説明

難燃性ポリアミド樹脂組成物

【課題】ハロゲンを含有せず、成形性、成形品外観にすぐれ、高度な難燃性を有するポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(a)ポリアミド樹脂
(b)ホスファゼン化合物
(c)変性フェノール系樹脂
からなる難燃性ポリアミド樹脂組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化合物、アンチモン化合物を含まないことにより、環境への負荷が小さい、高度に難燃化され成形品外観に優れたポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリング樹脂の中で、ポリアミド樹脂は、耐熱性が高く、成形流動性が極めて良いという特徴によって、電子・電気用途、OA機器用途、自動車用途などに広く使われている。
これら用途では、難燃性が要求され、難燃剤を添加したポリアミド樹脂組成物が多用される。
【0003】
ポリアミド樹脂の難燃剤としては、フィラー無添加のポリアミド樹脂はメラミンシアヌレート、ガラス繊維や無機フィラーを添加したポリアミド樹脂は臭素化ポリスチレンと酸化アンチモンが主流となっている。フィラー無添加難燃ポリアミド樹脂では、ハロゲンを使っていないので環境負荷は小さく、この点では優れた難燃化手法と言えるが、メラミンシアヌレートの難燃力が十分でないことによって、性能改良の要求に応えられずにきた。ポリアミド樹脂は冬場、成形直後のドライ状態で折れ割れが発生したり、1年を通じての季節変化に対応した湿度変化による吸水寸法変化が問題となる。折れ割れ改良のためには、エラストマーなどの耐衝撃強度付与材を添加することが有効と考えられ、また、吸水寸法変化には、ポリフェニレンエーテルやポリプロピレンなど吸水しない樹脂を添加することが考えられるが、これら、エラストマー、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレンなどの樹脂を添加すると、ポリアミド樹脂の難燃性は著しく悪化し、現在のメラミンシアヌレートでは、いくら添加量を増してもUL94V−0を達成するレベルまで難燃性を向上させることができない。フィラー添加ポリアミド樹脂は、フィラーがろうそくの芯の働きをして燃焼を加速するため、やはりメラミンシアヌレートでは難燃力が不足してハロゲン系難燃剤を使わざるを得ないのが実態である。メラミンシアヌレート以外の非ハロゲン難燃剤においても、十分な難燃力を有していなかったり、熱分解、加水分解などによってブリードアウトを起こすなど実用に耐えるものがなかった。すなわち、高い難燃力の難燃剤もしくは難燃化手法が求められていた。
【0004】
リン系難燃剤は、樹脂を炭化させ、炭化層で表面を覆うことによって難燃化するため、うまく使えば、高い難燃力を期待できる。リン系難燃剤は、その働きから考えて、化合物中のリン元素濃度が高いものが、高い難燃力を有することが期待され、実証もされている。単にリン濃度が高い物質であれば、赤燐が最も効果的と考えられる。実際、難燃性に関しては、その通りであるが、赤燐は加水分解して金属を腐食したり、有毒なホスフィンガスを発生したりするので敬遠される。赤燐以外の有機リン化合物でも、同様に、安定性が選択の重要な要素となる。その点、ホスファゼン化合物は、難燃力、安定性ともに優れたリン化合物である。
【0005】
ホスファゼン化合物をポリアミドに添加して難燃化する試みは既になされた(例えば、特許文献1参照)。ここでは、ポリアミドとホスファゼン化合物の相溶性を向上させるため、ポリフェニレンエーテルをも添加した組成物が開示されている。しかるにこれら組成物は、ポリフェニレンエーテルによる着色の問題、未だ難燃性が不十分という問題を有していた。
芳香族ポリアミドにホスファゼン化合物を添加する試みもなされている(例えば、特許文献2参照)。しかるに、これら組成物も難燃性が未だ不十分であった。
【特許文献1】特開2002−53751号公報
【特許文献2】WO2001−34704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハロゲンを含有せず、成形品外観にすぐれ、高度な難燃性を有するポリアミド樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリアミド、ホスファゼン化合物および変性フェノール系樹脂からなる樹脂組成物が目的を達成できることを見出し本発明にいたった。
すなわち、
1.(a)ポリアミド樹脂
(b)ホスファゼン化合物
(c)変性フェノール系樹脂
からなる難燃性ポリアミド樹脂組成物、
2.成分(c)の変性フェノール系樹脂が、酸無水物基を有するフェノール系樹脂であることを特長とする上記1に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物、
