説明

難燃性ポリオレフィン樹脂組成物

【課題】従来より難燃剤成分として用いられてきたハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物を使用することなく同等の難燃性が付与され、さらに、低誘電率、低誘電正接の特徴を有する高分子材料を提供すること。
【解決手段】炭素原子数5〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合して得られるポリオレフィン(A)に、リン系難燃剤(B)を配合したポリオレフィン樹脂組成物によって上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を有し、かつ低誘電損失および低誘電正接等の電気特性に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の電子機器には、高電圧がかかっていたり、高温となる部分があったりするために発火源となり得る部分がある。それが原因となり火災に発展する可能性がある。したがって、コンピュータ等に用いられる電子機器絶縁基板材料には、高い難燃性が求められている。
【0003】
また、近年、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域、コンピュータのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波数化が進行しているが、使用される信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなることが知られている。誘電損失は、電気信号を減衰させて信号の信頼性を損なうので、これを抑制するために絶縁体には誘電率、誘電正接の小さな材料を選定する必要がある。
【0004】
このような材料としては、フッ素樹脂、硬化性ポリオレフィン、シアネートエステル系樹脂、硬化性ポリフェニレンオキサイド、アリル変性ポリフェニレンエーテル、ジビニルベンゼンまたはジビニルナフタレンで変性したポリエーテルイミド等の高分子材料が提案されている。(特許文献1)
ここで、上記高分子材料に難燃性を付与するためには、従来からハロゲン系難燃剤、赤燐、燐酸エステル、含窒素化合物、金属水酸化物、金属酸化物等の難燃剤の添加が検討されてきた。(特許文献2、特許文献3)
これらの中でも、ハロゲン系難燃剤とアンチモン化合物の併用により、高い難燃性が実現されてきた(特許文献4)。しかし、ハロゲンを含む物質の中には、燃焼することで極めて毒性の高いダイオキシンや、酸性雨の原因にもなるハロゲンガスを発生する事例が報告されており、このような背景から、アメリカのIPC(電子回路工業協会)やJEDEC(電子機器技術評議会)は電気・電子機器における塩素と臭素についてのハロゲン物質量の規格案を出した。こういったハロゲンフリー化の進展は環境法規制では規定されていないものの、各企業の環境方針の中で強い要求となっている(非特許文献1、非特許文献2)。また、アンチモン化合物についても、EN71Part3やASTM F 963による規格を始め、産業界では労働者へのアンチモン化合物の暴露に対して、自主的な監視が進められている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。
【0005】
そのため、リン系難燃剤や無機難燃剤を用いたハロゲンフリーによる難燃化検討が実施されている(特許文献5、特許文献6)
さらに、上記難燃剤を前記高分子材料に添加する場合、誘電率、誘電正接等の誘電特性の低下等の問題を生じる場合があり、種々の難燃剤を用いた検討がなされている。(特許文献7、非特許文献6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−249531号公報
【特許文献2】特開2001−288309号公報
【特許文献3】特開2000−351906号公報
【特許文献4】特開2011−246526号公報
【特許文献5】特開2011−150896号公報
【特許文献6】特開2011−1495号公報
【特許文献7】特開2010−118207号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】HARIMA TECHNOLOGY REPORT No.105 2010
【非特許文献2】JPCA NEWS March 2009
【非特許文献3】i2a News Volume8 Issue1 2009
【非特許文献4】東レテクノニュースレター Vol.1 2009
【非特許文献5】Status Report Review of Metals in the Toy Safety Standard, ASTM F 963 2012
【非特許文献6】フジクラ技報 第109号 51−54 2005年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記背景技術に鑑み、本発明で解決しようとする課題は、従来より難燃剤成分として用いられてきたハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物を使用することなく難燃性が付与され、さらに、低誘電率、低誘電正接の特徴を有する高分子材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明者らが検討した結果、特定の構造を有するポリオレフィンに、難燃剤として特定の構造からなるリン酸金属塩またはリン酸塩から選ばれる化合物を配合したポリオレフィン樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明にかかる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は以下の特徴を有する。
【0011】
炭素原子数5〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合して得られるポリオレフィン(A)100重量部に対して、下記一般式(I)で表される化合物(B−1)、一般式(II)で表される化合物(B−2)、一般式(III)で表される化合物(B−3)から選ばれる少なくとも1種のリン系難燃剤(B)1〜150重量部を含んでなる。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(I)中、RおよびRは炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基から選ばれ、RおよびRは互いに同一か若しくは異なる。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kまたはプロトン化窒素塩基から選ばれ、mは1〜4の整数である。

