説明

雨水貯留型舗装用ブロック

【課題】雨水の浸透効率の低下を防ぎ、かつ不陸やガタつきを抑制できる雨水貯留型舗装用ブロックを提供する。
【解決手段】一方の嵌合側面3には凸状部11が、他方の嵌合側面4には凹溝12が形成され、一方の非嵌合側面5には水平目地保持突条21と垂直目地保持突条22が形成され、垂直目地保持突条22は水平目地保持突条21に比べて高く、敷設状態において目地砂充填領域に目地砂Sが充填される。敷設状態において水平目地保持突条21と隣り合う雨水貯留型舗装用ブロックAとの間に隙間oが確保でき、その隙間oから雨水を流して地中に排出できる。敷設状態において、凸状部11が凹溝12に嵌合し、目地砂充填領域に充填された目地砂Sにより目地部における荷重分散性能を高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水貯留型舗装用ブロックに関する。さらに詳しくは、雨水をブロックの内部に貯留する雨水貯留型舗装用ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、舗装用ブロックは、隣り合うブロックの間の目地部に目地砂を充填し、ブロックと目地砂との摩擦を高くし、目地部における荷重分散性能(ブロック表面に作用する車輪などの荷重をブロック相互のかみ合わせにより広い範囲に分散させ、路盤に作用する荷重を低減させる性能)を高めることで、舗装用ブロックの不陸やガタつきを抑制している。
一方、雨水貯留型舗装用ブロックは、保水性を有する材料で形成され、場合によってはさらにブロックの内部に雨水を貯留する空洞が形成されたものである。雨水貯留型舗装用ブロックは、一般的な透水性舗装用ブロックに比べて雨水の貯水量が多いため、集中豪雨や河川の氾濫による舗装面の浸水や水溜まりを緩和できる。
【0003】
一般に、雨水貯留型舗装用ブロックは、ポーラス状のブロック内の空隙に雨水を浸透させてブロックの内部に雨水を貯留した後に地中に排出する他、隣り合うブロックの間の目地に雨水を流してブロックの内部に雨水を貯留した後に、または直接地中に排出する。
そのため、雨水貯留型舗装用ブロックの場合に、目地部に目地砂を充填すると、雨水の浸透効率が低下するという問題がある。また、目地砂にゴミや埃が溜まると、目詰りにより雨水の浸透を妨げるという問題がある。
【0004】
この点、目地砂を使用しないことにより、目地の目詰りによる雨水の浸透効率の低下を防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかし、目地砂を使用しないことから、目地部における荷重分散性能が極端に低く、雨水貯留型舗装用ブロックの不陸やガタつきが生じやすく、ブロックの破損が生じやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−266304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、雨水の浸透効率の低下を防ぎ、かつ不陸やガタつきを抑制できる雨水貯留型舗装用ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の雨水貯留型舗装用ブロックは、表面と、底面と、対向する位置に配置された一対の嵌合側面と、他の対向する位置に配置された一対の非嵌合側面とから、略直方体に形成されたブロックであって、一方の前記嵌合側面には、水平方向に延びる凸状部が形成されており、他方の前記嵌合側面には、前記凸状部が嵌合される凹溝が形成されており、前記一対の非嵌合側面には、水平方向に延びる水平目地保持突条が、前記表面との縁の近傍に形成されており、垂直方向に延びる一対の垂直目地保持突条が、前記一対の嵌合側面との縁から所定間隔を隔てて形成されており、前記一対の垂直目地保持突条は、その突出高さが前記水平目地保持突条の突出高さに比べて高く形成されており、前記非嵌合側面のうち、敷設状態において前記水平目地保持突条と前記一対の垂直目地保持突条とで囲まれた領域は、目地砂が充填されない目地砂非充填領域であり、該目地砂非充填領域以外の領域は、敷設状態において目地砂が充填される目地砂充填領域であることを特徴とする。
第2発明の雨水貯留型舗装用ブロックは、第1発明において、前記水平目地保持突条は、前記表面との縁に沿って形成されていることを特徴とする。
第3発明の雨水貯留型舗装用ブロックは、第1発明において、前記水平目地保持突条は、前記表面との縁から所定間隔を隔てて形成されていることを特徴とする。
第4発明の雨水貯留型舗装用ブロックは、第3発明において、前記水平目地保持突条は、その上面に、突条の峰に向かって下がる傾斜が形成されていることを特徴とする。
