説明

難燃性ポリオレフィン組成物

本発明において、ポリオレフィンポリマーと、一般式(I)のアルキルホスホン酸アルキルの金属塩(式中、Xは金属であり、RおよびRは、同じかもしくは異なる1〜約12個の炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルであり、nは、1〜4の範囲にあるこの金属Xの価数に等しい)とを含むポリオレフィンポリマー組成物が提供される。ポリオレフィンポリマー組成物を製造する方法であって、少なくとも1つのポリオレフィンポリマーを、少なくとも1つのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩と接触させることと、ポリオレフィンポリマーおよび少なくとも1つのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩の混合物を、当該ポリオレフィンポリマーの融解温度よりも上に加熱することとを含む方法も提供される。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリマー組成物に、より具体的には難燃性ポリオレフィン組成物に関する。このような組成物は、建築材料および建設材料、ならびに成形された自動車用部品および電子部品のために有用な押出されたフィルムおよび/またはシートを製造するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、2つの大量の熱可塑性ポリマー、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ならびに非常に多くのエチレン−ポリプロピレンコポリマー、ならびに他のアルキレンモノマー、例えば、ブタン−1、4−メチルペンテン−1などとのコポリマーによって代表される。高級アルキレンコモノマーに対する低級アルキレンの比を変えることにより、熱可塑性プラスチックからエラストマーまでの幅広い範囲のポリマーを製造することができる。同様に、ポリエチレンは、酢酸ビニルまたはアクリル酸エチルと共重合することができる。これは、ポリエチレンの結晶性を下げ、熱可塑性エラストマーの特徴を有する生成物を生じる。
【0003】
ポリオレフィン樹脂は、多くの品目の中でもとりわけ、エッチング槽、電気めっき槽、温風ダクト、断熱システム、コンピューターの筐体、電化製品、家庭用の室内装飾品、ワイヤおよびケーブルの外被、装飾用ランプのソケットならびに自動車用部品の生産において広く使用されている。それらは、その良好な加工特性、耐薬品性、耐候性、電気特性および機械的強度に起因して選択されたポリマーである。1つの大きな短所は、すべてのポリオレフィンは燃焼性が非常に高いということである。これは、難燃化されたポリオレフィンに対する需要の高まりを引き起こしてきた。
【0004】
臭素化有機化合物はポリオレフィンについての最も有効な難燃剤であるが、近年、いくつかの臭素化有機化合物が、環境持続性の可能性のため、詳細に検討されてきている。臭素化有機化合物も、電流トラッキング指数(CTI)などのポリオレフィンのいくつかの電気特性を損なう可能性がある。ハロゲン不含膨張性難燃剤配合物が公知であるが、それらは、水分に対して敏感であるという問題を抱えている。ハロゲン不含膨張性難燃剤配合物の別の制約は、それらが、低難燃剤投入量レベルにおいてV−2 UL 94等級を達成しないということである。
【0005】
いくつかの無機物充填剤は、ポリオレフィンにおいて難燃効果をもたらすことができる。残念ながら、これらの無機物充填剤は低レベルの難燃効率しか有さず、それゆえ許容できる難燃効果を成し遂げるために、非常に高い投入量が必要とされる。高い投入量は、ポリオレフィンの加工性に悪影響を及ぼし、樹脂流動は最も影響を受ける特性である。加えて、無機充填剤が使用されるときは、ポリオレフィンの透明性または半透明性は失われる。
【0006】
ポリオレフィンが最小量の難燃剤を使用し、かつ建築産業、自動車産業または電子産業の要求を満たすための十分な程度の難燃性を有する、例えば軽量のシートまたはフィルム、自動車用部品、または電子部品の形成のために使用することができるポリオレフィン組成物を形成することが望ましいであろう。種々の地理的領域におけるエコマークを満足するために、ハロゲン不含難燃性ポリオレフィン配合物を手にすることも望ましいであろう。この点に関して、先行技術の難燃性ポリオレフィン組成物はいくつかの短所を抱える。商業的使用のための難燃性の要求を満足するために、材料は、UL−94垂直試験または水平試験に合格しなければならない。この試験規格を満たすためには、ハロゲン含有難燃剤が使用されなければ、かなりの投入量の難燃剤が使用される必要がある。
【0007】