一般式(II)中、nは1〜100の整数を示し、0<p≦n+2であり、Xはアンモニア又は下記一般式(IV)で表されるトリアジン誘導体である。
【化4】

【0016】
(一般式(IV)中、Z及びZは同一でも異なっていてもよく、−NR基(ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基もしくはメチロール基〕、水酸基、メルカプト基、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルコキシ基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基である。)
一般式(III)中、rは1〜100の整数を示し、0<q≦r+2であり、Yは〔RN(CHNR〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R、R、R及びRはそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、R、R、R及びRは同一の基であっても異なってもよく、mは1〜10の整数である。) 前記リン系難燃剤(B)としては、一般式(I)で表される化合物(B−1)を単独で使用するか、一般式(II)で表される化合物(B−2)と一般式(III)で表される化合物(B−3)を混合して使用することが好ましい。
【0017】
前記化合物(B−1)として、一般式(I)におけるnが3、MがAlであることが好ましい。
【0018】
前記化合物(B−2)として、一般式(II)におけるnが2、pが2、Xがメラミン(前記一般式(IV)におけるZ及びZが−NH)であるピロリン酸メラミンを用いることが好ましい。
【0019】
また、前記化合物(B−3)として、前記一般式(III)におけるqが1、Yがピペラジンであるポリリン酸ピペラジンを用いることが好ましい。
【0020】
さらに、前記ポリリン酸ピペラジンはピロリン酸ピペラジンであることが好ましい。
【0021】
前記ポリオレフィン(A)が、炭素原子数5〜20の分岐状のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する単位の含有量が50〜100mol%のポリオレフィンであることが好ましく、4−メチル−1−ペンテン系重合体であることがさらに好ましい。
【0022】
前記難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン(A)100重量部に対して、ドリップ防止剤(C)1〜10重量部をさらに含んでもよい。
【0023】
さらに、前記ドリップ防止剤(C)は、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、従来公知であったハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物を難燃剤成分として用いることなく、優れた難燃性を有する。さらに、ハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物を使用しないことから、人体や環境への悪影響を排除することが可能となる。
【0025】
さらに、本発明では特定の構造を有するポリオレフィンを組成物の構成要素として用いることで、ポリオレフィン樹脂組成物に低誘電率、低誘電正接の特徴を付与することが可能となる。
【0026】
このような特徴を有するポリオレフィン樹脂組成物は、難燃性さらに低誘電特性が要求されるコンピュータ等の電子機器の絶縁基板材料、電線被覆材やコネクタなどの電気部品に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明にかかるポリオレフィン樹脂組成物を構成する各成分について詳説する。
[ポリオレフィン(A)]
本発明のポリオレフィン(A)は、炭素原子数5〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合して得られる。ここで、(共)重合とは、上記記載のα−オレフィンを単独で重合する場合や、上記記載のα−オレフィンと共に他のオレフィンを共重合する場合も包含する概念である。
【0028】
炭素原子数5〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンとして具体的には、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、得られるポリオレフィンの耐熱性、および低誘電特性の観点から、使用するオレフィンとしては、分岐状のα−オレフィンが好ましく、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンがより好ましく、4−メチル−1−ペンテンがさらに好ましい。
【0029】