3.(c)成分の変性フェノール系樹脂が、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂およびポリビニルフェノール系樹脂から選択された少なくとも1種を変性した変性フェノール系樹脂である上記1または2に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ハロゲンを含有せず、成形品外観に優れ、高度な難燃性を有するポリアミド樹脂組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の成分(a)ポリアミド樹脂は、工業的に生産されているポリアミド樹脂であれば特に限定されない。好ましくは、主鎖中の芳香環成分含有率5〜75wt%のポリアミド樹脂である。主鎖中の芳香環成分含有率は、好ましくは、25〜65wt%、さらに好ましくは、31〜55wt%である。主鎖中の芳香環成分含有率は式(1)で表される。
芳香環成分含有率が5%以上の方が、難燃性が向上する、成形品外観がよくなるなどの特徴が出て好ましい。芳香環成分含有率が75%以下の方が、成形流動性が良くなり好ましい。
芳香環成分含有率(φ)=(芳香環を構成する炭素および水素の総原子量)/(ポリアミドの繰り返し単位の総原子量)×100 (%) ・・・式(1)
【0010】
なお、コポリアミドの場合、式(2)で求められる。
芳香環成分含有率(φ)=Σφi×αi×100 (%) ・・・式(2)
φi:i番目コポリアミド成分の芳香環成分含有率
αi:i番目コポリアミド成分のポリアミド全量に対する重量分率
ポリアミド樹脂の種類は、ジアミンとジカルボン酸をモノマー成分とするポリアミド、ラクタム、アミノカルボン酸をモノマー成分とするポリアミド、これらのランダム、ブロック、グラフトコポリマーなどである。
【0011】
これらポリアミド樹脂を合成するためのモノマーは、ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ナノメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなど、ジカルボン酸としては、アジピン酸、オクタメチレンジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸、ウンデカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸など、アミノカルボン酸としては、ペンタメチレンアミノカルボン酸、デカメチレンアミノカルボン酸、ウンデカメチレンアミノカルボン酸など、ラクタム類としては、カプロラクタム、ラウロラクタムなどが挙げられる。重合反応の方法は、一般的なポリアミドの重合方法であれば特に限定しない。通常、ジアミンとカルボン酸とから重合する場合、アミンと酸の当量塩を作り、もしくは、別々に当量添加して縮重合反応する。ラクタムから重合する場合、開環触媒として、少量の水、有機酸、鉱酸などを添加し、縮重合反応する。モノマーもしくはモノマー水溶液を加熱し、水分を除去しながら重合を進める溶融重合は工業的に汎用されている。ここで、重合度コントロール剤として、アミンや酸を添加することは周知のことである。また、モノマーを密閉容器中、水の存在下加熱してオリゴマーをプレ重合し、これをニーダーもしくは押出機で後重合する方法もある。モノマーの種類によっては、モノマー段階から、ニーダーもしくは押出機で重合する方法もある。
【0012】
これらモノマーの組み合わせで得られるポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリラウロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミドとポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)の共重合体、ポリヘキサメチレンアジパミドとポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)の共重合体、ポリヘキサメチレンテレフタラミドとポリヘキサメチレンイソフタラミドの共重合体、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミドおよびポリヘキサメチレンイソフタラミドの共重合体、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)とポリヘキサメチレンテレフタラミドの共重合体、ポリカプロラクタムとポリヘキサメチレンイソフタラミドの共重合体、ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンテレフタラミドおよびポリヘキサメチレンイソフタラミドの共重合体、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンテレフタラミドおよびポリヘキサメチレンイソフタラミドの共重合体、ポリナノメチレンテレフタラミド(9T)、ポリナノメチレンテレフタラミドとポリ2−メチルオクタメチレンテレフタラミドとの共重合体、ポリデカメチレンテレフタラミド(10T)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(12T)、ポリデカメチレンテレフタラミドとポリメタキシリレンテレフタラミドの共重合体、ポリドデカメチレンテレフタラミドとポリメタキシリレンテレフタラミドとの共重合体などが例示できる。
