説明

雪の利用方法

【課題】 降雪地(水源地ではなく市街地等)に積もった嵩張る雪を効率的に飲料水,農業用水,工業用水等の水資源として活用する水に変換できるようにする。
【解決手段】 降雪地で水の自然降雨に近い散布形態の散布でシャーベット化させて吸引して収集した雪を包装して網体に収容して海洋に浮遊させて蓄積し、網体を雪パッケージを収容したまま船舶によって利用目的地に曳航する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雪地に積もった雪を飲料水,農業用水,工業用水等の水資源として活用するための雪の利用方法に係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、各種の研究によって水資源の将来的な枯渇が指摘され、水の消費面,供給面の双方における枯渇対策が要求されるようになってきている。水の供給面では、降雪地(水源地ではなく市街地等)に積もった雪が除雪されて捨てられていることに着目して、除雪される雪を水資源として活用することが期待されている。
【0003】
雪を水資源として活用するには、嵩張る雪を効率的に水に変換する雪の取扱い技術の開発が必要になる。
【0004】
従来、雪の取扱い技術としては、例えば、特許文献1〜3に記載のものが知られている。
【0005】
特許文献1,2には、雪の収集,運搬に関する雪の取扱い技術が記載されている。特許文献1は、嵩張る雪をスクリューコンベアにより圧縮して収集,運搬に供する技術である。特許文献2は、嵩張る雪を散水により圧縮して収集,運搬に供する技術である。
【0006】
特許文献3には、雪の蓄積に関する雪の取扱い技術が記載されている。特許文献3は、雪をブロック化して蓄積に供する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開2006−326674号公報
【特許文献2】 実開平5−32424号公報
【特許文献3】 特開2005−201617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3に係る雪の取扱い技術では、雪の取扱いの一部に改良を加えた技術に過ぎず、嵩張る雪を効率的に水に変換する体系的に完成された技術とはいえないという問題点がある。
【0009】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、降雪地に積もった嵩張る雪を効率的に水に変換することのできる雪の利用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明に係る雪の利用方法は、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0011】
即ち、請求項1では、降雪地で収集した雪を包装して海洋に浮遊させて蓄積する。
【0012】
この手段では、雪を包装してブロックパッケージ化させることで運搬等を容易にするとともに、雪がブロックパッケージ化された雪パッケージを海洋に浮遊させることで人間の生活をほとんど阻害しない場所である海洋に蓄積し海洋の熱で雪を融解させて水に変換する。
【0013】
また、請求項2では、請求項1の雪の利用方法において、雪の収集の際に、雪に水を散布してシャーベット化させバキューム手段により吸引して収集することを特徴とする。
【0014】
この手段では、雪を散水でシャーベット化させ流動化させることで、嵩張る雪の容積を縮減させ変形を容易にする。
【0015】
また、請求項3では、請求項2の雪の利用方法において、水の散布は水滴の粒径が1.52mmで水滴の分布である含水量が30g/cm3で実施されることを特徴とする。
【0016】
この手段では、水の散布について水滴の粒径を1.52mmとし含水量を30g/cm3とすることで、自然降雨に近い散布形態が得られて雪の空気層への水の浸入が容易となる。
【0017】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれかの雪の利用方法において、包装された雪からなる雪パッケージは網体に収容されて海洋に浮遊されることを特徴とする。
【0018】
この手段では、雪パッケージが網体に収容されることで、雪パッケージの海洋における散乱が防止される。
【0019】
また、請求項5では、請求項4の雪の利用方法において、網体は雪パッケージを収容したまま船舶によって利用目的地に曳航されることを特徴とする。
【0020】
この手段では、網体を雪パッケージを収容したまま船舶で利用目的地に曳航することで、雪または水を蓄積地である海洋を利用して運搬することができる。
【0021】
また、請求項6では、請求項4または5の雪の利用方法において、雪パッケージを海洋から船積してタンカーのバラスト水として利用することを特徴とする。
【0022】
この手段では、
