説明

難燃剤を実質的に含有しない3GTカーペット

最小量のキャリヤー、および場合により最小量の帯電防止剤を有するポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維から作製された、難燃剤を実質的に含有しないカーペット、およびそのようなカーペットの製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最小量のキャリヤー、および好ましくは最小量の帯電防止剤を含むポリ(トリメチレンテレフタレート)繊維から作製された、難燃剤を実質的に含有しないカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
嵩高連続フィラメント(BCF)および/またはステープルヤーンを含むカーペットは、当業者に周知のさまざまな方法で製造されている。典型的には、多数のヤーンを、互いにケーブル撚りして(約3.5〜6.5回/インチ(約1.38〜2.56回/cm)、装置(オートクレーブなど)中でヒートセットし、続いて一次基布中にタフティングする。続いて、ラテックス接着剤および二次基布が適用される。パイル高さが約0.25〜1インチ(約0.64〜2.54cm)の間であるカットパイル型カーペット、またはパイル高さが約0.125〜0.375インチ(約0.318〜0.953cm)の間であるループパイル型カーペットは、BCFヤーンを使用して製造することができる。典型的なカーペット重量は約25〜90オンス/平方ヤード(約847.8〜3051.9g/m2)の間である。
【0003】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)(「3GT」または「PTT」)ヤーンから製造されたカーペットは、ポリ(エチレンテレフタレート)(「2GT」)ヤーンと同等の防汚性を本来有し、十分なテクスチャー保持性および耐圧潰性を有する。さらに、3GTヤーンを含むカーペットは、2GTヤーンから製造されたカーペットよりも優れた柔軟性および染色可能性を有し、ナイロンから製造されたカーペットよりも優れた柔軟性を有する。
【0004】
ポリエステルカーペットは、一般に、分散染料での可染性を向上させるためにポリエステルの構造を開く機能を果たす化合物であるキャリヤーを使用して、分散染料で染色される。キャリヤーは、連続染色中に暗い色への3GT可染性を向上させるために特に有用である。
【0005】
帯電防止剤は、当業者には周知であり、カーペットの場合、一般には局所的に適用される化学物質であり、静電気量を減少させるために典型的には吸湿性である。帯電防止剤は、American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC)試験方法134(GSA)のもと、コンピューター室および商業用のカーペットなど、より厳しさが要求される用途に向けて3GT静電気量を減少させるために有用である。
【0006】
キャリヤー(および染料)および/または帯電防止剤は、一般にカーペットのポストタフティングに適用される。
【0007】
理想的には、3GTヤーンから製造された実験室規模のカーペットは、難燃剤を必要とせずにクラスI燃焼性評価を有する事が知られている。これらの理想的な実験室規模のカーペットは、キャリヤーおよび帯電防止剤も含有しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、現実の世界の用途で使用される3GTヤーンを含むカーペットは、典型的にはキャリヤーおよび帯電防止剤の両方を含有し、相当量の難燃剤を含有せずにこの燃焼性の要求に適合するものは見つかっていない。難燃剤は、カーペットの燃焼性の評価を改善するが、経済的には不都合があり、好適な燃焼性評価を依然として維持しながら必要な難燃材料を最小限にすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
3GT繊維中のキャリヤー量および3GT繊維に適用される耐電防止剤量を最小限にすることによって、難燃剤を実質的に含有しないカーペットを3GT繊維から製造できることが分かった。
【0010】
したがって、本発明の一態様によると、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンと、基布系(backing system)と、接着剤系とを含むカーペットが提供され、ここで、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが、ヤーンの重量に基づいて約25〜約3000ppmの範囲内のキャリヤー、および/または約2500ppmまでの量の耐電防止剤を含み、当該カーペットは難燃剤を実質的に含有しない。
【0011】
好ましくは、キャリヤーが使用される場合、キャリヤーは、ヤーンの重量に基づいて約25〜約2000ppmの範囲内、さらにより好ましくは約25〜約1000ppmの範囲内、最も好ましくは約25〜約500ppmの範囲内で存在する。
【0012】
好ましくは、帯電防止剤が使用される場合、帯電防止剤は、ヤーンの重量に基づいて約2000ppmまで、より好ましくは約1000ppmまで、さらにより好ましくは約760ppmまでの量で存在する。帯電防止剤が使用される場合、少なくとも一部の帯電防止剤(下限は明確に記載していないかもしれないが)は、この成分の意図する効果と併せて少なくとも静電気量を部分的に減少させるのに有効な量で存在する必要があり、このことは関連分野の当業者であれば理解しているであろう。
【0013】
これらのカーペットは、ASTM−E648タイプの試験によって測定される際、好ましくはクラスI燃焼性評価を有する。
【0014】
