説明

雨水浸透ますおよび雨水浸透ます用フィルタ

【構成】 雨水浸透ます用フィルタ10は外側フィルタ14内に内側フィルタ12を重ねて形成される。内側フィルタ12の高さは外側フィルタ14の高さより低く、内側フィルタ12の上端と外側フィルタ14の上端との間に間隙が形成される。雨水に含まれた固形物はまず内側フィルタ12で除去される。そして、内側フィルタ12内が固形物で満たされると、雨水は間隙、つまりオバーフロー流路34を通って、外側フィルタ14内に流入し、次に固形物は外側フィルタ14で除去される。
【効果】 雨水は効率良く内側フィルタ12から外側フィルタ14へ流入し、しかも固形物は内側フィルタ12内だけでなく、および内側フィルタ12と外側フィルタ14との間にも溜められるため、内側フィルタ12を簡易に取り出せる維持管理機能を活かしたまま雨水浸透ます用フィルタ10の固形物を取り除く間隔を延ばすことができ、維持管理の省力化につながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雨水浸透ますおよび雨水浸透ます用フィルタに関し、特にたとえば、雨水を地中に浸透させるだけでなく、雨水から落ち葉や土砂などごみを除去する機能も備える、雨水浸透ますおよび雨水浸透ます用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の雨水浸透ますおよび雨水浸透ます用フィルタの一例が、非特許文献1に開示されている。この非特許文献1の浸透ますは泥溜めますと連通し、泥溜めますの中にかごおよびゴミ取りバケツが取り付けられている。ごみを含んだ雨水はまず泥溜めますの中に入り、ゴミ取りバケツおよびかごを通過する。ごみは主にゴミ取りバケツにより捕らえられて、ごみが取り除かれた雨水は浸透ますへ流入する。このため、ゴミ取りバケツにごみが詰まると浸透ますの浸透能力が低下してしまうため、定期的または大雨の後などにゴミ取りバケツの掃除や点検などをする必要がある。
【非特許文献1】財団法人 下水道新技術推進機構「下水道雨水浸透技術マニュアル―2001年6月―」第4節「浸透ます等」の構造、図4−7目づまり防止対策(泥溜めます併設例)(79)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1の従来技術では、主にかごと独立している容積の小さなゴミ取りバケツにより雨水からごみを除去するため、すぐにゴミ取りバケツが一杯になってゴミ取りバケツの目が詰まってしまい、泥溜めますの掃除や点検など維持管理を頻繁にしなければならない。特に、台風や集中豪雨など大雨が降る時期には、これらの掃除や点検などをさらに頻繁に行う必要がある。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、維持管理の省力化を図る、雨水浸透ますおよび雨水浸透ます用フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、外側フィルタの中に少なくとも1つの内側フィルタを重ねた雨水浸透ます用フィルタであって、内側フィルタの上部に外側フィルタへのオバーフロー流路を形成した、雨水浸透ます用フィルタである。
【0006】
請求項1の発明では、雨水に含まれたごみなどの固形物は内側フィルタで除去されて、雨水は内側フィルタを通過する。続いて、雨水は外側フィルタを通過して、雨水浸透ますへ流入する。
【0007】
そして、内側フィルタに固形物が溜まると、雨水は固形物とともに内側フィルタのオバーフロー流路を通って、外側フィルタへ流入する。そこで、内側フィルタと同様に、ごみは外側フィルタで除去され、雨水は外側フィルタを通過する。
【0008】
このように、ごみの量が少なく内側フィルタだけにごみが溜められている場合には外側フィルタの上に重ねられた内側フィルタだけを取り出せばよい。
【0009】
また、ごみの量が多く内側フィルタがごみで満たされると、内側フィルタに設けたオバーフロー流路により雨水に含まれるごみは外側フィルタでも除去されるため、ごみ除去可能容積は増加する。
【0010】
これにより、内側フィルタを簡易に取り出すことのできる維持管理機能を活かしたまま、ごみが雨水浸透ます用フィルタに満たされるまでの時間を延ばすことが可能となり、延いては雨水浸透ますを維持管理する作業の間隔を延ばすことができ、維持管理の省力化につながる。
【0011】
請求項2の発明は、外側フィルタの孔の大きさは内側フィルタの孔の大きさより小さい、請求項1記載の雨水浸透ます用フィルタである。
【0012】