融解された水をタンカーのバラスト水として利用することで、海洋に蓄積されている雪パッケージを移動をともなわずにそのまま利用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る雪の利用方法は、雪を包装してブロックパッケージ化させることで運搬等を容易にするとともに、雪がブロックパッケージ化された雪パッケージを海洋に浮遊させることで人間の生活をほとんど阻害しない場所である海洋に蓄積し海洋の熱で雪を融解させて水に変換するため、降雪地に積もった嵩張る雪を効率的に水に変換することができる効果がある。
【0024】
さらに、請求項2として、雪を散水でシャーベット化させ流動化させることで、嵩張る雪の容積を縮減させ変形を容易にするため、雪の収集が容易になる効果がある。
【0025】
さらに、請求項3として、水の散布について水滴の粒径を1.52mmとし含水量を30g/cm3とすることで、自然降雨に近い散布形態が得られて雪の空気層への水の浸入が容易となるため、雪のシャーベット化が促進され雪の収集がより容易になるとともに迅速性が得られる効果がある。
【0026】
さらに、請求項4として、雪パッケージが網体に収容されることで、雪パッケージの海洋における散乱が防止されるため、変換された水の散乱が防止されて水を効率的に回収することができる効果がある。
【0027】
さらに、請求項5として、網体を雪パッケージを収容したまま船舶で利用目的地に曳航することで、雪または水を蓄積地である海洋を利用して運搬することができるため、水資源を容易に利用目的地に供給することができる効果がある。
【0028】
さらに、請求項6として、融解された水をタンカーのバラスト水として利用することで、海洋に蓄積されている雪パッケージを移動をともなわずにそのまま利用することができるため、運搬費用等の面で経済的な利用を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 本発明に係る雪の利用方法を実施するための形態の雪の取扱いの作業ブロック図である。
【図2】 図1に続く水の利用形態のブロック図である。
【図3】 図1の雪の収集,包装に利用される機械設備例を示す側面図である。
【図4】 図1の雪パッケージの仮蓄積例の側面断面図である。
【図5】 図1の雪パッケージの運搬例の側面断面図である。
【図6】 図1の雪パッケージの蓄積例の側面図である。
【図7】 図1の蓄積された雪パッケージの移動例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る雪の利用方法を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
この形態は、図1に示すように、降雪地に積もった雪Sを収集,蓄積し、雪Sから融解した水wを水資源として供給する。
【0032】
雪Sを収集に際しては、図3に示すように、収集包装作業車1が使用される。
【0033】
収集包装作業車1は、車体前半部が雪Sを収集する機能を備えた収集部11とされ、車体後半部が雪Sを包装する包装部12とされている。
【0034】
収集包装作業車1の収集部11は、水タンク11aが設けられてノズル11bから前方に水を散布して積もっている雪Sをシャーベット化(雪,水,氷が混在した状態)させ、シャーベット化され容積が縮減され変形が容易になった雪Sをバキューム機構(図示せず)に接続された吸入口11cから吸入して収集する。なお、吸入口11cから吸入した雪Sについては、一部を加熱して融解させ水タンク11aに供給してリサイクルするようにするのが効率的である。ノズル11bからの水の散布は、水滴の粒径が1.52mmで水滴の分布である含水量が30g/cm3となるように調整して、自然降雨に近い散布形態とし雪Sの空気層への水の浸入を容易にし雪Sのシャーベット化を促進するようにする。この結果、雪Sの収集が容易になるとともに迅速性が得られる。なお、積雪状態については、密度からみて、0.05〜0.15g/cm3,0.15〜0.50g/cm3,0.30〜0/58g/cm3に分類される。従って、積雪の密度が高い場合に降雨量が多くなり積雪の密度が低い場合に降雨量が少なくなるように、水の散布を調整するのが好ましい。この水の散布を調整は、例えば、水を散布するノズルの口径や水を供給するポンプの駆動を可変制御するドライバに対して、積雪の密度を検出する密度センサからの検出信号に基づいてコントローラに記憶させたドライバ制御プログラムを選択することで実行される。
【0035】
収集包装作業車1の包装部12は、収集部11に収集されたシャーベット状の雪Sを防水性(外部に水が漏れない性状)の包装袋2で包装する。包装された雪パッケージPは、容積が0.5〜1.0m3で密度が0.9〜1.0Kg/m3で重量が450〜1000Kg程度とするのが好ましい。なお、雪パッケージPについては、−5℃に冷凍してシャーベット状の雪Sを氷,雪氷水とすると移動等の取扱いが容易になる。この冷凍は、例えば、冷凍機を可変駆動するドライバに対して、雪パッケージPの温度を検出する温度センサからの検出信号に基づいてコントローラに記憶されたドライバ制御プログラムを選択することで実行される。
