雨水分離集水装置
【課題】 微細な粒子の分離除去が可能であると共に、目詰まりがし難くて集水効率の高い雨水分離集水装置を提供する。
【解決手段】 建物の雨樋に下方へ排水する縦樋が設けられ、前記縦樋に横方向に延びる集水器9が設けられていると共に、前記縦樋から前記集水器9を介して流下する雨水Wを貯留する貯水タンクが設けられた雨水分離集水装置において、前記集水器9は、前記縦樋に連通すると共に横方向に延び且つフィルタ部20を有する内筒21と、前記内筒21を覆う外筒22を備えると共に、前記内筒21及び外筒22との間に形成され且つ前記貯水タンクに連通する円筒状の集水空間25を有している。
【解決手段】 建物の雨樋に下方へ排水する縦樋が設けられ、前記縦樋に横方向に延びる集水器9が設けられていると共に、前記縦樋から前記集水器9を介して流下する雨水Wを貯留する貯水タンクが設けられた雨水分離集水装置において、前記集水器9は、前記縦樋に連通すると共に横方向に延び且つフィルタ部20を有する内筒21と、前記内筒21を覆う外筒22を備えると共に、前記内筒21及び外筒22との間に形成され且つ前記貯水タンクに連通する円筒状の集水空間25を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の縦樋から流れる雨水中の塵埃を分離除去して、雨水を再利用するための雨水分離集水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の有効利用に対する意識の高まりや水不足に対する配慮から、建物の屋根に降水する雨水の有効利用が広まっている。この雨水の集水は、縦樋から雨水貯水タンク等の途中に集水器を配置して、雨水中の塵埃を分離除去して行われる。
【0003】
従来のこの種の集水器として、縦樋の途中に逆円錐形状(すり鉢状)の濾過部材を配置して、縦樋内を流れる雨水から塵埃を除去すると共に、この濾過部で濾過されてその周囲から雨水溜めに排出される雨水(清浄水)を貯水タンクに貯留するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、別の例の集水器として、縦樋に形成された横引き配管部の一部を開口して粗目スクリーンを配置すると共に、この粗目スクリーンから濾過集水された雨水をU字状の濾過タンクの一方の上部から貯留し、濾過タンクの他方の上部から細目スクリーンを介して塵埃を分離除去された清浄水を貯水タンクに貯留するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−70086号公報
【特許文献2】実用新案登録 第3066431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、逆円錐形状の濾過部材により雨水の塵埃を分離除去して集水する集水器においては、微細な粒子の分離除去ができないと共に、濾過部材に蓄積される粗目の塵埃により目詰まりを生じて集水効率が上がらないという問題があった。
【0006】
また、U字状の濾過タンクから細目スクリーンを介して清浄水を集水する集水器においては、粗目の塵埃は分離除去できるが、細目スクリーンでは微細な粒子の分離除去はできないと共に、横引き配管の一部から集水しているため集水効率が上がらないという問題があった。
【0007】
本発明は、微細な粒子の分離除去が可能であると共に、目詰まりがし難くて集水効率の高い雨水分離集水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、請求項1に記載の発明は、建物の雨樋から排水する縦樋が設けられ、前記縦樋から集水部を介して流下する雨水を貯留する貯水タンクが設けられた雨水分離集水装置において、前記集水部は、前記縦樋に連通すると共に横方向に延び且つフィルタ部を有する内筒と、前記内筒を覆う外筒を備えると共に、前記内筒及び外筒との間に形成され且つ前記貯水タンクに接続される集水管に連通する円筒状の集水空間を有し、下流側部は排水管に接続されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記内筒はウェッジワイヤを卷回して所定幅のスリットが形成されたフィルタ筒であることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記ウェッジワイヤの内周面は、上流側の角隅部が下流側の角隅部よりも高く位置されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記フィルタ筒の下流側部は不透水性部で閉塞されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記内筒は、少なくとも下流側部が不透水性部材により閉塞された半円筒状のフィルタ部を下部側に有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係わる発明によれば、縦樋に連通すると共に横方向に延び且つフィルタ部を有する内筒と、この内筒を覆う外筒を備えると共に、内筒及び外筒との間に形成され且つ前記貯水タンクに連通する2重構造の円筒状の集水空間を備えるので、雨水の塵埃を内筒により効率的に分離除去して雨水を集水空間に集水して雨水の集水効率を高めることができる。
【0014】
また、請求項2に係わる発明によれば、内筒はウェッジワイヤを卷回して所定幅のスリットが形成されたフィルタ筒であるので、塵埃を分離除去した雨水(清浄水)を効率的に集水することができる。
【0015】
また、請求項3に係わる発明によれば、ウェッジワイヤの内周面は、上流側の角隅部が下流側の角隅部よりも高く位置させたので、各ウェッジワイヤの内周面には下流側の位置において内側に突出している段部を形成することができる。そして、ウェッジワイヤの内周面を流れる雨水が段部に当たって流れ方向を変えることにより、雨水中の微細粒子が舞い上がるため、ウェッジワイヤの目開き内に微細粒子が詰まるような目詰まりを防止することができると共に、雨水分離集水装置のメンテナンスを略不必要とすることができる。
【0016】
また、請求項4に係わる発明によれば、フィルタ筒の下流側部は不透水部で閉塞されているので、内筒により濾過されて集水空間の下流側に貯留している清浄水が内筒を介して内筒内に逆流するのが防止できて、雨水の集水効率を高めることができる。
【0017】
また、請求項5に係わる発明によれば、内筒は少なくとも下流側部が閉塞された半円筒状のフィルタ部を下部側に有するので、半円筒状のフィルタ部で雨水の塵埃を分離除去できると共に集水空間内の清浄水が内筒内に逆流するのを防止して雨水の集水効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1において、建物1の屋根2の下部近傍には雨樋3が配設されており、この雨樋3の適所には雨水Wを受けて流す縦樋4が接続されている。この縦樋4は、地中5に埋設された下水配管6に排水管7を介して連通していると共に、縦樋4の途中には雨水分離集水装置8の一部を構成している集水部としての集水器9が配設されている。