【0013】
ポリアミド樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂が連続相を形成すれば良い。
変性フェノール系樹脂とポリアミド樹脂の合計100重量部に対して、30〜99重量部、好ましくは40〜90重量部、さらに好ましくは50〜80重量部である。30重量部より多いと連続相を形成する傾向にある。99重量部より少ないと残部の変性フェノール系樹脂添加量を確保でき、難燃性に良い傾向がある。
【0014】
本発明の樹脂組成物中ポリアミド成分の水分率は、0.1重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.05重量%以下である。押出し時、成形時の組成物の分解抑制や、成形品外観の向上のため、水分率が少ないことは好ましい。本発明でいうポリアミド成分中の水分率とは、組成物中の水分は全てポリアミド中にあると仮定して測定、換算した値であって、具体的には、次式で計算した値である。
(ポリアミド中の水分率)(%)=(組成物の含有水分率実測値)(%)/(組成物中のポリアミド成分含有率)(%)
組成物中の含有水分率は、カールフィッシャー水分測定装置を使って、測定することができる。
ポリアミド中の水分率は、成形品外観や押出時、成形時の分解に影響が現れる。
本発明でいう成分(b)ホスファゼン化合物とは、以下である。
【0015】
【化1】

【0016】
n=3〜15の環状ホスファゼンが好ましく、特にn=3、4の6員環及び8員環を全ホスファゼン化合物中に80重量%以上含有する環状ホスファゼン化合物が好ましい。さらには置換基R及びRがアリール基である環状ホスファゼン化合物が好ましい。
最も好ましいのは、R、Rがフェニル基であるフェノキシホスファゼンである。
【0017】
置換基R、Rとしては特に制限はないが、一例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert-ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基などの直鎖又は分岐したアルキル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などの無置換フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−(n−プロピル)フェニル基、3−(n−プロピル)フェニル基、4−(n−プロピル)フェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−(n−ブチル)フェニル基、3−(n−ブチル)フェニル基、4−(n−ブチル)フェニル基、2−(2−メチルプロピル)フェニル基、3−(2−メチルプロピル)フェニル基、4−(2−メチルプロピル)フェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−(n−ペンチル)フェニル基、3−(n−ペンチル)フェニル基、4−(n−ペンチル)フェニル基である。
【0018】
また、2−(1−メチルブチル)フェニル基、3−(1−メチルブチル)フェニル基、4−(1−メチルブチル)フェニル基、2−(2−メチルブチル)フェニル基、3−(2−メチルブチル)フェニル基、4−(2−メチルブチル)フェニル基、2−(3−メチルブチル)フェニル基、−(3−メチルブチル)フェニル基、−(3−メチルブチル)フェニル基、2−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル基、3−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル基、4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル基、2−(2,2−ジメチルプロピル)フェニル基、3−(2,2−ジメチルプロピル)フェニル基、4−(2,2−ジメチルプロピル)フェニル基、2−(1,2−ジメチルプロピル)フェニル基、3−(1,2−ジメチルプロピル)フェニル基、4−(1,2−ジメチルプロピル)フェニル基、4−ドデシルフェニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基である。
【0019】
また、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基などの一置換フェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2−エチル−3−メチルフェニル基、2−エチル−4−メチルフェニル基、2−エチル−5−メチルフェニル基、2−エチル−6−メチルフェニル基、3−エチル−2−メチルフェニル基、3−エチル−4−メチルフェニル基、3−エチル−5−メチルフェニル基、5−エチル−2−メチルフェニル基、4−エチル−2−メチルフェニル基、4−エチル−3−メチルフェニル基、2−メチル−3−n−プロピルフェニル基、2−メチル−4−n−プロピルフェニル基、2−メチル−5−n−プロピルフェニル基、2−メチル−6−n−プロピルフェニル基、3−メチル−2−n−プロピルフェニル基である。