別の一態様は、前述の難燃剤を実質的に含有しないカーペットを製造する第1の方法であって:
(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンと、基布系と、接着剤系とを含むカーペットを製造するステップと;
(b)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンにキャリヤーを適用するステップと;
(c)キャリヤーが適用されたポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを染色するステップと含む方法を提供することである。
【0015】
場合により、第1の方法は、帯電防止剤をポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンに適用するステップをさらに含む。
【0016】
別の一態様、前述の難燃剤を実質的に含有しないカーペットを製造する第2の方法であって:
(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンと、基布系と、接着剤系とを含むカーペットを製造するステップと;
(b)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを染色するステップと;
(c)帯電防止剤をポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンに適用するステップとを含む方法を提供することである。
【0017】
場合により、第2の方法は、染色の前に、キャリヤーをポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンに適用するステップをさらに含む。
【0018】
さらに、上記方法のステップ(a)は、好ましくは:
(a1)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを一次基布中にタフティングするステップと;
(a2)ラテックス接着剤を一次基布に適用するステップと;
(a3)二次基布をラテックス接着剤上に適用するステップとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で記載されたすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、別段に指示がない限り、完全に記載されたかのように、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0020】
別段に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0021】
明示的に特記される場合を除き、商標は大文字で示される。
【0022】
別段に指定がない限り、すべての百分率、部および比などは重量に基づく。
【0023】
量、濃度あるいは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上方値および好ましい下方値の一覧のいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別個に開示されるか否かに関係なく、あらゆる上限の範囲または好ましい値とあらゆる下限の範囲または好ましい値のあらゆる対から形成されたすべての範囲を特定的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲を本明細書で挙げる場合、別段に指定がない限り、その範囲は、その端点およびその範囲内のすべての整数および端数を含むことを意図している。範囲を定めるときに挙げられた特定の値に本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0024】
範囲の値または端点を記載する際に「約」という用語を用いるとき、その開示は、言及された特定の値または端点を含むと理解されるべきである。
【0025】
本明細書で用いるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品または装置はそれらの要素のみに必ずしも限定されずに、こうしたプロセス、方法、物品または装置に明示的に記載されていない他の要素も固有でない他の要素も含んでもよい。更に、相反する明示的な記載がない限り、「または」は、非排他的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満足される。Aが真(または存在する)およびBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)およびBが真(または存在する)およびAとBの両方が真(または存在する)。
【0026】
本発明の要素および成分を記載するために、単数形(「a」または「an」)が使用される。これは、あくまで便宜上および本発明の一般的意味を示すために行われる。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読むべきであり、単数が別段に意図されていることが明らかでない限り、単数は複数も含む。
【0027】
本明細書における材料、方法、および例は、特に明記する場合を除けば、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の方法の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料について本明細書において説明する。
【0028】
本開示の状況においては、多数の他の用語が使用されている。
【0029】
