説明

難燃性ポリトリメチレンテレフタレート組成物

改善された難燃性ポリトリメチレンテレフタレート組成物は、難燃添加剤としてパーフッ素化スルホネート塩を含めることにより提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年8月6日出願の共有米国特許出願第11/834,232号明細書、発明の名称「FLAME RETARDANT POLYTRIMETHYLENE TEREPHTHALATE COMPOSITION」(内部参照CL3587)、2007年8月6日出願の共有米国特許出願第11/834,248号明細書、発明の名称「FLAME RETARDANT POLYTRIMETHYLENE TEREPHTHALATE COMPOSITION」(内部参照CL3879)、2007年8月6日出願の共有米国特許出願第11/834,260号明細書、発明の名称「FLAME RETARDANT POLYTRIMETHYLENE TEREPHTHALATE COMPOSITION」(内部参照CL3880)、2007年8月6日出願の共有米国特許出願第11/834,279号明細書、発明の名称「FLAME RETARDANT POLYTRIMETHYLENE TEREPHTHALATE COMPOSITION」(内部参照CL3881)に関連する。
【0002】
本発明は、難燃添加剤として特定のパーフッ素化スルホネート塩を含む難燃性ポリトリメチレンテレフタレート組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリトリメチレンテレフタレート(「PTT」)は、一般に、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸またはテレフタル酸エステルの重縮合反応によって調製される。PTT樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」、1,3−プロパンジオールに対してエチレングリコールにより製造される)またはポリブチレンテレフタレート(「PBT」、1,3−プロパンジオールに対して1,4−ブタンジオールにより製造される)と比較したとき、機械的特性、耐候性、耐熱老化性および耐加水分解性において優れている。
【0004】
PTT、PETおよびPBTは、特定の難燃レベルを要求する(カーペット、家庭用備品、自動車部品および電子部品などの)多くの用途分野において用途を見つけている。本質的に且つ自然にPTTが、特定の状況下で、これらの用途分野の多くにおいて現在限定する不十分な難燃性を有することが知られている。
【0005】
種々の難燃添加剤の添加を通してPTT組成物の難燃特性を改善しようとする幾つかの試みが存在した。例えば、ハロゲン型難燃剤を含有するPTT組成物が広く研究されてきた。例えば、特許文献1は、ポリプロピレンテレフタレートまたはPBT、デカブロモジフェニルエーテル、三酸化アンチモンおよびアスベストを含有する樹脂組成物を開示している。特許文献2は、PTT、およびデカブロモビフェニルエーテルまたはテトラブロモビスフェノールAのポリカーボネートオリゴマーなどのグラフトコポリマーハロゲン型難燃剤、酸化アンチモンおよびガラス繊維を含有する樹脂組成物を開示している。
【0006】
ハロゲンフリー難燃性ポリエステル配合物を調製しようとする幾つかの試みがなされてきた。P含有化合物およびN含有化合物に基づくハロゲンフリー難燃剤を用いることによりポリエステル難燃剤を製造する方法は公知である。従って、特許文献3は、メラミンシアヌレートおよび芳香族ホスフェートを含有する充填剤入りポリアルキレンテレフタレートを記載している。特許文献4は、N−ヘテロ環式化合物と多官能性基化合物と任意にP系難燃剤入りのポリエステルを記載している。特許文献5は、有機ジホスフェート入りのポリエステルを教示している。しかしながら、この組成物は、特に長期に加熱老化させると良好な熱安定性を示さない。
【0007】
特許文献6、7および8は、メラミンシアヌレート、アンモニウムポリホスフェートまたはメラミンホスフェート、ホスフェートエステルおよびガラス繊維を含有するPBT樹脂組成物を提案している。しかしながら、これらの組成物は、成形したときに大きいそり変形および劣った外観を有し、従って、市場の要求を十分に満たすことができない。
【0008】
特許文献9は、流動性と機械的特性の改善された組み合わせを有するポリエステル成形用組成物を記載している。この成形用組成物は、80〜99.9重量部の熱可塑性ポリエステルと0.1〜20重量部のポリアミン−ポリアミドグラフトコポリマーとを含み、ポリエステルとグラフトコポリマーの重量部の合計は100である。ポリアミン−ポリアミドグラフトコポリマーは、(a)少なくとも4個の窒素原子、好ましくは少なくとも8個の窒素原子、特に好ましくは少なくとも11個の窒素原子を有し且つ少なくとも146g/モル、好ましくは少なくとも500g/モル、特に好ましくは少なくとも800g/モルの数平均分子量Mを有する、グラフトコポリマーを基準にして0.5〜25重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは1.5〜16重量%の分岐ポリアミンモノマーおよび(b)ラクタム、オメガ−アミノカルボン酸および/またはジアミンとジカルボン酸の等モル組み合わせから選択されたポリアミド形成用モノマーを用いて調製される。
【0009】
改善された難燃特性を有するPTT組成物を提供することがなお必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】GB第1473369号明細書
【特許文献2】米国特許第4,131,594号明細書
【特許文献3】特開2006/157,880号公報
【特許文献4】日本特許第3,115,195号公報
【特許文献5】米国特許第4,203,888号明細書
【特許文献6】EP−A−第0955338号明細書
【特許文献7】EP−A−第0955333号明細書
【特許文献8】特開2007/310,284号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2002/0120076A1号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、フッ素化スルフェート塩をPTTにブレンドして、こうしたPTTの難燃性の特性を効果的に改善できることが見出された。
【0012】
従って、本発明は、(a)少なくとも約70重量%のPTT(樹脂成分の重量を基準にして)を含む約75〜約99.9重量%の樹脂成分(全組成物重量を基準にして)と、(b)難燃添加剤として約0.02〜約5重量%のパーフッ素化スルホネート塩(全組成物重量を基準にして)を含む約0.02〜約25重量%の添加剤パッケージ(全組成物重量を基準にして)とを含むPTT系組成物を提供する。
【0013】
PTTは、テレフタル酸または酸等価物と1,3−プロパンジオールの重縮合によって製造されるタイプであり、1,3−プロパンジオールは、好ましくは、再生可能源(「生物学的に誘導された」1,3−プロパンジオール)から生化学的に得られるタイプである。
