説明

離型材

【課題】離型性、耐熱性および耐久性に優れた離型材を提供することである。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーからなる離型材である。
【化13】


[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性および耐久性等を有する離型材に関する。
【背景技術】
【0002】
離型材は、その用途によっては、離型性のみならず耐熱性および耐久性等が要求される(例えば、特許文献1,2参照)。例えば太陽電池モジュールの製造には、前記物性が要求される離型材が使用される。
【0003】
具体的に説明すると、太陽電池モジュールの製造は、まず、図1(a)に示すように、複数の太陽電池セル2を並列に配置する。ついで、各太陽電池セル2の両面にエチレンビニルアセテート樹脂等からなるシート状の封止剤3,3を介して保護ガラス4,バックシート5を積層し、積層体1を得る。
【0004】
この積層体1を、図1(b)に示すように、ラミネート装置が備える一対の熱板50,50間に配置した後、一対の熱板50,50を矢印A方向に動かし、積層体1の両面を一対の熱板50,50で加熱しながら挟むと、封止剤3が融解する。その結果、図1(c)に示すように、各太陽電池セル2が封止剤3で封止された太陽電池モジュール10が得られる。
【0005】
ここで、積層体1を加熱した際に、融解した封止剤3が積層体1から流れ出し、熱板50に付着することがある。この熱板50と封止剤3との融着を防ぐために、積層体1に対向する熱板50の表面には、離型材をシート状に加工した離型シート51が配置されている。該離型シート51は、通常、フッ素樹脂をガラス繊維に含浸保持させてなる(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかし、前記組成からなる離型シート51は、耐熱性を有するものの、離型性が十分ではなく、それゆえ融着した封止剤3を離型シート51から剥がし取るためのブラシ等を製造装置に設ける必要があった。また、ブラシ等で封止剤3を剥がし取ると、離型シート51の表面に摩耗傷が発生し易く、耐久性にも問題があった。したがって、離型性のみならず耐熱性および耐久性等の物性を備えた離型材の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−117608号公報
【特許文献2】特開平7−11581号公報
【特許文献3】特開平9−172192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、離型性、耐熱性および耐久性に優れた離型材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)下記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーからなることを特徴とする離型材。
【化1】

[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]
(2)前記イミド変性エラストマーは、ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアナート基を有するウレタンプレポリマーをジアミン化合物でウレア結合により鎖延長し、テトラカルボン酸二無水物でウレア結合部にイミドユニットを導入したブロック共重合体である前記(1)記載の離型材。
(3)前記ポリオールが、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールから選ばれる少なくとも1種である前記(2)記載の離型材。
(4)前記ポリエステルポリオールが、下記式(i)で表されるポリエステルジオールである前記(3)記載の離型材。
【化2】

[式中、xは1〜37の整数を示す。]
(5)前記ポリカーボネートポリオールが、下記式(ii)で表されるポリカーボネートジオールである前記(3)または(4)記載の離型材。
【化3】

[式中、yは5または6の整数を示す。zは1〜76の整数を示す。]
【0010】
(6)耐熱性繊維に保持させた、下記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーからなることを特徴とする離型材。
【化4】

