自体の解離度が低くなり、非水電解液中のキャリア濃度が上がらないおそれがある。
【0081】
電極群50を封入する外装容器100は、図1および図3に示すように、大型の扁平角形容器であり、電極群50などを収納する外装缶60と、この外装缶60を封口する封口板70とを含んで構成されている。また、電極群50を収納した外装缶60には、たとえば、レーザ溶接によって、封口板70が取り付けられている。
【0082】
外装缶60は、たとえば、金属板に深絞り加工などを施すことによって形成されており、底面部61と側壁部62とを有する略箱状に形成されている。また、図1に示すように、外装缶60の一端(底面部61の反対側)には、電極群50を挿入するための開口部63が設けられている。また、外装缶60は、電極群50が、その電極面が底面部61と対向するようにして収納することが可能な大きさに形成されている。
【0083】
また、図1および図3に示すように、上記外装缶60は、X方向の一方側(短辺側)の側壁部62に、電極端子64(たとえば、正極端子)が形成されており、X方向の他方側(短辺側)の側壁部62に、電極端子64(たとえば、負極端子)が形成されている。また、外装缶60の側壁部62には、非水電解液を注液するための注液孔65が形成されている。この注液孔65は、たとえば、φ2mmの大きさに形成されている。また、注液孔65の近傍には、電池内圧を開放するための安全弁66が形成されている。
【0084】
さらに、外装缶60の開口部63の周縁には、折り曲げ部67が設けられており、この折り曲げ部67に、封口板70が溶接固定されている。
【0085】
外装缶60および封口板70は、たとえば、鉄、ステンレススチール、アルミニウムなどの金属板や鉄にニッケルメッキを施した鋼板などを用いて形成することができる。鉄は安価な材料であるため価格の観点では好ましいが、長期間の信頼性を確保するためには、ステンレススチール、アルミニウムなどからなる金属板または鉄にニッケルメッキを施した鋼板などを用いるのがより好ましい。金属板の厚みは、たとえば約0.4mm〜約1.2mm(たとえば約1.0mm)とすることができる。
【0086】
また、上記した電極群50は、正極10および負極20が、外装缶60の底面部61と対向するようにして、外装缶60内に収納されている。収納された電極群50は、正極10の集電体露出部11aおよび負極20の集電体露出部21aが、それぞれ、タブ電極41および42を介して、外装缶60の電極端子64と電気的に接続されている。
【0087】
また、非水電解液は、外装缶60の開口部63が封口板70で封口された後に、注液孔65から、たとえば、減圧注液されている。そして、注液孔65とほぼ同じ直径の金属球(図示せず)や、注液孔65より少し大きい金属板(図示せず)を注液孔65に設置した後、抵抗溶接やレーザ溶接などにより、注液孔65が封口されている。
【0088】
第1実施形態では、上記のように、正極集電体11の樹脂層13を、樹脂(樹脂材料)と接着剤との混合材から構成することによって、樹脂層13に接着機能を持たせることができる。そのため、高濃度の接着剤(接着剤成分、粘着付与剤)を含む接着剤層を介さずに、樹脂層13を金属層14で挟む(樹脂層13に金属層14を貼り付ける)ことができる。そして、このように構成することにより、樹脂層13中の接着剤が電解液中に溶け出すのを抑制することができる。すなわち、耐電解液性を向上させることができる。これにより、金属層14が樹脂層13から剥離するのを抑制することができる。したがって、このような集電体(正極集電体11)を用いてリチウムイオン二次電池を作製することにより、電池の信頼性を向上させることができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、正極集電体11を、樹脂層13を含む多層構造に構成することによって、たとえば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、正極集電体11の樹脂層13が溶融して電極(正極10)が破損されるので、電流をカットすることができる。これにより、電池内部の温度上昇を抑制することができるので、たとえば、発火などの異常状態が生じるのを防止することができる。
【0090】