ポリオレフィン(A)が共重合体の場合、炭素原子数5〜20のα−オレフィンと共重合する他のオレフィンの例としては、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィン(前記炭素原子数5〜20のα−オレフィンから選ばれるα−オレフィンを除く)が含まれる。炭素原子数3〜20のα−オレフィンとして具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなどが含まれ、これらのうち好ましくは炭素原子数5〜20のα−オレフィンであり、さらに好ましくは炭素原子数8〜20のα−オレフィンである。これらのオレフィンは1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
ポリオレフィン(A)が共重合体の場合、共重合体を構成する炭素原子数5〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する単位の含有量は95モル%以上、好ましくは98モル%以上である。
【0031】
本発明のポリオレフィン(A)は、下記要件(A−i)および(A−ii)を満たすことが好ましい。
【0032】
(A−i)メルトフローレート(MFR)が、1〜500g/10min、好ましくは2〜100g/10min、より好ましくは3〜30g/10minである。MFRは、ASTM D1238に準じて、測定温度260℃、荷重5kgfの条件下にて測定される。MFRが上記範囲にあると、得られるポリオレフィン樹脂組成物の成形金型内での流動性が高まる。
【0033】
(A−ii)融点(Tm)が、220〜250℃、好ましくは224〜245℃、より好ましくは228〜240℃である。融点220℃未満であると、ポリオレフィン(A)自体の強度が低下するので、得られるポリオレフィン樹脂組成物の強度も十分でない場合がある。融点250℃を越えると、得られるポリオレフィン樹脂組成物の衝撃強度、及び、靭性が低下する場合がある。ポリオレフィン(A)の融点は、JIS−K7121に準拠して、30〜280℃の温度範囲において窒素雰囲気下で測定することができる。この時、昇温速度、及び、冷却速度は、それぞれ10℃/minとすればよい。
【0034】
ポリオレフィン(A)は、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒やいわゆるポストメタロセン触媒などの公知のオレフィン重合用触媒の存在下で、炭素原子数5〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合することにより製造される。
【0035】
より具体的に、ポリオレフィン(A)は、ポリオレフィン(A)を構成するオレフィンを、遷移金属触媒成分および共触媒成分を含む重合触媒の存在下にて、重合することにより製造される。
【0036】
ポリオレフィン(A)の製造におけるオレフィンの重合反応は、溶液重合、懸濁重合、バルク重合法などの液相重合法や、気相重合法や、その他公知の重合方法で行うことができる。好ましくは、ポリオレフィン(A)の製造は、溶解重合および懸濁重合(スラリー重合)などの液相重合法が用いられ、さらに好ましくは懸濁重合(スラリー重合)法が用いられる。
【0037】
前記重合を液相重合法で行う場合には、溶媒として不活性炭化水素を用いることもでき、反応条件下において液状であるオレフィンを用いることもできる。また、重合は回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行なうことができ;重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行なうこともできる。重合反応系に水素を供給することで、得られる重合体の分子量を調節することができ、ポリオレフィン(A)のメルトフローレートを調整することができる。
【0038】
前記重合における重合温度および重合圧力は、重合方法および重合するオレフィンの種類により異なる。通常は、重合温度は10〜200℃、好ましくは30〜150℃に設定され、重合圧力は常圧〜5MPaG、好ましくは0.05〜4MPaGに設定される。
【0039】
ポリオレフィン(A)の製造に用いられる遷移金属触媒成分は、遷移金属としてマグネシウムとチタンを有し、配位子としてハロゲンおよび電子供与体を有する固体状チタン触媒やメタロセン触媒などであり;好ましくは固体状チタン触媒である。
【0040】
遷移金属触媒成分は、特に好ましくは、不活性炭化水素溶媒に懸濁させたマグネシウム化合物と、電子供与体として複数の原子を間に介してエーテル結合を2以上有する化合物と、液体状態のチタン化合物とを接触させて得られる固体状チタン触媒である。当該固体状チタン触媒は、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲンおよび複数のエーテル結合を有する。
【0041】
前記固体状チタン触媒の製造に用いられる不活性炭化水素溶媒としては、ヘキサン、デカンおよびドデカンなどが挙げられ;マグネシウム化合物としては、無水塩化マグネシウムおよびメトキシ塩化マグネシウムなどが挙げられ;電子供与体としての複数の原子を間に介してエーテル結合を2以上有する化合物としては、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンおよび2−イソペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンなどが挙げられる。
【0042】
