説明

難燃組成物、それを用いた難燃化処理方法および難燃材料

【課題】木材、紙、織布、不織布および樹脂に高い難燃性能を付与し得る液状または粉末状の難燃組成物、それを用いた低コストでかつ簡便な難燃化処理方法およびそれにより得られた難燃材料を提供することを課題とする。
【解決手段】ホウ酸、ホウ酸塩またはそれらの混合物から選択されるホウ素化合物と、糖類とを相乗効果を奏する割合で含有することを特徴とする難燃組成物により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素化合物および糖類を含有する難燃組成物、それを用いた難燃化処理方法およびそれにより得られた難燃材料に関する。本発明の難燃組成物は、木材、紙、織布、不織布および樹脂の難燃化に好適に用いられる、
【背景技術】
【0002】
ホウ酸(H3BO3)、ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム十水和物、Na247・10H2O)などのホウ素化合物は古くから木材の防火剤(難燃剤)として利用されてきた。
ホウ素化合物は、木材などのセルロース系材料の燃焼抑制剤として19世紀前半から既に検討され、その中でも木材や木質材料の発炎燃焼と赤熱燃焼を抑制する効果があり、比較的低コストで入手し易いホウ酸およびホウ砂が防火剤として検討されてきた。
しかしながら、ホウ酸およびホウ砂は、水に対する溶解度(水100gに対する溶解量g)が低く、高い難燃性能を得るために、高濃度のホウ素化合物溶液として難燃化対象材料に含浸または塗布することができないという問題があった。
【0003】
そこで、本発明者は、ホウ酸およびホウ酸塩が室温以上に加熱された温度でのそれぞれの単独化合物の溶解度を超える量で含有されてなる室温で安定なホウ素化合物の水溶液およびホウ素化合物の液状組成物を提案した(特開2005−112700号公報:特許文献1および特開2006−219329号公報:特許文献2参照)。
これらの先行技術の水溶液および液状組成物は、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの一部の有機ポリマーには高い難燃効果を発揮するものの、他の有機ポリマーに対する付着性が低く、難燃効果が低いという課題があった。
【0004】
また、難燃化対象材料の表面に、ポリビニルアルコールなどの水酸基を有する高分子のコーティング層と、その層上にホウ酸ナトリウム重合体が付着されてなる難燃化または不燃化処理部材が提案されている(特開2009−29103号公報:特許文献3参照)。
この先行技術は、水酸基を有する高分子とホウ酸塩とを水溶液状態で混合すると反応して水素結合の架橋によりスライムと呼ばれるゲル状の組成物が得られるという公知技術を応用したものと考えられる。
しかしながら、この先行技術ではコーティング層の形成とホウ酸ナトリウム重合体の付着の2工程が必要であり、難燃化工程の簡略化が求められ、更なる難燃性能の向上効果も求められる。
【0005】
一方、本発明のもう1つの有効成分である糖類についても、その難燃効果が確認されている。例えば、特開2006−233006号公報(特許文献4)には、樹脂中に糖類化合物が存在していると、糖類化合物は燃焼時の高温時に水酸基が脱水し、水を放出して冷却効果を発揮するとともに、チャー(炭化層)を生成して断熱皮膜を形成することが記載されている。
しかしながら、上記の先行技術において、ホウ素化合物と糖類との併用およびその高い難燃性能の向上(付与)効果については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−112700号公報
【特許文献2】特開2006−219329号公報
【特許文献3】特開2009−29103号公報
【特許文献4】特開2006−233006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、木材、紙、織布、不織布および樹脂に高い難燃性能を付与し得る液状または粉末状の難燃組成物、それを用いた低コストでかつ簡便な難燃化処理方法およびそれにより得られた難燃材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ホウ素化合物と糖類とを併用することにより、難燃性能の付与効果が飛躍的に増大し、これまで難燃効果が低かった有機ポリマーにも適用できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
かくして、本発明によれば、ホウ酸、ホウ酸塩またはそれらの混合物から選択されるホウ素化合物と、糖類とを相乗効果を奏する割合で含有することを特徴とする難燃組成物が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の難燃組成物で難燃化対象材料を処理して、難燃材料を得ることを特徴とする難燃化処理方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の難燃化処理方法により得られた難燃材料が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、木材、紙、織布、不織布および樹脂に高い難燃性能を付与し得る液状または粉末状の難燃組成物、それを用いた低コストでかつ簡便な難燃化処理方法およびそれにより得られた難燃材料を提供することを提供することができる。
本発明では、セルロースと同じ炭水化物である糖類を併用することにより、接炎時に表面に炭化層を生じ難い有機ポリマーであっても、その表面に緻密な炭化層が形成され、顕著な難燃効果が発現するものと考えられる。
【0012】
また、本発明によれば、ホウ素化合物が、ホウ酸(H3BO3)、ホウ砂(Na247・10H2O)、五ホウ酸ナトリウム(NaB58)またはこれらの混合物であり、かつ糖類が、グルコースおよびフルクトースから選択される単糖類、スクロース(ショ糖)、トレハロース、セロビオースおよびα−シクロデキストリンから選択される少糖類またはデンプン、グルコマンナンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される多糖類であることにより、上記の優れた効果が特に発揮される。
【0013】
また、本発明によれば、相乗効果を奏する割合が、ホウ素化合物100部に対して、糖類が単糖類または少糖類のとき糖類5〜2000部または糖類が多糖類のとき糖類1〜2000部の割合であることにより、上記の優れた効果が特に発揮される。
【0014】
また、本発明によれば、難燃組成物が、
水100部に対してホウ酸a部およびホウ砂b部(但し、a<35、b<40、0<a<b+5)を添加し、70〜90℃に加熱して溶解せしめ、次に室温まで冷却することにより得られた、キレート化剤または界面活性剤を含まないで、ホウ素換算で2.5mol/kg以上含む水溶液、
水100部に対してホウ酸c部およびホウ砂d部(但し、c≧35、d≧40)を添加し、40〜100℃に加熱して溶解せしめた水溶液、および
水100部に対して、ホウ酸2〜28部、ホウ砂2〜98部または五ホウ酸ナトリウム(NaB58)6〜50部を添加し、40〜100℃に加熱して溶解せしめた水溶液
から選択されるホウ素化合物の水溶液に、
糖類が単糖類または少糖類であるとき、水100部に対して糖類1〜80部、または糖類が多糖類であるとき水100部に対して糖類1〜30部を添加して溶解せしめた液状の難燃組成物であることにより、上記の優れた効果が特に発揮される。
本発明の液状の難燃組成物は一液組成物であるので、本発明によれば、1工程により難燃化対象材料に難燃性を付与することができる。
【0015】