好適な難燃性を有する透明または半透明の押出されたポリオレフィンシートまたはフィルムを製造することも非常に望ましいであろう。テトラブロモビスフェノールA ビス(ジブロモプロピルエーテル)などのいくつかの難燃剤はポリオレフィンと溶融ブレンド可能であるが、それらは、結晶化して表目上に滲出する傾向があり、このことは、時間が経つにつれて、透明性または半透明性の喪失を生じる。ポリオレフィンに好適なハロゲン不含難燃剤のほとんどは溶融可能ではなく、それゆえ、透明または半透明のポリオレフィンシートまたはフィルムの製造に好適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の望ましい特性を満たすハロゲン不含組成物を提供する。つまり、軽くかつUL 94燃焼性試験を満たす、押出されたシートもしくはフィルムまたは成形部品を形成することができるポリオレフィンポリマー組成物が提供される。このポリオレフィンポリマー組成物は、建物建設用途において、または電気部品または電子部品、家電製品および自動車用部品の製造のために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の別の特定の応用例では、難燃化されたポリオレフィンポリマーの押出されたシートまたはフィルムを製造することができ、かつそれらは透明であるか、または少なくとも半透明である。本発明のポリオレフィンポリマーのシートまたはフィルムは、所望の位置に、とりわけ平らではない表面の上に、正確に鋲留め、ねじ留めまたは溶結することができるので、本発明のポリオレフィンポリマーのシートまたはフィルムは有利である。本発明の難燃化された透明または半透明のポリオレフィンポリマーシートは、屋根用の膜、壁装材、床仕上げ材、槽の被膜材、ダクト、筐体などの品目の製造のために有用であることができる。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、(a)ポリオレフィンポリマーと、(b)一般式:
【化1】

(式中、Xは金属であり、RおよびRは、同じかもしくは異なる1〜約12個の炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルであり、nは、1〜4の範囲にある金属Xの価数に等しい)のアルキルホスホン酸アルキル(alkyl alkylphosphonic acid)の金属塩とを含むポリオレフィンポリマー組成物が提供される。
【0011】
本願明細書に記載されるポリオレフィンポリマー組成物は、(a)ポリオレフィンポリマーと、(b)アルキルホスホン酸アルキルの金属塩とを含むことができる。好ましくは、このアルキルホスホン酸アルキルの金属塩は、当該ポリオレフィンポリマー組成物の総重量に基づき2〜約25重量%の量で存在する。このポリオレフィンポリマー組成物は、ポリオレフィンポリマーおよびアルキルホスホン酸アルキルの金属塩が均等に分散されるように、実質的に均一にブレンドされることが望ましい。組成物全体にわたるポリオレフィンポリマーおよびアルキルホスホン酸アルキルの金属塩の均等な分散により、当該組成物および当該組成物から作製される製品に半透明性が与えられる。
【0012】
本発明の別の特定の応用例では、本発明のポリオレフィンポリマー組成物は、寸法安定性を改善するために、さらに架橋されてもよい。ポリオレフィンを架橋する技術は当該技術分野で周知であり、最も一般的なものは、フリーラジカル架橋、放射線架橋またはアルコキシシリルグラフト化ポリオレフィンを使用する湿気硬化架橋である。架橋ポリオレフィンは、ケーブルの外被および管状物(チューブ)の製造において使用することができる。
【0013】
本発明の別の特定の応用例では、本発明のポリオレフィンポリマー組成物は、難燃化されたポリオレフィンフォーム(foam)の形態で製造される。このポリオレフィンフォームは、種々の断熱および遮音用途、ならびに軽量部品の成形のために使用される。
【0014】
当該ポリオレフィンポリマー組成物は、補助的な固体リン酸エステル難燃剤をさらに含有することができる。
【0015】
当該ポリオレフィンポリマー組成物は、フリーラジカル発生剤共力剤をさらに含有することができる。
【0016】
本願明細書に記載される本発明は、本願明細書に記載されるポリオレフィンポリマー組成物を含む押出されたポリオレフィンシートまたは射出成形された部品も含む。
【0017】
