説明

雑草抑制方法

【課題】条件の悪い既存の法面であってもセンチピートグラスによる吹き付け施行による緑化を成功させて、雑草を抑制することが可能な雑草抑制方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る雑草抑制方法は、雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子の吹き付け施工を行い、前記雑草生育地をセンチピードグラスにより緑化することで、雑草の発生を抑制する雑草抑制方法において、春の時期に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する春の除草剤散布工程と、春から秋にかけての時期に、雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子を吹き付ける吹き付け施工工程と、前記吹き付け施工工程の直前に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する直前の除草剤散布工程と、前記吹き付け施工工程の前又は直後に、前記雑草生育地の地面を露出させる地面露出工程と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草作業に大変な労力を要する水田畦畔の法面などの雑草生育地に対して、センチピードグラスを吹き付け施工して緑化することで雑草の発生を抑制する雑草抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農村整備事業における耕地整理は、農地の集積・規模拡大に大きな役割を果たしてきた。一方、中山間地においては大きな畦畔を生じることとなり、高齢化の進む農村にとってその除草作業は大変な重荷となっている。この畦畔の管理が出来ないことが、耕作放棄地を増大させる原因となろうとしているのが現実である。そこで、近年、センチピードグラスによる法面緑化によって、雑草の発生を抑制し、除草作業の軽減化を図ることが行われている。
【0003】
また、一方、以下の特許文献1に次の技術が記載されている。雑草抑制のため、ソバやコンフリーなどを混在させて植栽した後、センチピードグラスの種子を客土とともに吹き付けし、法面の緑化をする雑草抑制方法である。これは、センチピードグラス単独での吹き付け施工による法面緑化が難しかったために、このような複雑で効率の悪い方法が取られたと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−198606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の法面へのセンチピードグラスの吹き付け施工は、新規に造成された法面においては有効な手法であったが、すでに雑草が生い茂った既存の法面においては、成功例が少なかった。既存の法面において、吹き付け施工による緑化が成功しないのは、(1)雑草との競合、(2)発芽率の低さ、(3)アリによる食害、に主な原因があると考えられる。
【0006】
そのため既存の法面においては、現在、苗の移植・定植による手法が広く採用されている。しかしこの手法だと大変な労力・人力・時間を必要とするため普及が進んでいないのが実情である。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、条件の悪い既存の法面であってもセンチピートグラスによる吹き付け施行による緑化を成功させて、雑草を抑制することが可能な雑草抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る雑草抑制方法は、雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子の吹き付け施工を行い、前記雑草生育地をセンチピードグラスにより緑化することで、雑草の発生を抑制する雑草抑制方法において、春の時期に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する春の除草剤散布工程と、春から秋にかけての時期に、雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子を吹き付ける吹き付け施工工程と、前記吹き付け施工工程の直前に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する直前の除草剤散布工程と、前記吹き付け施工工程の前又は直後に、前記雑草生育地の地面を露出させる地面露出工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る雑草抑制方法は、雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子の吹き付け施工を行い、前記雑草生育地をセンチピードグラスにより緑化することで、雑草の発生を抑制する雑草抑制方法において、春の時期に