また、本発明によれば、難燃組成物が、ホウ酸、ホウ酸塩またはそれらの混合物から選択されるホウ素化合物と糖類とを混合するか、または上記の液状の難燃組成物を蒸発乾固することにより得られた粉末状の難燃組成物であることにより、上記の優れた効果が特に発揮される。
本発明の粉末状の難燃組成物は、これを樹脂などに配合することにより、優れた難燃性を有する樹脂材料を提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、上記の難燃組成物で難燃化対象材料を処理して、難燃材料を得ることからなる難燃化処理方法およびそれにより得られた難燃材料が提供される。
難燃化対象材料が木材、紙、織布、不織布および樹脂から選択される材料であることにより、低コストでかつ簡便に難燃材料を得ることができる。
【0017】
さらに、上記の処理が、
難燃組成物が水溶液、水性懸濁液およびコロイド溶液から選択される液状の難燃組成物でありかつ難燃化対象材料が木材、紙、織布、不織布および樹脂から選択される材料であるとき、液状の難燃組成物を材料に塗布または含浸させること、
難燃組成物が粉末状の難燃組成物でありかつ難燃化対象材料が樹脂であるとき、粉末状の難燃組成物を樹脂に添加し溶融混練すること、または
難燃化対象材料が樹脂であるとき、難燃組成物の粉末状の構成成分を樹脂に個別に添加して溶融混練すること
からなることにより、上記の優れた効果が特に発揮される。
【0018】
また、上記の塗布が難燃化対象材料の重量増加率で5〜400%または付着量で0.004〜1.5g/cm2になるように行われ、上記の含浸が難燃化対象材料の1kg当り50g以上の含浸量になるように行われ、また上記の添加が樹脂100部に対して5〜30部の添加量になるように行われることにより、上記の優れた効果が特に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の液状の難燃組成物を塗布した試験体の、接炎時の試験体表面の温度変化を示す図である(試験例1)。
【図2】本発明の液状の難燃組成物を塗布した試験体の、接炎時の試験体表面の温度変化を示す図である(試験例2)。
【図3】本発明の液状の難燃組成物を塗布した試験体の、接炎時の試験体表面の温度変化を示す図である(試験例5)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の難燃組成物は、ホウ酸、ホウ酸塩またはそれらの混合物から選択されるホウ素化合物と、糖類とを相乗効果を奏する割合で含有することを特徴とする。
本発明において「難燃」とは燃え難いこと、「難燃化」とは燃え難くすること、「難燃組成物(「難燃剤」ともいう)」とは材料を燃え難くするための添加剤を意味する。
材料およびその用途によっては法令が整備され、「難燃」に関する詳細な基準や評価方法が規格化されている。
それらの中で、炎を伴った燃焼ができないことを意味する「不燃」、火が燃え広がらないことを意味する「防炎」、その他「防火」および「耐火」などの用語が使われているが、本発明では、これらの用語をすべて含めて「難燃」と定義する。
【0021】
ホウ酸、ホウ酸塩またはそれらの混合物から選択されるホウ素化合物は、工業的に入手し得るものであれば特に限定されず、例えば、ホウ酸塩としては、ホウ砂(Na247・10H2O)、五ホウ酸ナトリウム(NaB58)などが挙げられる。
これらのホウ素化合物の中でも、ホウ酸(H3BO3)、ホウ砂、五ホウ酸ナトリウムまたはこれらの混合物が特に好ましい。
ホウ素化合物がホウ酸とホウ酸のナトリウム塩との混合物である場合には、ホウ素(B)とナトリウム(Na)とのモル比Na/Bが0を超え0.5以下であるのが好ましい。
【0022】
本発明において用いられるホウ酸はH3BO3(オルトホウ酸)および/またはHBO2(メタホウ酸)であり、ホウ砂は四ホウ酸ナトリウム十水和物Na247・10H2Oであるのが好ましい。ホウ砂の重量は十水和物の重量換算であるが、ホウ砂は必ずしも水和物である必要はなく、無水物であってもよい。
【0023】
糖類は、ホウ素化合物との併用により本発明の効果を発揮し得る糖類であり、工業的に入手し得るものであれば特に限定されず、低コストで入手し易いものが特に好ましい。
このような糖類は、単糖類、少糖類(オリゴ糖)および多糖類に分類される。
【0024】
単糖類としては、
グリセルアルデヒドのようなトリオース(三炭糖)、エリトロース、トレオースなどのテトロース(四炭糖)、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アピオースなどのペントース(五炭糖)、アロース、タロース、グロース、グルコース(ブドウ糖)、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドースなどのヘキソース(六炭糖)などのアルドース;
ジヒドロキシアセトンのようなトリオース(三炭糖)、エリトルロースのようなテトロース(四炭糖)、リブロース、キシルロースなどのペントース(五炭糖)、プシコース、フルクトース(果糖)、ソルボース、タガトースなどのヘキソース(六炭糖)、セドヘプツロース、コリオースなどのヘプトース(七炭糖)などのケトースが挙げられる。
【0025】
少糖類としては、
トレハロース、イソトレハロース、コージビオース、ソホロース、ニゲロース、ラミナリビオース、マルトース(麦芽糖)、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、ラクトース(乳糖)、スクロース(ショ糖)などの二糖類;
フルクオリゴ糖、ガラクオリゴ糖、乳果オリゴ糖、デオキシリボース、フコース、ラムノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルクロノラクトン、グルコノラクトン、α−シクロデキストリンなどのオリゴ糖が挙げられる。
【0026】
多糖類としては、デンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、グルコマンナン、ポリデキストロースなどが挙げられる。
【0027】
これらの糖類の中でも、グルコースおよびフルクトースから選択される単糖類、スクロース(ショ糖)、トレハロース、セロビオースおよびα−シクロデキストリンから選択される少糖類またはデンプン、グルコマンナンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される多糖類が特に好ましい。
【0028】
ホウ素化合物と糖類との相乗効果を奏する割合は、ホウ素化合物100部に対して、糖類が単糖類または少糖類であるとき糖類5〜2000部、好ましくは30〜150部または糖類が多糖類であるとき糖類1〜2000部、好ましくは1〜15部の割合である。
配合割合が上記の範囲内であれば、本発明の優れた効果が得られる。
【0029】
本発明の難燃性組成物は、
水100部に対してホウ酸a部およびホウ砂b部(但し、a<35、b<40、0<a<b+5)を添加し、70〜90℃に加熱して溶解せしめ、次に室温まで冷却することにより得られた、キレート化剤または界面活性剤を含まないで、ホウ素換算で2.5mol/kg以上含む水溶液(水溶液1)、
水100部に対してホウ酸c部およびホウ砂d部(但し、c≧35、d≧40)を添加し、40〜100℃に加熱して溶解せしめた水溶液(水溶液2)、および
水100部に対して、ホウ酸2〜28部、ホウ砂2〜98部または五ホウ酸ナトリウム(NaB58)6〜50部を添加し、40〜100℃に加熱して溶解せしめた水溶液(水溶液3)
から選択されるホウ素化合物の水溶液に、
糖類が単糖類または少糖類であるとき、水100部に対して糖類1〜80部、より好ましくは15〜25部または糖類が多糖類であるとき水100部に対して糖類1〜30部、より好ましくは2〜6部を添加して溶解せしめた液状の難燃組成物であるのが好ましい。