第5発明の雨水貯留型舗装用ブロックは、第3発明において、前記水平目地保持突条は、その上面に、中央から両端に向かって下がる傾斜が形成されていることを特徴とする。
第6発明の雨水貯留型舗装用ブロックは、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記表面には、前記非嵌合側面に対して直行し、該非嵌合側面との縁に端部を有する多数の横溝が形成されていることを特徴とする。
第7発明の雨水貯留型舗装用ブロックは、第6発明において、前記非嵌合側面には、前記横溝の端部に連通する多数の縦溝が形成されていることを特徴とする。
第8発明の雨水貯留型舗装用ブロックは、第1、第2、第3、第4、第5、第6または第7発明において、前記目地砂非充填領域に開口を有する空洞部がブロック内部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、垂直目地保持突条はその突出高さが水平目地保持突条の突出高さに比べて高く形成されているので、敷設状態において水平目地保持突条と隣り合う雨水貯留型舗装用ブロックとの間に隙間が確保でき、その隙間から雨水を流して目地砂非充填領域を通して地中に排出することができる。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。また、敷設状態において、嵌合側面を対向させて配置される雨水貯留型舗装用ブロック同士は、一方の凸状部が他方の凹溝に嵌合して目地部における荷重分散性能が高められ、非嵌合側面を対向させて配置される雨水貯留型舗装用ブロック同士は、目地砂充填領域に充填された目地砂により目地部における荷重分散性能を高められる。そのため、雨水貯留型舗装用ブロックの不陸やガタつきを抑制できる。
第2発明によれば、水平目地保持突条は表面との縁に沿って形成されているので、水平目地保持突条と隣り合う雨水貯留型舗装用ブロックとの間の隙間に目地砂が充填されず、非嵌合側面が対向する目地に、ゴミや埃が溜まることがない。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。
第3発明によれば、水平目地保持突条は表面との縁から所定間隔を隔てて形成されているので、水平目地保持突条の上方に充填される目地砂の量が少なくなる。そのため、ゴミや埃が目地砂の隙間に入って目地が目詰りすることが抑制される。また、目地が目詰まりした場合であっても、ゴミや埃は自然に、あるいは洗浄で簡単に除去することができる。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。
第4発明によれば、水平目地保持突条はその上面に突条の峰に向かって下がる傾斜が形成されているので、ゴミや埃はその傾斜により下方へ落下し、水平目地保持突条の上方に充填された目地砂にゴミや埃が溜まりにくい。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。
第5発明によれば、水平目地保持突条はその上面に中央から両端に向かって下がる傾斜が形成されているので、ゴミや埃はその傾斜により下方へ落下し、水平目地保持突条の上方に充填された目地砂にゴミや埃が溜まりにくい。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。
第6発明によれば、表面に非嵌合側面との縁に端部を有する多数の横溝が形成されているので、表面に降った雨水はその横溝により非嵌合側面まで導かれ、非嵌合側面が対向する目地に雨水を流して地中に排出することができる。そのため、雨水の浸透効率を高くすることができる。また、横溝で形成される凹凸が滑り止めとなり、雨天時においても歩行や走行の安全を確保できる。
第7発明によれば、表面に形成された横溝の端部に連通する多数の縦溝が非嵌合側面に形成されているので、横溝により非嵌合側面まで導かれた雨水は、縦溝により非嵌合側面が対向する目地の内部に導かれやすくなる。そのため、雨水の浸透効率を高くすることができる。
第8発明によれば、空洞部がブロック内部に形成されているので、その空洞部に雨水を一時貯留した後に地中に排出することで、集中豪雨や河川の氾濫による舗装面の浸水を緩和できる。また、空洞部は目地砂非充填領域に開口を有するので、敷設時に目地砂が空洞部に入り込むことを防止できる。そのため、空洞部の貯水性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックの正面図である。
【図2】同雨水貯留型舗装用ブロックの右側面図である。
【図3】同雨水貯留型舗装用ブロックの左側面図である。
【図4】同雨水貯留型舗装用ブロックの平面図である。
【図5】同雨水貯留型舗装用ブロックの背面図である。
【図6】(a)図は図3におけるa部分の拡大図、(b)図は図4におけるb部分の拡大図である。
