説明

雪吊り具とその吊り紐固定具

【課題】 雪吊り作業に用いる吊り紐の係止が簡易で、該作業が能率的かつ省力的となる雪吊り具と該雪吊り具用吊り紐固定具を提供すること。
【解決手段】 支柱6に嵌着される円筒状の嵌着体1の頂部に外郭円形の座盤2を設けるとともに、周面の適所に押しボルト1bを螺着し、座盤2の周縁に所要高さで周設される円環体3には係止溝3aが所要数凹設され、座盤2上には各態様の吊り紐固定具4が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庭木等の樹木の枝が雪の重みで折れないように枝を吊り紐で支える作業、いわゆる雪吊り作業に用いる雪吊り具と、その細部である吊り紐固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から提案されている雪吊り技術は種々あるが、特に樹木に沿わせて立設される支柱の頂部或いは胴部に取着されて吊り紐を固定する金具についての先行技術は、特開平8−84536号公報(特許文献1)、特開2001−37354号公報(特許文献2)、登録実用新案第3031305号(特許文献3)、及び登録実用新案第3108340号(特許文献4)で提案されている。
特許文献1における技術は、支柱20の頂部に固定する冠体10の周面に設けられる透孔12や係合用透孔14にロープ材16を引っ掛けるものであり、特許文献2は支柱1の上端部に形成されたリング環5の挿通孔6に吊り紐22を吊下するものであり、特許文献3は支柱1の上端部に設けられた頂冠具14の周上に掛止孔14aが設けられ掛止孔14aに吊紐2を引っ掛けられるものであり、特許文献4は支柱5に遊嵌され適宜な位置でボルトで固定される円筒体の周面に多数の吊り縄挿通孔2を設け吊り縄挿通孔2に吊り縄6を通して吊下するものである。
以下の特許文献1乃至特許文献4に開示された先行技術は、共にエンドレスの孔に吊り紐などの樹枝支持用材が係止されるのでその作業が面倒である。
【特許文献1】特開平8−84536号公報
【特許文献2】特開2001−37354号公報
【特許文献3】登録実用新案第3031305号
【特許文献4】登録実用新案第3108340号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、雪吊り作業に用いる吊り紐の係止が簡易で、該作業が能率的かつ省力的となる雪吊り具と該雪吊り具用吊り紐固定具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に記載した雪吊り具は、支柱に嵌着される円筒状の嵌着体の頂部に外郭円形の座盤を設けるとともに、周面の適所に押しボルトを螺着し、該座盤の周縁に所要高さで周設される円環体には係止溝が所要数凹設され、座盤上には吊り紐固定具が配設されて成る。
また、請求項2に記載した雪吊り具は、請求項1に記載した雪吊り具において、
座盤に嵌着体の内周と連通する同径の貫通孔を開口して成る。
また、請求項3に記載した雪吊り具は、請求項1に記載した雪吊り具において、
座盤の中央を貫通して嵌着体の頂部に向けてネジ孔を配設して成る。
また、請求項4に記載した雪吊り具用吊り紐固定具は、ビス孔を配設した固定板に立設されたスタンドと、該スタンドに両端が揺動自在に係着される所要数の係止環とから成り、座盤上で吊り紐を拘束して成る。
また、請求項5に記載した雪吊り具用吊り紐固定具は、請求項4記載の雪吊り具用吊り紐固定具において、前記係止環が横向き又は縦向きに2系列に配列されて成る。
また、請求項6に記載した雪吊り具用吊り紐固定具は、請求項4又は5記載の雪吊り具用吊り紐固定具において、前記係止環に滑り止めが被覆されて成る。
さらに、請求項7に記載した雪吊り具用吊り紐固定具は、前記座盤の中央に立設されるネジ軸と、該ネジ軸に遊嵌される押さえ盤と、該押さえ盤の上部でネジ軸に外嵌されるコイルスプリングと、該コイルスプリングの上部でネジ軸に螺合される押圧ナットとから成る。
さらに、請求項8に記載した雪吊り具用吊り紐固定具は、正面視矩形枠で底板の上面に部分的に突起を立設したスタンドと、該スタンドの左右の周壁に上下方向で後傾状に各段に係止凹部が横設された溝部と、両溝部に左右の軸部が案内され、軸本体全長に渡って多数条の係止突起が周設される押さえ棒とから成る。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、庭木などの樹木の雪吊り作業において吊り紐の振り分けや係止が簡易であるため、その作業が能率的かつ省力的となり、吊り紐固定具は吊り紐が係止環に挿通係止されるものから挟持されるものなど多種に渡って座盤上に配設され得るから、雪吊り規模の大小に広範に対応できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、円環体に形成される係止溝は、一定の溝幅のものから上端から下端に向けて階段状にその溝幅を狭くするなどで提供される。また、飾り体を接合するネジ孔は嵌着体の頂部に一体に螺設されるものから、頂部に着脱自在に螺着されるネジ軸に螺設されるものなどである。このほか、吊り紐固定具におけるネジ軸は嵌着体に一体に立設されるものから、着脱自在に立設されるものなどが選択される。
【実施例1】
【0007】