【0020】
また、3−メチル−4−n−プロピルフェニル基、3−メチル−5−n−プロピルフェニル基、5−メチル−2−n−プロピルフェニル基、4−メチル−2−n−プロピルフェニル基、4−メチル−3−n−プロピルフェニル基、2−メチル−3−イソプロピルフェニル基、2−メチル−4−イソプロピルフェニル基、2−メチル−5−イソプロピルフェニル基、2−メチル−6−イソプロピルフェニル基、3−メチル−2−イソプロピルフェニル基、3−メチル−4−イソプロピルフェニル基、3−メチル−5−イソプロピルフェニル基、5−メチル−2−イソプロピルフェニル基、4−メチル−2−イソプロピルフェニル基、4−メチル−3−イソプロピルフェニル基、2−メチル−3−n−ブチルフェニル基、2−メチル−4−n−ブチルフェニル基、2−メチル−5−n−ブチルフェニル基、2−メチル−6−n−ブチルフェニル基、3−メチル−2−n−ブチルフェニル基、3−メチル−4−n−ブチルフェニル基、3−メチル−5−n−ブチルフェニル基、5−メチル−2−n−ブチルフェニル基、4−メチル−2−n−ブチルフェニル基、4−メチル−3−n−ブチルフェニル基、2−(2−メチルプロピル)−3−メチルフェニル基、2−(2−メチルプロピル)−4−メチルフェニル基、2−(2−メチルプロピル)−5−メチルフェニル基、2−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェニル基、3−(2−メチルプロピル)−2−メチルフェニル基である。
【0021】
また、3−(2−メチルプロピル)−4−メチルフェニル基、3−(2−メチルプロピル)−5−メチルフェニル基、3−(2−メチルプロピル)−6−メチルフェニル基、4−(2−メチルプロピル)−2−メチルフェニル基、4−(2−メチルプロピル)−3−メチルフェニル基、2−(3−メチルプロピル)−3−メチルフェニル基、2−(3−メチルプロピル)−4−メチルフェニル基、2−(3−メチルプロピル)−5−メチルフェニル基、2−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェニル基、3−(3−メチルプロピル)−2−メチルフェニル基、3−(3−メチルプロピル)−4−メチルフェニル基、3−(3−メチルプロピル)−5−メチルフェニル基、3−(3−メチルプロピル)−6−メチルフェニル基、4−(3−メチルプロピル)−2−メチルフェニル基、4−(3−メチルプロピル)−3−メチルフェニル基、2−メチル−3−tert−ブチルフェニル基、2−メチル−4−tert−ブチルフェニル基、2−メチル−5−tert−ブチルフェニル基、2−メチル−6−tert−ブチルフェニル基、3−メチル−2−tert−ブチルフェニル基、3−メチル−4−tert−ブチルフェニル基、3−メチル−5−tert−ブチルフェニル基、5−メチル−2−tert−ブチルフェニル基、4−メチル−2−tert−ブチルフェニル基である。
【0022】
さらにまた、4−メチル−3−tert−ブチルフェニル基等の二置換フェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基等の多置換フェニル基等が挙げられ、これらホスファゼン化合物を得るための参考文献および合成例は、特公平3−73590号公報、特開平9−71708号公報、特開平9−183864号公報、特開平11−181429号公報及び特許第3053617号等に開示されている。
さらに、特開平11−181429号公報に開示されている技術により、下記化学式(2)に示す化合物
【0023】
【化2】

【0024】
(式中R7〜R10は独立にそれぞれ炭素1〜4のアルキル基、アリール基、水素を表す。
またXは、―C(CH−、−SO−、−S−、または−O−を、yは0又は1を表す)からなる群より選ばれた化合物とホスファゼン化合物を加熱することによって架橋されていても良いが、架橋されていないものの方が、加工流動性などの点で好ましい。
【0025】
これらの架橋構造を有するホスファゼン化合物は、ジクロロホスファゼンオリゴマーにフェノールのアルカリ金属塩および芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩を反応させることによっても製造される。これらのアルカリ金属塩は、ジクロロホスファゼンオリゴマーに対して理論量よりもやや過剰に添加される。
これらのホスファゼン化合物は一種単独で用いても、二種以上の混合物として用いても良い。また、n=3の六員環ホスファゼン単独で用いても、n=4以上の多員環ホスファゼンとの混合物として用いても良い。
【0026】