[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]
(7)前記耐熱性繊維が、ガラス繊維である前記(6)記載の離型材。
【0011】
なお、本発明における前記「イミド変性エラストマー」とは、イミド成分を有するエラストマーのことを意味し、前記イミド成分の割合(イミド分率)によって樹脂も含む概念である。
本発明における前記「離型材」は、通常、シート状ないしフィルム状であるが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、例えばベルト状や皮膜状等の他の形態であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の離型材は、前記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーを用いることにより、高い離型性、耐熱性および耐久性が得られるという効果がある。しかも、前記イミド変性エラストマーは、比較的簡単に製造することができるので、コストを削減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)〜(c)は、太陽電池モジュールの一般的な製造方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の離型材にかかる一実施形態について説明する。本実施形態にかかる離型材は、主鎖に連続した2つのイミドユニットが導入された前記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマー(以下、「イミド変性エラストマー(I)」と言うことがある。)からなる。
【0015】
前記一般式(I)中において前記R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(A)に従ってポリオール(b)と共にウレタンプレポリマー(c)を形成し得るジイソシアナート(a)においてイソシアナート基(−NCO)を除く残基等が挙げられる。
【0016】
前記R2は、重量平均分子量300〜10,000、好ましくは300〜5,000の2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば反応行程式(A)に従ってジイソシアナート(a)と共にウレタンプレポリマー(c)を形成し得るポリオール(b)において2つの水酸基(−OH)を除く残基等が挙げられる。
【0017】
前記R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(B)に従ってウレタンプレポリマー(c)をウレア結合により鎖延長し得る炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物、炭素数6〜24の脂肪族ジアミン化合物および炭素数6〜24の脂環式ジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物(d)においてアミノ基(−NH2)を除く残基等が挙げられる。前記脂肪族鎖は、炭素数1のものも含む。
【0018】
前記R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示すものであり、該有機基としては、例えば後述する反応行程式(C)に従ってウレア結合部にイミドユニットを導入し得る炭素数6〜18の芳香族テトラカルボン酸二無水物および炭素数4〜6の脂環式テトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物(f)の残基等が挙げられる。
【0019】
前記nは1〜100、好ましくは2〜50の整数を示す。前記mは2〜100、好ましくは2〜50の整数を示す。
【0020】
イミド変性エラストマー(I)は、ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアナート基を有するウレタンプレポリマーをジアミン化合物でウレア結合により鎖延長し、テトラカルボン酸二無水物でウレア結合部にイミドユニットを導入したブロック共重合体である。該イミド変性エラストマー(I)は、例えば以下に示すような反応工程式(A)〜(C)を経て製造することができる。
【0021】
[反応行程式(A)]
【化5】

[式中、R1,R2,nは、前記と同じである。]
【0022】
(ウレタンプレポリマー(c)の合成)
前記反応行程式(A)に示すように、まず、ジイソシアナート(a)とポリオール(b)から分子両末端にイソシアナート基を有するウレタンプレポリマー(c)を得る。イミド変性エラストマー(I)は、このウレタンプレポリマー(c)をエラストマー成分として含有する。
【0023】
前記ジイソシアナート(a)としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアナート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、ポリメリックMDI(Cr.MDI)、ジアニシジンジイソシアナート(DADL)、ジフェニルエーテルジイソシアナート(PEDI)、ピトリレンジイソシアナート(TODI)、ナフタレンジイソシアナート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、メタキシリレンジイソシアナート(MXDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアナート(DDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、シクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアナート(水添TDI)、TDI2量体(TT)等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよく、減圧蒸留したものを用いるのが好ましい。
【0024】
前記ポリオール(b)としては、例えばポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリマーポリオール等のポリエーテルポリオール;アジペート系ポリオール(縮合ポリエステルポリオール)、ポリカプロラクトン系ポリオール等のポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
特に、前記ポリオール(b)が、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、主鎖に、耐熱性および耐久性に優れるポリエステル構造単位およびポリカーボネート構造単位の少なくとも一方が導入されるので、イミド変性エラストマー(I)の耐熱性および耐久性を向上させることができる。
【0026】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えばポリカルボン酸とポリオールとを縮合重合させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられ、具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチレンアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリオール、ε−カプロラクトンを開環重合して得たポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンジオール、β−メチル−δ−バレロラクトンをエチレングリコールで開環することにより得られたポリオール等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
また、前記ポリエステルポリオールとして、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸(混合物)、パラオキシ安息香酸、無水トリメリット酸、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンから選ばれる少なくとも1種の酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールから選ばれる少なくとも1種のグリコールとの共重合体等が挙げられる。
【0028】
また、前記ポリエステルポリオールとして、前記式(i)で表されるポリエステルジオール(以下、「ポリエステルジオール(i)」と言う。)を好適に用いることができる。該ポリエステルジオール(i)をポリオール(b)として用いると、高い離型性、耐熱性および耐久性を得ることができる。ポリエステルジオール(i)は、ジオール成分分子内にエステル基と、側鎖としてメチル基とを有する側鎖含有ポリエステルジオールである。ポリエステルジオール(i)は、室温(23℃)において液状であることから、取り扱い性に優れる。前記式(i)中において、前記xは1〜37、好ましくは3〜7の整数を示す。
【0029】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えばポリオール(多価アルコール)と、ホスゲン、クロル蟻酸エステル、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、アルキレンカーボネート等とを縮合重合させて得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられ、前記ポリオールとしては、例えば1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、前記ジアルキルカーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。前記ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0030】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、前記式(ii)で表されるポリカーボネートジオール(以下、「ポリカーボネートジオール(ii)」と言う。)が挙げられる。該ポリカーボネートジオール(ii)をポリオール(b)として用いると、高い離型性、耐熱性および耐久性を得ることができる。ポリカーボネートジオール(ii)は、2成分をカーボネート結合により共重合させたジオール成分であり、いわゆる共重合ポリカーボネートジオールである。ポリカーボネートジオール(ii)は、室温(23℃)において液状であることから、取り扱い性に優れる。前記式(ii)中において、前記yは5または6の整数を示す。前記zは1〜76、好ましくは6〜15の整数を示す。
【0031】
ポリオール(b)は、70〜90℃、1〜5mmHg、10時間〜30時間程度の条件で減圧乾燥したものを用いるのが好ましい。また、ポリオール(b)の重量平均分子量は100〜10,000、好ましくは300〜5,000であるのが好ましい。前記重量平均分子量は、ポリオール(b)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0032】
反応は、前記で例示したジイソシアナート(a)とポリオール(b)とを所定の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温(23℃)で1時間〜5時間程度反応させればよい。ジイソシアナート(a)とポリオール(b)との混合比(モル)は、ジイソシアナート(a):ポリオール(b)=1.01:1〜2:1の範囲にするのが好ましい。
【0033】
得られるウレタンプレポリマー(c)の重量平均分子量は、300〜50,000、好ましくは500〜45,000であるのがよい。該重量平均分子量は、ウレタンプレポリマー(c)をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0034】
[反応行程式(B)]
【化6】