配合割合が上記の範囲内であれば、本発明の優れた効果が得られる。
本発明の液状の難燃組成物は、水溶液、水性懸濁液、コロイド溶液のいずれであってもよい。
【0030】
水溶液1は、例えば、特開2005−112700号公報(特許文献1)の段落0019〜0022および0030〜0031に記載の方法により調製することができる。具体的には、実施例において詳述する。
【0031】
本発明において「部」とは重量部を意味する。
「濃度単位:mol/kg」は重量モル濃度であり、溶媒である水1kg当たりに溶解するホウ素の質量(モル)で表現したものである。
「室温」とは、15℃から25℃の温度範囲を意味する。
「室温で安定な」とは、室温で析出しないことを意味する。
【0032】
水溶液1の中でも、ラマンスペクトルにおいて880±150cm-1にピークを有し、かつ蒸発乾固した粉末が粉末X線回折(CuKα線1.5418Å)において2θ=27.8±1.2および45.7±1.2にピークを有するものは、室温で安定であり、特に好ましい。
【0033】
水溶液2は、例えば、特開2006−219329号公報(特許文献2)の段落0020〜0024に記載の方法により調製することができる。具体的には、実施例において詳述する。
【0034】
水溶液3は、上記の水溶液2の方法に準じて調製することができる。
ホウ酸(H3BO3)の配合量は、水100部に対して、好ましくは2〜28部、より好ましくは15〜25部である。
ホウ砂(Na247・10H2O)の配合量は、水100部に対して、好ましくは2〜98部、より好ましくは25〜50部である。
五ホウ酸ナトリウム(NaB58)の配合量は、水100部に対して、好ましくは6〜50部、より好ましくは25〜45部である。
各配合量が上記の範囲内であれば、本発明の優れた効果が得られる。
【0035】
本発明の難燃組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、付加効果を発揮する添加剤を含んでいてもよい。
液状の難燃組成物の場合、このような添加剤としては、例えば、塗膜形成剤、浸透剤が挙げられる。
浸透剤は、難燃成分を難燃化対象材料、特に樹脂内部まで浸透させる効果を有する。
このような塗膜形成剤としては、水性ポリウレタンエマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)エマルション、エチレン−アクリル酸共重合体(EEA)エマルションなどが挙げられる。
塗膜形成剤の添加量は、難燃組成物が水溶液のとき、2〜15重量%程度、好ましくは2〜5重量%である。
【0036】
浸透剤は、難燃化対象材料へのホウ素化合物の含浸を促進する効果を有する。
このような浸透剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコールのようなジオール;グリセリンのようなトリオール;炭素数3〜11のアルジトール(グリシトールともいう)のようなポリオール、ポリフェノール類、界面張力を低下させる作用のある界面活性剤などが挙げられる。
浸透剤の添加量は、難燃組成物が水溶液のとき、1〜10重量%程度、好ましくは1〜3重量%である。
【0037】
また、本発明の難燃性組成物は、ホウ酸、ホウ酸塩またはそれらの混合物から選択されるホウ素化合物と糖類とを混合するか、または上記の液状の難燃組成物を蒸発乾固することにより得られた粉末状の難燃組成物であるのが好ましい。
蒸発乾固は、公知の方法により行うことができるが、スプレードライ法(噴霧乾燥法)が特に好ましい。「スプレードライ法」とは、液体を微細な霧状にして、熱風中に噴霧し、瞬間的に乾燥させて粉体を得る方法である。具体的には、実施例において詳述する。
【0038】
本発明によれば、上記の難燃組成物で難燃化対象材料を処理して、難燃材料を得ることことからなる難燃化処理方法およびそれにより得られた難燃材料が提供される。
【0039】
難燃化対象材料は、木材、紙、織布、不織布および樹脂から選択される材料であるのが好ましい。このような材料としては、例えば、
杉材、エゾマツ、ヒノキ、キリ、ベニヤ、ケヤキ、SPF集成材(スプルス(エゾマツ)、パイン(マツ)、ファー(モミ)を貼り合わせた合材)、竹などの木材;
和紙、ふすま紙、洋紙などの紙;
綿布、ポリエステル織布、ポリプロピレン織布、ナイロン織布、アクリル織布、ビニロン織布、アラミド織布、ポリエチレンテレフタレート(PET)織布などの織布;
ポリエステル不織布、ポリプロピレン不織布、ナイロン不織布、アクリル不織布、ビニロン不織布、アラミド不織布などの不織布;
【0040】
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン(硬質、軟質)、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン(硬質、軟質)、塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、テフロン樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AS(アクリロニトリルスチレン)樹脂、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂、ブタジエンゴム、ネオプレン(クロロプレン)ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、イソブテンイソプレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびこれらの複合材料の成形体およびフィルム
が挙げられる。
【0041】
本発明の難燃組成物による処理は、
難燃組成物が水溶液、水性懸濁液およびコロイド溶液から選択される液状の難燃組成物でありかつ難燃化対象材料が木材、紙、織布、不織布および樹脂から選択される材料であるとき、液状の難燃組成物を材料に塗布または含浸させること、
難燃組成物が粉末状の難燃組成物でありかつ難燃化対象材料が樹脂であるとき、粉末状の難燃組成物を樹脂に添加し溶融混練すること、または
難燃化対象材料が樹脂であるとき、難燃組成物の粉末状の構成成分を樹脂に個別に添加して溶融混練すること
からなるのが好ましい。
【0042】
液状の難燃組成物を難燃化対象材料に含浸または塗布するには、公知の方法を適用することができる。
含浸は、加熱下および/または加圧下で行うのが好ましい。その条件は、難燃化対象材料の種類や形状などにより適宜設定すればよい。例えば、液状の難燃組成物の調製時における加熱温度またはそれ以上の温度が好ましく、通常、2〜20気圧程度の圧力が好ましい。
含浸量は、液状の難燃組成物の濃度などにもよるが、難燃化対象材料の1kg当り50g以上、好ましくは500〜2000gである。
含浸量が上記の範囲内であれば、本発明の優れた効果が得られる。
【0043】
塗布方法およびその条件は、難燃化対象材料の種類や形状、液状の難燃組成物の性状などにより適宜設定すればよく、刷毛、ブレードなどを用いた塗布、噴霧などの公知の方法が挙げられる。液状の難燃組成物が高粘度である場合には、バターナイフ様のブレードを用いた方法が好ましい。
塗布量(乾燥後)は、難燃化対象材料の種類や形状などによるが、難燃化対象材料の重量増加率で5〜400%程度、好ましくは60〜80%、付着量で0.004〜1.5g/cm2程度、好ましくは0.01〜0.1g/cm2である。
塗布量が上記の範囲内であれば、本発明の優れた効果が得られる。
また、所望の難燃性能を得るために1回の塗布で不足の場合には、塗布・乾燥の工程を繰り返してもよい。
【0044】
液状の難燃組成物を難燃化対象材料に含浸または塗布した後、液状の難燃組成物の溶媒である水を除去するために乾燥してもよい。