また、第1実施形態では、樹脂層13に含まれる接着剤を、樹脂層13(樹脂層13全体)に対して0wt%より大きく3wt%未満とすることによって、樹脂層13中の接着剤が電解液中に溶け出すのを効果的に抑制することができる。すなわち、樹脂層13に含まれる接着剤を低濃度とすることによって、容易に、接着機能を保持しながら、電解液中への接着剤の溶出量を低減することができる。このため、正極集電体11における金属層14の剥離等を効果的に抑制することができるので、電池の信頼性を効果的に向上させることができる。
【0091】
なお、上記第1実施形態において、樹脂層13を構成する接着剤を粘着付与剤のみから構成すれば、樹脂層13中の接着剤濃度を容易に低減することができるので、接着機能を保持しつつ、より効果的に、樹脂層13中の接着剤が電解液中に溶け出すのを抑制することができる。
【0092】
また、樹脂層13を、その融点が120℃以上200℃以下となるように構成すれば、たとえば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、集電体の樹脂層13を溶融させ易くすることができる。このため、電極(正極10)を破損され易くすることができるので、安全性をより向上させることができる。
【0093】
また、第1実施形態では、正極集電体11の樹脂層13を、熱可塑性樹脂から構成し、120℃での熱収縮率が、平面方向のいずれかの方向で1.5%以上となるようにすることで、たとえば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、電極が破損され易くすることができる。これにより、効果的に、発火などの異常状態が生じるのを防止することができるので、リチウムイオン二次電池の安全性を効果的に向上させることができる。
【0094】
また、第1実施形態では、セパレータ30を、樹脂層13の融点(熱変形温度としてもよい(熱変形温度<融点))以下の温度において、その熱収縮率が1.0%以下となるように構成することによって、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、容易に、電極(正極10)が破損され易くすることができる。すなわち、セパレータ30の融点(熱変形温度)を、樹脂層13の融点(熱変形温度)より高くすることによって、セパレータ30のシャットダウン機能が作動する前に、正極集電体11を構成する樹脂層13を溶断させることができる。これにより、樹脂層13およびセパレータ30による電流遮断効果により、2段階で電流遮断が可能となるので、リチウムイオン二次電池の安全性をより向上させることができる。
【0095】
なお、上記セパレータ30の180℃での熱収縮率を、1.0%以下とすれば、過充電状態や高温状態等で異常発熱が発生した場合に、セパレータ30の熱収縮に起因する内部短絡(電極端部にて生じる電池の内部短絡)の発生を抑制することができるので、急激な温度上昇が生じるのを抑制することができる。その結果、リチウムイオン二次電池の安全性をさらに向上させることができる。さらに、このように構成すれば、180℃の温度でも、セパレータ30の溶融・流動化を抑制することもできるので、溶融・流動化に起因してセパレータ30の孔が大きくなるという不都合が生じるのを抑制することができる。このため、電池内部が180℃に達した際に、何らかの理由で電極(正極10)の破損が起こらなかった場合でも、セパレータ30の孔が大きくなることに起因して、正負極の短絡箇所が広がるという不都合が生じるのを抑制することもできる。
【0096】
(第2実施形態)
図15は、本発明の第2実施形態によるリチウムイオン二次電池の正極集電体の一部を拡大して示した模式的断面図である。次に、図15を参照して、本発明の第2実施形態によるリチウムイオン二次電池について説明する。なお、図15において、対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明は適宜省略する。
【0097】
この第2実施形態では、図15に示すように、正極集電体11の樹脂層13(113)が、樹脂(樹脂材料)構成されている。すなわち、第2実施形態では、樹脂層13(113)が接着剤を含まない構成とされている。換言すると、上記第1実施形態の構成(正極集電体の構成)において、樹脂層13に含まれる接着剤の濃度が0wt%とされている。
【0098】
なお、樹脂(樹脂材料)は、ある程度の接着機能を有しているため、このように構成した場合でも、樹脂層13(113)に接着機能を持たせることができる。そして、金属層14(金属箔)を、接着剤層(図示せず)を介することなく樹脂層13(113)に直接貼り付けることによって、接着剤を含まない多層構造の正極集電体11とされている。