[式中、R1〜R3,n,mは、前記と同じである。]
【0035】
(ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成)
前記で得られたウレタンプレポリマー(c)を用いて、反応行程式(B)に従ってイミド前駆体であるポリウレタン−ウレア化合物(e)を合成する。すなわち、ウレタンプレポリマー(c)をジアミン化合物(d)でウレア結合により鎖延長してポリウレタン−ウレア化合物(e)を得る。
【0036】
前記ジアミン化合物(d)としては、例えば1,4−ジアミノベンゼン(別名:p−フェニレンジアミン、略称:PPD)、1,3−ジアミノベンゼン(別名:m−フェニレンジアミン、略称:MPD)、2,4−ジアミノトルエン(別名:2,4−トルエンジアミン、略称:2、4−TDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:4,4’−メチレンジアニリン、略称:MDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:4,4’−オキシジアニリン、略称:ODA、DPE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(別名:3,4’−オキシジアニリン、略称:3,4’−DPE)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:o−トリジン、略称:TB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:m−トリジン、略称:m−TB)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(略称:TFMB)、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(別名:o−トリジンスルホン、略称:TSN)、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド(別名:4,4’−チオジアニリン、略称:ASD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(別名:4,4’−スルホニルジアニリン、略称:ASN)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(略称:DABA)、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(n=3,4,5、略称:DAnMG)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン(略称:DANPG)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(略称:DA3EG)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(略称:FDA)、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(別名:レゾルシンオキシジアニリン、略称:TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(略称:APB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(略称:BAPB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(略称:BAPP)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(略称:BAPS−M)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:HFBAPP)、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略称:MBAA)、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン(別名:4,6−ジアミノレゾルシン)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(別名:3,3’−ジヒドロキシベンジジン、略称:HAB)、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル(別名:3,3’−ジアミノベンジジン、略称:TAB)等の炭素数6〜27の芳香族ジアミン化合物;1,6−ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9−ノナメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の炭素数6〜24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物;1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のシリコーン系ジアミン化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
反応は、ウレタンプレポリマー(c)と、前記で例示したジアミン化合物(d)とを等モル、好ましくはNCO/NH2比が1.0程度の割合で混合した後、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、室温〜100℃、好ましくは50〜100℃において、2時間〜30時間程度で溶液重合反応または塊状重合反応させればよい。
【0038】
前記溶液重合反応に使用できる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン等が挙げられ、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−ヘキシル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドンが好ましい。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、常法に従い脱水処理したものを用いるのが好ましい。
【0039】
[反応行程式(C)]
【化7】