【図7】(a)図は同雨水貯留型舗装用ブロックの敷設状態の斜視図であり、(b)図は(a)図におけるb矢視図である。
【図8】(a)図は同雨水貯留型舗装用ブロックの敷設状態の正面図、(b)図は(a)図におけるc部分の拡大図である。
【図9】同雨水貯留型舗装用ブロックの敷設状態の正面図である。
【図10】(a)図は図9におけるXa-Xa線矢視断面図、(b)図は(a)図におけるd部分の拡大図である。
【図11】(a)図は同雨水貯留型舗装用ブロックの斜視図、(b)図は(a)図におけるe部分の拡大図である。
【図12】(a)図は他の実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックの斜視図、(b)図は(a)図におけるf部分の拡大図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックの正面図である。
【図14】(a)図は同雨水貯留型舗装用ブロックの敷設状態の側面図、(b)図は(a)図におけるg部分の拡大図である。
【図15】同雨水貯留型舗装用ブロックの敷設状態の正面図である。
【図16】(a)図は他の実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックの敷設状態の側面図、(b)図は(a)図におけるi部分の拡大図である。
【図17】(a)図はさらに他の実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックの敷設状態の正面、(b)図は(a)図におけるj部分の拡大図である。
【図18】さらに他の実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックの敷設状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックAの形状について説明する。
図1から図5に示すように、雨水貯留型舗装用ブロックAは、敷設状態において舗装面となる表面1と、底面2と、表面1および底面2の間の4つの側面3、4、5、6とから、略直方体に形成されたブロックである。
以下、説明のため、側面3、4、5、6のうち、対向する位置に配置された一対の側面を嵌合側面3、4と称し、他の対向する位置に配置された一対の側面を非嵌合側面5、6と称する。また、本明細書において水平、垂直は、雨水貯留型舗装用ブロックAを底面2を水平面に載置した状態における水平、垂直をいう。
【0011】
一対の嵌合側面3、4のうち一方の嵌合側面3には、水平方向に延びる凸状部11、11が水平方向の全長に渡って形成されており(図2参照)、他方の嵌合側面4には、水平方向に延びる凹溝12、12が水平方向の全長に渡って形成されている(図3参照)。これら凸状部11および凹溝12は、敷設状態において隣り合う雨水貯留型舗装用ブロックA、Aのうち一方の雨水貯留型舗装用ブロックAの嵌合側面3に形成された凸状部11が、他方の雨水貯留型舗装用ブロックAの嵌合側面4に形成された凹溝12に嵌合するようになっている。
なお、本実施形態において凸状部11、11および凹溝12、12は2条ずつ形成されているが、1条のみ形成されてもよいし、3条以上形成されてもよい。
【0012】
図1に示すように、一対の非嵌合側面5、6のうち一方の非嵌合側面5には、水平方向に延びる水平目地保持突条21と、垂直方向に延びる一対の垂直目地保持突条22、22が形成されている。水平目地保持突条21は、非嵌合側面5と表面1とが接する縁に沿って、水平方向の全長に渡って形成されている。そのため、水平目地保持突条21の上面は表面1と一体となっている。一方、垂直目地保持突条22、22は、非嵌合側面5と嵌合側面3、4とが接する縁から内側に所定間隔を隔てて形成されている。また、垂直目地保持突条22、22は、水平目地保持突条21の直下から、底面2に至るまで形成されている。
【0013】
図6に示すように、水平目地保持突条21の断面は略台形であり、垂直目地保持突条22の断面は略三角形である。また、垂直目地保持突条22は、その突出高さが水平目地保持突条21の突出高さに比べて高く形成されている。水平目地保持突条21および垂直目地保持突条22の突出高さは任意に設定されるが、例えば、水平目地保持突条21の突出高さは約2mm、垂直目地保持突条22の突出高さは約4mmに設定される。この場合、突出高さの差hは約2mmである。
このように垂直目地保持突条22が水平目地保持突条21に比べて高く形成されることによる効果は後に詳説する。
【0014】
図5に示すように、他方の非嵌合側面6は、水平目地保持突条21および垂直目地保持突条22が形成されておらず、平坦となっている。
【0015】