本発明は、ポリオレフィンポリマー組成物、例えば透明または半透明のポリオレフィンポリマー組成物、を製造する方法であって、少なくとも1つのポリオレフィンポリマーを、本願明細書に記載されるアルキルホスホン酸アルキルの金属塩などの少なくとも1つのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩と接触させることと、ポリオレフィンポリマーおよび少なくとも1つのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩の混合物を、当該ポリオレフィンポリマーの融解温度よりも上に加熱することとを含む方法を含む。本発明は、透明または半透明のポリオレフィンシートまたは射出成形されたポリオレフィン部品を製造するための方法であって、少なくとも1つのポリオレフィンポリマーを、少なくとも1つのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩と接触させることと、ポリオレフィンポリマーおよび少なくとも1つのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩の混合物を、当該ポリオレフィンポリマーの融解温度よりも上に加熱することと、この加熱された混合物から透明または半透明のポリオレフィンシートまたは射出成形されたポリオレフィン部品を形成することとを含む方法をさらに含む。ポリオレフィンシートまたは射出成形されたポリオレフィン部品を形成する方法は当該技術分野で周知であり、従って、本願明細書中では説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施においては、本願明細書に記載される化合物の混合物から幅広く構成される組成物が調製される。得られたポリオレフィンポリマー組成物の成形性および機械的特性(剛性、耐熱性などを含む)などの所望の性能要求に応じて、実質的にあらゆる等級のポリオレフィン樹脂を、ポリオレフィンポリマーとして選択することができる。
【0019】
ポリオレフィンポリマー(a)は、好ましくは、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、およびポリプロピレンコポリマーのうちの少なくとも1つである。1つの実施形態では、ポリオレフィンポリマー(a)は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンである。非晶性、結晶性およびエラストマーの形態のポリプロピレンを本発明で用いることができる。ポリオレフィンポリマー(a)として使用することができるコポリマーの例は、エチレン−酢酸ビニル(EVA);エチレン−プロピレンゴム(EPR);エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM);ならびに、エチレンおよびプロピレンとブテン−1、ペンテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、オクタン−1およびこれらの混合物とのコポリマー(これらに限定されない)のうちの少なくとも1つである。
【0020】
当該ポリオレフィンポリマーは、好ましくは、約150〜約250℃、最も好ましくは約175℃〜約230℃の範囲の融点を有するペレット形態で用いられる。当該ポリオレフィンポリマーは、好ましくは、約0.85〜約1.2、最も好ましくは約0.90〜1.0の範囲の比重を有する。選択されるポリオレフィン樹脂は、好ましくは、約0.2〜約30g/10分、より好ましくは約1〜約12g/10分の範囲のメルトフローレートを有する。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、当該ポリオレフィンポリマーは、3.2mmまでの厚さを有する透明または半透明のポリマーシート、特に約0.001mm〜約3.2mmの厚さを有する透明または半透明のポリマーシートの押出に好適である。
【0022】
ポリオレフィンポリマー(a)は、好ましくは、当該組成物の総重量に基づき、75〜98重量%、より好ましくは84〜96重量%の範囲で当該ポリオレフィンポリマー組成物の中に存在する。
【0023】
本発明で使用されるアルキルホスホン酸アルキルの金属塩(b)は、一般式(I):
【化2】

(式中、Xは金属であり、RおよびRは、同じかもしくは異なる、1〜約12個の炭素原子、好ましくは1〜約4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルであり、例えば、非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、iso−ブチルおよびsec−ブチルであり、nは、1〜4の範囲にある、好ましくは2または3である当該金属Xの価数に等しい)のいずれかのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩であることができる。
【0024】