[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
【0040】
(イミド変性エラストマー(I)の合成)
前記で得られたポリウレタン−ウレア化合物(e)を用いて、反応行程式(C)に従ってイミド変性エラストマー(I)を合成する。すなわち、テトラカルボン酸二無水物(f)でウレア結合部にイミドユニットを導入してブロック共重合体であるイミド変性エラストマー(I)を得る。
【0041】
前記テトラカルボン酸二無水物(f)としては、例えば無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物等の炭素数6〜18の芳香族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等の炭素数4〜6の脂環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
反応は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)とのイミド化反応である。該イミド化反応は、溶媒下、無溶媒下のいずれであってもよい。溶媒下でイミド化反応を行う場合には、まず、ポリウレタン−ウレア化合物(e)と、前記で例示したテトラカルボン酸二無水物(f)とを所定の割合で溶媒に加え、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、100〜300℃、好ましくは135〜200℃、より好ましくは150〜170℃において、1時間〜10時間程度反応させて、下記式(g)で表されるポリウレタンアミック酸(以下、「PUA」と言う。)を含む溶液を得る。
【0043】
【化8】

[式中、R1〜R4,n,mは、前記と同じである。]
【0044】
ポリウレタン−ウレア化合物(e)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合は、ポリウレタン−ウレア化合物(e)の合成で使用したジアミン化合物(d)とテトラカルボン酸二無水物(f)との混合比(モル)が、ジアミン化合物(d):テトラカルボン酸二無水物(f)=1:2〜1:2.02の範囲となる割合で混合するのが好ましい。これにより、確実にウレア結合部にイミドユニットを導入することができる。
【0045】
使用できる溶媒としては、前記反応行程式(B)の溶液重合反応に使用できる溶媒で例示したものと同じ溶媒を例示することができる。なお、反応行程式(B)において溶液重合反応でポリウレタン−ウレア化合物(e)を得た場合には、該溶媒中でイミド化反応を行えばよい。
【0046】
ついで、前記で得たPUA溶液を100〜200℃で60〜120分間かけて熱処理をした後、さらに加熱処理(脱水縮合反応)をしてイミド変性エラストマー(I)を得る。加熱処理は、PUAが熱分解しない条件であり、150〜250℃で90〜150分の条件で行うのが好ましい。
【0047】
一方、無溶媒下でイミド化反応を行う場合には、通常の攪拌槽型反応器の他、排気系を有する加熱手段を備えた押出機の中でも行うことができるので、得られるイミド変性エラストマー(I)を押し出して、そのままフィルム状ないしシート状に成形することができる。
【0048】
イミド変性エラストマー(I)の重量平均分子量は10,000〜1,000,000、好ましくは15,000〜150,000、より好ましくは20,000〜100,000であるのがよい。前記分子量があまり小さいと、耐熱性および耐久性が低下するおそれがあり、あまり大きいと、成形性が低下するおそれがあるので好ましくない。前記重量平均分子量は、前記PUA溶液をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した値である。なお、イミド変性エラストマー(I)ではなく、前記PUA溶液をGPCで測定するのは、イミド変性エラストマー(I)がGPCの測定溶媒に不溶なためである。
【0049】
イミド変性エラストマー(I)は、そのイミド分率、すなわちイミド変性エラストマー(I)中のイミド成分の割合を調整することによって、弾性率を任意に調整することができる。イミド分率は、弾性率等に応じて任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、5〜45重量%、好ましくは5〜40重量%であるのがよい。
【0050】
前記イミド分率は、原料、すなわちジイソシアナート(a)、ポリオール(b)、ジアミン化合物(d)およびテトラカルボン酸二無水物(f)の仕込み量から算出される値であり、下記式(α)から算出される値である。
【0051】
【数1】