【0014】
本発明は、難燃性が改善されたPTT組成物を調製する方法であって、
(a)パーフッ素化スルホネート塩およびPTTを提供する工程と、
(b)PTTとパーフッ素化スルホネート塩を混合して、混合物を形成する工程と、
(c)攪拌しつつ混合物を加熱しブレンドして組成物を形成する工程と
を含む方法にも関する。
【0015】
本発明の別の態様は、PTT組成物を含む、改善された難燃特性を有する物品(繊維、フィルムおよび成形部品など)に関する。
【0016】
PTT組成物は、全組成物重量を基準にして好ましくは約0.1〜約1重量%、より好ましくは約0.5〜約1重量%のパーフッ素化スルホネート塩を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において記載されたすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、特に指示がない場合、完全に記載されたかのようにすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に明確に援用される。
【0018】
特に定義がない限り、本明細書において用いられるすべての科学技術用語は本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0019】
明示的に注記された場合を除き、商標は大文字で示す。
【0020】
特に指定がない限り、すべての百分率、部、比率などは重量による。
【0021】
量、濃度あるいは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上方値および好ましい下方値の一覧のいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別個に開示されるか否かに関係なく、あらゆる上方範囲限界または好ましい値とあらゆる下方範囲限界または好ましい値のあらゆる対から形成されたすべての範囲を特定的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲を本明細書で挙げる場合、別段に指定がない限り、その範囲は、その終点およびその範囲内のすべての整数および端数を含むことを意図している。範囲を定めるときに挙げられた特定の値に本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0022】
「約」という用語が一定範囲の値または終点を記載する際に用いられるとき、その開示は、関連した特定の値または特定の終点を含むと理解されるべきである。
【0023】
本明細書で用いるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらのあらゆる変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品または装置はそれらの要素のみに必ずしも限定されずに、こうしたプロセス、方法、物品または装置に明示的に記載されていない他の要素も固有でない他の要素も含んでもよい。更に、相反する明示的な記載がない限り、「または」は、非排他的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満足される。Aが真(または存在する)およびBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)およびBが真(または存在する)およびAとBの両方が真(または存在する)。
【0024】
単数形(「a」または「an」)の使用は、本発明の要素および成分を記載するために用いられる。これは、あくまで便宜上、および本発明の一般的意味を示すために用いられるに過ぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読むべきであり、単数が別段に意図されていることが明らかでない限り、単数は複数も含む。
【0025】
本明細書の材料、方法および実施例はあくまで例示であり、本明細書に記載された場合を除き、限定である意図はない。本明細書で記載された方法および材料に似ているか、または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることが可能であるが、適する方法および材料を本明細書において記載する。
【0026】
樹脂成分
上で示された通り、樹脂成分(および全体としての組成物)は支配的な量のPTTを含む。
【0027】
本発明において用いるために適するPTTは当該技術分野において公知であり、1,3−プロパンジオールグリコールとテレフタル酸またはテレフタル酸等価物の重縮合によって好都合に調製される。
【0028】
「テレフタル酸等価物」は、当業者によって一般に認められるであろうように、高分子グリコールおよびジオールとの反応においてテレフタル酸のように実質的に機能する化合物を意味する。本発明の目的のためのテレフタル酸等価物は、例えば、エステル(ジメチルテレフタレートなど)、ならびに酸ハロゲン化物(例えば酸塩化物)および酸無水物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0029】
テレフタル酸およびテレフタル酸エステル、より好ましくはジメチルエステルが好ましい。PTTの調製方法は、例えば、米国特許第6,277,947号明細書、米国特許第6,326,456号明細書、米国特許第6,657,044号明細書、米国特許第6,353,062号明細書、米国特許第6,538,076号明細書、米国特許出願公開第2003/0220465A1号明細書および共有米国特許出願第11/638,919号(2006年12月14日出願、発明の名称:「Continuous Process for Producing Poly(trimethylene Terephthalate)」)において論じられている。
【0030】
PTTを製造する際に用いるための1,3−プロパンジオールは、好ましくは、再生可能源(「生物学的に誘導された」1,3−プロパンジオール)から生化学的に得られる。
【0031】
特に好ましい1,3−プロパンジオール源は、再生可能な生物源を用いる発酵プロセスを経由する。再生可能源からの出発材料の例示的な例として、トウモロコシ原料などの生物的且つ再生可能な資源から製造された原料を用いる1,3−プロパンジオール(POD)への生物化学経路は記載されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに転化できる菌株は、種:クラブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)およびラクトバシラス(Lactobacillus)の中で見出されている。前に引用した米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書および米国特許第5,821,092号明細書を含む幾つかの公報の中でこの技術は開示されている。米国特許第5,821,092号明細書には、特に、組換え生物を用いるグリセロールからの1,3−プロパンジオールの生物生産のための方法が開示されている。この方法は、1,2−プロパンジオールのための特異性を有する異種pduジオールデヒドラターゼ遺伝子により変換された大腸菌(E.coli)を導入している。変換された大腸菌(E.coli)は炭素源としてのグリセロールの存在下で成長し、1,3−プロパンジオールは成長した媒体から単離される。菌と酵母の両方がグルコース(例えば、トウモロコシ糖)または他の糖質をグリセロールに転化できるので、これらの公報で開示された方法は、迅速で安価且つ環境に責任をもつ1,3−プロパンジオールモノマー源を提供する。