【0020】
前記集水器9からは後述するようにして塵埃を分離除去された清浄水を集水するための集水管10が配設されている。地中5に埋設された貯水タンク11は、集水器9により集水された清浄水Waを貯水するものであって、地面GLまで延びるマンホール12を有する。12bは、マンホール12の地面GLへの開口端を開閉可能に閉塞しているマンホール蓋である。
【0021】
上記集水管10は、マンホール12に清浄水Waを排出するものである。また、貯水タンク11内の清浄水Waは、フィルタ13を介して取水管14により図示しないポンプを介して外部に取り出されるようになっている。
【0022】
本発明に係わる雨水分離集水装置8は、縦樋4及びこれに配設された集水器9と、集水管10及び貯水タンク11等により構成されている。
【0023】
図2(a)は、前記集水器9が配設されている縦樋4の形状を示している。すなわち、縦樋4の途中には、接続管15と横引き配管16とをエルボ17によりそれぞれ接続してなるV字状部18が形成されている。
【0024】
接続管15は下端に向かうにしたがって傾斜し、横引き配管16は接続管15と相対する方向及び下方に向けて傾斜している。前述した集水器9は、横引き配管16に配設されている。なお、集水器9の勾配θaは0°〜30°に設定されている。
【0025】
また、図2(b)は、図2(a)の接続管15の代わりに可撓性のホース19を用いてV字状部18を形成した例を示している。
【0026】
次に、上記集水器9の構成を図3により説明する。
【0027】
集水器9は、前記縦樋4の横引き配管16に連通すると共にフィルタ部20を有するフィルタ筒としての内筒21と、この内筒21を覆う外筒22と、上記内筒21及び外筒22の各端部にそれぞれ固定されている一対の端板23,24等を有している。
【0028】
前記内筒21と外筒22との間には、適宜な間隔を有する集水空間25が形成されている。なお、外筒22の下部外周には前述の集水管10が下向きに連通して設けられている。
【0029】
また、横引き配管16は上流側と下流側の2つの配管16a,16bに分割して構成されていて、それぞれの端部にはフランジ26が形成されている。
【0030】
上流側の配管16aには、キャップ27の一端に形成された筒部27aが遊嵌されていて上記フランジ26により抜け止めされている。下流側の配管16bにも同様のキャップ28の筒部28aが遊嵌されていてフランジ26により抜け止めされている。
【0031】
外筒22の端板23,24には、雨水Wが通過するための穴29がそれぞれ形成されており、さらに端板23,24の外周にはネジ30がそれぞれ形成されている。キャップ27,28には上記ネジ30に螺合可能なネジ31がそれぞれ形成されている。
【0032】
キャップ27,28のネジ31を上記端板23,24のネジ30にそれぞれ螺合させることにより端板23とフランジ26及び端板24とフランジ26が密着するようにして集水器9は横引き配管16に配設されている。
【0033】
次に、集水器9の内筒21のフィルタ部20について図4及び図5により説明する。
【0034】
内筒21のフィルタ部20は、図4及び図5に示すように細い楔型をしたワイヤ(ファインウェッジワイヤという)33を微細な目開き(スリット)34をもって複数本配列したものからなっている。この目開き34は、内筒21の内側から外側に向かうにしたがって拡開している。
【0035】
ファインウェッジワイヤ33は、その長手方向の大きさは0.5〜1mmであって、材料はSUS製である。ファインウェッジワイヤ33の内面33aを連ねることにより仮想内面35が構成されている。
【0036】
前記目開き34の大きさは100〜300μmであって、目開き34の配列方向は矢印36で示す雨水W(図1参照)の流れ方向に対して略直角に配列されている。また、フィルタ部20の流れ方向の長さは、100〜300mmになっている。
【0037】
また、図4及び図5に示すように、ファインウェッジワイヤ33は、内面33aが内筒21(図3参照)の中心と平行な仮想内面35の垂直線38に対して下流側に角度θbだけ傾斜している。この角度θbは、2〜20°になっている。
【0038】
ファインウェッジワイヤ33をこのように傾斜させることにより、図5に示すファインウェッジワイヤ33の内面33aは、上流側の角隅部Aが下流側の角隅部Bよりも若干高くなっている。
【0039】
このようにファインウェッジワイヤ33を下流側に傾斜させることにより、ファインウェッジワイヤ33の角隅部Aが段部を形成することになる。そして、仮想内面35に沿って流れる雨水Wは、角隅部A(段部)に当たって矢印39で示すように舞い上がるように方向を変えることになる。
【0040】
このように、雨水Wが段部A(上流側の角隅部)により舞い上がることにより、雨水Wに含まれる微細粒子がファインウェッジワイヤ33間の目開き34内に入って引っ掛かって目詰まりを生じるような不具合な現象は確実に防止されている。
【0041】
この結果、集水器9の内筒21は常に良好な集水性能を保持することができると共に、内筒21に対する目詰まり除去のメンテナンスを略不必要とすることができる。
【0042】
このように構成された雨水分離集水装置において、図1の屋根2に降り注ぐ雨水Wは雨樋3に沿って縦樋4に集められる。縦樋4を矢印40で示すように流下する雨水Wは、図3の矢印36で示すように集水器9の内筒21内に流入する。
【0043】
このように、内筒21はフィルタ部20を有すると共に、集水空間25を有するので、内筒21により濾過されて集水空間25内に貯留している清浄水Waは、図3の矢印41で示すように集水管10を通って図1の貯水タンク11内に貯水される。
【0044】
また、内筒21は、雨水Wが上記のように内筒21内を通過する際、内筒21の全周において濾過作用が行われるフィルタ筒であるので、清浄水Waの集水効率を高めることができる。
【0045】
内筒21内の雨水Wの一部、すなわち雨水Wの水量が多くてフィルタ部20では濾過されなかった雨水Wは、内筒21から配管16bに図3の矢印42で示すように排出された後、矢印43で示したように排水管7(図1参照)に排出され、さらに下水配管6に排出される。
【0046】
このとき、図3の内筒21のフィルタ部20により分離除去された落葉等の大きい塵埃及び微細粒子等の塵埃(図示せず)は、内筒21内を流れる雨水Wにより図1の下水配管6へ排出される。
【0047】
いま、仮にファインウェッジワイヤ33が下流側に傾斜していないで、ファインウェッジワイヤ33の内面33aが同一面にあるとすると、目開き34の大きさと略同じ大きさの微細粒子が雨水Wと共に流れるときに、この微細粒子が目開き34に引っ掛かって目開き34の目詰まりを生じ、フィルタ部20の集水効率を低下させることがある。
【0048】