【0052】
イミド分率によって調整されるイミド変性エラストマー(I)の弾性率としては、1.0×106〜1.0×109Pa程度であるのが好ましい。前記弾性率は、後述するように、動的粘弾性測定装置を用いて測定して得られる50℃での貯蔵弾性率E’の値である。
【0053】
イミド変性エラストマー(I)からなる離型材の使用形態は、特に限定されるものではなく、例えばフィルム状ないしシート状等の形態で使用することができる。また、PUA溶液を遠心成形すればシームレスベルトの形態で使用することができる。PUA溶液を成形体に直接塗布するか、または噴霧した後に加熱処理をして皮膜状の形態で使用することもできる。
【0054】
本実施形態にかかる離型材は、太陽電池モジュールの製造に使用する他、例えばヒートシール用途、非粘着用途、熱処理用途、プラスチック加工用途、高周波乾燥用途等に使用することができる。また、本実施形態にかかる離型材は、前記で例示した用途に限定されず、離型性のみならず耐熱性および耐久性等が要求される分野において、好適に用いることができる。
【0055】
次に、本発明の離型材にかかる他の実施形態について説明する。本実施形態にかかる離型材は、イミド変性エラストマー(I)を耐熱性繊維に保持させてなる。これにより、離型材の引張強度を向上させることができる。
【0056】
前記耐熱性繊維とは、耐熱性を有する繊維のことを意味する。該耐熱性繊維としては、例えばガラス繊維、アルミナ繊維等の無機繊維;アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機繊維等が挙げられ、特にガラス繊維が好ましい。前記耐熱性繊維における質量、厚さ、織密度等の形状は、特に限定されるものではなく、用途に応じて所望の形状を有するものが採用可能である。
【0057】
イミド変性エラストマー(I)を耐熱性繊維に保持させる方法としては、効率よく保持させる上で、前記耐熱性繊維をPUA溶液に浸漬し引き上げた後に加熱処理をするディップ法が好適である。また、ディップ法に代えて、PUA溶液を耐熱性繊維に塗布するか、または噴霧した後に加熱処理をするようにしてもよい。その他の構成は、前記した一実施形態にかかる離型材と同様である。
【0058】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
前記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーからなる離型材を、前記反応工程式(A)〜(C)に基づいて4種類合成した。各合成例に使用した材料は、次の通りである。
【0060】
・ジイソシアナート(a):日本ポリウレタン工業(株)社製の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート。
・ポリオール(b):ポリエステルジオール(i)またはポリカーボネートジオール(ii)。
・ポリエステルジオール(i):クラレ社製の商品名「P1050」;重量平均分子量1,000;前記式(i)中、xは3〜4の整数を示す。
・ポリカーボネートジオール(ii):旭化成ケミカルズ社製の「デュラノール T5652」;重量平均分子量2,000;前記式(ii)中、yは5または6、zは14〜15の整数を示す。
・ジアミン化合物(d):4,4’−ジアミノジフェニルメタン。
・テトラカルボン酸二無水物(f):無水ピロメリット酸。
・耐熱性繊維:ユニチカ社製のガラス繊維「H201 M 104F」;質量210g/m2、厚さ0.18mm、平織り、織密度(縦×横)42×32本/25mm。
【0061】
<合成例1:離型材A>
(ウレタンプレポリマー(c1)の合成)
まず、ジイソシアナート(a)を減圧蒸留し、ポリオール(b)を80℃、2〜3mmHg、24時間の条件で減圧乾燥した。ポリオール(b)としては、ポリエステルジオール(i)を用いた。
【0062】
ついで、ジイソシアナート(a)30.4gと、ポリオール(b)69.6gとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にイソシアナート基を有するウレタンプレポリマー(c1)を得た。このウレタンプレポリマー(c1)をGPCで測定した結果、ポリスチレン換算した値で重量平均分子量は8,000であった。
【0063】
(ポリウレタン−ウレア化合物(e1)の合成)
前記で得たウレタンプレポリマー(c1)10gを脱水処理したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)60mlに溶解させたものと、ジアミン化合物(d)1.034gを脱水処理したNMP20mlに溶解させたものとを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、アルゴン雰囲気下、室温(23℃)で24時間攪拌して、ポリウレタン−ウレア化合物(e1)の溶液を得た。
【0064】
(イミド変性エラストマー(1)の合成)
前記で得たポリウレタン−ウレア化合物(e1)の溶液中に、テトラカルボン酸二無水物(f)2.276gを加え、アルゴンガス雰囲気下、150℃で2時間攪拌して、PUA溶液を得た。ついで、該PUA溶液を遠心成形機に流し込み、150℃で300rpm、1時間遠心成形してPUAシートを得た。このPUAシートを減圧デシケータ内で200℃、2時間加熱処理(脱水縮合反応)し、前記一般式(I)中のnが1〜100、mが2〜100のイミド変性エラストマー(1)からなる厚さ0.1mmのシート状の離型材Aを得た。
【0065】
イミド変性エラストマー(1)のイミド分率は35重量%、弾性率は3.0×108Pa、重量平均分子量は40,000であった。前記イミド分率は、前記式(α)から算出した。前記弾性率は、セイコーインスツルメンツ社(Seiko Instruments Inc.)製の動的粘弾性測定装置「DMS 6100」を用いて、10Hz、5℃/分、−100〜400℃の昇温過程において、50℃での貯蔵弾性率E’を測定した。前記重量平均分子量は、前記PUA溶液をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値から導き出した。
【0066】
また、前記イミド変性エラストマー(1)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0067】
<合成例2:離型材B>
ポリオール(b)として、ポリカーボネートジオール(ii)を79.98g、ジイソシアナート(a)を20.02g用いた以外は、前記合成例1と同様にして、重量平均分子量10,000のウレタンプレポリマー(c2)を得た。
【0068】