乾燥方法およびその条件は、液状の難燃組成物の溶媒である水が除去され、難燃成分および難燃化対象材料が変質、変形しない限り特に限定されず、適宜設定すればよい。
【0045】
粉末状の難燃組成物と樹脂とを溶融混練する方法、難燃組成物の構成成分を樹脂に個別に添加して溶融混練する方法は、公知の方法を適用することができる。また、溶融混練された樹脂は、通常、公知の方法で所望の形状に成形することができる。
溶融混練には、例えば二軸混練機、成形には例えば押出成形機または射出成形機を用いることができる。
【0046】
粉末状の難燃組成物または難燃組成物の構成成分の総量の配合量は、樹脂材料の種類や要求される難燃性などにより適宜設定すればよく、通常、樹脂100部に対して5〜30部程度、好ましくは15〜20部である。
配合量が上記の範囲内であれば、本発明の優れた効果が得られる。
【実施例】
【0047】
本発明を以下の実施例および比較例からなる試験例によりさらに詳しく説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
以下の説明において、特に断りのない限り「部」は「重量部」を意味する。
【0048】
(試験例1)
水100部に対してホウ酸(USボラックス社製、以下同様)20部とホウ砂(USボラックス社製、以下同様)25部とを添加し60℃以上に加熱して添加物を溶解させたホウ素化合物の水溶液(固形分22.9%、以下「2025溶液」という)に、ショ糖(HIRANO社製、上白糖、以下同様)25部をさらに添加・溶解させて水溶液を得た。
2025溶液にショ糖10部、5部、2.5部、1.6部および1.3部をそれぞれ添加したこと以外は上記と同様にして水溶液を得た。
得られたショ糖を含む2025溶液の難燃性能を、ショ糖を含まない2025溶液およびショ糖水溶液(水100部に対してショ糖17部を添加・溶解した水溶液)と比較評価した。
【0049】
難燃(耐火)性能の評価を、消防法施行規則第4条の3第3〜7項に規定された防炎物品の防炎性能試験基準(JIS規格A1322に相当)の45°メッケルバーナー法に基づいて実施した。
具体的には、試験体(約300mm×200mm)を水平面から45°傾け、炎長65mmのメッケルバーナーで試験体の下部から2分間、試験体が着火せず貫通しない場合には連続して最長12〜14分間まで接炎(加熱)し、その際の炭化長、炭化面積、貫通時間および加熱中の試験体上面の温度変化を調べた。
【0050】
介護用マットなどに使用されるポリエステル不織布(厚さ10mm、密度0.1g/cm3)からなる試験体の表面に、ふすま・障子のり用の刷毛(毛足30mm×幅73mm)を用いて、各水溶液を塗布・乾燥した。
予め試験体の重量を計量しておき、その塗布・乾燥後の重量とから重量増加率(WPG:%)および難燃成分の付着量(g/cm2)を求めた。
2025溶液を1回塗布・乾燥した試験体は、WPG7%および付着量0.007g/cm2であった。同様にして7回塗布・乾燥を繰り返した試験体は、WPG50%および付着量0.050g/cm2であった。
【0051】
2025溶液のWPG7%および50%の試験体は、それぞれ接炎後10秒および47秒で貫通し炎上した。
これらの結果は、2025溶液の塗布・乾燥処理では、十分な難燃性能が得られないことを示している。一方、本発明者のこれまでの試験において、2025溶液の含浸・乾燥処理では、試験体全体に難燃剤が行き渡るためか、同様の難燃性能の評価において試験体が貫通しないという結果が得られている。これは、塗布・乾燥処理では試験体表面近傍に難燃剤が偏って存在するために、難燃剤が存在しない表面(試験体下部)に着火し炎上するものと考えられる。すなわち、上記の結果は、難燃処理されていないポリマーを炎から保護するためには、2025溶液で塗布・乾燥処理したポリマー層による保護では不十分であることを示している。
また、ショ糖水溶液のWPG56%、付着量0.056g/cm2およびWPG66%および付着量0.066g/cm2の試験体は、それぞれ接炎後40秒および60秒で貫通した。これらは2025溶液の試験体と比較して、若干の難燃効果を示したものの実用的な難燃レベルには到達しなかった。
【0052】
ショ糖25部、10部および5部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれWPG69%、52%および49%、付着量0.069g/cm2、0.052g/cm2および0.049g/cm2で、未着火・不貫通であった。
また、ショ糖2.5部、1.6部および1.3部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれWPG40%、32%および27%、付着量0.040g/cm2、0.032g/cm2および0.027g/cm2で、接炎後130秒、110秒および110秒で貫通した。
これらの結果から、ホウ素化合物に対するショ糖の配合量が多い程、難燃性能が高くなることがわかる。
【0053】
未貫通の試験体について、接炎状態で背面(接炎面と反対の表面)の温度を14分間継続してモニターした結果、背面温度は60〜80℃の温度範囲にあった(図1参照)。
また、未貫通の試験体の接炎面は黒く炭化して均一かつ緻密な炭化物が生成し、背面は白色で無変化のままであった。
これらの結果から、これらの試験体が難燃性だけでなく、耐火性、断熱性にも優れていることがわかる。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0054】
(試験例2)
ショ糖の代わりにトレハロース(林原社製、トレハ)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
トレハロース25部および10部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は80〜90℃で一定であった。
また、トレハロース5部を含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、接炎後180秒で貫通し、試験体の背面温度は貫通前に50℃から急上昇した。
さらに、トレハロース2.5部、1.6部および1.3部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれ接炎後140秒、140秒および70秒で貫通し、試験体の背面温度は貫通前に40℃前後から急上昇した(図2参照)。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0055】
(試験例3)
ショ糖の代わりにグルコース(ブドウ糖、和光純薬社製)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
グルコース25部、10部、5部および2.5部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は約80℃で一定であった。
グルコース1.6部および1.3部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれ接炎後170秒および140秒で貫通し、試験体の背面温度は貫通前に45℃前後から急上昇した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0056】
(試験例4)
ショ糖の代わりにフルクトース(果糖、和光純薬社製)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
フルクトース25部、10部、5部および2.5部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は約80℃で一定であった。