ホスファゼン化合物は、化学式(1)で示される化合物を90%以上含有していれば、その他不純物を含有していても、本発明の効果を損なわない限り問題ない。不純物としては、原料のフェノール、その誘導体、クロロホスファゼンのクロルを全部までは、置換しきらず、1〜数個クロルが残ったもの、アルカリ金属塩、水分、副生物である鎖状ホスファゼン化合物、大環状ホスファゼン化合物などである。
ホスファゼン化合物の添加量は、変性フェノール系樹脂とポリアミド樹脂の合計100重量部に対して、1〜40重量部、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは、5〜20重量部である。
【0027】
本発明の成分(C)である変性フェノール系樹脂とは、フェノール、フェノール誘導体、レゾルシン、アラルキル類から選ばれる少なくとも1種の化合物と必要に応じて共重合体を形成し得るその他の化合物とからなる重合体を変性した樹脂であり、例えば、ノボラック樹脂、アラルキル樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂などを変性したものが挙げられる。この中では、ノボラック樹脂を変性したものが好ましい。
【0028】
ノボラック樹脂は、フェノール、フェノール誘導体(m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール)、レゾルシンなどと、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど、特にホルムアルデヒド)と酸触媒存在下、付加反応、縮合反応を行って得られる。中でもフェノールとホルムアルデヒドとの反応で得られるフェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノールノボラック樹脂には、フェノール性水酸基に対してメチレン結合がオルソ位で結合しているものが多いハイオルソフェノールノボラック樹脂、オルソ位、パラ位が混在しているランダムフェノールノボラック樹脂がある。トリアジン類(メラミン、ベンゾグアナミンなど)が共重合したトリアジン類変性フェノールノボラック樹脂も含む。
【0029】
アラルキル樹脂は、前記フェノール類とアラルキル類(キシリレンユニットを有する反応性化合物)との反応から得られるフェノールアラルキル樹脂が例示できる。
ポリビニルフェノール系樹脂は、ビニルフェノールの単独重合体、ビニルフェノールと他の共重合可能なモノマーとの共重合体がある。
変性フェノール系樹脂とは、ポリアミドの末端基であるアミノ基、および/またはカルボキシル基と反応性を有する官能基をフェノール系樹脂に導入したものである。官能基の導入方法は、特に限定されないが、官能基を有する化合物をフェノール系樹脂に、溶液中、過酸化物存在下、非存在下に化学反応によって付加する方法、溶融状態下、過酸化物存在下、非存在下に化学反応によって付加する方法、フェノール樹脂の合成時に、フェノール樹脂と共重合可能な化合物であって、官能基を有する化合物を必要量添加して共重合、もしくはグラフトする方法などが挙げられる。官能基の種類は、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、酸無水物基、イソシアナト基などがあげられる。特に酸無水物基は好ましい。
【0030】
これら変性フェノール系樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、1〜60重量部、好ましくは、1〜40重量部、さらに好ましくは、3〜30重量部である。
変性フェノール系樹脂の配合により、ホスファゼン化合物と相乗的に難燃性を向上させることができる。変性フェノール系樹脂の配合量をあまり多くしないことで、成形流動性が良い組成物が得られ、成形品外観も良好な組成物が得られる。
【0031】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に樹脂に添加される添加剤を添加することができる。例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、カオリンクレー、タルク、マイカ等の無機充填剤やその他の繊維状、非繊維状補強剤。また、耐衝撃付与剤としてゴム状重合体、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体およびそれらの水素添加物などの熱可塑性エラストマー。更に他の特性を付与するため、本発明の効果を損なわない範囲で他の添加剤、例えば可塑剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、離型剤、染顔料、あるいはその他の樹脂を添加することができる。樹脂の例としては、エンジニアリング樹脂であるポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、汎用樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン、スーパーエンプラである液晶ポリエステルなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、従来から知られた各種難燃剤および難燃助剤、例えば結晶水を含有する水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、ホウ酸亜鉛化合物、スズ酸亜鉛化合物、メラミン、メラミンシアヌレート、メラム、メロンなどの窒素系難燃剤さらにはシリカ、カオリンクレー、タルクなどの無機ケイ素化合物を添加して更なる難燃性の向上も可能である。