ついで、前記で得たウレタンプレポリマー(c2)を用いた以外は、前記合成例1と同様にしてポリウレタン−ウレア化合物(e2)の溶液を得、このポリウレタン−ウレア化合物(e2)を用いてPUAシートを得、このPUAシートを加熱処理して前記一般式(I)中のnが1〜100、mが2〜100のイミド変性エラストマー(2)からなる厚さ0.1mmのシート状の離型材Bを得た。
【0069】
イミド変性エラストマー(2)のイミド分率は28重量%、弾性率は1×108Pa、重量平均分子量は44,000であった。また、前記イミド変性エラストマー(2)について、ATR法にてIRスペクトルを測定した結果、1780cm-1、1720cm-1および1380cm-1にイミド環に由来する吸収が観察された。
【0070】
<合成例3:離型材C>
まず、前記合成例1と同様にしてPUA溶液を得た。ついで、該PUA溶液中に耐熱性繊維(ガラス繊維)を10g浸漬し、引き上げた後に前記合成例1と同様にして加熱処理をした。その結果、ガラス繊維に保持させたイミド変性エラストマー(1)からなる厚さ0.4mmのシート状の離型材Cを得た。
【0071】
<合成例4:離型材D>
まず、前記合成例2と同様にしてPUA溶液を得た。ついで、該PUA溶液中に耐熱性繊維(ガラス繊維)を10g浸漬し、引き上げた後に前記合成例1と同様にして加熱処理をした。その結果、ガラス繊維に保持させたイミド変性エラストマー(2)からなる厚さ0.4mmのシート状の離型材Dを得た。
【0072】
[実施例1,2]
前記合成例1,2で得た離型材A,Bについて、180°剥離強度、テーバー摩耗量、引張強度および熱老化伸度低下率を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0073】
(180°剥離強度)
まず、エチレンビニルアセテート樹脂からなる厚さ0.15mmのシートに、離型材A,Bを180℃の温度をかけながらプレスして融着させた。ついで、23℃の雰囲気温度下、ロードセルを用いて300mm/分の速度で離型材A,Bを前記シートから180°剥離し、180°剥離強度(JIS Z0237準拠)を測定した。評価基準は以下のように設定した。
○:≦5×10-3N/mm
×:>5×10-3N/mm
【0074】
(テーバー摩耗量)
(株)安田精機製作所製のテーバー摩耗試験機「5150 ABRASER」の摩耗輪H−18を1000回転させたときの離型材A,Bの摩耗量を測定した。評価基準は以下のように設定した。
○:≦20mg
×:>20mg
【0075】
(引張強度)
離型材A,Bを3号ダンベルで打ち抜き、標線間20mm、500mm/分の条件で、JIS K6251に準拠して引張強度を測定した。評価基準は以下のように設定した。
○:≧40MPa
×:<40MPa
【0076】
(熱老化伸度低下率)
離型材A,Bを3号ダンベルで打ち抜き、150℃で72時間、ギアオーブン中で熱老化後、前記した引張強度と同じ条件で、JIS K6257に準拠して引張強度を測定した。そして、熱老化前後の引張強度を式:[(熱老化後の引張強度/熱老化前の引張強度)−1]×100に当てはめて伸度低下率(%)を算出した。評価基準は以下のように設定した。
○:≦30%
×:>30%
【0077】
[比較例1]
ポリアミド酸溶液(宇部興産(株)製の商品名「UワニスA」)を遠心成形機に流し込み、150℃で1,000rpm、1時間遠心成形してシート状にした後、減圧デシケータ内で200℃、2時間加熱処理(脱水縮合反応)して、ポリイミド樹脂からなる厚さ0.1mmのシート状の離型材aを得た。得られた離型材aについて、前記実施例1,2と同様にして180°剥離強度、テーバー摩耗量、引張強度および熱老化伸度低下率を評価した。その結果を表1に示す。
【0078】
[比較例2]
エステル系のポリウレタン(BASF(株)製の商品名「C85A」)を厚さ1mmのシート状にして離型材bを得た。得られた離型材bについて、前記実施例1,2と同様にして180°剥離強度、テーバー摩耗量、引張強度および熱老化伸度低下率を評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
[比較例3]
ポリテトラフルオロエチレン〔テフロン(登録商標)〕からなる厚さ0.05mmのシート状の離型材cとして、中興化成工業社製の「スカイブドテープ」を用いた。この離型材cについて、前記実施例1,2と同様にして180°剥離強度、テーバー摩耗量、引張強度および熱老化伸度低下率を評価した。その結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から明らかなように、前記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーからなる実施例1,2は、180°剥離強度の値が小さいことから、離型性に優れているのがわかる。また、テーバー摩耗量が少なく、熱老化伸度低下率も小さいことから、耐久性および耐熱性にも優れているのがわかる。さらに、引張強度にも優れているのがわかる。
【0082】
一方、ポリイミド樹脂からなる比較例1は、テーバー摩耗量(耐久性)および熱老化伸度低下率(耐熱性)に優れているものの、180°剥離強度(離型性)に劣る結果を示した。ポリウレタンからなる比較例2は、耐久性に優れるものの、離型性および耐熱性に劣る結果を示した。特に、耐熱性については、評価中に試料が変形してしまい、評価することができなかった。ポリテトラフルオロエチレンからなる比較例3は、耐熱性に優れるものの、離型性および耐久性に劣る結果を示した。
【0083】
[実施例3,4]
前記合成例3,4で得た離型材C,Dについて、前記実施例1,2と同様にして180°剥離強度、テーバー摩耗量および引張強度を評価した。その結果を表2に示す。
【0084】
[比較例4]
ガラス繊維に保持させたポリテトラフルオロエチレンからなる厚さ0.24mmのシート状の離型材dとして、中興化成工業社製の「FGF−500−10」を用いた。この離型材dについて、前記実施例1,2と同様にして180°剥離強度、テーバー摩耗量および引張強度を評価した。その結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
表2から明らかなように、ガラス繊維に保持させた前記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーからなる実施例3,4は、離型性に優れているのがわかる。また、耐久性にも優れているのがわかる。さらに、実施例1,2よりも引張強度が向上しているのがわかる。これに対し、ガラス繊維に保持させたポリテトラフルオロエチレンからなる比較例4は、離型性および耐久性に劣る結果を示した。
【符号の説明】
【0087】
1 積層体
2 太陽電池セル
3 封止剤
4 保護ガラス
5 バックシート
10 太陽電池モジュール
50 熱板
51 離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーからなることを特徴とする離型材。
【化9】