【0032】
上で記載され参照された方法によって製造されたような生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの生産のための原料を構成する植物によって導入された大気二酸化炭素からの炭素を含有する。かくして、本発明と関連して用いるために好ましい生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールは、再生可能炭素のみを含有し、化石燃料系炭素も石油系炭素も含有しない。従って、生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールを用いる再生可能炭素に基づくポリトリメチレンテレフタレートは、用いられる1,3−プロパンジオールが減り続ける化石燃料を枯渇させず、分解すると、もう一度植物による使用のために炭素を放出して大気に戻すので環境により小さい影響しか及ぼさない。従って、本発明の組成物は、石油系グリコールを含む類似の組成物より天然で且つ小さい環境影響しか及ぼさないとして特徴付けることが可能である。
【0033】
生物学的に誘導された1,3−プロパンジオール、PO3Gおよびそれらに基づくエラストマーは、石油源または化石燃料炭素から製造された類似化合物から二重炭素同位体特性評価法によって区別してもよい。この方法は、通常、化学的に同一の材料を区別し、生物圏(植物)成分の成長の源(および恐らく年)によってコポリマー中の炭素を割り当てる。同位体14Cおよび13Cは、この問題に補足情報をもたらす。放射性炭素年代測定同位体(14C)は、5730年のその核半減期により、化石(「死」)原料と生物圏(「生」)原料との間に検体炭素を割り当てることを明確に可能にする(Currie,L.A.「Source Apportionment of Atmospheric Particles」,Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds.,1 of Vol.1 of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc.)(1992年)3−74)。放射性炭素年代測定の基本的な仮定は、大気中の14C濃度の定常性が生物中の14Cの定常性につながることである。単離されたサンプルを取り扱うとき、サンプルの年代を関係
t=(−5730/0.693)ln(A/A
によって概略的に導き出すことが可能である。
式中、t=年代、5730年は放射性炭素の半減期である。AおよびAは、それぞれサンプルと近代標準の14C比放射能である(Hsien,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460,(1992年))。しかし、1950年以来の大気圏核実験および1850年以来の化石燃料の燃焼のゆえに、14Cは第2の地球化学的時間特性を獲得した。大気COひいては生きた生物圏中の14C濃度は、1960年代半ばにおける核実験のピーク時におよそ倍増した。14C濃度は、それ以来、7〜10年の近似緩和「半減期」により約1.2×10−12の定常状態宇宙線(大気)ベースライン同位体比率(14C/12C)に徐々に戻ってきた(この後者の半減期は文字通り受け取ってはならない。それどころか、核時代の開始以来の大気14Cおよび生物圏14Cの変動を追跡するために詳しい大気核投入/減衰関数を用いなければならない)。最近の生物圏炭素の年次年代測定を裏付けるのは、この後者の生物圏14C時間特性である。加速器質量分析法(AMS)によって14Cを測定することが可能であり、結果は、「現代炭素含有率」(f)の単位で与えられる。fは、それぞれシュウ酸標準HOxlおよびHOxllとして知られているNational Institute of Standards and Technology(NIST)標準参照物質(SRMs)4990Bおよび4990Cによって定義される。基本的定義は、14C/12C同位体比のHOxl(AD1950に関連した)の0.95倍に関する。これは、減衰に相関した産業革命前の木材にほぼ等しい。現在の生きた生物圏(植物材料)に関しては、f≒1.1である。
【0034】
安定炭素同位体比(13C/12C)は源の識別と指定への補足経路を提供する。所定の生物源材料の13C/12C比は、二酸化炭素が固定される時点での大気二酸化炭素の13C/12C比の結果であり、精密な代謝経路も反映する。地域的な変動も起きる。石油、C植物(広葉樹)、C植物(草類)および海洋カーボネートのすべては、13C/12C値および対応するδ13C値において著しい相違を示す。更に、C植物およびC植物の脂質物質は、代謝経路の結果として同じ植物の炭水化物成分から誘導された材料とは異なって分解する。測定の精度内で、13Cは同位体分別効果のゆえに大きな変動を示す。本発明に関してその最も著しいのは光合成メカニズムである。植物中の炭素同位体比の相違の主原因は、植物中の光合成炭素代謝、特に主たるカルボキシル化中に起きる反応、すなわち、大気COの初期固定の経路の相違に密接に関連する。植物化の2つの大きな種類は、「C」(またはCalvin−Benson)光合成サイクルを導入する種類および「C」(またはHatch−Slack)光合成サイクルを導入する種類である。硬木および針葉樹などのC植物は穏和な気候の地域で主流である。C植物において、主たるCO固定およびカルボキシル化反応は酵素リブローゼ−1,5−ジホスフェートカルボキシラーゼを含み、最初の安定な製品は3−炭素化合物である。他方、C植物は、熱帯の草類、トウモロコシおよびサトウキビのような植物を含む。C植物において、もう1つの酵素、ホスフェノールピルビン酸カルボキシラーゼを含む追加のカルボキシル化反応は主たるカルボキシル化反応である。最初の安定な炭素化合物は4−炭素酸であり、それは後で脱カルボキシル化される。こうして放出されるCOはCサイクルによって再び固定される。
【0035】
植物とC植物の両方は、13C/12C同位体比の一定範囲を示すが、典型的な値は、約−10〜−14/mil(C)および−21〜−26/mil(C)である(Weberら,J.Agric.Food Chem.,45,2942(1997年))。石炭および石油は、一般に、この後者の範囲に入る。13C測定目盛は、ピーディー矢石(PDB)石灰岩によって設定された零によって元来定義されている。ここで、値は、この材料からの千の偏差当たりの部で与えられる。「δ13C」値は、%で略された千当たりの(mil当たりの)部であり、次の通り計算される。
【数1】

