説明

雌端子金具

【課題】 強度低下並びに生産性の低下を招くことなく雌端子金具の小型化を実現する。
【解決手段】 雌端子金具20には、相手の雄端子金具10のタブ14が前面から挿入されて接続される箱形をなす接続部22が備えられる。接続部22の左右の側板25の内面には、タブ14の幅方向の両側縁と対向する高さ位置に、長さ方向に沿って凹部30が、叩いて圧壊することで形成される。凹部30を設けたことにより、接続部22の幅Wを小さくしながらもタブ14の両側縁の外側に、大きなクリアランスCが確保できる。接続部22の側面の一部のみに凹部30を設けたのであるから、接続部22全体の強度低下は最小限に留められる。大きなクリアランスCが確保されることで、両端子金具10,20の製造精度が必要以上に求められない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
雌端子金具は一般に、箱形に組み付けられた接続部を有して、電線の端末に固着されるようになっており、相手の雄端子金具のタブが前方から接続部内に挿入されると、内部に設けられた弾性接触片と弾性的に接触し合って電気的な接続が取られるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、端子金具の小型化は漸次要求されるところであるが、対をなす雄雌の端子金具のうちで、雄端子金具側の接続部であるタブについては、電気接続における信頼性等を考慮して一定以上小さく、すなわち幅狭にできない。そこで勢い、雌端子金具側において、例えばタブが挿入される接続部について小型化(幅狭化)が図られることになる。
【特許文献1】特開平5−182712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのためには例えば、素材の板厚を薄くすることが考えられるが、強度低下が懸念される。またこの種の端子金具では、雌端子金具の接続部における両側面とタブの両側縁との間に、確実な挿入を保証するべくクリアランスが設定されることに対して、そのクリアランスを小さくすることも試みられたが、そうすると両端子金具について高い製造精度が要求され、生産性が低下するという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、強度低下並びに生産性の低下を招くことなく雌端子金具の小型化を実現するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、相手の雄端子金具のタブが前面から挿入されて接続される略箱形をなす接続部が備えられた雌端子金具であって、前記接続部における前記タブの幅方向の端縁と対向した側面に凹部が設けられている構成としたところに特徴を有する。
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記凹部が打圧加工によって形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0005】
<請求項1の発明>
接続部の側面に凹部を設けたことによって、接続部の幅を小さくしながらもタブの側縁の外側に、大きなクリアランスが確保できる。接続部の側面の一部のみに凹部を設けたのであるから、接続部全体の強度低下は最小限に留められる。また、タブと接続部の側面との間に大きなクリアランスが確保されることで、両端子金具の製造精度が必要以上に求められず、もって生産性の低下を招くおそれもない。
すなわち、強度低下並びに生産性の低下を招くことなく雌端子金具の小型化を実現することができる。
<請求項2の発明>
凹部は打圧加工により形成されているから、当該雌端子金具を製造するべく一連のプレス成形工程の途中で形成が可能であり、生産性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態を図1ないし図8に基づいて説明する。
この実施形態では、雄雌一対の端子金具10,20を備えている。まず、相手端子である雄端子金具10を説明する。雄端子金具10は、導電性に優れた金属板をプレス加工することによって形成され、図1及び図2に示すように、本体部11の後方に、電線40の端末に圧着されるバレル12が設けられとともに、前方に、接続部となる一定長さのタブ14が形成されている。
このタブ14は、図2に詳細に示すように、基板15の左右両側縁が上面側に半幅ずつ折り重ねられることで、二重板構造をなし、かつ一定の幅Aを持って形成されている。タブ14の先端は、ガイド用に先細りとされている。
【0007】
雌端子金具20は、同じく導電性に優れた金属板をプレス加工することによって形成され、図3ないし図5に示す形状に形成されている。大まかには、電線40の端末に圧着されるバレル21の前方に、上記した相手の雄端子金具10のタブ14が前方から挿入される接続部22が設けられている。
この接続部22は、天板23、底板24及び左右の側板25を組み付けることによって、前後両面が開口された前後方向に細長い箱形に形成されており、雄端子金具10のタブ14よりも若干大きい長さ寸法と、詳しくは後記するようにタブ14の幅Aよりも所定寸法大きい幅寸法を有している。
【0008】
天板23の前縁から延出された延出片が、後方に向けて山形に折り返されることで弾性接触片27が形成されている。一方、底板24には、長さ方向を向いた図示2条の突条28が内方に叩き出されて形成されている。したがって、図7及び図8(A)に参照して示すように、雄端子金具10のタブ14が雌端子金具20の接続部22内に前方の開口から挿入されると、弾性接触片27を弾性変形させつつ突条28との間に割って入り、所定量挿入されると、弾性接触片27の復元弾力により、タブ14が弾性接触片27の頂上部27Aと突条28との間で弾性的に挟持されるようになっている。
【0009】