この点、本発明に係わるファインウェッジワイヤ33は、上述したように下流側に傾斜していて段部(角隅部A)を形成しているので、目開き34と略同じ微細粒子が目開き34に位置しても矢印39で示す雨水Wの流れにより微細粒子が舞上げられて、微細粒子による目開き34の目詰まりが防止される。
【0049】
すなわち、内筒21のフィルタ部20は、多数の微細間隔の目開き34を備えたファインウェッジワイヤ33からなるフィルタ筒であるため、微細粒子を分離除去できると共に、集水効率が非常に高くなっている。
【0050】
また、ファインウェッジワイヤ33の目開き34の目詰まりが上記のように防止されているので、ファインウェッジワイヤ33により塵埃を分離除去された清浄水Waを確実に集水できて、集水器9の集水効率を高めることが可能となっている。
【0051】
図6は、ファインウェッジワイヤ33が使用されている集水器9によって、流量に対する集水率及び流量に対する微細粒子除去率を測定した実験例のデータを示している。
【0052】
〈実験例1〉
実験例1においては、次のような仕様に基づいて行われた結果を示している。
【0053】
図1の縦樋4の内径がφ50mmの塩化ビニール管、
図3の集水器9のファインウェッジワイヤ33(図5参照)は線径(断面長さ)0.75mmのSUS316で目開き34が100μm、
ファインウェッジワイヤ33の傾斜角θbが5°、
ファインウェッジワイヤ33の有効長さ(図3の左右方向の長さ)が200mmであるとき、
実験例1は、雨水Wの流量が3L,10L,20L/分における集水率はそれぞれ80%、83%、88%であり、流量10L/分における微細粒子除去率が95%であることを示している。
【0054】
〈実験例2〉
実験例2においては、次のような仕様に基づいて行われた結果を示している。
【0055】
縦樋4は内径がφ50mmの塩化ビニール管、
集水器9のファインウェッジワイヤ33は線径0.75mmのSUS316で目開き34が150mm、
ファインウェッジワイヤ33の傾斜角θbが5°、
ファインウェッジワイヤ33の有効長さが200mmであるとき、
実験例2においては、雨水Wの流量が3L,10L,20L/分における集水率がそれぞれ82%、86%、92%であり、流量10L/分における微細粒子除去率が95%であることを示している。
【0056】
〈比較例1〉
比較例1においては、次のような仕様に基づいて行われた結果を示している。
【0057】
縦樋4は内径がφ50mmの塩化ビニール管、
集水器9のファインウェッジワイヤ33は、線径0.75mmのSUS316で目開き150μm、
ファインウェッジワイヤ33の傾斜角θbが1°、
ファインウェッジワイヤ33の有効長さが200mmであるとき、
比較例1は、雨水Wの流量が3L,10L,20L/分における集水率がそれぞれ50%、52%であり、10L/分における微細粒子除去率が95%であることを示している。
【0058】
〈比較例2〉
比較例2においては、従来知られている集水器の横引き配管(φ50mm)の一部を拡開してU字状の濾過タンクに接続して集水率及び微細粒子除去率を測定した結果を示している。
【0059】
図6に示すように、線径0.75mmで目開きが100〜150μmのファインウェッジワイヤ33を5°傾斜させた図3の集水器9が好適な集水率及び微細粒子除去率を得ることができる。
【実施例2】
【0060】
図7は本発明の実施例2に係わる集水器9Aを示している。なお、本実施例2の集水器9Aでは内筒21の構成が実施例1と異なっていて、他は実施例1の図3に示すものと同じであるのでその説明は省略する。
【0061】
図7に示す集水器9Aは、下側に半円筒状のフィルタ部20を有しており、このフィルタ部20は図4〜図5で説明した実施例1のファインウェッジワイヤ33と同様なものである。
【0062】
また、内筒21の上側は不透水性の半円筒部材45からなっており、この半円筒部材45と半円筒状のフィルタ部20とを合体して円筒状の内筒21が構成されている。このように、内筒21の下側のみをファインウェッジワイヤ33からなるフィルタ部20とすることでも、集水器9Aに流入する雨水Wを濾過して清浄水Waを効率的に得ることができる。
【0063】
なお、図9は説明を解り易くするために、実施例1及び実施例2における集水器9を模式的に示したものである。図9(a)は外筒22内にファインウェッジワイヤ33(図4、図4参照)からなる円筒状の内筒21を配設した2重筒を示し、図9(b)は外筒22内に下部側が半円筒状のフィルタ部20であって上部側が不透水性部材からなる半円筒部材45を合体してなる内筒21を備える2重筒を示している。
【実施例3】
【0064】
図8は本発明の実施例3に係わる集水器9Bの下部側の一部を示している。なお、実施例1の図3に示すものと同じものは同じ符号を付してその説明は省略する。
【0065】
前述した図3における集水器9において、集水器9の内筒21内に流入する雨水Wの水量が多くて内筒21により濾過された清浄水Waが多いとき、例えば、集水空間25内に滞留している清浄水Waの水面50が二点鎖線で示す位置にあるときには、集水管10に集水する効率が低下する不具合がある。
【0066】
すなわち、フィルタ部20により濾過された清浄水Waの全てが集水管10により集水されることはなく、集水空間25に滞留している清浄水Waの一部がフィルタ部20に各端部から再び内筒21内に戻って集水効率を低下させることがある。
【0067】
これを解消するために、実施例3においては図8に示すように集水器9Bの内筒21の下端部の外周に不透水性部材46が設けられている。この不透水性部材46は、円筒部47の一端側(図においては下端側)にフランジ48を一体形成したものからなっている。
【0068】
図8に示すように、集水器9Bの内筒21Bの下端部に不透水性部材46を配設したことによって、フィルタ部20により濾過されて水面50の高さまで集水空間25内に滞留している清浄水Waは、不透水性部材46により内筒21B内に戻るのが阻止されている。これにより、集水空間25内の清浄水Waの集水効率を高めることができる。
【0069】
図10(a)は、実施例3における集水器9Bを解りやすくするために模式的に示したものである。この集水器9Bは、下端部に不透水性部材46を有する内筒21Bが外筒22内に収納されている2重筒からなっている。
【実施例4】
【0070】
図10(b)は、本発明の実施例4に係わる集水器9Cの模式図を示している。本実施例における集水器9Cの内筒21Cは、図7及び図9(b)に示す集水器9Aのように下部側に半円筒状のフィルタ部20と上部側の半円筒部材45とを合体して構成されている。
【0071】
そして、集水器9Cは前記内筒21Cのフィルタ部20の各端部に不透水性部材51を配設したものからなっている。この不透水性部材51は、図10(a)の不透水性部材46を半分割したものからなっていて、半円筒部52の一端部に半フランジ53を一体形成してなっている。
【0072】
このように、集水器9Cの下側のフィルタ部20に対して不透水性部材51を配設しても実施例3の集水器9Bと同様に集水器9Cの集水効率を上げることができる。