固体状チタン触媒に含まれる電子供与体の種類を選定することにより、得られる重合体の立体規則性を調整することが可能である。これにより、重合体の融点が調整されうる。
【0043】
固体状チタン触媒におけるハロゲンおよびチタンの原子比率(ハロゲン/チタン)は、通常2〜100であり、好ましくは4〜90である。固体状チタン触媒における、2以上のエーテル結合を含む化合物とチタンのモル比率(2以上のエーテル結合を含む化合物/チタン)は、0.01〜100、好ましくは0.2〜10である。固体状チタン触媒におけるマグネシウムおよびチタンの原子比率(マグネシウム/チタン)は、2〜100、好ましくは4〜50である。
【0044】
さらに、ポリオレフィン(A)を得るためのオレフィン重合に用いる重合触媒の好適な例には、特開昭57−63310号公報、特開昭58−83006号公報、特開平3−706号公報、特許3476793号公報、特開平4−218508号公報、特開2003−105022号公報等に記載されているマグネシウム担持型チタン触媒;国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3−193796号公報あるいは特開平02−41303号公報などに記載のメタロセン触媒などが含まれる。電子供与体成分としてポリエーテルを含むマグネシウム担持型チタン触媒を用いると、分子量分布の比較的狭いポリオレフィン(A)を得られる傾向があるため特に好ましい。
【0045】
ポリオレフィン(A)の製造におけるモノマー重合を、液相重合法で行う場合には、固体状チタン触媒を、全液体容積1リットル当りチタン原子に換算して0.0001〜0.5ミリモル、好ましくは0.0005〜0.1ミリモルの量で用いることが好ましい。
【0046】
遷移金属触媒成分は、不活性有機溶媒(好ましくは、飽和脂肪族炭化水素)に懸濁して重合反応系に供給することが好ましい。
【0047】
また、遷移金属触媒成分は、重合に供するα−オレフィンと予備重合した固体触媒成分として用いることが好ましい。予備重合によって、遷移金属触媒成分1g当たり、α−オレフィンを0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、より好ましくは1〜200g重合させる。予備重合は、オレフィンの重合における反応系内の触媒濃度よりも高い触媒濃度で行うことができる。
【0048】
ポリオレフィン(A)の製造に用いられる共触媒成分は、有機金属化合物触媒成分であることが好ましく、具体的には有機アルミニウム化合物が挙げられる。有機アルミニウム化合物は、たとえば、RAlX3−nで示される。
【0049】
AlX3−nにおけるRは、炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基およびアリール基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基およびトリル基などである。RAlX3−nにおけるXはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。
【0050】
AlX3−nで示される有機アルミニウム化合物の具体例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムおよびトリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリドおよびジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリドおよびエチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリドおよびエチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライドおよびジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが含まれる。
【0051】
これらのうち、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムが好ましい。
【0052】
ポリオレフィン(A)の製造における共触媒成分(有機金属化合物触媒成分)の使用量は、遷移金属触媒成分が固体状チタン触媒である場合には、固体状チタン触媒1g当たり、0.1〜1×10g、好ましくは1×10〜1×10gの重合体が生成するような量であればよい。また、共触媒成分(有機金属化合物触媒成分)の使用量は、固体状チタン触媒中のチタン原子1モル当たり、0.1〜1000モル、好ましくは約0.5〜500モル、より好ましくは1〜200モルである。
【0053】
上記ポリオレフィン(A)は、熱可塑性の樹脂であることから、本発明にかかるポリオレフィン樹脂組成物を用いて製造された製品は使用後、リサイクルが容易であり、環境適応型材料ということができる。
[リン系難燃剤(B)]
本発明で用いるリン系難燃剤(B)は、下記一般式(I)で表される化合物(B−1)、一般式(II)で表される化合物(B−2)、一般式(III)で表される化合物(B−3)から選ばれる少なくとも1種からなる。
【0054】
以下、各化合物について詳説する。
<化合物(B−1)>
化合物(B−1)は下記一般式(I)で表される。
【0055】
【化5】