さて、雌端子金具20の接続部22における左右の側板25の内面には、長さ方向に沿って逃がし用の凹部30が形成されている。この凹部30は詳細には、図4及び図8(A)に示すように、左右の側板25における挿入されたタブ14の幅方向の両側縁と対向する高さ位置で、かつ接続部22の入口からタブ14の長さ寸法にほぼ匹敵する長さ領域にわたって、この側板25の内面を叩いて圧壊することによって形成されている。凹部30の入口側は開口している。
【0010】
上記した凹部30の幅寸法(高さ寸法)は、タブ14の厚さより若干大きい程度あり、また図5に示すように、凹部30の深さHは、側板25の板厚Tの40%程度である。例えば、深さH/板厚T=0.1/0.25(mm)である。
上記構造により、図8(A)に参照して示すように、接続部22内に挿入されたタブ14の両側縁の外側に、所定のクリアランスCが設けられる。なお、凹部30の上下と奥の側面は、テーパ面31とされている。
【0011】
本実施形態は上記のような構造であって、雄端子金具10と雌端子金具20とはともに、電線40の端末にゴム栓41ともども圧着により固着される。そして、図6に示すように、雄端子金具10は、フード部51付きの雄ハウジング50のキャビティ52に挿入され、タブ14をフード部51内に突出させた状態で収容される。一方の雌端子金具20は、雌ハウジング60のキャビティ61内に収容される。
【0012】
雄雌のハウジング50,60が嵌合され、図6の状態からさらに嵌合が進むと、雌端子金具20の接続部22内に、対応する雄端子金具10のタブ14が前方の開口から進入して、弾性接触片27を弾性変形させつつ突条28との間に割って入り、図7に示すように、両ハウジング50,60が正規に嵌合されると、ロックが掛かるとともに、図8(A)に示すように、弾性接触片27の復元弾力により、タブ14が弾性接触片27の頂上部27Aと突条28との間で弾性的に挟持され、これによりタブ14と接続部22との間、ひいては対応する雄雌の端子金具10,20の間で電気的接続が取られる。
この間、タブ14の両側縁と接続部22の側板25との間にはクリアランスCが確保されているから、タブ14は接続部22内にスムーズにかつ確実に挿入される。
【0013】
本実施形態の雌端子金具20では、タブ14の両側縁の外側にクリアランスCを確保するに当たって、図8(A)に示すように、接続部22における左右の側板25の内面に凹部30を形成したことにより、以下のような利点を得ることができる。
同図(B)に示す比較例のように、同じ板厚の素材で形成された接続部1の側板2の内面がフラットであると、同じ幅Aのタブ3が挿入されるときにその両側に同じクリアランスCを確保した場合には、接続部1の幅(側板2の外面間の幅)は、寸法wとなる。
【0014】
これに対して本実施形態では、上記のように凹部30を形成したことで、同じクリアランスCを確保するにしても、接続部22の幅W(側板25の外面間の幅)は、比較例の接続部1の幅wから凹部30の深さHの2倍を減じた小さい寸法で済む。
W=w−(深さH*2)
すなわち、タブ14の両側縁の外側に所定の大きなクリアランスCを確保しながらも、接続部22の幅Wを小さくすることができ。
【0015】
しかも、凹部30を設ける位置は、接続部22の側板25におけるタブ14の左右の側縁と対向した位置に限られているから、接続部22全体の強度低下は最小限に留められる。また、タブ14と接続部22の側板25との間に大きなクリアランスCが確保されることで、両端子金具10,20の製造精度が必要以上に求められず、もって生産性の低下を招くおそれもない。
結果、強度低下並びに生産性の低下を招くことなく雌端子金具20の小型化を実現することができる。
また本実施形態では、凹部30は打圧加工により形成されているから、当該雌端子金具20を製造するべく一連のプレス成形工程の途中で形成が可能であり、生産性にも優れる。
【0016】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)凹部の深さは、側板の板厚にもよるが、板厚の半分程度の深さまでは許容される。
(2)凹部は、左右いずれか一方の側板に形成するだけでもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(3)本発明は、上記実施形態に例示した防水コネクタに限らず、非防水コネクタに使用される雌端子金具にも適用可能である。
(4)また、相手の雄端子金具が、機器直結型のコネクタに装備された雄端子金具であってもよく、要は本発明は、相手の雄端子金具のタブが前面から挿入されて接続される略箱形をなす接続部が備えられた雌端子金具全般に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る相手の雄端子金具の斜視図
【図2】タブの横断面図
【図3】雌端子金具の斜視図
【図4】その一部切欠側面図
【図5】接続部の正面図
【図6】雄雌のハウジングの嵌合初期の状態を示す縦断面図
【図7】その嵌合完了状態を示す縦断面図
【図8】(A)本実施形態に係る雄雌の端子金具の嵌合部分の一部切欠正面図、(B)比較例に係る同一部切欠正面図
【符号の説明】
【0018】
10…雄端子金具
14…タブ
20…雌端子金具
22…接続部
25…側板
27…弾性接触片
30…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手の雄端子金具のタブが前面から挿入されて接続される略箱形をなす接続部が備えられた雌端子金具であって、
前記接続部における前記タブの幅方向の端縁と対向した側面に凹部が設けられていることを特徴とする雌端子金具。
【請求項2】
前記凹部が打圧加工によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の雌端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−24434(P2006−24434A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201049(P2004−201049)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)