図4に示すように、表面1には、非嵌合側面5、6に対して直行する多数の横溝31が形成されており、この多数の横溝31により表面1に凹凸が形成されている。また、横溝31は、その両端が表面1と非嵌合側面5、6とが接する縁まで達するように、表面1の全面に渡って形成されている。
【0016】
図1に示すように、雨水貯留型舗装用ブロックAには、その内部に空洞部40、40が形成されている。この空洞部40、40は、一対の非嵌合側面5、6を貫通するように形成されており、非嵌合側面5、6に開口を有している。ここで、非嵌合側面5側の開口は、水平目地保持突条21および垂直目地保持突条22、22で囲まれた領域に位置している。
【0017】
つぎに、雨水貯留型舗装用ブロックAの敷設方法について説明する。
雨水貯留型舗装用ブロックAは、例えば、歩道や公園などの歩行者用道路や、管理車両が乗り入れする舗装箇所、あるいは普通車程度の車両が乗入れする歩道や駐車場に敷設される。
図7に示すように、まず、敷設面に砂または不織布を敷いてフィルター層Fを形成し、そのフィルター層Fの上に砕石を敷いて砕石路盤Rを形成し、その砕石路盤Rの上に透水シートWを敷いて、さらにその上にサンドクッション層Cを形成する。
つぎに、サンドクッション層Cの上に、複数の雨水貯留型舗装用ブロックAを千鳥状に配置する。この際、ある一の雨水貯留型舗装用ブロックAの非嵌合側面5が、他の一の雨水貯留型舗装用ブロックAの非嵌合側面6と対向するよう配置され、列が形成される。また、列同士は、ある一の雨水貯留型舗装用ブロックAの嵌合側面3が、隣接する2つの雨水貯留型舗装用ブロックAの嵌合側面4と対向するよう配置される。
【0018】
つぎに、隣り合う雨水貯留型舗装用ブロックA、Aの間の目地部に目地砂を充填する。
このように、雨水貯留型舗装用ブロックAは、通常のインターロッキングブロック工事と同様の方法で敷設されるので、専用機械や特殊作業員が必要なく、施工が容易で工期が短い。
【0019】
図8(a)に示すように、敷設状態においては、隣り合う雨水貯留型舗装用ブロックA、Aのうち一方の雨水貯留型舗装用ブロックAの嵌合側面3に形成された凸状部11が、他方の雨水貯留型舗装用ブロックAの嵌合側面4に形成された凹溝12に嵌合して、目地部における荷重分散性能が高められている。さらに、図8(b)に示すように、嵌合側面3、4が対向する目地部には、凸状部11および凹溝12より上方に目地砂Sが充填されており、嵌合側面3、4と目地砂Sとの摩擦を高くし、目地部における荷重分散性能が高められている。そのため、雨水貯留型舗装用ブロックAの不陸やガタつきを抑制できる。
【0020】
また、図9に示すように、非嵌合側面5、6が対向する目地部にも目地砂Sが充填される。
ここで、前述のごとく、垂直目地保持突条22は水平目地保持突条21に比べて高く形成されているので、敷設状態において水平目地保持突条21と隣り合う雨水貯留型舗装用ブロックAの非嵌合側面6との間には、突出高さの差hの分だけ隙間oが確保される(図10参照)。
【0021】
そして、雨水貯留型舗装用ブロックAの敷設時には、この隙間oから目地砂Sが充填されるため、水平目地保持突条21と一対の垂直目地保持突条22、22とで囲まれた領域には、その下部にしか目地砂Sが充填されず、一対の垂直目地保持突条22、22の外側の領域には、その全部に目地砂Sが充填されるようになる。以下、水平目地保持突条21と一対の垂直目地保持突条22、22とで囲まれた領域を目地砂非充填領域と称し、それ以外の領域を目地砂充填領域と称する。
なお、特許請求の範囲に記載の目地砂非充填領域は、基本的には目地砂Sが充填されないが、一部に目地砂Sが充填される場合も含む概念である。
【0022】
ここで、空洞部40は、目地砂Sが充填されない目地砂非充填領域に開口を有するので、敷設時に目地砂Sが空洞部40に入り込むことを防止できる。そのため、空洞部40の貯水性能を確保できる。
【0023】
このように、非嵌合側面5、6を対向させて配置される雨水貯留型舗装用ブロックA、A同士も、目地砂充填領域および目地砂非充填領域の下部に充填された目地砂Sにより目地部における荷重分散性能を高められる。そのため、雨水貯留型舗装用ブロックAの不陸やガタつきを抑制できる。
【0024】
図11に示すように、以上の様に敷設された雨水貯留型舗装用ブロックAに雨が降ると、その雨水は、表面1に形成された横溝31により非嵌合側面5、6まで導かれ、非嵌合側面5、6が対向する目地に雨水を流すことができる。
ここで、横溝31に非嵌合側面5、6の両方または片方に向かって下がる傾斜を設ければ、雨水をスムーズに流すことができるので好ましい。
【0025】
そして、図10に示すように、非嵌合側面5、6が対向する目地に確保された隙間oから、雨水を下方に流して目地砂非充填領域を通して地中に排出することができる。