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する春の除草剤散布工程と、前記春の除草剤散布工程により枯れた雑草を焼却する焼却工程と、前記焼却工程の直後に、前記雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子を吹き付ける吹き付け施工工程と、前記吹き付け施工工程の前年の秋から冬にかけての時期に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する秋冬の除草剤散布工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既に雑草の生い茂った既存の法面に対しても、センチピードグラスの吹き付け施工による緑化を成功させて、雑草の発生を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1実施形態に係る吹き付け施工による雑草抑制方法の作業工程図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る鎮圧機器を示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る鎮圧機器を示す図である。
【図4】図4は、第2実施形態に係る雑草抑制方法の実施例を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る雑草抑制方法の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る雑草抑制方法の作業工程を図1に示す。また、本実施形態に係る鎮圧機器の構成を図2及び図3に示す。本実施形態では、除草剤散布・吹き付け施工・鎮圧・アリ対策を総合的に実施する必要がある。また、鎮圧に使用する機器を製作し、鎮圧作業の効率化を図った。
【0013】
具体的には、発明1として既存の法面に対し、2〜3回の除草剤を散布し、紙(パルプを含む)にのりあるいは繊維を加えた混合液にセンチピードグラスの種子を混合した原料で吹き付け施工を行い、その後、アリ対策と種子の地面への鎮圧のいずれの順番を問わず、その両方とも行う雑草抑制方法を発明した。また、発明2として、発明1の雑草抑制方法の鎮圧に使用する、金属製の鎮圧板の下面に半球状の突起を数個並べた鎮圧機器を発明した。
【0014】
センチピードグラスが雑草との競合に勝つためには、センチピードグラスの吹き付け日と除草剤散布日との関連が重要である。吹き付け施工までに、2〜3回の除草剤散布が必要であるが、最終の除草剤散布は吹き付け日の1日〜7日前に散布しなければならない。その時、再び発芽した雑草の草丈は5cm以下が望ましい。そのためには、その前に行う除草剤散布が、最終の除草剤散布の1ヶ月〜2ヶ月前に行わなければならない。
【0015】
つまり、多年生雑草の根絶をするためには、この2回の除草剤散布を行うことが望ましい。更に、確実にするために、前年9月から11月にかけて一度除草剤散布をしておくのが最適である。
【0016】
吹き付け施工では、種子の雨による流亡を注意しなければならない。地表に種子が付着しやすいように、紙だけの原料ではなく、のりや繊維質を加えた混合液を使用する事が必要である。
【0017】
発芽率を高めるためには、吹き付け後、すぐに鎮圧作業が必要である。吹き付けられた種子は、地表の雑草やコケに、地面からの水分供給を邪魔され発芽出来ないことが多い。また、雨による種子の流亡も発芽率を下げている。吹き付け後すぐの鎮圧作業によって、地表のコケを除いて表面を露出させ、種子を地面に密着させ、地面からの水分の供給を確保する。また、鎮圧によって、地表に凹部を作ることで、種子の流亡を防ぐ事ができる。なお、この鎮圧作業は、吹き付け施工の前に行っておいても良い。
【0018】
センチピートグラスの種子に対するアリの食害防止には、吹き付け後、直ちに殺虫剤の散布が不可欠である。
【0019】
鎮圧に使用する機器としては、現在市販されている地面を鎮圧する鎮圧機は、エンジン付きであり、重量が50kg以上ある。これではとても法面に使用できる物ではない。しかし、かけや等の道具を使用しての鎮圧では、重労働であり、作業効率も悪い。そこで、勾配のある法面で使用できる図2及び図3に示す鎮圧機器を考案した。
【0020】
急な勾配の法面には、図2に示すように、コンクリートの破砕機を活用し、破砕機の先端に半球状の突起物を鉄板に取り付けた鎮圧板を製作し、鎮圧機器とした。動力源は電力を使用し、軽量化を考えた。この鎮圧機器を使用することで、種子を鎮圧しながら、地表に1cm〜2cmの凹部を地面に作ることができた。これにより、種子を地面に密着させると共に、種子の流亡を防ぐことができた。
【0021】
緩い勾配の法面には、図3に示すように、振動モーターの下面に前記の半球状の突起物を付けた鉄板を取り付け、取っ手を付けた軽量の鎮圧機を製作した。
【0022】
上記のことを踏まえ、既存の法面で試験区A〜Eを設定し、実証実験を行った。その結果を下記表1に示す。表1では、各試験区で行った作業を、一覧表形式の○×で表示している。