請求項2の発明では、内側フィルタによりある程度大き目の固定物を除去しながら流路を確保し、外側フィルタにより小さな固定物まで除去する。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の雨水浸透ます用フィルタを設けた、雨水浸透ますである。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明と同様の作用を示す。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、内側フィルタにオバーフロー流路を設けることにより、雨水浸透ますの維持管理の省力化を図る
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示すこの発明の一実施例である雨水浸透ます用フィルタ10は内側フィルタ12および外側フィルタ14を備え、これらを重ねて雨水浸透ます16の中に取り付けられる。たとえば、雨水浸透ます16が、ごみ除去用ます18と雨水浸透用ます20とを接続管22で連通し、雨水浸透用ます20に有孔管24を接続したものである場合、雨水浸透ます用フィルタ10はごみ除去用ます18内に設けられる。
【0017】
図2に示す内側フィルタ12はたとえば、筒状の側壁に底面を設けた容器であり、側壁および底面に多数の小さな孔26が設けられる。射出形成または孔の開いていない側壁および底面に二次加工で孔26を開けて形成される。内側フィルタ12の上端にコ字型の把手28が取り付けられる。把手28の長さFは、図3に示すように、内側フィルタ12の外径Diと等しい。
【0018】
図2に示す外側フィルタ14は内側フィルタ12と相似形の筒状の側壁に底を設けた容器であり、側壁および底面に多数の小さな孔30が形成される。孔30の大きさは内側フィルタ12の孔の大きさ26より小さい。
【0019】
図3に示すように、外側フィルタ14の内径Deは内側フィルタ12の外径Diより大きいため、内側フィルタ12は外側フィルタ14の中に入り、内側フィルタ12と外側フィルタ14との間に間隙(De−Di)が形成される。外側フィルタ14の外径Doはごみ除去用ます18の内法の幅Wおよび長さLの内の小さい方より小さく、外側フィルタ14はごみ除去用ます18の中に入り、外側フィルタ14とごみ除去用ます18との間に間隙が形成される。
【0020】
図1に示すように、外側フィルタ14の高さHcは内側フィルタ12の高さHbより大きいため、外側フィルタ14の中に内側フィルタ12を入れると、外側フィルタ14の上端と内側フィルタ12の上端との間に間隙(Hc−Hb)が形成される。この間隙は後述するオバーフロー流路34として利用される。
【0021】
また、内側フィルタ12の高さHbと把手28の高さHgとを合わせた高さは、外側フィルタ14の高さHcより大きいため、把手28は外側フィルタ14の上端から出る。
【0022】
図2に示す固定プレート36は板状で、そのほぼ中央に円形の孔38が形成される。図3に示すように、孔38の径Dpは外側フィルタ14の内径Deより小さいため、図1に示すように孔38の外側で固体プレート36の下面に接着剤や留具などの任意の取り付け手段で外側フィルタ14の上端が取り付けられ、固体プレート36と外側フィルタ14とは結合される。また、図3に示すように、孔38の径Dpは内側フィルタ12の外径Diおよび把手28の長さFより少し大きいため、図4に示すように、固体プレート36の孔38から内側フィルタ12を通して外側フィルタ14の中に入れ、把手28は固定プレート36の孔38の中に嵌まる。この孔38と把手28との隙間が小さいため、把手28は内側フィルタ12のずれ防止ガイドとしても利用される。
【0023】
また、図1に示すように、外側フィルタ14の高さHcは、ごみ除去用ます18の底面からその側壁に設けられた段差18aまでの高さにほぼ等しいため、固体プレート36が取り付けられた外側フィルタをごみ除去用ます18内に入れると、固体プレート36は段差18aに引っ掛かり、外側フィルタ14の底面はごみ除去用ますの底面に接する。
【0024】
このように組み立てた内側フィルタ12および固定プレート36が取り付けられた外側フィルタ14を雨水浸透ます16のごみ除去用ます18内に入れて、ごみ除去用ます18の蓋40を閉める。
【0025】