また、フルクトース1.6部および1.3部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれ接炎後180秒および170秒で貫通し、試験体の背面温度は貫通前に45℃前後から急上昇した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0057】
(試験例5)
ショ糖の代わりにデンプン(幸田商店製、馬鈴薯片栗粉、以下同様)を用い、添加量を6部、3部および1部としたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプン6部および3部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度はそれぞれ75℃および95℃で一定であった(図3参照)。
また、デンプン1部を含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、接炎後220秒で貫通し、試験体の背面温度は貫通前に60℃前後から急上昇した(図3参照)。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0058】
(試験例6)
ショ糖の代わりにグルコマンナン(清水化学社製、レオレックスLM)を用い、添加量を6部、3部および1部としたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
グルコマンナン6部および3部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度はそれぞれ65℃および80℃で一定であった。
また、グルコマンナン1部を含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、接炎後580秒で貫通し、試験体の背面温度は貫通前に80℃前後から急上昇した)。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0059】
(試験例7)
ショ糖の代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロース(水溶性セルロース、信越化学製、メトローズ60SH)を用い、添加量を6部、3部および1部としたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、3部および1部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度はそれぞれ62℃、70℃および80℃で一定であった。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0060】
(試験例8)
ショ糖の代わりにセロビオース(松谷化学製、セロビオース90)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それらをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
セロビオース25部、10部および5部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度はそれぞれ70℃、73℃および85℃で一定であった。
また、セロビオース2.5部、1.6部および1.3部をそれぞれ含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれ接炎後450秒、340秒および280秒で貫通した。
得られた結果を表1および2にまとめて示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
(試験例9)
ショ糖の代わりにデンプン(幸田商店製、馬鈴薯片栗粉)3部を用い、ポリエステル不織布の代わりにポリプロピレン板(厚さ1mm)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
2025溶液およびデンプン水溶液(水100部に対してデンプン3部を添加・溶解した水溶液)について比較評価しようとしたが、ポリプロピレン板がこれらの溶液を弾くために塗布できず、評価できなかった。
デンプンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は75℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0064】
(試験例10)
ポリプロピレン板の代わりにポリエチレン板(厚さ1mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリエチレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
2025溶液およびデンプン水溶液(水100部に対してデンプン3部を添加・溶解した水溶液)について比較評価しようとしたが、ポリエチレン板がこれらの溶液を弾くために塗布できず、評価できなかった。
デンプンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は78℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0065】
(試験例11)
ポリプロピレン板の代わりに硬質ウレタンフォーム(厚さ10mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それを硬質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
2025溶液およびデンプン水溶液(水100部に対してデンプン3部を添加・溶解した水溶液)について比較評価しようとしたが、硬質ウレタンフォームがこれらの溶液を弾くために塗布できず、評価できなかった。
デンプンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は40℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0066】
(試験例12)
ポリプロピレン板の代わりに軟質ウレタンフォーム(厚さ10mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それを軟質ウレタンフォームに塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は40℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。
一方、試験体をそれぞれ2025溶液およびデンプン水溶液に浸漬・乾燥(含浸処理)した試験体は、それぞれ接炎後30秒および27秒で炎上した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0067】
(試験例13)
ポリプロピレン板の代わりにポリプロピレン不織布(日本製紙クレシア製、キムテックス、厚さ0.7mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、加熱12分以上経過後の背面温度は78℃で一定していた。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体に接触させて横から加熱したところ、12分間着火せず炎上しなかった。試験体の接炎面は黒く炭化した。
一方、試験体をそれぞれ2025溶液およびデンプン水溶液に浸漬・乾燥(含浸処理)した試験体は、それぞれ接炎後15秒および10秒で炎上した。
得られた結果を表1にまとめて示す。