【0073】
なお、図1に示す集水器9は、建物1の屋外(地上)に配設されている例を示したが、この集水器9を図11に示すように貯水タンク11に導通しているマンホール12内に配設することも可能である。図11における集水器9の拡大を図12に示す。
【0074】
図12に示すように、集水器9はマンホール12内に延出している横引き配管16の配管16a,16bにそれぞれ接続されており、この集水器9の接続方法は図3の集水器9と同様であるのでその説明は省略する。なお、集水器9は勾配θaをもって配設されている。
【0075】
集水器9の下方には、マンホール12内に設けられている段部12a上に載置された中蓋55が配設されている。集水器9の集水管10は、中蓋55を貫通して図11の貯水タンク11に導通している。
【0076】
なお、図11の縦樋4を流下する雨水Wは、図1の集水器9と同様に集水器9により濾過されて清浄水Waが貯水タンク11内へ貯留されると共に、濾過されない雨水Wは矢印43で示すように排水管7を通って下水配管6に排水される。
【実施例5】
【0077】
図13〜図15は、マンホール12内に配設された実施例5に係わる集水器9Dを示している。この集水器9Dは、落とし蓋60の中央部(直径方向に沿う位置)に半円筒状のフィルタ部20を固設して、落とし蓋60とフィルタ部20とを一体形成したものからなっている。前記フィルタ部20は、上方に凹状に湾曲して配設されている。
【0078】
なお、上記フィルタ部20は図4〜図5に示すファインウェッジワイヤ33から構成されていて、効率的に集水できると共に微細粒子を濾過することができるようになっている。
【0079】
マンホール12の内面には1対の半リング状のストッパ61が各端部に間隙をもたせて対向させて固設されている。すなわち、上記ストッパ61は落とし蓋60のフィルタ部20を除く部分の下面を支持するような形状をしていると共に、図14に示すように勾配θaをもって傾斜して設けられている。なお、勾配θaは、0°〜30°である。
【0080】
集水器9Dの落とし蓋60は、マンホール12の上部から挿入して上記ストッパ61に載置することでマンホール12内に配設することができる。
【0081】
横引き配管16の配管16a,16bは、地中5に勾配θaだけ傾斜して埋設されていて、その各端部はマンホール12内に対向して露出している。そして、落とし蓋60をストッパ61上に落とし込むことにより、フィルタ部20の各端部は配管16a,16bの下側端部と一致するようになっている。
【0082】
なお、ストッパ61とこれに載置される落とし蓋60との間にシール部材(図示せず)を設けてもよい。
【0083】
このように構成された集水器9Dにおいて、図11の縦樋4を流下する雨水Wが図13及び図14に示すように横引き配管16の配管16aからフィルタ部20に流入すると、フィルタ部20により濾過された清浄水Waは下方の貯水タンク11(図11参照)に貯留され、フィルタ部20により濾過されない雨水Wは配管16bを経て下水配管6(図11参照)に排出される。
【0084】
このように、フィルタ部20で濾過された清浄水Waを直接貯水タンク11内に集水することで、フィルタ部20による集水効率を高めることができる。また、マンホール12に対する集水器9Dの配設は、集水器9Dの落とし蓋60をストッパ61上に載置して行われるので、集水器9Dの配設を容易に行うことができる。
【0085】
なお、上記実施例5においては、集水器9Dの集水部としてのフィルタ部20は、上方に開口している半円筒状のものからなっているが、これの代わりに、図9(b)のようにフィルタ部20の上部側を半円筒状の半円筒部材45で覆って形成した円筒部材(図示せず)を用いてもよいことは勿論である。
【0086】
上述したように、図1の縦樋4を流下する雨水Wを濾過する集水器9を、図3のフィルタ部20を有する内筒21及び不透水性部材の外筒22との2重構造にしてあるので、集水器9による雨水Wの集水効率を高めることができる。
【0087】
また、フィルタ部20が微細粒子を分離除去可能なファインウェッジワイヤ33(図4、図5参照)により構成しているので、雨水Wに含まれる微細粒子が除去された適正な清浄水Waを得ることができ、さらに、ファインウェッジワイヤ33を雨水Wの流下方向に対して角度θbで傾斜しているので、ファインウェッジワイヤ33の目開き34における微細粒子の目詰まりを効率的に防止することができる。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施例1に係わる雨水分離集水装置が適用されている建物及び貯水タンクの正面図である。
【図2】(a)は集水器が設けられている縦樋下部の正面図、(b)は集水器が設けられている縦樋下部の別の例を示す正面図である。
【図3】集水器の横断側面図である。
【図4】ファインウェッジワイヤの横断側面図である。
【図5】図4のファインウェッジワイヤの拡大詳細図である。
【図6】集水器による集水率及び微細粒子除去率の実施例及び比較例を表にした図である。
【図7】本発明の実施例2に係わる集水器の横断側面図である。
【図8】本発明の実施例3に係わる集水器下部の拡大図である。
【図9】(a)は実施例1に係わる内筒及び外筒の模式図、(b)は実施例2に係わる内筒及び外筒の模式図である。
【図10】(a)は実施例3に係わる内筒及び外筒の模式図、(b)は実施例4に係わる内筒及び外筒の模式図である。
【図11】集水器9の別の配置例を示す建物及び貯水タンクの正面図である。
【図12】図11に示す集水器の拡大図である。
【図13】本発明の実施例5に係わる集水器の斜視図である。
【図14】図13のA−A線断面矢視図である。
【図15】図14のB−B線断面矢視図である。
【符号の説明】
【0090】
W 雨水
Wa 清浄水
1 建物
3 横樋
4 縦樋
8 雨水分離集水装置
9,9A〜9D 集水器
11 貯水タンク
20 フィルタ部
21,21A〜21C 内筒
22 外筒
25 集水空間
46 不透水性部材
51 不透水性部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の縦樋から流れる雨水中の塵埃を分離除去して、雨水を再利用するための雨水分離集水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の有効利用に対する意識の高まりや水不足に対する配慮から、建物の屋根に降水する雨水の有効利用が広まっている。この雨水の集水は、縦樋から雨水貯水タンク等の途中に集水器を配置して、雨水中の塵埃を分離除去して行われる。
【0003】