【0056】
一般式(I)中、RおよびRは炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基から選ばれ、RおよびRは互いに同一か若しくは異なる。
【0057】
炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
【0058】
炭素原子数6〜20のアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの単環・縮環系アリール基や、トリル基、iso−プロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などアルキル基置換アリール基が挙げられる。
【0059】
およびRの置換基のうち、炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましい。
【0060】
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kまたはプロトン化窒素塩基から選ばれる。
【0061】
これらのMのうち、高温下における化合物の安定性の観点から、Alが好ましく用いられる。
【0062】
mは1〜4の整数である。なお、mは、選択するMの金属種の原子価に依存する。
【0063】
化合物(B−1)の具体的態様としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。好ましくはジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛であり;さらに好ましくはジエチルホスフィン酸アルミニウムである。
<化合物(B−2)>
化合物(B−2)は下記一般式(II)で表される、リン酸とアンモニアまたはトリアジン誘導体との塩である。
【0064】
【化6】

【0065】
一般式(II)中、nは1〜100の整数を示す。
【0066】
pは、0<p≦n+2を満たす数字である。
【0067】
一般式(II)において、Xはアンモニア又は下記一般式(IV)で表されるトリアジン誘導体から選ばれる。
【0068】
【化7】

【0069】
一般式(IV)中、Z及びZは、−NR基(ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基もしくはメチロール基〕、水酸基、メルカプト基、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルコキシ基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基であり、Z及びZは同一でも異なっていてもよい。
【0070】
上記一般式(IV)における、Z及びZで表される炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、tert−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、tert−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等が挙げられ、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルコキシ基としては、これらアルキル基から誘導される基が挙げられる。 前記一般式(IV)で表されるトリアジン誘導体の具体的な例としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ノニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−エトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−プロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0071】
前記化合物(B−2)は、次の方法によって得ることができる。例えばピロリン酸メラミンの場合には、任意の反応比率のピロリン酸ナトリウムとメラミン混合物に塩酸を加えて反応させ、水酸化ナトリウムで中和してピロリン酸メラミンを得る。
【0072】
また、前記ポリリン酸アンモニウム化合物は、ポリリン酸アンモニウム単体若しくはポリリン酸アンモニウムを主成分とする化合物である。このポリリン酸アンモニウム単体としては、市販品を使用することができる。市販品としては、クラリアント社製のエキソリット−422、エキソリット−700、モンサント社製のフォスチェク−P/30、フォスチェク−P/40、住友化学(株)製のスミセーフ−P、チッソ(株)製のテラージュ−S10、テラージュ−S20等を挙げることができる。
【0073】
本発明においては、ポリリン酸アンモニウムを主成分とする化合物を使用することもできる。このような化合物としては、ポリリン酸アンモニウムを熱硬化性樹脂で被覆若しくはマイクロカプセル化したものや、メラミンモノマーや他の含窒素有機化合物等でポリリン酸アンモニウム表面を被覆したもの、界面活性剤やシリコン処理を行ったものの他、ポリリン酸アンモニウムを製造する過程でメラミン等を添加して難溶化したもの等が挙げられる。
【0074】
上記のポリリン酸アンモニウムを主成分とする化合物の市販品としては、クラリアント社製のエキソリット−462、住友化学(株)製のスミセーフ−PM、チッソ(株)製のテラージュ−C60、テラージュ−C70、テラージュ−C80等が挙げられる。
<化合物(B−3)>
化合物(B−3)は下記一般式(III)で表される、リン酸とジアミンまたはピペラジンとの塩である。
【0075】
【化8】