【0068】
また、難燃性能の評価を、FMVSS302(米国自動車安全基準の燃焼性試験)に基づいて実施した。
具体的には、上記と同様にして作成した試験体(305mm×305mm)をU字枠に挟んで水平にし、試験体の真下18.8mmの位置にバーナー口を設置し、15秒間接炎(炎長19mm)し、炎が試験体の点火端から38mmおよび325mmの線を通過する間の時間を測定した。また、試験体の点火端から287mmの位置まで燃焼が継続しない場合には、消炎までの時間と試験体の点火端から長さを測定した。これらの測定から、燃焼時間(秒)および燃焼速度(mm/秒)を求めた。
未処理のポリプロピレン不織布は燃焼時間88秒および燃焼速度69mm/秒であったが、デンプンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は着火せず、燃焼時間0秒および燃焼速度0mm/秒であった。
また、2025溶液およびデンプン水溶液をそれぞれ塗布・乾燥した試験体は、それぞれ燃焼時間30秒および77秒、燃焼速度28mm/秒および燃焼速度50mm/秒であった。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0069】
(試験例14)
ポリプロピレン板の代わりにポリウレタンフィルム(厚さ0.3mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリウレタンフィルム不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、加熱12分以上経過後の背面温度は65℃で一定していた。
一方、試験体をそれぞれ2025溶液およびデンプン水溶液に浸漬・乾燥(含浸処理)した試験体は、それぞれ接炎後23秒および15秒で炎上した。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0070】
(試験例15)
ポリプロピレン板の代わりに発泡ポリスチレンフォーム板(厚さ10mm)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それを発泡ポリスチレンフォーム板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
2025溶液およびデンプン水溶液(水100部に対してデンプン3部を添加・溶解した水溶液)について比較評価しようとしたが、発泡ポリスチレンフォーム板がこれらの溶液を弾くために塗布できず、評価できなかった。
デンプンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、加熱12分以上経過後の背面温度は35℃で一定していた。
また、45°法メッケルバーナー試験よりもより強い火力を有するガスバーナー(炎長10cm)の炎の端を試験体に接触させて横から加熱したところ、12分間着火せず炎上しなかった。炎と接触した部分は黒く炭化したが、背面の形状に全く変化はなかった。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0071】
(試験例16)
デンプンの代わりにα−シクロデキストリン(C366030、分子量973、純正化学製)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
2025溶液およびα−シクロデキストリン水溶液(水100部に対してα−シクロデキストリン3部を添加・溶解した水溶液)について比較評価しようとしたが、ポリプロピレン板がこれらの溶液を弾くために塗布できず、評価できなかった。
α−シクロデキストリンを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は63℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0072】
(試験例17)
2025溶液の代わりに、水100部に対してホウ酸60部とホウ砂75部とを添加し60℃以上に加熱して添加物を溶解させたホウ素化合物の水溶液(固形分42.4%、以下「6075溶液」という)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレンの板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンを含む6075溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は71℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化し、白い発泡体が見られたが、背面にはほとんど変化が見られなかった。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0073】
(試験例18)
2025溶液の代わりに、水100部に対してホウ酸120部とホウ砂150部とを添加し90℃以上に加熱して添加物を溶解させたホウ素化合物の水溶液(固形分53.8%、以下「1215溶液」という)を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレンの板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンを含む1215溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は95℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化し、白い発泡体が見られたが、背面にはほとんど変化が見られなかった。
得られた結果を表3および4にまとめて示す。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
(試験例19)
2025溶液の代わりに、水100部に対してホウ砂38部を添加し60℃以上に加熱して添加物を溶解させたホウ素化合物の水溶液(以下「ホウ砂溶液」という)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
ショ糖25部および10部をそれぞれ含むホウ砂溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれWPG56%および43%、付着量0.056g/cm2および0.043g/cm2で、未着火・不貫通であった。
また、ショ糖5部、2.5部、1.6部および1.3部をそれぞれ含むホウ砂溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれWPG41%、39%、29%および19%、付着量0.041g/cm2、0.039g/cm2、0.029g/cm2および0.019g/cm2で、接炎後120秒、105秒、90秒および70秒で貫通した。
一方、ホウ砂溶液を塗布・乾燥した試験体は、接炎後60秒で貫通した。
これらの結果から、ショ糖併用による難燃性能の相乗効果は2025溶液だけでなく、ホウ砂溶液にもあることがわかる。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0077】
(試験例20)
2025溶液の代わりにホウ砂溶液を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、デンプン3部を含む水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンを含むホウ砂溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は82℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0078】