【0099】
また、第2実施形態による正極集電体11は、たとえば、シート状(フィルム状)の樹脂層13(113)を2枚の金属層14(金属箔)で挟み込み、熱プレス等で圧接することで形成される。
【0100】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0101】
第2実施形態による正極集電体11では、上記のように、樹脂層13(113)を樹脂材料から構成することによって、電解液中に溶け出す接着剤を有しないため、接着剤が電解液中に溶け出すことに起因する金属箔の剥離を防止することができる。
【0102】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0103】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0104】
この実施例1では、上記第1実施形態の構成(正極集電体の構成)において、金属層にアルミニウム箔(厚み約6.5μm)、樹脂層に樹脂と接着剤の混合材〔樹脂:PE(ポリエチレン)、粘着付与剤:ロジン(含有量<1wt%)〕を用いた。そして、アルミニウム箔を樹脂と接着剤との混合材で張り合わせた後、乾燥することでアルミニウム箔層/樹脂層/アルミニウム箔層の構造を有する集電体を作製した。樹脂層の厚みは25μmとした。
【実施例2】
【0105】
実施例2では、上記第2実施形態の構成(正極集電体の構成)において、金属層にアルミニウム箔(厚み約6.5μm)、樹脂層にPEフィルム(厚み約30μm、軟化点120℃)を用いた。そして、熱融着によりアルミニウム箔層/樹脂フィルム層/アルミニウム箔層の構造を有する集電体を作製した。
【0106】
<比較例1>
比較例1では、金属層にアルミニウム箔(厚み約6.5μm)、樹脂層にPEフィルム(厚み約30μm、軟化点120℃)と接着剤にEVA系接着材を用いた。そして、アルミニウム箔層/接着剤層/樹脂フィルム層/接着剤層/アルミニウム箔層の構造を有する集電体を作製した。樹脂層の厚みは35μmとした。
【0107】
<比較例2>
比較例2では、金属層にアルミニウム箔(厚み約6.5μm)、樹脂層に樹脂と接着剤の混合材〔樹脂:PE、粘着材付与剤:ロジン(含有量:3wt%)〕を用いた。そして、アルミニウム箔を樹脂接着剤で張り合わせた後、乾燥することでアルミニウム箔層/樹脂層/アルミニウム箔層の構造を有する集電体を作製した。樹脂層の厚みは25μmとした。
【0108】
<比較例3>
比較例3では、上記実施例1、2および比較例1、2とは異なり、集電体を多層構造とはせずに、単層の金属層とした。具体的には、この比較例3では、アルミニウム箔(厚み約20μm)を集電体とした。
【0109】
上記した実施例1、2および比較例1〜3の集電体を縦5cm×横5cmに切り出した。そして、これらを、電解液(1M LiPF 1%VC EC−DEC溶液)に60℃環境下で1週間浸すことによって、耐電解液性を評価した。その結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
なお、表1において、液の着色は目視にて確認できた場合を「×(有)」、目視にて確認できなかった場合を「○(無)」とした。また、箔のハガレについては、確認の際には集電体を電解液より取り出し、EC−DEC溶液にて洗った後に乾燥させた。その後、目視にて一部でもハガレが確認されれば「×(有)」、確認されなければ「○(無)」とした。
【0112】
上記表1より、樹脂層中に接着剤層を設けた比較例1では、接着剤中に含まれる成分が溶出しやすく、箔のハガレが生じた。比較例1では、液の着色があり、このことから、接着剤中に含まれる成分が電解液中に溶出していることが確認された。また、樹脂層が樹脂接着剤(樹脂と接着剤との混合体)の場合でも、接着剤の濃度が3%以上である比較例2では、箔のハガレが確認された。これは、粘着付与剤にロジンを用いた場合に、接着剤(粘着付与剤)の電解液中への溶出が顕著に現れたためであると考えられる。
【0113】
一方、樹脂層中の接着剤(粘着付与剤)の濃度が低濃度の場合または接着剤を含まない場合は、このような現象は確認できなかった。具体的には、樹脂層中に接着剤(粘着付与剤)を1%未満で含む実施例1では、液の着色がないことから、接着剤の電解液中への溶出が抑制されていることが確認された。また、箔のハガレについても確認されなかった。樹脂層中に接着剤を含まない実施例2についても、液の着色がなく、箔のハガレも確認されなかった。