アルキルホスホン酸アルキルの金属塩(I)の中に存在することができる金属、すなわち、上記の式のXとしては、Ca、Mg、Zn、Al、Fe、Ni、Cr、Tiからなる非限定的な群などのアルカリ土類金属または遷移金属が挙げられる。
【0025】
最も好ましい実施形態では、この金属塩は、メチルホスホン酸メチルのアルミニウム塩(AMMP)、(式中、Xはアルミニウムであり、RおよびRはメチルであり、n=3である)である。AMMPは、高レベル(すなわち、26重量%)の活性リンを含有する。AMMPは、メチルホスホン酸メチル(methyl methylphosphonate)と水酸化ナトリウムの水溶液とを反応させ、そのあと塩化アルミニウムを用いて沈殿させることによるか、または激しく撹拌しながら水酸化アルミニウムとメチルホスホン酸メチルとを180℃で直接反応させるかのいずれかにより、合成することができる。
【0026】
好ましくは、当該アルキルホスホン酸アルキルの金属塩は、約25ミクロン(約25μm)未満、より好ましくは約10ミクロン(約10μm)未満、さらにより好ましくは約5ミクロン(約5μm)未満の平均粒径を有する粉末によって代表される。本実施形態に係る好ましいアルキルホスホン酸アルキルの金属塩は、約0.1ミクロン(約0.1μm)〜約3ミクロン(約3μm)の範囲の平均サイズを有する複数の粒子を含む。上述の平均粒径範囲のいずれも、約0.1ミクロン(約0.1μm)からの下端を有することができるということを理解されたい。
【0027】
好ましくは、このアルキルホスホン酸アルキルの金属塩は、当該ポリオレフィンポリマー組成物の総重量に基づき2〜25重量%の範囲で、より好ましくは4〜16重量%の範囲で当該難燃化されたポリオレフィン組成物の中に存在する。
【0028】
本発明の1つの実施形態では、取り扱いを改善するために、および除塵を減らすために、このアルキルホスホン酸アルキルの金属塩は、ペレットまたはマスターバッチ濃縮物の形態で使用される。
【0029】
本発明の1つの実施形態では、当該ポリオレフィンポリマー組成物は、任意に、補助的な固体リン酸エステルをさらに含むことができる。リン酸エステルの役割は、樹脂流動を改善し、さらなる難燃性を与えることである。この固体リン酸エステルは、好ましくは、芳香族リン酸エステルまたはビスホスフェートである。
【0030】
1つの非限定的な実施形態では、この固体リン酸エステルは、リン酸トリフェニル、ヒドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’−ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールS ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールF (ビスジフェニルホスフェート)、および本願明細書に記載される固体リン酸エステルのうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、固体リン酸エステルは、当該ポリオレフィンポリマー組成物の総重量に基づき、0.5重量%〜8重量%の範囲、最も好ましくは1重量%〜5重量%の範囲で当該ポリオレフィンポリマー組成物の中に与えられる。
【0032】
本発明の別の実施形態では、フリーラジカル発生剤共力剤が、当該ポリオレフィンポリマー組成物において使用されてもよく、このフリーラジカル発生剤共力剤は、約150℃〜約250℃という加工温度で安定であり、かつこれらの温度より上で(約220℃〜約350℃で)分解して比較的安定なフリーラジカルを与える有機化合物である。
【0033】
フリーラジカル発生剤共力剤は、熱分解の際に安定なフリーラジカルを発生する有機化合物であることが好ましい。フリーラジカル発生剤共力剤(複数可)は、当該ポリオレフィンについての押出温度で押出し可能でなければならず、かつ当該組成物中のポリオレフィンおよびいずれの分散剤とも相溶性でなければならない。また、フリーラジカル発生剤共力剤は、許容できる蒸気圧および110℃で少なくとも約1時間、好ましくは110℃で15時間の半減期を有するべきである。
【0034】
このフリーラジカル発生剤共力剤は、当該ポリオレフィンポリマー組成物の総重量に基づき、少なくとも0.2重量%、好ましくは0.5重量%で存在してもよい。一般に、このフリーラジカル発生剤は、1重量%を超えては存在しない。なぜなら、それが果たすべき機能は、より少ない量を用いてもおそらく成し遂げられるからであり、1重量%を超える量は、一般に、当該ポリオレフィンポリマー組成物の加工性に影響を及ぼし始めるからである。
【0035】