(試験例21)
2025溶液の代わりに、水100部に対してホウ酸25部を添加し95℃以上に加熱して添加物を溶解させたホウ素化合物の水溶液(以下「ホウ酸溶液」という)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
ショ糖25部および10部をそれぞれ含むホウ酸溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれWPG45%および38%、付着量0.450g/cm2および0.380g/cm2で、未着火・不貫通であった。
また、ショ糖5部、2.5部、1.6部および1.3部をそれぞれ含むホウ酸溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれWPG21%、13%、8%および7%、付着量0.210g/cm2、0.130g/cm2、0.080g/cm2および0.070g/cm2で、接炎後115秒、95秒、78秒および55秒で貫通した。
一方、ホウ酸溶液を塗布・乾燥した試験体は、接炎後15秒で貫通した。
これらの結果から、ショ糖併用による難燃性能の相乗効果は2025溶液だけでなく、ホウ酸溶液にもあることがわかる。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0079】
(試験例22)
2025溶液の代わりにホウ酸溶液を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、デンプン3部を含む水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンを含むホウ酸溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は96℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0080】
(試験例23)
2025溶液の代わりに、水100部に対して五ホウ酸ナトリウム十水和物(USボラックス社製)56部を添加し60℃以上に加熱して添加物を溶解させたホウ素化合物の水溶液(以下「ホウ酸塩溶液」という)を用いたこと以外は、試験例1と同様にして、水溶液を調製し、それをポリエステル不織布に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
ショ糖25部および10部をそれぞれ含むホウ酸塩溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれWPG58%および50%、付着量0.058g/cm2および0.050g/cm2で、未着火・不貫通であった。
また、ショ糖5部、2.5部、1.6部および1.3部をそれぞれ含むホウ酸塩溶液を塗布・乾燥した試験体は、それぞれWPG41%、25%、21%および19%、付着量0.041g/cm2、0.025g/cm2、0.021g/cm2および0.019g/cm2で、接炎後179秒、115秒、88秒および62秒で貫通した。
一方、ホウ酸塩溶液を塗布・乾燥した試験体は、接炎後35秒で貫通した。
これらの結果から、ショ糖併用による難燃性能の相乗効果は2025溶液だけでなく、ホウ酸塩溶液にもあることがわかる。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0081】
(試験例24)
2025溶液の代わりにホウ酸塩溶液を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、デンプン3部を含む水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンを含むホウ酸塩溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は96℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0082】
(試験例25)
デンプン3部に水性ポリウレタンエマルション(固形分45%、ディーアイシー社製、ハイドランAPX−101H)6部をさらに添加した2025溶液を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンおよび水性ポリウレタンエマルションを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は80℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。接炎により試験体表面に形成された皮膜は、可とう性を有し、試験例9のデンプンのみを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体の皮膜と比較して、屈曲させたときにひび割れが発生し難い皮膜であった。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0083】
(試験例26)
デンプン3部にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)エマルション(固形分55%、住友化学株式会社製、スミカフレックス201HQ)6部をさらに添加した2025溶液を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンおよびEVAエマルションを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は76℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。接炎により試験体表面に形成された皮膜は、可とう性を有し、試験例9のデンプンのみを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体の皮膜と比較して、屈曲させたときにひび割れが発生し難い皮膜であった。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0084】
(試験例27)
デンプン3部にエチレン−アクリル酸共重合体(EEA)エマルション(固形分25%、住友精化、ザイクセンLタイプ)12部をさらに添加した2025溶液を用いたこと以外は、試験例9と同様にして、水溶液を調製し、それをポリプロピレン板に塗布・乾燥して難燃性能を評価した。
デンプンおよびEEAエマルションを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は69℃で一定であった。
また、45°メッケルバーナー法よりも強い火力のガスバーナー(炎長100mm)の炎の端を試験体の横から接触(接炎)させたが12分間以上、その形状を保ったままであった。試験体の接炎面は黒く炭化したが、背面は少し溶融して形状が変化した程度であった。接炎により試験体表面に形成された皮膜は、可とう性を有し、試験例9のデンプンのみを含む2025溶液を塗布・乾燥した試験体の皮膜と比較して、屈曲させたときにひび割れが発生し難い皮膜であった。
得られた結果を表5および6にまとめて示す。
【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
(試験例28)
試験例1と同様にして調製した2025溶液482kgを、次の条件でスプレードライ法により粒体化した。
装置:日本化学機械製造株式会社製
ノズル径:0.84mm
スワール:SC
噴霧圧力:約120kgf/cm2(12mPa)
噴霧量:約120L/H
熱風量:40Nm3/min.