ここで、隙間oには目地砂が充填されないため、非嵌合側面5、6が対向する目地に、ゴミや埃が溜まることがない。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。
【0026】
なお、図12に示すように、水平目地保持突条21が形成されていない方の非嵌合側面6に、横溝31の端部に連通する多数の縦溝32を形成してもよい。また、水平目地保持突条21に、横溝31の端部に連通する多数の縦溝32を形成してもよい。また、非嵌合側面6および水平目地保持突条21の両方に、横溝31の端部に連通する多数の縦溝32を形成してもよい。
横溝31により非嵌合側面5、6まで導かれた雨水は、縦溝32により非嵌合側面5、6が対向する目地の内部に導かれやすくなる。そのため、雨水の浸透効率を高くすることができる。
【0027】
また、雨水貯留型舗装用ブロックAは、ポーラスコンクリートなど、透水性を有する材料で形成される。そのため、雨水は目地から排出される以外にも、コンクリートの空隙を浸透して地中に排出される。
【0028】
雨水の量が多い場合には、非嵌合側面5、6が対向する目地を通して、あるいはコンクリートの空隙を通して雨水が空洞部40に貯留される。そして、一時的に雨水を空洞部40に貯留した後に地中に排出される。このように、空洞部40に雨水を貯留することで、集中豪雨や河川の氾濫による舗装面の浸水や水溜まりを緩和できる。
【0029】
また、雨水貯留型舗装用ブロックAを保水性の高い材料で形成すれば、空洞部40に貯留した雨水を徐々に蒸発させ、その気化熱により舗装面の温度を低下させることができる。保水性の高い材料としては、微細な空隙を有し吸水性の高い軽石などが用いられる。または、雨水が雨水貯留型舗装用ブロックAの内部に溜まるように、単一粒度の材料を用いてその材料の間隔が小さくなるような配合としたコンクリートなどが用いられる。
さらに、空洞部40に保水材料を埋め込んでおけば、空洞部40の貯水を長時間保持できるので、舗装面の温度低減効果を長時間持続させることができる。
【0030】
なお、表面1には横溝31により凹凸が形成されており、その凹凸が滑り止めとなり、雨天時においても歩行や走行の安全を確保できる。
ここで、横溝31の幅寸法を、嵌合側面3、4が対向する目地の幅寸法と同じにすれば、車椅子などの走行時に、目地部で不快な振動が発生しにくくなるので好ましい。
【0031】
なお、雨水貯留型舗装用ブロックAの敷設において、雨水貯留型舗装用ブロックAを非嵌合側面5、6が対向するように配置して形成された列の方向に勾配がある場合、その勾配の下端部に着脱可能なメンテナンス用のブロックを設置することが好ましい。
このように敷設すれば、空洞40の内部に堆積したゴミや埃を取り除くことが可能となり、定期的にメンテナンスすることで雨水貯留機能を長期間において保つことができる。
【0032】
また、空洞部40は、一対の非嵌合側面5、6の両方に開口を有するように形成される以外にも、非嵌合側面5、6のいずれか一方に開口を有するように形成されてもよい。
例えば、雨水貯留型舗装用ブロックAの列方向の勾配が急である場合、空洞部40が貫通穴であると、空洞部40に排出された雨水は、勾配の下端部に配置された雨水貯留型舗装用ブロックAの空洞部40に集まる。しかし、非嵌合側面5、6のいずれか一方が塞がっていれば、雨水貯留型舗装用ブロックAの一つ一つに雨水が貯留でき、貯留の効率がよくなる。
【0033】
(第2実施形態)
図13に示すように、本発明の第2実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックBは、第1実施形態に係る雨水貯留型舗装用ブロックAにおいて、水平目地保持突条21および垂直目地保持突条22、22の形状、配置が異なるものである。
具体的には、水平目地保持突条21は、非嵌合側面5と表面1とが接する縁から下方に所定間隔を隔てて、水平方向に形成されている。水平目地保持突条21の両端は、非嵌合側面5と嵌合側面3、4とが接する縁までは延びておらず、その縁から所定間隔を隔てた所に位置している。また、垂直目地保持突条22、22は、非嵌合側面5と嵌合側面3、4とが接する縁から内側に所定間隔を隔てて、垂直方向に形成されている。そして、垂直目地保持突条22、22は、水平目地保持突条21の両端から、底面2に至るまで形成されている。
なお、水平目地保持突条21の、非嵌合側面5と表面1とが接する縁からの距離は、任意に設定されるが、例えば約5mmである。
【0034】
図14に示すように、水平目地保持突条21の断面は矩形である。また、垂直目地保持突条22は、その突出高さが水平目地保持突条21の突出高さに比べて高く形成されている。水平目地保持突条21および垂直目地保持突条22の突出高さは任意に設定されるが、例えば、水平目地保持突条21の突出高さは約3mm、垂直目地保持突条22の突出高さは約4mmに設定される。この場合、突出高さの差は約1mmである。