ポリオレフィンとアルキルホスホン酸の金属塩および本発明のいずれかの他の任意の添加剤との密接な接触が望まれるので、このフリーラジカル発生剤は、ポリオレフィン内に実質的に均一に分散することができるものであるべきである。それゆえ、フリーラジカル発生剤は微粒子固体または液体形態にある必要がある。大きい粒径は、当該化合物が当該ポリオレフィン組成物の加工温度で融解する場合は、許容できるであろう。
【0036】
フリーラジカル発生剤のいくつかの非限定的な例は、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニル−ブタン;2,3−ジメチル−2,3−ジフェニル−ヘキサン;ビス(α−フェニルエチル)スルホン;1,1’−ジフェニルビシクロヘキシル,2,2’−ジメチル−2,2’−アゾブタン;2,2’−ジブロモ−2,2’−アゾブタン;2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾブタン;2,2’−ジメチル−2,2’−アゾブタン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸;ジクミルペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ビス(tertブチルペルオキシ)ヘキサン;2,5−ジメチル−2,5−ビス(tertブチルペルオキシ)ヘキシン−3;ジ(tertブチル)ペルオキシド;ヒドロペルオキシド、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド;第三級ブチルヒドロペルオキシド;およびクメンヒドロペルオキシドのうちの少なくとも1つである。例えば、1つのこのようなフリーラジカル発生剤が、それ自体では、ポリオレフィンポリマー組成物について本願明細書中で与えられる要求を十分には満足しない場合でも、本願明細書中で画定されるフリーラジカル発生剤のうちの2以上の組み合わせはこれらの要求を満足する。
【0037】
本発明の別の実施形態では、ナノクレイが透明または半透明のポリオレフィンシートまたはフィルムの清澄性(clarity)に影響を及ぼさないならば、本発明のポリオレフィンポリマー組成物は、任意に、ナノクレイをさらに含有することができる。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態では、当該ポリオレフィンポリマー組成物は、任意に、ホウ酸亜鉛をさらに含有することができる。
【0039】
当該ポリオレフィン組成物は、当該技術分野で公知の1以上のさらなる添加剤、例えば、紫外線光安定剤および光安定剤、紫外線遮断剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、潤滑剤およびこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0040】
本発明の方法では、ポリオレフィンポリマー、アルキルリン酸アルキルの金属塩およびいずれかの他の成分は、所望の量でブレンドされ、このポリオレフィンポリマーの融点を超える度に加熱される。加熱することおよびブレンドすることは、いずれの順序で行うこともできるが、しかしながら、好ましい実施形態では、これらのプロセスは同時に行われる。混合は、バッチ式ミキサー、バンバリーミキサー、一軸押出機または二軸押出機、リボンブレンダー、射出成形機、2本ロールミルなどを含めたいずれの好適な設備で行われてもよい。
【0041】
本発明の1つの実施形態では、本発明のポリオレフィンポリマー組成物は、アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories)燃焼性試験UL−94に、少なくともHB等級で、より好ましくは少なくともV−2等級で合格するであろう。
【0042】
本発明のポリオレフィンポリマー組成物の別の重要な特徴は、それが、70℃での長期の保存後でさえも、例えば70℃で少なくとも7日間、好ましくは少なくとも30日間の保存後でさえも半透明性を保つということである。
【0043】
本願明細書中の本発明の1つの実施形態では、当該ポリオレフィンポリマー組成物は、70℃で少なくとも30日間の保存後に、ポリオレフィンポリマーの表面への、アルキルホスホン酸の金属塩の滲出を示さない。
【0044】
本願明細書中の本発明の1つの実施形態では、当該ポリオレフィンポリマー組成物は半透明のポリマー組成物である。当該ポリオレフィンポリマー組成物は、当該ポリオレフィンポリマー組成物の半透明性に悪影響を与えると思われるいずれの成分(複数可)、および/または成分(複数可)の量も含有しないことが望ましい。当該ポリオレフィン組成物の半透明性の半透明性に悪影響を与えると思われる成分のいくつかの非限定的な例は、ガラスおよび無機物充填剤(ガラス繊維など)、炭素繊維、タルク、シリカ、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのうちのいずれか1以上である。