熱風温度:160℃
排風温度:79.8〜83.8℃(コーン部)
75.8〜80.2℃(サイクロン部)
【0088】
次の物性値を有するきれいな球形の粒子が得られた(パウダー回収量64.2kg)。
水分量:7.2%(105℃×2時間の乾燥減量値)
粒度:30〜50μm(電子顕微鏡写真より計測)
平均粒径:41.7μm
嵩比重:0.87(さわり比重)
0.61(みかけ比重)
このように、本発明のホウ素化合物の水溶液を公知の方法により蒸発乾固(粒体化)することができた。
【0089】
スプレードライ装置(日本化学機械製造社製)を用いて、2025溶液を蒸発乾固して得られた粉末10部およびデンプン3部を、加熱溶融した低密度ポリエチレン樹脂(住友化学社製、以下同様)100部に配合して、溶融混練により配合物を均一に分散させた。次いで、押出成型機(Hitz日立造船製)を用いて、得られた混練物を厚さ1mmの板状に成形し、ポリエチレン板の試験体を得て、試験例1と同様にして難燃性能を評価した。
試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は69℃で一定であった。試験体の接炎面は黒く炭化し、白い発泡体が見られたが、その形状をほぼ保ったままであった。
得られた結果を表7および8にまとめて示す。
【0090】
(試験例29)
低密度ポリエチレン樹脂の代わりにポリプロピレン樹脂(住友化学社製、以下同様)を用いたこと以外は、試験例28と同様にして、ポリプロピレン板の試験体の難燃性能を評価した。
試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は58℃で一定であった。試験体の接炎面は黒く炭化し、白い発泡体が見られたが、その形状をほぼ保ったままであった。
得られた結果を表7および8にまとめて示す。
【0091】
(試験例30)
デンプン3部の代わりにショ糖10部を用いたこと以外は、試験例28と同様にして、ポリエチレン板の試験体の難燃性能を評価した。
試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は72℃で一定であった。試験体の接炎面は黒く炭化し、白い発泡体が見られたが、その形状をほぼ保ったままであった。
得られた結果を表7および8にまとめて示す。
【0092】
(試験例31)
デンプン3部の代わりにショ糖10部を用い、低密度ポリエチレン樹脂の代わりにポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は、試験例28と同様にして、ポリプロピレン板の試験体の難燃性能を評価した。
試験体は、未着火・不貫通で、試験体の12分後の背面温度は54℃で一定であった。試験体の接炎面は黒く炭化し、白い発泡体が見られたが、その形状をほぼ保ったままであった。
得られた結果を表7および8にまとめて示す。
【0093】
【表7】

【0094】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ酸、ホウ酸塩またはそれらの混合物から選択されるホウ素化合物と、糖類とを相乗効果を奏する割合で含有することを特徴とする難燃組成物。
【請求項2】
前記ホウ素化合物が、ホウ酸(H3BO3)、ホウ砂(Na247・10H2O)、五ホウ酸ナトリウム(NaB58)またはこれらの混合物であり、かつ前記糖類が、グルコースおよびフルクトースから選択される単糖類、スクロース(ショ糖)、トレハロース、セロビオースおよびα−シクロデキストリンから選択される少糖類またはデンプン、グルコマンナンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される多糖類である請求項1に記載の難燃組成物。
【請求項3】
前記相乗効果を奏する割合が、前記ホウ素化合物100部に対して、前記糖類が単糖類または少糖類であるとき糖類5〜2000部または前記糖類が多糖類であるとき糖類1〜2000部の割合である請求項1または2に記載の難燃組成物。
【請求項4】
前記難燃組成物が、
水100部に対してホウ酸a部およびホウ砂b部(但し、a<35、b<40、0<a<b+5)を添加し、70〜90℃に加熱して溶解せしめ、次に室温まで冷却することにより得られた、キレート化剤または界面活性剤を含まないで、ホウ素換算で2.5mol/kg以上含む水溶液、
水100部に対してホウ酸c部およびホウ砂d部(但し、c≧35、d≧40)を添加し、40〜100℃に加熱して溶解せしめた水溶液、および
水100部に対して、ホウ酸2〜28部、ホウ砂2〜98部または五ホウ酸ナトリウム(NaB58)6〜50部を添加し、40〜100℃に加熱して溶解せしめた水溶液
から選択されるホウ素化合物の水溶液に、
前記糖類が単糖類または少糖類であるとき、水100部に対して糖類1〜80部、または前記糖類が多糖類であるとき水100部に対して糖類1〜30部を添加して溶解せしめた液状の難燃組成物である請求項1〜3のいずれか1つに記載の難燃組成物。
【請求項5】
前記難燃組成物が、前記ホウ酸、ホウ酸塩またはそれらの混合物から選択されるホウ素化合物と前記糖類とを混合するか、または請求項4に記載の液状の難燃組成物を蒸発乾固することにより得られた粉末状の難燃組成物である請求項1〜3のいずれか1つに記載の難燃組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の難燃組成物で難燃化対象材料を処理して、難燃材料を得ることを特徴とする難燃化処理方法。
【請求項7】
前記難燃化対象材料が、木材、紙、織布、不織布および樹脂から選択される材料である請求項6に記載の難燃化処理方法。
【請求項8】
前記処理が、
前記難燃組成物が水溶液、水性懸濁液およびコロイド溶液から選択される液状の難燃組成物でありかつ前記難燃化対象材料が木材、紙、織布、不織布および樹脂から選択される材料であるとき、該液状の難燃組成物を該材料に塗布または含浸させること、
前記難燃組成物が粉末状の難燃組成物でありかつ前記難燃化対象材料が樹脂であるとき、該粉末状の難燃組成物を該樹脂に添加し溶融混練すること、または
前記難燃化対象材料が樹脂であるとき、前記難燃組成物の粉末状の構成成分を該樹脂に個別に添加して溶融混練すること
からなる請求項6または7に記載の難燃化処理方法。
【請求項9】
前記塗布が前記難燃化対象材料の重量増加率で5〜400%または付着量で0.004〜1.5g/cm2になるように行われ、前記含浸が前記難燃化対象材料の1kg当り50g以上の含浸量になるように行われ、また前記添加が前記樹脂100部に対して5〜30部の添加量になるように行われる請求項8に記載の難燃化処理方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1つに記載の難燃化処理方法により得られた難燃材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162743(P2011−162743A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30205(P2010−30205)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】