従来のこの種の集水器として、縦樋の途中に逆円錐形状(すり鉢状)の濾過部材を配置して、縦樋内を流れる雨水から塵埃を除去すると共に、この濾過部で濾過されてその周囲から雨水溜めに排出される雨水(清浄水)を貯水タンクに貯留するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、別の例の集水器として、縦樋に形成された横引き配管部の一部を開口して粗目スクリーンを配置すると共に、この粗目スクリーンから濾過集水された雨水をU字状の濾過タンクの一方の上部から貯留し、濾過タンクの他方の上部から細目スクリーンを介して塵埃を分離除去された清浄水を貯水タンクに貯留するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−70086号公報
【特許文献2】実用新案登録 第3066431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、逆円錐形状の濾過部材により雨水の塵埃を分離除去して集水する集水器においては、微細な粒子の分離除去ができないと共に、濾過部材に蓄積される粗目の塵埃により目詰まりを生じて集水効率が上がらないという問題があった。
【0006】
また、U字状の濾過タンクから細目スクリーンを介して清浄水を集水する集水器においては、粗目の塵埃は分離除去できるが、細目スクリーンでは微細な粒子の分離除去はできないと共に、横引き配管の一部から集水しているため集水効率が上がらないという問題があった。
【0007】
本発明は、微細な粒子の分離除去が可能であると共に、目詰まりがし難くて集水効率の高い雨水分離集水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、請求項1に記載の発明は、建物の雨樋から排水する縦樋が設けられ、前記縦樋から集水部を介して流下する雨水を貯留する貯水タンクが設けられた雨水分離集水装置において、前記集水部は、前記縦樋に連通すると共に横方向に延び且つフィルタ部を有する内筒と、前記内筒を覆う外筒を備えると共に、前記内筒及び外筒との間に形成され且つ前記貯水タンクに接続される集水管に連通する円筒状の集水空間を有し、下流側部は排水管に接続されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記内筒はウェッジワイヤを卷回して所定幅のスリットが形成されたフィルタ筒であることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記ウェッジワイヤの内周面は、上流側の角隅部が下流側の角隅部よりも高く位置されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記フィルタ筒の下流側部は不透水性部で閉塞されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記内筒は、少なくとも下流側部が不透水性部材により閉塞された半円筒状のフィルタ部を下部側に有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係わる発明によれば、縦樋に連通すると共に横方向に延び且つフィルタ部を有する内筒と、この内筒を覆う外筒を備えると共に、内筒及び外筒との間に形成され且つ前記貯水タンクに連通する2重構造の円筒状の集水空間を備えるので、雨水の塵埃を内筒により効率的に分離除去して雨水を集水空間に集水して雨水の集水効率を高めることができる。
【0014】
また、請求項2に係わる発明によれば、内筒はウェッジワイヤを卷回して所定幅のスリットが形成されたフィルタ筒であるので、塵埃を分離除去した雨水(清浄水)を効率的に集水することができる。
【0015】
また、請求項3に係わる発明によれば、ウェッジワイヤの内周面は、上流側の角隅部が下流側の角隅部よりも高く位置させたので、各ウェッジワイヤの内周面には下流側の位置において内側に突出している段部を形成することができる。そして、ウェッジワイヤの内周面を流れる雨水が段部に当たって流れ方向を変えることにより、雨水中の微細粒子が舞い上がるため、ウェッジワイヤの目開き内に微細粒子が詰まるような目詰まりを防止することができると共に、雨水分離集水装置のメンテナンスを略不必要とすることができる。
【0016】
また、請求項4に係わる発明によれば、フィルタ筒の下流側部は不透水部で閉塞されているので、内筒により濾過されて集水空間の下流側に貯留している清浄水が内筒を介して内筒内に逆流するのが防止できて、雨水の集水効率を高めることができる。
【0017】
また、請求項5に係わる発明によれば、内筒は少なくとも下流側部が閉塞された半円筒状のフィルタ部を下部側に有するので、半円筒状のフィルタ部で雨水の塵埃を分離除去できると共に集水空間内の清浄水が内筒内に逆流するのを防止して雨水の集水効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1において、建物1の屋根2の下部近傍には雨樋3が配設されており、この雨樋3の適所には雨水Wを受けて流す縦樋4が接続されている。この縦樋4は、地中5に埋設された下水配管6に排水管7を介して連通していると共に、縦樋4の途中には雨水分離集水装置8の一部を構成している集水部としての集水器9が配設されている。
【0020】
前記集水器9からは後述するようにして塵埃を分離除去された清浄水を集水するための集水管10が配設されている。地中5に埋設された貯水タンク11は、集水器9により集水された清浄水Waを貯水するものであって、地面GLまで延びるマンホール12を有する。12bは、マンホール12の地面GLへの開口端を開閉可能に閉塞しているマンホール蓋である。
【0021】
上記集水管10は、マンホール12に清浄水Waを排出するものである。また、貯水タンク11内の清浄水Waは、フィルタ13を介して取水管14により図示しないポンプを介して外部に取り出されるようになっている。
【0022】
本発明に係わる雨水分離集水装置8は、縦樋4及びこれに配設された集水器9と、集水管10及び貯水タンク11等により構成されている。
【0023】
図2(a)は、前記集水器9が配設されている縦樋4の形状を示している。すなわち、縦樋4の途中には、接続管15と横引き配管16とをエルボ17によりそれぞれ接続してなるV字状部18が形成されている。
【0024】
接続管15は下端に向かうにしたがって傾斜し、横引き配管16は接続管15と相対する方向及び下方に向けて傾斜している。前述した集水器9は、横引き配管16に配設されている。なお、集水器9の勾配θaは0°〜30°に設定されている。
【0025】
また、図2(b)は、図2(a)の接続管15の代わりに可撓性のホース19を用いてV字状部18を形成した例を示している。
【0026】
次に、上記集水器9の構成を図3により説明する。
【0027】
集水器9は、前記縦樋4の横引き配管16に連通すると共にフィルタ部20を有するフィルタ筒としての内筒21と、この内筒21を覆う外筒22と、上記内筒21及び外筒22の各端部にそれぞれ固定されている一対の端板23,24等を有している。
【0028】
前記内筒21と外筒22との間には、適宜な間隔を有する集水空間25が形成されている。なお、外筒22の下部外周には前述の集水管10が下向きに連通して設けられている。
【0029】