【0076】
一般式(III)中、rは1〜100の整数を示す。 qは、0<q≦r+2を満たす数字である。

一般式(III)において、Yは〔RN(CHNR〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R、R、R及びRはそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、R、R、R及びRは同一の基であっても異なってもよく、mは1〜10の整数である。
【0077】
上記一般式(III)におけるYで表されるジアミンの具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−ジエチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1、7−ジアミノへプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9ージアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、ピペラジン、trans−2,5−ジメチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられ、全て、市販品を用いることができる。 化合物(B−3)として好ましく使用される(ポリ)リン酸塩化合物としては、リン酸とピペラジンとの塩が挙げられる。リン酸とピペラジンとの塩としては、具体的には、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン等が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、上記一般式(III)におけるqが1、Yがピペラジンであるポリリン酸ピペラジン、特にピロリン酸ピペラジンを使用することが好ましい。
【0078】
リン酸とピペラジンの塩は、公知の方法によって得ることができる。例えばピロリン酸ピペラジンの場合には、ピペラジンとピロリン酸とを水中又はメタノール水溶液中で反応させ、水難溶性の沈殿として容易に得ることができる。ただし、ポリリン酸ピペラジンの場合には、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、その他のポリリン酸の混合物からなるポリリン酸とピペラジンとから得られた塩でもよく、原料のポリリン酸の構成は特に限定されるものではない。
【0079】
上記リン系難燃剤(B)の配合量は、ポリオレフィン(A)100重量部に対して、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部である。
【0080】
なお、上記リン系難燃剤(B)としては、一般式(I)で表される化合物(B−1)を単独で使用するか、一般式(II)で表される化合物(B−2)と一般式(III)で表される化合物(B−3)を混合して使用することが好ましい。
【0081】
化合物(B−2)と化合物(B−3)を混合して使用する場合、その配合比率(質量基準)は、(B−2)/(B−3)=20/80〜50/50であることが好ましく、(B−2)/(B−3)=30/70〜50/50であることがさらに好ましい。
[ドリップ防止剤(C)]
本発明で用いることができるドリップ防止剤(C)としては、ポリオレフィン(A)に添加することにより、溶融粘度を増加させることのできる物質が挙げられる。このような物質としては、フッ素系樹脂が好適な例として挙げられ、それらの中でもポリテトラフルオロエチレンが特に好ましい。
【0082】
ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系樹脂は、粒子に力が加わると繊維化する性質を持つことから、このような特徴を有するドリップ防止剤(C)を添加したポリオレフィン樹脂組成物は、燃焼した際にも溶融した樹脂が滴下することを防止することができ、ポリオレフィン樹脂組成物の延焼を防止することができる。
【0083】
このように、ドリップ防止剤(C)をポリオレフィン樹脂組成物中に添加することで、燃焼により溶融した樹脂の小片化が抑制され、延焼を防止することができるという効果が発現する。したがって、ドリップ防止剤(C)を含む場合には、リン系難燃剤(C)の添加量を低減させても、リン系難燃剤(B)単独使用の場合と同等の難燃性(非延焼性)となり、これにより、ポリオレフィン樹脂組成物の誘電特性の低下を防止することが可能となる。
【0084】
ドリップ防止剤(C)を用いる場合、その添加量は、ポリオレフィン(A)100重量部に対して、1〜10重量部とすることが好ましい。なお、上記範囲より、ドリップ防止剤(C)の添加量が少ない場合には、十分なドリップ防止効果を得ることができない場合があり、ひいては、十分な難燃効果を得ることができない場合がある。上記範囲よりドリップ防止剤(D)の添加量が多い場合には、ポリオレフィン樹脂組成物の成形性や物性面での不具合が発生する場合がある。
[その他の樹脂:変性ポリオレフィン]
本発明にかかるポリオレフィン樹脂組成物には、変性ポリオレフィンをさらに添加してもよい。当該樹脂を添加することで、難燃剤、難燃助剤の分散状態を改善することができる。
【0085】
前記変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸および/又は酸無水物、又は酸性ビニル化合物で変性されたオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0086】
また、変性ポリオレフィンに用いる好ましいオレフィン成分は、炭素数2〜8のオレフィンであり、好ましい具体例としてエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘプテン及びオクテン等がある。
【0087】