【0114】
以上より、樹脂層に樹脂と接着剤との混合材を用いた集電体(実施例1)では、アルミニウム箔を剥れにくくする効果があることが確認された。また、樹脂層に接着剤を含まない樹脂材料を用いた集電体(実施例2)でも、アルミニウム箔を剥れにくくする効果があることが確認された。これより、実施例1および2の集電体では、耐電解液性が優れていることが明らかとなった。
【0115】
ただし、粘着付与剤としてロジンを用いる場合、その濃度が高いと粘着付与剤が電解液中に溶出し易くなる。そのため、この場合には、粘着付与剤(ロジン)の濃度を低濃度とするのが好ましい。具体的には、粘着付与剤(ロジン)の濃度を3wt%未満とするのがより好ましく、1wt%未満とすればさらに好ましい。また、実施例1および実施例2ではいずれも耐電解液性が優れる結果が得られた。しかしながら、実施例1では樹脂層に接着剤を含むため、樹脂層に接着剤を含まない実施例2に比べて機械的強度(接着力等)が高くなる。そのため、製造工程での取扱い易さ等が向上する。したがって、このような観点をも考慮すると実施例1の方が優れている。
【0116】
なお、上記実施例1および比較例2では、粘着付与剤としてロジンを用いたが、ロジン以外の材料を接着剤(接着剤成分、粘着付与剤)として用いた場合や、接着剤と電解液との他の組み合わせ等により、樹脂層中に含まれる接着剤の濃度を3wt%以上とした場合でも箔のハガレを抑制することができる。
【0117】
続いて、上記した実施例1、2および比較例1〜3と同様の集電体を用いて、それぞれ、リチウムイオン二次電池を作製し、釘刺し試験を行った。なお、実施例1、2および比較例1〜3と同様の正極集電体を用いた電池を、それぞれ、実施例3、4および比較例4〜6とした。以下に、リチウムイオン二次電池の作製方法を示す。
【0118】
<実施例3、4、および、比較例4〜6>
正極活物質にリン酸鉄リチウム、導電材にアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製:デンカブラック)、結着材にPVDF(株式会社クレハ製)を用い、これらを100:6:7の重量比でNMP溶液に分散させたものを実施例1、2および比較例1〜3の集電体両面に塗工・乾燥することで作製した。塗布量は12mg/cm、密度は1.9g/cmであった。
【0119】
負極は、活物質に天然黒鉛、導電材に人造黒鉛、結着材にSBR(ゼオン株式会社製:BM400B)、増粘剤にCMC(ダイセル化学工業株式会社製:#2200)を用い、これらを88:10:1:1の重量比で水分散させたものを銅箔(厚み約10μm)両面に塗工・乾燥させることで作製した。塗布量は6mg/cm、密度は1.5g/cmであった。
【0120】
そして、正極を280mm×140mm、負極を290mm×150mmの大きさに加工した。次に、アラミド系セパレータ(融点>200℃)を用い、これらを負極/セパレータ/正極/・・の順で負極13層/正極12層となるよう積層させ、ラミネートにて封止した。その後、電解液(1M LiPF 1%VC EC−DEC溶液)を注液し、15Ah級の電池とした。それぞれの正極集電体を用いた電池を、それぞれ実施例3、4、比較例4、5、6とした。
【0121】
実施例3〜4および比較例4〜6に記載の電池について、CC/CV充電(1.5A、cut電圧3.6V、cut電流0.15A)にて満充電とした後、釘刺し試験を行った。釘刺し試験は、それぞれのセル(電池)で5回ずつ行い、「発煙・発火あり」、「発煙あり(発火なし)」、「発煙・発火なし」の3水準で評価した。結果を表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
上記表2より、実施例3および実施例4では、従来構造(比較例4)と同様の電池安全性が確認された。この結果より、本実施例(実施形態)で示した集電体は、従来と同様の電池安全性の向上が得られることが確認された。
【0124】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0125】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、非水系二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、リチウムイオン二次電池以外の非水系二次電池に本発明を適用してもよい。また、今後開発される非水系二次電池に本発明を適用することもできる。