【0035】
そして、垂直目地保持突条22は水平目地保持突条21に比べて高く形成されているので、敷設状態において水平目地保持突条21と隣り合う雨水貯留型舗装用ブロックAの非嵌合側面6との間には、突出高さの差の分だけ隙間oが確保される。
その余の構成は、雨水貯留型舗装用ブロックAと同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図15に示すように、敷設状態においては、非嵌合側面5、6が対向する目地部に目地砂Sが充填される。この際、水平目地保持突条21と一対の垂直目地保持突条22、22とで囲まれた目地砂非充填領域には目地砂Sが充填されず、水平目地保持突条21および垂直目地保持突条22、22の外側の目地砂充填領域には目地砂Sが充填される。すなわち、本実施形態では、水平目地保持突条21の上方にも目地砂Sが充填される。
【0037】
ここで、充填する目地砂Sとして、粒径が隙間oより大きく、目地幅より小さいもの、好ましくは目地幅の1/3より小さいものを採用することで、上記のように目地砂充填領域のみに目地砂Sを充填することができる。例えば、隙間oが1mmであり、目地幅が4mmの場合には、粒径が1mm〜1.3mmの目地砂Sが採用される。
【0038】
また、水平目地保持突条21の両端は、非嵌合側面5と嵌合側面3、4とが接する縁から所定間隔を隔てた所に位置している。そのため、その隙間から目地砂Sが落下し垂直目地保持突条22、22の外側にも充填できる。
そして、垂直目地保持突条22、22は底面2に至るまで形成されているので、目地砂非充填領域への目地砂Sの進入を抑えることができる。
【0039】
また、空洞部40は、目地砂Sが充填されない目地砂非充填領域に開口を有するので、敷設時に目地砂Sが空洞部40に入り込むことを防止できる。そのため、空洞部40の貯水性能を確保できる。
【0040】
以上のように、非嵌合側面5、6を対向させて配置される雨水貯留型舗装用ブロックB、B同士も、目地砂充填領域に充填された目地砂Sにより目地部における荷重分散性能を高められる。そのため、雨水貯留型舗装用ブロックBの不陸やガタつきを抑制できる。
【0041】
そして、敷設された雨水貯留型舗装用ブロックBに雨が降ると、非嵌合側面5、6が対向する目地に確保された隙間oから、雨水を下方に流して目地砂非充填領域を通して地中に排出することができる。
【0042】
水平目地保持突条21の上方に充填された目地砂Sの量は少ないので、ゴミや埃が目地砂Sの隙間に入って目地が目詰りすることが抑制される。また、目地が目詰まりした場合であっても、わずかなゴミや埃は自然に洗い流される。また、ゴミや埃を高圧洗浄などで簡単に除去することができる。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。
【0043】
なお、図16に示すように、水平目地保持突条21の断面を略三角形としてもよい。水平目地保持突条21の断面を略三角形とすることにより、水平目地保持突条21の上面に、突条の峰に向かって下がる傾斜が形成される。
このような形状とすることで、目地砂Sの隙間に入ったゴミや埃が、水平目地保持突条21の上面の傾斜により隙間oから下方へ落下しやすくなる。そのため、水平目地保持突条21の上方に充填された目地砂Sにゴミや埃が溜まりにくい。また、目地が目詰まりした場合であっても、ゴミや埃は自然に、あるいは洗浄で簡単に除去することができる。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。
【0044】
また、図17に示すように、水平目地保持突条21の上面に、中央から両端に向かって下がる傾斜を形成してもよい。
このような形状とすることで、目地砂Sの隙間に入ったゴミや埃が、水平目地保持突条21の上面の傾斜により、その両端から下方へ落下しやすくなる。そのため、水平目地保持突条21の上方に充填された目地砂Sにゴミや埃が溜まりにくい。また、目地が目詰まりした場合であっても、ゴミや埃は自然に、あるいは洗浄で簡単に除去することができる。そのため、雨水の浸透効率の低下を防ぐことができる。
【0045】
また、図18に示すように、非嵌合側面5の下方の垂直目地保持突条22、22の間に水平方向に延びる下部突条23を形成してもよい。
下部突条23を設けることにより、雨水貯留型舗装用ブロックBに大量の雨水が浸透した場合でも、敷設面に敷かれたサンドクッション層Cの砂が、目地砂非充填領域や空洞部40に上昇してくることを防止できる。