変性に用いられる不飽和カルボン酸またはその酸無水物としては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、メサコン酸、アコニット酸、およびこれらの酸無水物等があり、また、酸性ビニル化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸等がある。
【0088】
この中でも、無水マレイン酸変性ポリ−4−メチル−1−ペンテンが特に好ましい。
[その他の樹脂:エラストマー樹脂]
本発明にかかるポリオレフィン樹脂組成物には、エラストマー樹脂をさらに添加してもよい。当該樹脂を添加することで、ポリオレフィン樹脂組成物に耐衝撃性・靭性を付与させることができる。
【0089】
本発明に用いることのできるエラストマー樹脂としては、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体、水素添加プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブチレン−ブタジレン−スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)(α−MeSBα−MeS)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)(α−MeSIα−MeS)さらには、上記例示したスチレン系共重合体を構成する共役ジエン化合物、具体的にはブタジレンやイソプレンが水添された態様が挙げられる。および、その他の弾性重合体、ならびにこれらの混合物などが挙げられる。
【0090】
上記α−オレフィンの例としては、ポリオレフィン(A)の共重合体成分として述べた炭素原子数3〜20のα−オレフィンと同様のものが含まれる(プロピレンがエラストマー樹脂の成分として含む場合、炭素原子数3〜20のα−オレフィンからプロピレンは除く)。これらのα−オレフィンは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0091】
上記非共役ポリエンの例としては、非共役不飽和結合を2個以上有する化合物が制限なく使用できるが、例えば非共役環状ポリエン、非共役鎖状ポリエンなどが挙げられ、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0092】
上記エラストマー樹脂を添加する場合、その添加量は、ポリオレフィン(A)100重量部に対して、0.5〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは5〜30重量部である。
[その他の添加剤]
本発明にかかるポリオレフィン樹脂組成物には、必要に応じて、その他の添加剤成分を添加してもよい。その他の添加剤成分の例には、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、充填剤、滑材、スリップ材、アンチブロッキング剤、塩酸吸収剤、分散剤、結晶核剤、軟化剤、防曇剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、および難燃剤などが含まれる。例えば公知のフェノール系安定剤、有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、無機酸化物などが挙げられる。
【0093】
その他の添加剤成分を添加する場合、その添加量は、ポリオレフィン(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。
[ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法]
本発明にかかるポリオレフィン樹脂組成物は、例えば、ポリオレフィン(A)、リン系難燃剤(B)と他の任意成分(ドリップ防止剤(C)等)とを上述の添加割合で混合したのち、溶融混練して得られる。
【0094】
溶融混練の方法は、特に制限されず、一般的に市販されている押出機などの溶融混練装置を用いて行うことが可能である。
[成形体]
本発明にかかるポリオレフィン樹脂組成物は、その用いられる用途に合わせて、成形体に加工される。
【0095】
成形体への加工手段は特に制限されず、溶融混練や含浸等により得られたポリオレフィン樹脂組成物のペレットを、従来種々公知の方法、具体的には、例えば、射出成形法、異形押出成形法、パイプ成形法、チューブ成形法、異種成形体の被覆成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、インフレーションフィルム成形法、プレス成形法などの成形方法により、容器状、トレー状、シート状、棒状、フィルム状または各種成形体の被覆などに成形することができる。
【0096】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の成形体は、良好な耐熱性、難燃性、誘電特性を示す。そのため、難燃性および誘電特性の要求される電線被覆材(絶縁電線、ツイストペアケーブル、フラットケーブル、同軸ケーブルなど)や電子部品(コネクタ、コンデンサ、インクカートリッジ、家電ハウジング、ECUケース、スイッチ、インバータ部品、電子基板)、構造部材(TV筺体)などに加工されて用いることができる。
【実施例】
【0097】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
実施例および比較例において用いた材料は以下の通りである。
(1)ポリオレフィン(A)
以下のポリオレフィン(市販されているもの)を用いた。
【0099】
ポリ−4−メチル−1−ペンテン(商標名:TPX、銘柄名:MX002(融点:224℃ MFR(ASTM D1238、260℃、5kgf):21g/10min)、三井化学株式会社製)
(2)リン系難燃剤(B)
以下のリン系難燃剤化合物を用いた。
【0100】
化合物(B−1):ジエチルホスフィン酸アルミニウム(Exolit OP 935、クラリアント ジャパン株式会社製)
【0101】
【化9】