【実施例】
【0045】
1. 材料
本研究で使用する材料を表1に列挙する。
【表1】

【0046】
2. コンパウンディング
コンパウンディングは、L/D=10.6を有するC.W.Brabender円錐形二軸同方向回転押出機を使用して実施した。押出成形品は水冷し、Conairモデル304 ペレタイザーを使用してペレット化した。得られたペレットは、強制空気オーブンの中で、80℃で16時間乾燥した。コンパウンディング条件を、表2に提示する。
【表2】

【0047】
3. 射出成形
Arburg 270S Allrounder 250−150を使用して、射出成形によって試験片を調製した。射出成形条件を、表3に提示する。
【表3】

【0048】
4. 試験方法
UL−94試験に先立って、試験片を23℃および50% RHで72時間状態調節した。加速劣化試験を電気式の対流式オーブン中、70℃で行い、30日間まで続けた。所定の期間のあと、オーブンから試験片を取り出し、滲出について検査し、BYK−Gardnerから入手できる不透明度チャート(opacity chart)を使用して清澄性について試験し、ASTM D 344、D 2805、およびISO 6504−3を参照した。半透明性は1〜5の尺度で等級付けした。1はベース樹脂の清澄性を与え、5は不透明である。本研究で使用した試験を表4にまとめる。
【表4】

【0049】
5. 結果
UL−94試験、滲出の検討および清澄性試験の結果を、ポリプロピレンについては表5に、EVAについては表6に報告する。
【表5】

半透明性は、目視観察尺度1〜5で等級付けした。1はベース樹脂の清澄性を与え、5は不透明である。
Exは、表5および表6では、ポリマーの表面上での難燃剤の滲出が検出されたということを意味すると理解される。表5では、実施例C−3およびC−4は、初期に難燃剤を滲出し、従って半透明性データは得られなかった。これが理由で、実施例C−3およびC−4は、保存日数の「初期」の列にexだけを示す。実施例C−3およびC−4は初期に滲出したので、さらなる滲出データは得られず、このため、保存日数の「初期」の列の下に滲出データは提示されていない。
Nは、表5および表6では、滲出なしを意味すると理解される。
NRは、表5および表6では、UL−94試験における等級付けなしを意味すると理解される。
【0050】
半透明性を判定するために、読み取り材料のテンプレートを、上記のとおりに調製した実施例の試験片の40インチ(約102cm)下に、実験室の台の上に置いた。この読み取り材料を、標準的な蛍光の存在下で眺めた。2人が試験を実施し、試験片を、1(完全に清澄である)から5(不透明で、読み取れない)に等級付けた。等級付けに不一致があった場合は、第3の別の人が関与した。
【0051】
【表6】

半透明性は、目視観察尺度1〜5で等級付けした。1はベース樹脂の清澄性を与え、5は不透明である。
exおよびNRは、表5で、上で定義されたとおりである。
C−7およびC−8は30日後に滲出を示したので、これらの実施例については、30日間の保存期間の列にexが示されている。
【0052】
6. 結論
AMMPを含有する表5のポリプロピレン配合物は、6、8および10重量%の投入量でV−2等級を示した(本発明の実施例2、3および4)。FR−720を含有するポリプロピレン配合物は、4および6重量%でV−2等級を示した(比較例1および2)。FR−720を8および10重量%含有するポリプロピレン配合物は、射出成形後に滲出を示し、それゆえそれらは、さらには試験しなかった(比較例3および4)。
【0053】
AMMPを含有するすべてのEVA配合物、表6、はV−2等級を示した(本発明の実施例5〜8)。4重量%のFR−720を含有するEVA配合物はUL−94垂直試験に不合格であった(比較例5)。6、8および10%のFR−720を含有するEVA配合物は、UL−94試験においてV−2等級を示した(比較例6、7および8)。
【0054】
AMMPを含有する表5のすべてのポリプロピレン配合物、および表6のすべてのEVA配合物は、70℃で30日目でさえも、滲出の徴候を何ら示さない。4および6重量%のFR−720を含有するすべてのポリプロピレン配合物およびすべてのEVA配合物は、70℃で30日後に、表面上で滲出の徴候を示さない(比較例1、2、5および6)。しかしながら、8および10重量%のFR−720を有するポリプロピレン配合物は、射出成形の直後に滲出を示した(比較例3および4)。8および10重量%のFR−720を有するEVA配合物は、射出成形後には滲出を示さなかったが、70℃で30日後に滲出を示した(比較例7および8)。
【0055】