【0046】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、ブロックの内部に空洞部40、40を設けたが、この空洞部40を設けない実施形態としてもよい。この場合でも、雨水貯留型舗装用ブロックを保水性を有する材料で形成することにより、雨水の貯水性能を得ることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、水平目地保持突条21と一対の垂直目地保持突条22、22は、一方の非嵌合側面5に形成されているが、これらの内の一部を他方の非嵌合側面6に形成してもよい。例えば、一方の非嵌合側面5に水平目地保持突条21を形成し、他方の非嵌合側面6に一対の垂直目地保持突条22、22を形成してもよいし、一方の非嵌合側面5に一の垂直目地保持突条22を形成し、他方の非嵌合側面6に他の一の垂直目地保持突条22を形成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 表面
2 底面
3、4 嵌合側面
5、6 非嵌合側面
11 凸状部
12 凹溝
21 水平目地保持突条
22 垂直目地保持突条
31 横溝
40 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、底面と、対向する位置に配置された一対の嵌合側面と、他の対向する位置に配置された一対の非嵌合側面とから、略直方体に形成されたブロックであって、
一方の前記嵌合側面には、水平方向に延びる凸状部が形成されており、
他方の前記嵌合側面には、前記凸状部が嵌合される凹溝が形成されており、
前記一対の非嵌合側面には、
水平方向に延びる水平目地保持突条が、前記表面との縁の近傍に形成されており、
垂直方向に延びる一対の垂直目地保持突条が、前記一対の嵌合側面との縁から所定間隔を隔てて形成されており、
前記一対の垂直目地保持突条は、その突出高さが前記水平目地保持突条の突出高さに比べて高く形成されており、
前記非嵌合側面のうち、敷設状態において前記水平目地保持突条と前記一対の垂直目地保持突条とで囲まれた領域は、目地砂が充填されない目地砂非充填領域であり、該目地砂非充填領域以外の領域は、敷設状態において目地砂が充填される目地砂充填領域である
ことを特徴とする雨水貯留型舗装用ブロック。
【請求項2】
前記水平目地保持突条は、前記表面との縁に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の雨水貯留型舗装用ブロック。
【請求項3】
前記水平目地保持突条は、前記表面との縁から所定間隔を隔てて形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の雨水貯留型舗装用ブロック。
【請求項4】
前記水平目地保持突条は、その上面に、突条の峰に向かって下がる傾斜が形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の雨水貯留型舗装用ブロック。
【請求項5】
前記水平目地保持突条は、その上面に、中央から両端に向かって下がる傾斜が形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の雨水貯留型舗装用ブロック。
【請求項6】
前記表面には、前記非嵌合側面に対して直行し、該非嵌合側面との縁に端部を有する多数の横溝が形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の雨水貯留型舗装用ブロック。
【請求項7】
前記非嵌合側面には、前記横溝の端部に連通する多数の縦溝が形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の雨水貯留型舗装用ブロック。
【請求項8】
前記目地砂非充填領域に開口を有する空洞部がブロック内部に形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の雨水貯留型舗装用ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−91974(P2013−91974A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234498(P2011−234498)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【特許番号】特許第4995340号(P4995340)
【特許公報発行日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000230836)日本興業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】