本明細書において使用される場合、「カーペット」としては、ステープルヤーンおよび/または嵩高連続フィラメントヤーンから作製された住宅用途および商業用途に使用されるカットパイルおよびループパイルのカーペット、自動車用カーペット、カーペットタイル、ならびに浴室および部屋の一部に敷くラグが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本明細書において使用される場合、「難燃剤」は、発火源が取り除かれた後でカーペットが燃焼する、燃焼し続ける、または流動する傾向を軽減するために当技術分野で知られている、繊維および/または基布系および/またはラテックス接着剤の上および/または中へのあらゆる添加剤を意味する。カーペットの製造に使用される難燃剤の非限定的な例としては、無機化合物、たとえば、限定するものではないが、アルミニウム三水和物(ATH)、酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、およびスズ酸亜鉛など;ハロゲン化有機化合物、たとえば、限定するものではないが、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、およびヘキサブロモベンゼンなど;ならびにホスフェート化合物、たとえば限定するものではないが、リン酸トリブロモプロピルなどが挙げられる。燃焼性評価は、National Fire Protection Association(NFPA)の材料燃焼性評価システムのNFPA 253を意味し、これはFederal Test Method 372およびAmerican Society for Testing Materials ASTM−E648としても知られている。
【0031】
典型的には、難燃剤は、3GTカーペットの繊維および/または基布系および/または接着剤系の上および/または中に、繊維および/または基布系の重量に基づいて約2%〜約6%(約20000ppm〜約60000ppm)の範囲内で存在する。たとえば、ATHを含有する3GTカーペットは、典型的にはカーペット重量に基づいて約2〜約4wt%のアルミニウムが測定される。検出可能な量のATHを含有しないカーペットは、一般に約1755ppm(0.1755wt%)以下のアルミニウムを含有する。検出可能な量のリン含有難燃剤を含有しないカーペットは、典型的には約1100ppm(0.11wt%)以下のリンを含有し、一般には約600ppm(0.06wt%)〜約1100ppm(0.11wt%)の範囲内のリンを含有する。検出可能な量の亜鉛含有難燃剤を含有しないカーペットは、典型的には約1100ppm(0.11wt%)以下の亜鉛を含有し、一般には約120ppm(0.012wt%)〜約1100ppm(0.11wt%)の範囲内の亜鉛を含有する。本明細書において使用される場合、用語「検出可能な量の物質」は、その物質の検出を目的とする関連分野において周知の標準技術を使用して検出可能な量の物質を含むことができる。
【0032】
本明細書において使用される場合、「難燃剤を実質的に含有しない」は、繊維および/または基布系および/または接着剤系の上および/または中の難燃剤が、有用な量未満、すなわち、発火源が取り除かれた後でカーペットが燃焼する、燃焼し続ける、または流動する傾向を軽減することができる量未満の量であることを意味する。3GTカーペットの繊維および/または基布系および/または接着剤系の上および/または中の難燃剤の有用な量は、カーペット重量に基づいて約20000ppm(約2wt%)を超える難燃剤の量である。「難燃剤を実質的に含有しないカーペット」は、好ましくはカーペット重量に基づいて約2000ppm(0.2wt%)未満、より好ましくは約1000ppm(0.1wt%)未満、さらにより好ましくは約500ppm(0.05wt%)未満、さらにより好ましくは約50ppm(0.005wt%)未満、最も好ましくは0ppm(「難燃剤を含有しない」)の難燃剤を含有する。
【0033】
反対の意味が示されているのでなければ、「ポリ(トリメチレンテレフタレート)」(「3GT」または「PTT」)への言及は、少なくとも約70モル%のトリメチレンテレフタレート繰り返し単位を含有するホモポリマーおよびコポリマー、ならびにそのようなホモポリマーおよびコポリマーを少なくとも約70モル%含むポリマー組成物を含むことを意味する。好ましいポリ(トリメチレンテレフタレート)は、少なくとも約85モル%、より好ましくは少なくとも約90モル%、さらにより好ましくは少なくとも約95モル%、さらにより好ましくは少なくとも約98モル%、さらにより好ましくは約100モル%トリメチレンテレフタレート繰り返し単位を含有する。
【0034】
「ポリ(トリメチレンテレフタレート)嵩高連続フィラメントヤーン」または「3GT嵩高連続フィラメントヤーン」または「PTT嵩高連続フィラメントヤーン」は、たとえば、米国特許第5662980号明細書、米国特許第5645782号明細書、米国特許第6242091号明細書、米国特許第6684618号明細書、および米国特許出願公開第2005/0147784A1号明細書に開示される方法によって製造することができる。しかし、当業者に周知のこのようなヤーンのあらゆる製造方法が許容できる。
【0035】
「ポリ(トリメチレンテレフタレートステープルヤーン」または「3GTステープルヤーン」または「PTTステープルヤーン」は、たとえば、米国特許第6752945号明細書、米国特許第6458455号明細書、米国特許第6641916号明細書、および米国特許出願公開第2004/0146711A1号明細書に開示される方法によって製造することができる。しかし、当業者に周知のこのようなヤーンのあらゆる製造方法が許容できる。