表5の、6、8および10重量%のAMMPを含有するポリプロピレン配合物は、UL−94試験ではV−2に等級付けされ、それらは、70℃で30日間そのもとの清澄性を保った(本発明の実施例2、3および4)。対照的に、6重量% FR−720を有するポリプロピレン配合物は、射出成形の直後に不透明であった(比較例2)。FR−720を含有する別のポリプロピレン配合物は、UL−94試験においてV−2に等級付けされ、それは、射出成形後に清澄性を示したが、それは、70℃での保存期間にわたって悪化した(比較例1)。
【0056】
表6の4重量% AMMPを含有するEVA配合物は、UL−94試験においてV−2に等級付けされ、70℃で30日間の保存後も清澄性を変えなかった(本発明の実施例5)。対照的に、4重量%のFR−720を含有するEVA配合物はUL−94試験に合格しなかった(比較例5)。6、8および10重量%のAMMPを含有するEVA配合物は、70℃で7日間の保存後にわずかの清澄性の悪化を示したが、清澄性は、30日間までの保存後には、さらに変化はしなかった(本発明の実施例6、7および8)。8および10重量%のFR−720を含有するEVA配合物は、30日後に目に見える清澄性の変化は示さなかったが、それらは滲出の徴候を示した(比較例7および8)。6重量%のFR−720を含有するEVA配合物だけが、すべての試験において、全体的に良好な性能を示した(比較例6)。
【0057】
V−2燃焼性試験に合格しかつ保存試験において清澄性を変えないPP(本発明の実施例2および3)およびEVA(本発明の実施例5および)配合物は、ともに、それぞれ、PP(比較例1)およびEVA(比較例6)よりも高い曲げ弾性率を示した。AMMPを含有するPP(本発明の実施例2および3)は、FR−720を含有するPP(比較例1)と比較して、高い荷重たわみ温度を示した。AMMPを含有するEVA(本発明の実施例5および6)は、FR−720を含有するEVA(比較例6)と比較して、より高いショアA硬度を示した。
【0058】
まとめると、AMMPは、より良好な難燃性能、ポリオレフィン組成物の中でのより良好な耐久性、配合物のより良好な清澄性およびより良好な物理的特性を示すということは明らかである。AMMPを含有するポリオレフィン配合物はハロゲン不含である。1つの実施形態では、本発明のポリオレフィンポリマー組成物はハロゲン不含であることができる。
【0059】
本発明のプロセスが特定の実施形態を参照して説明されたが、種々の変更がなされてもよく、かつ本発明の範囲から逸脱せずに、本発明のプロセスの要素の代わりに均等物が用いられてもよいということは、当業者には理解されよう。加えて、本発明の本質的範囲から逸脱せずに、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、多くの改変がなされてもよい。それゆえ、本発明は、本発明のプロセスを実施するために企図される最良の態様としての、開示された特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に属するすべての実施形態を包含することになるということが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンポリマー組成物であって、ポリオレフィンポリマーと、一般式:
【化1】

(式中、Xは金属であり、RおよびRは、同じかもしくは異なる1〜約12個の炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルであり、nは、1〜4の範囲にある前記金属Xの価数に等しい)のアルキルホスホン酸アルキルの金属塩とを含む、ポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンポリマーは、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマーおよびポリプロピレンコポリマーのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレンホモポリマーは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび、直鎖状低密度ポリエチレンのうちの少なくとも1つである、請求項2に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンポリマーは、エチレン−酢酸ビニル(EVA);エチレン−プロピレンゴム(EPR);エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM);ならびに、エチレンおよびプロピレンと、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、オクタン−1、およびこれらの混合物とのコポリマーのうちの少なくとも1つである、請求項2に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項5】