また、横引き配管16は上流側と下流側の2つの配管16a,16bに分割して構成されていて、それぞれの端部にはフランジ26が形成されている。
【0030】
上流側の配管16aには、キャップ27の一端に形成された筒部27aが遊嵌されていて上記フランジ26により抜け止めされている。下流側の配管16bにも同様のキャップ28の筒部28aが遊嵌されていてフランジ26により抜け止めされている。
【0031】
外筒22の端板23,24には、雨水Wが通過するための穴29がそれぞれ形成されており、さらに端板23,24の外周にはネジ30がそれぞれ形成されている。キャップ27,28には上記ネジ30に螺合可能なネジ31がそれぞれ形成されている。
【0032】
キャップ27,28のネジ31を上記端板23,24のネジ30にそれぞれ螺合させることにより端板23とフランジ26及び端板24とフランジ26が密着するようにして集水器9は横引き配管16に配設されている。
【0033】
次に、集水器9の内筒21のフィルタ部20について図4及び図5により説明する。
【0034】
内筒21のフィルタ部20は、図4及び図5に示すように細い楔型をしたワイヤ(ファインウェッジワイヤという)33を微細な目開き(スリット)34をもって複数本配列したものからなっている。この目開き34は、内筒21の内側から外側に向かうにしたがって拡開している。
【0035】
ファインウェッジワイヤ33は、その長手方向の大きさは0.5〜1mmであって、材料はSUS製である。ファインウェッジワイヤ33の内面33aを連ねることにより仮想内面35が構成されている。
【0036】
前記目開き34の大きさは100〜300μmであって、目開き34の配列方向は矢印36で示す雨水W(図1参照)の流れ方向に対して略直角に配列されている。また、フィルタ部20の流れ方向の長さは、100〜300mmになっている。
【0037】
また、図4及び図5に示すように、ファインウェッジワイヤ33は、内面33aが内筒21(図3参照)の中心と平行な仮想内面35の垂直線38に対して下流側に角度θbだけ傾斜している。この角度θbは、2〜20°になっている。
【0038】
ファインウェッジワイヤ33をこのように傾斜させることにより、図5に示すファインウェッジワイヤ33の内面33aは、上流側の角隅部Aが下流側の角隅部Bよりも若干高くなっている。
【0039】
このようにファインウェッジワイヤ33を下流側に傾斜させることにより、ファインウェッジワイヤ33の角隅部Aが段部を形成することになる。そして、仮想内面35に沿って流れる雨水Wは、角隅部A(段部)に当たって矢印39で示すように舞い上がるように方向を変えることになる。
【0040】
このように、雨水Wが段部A(上流側の角隅部)により舞い上がることにより、雨水Wに含まれる微細粒子がファインウェッジワイヤ33間の目開き34内に入って引っ掛かって目詰まりを生じるような不具合な現象は確実に防止されている。
【0041】
この結果、集水器9の内筒21は常に良好な集水性能を保持することができると共に、内筒21に対する目詰まり除去のメンテナンスを略不必要とすることができる。
【0042】
このように構成された雨水分離集水装置において、図1の屋根2に降り注ぐ雨水Wは雨樋3に沿って縦樋4に集められる。縦樋4を矢印40で示すように流下する雨水Wは、図3の矢印36で示すように集水器9の内筒21内に流入する。
【0043】
このように、内筒21はフィルタ部20を有すると共に、集水空間25を有するので、内筒21により濾過されて集水空間25内に貯留している清浄水Waは、図3の矢印41で示すように集水管10を通って図1の貯水タンク11内に貯水される。
【0044】
また、内筒21は、雨水Wが上記のように内筒21内を通過する際、内筒21の全周において濾過作用が行われるフィルタ筒であるので、清浄水Waの集水効率を高めることができる。
【0045】
内筒21内の雨水Wの一部、すなわち雨水Wの水量が多くてフィルタ部20では濾過されなかった雨水Wは、内筒21から配管16bに図3の矢印42で示すように排出された後、矢印43で示したように排水管7(図1参照)に排出され、さらに下水配管6に排出される。
【0046】
このとき、図3の内筒21のフィルタ部20により分離除去された落葉等の大きい塵埃及び微細粒子等の塵埃(図示せず)は、内筒21内を流れる雨水Wにより図1の下水配管6へ排出される。
【0047】
いま、仮にファインウェッジワイヤ33が下流側に傾斜していないで、ファインウェッジワイヤ33の内面33aが同一面にあるとすると、目開き34の大きさと略同じ大きさの微細粒子が雨水Wと共に流れるときに、この微細粒子が目開き34に引っ掛かって目開き34の目詰まりを生じ、フィルタ部20の集水効率を低下させることがある。
【0048】
この点、本発明に係わるファインウェッジワイヤ33は、上述したように下流側に傾斜していて段部(角隅部A)を形成しているので、目開き34と略同じ微細粒子が目開き34に位置しても矢印39で示す雨水Wの流れにより微細粒子が舞上げられて、微細粒子による目開き34の目詰まりが防止される。
【0049】
すなわち、内筒21のフィルタ部20は、多数の微細間隔の目開き34を備えたファインウェッジワイヤ33からなるフィルタ筒であるため、微細粒子を分離除去できると共に、集水効率が非常に高くなっている。
【0050】
また、ファインウェッジワイヤ33の目開き34の目詰まりが上記のように防止されているので、ファインウェッジワイヤ33により塵埃を分離除去された清浄水Waを確実に集水できて、集水器9の集水効率を高めることが可能となっている。
【0051】
図6は、ファインウェッジワイヤ33が使用されている集水器9によって、流量に対する集水率及び流量に対する微細粒子除去率を測定した実験例のデータを示している。
【0052】
〈実験例1〉
実験例1においては、次のような仕様に基づいて行われた結果を示している。
【0053】
図1の縦樋4の内径がφ50mmの塩化ビニール管、
図3の集水器9のファインウェッジワイヤ33(図5参照)は線径(断面長さ)0.75mmのSUS316で目開き34が100μm、
ファインウェッジワイヤ33の傾斜角θbが5°、
ファインウェッジワイヤ33の有効長さ(図3の左右方向の長さ)が200mmであるとき、
実験例1は、雨水Wの流量が3L,10L,20L/分における集水率はそれぞれ80%、83%、88%であり、流量10L/分における微細粒子除去率が95%であることを示している。
【0054】
〈実験例2〉
実験例2においては、次のような仕様に基づいて行われた結果を示している。
【0055】
縦樋4は内径がφ50mmの塩化ビニール管、
集水器9のファインウェッジワイヤ33は線径0.75mmのSUS316で目開き34が150mm、
ファインウェッジワイヤ33の傾斜角θbが5°、
ファインウェッジワイヤ33の有効長さが200mmであるとき、
実験例2においては、雨水Wの流量が3L,10L,20L/分における集水率がそれぞれ82%、86%、92%であり、流量10L/分における微細粒子除去率が95%であることを示している。