【0036】
PDB標準材料(RM)が枯渇してきたので、一連の代替RMは、IAEA、USGS、NISTおよび選択された他の国際同位体試験所と協力して開発されてきた。PDBからのパーミル偏差のための表記法はδ13Cである。測定は、質量44、45および46の分子イオンに関する高精度安定比質量分析法(IRMS)によってCOに関して行われる。
【0037】
従って、生物学的に誘導された1,3−プロパンジオール、および生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールを含む組成物は、組成物の新しさを示す、14C(f)および二重炭素同位体特性評価法に基づいて石油誘導同等物から完全に区別することができる。これらの製品を区別する能力は商業目的のためにこれらの材料を追跡する際に有益である。例えば、「新」炭素同位体分布と「旧」炭素同位体分布の両方を含む製品を、「旧」材料のみから製造された製品から区別することができる。従って、本材料は、本材料の独特の分布に基づいて、および競争を決定する目的で、保存寿命を決定するために、ならびに特に環境影響を評価するために商業目的のために追跡される場合がある。
【0038】
反応体としてまたは反応体の成分として用いられる1,3−プロパンジオールは、ガスクロマトグラフ分析によって決定したとき、好ましくは約99重量%を上回る、より好ましくは約99.9重量%を上回る純度を有する。米国特許第7,038,092号明細書、米国特許第7,098,368号明細書、米国特許第7,084,311号明細書および米国特許出願公開第20050069997A1号明細書において開示された精製1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0039】
精製1,3−プロパンジオールは、好ましくは以下の特性を有する。
(1)約0.200未満の220nmでの紫外線吸収、約0.075未満の250nmでの紫外線吸収および約0.075未満の275nmでの紫外線吸収、および/または
(2)約0.15未満のCIELAB“b”明度(ASTM D6290)および約0.075未満の270nmでの吸光度を有する組成、および/または
(3)約10ppm未満の過酸化物組成、および/または
(4)ガスクロマトグラフィによって測定されたとき、約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、なおより好ましくは約150ppm未満の全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度。
【0040】
本発明において有用なPTTは、(1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸および/または等価物から実質的に誘導された)単独またはブレンドにおけるPTTホモポリマーおよびコポリマーであることが可能である。本発明において用いられるPTTは、好ましくは、1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸(および/またはジメチルテレフタレートなどのその等価物)から誘導された反復単位約70モル%以上を含有する。
【0041】
PTTは、他のジオールまたは二酸から作られた反復単位30モル%以下を含有してもよい。他の二酸には、例えば、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、およびこれらのジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステルまたはジプロピルエステルなどのそれらの誘導体が挙げられる。他のジオールには、エチレンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール、ならびにジオールまたはポリオールとアルキレンオキシドの反応生成物によって作られる、より長鎖のジオールおよびポリオールが挙げられる。
【0042】
本発明において有用なPTTポリマーは、例えば、カチオン可染性を付与するために有用なスルホネート化合物約5モル%までの官能性モノマーも含んでよい。好ましいスルホネート化合物の特定の例には、5−リチウムスルホイソフタレート、5−ナトリウムスルホイソフタレート、5−カリウムスルホイソフタレート、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、テトラメチルホスホニウム3,5−ジカルボキシベンゼンスルホネート、テトラブチルホスホニウム3,5−ジカルボキシベンゼンスルホネート、トリブチル−メチルホスホニウム3,5−ジカルボキシベンゼンスルホネート、テトラブチルホスホニウム2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホネート、テトラメチルホスホニウム2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホネート、アンモニウム3,5−ジカルボキシベンゼンスルホネートならびにメチルおよびジメチルなどのそれらのエステル誘導体が挙げられる。