【0036】
本明細書において使用される場合、「キャリヤー」は、芳香族ポリエステルの3GTの構造を開いて、分散染料での可染性を向上させる機能を果たす芳香族有機化合物を意味する。キャリヤーの例としては、安息香酸ベンジル、安息香酸ビフェニルブチル、安息香酸ブチル、ブチルフタルイミド、N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)、フタル酸ジメチル、ジフェニルエーテル、安息香酸2−エチルヘキシル、安息香酸ヘキシル、安息香酸イソプロピル、安息香酸オクチル、o−フェニルフェノール、プロピルフタルイミド、およびトリクロロベンゼンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。キャリヤーが存在する実施形態においては、キャリヤーはカーペット中に、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーン重量に基づいて約25〜約3000ppmの範囲内、より好ましくは約25〜約2000ppmの範囲内、さらにより好ましくは約25〜約1000ppmの範囲内、最も好ましくは約25〜約500ppmの範囲内で存在する。
【0037】
本明細書において使用される場合、「帯電防止剤」は、局所的に適用される吸湿性化学物質である。帯電防止剤の例としては、リン酸ジブチル、ジエタノールアミド、エトキシル化第3級脂肪酸アミン、長鎖ポリエチレンオキシド化合物、および第4級アンモニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。カーペットサンプル中の帯電防止剤量は、関連分野の当業者に周知の手段によって求められる。
【0038】
たとえば、残留リン酸ジブチルは、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって検出される。本発明の目的では、ppmの単位での残留リン酸ジブチル値は、リン酸ジブチルが約75%の帯電防止剤を構成することを示している。したがって、たとえば、500ppmの残留リン酸ジブチルは、カーペット中に帯電防止剤がポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーン重量に基づいて約666.7ppmで存在することを示している。帯電防止剤がカーペット中に存在する実施形態においては、帯電防止剤は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーン重量に基づいて約1875ppmまでの残留リン酸ジブチル(2500ppmの帯電防止剤)、好ましくは約1500ppmまでの残留リン酸ジブチル(2000ppmの帯電防止剤)、より好ましくは約750ppmまでのリン酸ジブチル(1000ppmの帯電防止剤)、さらにより好ましくは約570ppmまでの残留リン酸ジブチル(760ppmの帯電防止剤)で存在する。
【0039】
キャリヤーを含有しない実施形態においては、難燃剤を含有しないカーペットの製造方法は:
(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンをタフティングしてカーペットを製造するステップと;
(b)前記カーペットを染色するステップと;
(c)帯電防止剤を前記カーペットに適用するステップとを含む。
【0040】
キャリヤーおよび/または帯電防止剤は、典型的には(しかし常にでなない)カーペットポストタフティングに適用される。キャリヤー、および場合により帯電防止剤のタフティングしたカーペットへの適用は、当業者に周知のあらゆる方法によって行うことができる。好ましくは、キャリヤーは、ベック(beck)(バッチ)染色および連続(レンジ)染色中の染浴または染液に加えることによって、ならびに連続染色レンジの洗浄タンク中の残留キャリヤーによって適用される。帯電防止剤は好ましくは、抽出後および乾燥前の染色済みカーペット上に吹き付け適用される。
【0041】
キャリヤーを含む本発明のカーペットは、当業者に周知のあらゆる方法によって染色することができる。特に好ましい方法は、ポリ(エチレンテレフタレート)ヤーンを含むカーペットの染色に使用される方法である。一実施形態においては、キャリヤーの適用およびカーペットの染色は、実質的に同時、好ましくは同時に行うことができる。
【実施例】
【0042】
以下の実施例によって本発明をさらに明確にする。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、説明のみを目的として提供していることを理解されたい。前述の説明およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の好ましい特徴を把握することができ、本発明の意図および範囲から逸脱せずに、種々の使用および条件に適合させるための本発明の種々の変更および修正を行うことができる。
【0043】
略語の意味は以下の通りである。「h」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「sec」は秒を意味し、「m」はメートルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「g」はグラムを意味し、「oz」はオンスを意味し、「yd2」は平方ヤードを意味し、「dpf」はフィラメント当たりのデニール(dernier)を意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「kg」はキログラムを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「in」はインチを意味し、「3GT」はポリ(トリメチレンテレフタレート)を意味し、「2GT」はポリ(エチレンテレフタレート)を意味し、「mpm」は1分当たりのメートル数を意味し、「rpm」は1分当たりの回転数を意味し、「ppm」は百万部当たりの部数を意味し、「wt%」は重量パーセント(値)を意味する。