【0032】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定するものではない。熱可塑性樹脂においては、2軸押出機、1軸押出機、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造することができる。その中でも押出機による混合が、生産性の面で好ましい。混合温度は、ベース樹脂の好ましい加工温度に従えばよい。
本発明組成物の用途は、難燃性を要求される電子・電気部品、OA機器部品、自動車部品などであり、具体的には、プリント配線板、半導体用封止剤、アンテナ材、筐体、構造体、電線被覆、プリンター、FAX、CD−ROM、DVD−ROM、テレビ、デジタル録画機器などの部品に使用される。また、情報通信関係では、携帯電話、ETC、ナビゲーションシステム、家電・OA無線システムなど、情報処理関係では、高速演算するコンピュータ、パソコンの部品などがある。
【実施例】
【0033】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた各成分は以下のものである。
1)ポリアミド樹脂(PA)
PA66
ポリヘキサメチレンアジパミド 硫酸粘度 2.5
2)ホスファゼン
下記化学式(3)においてn=3が93.6wt%、n=4が4.0wt%、n≧5が2.4wt%であるようなフェノキシホスファゼン
【0034】
【化3】

【0035】
(式中nは3以上の整数。Phはフェニル基。)
3)変性フェノール系樹脂
フェノールノボラック樹脂[住友化学社(製)スミライトレジンPR−53195(登録商標)]
に、無水マレイン酸を0.2重量%付加したもの
4)未変性フェノール系樹脂
フェノールノボラック樹脂[住友化学社(製)スミライトレジンPR−53195(登録商標)]
5)窒素含有化合物
メラミンシアヌレート
日産化学工業(株)製MC610
【0036】
実施例、比較例における評価は以下の通り行った。必要な試験片は射出成形して作成した。
(1) 難燃性
UL−94垂直燃焼試験に準じ、1/8インチ厚みの射出成形試験片を用いて測定し、10回接炎時の燃焼時間を評価した。10回中、10秒以上が3回以下の場合をレベル1、6回以下の場合をレベル2、10回全ての場合レベル3とした。
(2)機械的強度
UL試験片を折り曲げたとき、割れたものを×、割れなかったものを○で示した。
(3)成形品外観
UL試験片を目視観察した。結果は下記記号で表示した。
○:良好な外観を示した ×:成形品表面が鮫肌で外観が悪かった
【0037】
[実施例1、2、比較例1、2]
組成物の作成
スクリュー径25mmの同方向回転2軸押出機を使って、ポリアミド、ホスファゼン、リン酸エステル、フェノール系樹脂、ガラス繊維を、表1に示す割合で混練押出しし、ストランド状にして水冷後、ペレット状にカットした。これら組成物の評価結果を表1、に示す。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ハロゲンを含有せず、成形性、成形品外観に優れ、高度な難燃性を有するポリアミド樹脂組成物である。難燃性を要求される用途、例えば、電子・電気部品、自動車部品などに、環境対応難燃材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリアミド樹脂
(b)ホスファゼン化合物
(c)変性フェノール系樹脂
からなる難燃性ポリアミド樹脂組成物
【請求項2】
成分(c)の変性フェノール系樹脂が、酸無水物基を有するフェノール系樹脂であることを特長とする請求項1に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物
【請求項3】
(c)成分の変性フェノール系樹脂が、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂およびポリビニルフェノール系樹脂から選択された少なくとも1種を変性した変性フェノール系樹脂である請求項1または請求項2に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物

【公開番号】特開2006−111824(P2006−111824A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303318(P2004−303318)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】