【0043】
より好ましくは、PTTは、1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸(または等価物)から誘導された反復単位:少なくとも約80モル%、または少なくとも約90モル%、もしくは少なくとも約95モル%または少なくとも約99モル%を含有する。最も好ましいポリマーは、ポリトリメチレンテレフタレートホモポリマー(実質的に1,3−プロパンジオールおよびテレフタル酸または等価物のみのポリマー)である。
【0044】
樹脂成分は、PET、PBTなどのPTTとブレンドされた他のポリマー、ナイロン−6および/またはナイロン−6,6のようなナイロンなどを含有してもよい。そして好ましくは、樹脂成分の重量を基準にして少なくとも約70重量%、または少なくとも約80重量%、もしくは少なくとも約90%、または少なくとも約95重量%、もしくは少なくとも約99重量%のPTTを含有する。好ましい一実施形態において、PTTは、こうした他のポリマーを伴わずに用いられる。
【0045】
添加剤パッケージ
本発明のPTT系組成物は、酸化防止剤、残留触媒、艶消剤(TiO、硫化亜鉛または酸化亜鉛など)、着色剤(染料など)、安定剤、充填剤(炭酸カルシウムなど)、抗菌剤、帯電防止剤、光学ブライトナー、増量剤、加工助剤および以後「チップ添加剤」と呼ばれる他の機能性添加剤などの添加剤を含有してもよい。TiOまたは類似化合物(硫化亜鉛および酸化亜鉛など)を用いるとき、こうした化合物は、PTT組成物を製造する際に通常用いられる量、すなわち、繊維を作る際に約5重量%以下またはそれ以上(全組成物重量を基準にして)、および幾つかの他の最終用途においてより多量で顔料または艶消剤として用いられる。繊維およびフィルム用のポリマー中で用いるとき、TiOは、(全組成物重量を基準にして)好ましくは少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.02重量%、且つ好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約3重量%以下、最も好ましくは約2重量%以下の量で添加される。
【0046】
「顔料」によって、当該技術分野において顔料と一般に呼ばれる物質に言及される。顔料は、ポリマーまたは物品(例えば、チップまたは繊維)に色を付与する通常は乾燥粉末状の物質である。顔料は無機または有機であることが可能であり、天然または合成であることが可能である。一般に、顔料は不活性(例えば、電子的に中性且つポリマーと反応しない)であり、この場合、ポリトリメチレンテレフタレート組成物である顔料を添加する媒体に不溶性または比較的不溶性である。場合によって、顔料は可溶性であることが可能である。
【0047】
本発明の組成物中で用いられる難燃添加剤はパーフッ素化スルホネート塩である。この化合物は厳密には「イオン液体」ではないけれども、時々そう呼ばれる。
【0048】
本明細書において用いられる「イオン液体」という用語は、全くイオンからなる液体を意味する。イオン液体は、液体有機塩、融解塩、溶融塩、イオン溶融物、非水性イオン液体、室温イオン液体、有機イオン液体およびイオン流体としても知られている。これらは、Vol.26 of Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第5版、John Wiley&Sons,Inc.,2007,頁836−920においてA.StarkおよびK.R.Seddonによってより完全に記載されている。
【0049】
好ましくは、難燃添加剤は、式(I)
(I)
[式中、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、ホスフィウムおよびアンモニウムからなる群から選択されたカチオンであり、Qは、式(II)および式(III)
−SO (II)
(R−SO (III)
(式中、Rfは、1〜6個の炭素原子のパーフッ素化炭素鎖である)
からなる群から選択されたアニオンである]
の1種以上のパーフッ素化スルホネート塩である。
【0050】
上の式(I)において、
【0051】
ピリジニウムカチオンは、好ましくは式(IV)を有する。
【化1】