ごみ除去用ます18の蓋40には孔42が開いており、雨が降ったりすると、雨水は落ち葉やごみなど固形物を含みながら、蓋40の孔42からごみ除去用ます18の中へ流入する。そして、固定物を含んだ雨水は固定プレート36の孔38を通って内側フィルタ12へ流れ込む。この内側フィルタ12である程度の大きさの固形物は除去されて、内側フィルタ12の孔26より小さな固形物および雨水は内側フィルタ12を通過する。続いて雨水は外側フィルタ14も通過するが、小さな固形物は外側フィルタ14で除去される。それから、雨水は接続管22を通り雨水浸透用ます20内に流入して、たとえば有孔管24などを介して地中に浸透する。
【0026】
この内側フィルタ12に固形物が溜まると、雨水は内側フィルタ12を通過することができなくなって、内側フィルタ12の上端からオバーフローする。そして、内側フィルタ12は外側フィルタ14より低いため、雨水は固形物とともに内側フィルタ12の上に設けられたオバーフロー流路34を通って外側フィルタ14へ流入する。このとき、大量の雨水がごみ除去用ます18に一気に流れ込むような場合でも、外側フィルタ14の上端は固定プレート36により蓋をされているため、固形物は外側フィルタ14の上端から溢れ出てごみ除去用ます18に入ることなく、雨水はオバーフロー流路34を通って外側フィルタ14へ流入する。
【0027】
雨水が外側フィルタ14内に流入すると、内側フィルタ12と同様に、固形物は外側フィルタ14で除去され、外側フィルタ14と内側フィルタ12との間に溜められる。そして、雨水は外側フィルタ14を通過して、接続管22を通り雨水浸透用ます20へ流入し、地中に浸透する。
【0028】
雨水浸透ます16の維持管理においては、ごみ除去用ます18の蓋40を開けて、内側フィルタ12の把手28を取ってごみ除去用ます18から内側フィルタ12を取り出す。このとき、外側フィルタ14の中の様子を見て、固形物があまり入っていないようなら、内側フィルタ12内の固形物だけを取り除いて、内側フィルタ12を元に戻す。一方、外側フィルタ14の中にも固形物が溜まっているようなら、固定プレート36を引き上げることにより外側フィルタ14を取り出して、外側フィルタ14内の固形物を取り除く。そして、取り除けたら、外側フィルタ14、内側フィルタ12の順番でごみ除去用ます18内に戻す。
【0029】
このように、内側フィルタ12にオバーフロー流路34を設けることにより、雨水は内側フィルタ12から外側フィルタ14へ効率良く流入する。そして、雨水に含まれる固形物は内側フィルタ12および外側フィルタ14で除去されるため、内側フィルタ12内だけでなく、内側フィルタ12と外側フィルタ14との間隙に固形物を溜めておくことができる。このため、雨水浸透ます用フィルタ10に固形物が満たされるまでの時間が延び、雨水浸透ます16を維持管理する作業の間隔を延ばすことができる。
【0030】
そして、内側フィルタ12の底面を外側フィルタ14の底面に着け、外側フィルタ14の底面を内側フィルタ12の底面に着けることにより、内側フィルタ12および外側フィルタ14の下側に余計なスペースを作らず、内側フィルタ12および外側フィルタ14は最大限大きくされるため、内側フィルタ12および外側フィルタ14へ多くの固形物を溜められ、雨水浸透ます16を維持管理する作業の間隔はさらに延長される。
【0031】
また、内側フィルタ12の把手28は固定プレート36の孔で固定されて、内側フィルタ12の位置はずれず、しかも内側フィルタ12の周りは固定プレート36で蓋をされているため、雨水は内側フィルタ12にまず流入する。これにより、ごみ除去用ます18へ流入する固形物の量が少ない場合には、内側フィルタ12の固形物だけ除去すればよい。
【0032】
そして、内側フィルタ12の把手28を利用すれば、簡単に内側フィルタ12をごみ除去用ます18から取り出せ、雨水浸透ます16の維持管理がし易い。
【0033】
さらに、外側フィルタ14の孔30の大きさを内側フィルタ12の孔26の大きさより小さくすることにより、内側フィルタ12である程度大き目の固定物を除去しながら流路を確保し、外側フィルタ14により小さな固定物まで除去できる。
【0034】
なお、内側フィルタ12を外側フィルタ14の中に1つ設けたが、内側フィルタ12を複数設けることもできる。
【0035】
さらに、外側フィルタ14の高さHcを、ごみ除去用ます18の底面から段差18aまでの高さにほぼ等しくしたが、ごみ除去用ます18の底面から段差18aまでの高さより低くしてもよい。この場合、外側フィルタをごみ除去用ます18内に入れ、固体プレート36を段差18aに引っ掛けると、外側フィルタ14の底面とごみ除去用ます18の底面との間に空間が形成される。
【0036】
その外側フィルタ14の底面に脚部を取り付けることもできる。ごみ除去用ます18の高さに合わせた長さの脚部を外側フィルタ14に取り付けたり、外側フィルタ14から脚部を取り外したりすることにより、雨水浸透ます用フィルタ10の高さをごみ除去用ます18の高さに対応させることができる。