【0044】
実験
1400〜1500デニール、18〜20dpfの嵩高連続フィラメント(BCF)ヤーンを、紡糸温度約250℃および紡糸速度約2500〜3500mpmにおいて3GTポリマーから紡糸した。繊維断面は変形比が1.7〜3.0の三葉であった。
【0045】
このBCFヤーンについて、撚り数約3.5〜6回/インチ(8.9〜15.2回/cm)および速度約4500〜7000rpmでケーブル撚糸機上でケーブル撚りを行った。撚られたBCFヤーンを、循環蒸気系を取り付けたSuperbaトンネルを使用して連続的にヒートセットした。プレバルカー(prebulker)温度約190〜208°F(87.8〜97.8℃)およびトンネル温度約270〜300°F(132.2〜148.9℃)で、ストレートセットコイラー(straight set coiler)または従来のスタッファーボックスのいずれかを使用した。ベルト速度は約10〜20mpmであり、トンネル長さは6〜12mであった。
【0046】
25〜75oz/yd2(847.8〜2543.3g/m2)の坪量を有する中密度の住居用カットパイルカーペットを、3GTヒートセットヤーンからタフティングした。全幅(幅12〜15フィート(3.62〜4.57m))について、水平式スチーマーを使用してpH4.0〜8.0でベージュ色に連続レンジ染色するか、またはベック染色方法(当業者に周知の方法など)などによって他の染色を行うかした。2GTポリエステルの染色に通常使用される、カーペット重量において0.5%〜5.0%のキャリヤーを、染料混合物に加えた。染色および仕上げ染色方法に使用した化学物質を表1に示す。ラテックス添加(83.5%固形分)において典型的な化学物質である充填剤(CaCO3)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックスを使用した。ラテックスは425部であった。
【0047】
表1

【0048】
連続染色方法は以下の通りであった。
1.バックビーティング(Back Beat)および減圧
2.175〜200°F(79.4〜93.3℃)における予備蒸気処理
3.400%含浸量における染料の適用、90°F(32.2℃)で適用
4.208°F(97.8℃)で8〜10minの蒸気処理
5.3回の後洗浄および抽出
6.場合により局所的な乾燥機;たとえば、帯電防止剤、フルオロケミカル
7.多ゾーン乾燥機中の乾燥を280°F(137.8℃)で開始し260°F(126.7℃)で終了
8.プロセス速度は50〜150フィート/min(15.2〜45.7mpm)であった
【0049】
ラテックス添加方法は以下の通りであった。
1.4〜10oz/yd2(135.6〜339.1g/m2)で二次基布上にラテックスを適用
2.15〜35oz/yd2(508.7〜1186.9g/m2)で一次基布上にラテックスを適用
3.マリッジロールに通す
4.プロセス速度−50〜150フィート/分(15.2〜45.7mpm)
5.約425°F(218.3℃)で硬化開始、約320°F(160℃)で終了
【0050】
キャリヤー分析手順
基布材料が繊維上に残らないように表面の繊維をカーペットから切断した。1.0gの繊維をねじ蓋付き40mLバイアルに入れ、次にこれに20.0mLのメタノールを入れた。続いて、このバイアルを60℃の水浴に2時間入れ、その後バイアルを取り出し、室温に戻した。使い捨てピペットを使用して、2mLの溶液をガスクロマトグラフィー(GC)バイアル中に移した。次に、外部標準較正法を使用して、この溶液をGCで分析した。この手順によりキャリヤーの濃度を求めた。
計測パラメーター:
GC条件:
GCモデル:Agilent 6890
GCカラム:HP 5、30m×0.25mm×250mm
オーブン条件:初期温度=40℃
初期時間=0min
速度=10℃/min
最終温度=200℃
最終時間=16min
分割比:20.92:1
分流:20.9mL/min
全流量:24.5mL/min
流速:1.0mL/min
流動形態:一定流
キャリアガス:ヘリウム
検出器(FID)温度:300℃
水素流:30mL/min
空気流:400mL/min
複合流:25.0mL/min
データ速度:10Hz
注入量:1μL
計算方式:外部標準パーセント
ソフトウェア:HP Chemstation Version A.08.03
抽出バイアル:VWR Tracecleanのあらかじめ洗浄した透明ホウケイ酸塩の40mLバイアル
抽出溶液:メタノール、EMD Science、GC、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光測定、およびグラジエント分析用
【0051】
実施例1
メタミンピル試験(methamine pill test)は、16 CFR § 1630に見られるFF 1−70、およびASTM D−2859のSurface Flammability of Carpets and Rugsに記載されている。
【0052】
燃焼性能は、以下の表に示されるピル試験の合計の平均燃焼距離を表している。サンプル上の火炎を消した後、燃焼の端部から8インチの円形金属テンプレートまでの最小距離(燃焼距離)として1回の燃焼測定を行った。典型的にはカーペットサンプルを、それぞれが円形金属テンプレートの大きさである8つのサブサンプルに分割し、平均燃焼距離を、平均化した燃焼測定(燃焼距離)に基づいて計算した。したがって、燃焼距離はカーペットサンプル燃焼量に反比例する尺度であり;たとえば、燃焼しなかったカーペットの燃焼距離は4.0inであり、円形金属テンプレートの中心から円形金属テンプレートの端まで完全に燃焼したカーペットの燃焼距離は0.0inである。