【0052】
ピリダジニウムカチオンは、好ましくは式(V)を有する。
【化2】

【0053】
ピリミジニウムカチオンは、好ましくは式(VI)を有する。
【化3】

【0054】
ピラジニウムカチオンは、好ましくは式(VII)を有する。
【化4】

【0055】
イミダゾリウムカチオンは、好ましくは式(VIII)を有する。
【化5】

【0056】
ピラゾリウムカチオンは、好ましくは式(IX)を有する。
【化6】

【0057】
チアゾリウムカチオンは、好ましくは式(X)を有する。
【化7】

【0058】
オキサゾリウムカチオンは、好ましくは式(XI)を有する。
【化8】

【0059】
チアゾリウムカチオンは、好ましくは式(XII)を有する。
【化9】

【0060】
ホスホニウムカチオンは、好ましくは式(XIII)を有する。
【化10】

【0061】
およびアンモニウムカチオンは、好ましくは式(XIV)を有する。
【化11】

式中、
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、
(a)H
(b)ハロゲン
(c)−CH、−CまたはCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで任意に置換されたC〜C25(好ましくはC〜C20)直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン
(d)O、N、SiおよびSからなる群から選択された1〜3個のヘテロ原子を含み、Cl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで任意に置換されたC〜C25、好ましくはC〜C20環式アルカンまたは環式アルケン
(e)C〜C25非置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール
(f)C〜C25置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリール
からなる群から選択され、ここで、前記置換アリールまたは前記置換ヘテロアリールは、(1)−CH、−CまたはCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで任意に置換されたC〜C25、好まし
くはC〜C20直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン
(2)OH
(3)NHおよび
(4)SH
からなる群から独立して選択された1〜3個の置換基を有し、
、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、
(g)−CH、−CまたはCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで任意に置換されたC〜C25(好ましくはC〜C20)直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン
(h)O、N、SiおよびSからなる群から選択された1〜3個のヘテロ原子を含み、Cl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで任意に置換されたC〜C25(好ましくはC〜C20)環式アルカンまたは環式アルケン
(j)C〜C25非置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール
(k)C〜C25置換アリールまたはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリール
からなる群から選択され、ここで、前記置換アリールまたは前記置換ヘテロアリールは、(1)−CH、−CまたはCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで任意に置換されたC〜C25、好ましくはC〜C20直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン
(2)OH
(3)NHおよび
(4)SH
からなる群から独立して選択された1〜3個の置換基を有し、
任意に、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10の少なくとも2個は合一して、環式または二環式のアルカニル基またはアルケニル基を形成する。
【0062】
本発明のために有用なカチオン(M)源は市販されているか、または当業者に知られている方法によって合成してもよい。
【0063】
好ましいアニオンQは、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロエタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロヘキサンスルホネート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミドおよびビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドからなる群から選択される。
【0064】
式(II)のアニオンに基づくパーフッ素化スルホネート塩の例には、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム パーフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム パーフルオロブタンスルホネート、テトラ−n−ブチルホスホニウム トリフルオロメタンスルホネート、テトラ−n−ブチルホスホニウム パーフルオロブタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム トリフルオロメタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム トリフルオロメタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム パーフルオロブタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム トリフルオロメタンスルホネートおよびテトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム パーフルオロブタンスルホネートが挙げられる。
【0065】
式(III)のアニオンに基づくパーフッ素化スルホネート塩の例には、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、酸の形態を取ったビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、カリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルホスホニウム ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルホスホニウム ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミド、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミドおよびテトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドが挙げられる。
【0066】
式(III)のアニオンに基づくビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミド塩は、例えば、米国特許第5,847,616号明細書、米国特許第6,252,111号明細書、米国特許第6,399,821号明細書、DesMarteau,D.およびHu,L.Q.,Inorg.Chem.(1993年),32,5007−5010;およびCaporiccio,Gら,J.Fluor.Chem.(2004年),125,243−252に記載されている通り合成することが可能である。
【0067】