【0037】
そして、外側フィルタ14の上部の孔30の大きさを大きくして、この孔30を緊急対応用孔として使用することもできる。
【0038】
図5に示すこの発明の他の実施例である雨水浸透ます用フィルタ10は、図1に示す雨水浸透ます用フィルタ10とほぼ同じであるが、内側フィルタ44の形状が異なる。これ以外の部分に関しては図1実施例の示す雨水浸透ます用フィルタ10と同様であるため、説明は省略する。
【0039】
図6に示す内側フィルタ44はたとえば、筒状の側壁に底面を設けた容器であり、側壁および底面に多数の小さな孔26が設けられる。上端に鍔46が設けられ、内側フィルタ44の側壁の上部に内側フィルタ44の孔26より大きな孔48が形成される。
【0040】
図5に示すように、内側フィルタ44の外径Diは外側フィルタ14の内径Deより小さく、内側フィルタ44は外側フィルタ14の中に入る。そして、内側フィルタ44の高さHjは、外側フィルタ14の高さHcに固定プレート36の厚みHpを足した高さ以下である。このため、固定プレート36を取り付けた外側フィルタ14の中に内側フィルタ44を入れると、固定プレート36の上に内側フィルタ44の鍔46が載る。つまり、固定プレート36と内側フィルタ44の鍔46との間に隙間ができない。
【0041】
雨水浸透ます16のごみ除去用ます18内に固体プレート36が取り付けられた外側フィルタを入れて、固体プレート36をごみ除去用ます18の側壁に設けられた段差18aに引っ掛かけ、外側フィルタ14の底面をごみ除去用ますの底面に当接させる。次に、固定プレート36の孔38から外側フィルタ14内に内側フィルタ44を入れて、ごみ除去用ます18の蓋40を閉める。
【0042】
固形物を含んだ雨水は蓋40の孔42からごみ除去用ます18の中へ流入して、内側フィルタ44内へ流れ込む。固形物は内側フィルタ44で除去されて、雨水は内側フィルタ44および外側フィルタ14を通過する。
【0043】
そして、内側フィルタ44に固形物が溜まると、内側フィルタ44の上部に設けられた大き目の孔48、つまりオバーフロー流路を通って外側フィルタ14へ流入する。外側フィルタ14では内側フィルタ44と同様に、固形物は外側フィルタ14で除去され、外側フィルタ14と内側フィルタ44との間に溜められて、雨水は外側フィルタ14を通過して、浸透ますなどで地中に浸透する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の一実施例の雨水浸透ます用フィルタを雨水浸透ますに取り付けた状態を示す断面図である。
【図2】固定プレート、内側フィルタおよび外側フィルタを示す斜視図である。
【図3】雨水浸透ます用フィルタを雨水ます内に入れた状態を示す上面の平面図である。
【図4】固定プレート、内側フィルタおよび外側フィルタを重ねて雨水浸透ます用フィルタを形成した状態を示す斜視図である。
【図5】この発明の他の実施例の雨水浸透ます用フィルタを雨水ますに取り付けた状態を示す断面図である。
【図6】図5実施例の雨水浸透ます用フィルタに用いられる内側フィルタを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
10…雨水浸透ます用フィルタ
12…内側フィルタ
14…外側フィルタ
16…雨水浸透ます
26…内側フィルタの孔
30…外側フィルタの孔
34、48…オバーフロー流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側フィルタの中に少なくとも1つの内側フィルタを重ねた雨水浸透ます用フィルタであって、
前記内側フィルタの上部に前記外側フィルタへのオバーフロー流路を形成した、雨水浸透ます用フィルタ。
【請求項2】
前記外側フィルタの孔の大きさは前記内側フィルタの孔の大きさより小さい、請求項1記載の雨水浸透ます用フィルタ。
【請求項3】
請求項1または2記載の雨水浸透ます用フィルタを設けた、雨水浸透ます。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−124990(P2006−124990A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312515(P2004−312515)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【Fターム(参考)】