【0056】
〈比較例1〉
比較例1においては、次のような仕様に基づいて行われた結果を示している。
【0057】
縦樋4は内径がφ50mmの塩化ビニール管、
集水器9のファインウェッジワイヤ33は、線径0.75mmのSUS316で目開き150μm、
ファインウェッジワイヤ33の傾斜角θbが1°、
ファインウェッジワイヤ33の有効長さが200mmであるとき、
比較例1は、雨水Wの流量が3L,10L,20L/分における集水率がそれぞれ50%、52%であり、10L/分における微細粒子除去率が95%であることを示している。
【0058】
〈比較例2〉
比較例2においては、従来知られている集水器の横引き配管(φ50mm)の一部を拡開してU字状の濾過タンクに接続して集水率及び微細粒子除去率を測定した結果を示している。
【0059】
図6に示すように、線径0.75mmで目開きが100〜150μmのファインウェッジワイヤ33を5°傾斜させた図3の集水器9が好適な集水率及び微細粒子除去率を得ることができる。
【実施例2】
【0060】
図7は本発明の実施例2に係わる集水器9Aを示している。なお、本実施例2の集水器9Aでは内筒21の構成が実施例1と異なっていて、他は実施例1の図3に示すものと同じであるのでその説明は省略する。
【0061】
図7に示す集水器9Aは、下側に半円筒状のフィルタ部20を有しており、このフィルタ部20は図4〜図5で説明した実施例1のファインウェッジワイヤ33と同様なものである。
【0062】
また、内筒21の上側は不透水性の半円筒部材45からなっており、この半円筒部材45と半円筒状のフィルタ部20とを合体して円筒状の内筒21が構成されている。このように、内筒21の下側のみをファインウェッジワイヤ33からなるフィルタ部20とすることでも、集水器9Aに流入する雨水Wを濾過して清浄水Waを効率的に得ることができる。
【0063】
なお、図9は説明を解り易くするために、実施例1及び実施例2における集水器9を模式的に示したものである。図9(a)は外筒22内にファインウェッジワイヤ33(図4、図4参照)からなる円筒状の内筒21を配設した2重筒を示し、図9(b)は外筒22内に下部側が半円筒状のフィルタ部20であって上部側が不透水性部材からなる半円筒部材45を合体してなる内筒21を備える2重筒を示している。
【実施例3】
【0064】
図8は本発明の実施例3に係わる集水器9Bの下部側の一部を示している。なお、実施例1の図3に示すものと同じものは同じ符号を付してその説明は省略する。
【0065】
前述した図3における集水器9において、集水器9の内筒21内に流入する雨水Wの水量が多くて内筒21により濾過された清浄水Waが多いとき、例えば、集水空間25内に滞留している清浄水Waの水面50が二点鎖線で示す位置にあるときには、集水管10に集水する効率が低下する不具合がある。
【0066】
すなわち、フィルタ部20により濾過された清浄水Waの全てが集水管10により集水されることはなく、集水空間25に滞留している清浄水Waの一部がフィルタ部20に各端部から再び内筒21内に戻って集水効率を低下させることがある。
【0067】
これを解消するために、実施例3においては図8に示すように集水器9Bの内筒21の下端部の外周に不透水性部材46が設けられている。この不透水性部材46は、円筒部47の一端側(図においては下端側)にフランジ48を一体形成したものからなっている。
【0068】
図8に示すように、集水器9Bの内筒21Bの下端部に不透水性部材46を配設したことによって、フィルタ部20により濾過されて水面50の高さまで集水空間25内に滞留している清浄水Waは、不透水性部材46により内筒21B内に戻るのが阻止されている。これにより、集水空間25内の清浄水Waの集水効率を高めることができる。
【0069】
図10(a)は、実施例3における集水器9Bを解りやすくするために模式的に示したものである。この集水器9Bは、下端部に不透水性部材46を有する内筒21Bが外筒22内に収納されている2重筒からなっている。
【実施例4】
【0070】
図10(b)は、本発明の実施例4に係わる集水器9Cの模式図を示している。本実施例における集水器9Cの内筒21Cは、図7及び図9(b)に示す集水器9Aのように下部側に半円筒状のフィルタ部20と上部側の半円筒部材45とを合体して構成されている。
【0071】
そして、集水器9Cは前記内筒21Cのフィルタ部20の各端部に不透水性部材51を配設したものからなっている。この不透水性部材51は、図10(a)の不透水性部材46を半分割したものからなっていて、半円筒部52の一端部に半フランジ53を一体形成してなっている。
【0072】
このように、集水器9Cの下側のフィルタ部20に対して不透水性部材51を配設しても実施例3の集水器9Bと同様に集水器9Cの集水効率を上げることができる。
【0073】
なお、図1に示す集水器9は、建物1の屋外(地上)に配設されている例を示したが、この集水器9を図11に示すように貯水タンク11に導通しているマンホール12内に配設することも可能である。図11における集水器9の拡大を図12に示す。
【0074】
図12に示すように、集水器9はマンホール12内に延出している横引き配管16の配管16a,16bにそれぞれ接続されており、この集水器9の接続方法は図3の集水器9と同様であるのでその説明は省略する。なお、集水器9は勾配θaをもって配設されている。
【0075】
集水器9の下方には、マンホール12内に設けられている段部12a上に載置された中蓋55が配設されている。集水器9の集水管10は、中蓋55を貫通して図11の貯水タンク11に導通している。
【0076】
なお、図11の縦樋4を流下する雨水Wは、図1の集水器9と同様に集水器9により濾過されて清浄水Waが貯水タンク11内へ貯留されると共に、濾過されない雨水Wは矢印43で示すように排水管7を通って下水配管6に排水される。
【実施例5】
【0077】
図13〜図15は、マンホール12内に配設された実施例5に係わる集水器9Dを示している。この集水器9Dは、落とし蓋60の中央部(直径方向に沿う位置)に半円筒状のフィルタ部20を固設して、落とし蓋60とフィルタ部20とを一体形成したものからなっている。前記フィルタ部20は、上方に凹状に湾曲して配設されている。
【0078】
なお、上記フィルタ部20は図4〜図5に示すファインウェッジワイヤ33から構成されていて、効率的に集水できると共に微細粒子を濾過することができるようになっている。
【0079】
マンホール12の内面には1対の半リング状のストッパ61が各端部に間隙をもたせて対向させて固設されている。すなわち、上記ストッパ61は落とし蓋60のフィルタ部20を除く部分の下面を支持するような形状をしていると共に、図14に示すように勾配θaをもって傾斜して設けられている。なお、勾配θaは、0°〜30°である。
【0080】
集水器9Dの落とし蓋60は、マンホール12の上部から挿入して上記ストッパ61に載置することでマンホール12内に配設することができる。