【表1】

【0023】
表1の法面緑化評価に示すように、試験区A,B,Dは失敗例、試験区Cは失敗とまではいえないが雑草除去が不十分であり、その後の除草作業の手間がかかり、試験区Eは成功例である。
【0024】
詳細には、試験区A〜Dでは、時系列順の「前記秋の除草剤の散布」、「吹き付け1ヶ月〜2ヶ月前の除草剤散布」、「吹き付け直前の除草剤散布」、「センチピードグラス吹き付け施工」、「鎮圧作業」、「殺虫剤散布」の作業のうち、何れか1つを実施せず、その1つ以外の作業は全て行っている。また、試験区Eでは、これら全ての作業を行っている。
【0025】
試験区Aでは、「吹き付け直前の除草剤散布」を行わず、直前に草刈り機による除草を行ってから、吹き付け施工を行った。試験区Bでは、「鎮圧作業」を行わなかった。試験区Cでは、「前年秋の除草剤散布」を行わなかった。試験区Dでは、「殺虫剤散布」を行わなかった。試験区Eは、全ての除草剤散布・殺虫剤散布・鎮圧作業を行った。
【0026】
その結果、試験区Aでは、発芽はしたが、雑草の方の発芽が早く、雑草との成育競合に敗れ生長が悪かった。また、試験区Bでは、発芽がほとんど見られなかった。また、試験区Cは、発芽はしたが、多年生雑草が一部に残り、手抜き作業による除草が必要であった。それにかなりの労力を必要とした。また、試験区Dは、アリの食害のあった所とない所とで、発芽にかなりのムラが生じ、後日、再度の吹き付けや、苗の移植が必要とするなど失敗といえる。試験区Eは、発芽率も高く、アリによる食害の被害もなかった。一部に一年生雑草の発芽はあったが、法面緑化に影響はなかった。
【0027】
以上の結果から、本実施形態においては、「センチピードグラスの吹き付け施工」による法面緑化において、法面緑化による雑草抑制を実現するためには、「吹き付け1〜2ヶ月前の除草剤散布」(春の除草剤散布)、「吹き付け直前の除草剤散布」(直前の除草剤散布)、「鎮圧作業」、「殺虫剤散布」の作業は必須であり、「前年秋の除草剤散布」(秋冬の除草剤散布)も望ましくは必須であると考えられる。但し、アリによる食害の少ない地域等の場合には、「殺虫剤散布」の作業を省略することは可能である。
【0028】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態と同様に、第2実施形態に係る雑草抑制方法においても、センチピードグラスの種子を既存の畦畔法面に吹き付け施工し、法面を緑化することで雑草の発生を抑えている。
【0029】
図4は、第2実施形態に係る雑草抑制方法の実施例を示す図であり、図4(a)は、実施例F、図4(b)は、実施例Gの作業内容及びそれらを行う時期を示す表である。また、図5は、第2実施形態に係る雑草抑制方法の実施例を示す図であり、図5(a)は、実施例H、図5(b)は、実施例Iの作業内容及びそれらを行う時期を示す表である。
【0030】
これら実施例F〜Iは、吹き付け施工を行う時期に合わせて、適宜望ましい作業内容を望ましい時期に実施したものである。実施例Fは、吹き付け施工を6月中旬〜7月中旬に実施する例であり、実施例Gは、吹き付け施工を4月下旬〜6月上旬に実施する例であり、実施例Hは、吹き付け施工を7月中旬〜8月下旬に実施する例であり、実施例Iは、吹き付け施工を8月下旬〜9月上旬に実施する例である。
【0031】
図4(a)に示すように、実施例Fでは、まず、吹き付け施工の前年9月から年明けの1月(望ましくは、9月〜11月)までの間に、前年の秋から冬にかけての1回目の除草剤散布(1)が行われる。この秋冬の除草剤散布(1)は、主としてチガヤ等の多年生雑草を根まで枯れさせるために実施されるので、濃い濃度の除草剤を散布する必要がある。
【0032】
秋冬の除草剤散布(1)により枯れた雑草を3月末までに焼却しておく。この焼却により、畦畔法面のコケも焼却されることになる。このように、焼却により地表を露出させておけば、吹き付け施工時の種子を地面に密着させ、地面から種子への水分の供給を確保し、種子を確実に発芽させることができる。
【0033】
続いて、春になると再び雑草が生長してくるので、4月下旬〜5月中旬までの間に、2回目の除草剤散布(2)が行われる。この春の除草剤散布(2)により、スギナ等の多年生雑草を根絶することが望ましい。除草剤散布(2)の後、枯れた雑草の焼却を実施する。この焼却により、畦畔法面の表面が露出される。なお、焼却の代わりに、草刈り機による雑草を刈り取る刈取工程により地表面を露出させるようにしても良い。
【0034】
続いて、吹き付け施工を行う3〜1日前に三回目の除草剤散布(3)を行い、直前の除草剤散布(3)から1〜3日後にセンチピードグラスの種子の吹き付け施工を行う。実施例Fでは、吹き付け施工は、6月中旬〜7月中旬において行われる。この吹き付け施工は、センチピードグラスの種子を養生材の紙(パルプ)、糊(綿繊維でも良い)、水、肥料等と混合した混合液を生成し、この混合液を吹き付け機で法面に直接吹き付けることで行われる。
【0035】