【0053】
本明細書において使用される場合、3.0inを超える平均燃焼距離は、優秀な燃焼性能を示している。1.0inを超え3.0inまでの平均燃焼距離(1.0inを超える燃焼性能がこのピル試験に「合格」となる)は、最低限の燃焼性能を示している。1.0in以下の平均燃焼距離(ピル試験に不合格ピル試験)は、燃焼性能が不十分であることを示している。カーペットサンプル1〜4の平均燃焼距離を表2に示す。
【0054】
表2

1燃焼の端部から円形テンプレートまでの平均距離−好ましい距離>3.0in
【0055】
表2の例は、4つの異なる住居用カットパイルカーペットの3500〜4000ppmの範囲内の残留キャリヤー量における典型的なピル試験結果である。タフティング後の状態のカーペットは、検出可能なキャリヤーを有さず、少量のキャリヤーで染色したカーペットは4000〜5000ppmのキャリヤーを含有する。仕上げ(基布/ラテックス添加)後、キャリヤーは3500〜4000ppmの範囲まで大きく低下した。すべての場合で、4000〜5000ppmのキャリヤーで染色したカーペットの燃焼距離は比較的短く、すなわち<3.0inであり、ピル試験には技術的には合格したが燃焼性能最低限であった。これらの最低限ピル試験結果を有するカーペット商品では、一貫した結果を確実に得るために難燃剤が必要となる。
【0056】
表3

【0057】
表3のカーペットサンプルは、残留キャリヤー量が25〜400ppmの範囲内である異なる住居用カットパイルカーペットの典型的なピル試験結果である。燃焼距離は典型的には3.5inを超え、優秀な結果であった。25〜3000ppmの間のキャリヤーを含有するカーペットサンプルがピル試験に合格し、難燃剤の使用を必要とせずに燃焼距離が典型的には3.5inを超え、優秀な結果となった。キャリヤーを全く含有しない対照カーペットサンプルはピル試験に合格し、燃焼距離は3.5inを超えた。
【0058】
実施例2
残留リン酸ジブチルを分析するために、サンプルについて、陰イオンエレクトロスプレー質量分析検出システム(SIMモード)を有するHPLCを使用して試験した。移動相は水(200mg/Lの炭酸アンモニウムを含有)であり、イソプロパノールのグラジエントを使用した。超音波浴中で脱イオン水でサンプルを抽出し、濾過した後、注入した(約1h後に浴から取り出したときにはサンプルを触ると温かかった)。使用したカラムはHypercarb(Thermo Electron Corp.,San Jose,Cal.)3×150mm、5μmであり80℃で使用した。
【0059】
表4

【0060】
3GT対照カーペットサンプル7は、3M Protective Chemical PM−1451(3M Protective Materials Division,3M Center,St.Paul,Minn.より入手可能)および帯電防止剤で局所的に処理した。カーペット製造の観点から、2GTカーペットとほぼ同時に同じ工場内で3GTカーペットを染色することが実際的である。このような工場で染色された3GTカーペットは、2GT染色工程後に残存するキャリヤーを吸収しうる。したがって、カーペットサンプルは、2GTカーペット染色後に洗浄浴から吸収した少量の残留キャリヤー542ppmを含有する。リン酸ジブチルより測定される比較的多量の4200ppmの帯電防止剤の存在は、不十分なピル試験性能および不十分な燃焼性能の原因であった。カーペットサンプル7を約150℃で約1h加熱すると、一部のキャリヤーは一部の帯電防止剤とともに除去されるが、ピル試験性能および燃焼性能はなお不十分であった(カーペットサンプル7A)。帯電防止剤は水溶性であるので、熱水抽出(カーペットの洗浄に使用される一般的な蒸気洗浄手順)によって、残留リン酸ジブチルにより測定される帯電防止剤量が大きく減少し、許容できるピル試験性能(カーペットサンプル7B)および優秀な燃焼性能が得られた。
【0061】
カーペット(carapet)サンプル中に存在する帯電防止剤の約75%をリン酸ジブチルが構成すると仮定した。したがって、カーペットサンプル7の場合、帯電防止剤はカーペット中に約5600ppm存在し、カーペットサンプル7Aの場合、帯電防止剤はカーペット中に約4267ppm存在し、カーペットサンプル7Bの場合、帯電防止剤はカーペット中に約760ppm存在した。
【0062】
表5

2検出限界は150ppmであった。
【0063】
表5のカーペットサンプルは、25〜300ppmの範囲内の残留キャリヤーおよび残留リン酸ジブチルで測定して150ppm(検出限界)未満の残留帯電防止剤を含有する異なる住居用カットパイルカーペットの典型的なピル試験結果である。燃焼距離は典型的には3.5inを超え、優秀な結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンと、基布系と、接着剤系とを含むカーペットであって、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが、ヤーンの重量に基づいて約25〜約3000ppmの範囲内のキャリヤー、および/または約2500ppmまでの量の耐電防止剤を含み、カーペットが難燃剤を実質的に含有しない、カーペット。
【請求項2】
前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンの重量に基づいて約25〜約2000ppmの範囲内の前記キャリヤーを含む請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】