【0102】
化合物(B−2):ピロリン酸メラミン
ピロリン酸とメラミンを1:1で反応させて製造した。
【0103】
【化10】

【0104】
化合物(B−3):ピロリン酸ピペラジン
ピロリン酸とピペラジンを1:1で反応させて製造した。
【0105】
【化11】

【0106】
(4)ドリップ防止剤(C)
以下のドリップ防止剤(市販されているもの)を用いた。
【0107】
ポリテトラフルオロエチレン(TLP10F、三井・デュポンクロロケミカル製)
実施例および比較例における試験条件は以下の通りである。
(i)ポリオレフィン樹脂組成物の各試験片を作製するための射出成形条件
射出成形機:M−70B(φ=32mm)
射出温度:240〜270℃、金型温度:40〜60℃、冷却時間:15〜20秒
試験片の種類:角板、UL試験片
(ii)UL94V 燃焼試験
ASTM D 3801に準拠して、厚さ1/32インチのサンプルを用いて測定した。
(iii)比誘電率(ε)、誘電正接(tanδ)
円筒空洞共振器法によって、12GHz、室温の条件下で測定した。
[実施例1]
ポリオレフィン(A)100重量部、リン系難燃剤(B)として化合物(B−1)ジエチルホスフィン酸アルミニウム44重量部、ドリップ防止剤(C)としてポリテトラフルオロエチレン3重量部とを、2軸押出機(メーカー名:(株)池貝、型番PCM45、φ=43mm、L/D=30、難燃剤:トップフィード投入、窒素ガスパージ使用、シリンダ温度:260℃)で混練を行い、樹脂組成物1を得た。得られた樹脂組成物1から上述の射出成形条件により試験片を得た。樹脂組成物1のUL94V燃焼試験結果および比誘電率、誘電正接を表1にまとめた。
[実施例2]
ポリオレフィン(A)100重量部、リン系難燃剤(B)として化合物(B−2)ピロリン酸メラミン18重量部と化合物(B−3)ピロリン酸ピペラジン26重量部、ドリップ防止剤(C)としてポリテトラフルオロエチレン3重量部した以外は実施例1と同様の方法により、樹脂組成物2を得た。樹脂組成物2のUL94V燃焼試験結果および比誘電率、誘電正接を表1にまとめた。
【0108】
【表1】

【0109】
実施例1,2において、UL94V燃焼試験の結果、1/32インチ試験片でV−2相当を達成した。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、良好な難燃性、誘電特性を示す。そのため、難燃性および誘電特性の要求される電線被覆材(絶縁電線、ツイストペアケーブル、フラットケーブル、同軸ケーブルなど)や電子部品(コネクタ、コンデンサ、インクカートリッジ、家電ハウジング、ECUケース、スイッチ、インバータ部品、電子基板)、構造部材(TV筺体)などに適用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数5〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合して得られるポリオレフィン(A)100重量部に対して、下記一般式(I)で表される化合物(B−1)、一般式(II)で表される化合物(B−2)、一般式(III)で表される化合物(B−3)から選ばれる少なくとも1種のリン系難燃剤(B)1〜150重量部を含んでなる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【化1】


【化2】


【化3】


(一般式(I)中、RおよびRは炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基から選ばれ、RおよびRは互いに同一か若しくは異なる。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kまたはプロトン化窒素塩基から選ばれ、mは1〜4の整数である。

一般式(II)中、nは1〜100の整数を示し、0<p≦n+2であり、Xはアンモニア又は下記一般式(IV)で表されるトリアジン誘導体である。
【化4】

(一般式(IV)中、Z及びZは同一でも異なっていてもよく、−NR基(ここでR及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基もしくはメチロール基〕、水酸基、メルカプト基、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐のアルコキシ基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる基である。)
一般式(III)中、rは1〜100の整数を示し、0<q≦r+2であり、Yは〔RN(CHNR〕、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンであり、R、R、R及びRはそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、R、R、R及びRは同一の基であっても異なってもよく、mは1〜10の整数である。)
【請求項2】
前記リン系難燃剤(B)が、一般式(I)で表される化合物(B−1)を単独で使用するか、一般式(II)で表される化合物(B−2)と一般式(III)で表される化合物(B−3)を混合して使用する、請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
前記リン系難燃剤(B)が、前記化合物(B−1)であって、一般式(I)におけるnが3、MがAlである、請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
前記リン系難燃剤(B)が、前記化合物(B−2)と化合物(B−3)を混合して使用され、一般式(II)におけるnが2、pが2、Xがメラミン(前記一般式(IV)におけるZ及びZが−NH)であるピロリン酸メラミンであり、一般式(III)におけるqが1、Yがピペラジンであるポリリン酸ピペラジンである、請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリリン酸ピペラジンはピロリン酸ピペラジンである、請求項4に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン(A)が、炭素原子数5〜20の分岐状のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する単位の含有量が50〜100mol%のポリオレフィンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリオレフィン(A)が、4−メチル−1−ペンテン系重合体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリオレフィン(A)100重量部に対して、ドリップ防止剤(C)1〜10重量部をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項9】
前記ドリップ防止剤(C)が、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項8に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−237019(P2012−237019A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−198711(P2012−198711)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】