このように、吹き付け施工の直前に直前の除草剤散布(3)を行うと、二週間ほどで雑草を枯らすことができる。一方、センチピードグラスは種子なので除草剤はかからず、その後、10日〜14日程度で発芽し、生長を始める。雑草は、除草剤散布(3)の散布後、1ヶ月程度経つと再度発生し、センチピードグラスよりも早く生長するが、この頃には、センチピードグラスもある程度生長しているので、雑草に負けることなく、引き続き生長することが可能となる。
【0036】
したがって、センチピードグラスの播種後、雑草の発生をなるべく遅らせるためにも、直前の除草剤散布(3)は、できるだけ吹き付け施工の直前であることが望ましいが、雨が降ると除草剤の散布が行えないことなども考慮して、本実施例Fでは、吹き付け施工の1〜3日前に設定している。但し、2,3日雨が降り続けることも考慮すれば、第1実施形態のように吹き付け施工の7日前までに直前の除草剤散布(3)を行えば、センチピードグラスが雑草に負けずに生長することは可能である。
【0037】
なお、雑草の発生を遅らせることだけを考えれば、吹き付け施工後に除草剤を散布することも考えられるが、吹き付け施工当日は、法面が濡れているため難しく、吹き付け施工から2日後以降は、センチピードグラスの種子から小さな芽が出ることもあるので、除草剤の散布は望ましくない。よって、本実施例では、吹き付け施工の1〜3日前に除草剤散布(3)を実施することにしている。
【0038】
吹き付け施工後の1,2年の間は、適宜、刈り取りによる除草が必要である。センチピードの苗はとても小さく、雑草の生育のほうが早いので、刈り取りによる雑草の除去が必要になる。センチピードグラスの苗を刈らないように、1年目は、地面から5cm程度のところを高刈りし、2年目は、地面から10cm程度のところを高刈りして雑草を除去すれば良い。
【0039】
続いて、実施例G〜Iについて順に説明するが、実施例G〜Iの作業内容については、上記実施例Fと同じ内容が多いため、主に実施例Fと異なる作業内容及び異なる実施時期について説明する。
【0040】
実施例Gでは、図4(b)に示すように、吹き付け施工の前年9月〜1月(望ましくは、9月〜11月)における秋冬の除草剤散布(1)と、この除草剤散布(1)によって枯れた雑草の焼却を、上記実施例Fと同様に行う。春の除草剤散布(2)は、4月上旬〜下旬の間に行われる。除草剤散布(2)の作業後、2週間程度で雑草が枯れるので、その後、枯れた雑草の焼却を行った後、直ぐに吹き付け施工を実施する(4月下旬〜6月上旬)。その後、1,2年の間、適宜除草作業を行う。
【0041】
実施例Gでは、4月下旬〜6月上旬と早い時期に吹き付け施工を行うため、他の実施例F,H,Iと異なり、直前の除草剤散布(3)の作業については行っていない。但し、実施例Gでは、吹き付け施工作業の直前に枯れた雑草の焼却作業(除草剤散布(2)によって枯れた雑草)が行われており、この焼却作業が直前の除草剤散布(3)と同様の作用を奏しており、実施例Gにおいても、他の実施例と同様にセンチピードグラスが良好に生長した。
【0042】
実施例Hでは、図5(a)に示すように、吹き付け施工の前年9月〜1月(望ましくは、9月〜11月)における除草剤散布(1)と、この秋冬の除草剤散布(1)によって枯れた雑草の焼却を、上記実施例Fと同様に行う。春の除草剤散布(2)は、4月上旬〜5月下旬にかけて行い、その後枯れた雑草を刈り取って除去する。この作業を吹き付け施工の2週間〜3週間前まで行い、最後の時には刈り取った雑草をきれいに除去する。この時、雑草が小さければ、ヒモ式の草刈り機が使用でき、雑草は飛散し雑草の除去の必要はない。
【0043】
続いて、直前の除草剤散布(3)を吹き付け施工の1〜3日前に行った後に、吹き付け施工を実施する(7月上旬〜8月中旬)。その後、灌水を行うと共に、適宜、除草作業を行う。本実施例Hで灌水を行うのは、播種時期が梅雨明けで降水量の少ない7月上旬〜8月中旬であるため、センチピードグラスの発芽や枯れ込み防止、生長に必要な水を提供する必要があるからである。
【0044】
実施例Hにおいて、春の除草剤散布(2)を5月下旬までに行うのは、本実施形態は田んぼの畦畔で行われており、田植えまでに除草剤の散布を終わらせるためである。また、除草剤散布(2)によって枯れた雑草の除去を、焼却ではなく刈り取りで行っているのは、田植え後に田んぼの周囲の畔で焼却を行うのが好まれないからである。
【0045】
なお、実施例Hでは、吹き付け施工の直前に枯れた雑草の焼却を行っていなくても、秋冬の除草剤散布(1)の後で枯れた雑草の焼却を行うことで、一度、法面の表面が露出されている。よって、直前に焼却させる場合と比較すると劣るが、実施例Hにおいても、播種された種子を地面に密着されることが可能であり、実際に良好に種子が発芽し、その後も良好に生長した。このように、焼却や鎮圧(第1実施形態)によって一度地表面を露出させれば、1年程度は、その露出による効果を持続させることが可能であると考えられる。
【0046】