【0036】
雪パッケージPは、図4に示すように、降雪地の市街地等での除雪作業にともない、地面Eに積層して仮蓄積される。
【0037】
仮蓄積では、積層された雪パッケージPを断熱性のシート3で包んで集合体としておくのが好ましい。
【0038】
仮蓄積された雪パッケージPの集合体は、図5に示すように、適宜トラックTに積載されて港湾等に運搬される。
【0039】
港湾等に運搬された雪パッケージPの集合体は、図6に示すように、シート3が外されて海洋Oに投入され浮遊される状態で本蓄積される。
【0040】
海洋Oに浮遊された雪パッケージPについては、散乱を防止するため、漁業用の袋網等の網体4に収容される。網体4には、沈降を防止するための浮体5が取付けられる。
【0041】
雪パッケージPの蓄積は、海洋Oを利用しているため、人間の生活をほとんど阻害しない。また、雪パッケージPに内蔵されている雪Sは、海洋(海水)Sの熱で緩慢に融解されて水Wになる。従って、雪Sの融解のため特別なエネルギが不要になる。また、冬期では、短時間で雪Sが完全に融解されて水Wが劣化してしまうのを防止することができる。なお、温度センサ等に雪Sの融解状態を検出する手段を備えて、コントローラで移動を促す警報を発信する等の管理を行うのが好ましい。
【0042】
この結果、包装袋2に小分けされているものの網体4に集合されている水Wを揚陸して飲料水,農業用水,工業用水等の水資源として供給することができる。特に、水Wが海洋Oで供給されているため、揚陸せずにそのまま船積してタンカーのバラスト水として利用すると便利である。また、タンカーのバラスト水として利用した場合、基本的に水Wが清浄であることから、原油積込み地でバラスト水を飲料水,農業用水,工業用水等の水資源として供給することができる。
【0043】
なお、蓄積されている雪パッケージPについては、図7に示すように、網体4に鋭角な水切板6を取付けて船舶Bで曳航すると、ある程度任意の利用目的地に簡単に移動させることができる。
【0044】
従って、この形態によると、降雪地に積もった嵩張る雪を効率的に水に変換することができる。
【0045】
以上、図示した形態の外に、雪Sの収集について、現状のシャーベット化しない除雪作業を導入して、雪Sを包装,蓄積することも可能である。ただし、この形態の場合、包装に際して雪Sを圧縮するのがこのましい。
【0046】
さらに、雪パッケージPを円筒形(ドラム缶形)とすることも可能である。この形態によると、転動移動が可能になって移動が容易であるとともに、海洋Oの波で無用に揺動されなくなる利点が生ずる。
【符号の説明】
【0047】
1 収集包装作業車
2 包装袋
4 網体
O 海洋
P 雪パッケージ
S 雪
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
降雪地で収集した雪を包装して海洋に浮遊させて蓄積する雪の利用方法。
【請求項2】
請求項1の雪の利用方法において、雪の収集の際に、雪に水を散布してシャーベット化させバキューム手段により吸引して収集することを特徴とする雪の利用方法。
【請求項3】
請求項2の雪の利用方法において、水の散布は水滴の粒径が1.52mmで水滴の分布である含水量が30g/cm3で実施されることを特徴とする雪の利用方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの雪の利用方法において、包装された雪からなる雪パッケージは網体に収容されて海洋に浮遊されることを特徴とする雪の利用方法。
【請求項5】
請求項4の雪の利用方法において、網体は雪パッケージを収容したまま船舶によって利用目的地に曳航されることを特徴とする雪の利用方法。
【請求項6】
請求項4または5の雪の利用方法において、雪パッケージを海洋から船積してタンカーのバラスト水として利用することを特徴とする雪の利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−256687(P2011−256687A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144255(P2010−144255)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(599024274)アース建設コンサルタント株式会社 (7)
【出願人】(500263415)アースアイプラッツ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】