式(II)のアニオンに基づく以下のパーフッ素化スルホネート塩;トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムおよびパーフルオロヘキサンスルホン酸カリウムは、商業的に購入することが可能である。式(III)のアニオンに基づく以下のビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミド塩;カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、酸の形態を取ったビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドおよびカリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドは、商業的に購入することが可能である。
【0068】
1種以上のパーフッ素化スルホネート塩の混合物、および1種以上のパーフッ素化スルホネート塩と1種以上の他の難燃添加剤の混合物は、本発明において用いるために適する。
【0069】
本発明のPTT系組成物は、当業者に公知の従来のブレンディング技術、例えば、ポリマー押出成機内でのコンパウンディング、溶融ブレンディングなどによって調製してもよい。
【0070】
好ましくは、樹脂成分および難燃添加剤は溶融ブレンドされる。より詳しくは、樹脂成分および難燃添加剤は混合され、溶融ブレンドを形成するのに十分な温度で加熱され、好ましくは連続方式で繊維に紡糸されるか、または造形品に成形される。異なる多くの方法により、成分をブレンドされた組成物に形成することが可能である。例えば、成分を(a)同時に加熱し混合するか、(b)加熱の前に別個の装置内でプレミックスするか、または(c)加熱し、次に混合することが可能である。混合、加熱および成形は、押出機またはバンバリーミキサーなどの当該目的のために設計された従来の装置によって行うことが可能である。温度は、各成分の融点より上であるべきであるが、最低分解温度より下であるべきであり、従って、PTTおよび難燃添加剤の特定のあらゆる組成物のために調節されなければならない。温度は、典型的には、約180〜約270の範囲内である。
【0071】
用いられるパーフッ素化スルホネート塩添加剤の量は、全組成物重量を基準にして好ましくは約0.02〜約5重量%である。PTT組成物は、全組成物重量を基準にしてより好ましくは約0.1〜約1重量%、なおより好ましくは約0.5〜1重量%のパーフッ素化スルホネート塩を含む。
【0072】
用途
本発明のPTT系組成物は、繊維、布地、フィルムおよび他の有用な物品中で有用であり、こうした組成物および物品を製造する方法は、前に援用された参考文献の多くにおいて開示された通りである。本発明のPTT系組成物は、例えば、連続および切断された(例えば、ステープル)繊維、ヤーン、編み織布および編み不織布を製造するために用いてもよい。繊維は一成分繊維または多成分繊維(例えば、二成分)繊維であってもよく、異なる多くの形状および形態を有してもよい。繊維はテキスタイルおよびフローリングのために有用である。
【0073】
本発明のPTT系組成物の特に好ましい最終用途は、米国特許第7,013,628号明細書において開示されたようなカーペット用の繊維の製造である。
【実施例】
【0074】
以下の実施例において、すべての部、百分率などは、別段に指示がない限り重量による。
【0075】
成分
実施例において用いられたPTTは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware)から入手できるSORONA(登録商標)「半光沢」ポリマーであった。
【0076】
実施例において用いられたパーフッ素化スルホネート塩は、カリウムノナフレート(K−NONA、CSOK、Aldrich Chemical Co.)であった。
【0077】
燃焼性の改善を実証するためのアプローチは、(1)難燃添加剤をPTTにコンパウンディングする、(2)改質されたPPTのフィルムをキャストする、および(3)難燃添加剤による燃焼性の改善を決定するためにフィルムの燃焼性を試験することであった。
【0078】
難燃添加剤のコンパウンディング
SORONA(登録商標)ポリマーを120℃で16時間にわたり真空炉内で乾燥させ、難燃添加剤も80℃で16時間にわたり真空炉内で乾燥させた。
【0079】
第1のゾーンで190℃、スクリューチップおよび1孔ストランドダイ(直径4.76mm)で250℃までの温度分布を有するW&P30A二軸スクリュー押出機(MJM#4、スクリュー30mm)のスロートに18ポンド/時間の速度で乾燥ポリマーを供給した。ポリマー中の指定濃度を達成するために必要な速度、例えば、2ポンド/時間の速度で乾燥難燃添加剤を押出機のスロートに供給して、ポリマーへの10%装填量を得た。押出機のスロートを運転中に乾燥窒素ガスでパージして、ポリマーの分解を最少化した。各難燃添加剤の導入の前に押出システムを乾燥ポリマーで3分より長くパージした。4.76mmダイからの非改質ポリマーのストランドまたはコンパウンディングされたポリマーのストランドをフィルムへの更なる加工のためにペレットに切断した。
【0080】
フィルムの調製
フィルムを調製する際に用いる前に、すべてのサンプルを120℃で16時間にわたり乾燥させた。
【0081】
非改質SORONA(登録商標)ポリマーのサンプルおよびコンパウンディングされたSORONA(登録商標)ポリマーのサンプルをW&P28D二軸スクリュー押出機(MGW#3、スクリュー28mm)のスロートに供給した。押出機のスロートを運転中に乾燥窒素でパージして、分解を最少化した。ゾーン温度は、スクリュー速度100rpmを用いて第1のゾーンで200℃からスクリューチップで240℃の範囲であった。幅254mm×高さ4mmのフィルムダイに溶融ポリマーを送出して、厚さ4mm、幅254mmおよび長さ約18メートル以下のフィルムを製造した。各コンパウンディング試験項目でフィルムを調製する前に押出システムを非改質SORONA(登録商標)ポリマーで少なくとも5分にわたりパージした。
【0082】
試験サンプルの調製
試験項目ごとに、51mm×152mmのダイを用いて10個の試験片を厚さ4mmのフィルムからプレス打ち抜きした。5個の試験片をフィルムの縦(押出)方向に打ち抜き、5個の試験片を横(押出に対して垂直)方向に打ち抜いた。フィルム試験片を105℃で30分より長く炉で乾燥させ、その後、試験の前に15分より長くデシケータ内で冷却した。
【0083】
フィルムの燃焼性試験
上述したように得られた51mm×152mm×4mmのフィルム試験片を45°の角度で保持した。着火が起きるまで長さ19mmのブタン炎をフィルムの下方端(幅51mm)に被着させた。炎の自己消炎後、燃焼したかまたは消滅したフィルム試験片の%を決定し、%焼失として記録した。%焼失の結果が少なければ少ないほど、添加剤の難燃性は良好である。
【0084】
比較例A
難燃添加剤のないSORONA(登録商標)PTTフィルムを調製し、上述した通り試験した。難燃剤がないと、ポリマーフィルムは自己消炎せずに炎によって完全に焼失した。すなわち、100%焼失。
【0085】
実施例1〜2
比較例Aおよび実施例1〜2の試験結果を表1において提示している。示したように、難燃添加剤は、低い0.5%添加剤レベルでさえ、ポリトリメチレンテレフタレートの難燃性を改善した。
【0086】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(樹脂成分の質量を基準にして)少なくとも約70質量%のポリトリメチレンテレフタレートを含む(全組成物質量を基準にして)約75〜約99.9質量%の樹脂成分と、
(b)(全組成物質量を基準にして)難燃添加剤として約0.02〜約5質量%のパーフッ素化スルホネート塩を含む(全組成物質量を基準にして)約0.02〜約25質量%の添加剤パッケージと
を含むポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項2】
パーフッ素化スルホネート塩が式(I)
(I)
[式中、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム、ホスホニウム(phosphium)およびアンモニウムからなる群から選択されたカチオンであり、
は、式(II)および式(III)、
−SO (II)、
(R−SO (III)
(式中、Rfは、1〜6個の炭素原子のパーフッ素化炭素鎖である)
からなる群から選択されたアニオンである]
の塩である請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項3】
が、
(i)式(IV)のピリジニウムカチオン
【化1】