次に、実施例Iでは、図5(b)に示すように、吹き付け施工の前年9月〜1月(望ましくは、9月〜11月)における除草剤散布(1)と、この秋冬の除草剤散布(1)によって枯れた雑草の焼却を、上記実施例Fと同様に行う。春の除草剤散布(2)は、4月上旬〜5月下旬にかけて行い、その後、実施例Hと同様に枯れた雑草を刈り取って除去する。
【0047】
続いて、直前の除草剤散布(3)を吹き付け施工の1〜3日前に行った後に、吹き付け施工を実施する(7月上旬〜8月中旬)。その後、適宜除草作業を行う。
【0048】
以上、第2実施形態に係る実施例F〜Iについて詳細に説明したが、実施例F〜Iによれば、既存の法面が、雑草に代わるセンチピードグラスによって良好に緑化され、雑草の生長を抑えることに成功した。これにより、播種後、1,2年は高刈りによる多少の除草作業が必要となるが、その後20年程度は雑草の除草作業が不要になる。
【0049】
なお、上記実施例F〜Iでは、アリによる食害対策については触れていないが、吹き付け施工を行った既存法面にはアリが生息していると考え、上記第1実施形態と同様に適宜殺虫剤を散布する必要がある。また、実施例F〜Iにおいては、センチピードグラスの生長を促すために、必要に応じて、適宜肥料を与えることが望ましい。
【0050】
以上、本発明に係る第1実施形態及び第2実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形例が可能である。水田畦畔の管理状況は農家によって違い、千差万別であるため、その雑草生育状況に応じて実施することが求められる。また、各作業を行う時期は、土地の気候に応じて、1,2ヶ月前後することがある。例えば、東北地方と九州地方でも違うし、標高の高い所と低い所でも、各作業に適した時期は大きくずれると考えられる。
【0051】
また、上記実施形態では、既存の法面に本発明に係る雑草抑制方法を適用した場合について説明したが、法面以外の平坦な畦道等、平坦な土地にも適用できることは言うまでもない。また、除草剤として用いる農薬等も適宜他の農薬を選択できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子の吹き付け施工を行い、前記雑草生育地をセンチピードグラスにより緑化することで、雑草の発生を抑制する雑草抑制方法において、
春の時期に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する春の除草剤散布工程と、
春から秋にかけての時期に、雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子を吹き付ける吹き付け施工工程と、
前記吹き付け施工工程の直前に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する直前の除草剤散布工程と、
前記吹き付け施工工程の前又は直後に、前記雑草生育地の地面を露出させる地面露出工程と、
を備えることを特徴とする雑草抑制方法。
【請求項2】
前記吹き付け施工工程の前年の秋から冬にかけての時期に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する秋冬の除草剤散布工程をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の雑草抑制方法。
【請求項3】
前記地面露出工程は、前記吹き付け施工工程の前に、除草剤により枯れた雑草を焼却する焼却工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の雑草抑制方法。
【請求項4】
前記地面露出工程は、前記吹き付け施工工程の前又は直後に、鎮圧機を使って地面に凹凸を造る鎮圧工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の雑草抑制方法。
【請求項5】
前記雑草生育地に対して、アリ用の殺虫剤を散布する殺虫剤散布工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項に記載の雑草抑制方法。
【請求項6】
雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子の吹き付け施工を行い、前記雑草生育地をセンチピードグラスにより緑化することで、雑草の発生を抑制する雑草抑制方法において、
春の時期に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する春の除草剤散布工程と、
前記春の除草剤散布工程により枯れた雑草を焼却する焼却工程と、
前記焼却工程の直後に、前記雑草生育地に対してセンチピートグラスの種子を吹き付ける吹き付け施工工程と、
前記吹き付け施工工程の前年の秋から冬にかけての時期に、前記雑草生育地に対して除草剤を散布する秋冬の除草剤散布工程と、
を備えることを特徴とする雑草抑制方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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