【0126】
また、上記第1および第2実施形態において、集電体の樹脂層(絶縁層)は、シート状(フィルム状)、繊維状等、いずれの形状であってもよい。繊維状の樹脂層としては、たとえば、織布または不織布などからなる層が挙げられる。
【0127】
また、上記第1および第2実施形態では、正極集電体の金属層に金属箔を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、金属箔以外の金属層を正極集電体の金属層とすることもできる。たとえば、蒸着、スパッタリング、電解めっき、無電解めっき、および、これらの方法の組み合わせ等からなる方法により形成される金属層を、正極集電体の金属層とすることもできる。
【0128】
なお、上記した本実施形態の構造では、従来構造とは異なり高濃度に接着剤成分が存在する場所がないため、濃度差により起こる電解液中への接着剤成分の溶出が抑制される。さらに、従来構造では絶縁層(樹脂層)と集電体との結着に接着剤成分のみが寄与しているが、本構造では接着剤成分および絶縁層成分(樹脂)が寄与しているため、接着剤成分の溶出による結着力の低下が少ない。よって、集電体の剥離が抑制され、結果、剥離面からの接着剤成分の溶出が抑制される。
【0129】
また、上記第1および第2実施形態では、電極群を収容する外装容器に扁平角形容器を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、外装容器の形状は、扁平角形以外であってもよい。たとえば、上記外装容器は、薄い扁平筒型、円筒型、角筒型等であってもよい。ただし、大型のリチウムイオン二次電池の場合、組電池として使用することが多いため薄い扁平型または角型であるのが好ましい。さらに、上記外装容器は、金属製の缶以外に、たとえば、ラミネートシートなどを用いた外装容器であってもよい。
【0130】
さらに、上記第1および第2実施形態では、積層型の二次電池に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、積層型以外の、たとえば、巻回型の二次電池に本発明を適用してもよい。
【0131】
また、上記第1および第2実施形態では、正極(正極活物質層)よりも負極(負極活物質層)の方が大きくなるように構成した例を示したが、負極(負極活物質層)と正極(正極活物質層)とが同じ大きさになるように構成されていてもよい。ただし、正極(正極活物質層)よりも負極(負極活物質層)の方が大きくなるように構成されているのが好ましい。このように構成されていれば、正極活物質層の形成領域(正極活物質領域)が、面積の大きい負極活物質層の形成領域(負極活物質領域)で覆われることにより、積層ずれの許容範囲を広げることもできる。
【0132】
また、上記第1および第2実施形態において、外装容器の形状だけでなく、大きさや構造等についても種々変更することができる。また、電極(正極、負極)の形状、寸法、使用枚数なども、適宜変更することができる。さらに、セパレータの形状、寸法などについても、適宜変更することができる。セパレータの形状としては、たとえば、正方形または長方形等の矩形、多角形、円形等種々の形状が挙げられる。
【0133】
また、上記第1および第2実施形態では、集電体の両面に活物質層を形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、集電体の片面にのみ活物質層を形成してもよい。また、集電体の片面にのみ活物質層を形成した電極(正極、負極)を電極群の一部に含むように構成してもよい。
【0134】
また、上記第1および第2実施形態では、リチウムイオン二次電池の電解質として非水電解液を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、非水電解液以外のたとえばゲル状電解質、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩などを電解質として用いてもよい。
【0135】
また、上記第1および第2実施形態では、正極側の集電体(正極集電体)を、樹脂層(絶縁層)を含む多層構造に構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、負極側の集電体を、樹脂層および導電層(金属層)を含む多層構造に構成してもよい。たとえば、正極および負極の両方を、多層構造を有する集電体を用いて形成してもよいし、正極および負極の一方を、多層構造を有する集電体を用いて形成してもよい。なお、正極および負極の一方を、多層構造を有する集電体を用いて形成する場合、正極側を、多層構造を有する集電体を用いて形成するのが好ましい。