(ii)式(V)のピリダジニウムカチオン
【化2】

(iii)式(VI)のピリミジニウムカチオン
【化3】

(iv)式(VII)のピラジニウムカチオン
【化4】

(v)式(VIII)のイミダゾリウムカチオン
【化5】

(vi)式(IX)のピラゾリウムカチオン
【化6】

(vii)式(X)のチアゾリウムカチオン
【化7】

(viii)式(XI)のオキサゾリウムカチオン
【化8】

(ix)式(XII)のトリアゾリウムカチオン
【化9】

(x)式(XIII)のホスホニウムカチオン
【化10】

および(xi)式(XIV)のアンモニウムカチオン
【化11】

(式中、
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、
(a)H、
(b)ハロゲン、
(c)−CH、−C、または場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(d)O、N、SiおよびSからなる群から選択された1〜3個のヘテロ原子を含み、場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで置換されたC〜C25環式アルカンまたは環式アルケン、
(e)C〜C25非置換アリール、またはO、N、SiおよびSからなる群から独立し
て選択された1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール、
(f)C〜C25置換アリール、またはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリール
からなる群から選択され、ここで該置換アリールまたは該置換ヘテロアリールは、
(1)−CH、−C、または場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(2)OH、
(3)NH、および
(4)SH
からなる群から独立して選択された1〜3個の置換基を有し、
、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、
(g)−CH、−C、または場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン、
(h)O、N、SiおよびSからなる群から選択された1〜3個のヘテロ原子を含み、場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25環式アルカンまたは環式アルケン
(j)C〜C25非置換アリール、またはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール
(k)C〜C25置換アリール、またはO、N、SiおよびSからなる群から独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリール
からなる群から選択され、ここで該置換アリールまたは該置換ヘテロアリールは、
(1)−CH、−C、または場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択された少なくとも1つのメンバーで置換されるC〜C25直鎖、分岐もしくは環式のアルカンもしくはアルケン
(2)OH、
(3)NH、および
(4)SH
からなる群から独立して選択された1〜3個の置換基を有し、
そしてここで場合によりR、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10の少なくとも2個は一緒になって環式または二環式のアルカニル基またはアルケニル基を形成する)
からなる群から選択される請求項2に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項4】
が、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロエタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロヘキサンスルホネート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミドおよびビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドからなる群から選択される請求項2に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項5】
が、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロエタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロヘキサンスルホネート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミドおよびビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドからなる群から選択される請求項3に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項6】
添加剤パッケージが、(全組成物質量を基準にして)約0.1〜約1質量%のパーフッ素化スルフェート塩を含む請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項7】
添加剤パッケージが、(全組成物質量を基準にして)約0.5〜約1質量%のパーフッ素化スルフェート塩を含む請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項8】
ポリトリメチレンテレフタレートが、テレフタル酸または酸等価体と1,3−プロパンジオールの重縮合によって製造されるタイプのものである請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項9】
1,3−プロパンが生物学的に誘導された1,3−プロパンジオールである請求項8に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項10】
ポリトリメチレンテレフタレートがポリトリメチレンテレフタレートホモポリマーである請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項11】
樹脂成分が別のポリマーを含む請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項12】
樹脂成分がポリエチレンテレフタレートを含む請求項11に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項13】
樹脂成分がポリブチレンテレフタレートを含む請求項11に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項14】
樹脂成分がナイロンを含む請求項11に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項15】
添加剤パッケージがTiOを含む請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物。
【請求項16】
請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物を調製する方法であって、
(a)パーフッ素化スルフェート塩およびポリトリメチレンテレフタレートを備える工程と、
(b)該ポリトリメチレンテレフタレートと該パーフッ素化スルフェート塩を混合して、混合物を形成する工程と、
(c)該混合物を攪拌しつつ加熱し、ブレンドして、組成物を形成する工程と
を含む方法。
【請求項17】
工程(c)が約180℃〜約270℃で行われる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレートベースの組成物から製造された物品。
【請求項19】
繊維の形態にある請求項18に記載の物品。

【公表番号】特表2010−535899(P2010−535899A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520254(P2010−520254)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/072175
【国際公開番号】WO2009/020947
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】