[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]
【請求項2】
前記イミド変性エラストマーは、ジイソシアナートとポリオールから得た分子両末端にイソシアナート基を有するウレタンプレポリマーをジアミン化合物でウレア結合により鎖延長し、テトラカルボン酸二無水物でウレア結合部にイミドユニットを導入したブロック共重合体である請求項1記載の離型材。
【請求項3】
前記ポリオールが、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールから選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の離型材。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオールが、下記式(i)で表されるポリエステルジオールである請求項3記載の離型材。
【化10】

[式中、xは1〜37の整数を示す。]
【請求項5】
前記ポリカーボネートポリオールが、下記式(ii)で表されるポリカーボネートジオールである請求項3または4記載の離型材。
【化11】

[式中、yは5または6の整数を示す。zは1〜76の整数を示す。]
【請求項6】
耐熱性繊維に保持させた、下記一般式(I)で表されるイミド変性エラストマーからなることを特徴とする離型材。
【化12】

[式中、R1は、芳香族環または脂肪族環を含む2価の有機基を示す。R2は、重量平均分子量300〜10,000の2価の有機基を示す。R3は、芳香族環、脂肪族環または脂肪族鎖を含む2価の有機基を示す。R4は、4個以上の炭素を含む4価の有機基を示す。nは1〜100の整数を示す。mは2〜100の整数を示す。]
【請求項7】
前記耐熱性繊維が、ガラス繊維である請求項6記載の離型材。

【図1】
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