【0136】
また、負極側の集電体を、多層構造に構成する場合、導電層(金属層)は、銅または銅合金から構成されているのが好ましい。具体的には、導電層(金属層)として、たとえば、約6μm〜約15μmの厚みを有する銅箔または銅合金箔を用いることができる。なお、負極集電体の導電層(金属層)は、銅または銅合金以外であってもよく、たとえば、ニッケル、ステンレス鋼、鉄、または、これらの合金などから構成されていてもよい。また、負極集電体の樹脂層は、たとえば、正極集電体の樹脂層と同様の構成とすることができる。
【0137】
また、上記第1実施形態において、集電体の樹脂層に含まれる接着剤は低濃度であるのが好ましい。たとえば、MSDS(Material Safety Data Sheet)に記載不要な程度に低濃度であればより好ましい。樹脂層に含まれる接着剤の具体的な濃度としては、たとえば、3wt%未満であるのが好ましく、1wt%未満であればさらに好ましい。このように構成すれば、樹脂層に接着機能を持たせつつ、接着剤の電解液中への溶出を効果的に抑制することができる。また、上記実施例では、接着剤の一例としてロジン(粘着付与剤)を用いたが、ロジン以外の接着剤(粘着付与剤、接着剤成分)を用いることにより、3wt%以上の接着剤濃度でも接着剤の電解液中への溶出を抑制することができる。
【0138】
なお、上記で開示された技術を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0139】
5 電極
10 正極(電極)
11 正極集電体
11a 集電体露出部
12 正極活物質層
13、113 樹脂層(絶縁層)
14 金属層(導電層)
20 負極(電極)
21 負極集電体
21a 集電体露出部
22 負極活物質層
30 セパレータ
41、42 タブ電極
50 電極群
60 外装缶
61 底面部
62 側壁部
63 開口部
64 電極端子
65 注液孔
66 安全弁
67 折り曲げ部
70 封口板
100 外装容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を導電層で挟んだ多層構造を有する集電体であって、
前記絶縁層が樹脂材料と接着剤との混合材から構成されていることを特徴とする、集電体。
【請求項2】
前記絶縁層に含まれる前記接着剤が、前記絶縁層に対して0wt%より大きく3wt%より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の集電体。
【請求項3】
前記絶縁層に含まれる前記接着剤は粘着付与剤を有し、
前記粘着付与剤がロジンからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の集電体。
【請求項4】
前記接着剤は、粘着付与剤のみからなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の集電体。
【請求項5】
前記導電層は、前記絶縁層と直接接触していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の集電体。
【請求項6】
前記導電層が金属箔からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の集電体。
【請求項7】
絶縁層を金属箔で挟んだ多層構造を有する集電体であって、
前記絶縁層が樹脂材料からなり、
前記金属箔が前記絶縁層と直接接触していることを特徴とする、集電体。
【請求項8】
前記絶縁層の融点が120℃以上200℃以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の集電体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の集電体と、前記集電体上に形成された活物質層とを含む電極を備えたことを特徴とする、非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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