【0081】
横引き配管16の配管16a,16bは、地中5に勾配θaだけ傾斜して埋設されていて、その各端部はマンホール12内に対向して露出している。そして、落とし蓋60をストッパ61上に落とし込むことにより、フィルタ部20の各端部は配管16a,16bの下側端部と一致するようになっている。
【0082】
なお、ストッパ61とこれに載置される落とし蓋60との間にシール部材(図示せず)を設けてもよい。
【0083】
このように構成された集水器9Dにおいて、図11の縦樋4を流下する雨水Wが図13及び図14に示すように横引き配管16の配管16aからフィルタ部20に流入すると、フィルタ部20により濾過された清浄水Waは下方の貯水タンク11(図11参照)に貯留され、フィルタ部20により濾過されない雨水Wは配管16bを経て下水配管6(図11参照)に排出される。
【0084】
このように、フィルタ部20で濾過された清浄水Waを直接貯水タンク11内に集水することで、フィルタ部20による集水効率を高めることができる。また、マンホール12に対する集水器9Dの配設は、集水器9Dの落とし蓋60をストッパ61上に載置して行われるので、集水器9Dの配設を容易に行うことができる。
【0085】
なお、上記実施例5においては、集水器9Dの集水部としてのフィルタ部20は、上方に開口している半円筒状のものからなっているが、これの代わりに、図9(b)のようにフィルタ部20の上部側を半円筒状の半円筒部材45で覆って形成した円筒部材(図示せず)を用いてもよいことは勿論である。
【0086】
上述したように、図1の縦樋4を流下する雨水Wを濾過する集水器9を、図3のフィルタ部20を有する内筒21及び不透水性部材の外筒22との2重構造にしてあるので、集水器9による雨水Wの集水効率を高めることができる。
【0087】
また、フィルタ部20が微細粒子を分離除去可能なファインウェッジワイヤ33(図4、図5参照)により構成しているので、雨水Wに含まれる微細粒子が除去された適正な清浄水Waを得ることができ、さらに、ファインウェッジワイヤ33を雨水Wの流下方向に対して角度θbで傾斜しているので、ファインウェッジワイヤ33の目開き34における微細粒子の目詰まりを効率的に防止することができる。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施例1に係わる雨水分離集水装置が適用されている建物及び貯水タンクの正面図である。
【図2】(a)は集水器が設けられている縦樋下部の正面図、(b)は集水器が設けられている縦樋下部の別の例を示す正面図である。
【図3】集水器の横断側面図である。
【図4】ファインウェッジワイヤの横断側面図である。
【図5】図4のファインウェッジワイヤの拡大詳細図である。
【図6】集水器による集水率及び微細粒子除去率の実施例及び比較例を表にした図である。
【図7】本発明の実施例2に係わる集水器の横断側面図である。
【図8】本発明の実施例3に係わる集水器下部の拡大図である。
【図9】(a)は実施例1に係わる内筒及び外筒の模式図、(b)は実施例2に係わる内筒及び外筒の模式図である。
【図10】(a)は実施例3に係わる内筒及び外筒の模式図、(b)は実施例4に係わる内筒及び外筒の模式図である。
【図11】集水器9の別の配置例を示す建物及び貯水タンクの正面図である。
【図12】図11に示す集水器の拡大図である。
【図13】本発明の実施例5に係わる集水器の斜視図である。
【図14】図13のA−A線断面矢視図である。
【図15】図14のB−B線断面矢視図である。
【符号の説明】
【0090】
W 雨水
Wa 清浄水
1 建物
3 横樋
4 縦樋
8 雨水分離集水装置
9,9A〜9D 集水器
11 貯水タンク
20 フィルタ部
21,21A〜21C 内筒
22 外筒
25 集水空間
46 不透水性部材
51 不透水性部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の雨樋から排水する縦樋が設けられ、前記縦樋から集水部を介して流下する雨水を貯留する貯水タンクが設けられた雨水分離集水装置において、
前記集水部は、前記縦樋に連通すると共に横方向に延び且つフィルタ部を有する内筒と、前記内筒を覆う外筒を備えると共に、前記内筒及び外筒との間に形成され且つ前記貯水タンクに接続される集水管に連通する円筒状の集水空間を有し、下流側部は排水管に接続されていることを特徴とする雨水分離集水装置。
【請求項2】
前記内筒はウェッジワイヤを卷回して所定幅のスリットが形成されたフィルタ筒であることを特徴とする請求項1に記載の雨水分離集水装置。
【請求項3】
前記ウェッジワイヤの内周面は、上流側の角隅部が下流側の角隅部よりも高く位置されていることを特徴とする請求項2に記載の雨水分離集水装置。
【請求項4】
前記フィルタ筒の下流側部は不透水性部で閉塞されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の雨水分離集水装置。
【請求項5】
前記内筒は、少なくとも下流側部が不透水性部材により閉塞された半円筒状のフィルタ部を下部側に有することを特徴とする請求項2又は3に記載の雨水分離集水装置。
【請求項1】
建物の雨樋から排水する縦樋が設けられ、前記縦樋から集水部を介して流下する雨水を貯留する貯水タンクが設けられた雨水分離集水装置において、
前記集水部は、前記縦樋に連通すると共に横方向に延び且つフィルタ部を有する内筒と、前記内筒を覆う外筒を備えると共に、前記内筒及び外筒との間に形成され且つ前記貯水タンクに接続される集水管に連通する円筒状の集水空間を有し、下流側部は排水管に接続されていることを特徴とする雨水分離集水装置。
【請求項2】
前記内筒はウェッジワイヤを卷回して所定幅のスリットが形成されたフィルタ筒であることを特徴とする請求項1に記載の雨水分離集水装置。
【請求項3】
前記ウェッジワイヤの内周面は、上流側の角隅部が下流側の角隅部よりも高く位置されていることを特徴とする請求項2に記載の雨水分離集水装置。
【請求項4】
前記フィルタ筒の下流側部は不透水性部で閉塞されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の雨水分離集水装置。
【請求項5】
前記内筒は、少なくとも下流側部が不透水性部材により閉塞された半円筒状のフィルタ部を下部側に有することを特徴とする請求項2又は3に記載の雨水分離集水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−104851(P2006−104851A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295367(P2004−295367)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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