前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンの重量に基づいて約25〜約1000ppmの範囲内の前記キャリヤーを含む請求項1に記載のカーペット。
【請求項4】
前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンの重量に基づいて約25〜約500ppmの範囲内の前記キャリヤーを含む請求項1に記載のカーペット。
【請求項5】
前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが帯電防止剤を実質的に含まない請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項6】
前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンの重量に基づいて約2500ppmまでの量の前記帯電防止剤を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項7】
前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンが、前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンの重量に基づいて約2500ppmまでの量の前記帯電防止剤を含み、キャリヤーを含まない請求項1に記載のカーペット。
【請求項8】
前記カーペットが、前記カーペットの重量に基づいて約2000ppm(0.2wt%)未満の難燃剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項9】
前記カーペットが、前記カーペットの重量に基づいて、約1755ppm(0.1755wt%)以下のアルミニウム、約1100ppm(0.11wt%)以下のリン、および約1100ppm(0.11wt%)以下の亜鉛を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項10】
前記カーペットが、ASTM−E648に基づく試験によって測定される際、クラスI燃焼性評価を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載のカーペット。
【請求項11】
請求項1〜6および8〜10のいずれか1項に記載の、難燃剤を実質的に含有しないカーペットを製造する方法であって:
(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンをタフティングして、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンと、基布系と、接着剤系とを含むカーペットを製造するステップと;
(b)キャリヤーを前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンに適用するステップと;
(c)前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを染色するステップと
を含む方法。
【請求項12】
帯電防止剤を前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンに適用するステップをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜4および6〜10のいずれか1項に記載の、難燃剤を実質的に含有しないカーペットを製造する方法であって:
(a)ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンをタフティングして、ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンと、基布系と、接着剤系とを含むカーペットを製造するステップと;
(b)前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを染色するステップと;
(c)帯電防止剤を前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンに適用するステップと
を含む方法。
【請求項14】
染色ステップの前に、キャリヤーを前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンに適用するステップをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記タフティングステップ(a)が:
(a1)前記ポリ(トリメチレンテレフタレート)ヤーンを一次基布中にタフティングするステップと;
(a2)ラテックス接着剤を前記一次基布に適用するステップと;
(a3)二次基布を前記ラテックス接着剤上に適用するステップと
を含む請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−542420(P2009−542420A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519496(P2009−519496)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/015753
【国際公開番号】WO2008/020933
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】