XはCa、Mg、Zn、Al、Fe、Ni、Cr、およびTiからなる群から選択される、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項6】
アルキルホスホン酸アルキルの金属塩はメチルホスホン酸メチルアルミニウムである、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項7】
前記組成物は、UL−94水平燃焼試験において最低でもHB等級を有する難燃性ポリオレフィン組成物である、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項8】
前記組成物は、UL−94垂直燃焼試験において最低でもV−2等級を有する難燃性ポリオレフィン組成物である、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項9】
前記組成物は、70℃で少なくとも30日間の保存後に、前記ポリオレフィンポリマーの表面への前記アルキルホスホン酸アルキルの金属塩の滲出を示さない、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項10】
前記組成物は半透明のポリマー組成物である、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項11】
前記組成物は、70℃で少なくとも30日間の保存後に清澄性を失わない、請求項9に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項12】
前記アルキルホスホン酸アルキルの金属塩は、前記組成物の総重量の2〜25%の範囲で存在する、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項13】
前記アルキルホスホン酸アルキルの金属塩は、前記組成物の総重量の4〜16%の範囲で存在する、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項14】
フリーラジカル発生剤共力剤をさらに含む、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項15】
固体リン酸エステルをさらに含む、請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項16】
固体リン酸エステルは芳香族リン酸エステルである、請求項14に記載のポリオレフィンポリマー組成物。
【請求項17】
請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物を含む、押出されたシートまたはフィルム。
【請求項18】
請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物を含む、成形された自動車用部品または電子部品。
【請求項19】
請求項1に記載のポリオレフィンポリマー組成物を含む、エッチング槽、電気めっき槽、温風ダクト、断熱システム、コンピューターの筐体、電化製品、家庭用の室内装飾品、ワイヤおよびケーブルの外被、装飾用ランプのソケットならびに自動車用部品からなる群から選択される物品。
【請求項20】
ポリオレフィンポリマー組成物を製造する方法であって、
少なくとも1つのポリオレフィンポリマーを、少なくとも1つのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩と接触させることと、
ポリオレフィンポリマーおよび少なくとも1つのアルキルホスホン酸アルキルの金属塩の混合物を、前記ポリオレフィンポリマーの融解温度よりも上に加熱することと
を含む方法。

【公表番号】特表2013−520554(P2013−520554A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555029(P2012−555029)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/024535
【国際公開番号】WO2011/106177
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(510181677)アイシーエル−アイピー アメリカ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】