本発明を実施例により説明すると、図1、図2に示すように雪吊り具Aは、円筒状で周面の適所にネジ孔1aが貫通螺設されネジ孔1aに押しボルト1bが螺着された嵌着体1と、嵌着体1の上端周縁に周設される輪状の座盤2と、座盤2の周縁に所要高さで周設される円環体3と、円環体3の上端から適宜な分割数で凹設される係止溝3aと、座盤2の上面の適所(本例では4個所)に配設される各種(本例では同一)の吊り紐固定具4とから成る。
ここで吊り紐固定具4を説明すると、ビス孔4aの配設された固定板4bの上面にスタンド4cが立設され、スタンド4cの上方には横向きに2列の係止環4dが揺動自在に係着されて成り、固定板4bが座盤2にビス止めされる。
【0008】
このようにして成る雪吊り具Aは、図11に示すように、庭木などの樹木5に沿わせて立設した支柱6の頂部(場合によっては嵌着体1の内周が座盤2の上面に開口しているから適宜な位置)に嵌着体1の周面がネジ孔1aに螺着された押しボルト1bによって固着され、座盤2に固定された吊り紐固定具4の係止環4dに縄などの吊り紐7が複数本結ばれ、すなわち、本実施例では円環体3に凹設される係止溝3aが12個に対し吊り紐固定具4が4個であるから、最大限で係止環4dに結ばれる吊り紐7は3本で各係止溝3aに振り分けられて垂下され、支えるべき枝8を支持する。
【実施例2】
【0009】
本発明の雪吊り具Bは、図3に示すように、専ら支柱6の頂部に嵌着される先細り円筒状で周面の適所に貫通螺設されたネジ孔1aに押しボルト1bが螺着された嵌着体1と、嵌着体1の頂面に接合される円盤状の座盤2と、座盤2の周縁に所要高さで周設される円環体3と、円環体3の上端から適宜な分割数で凹設される係止溝3aと、座盤2の上面の適所(4個所)に固定板4bのビス孔4aを介して固定される吊り紐固定具4とから成る。
ここで使用される吊り紐固定具4は前記の吊り紐固定具4と同一のものであるがこのものに限定されるものでもなく、後述する各種のタイプで代替され得る。
【0010】
このようにして成る雪吊り具Bは、庭木などの樹木5に添設される支柱6の頂部に嵌着体1が嵌着され、握り頭部1cが回されて押しボルト1bで嵌着体1が支柱6に固着され、その状態で前記と同様の要領で縄などの吊り紐7が吊り紐固定具4の係止環4dに所要数結ばれ、各吊り紐7は適宜に振り分けられ係止溝3aから垂下され必要個所の枝8の支えに向けられる。
【実施例3】
【0011】
次の雪吊り具Cについて説明すると、図4、図5に示すように、専ら支柱6の頂部に嵌着される先細り円筒状で周面の適所にネジ孔1aが貫通螺設され、ネジ孔1aに押しボルト1bが螺着された嵌着体1と、嵌着体1の頂部に接合される輪状の座盤2と、座盤2の周縁に所要高さで周設される円環体3と、円環体3の上端から適宜な分割数で凹設される係止溝3aと、座盤2の中央に開口する口部9から嵌着体1の頂部に向けて螺設したネジ孔10と、ネジ孔10の周縁で座盤2の上面に固定板4bがビス止めされる前記と同様の吊り紐固定具4とから成る。
【0012】
このようにして成る雪吊り具Cは、前記と同様に庭木などの樹木5に添設される支柱6の頂部に嵌着体1の周面が押しボルト1bで固着され、座盤2の中央に螺設されたネジ孔10には適宜な飾り体(図外)が螺着され、吊り紐固定具4の係止環4dに所要本数の吊り紐7が結ばれ、各係止溝3aに振り分けられて垂下され、各吊り紐7は支えるべき枝8を支える。
【実施例4】
【0013】
次の雪吊り具Dについて説明すると、図6、図7に示すように、先細り円筒状で周面の適所にネジ孔1aが貫通螺設され、ネジ孔1aに押しボルト1bが螺着された嵌着体1と、嵌着体1の頂部に接合される輪状の座盤2と、座盤2の周縁に所要高さで周設される円環体3と、円環体3の上端から適宜な分割数で凹設され階段状に末細りの係止溝3aと、座盤2の中央に開口する口部9から嵌着体1の頂部に向けて螺設したネジ孔10と、座盤2の中央に配設される吊り紐固定具11とから成る。
ここで、使用する吊り紐固定具11について説明すると、前記ネジ孔10に螺合して立設されるネジ軸11aと、ネジ軸11aに遊嵌されその外周が円環体3の内周に収められ底面に多数条の突起11bが垂下された押さえ盤11cと、ネジ軸11aに螺着される押圧ナット11dと、ネジ軸11aに外嵌され下端が押さえ盤11cに係着され上端が押圧ナット11dに係着されるコイルスプリング11eとから成る。ネジ軸11aの上部内方には飾り体を結合するためのネジ孔11fが螺設されて成る。
【0014】
このようにして成る雪吊り具Dも前記と同様に、支柱6の頂部に嵌着体1が押しボルト1bで固着され、吊り紐7が階段状の係止溝3aに押し込まれ、その先端がそれぞれの係止溝3aから押さえ盤11cの下に差し込まれる。この状態で押圧ナット11dを回してネジ軸11aにネジ込めば押さえ盤11cはコイルスプリング11eの弾発力で押し下げられ、その下面に垂下された突起11bが吊り紐7に噛み込んで吊り紐7が座盤2に固定される。このように固定された吊り紐7は係止溝3aから垂下されて必要な枝8の吊り上げに供される。
この雪吊り具Dでは、吊り紐7を係止溝3aに押し込んでその先端部を押さえ盤11cで押さえることによって嵌着体1の座盤2に固定できるから、吊り紐7の取り付け固定が極めて簡易となる。
【実施例5】
【0015】
次に座盤2に固定される吊り紐固定具4の他の実施態様について説明すると、図8に示したものは分図(b)に示すように、ビス孔4aの配設された固定板4bに立設されるスタンド4cには下向きに2本の係止環4dが揺動自在に係着され、上側の係止環4dには平面視で分図(a)に示すように、前後にそれぞれ外方に突出したツマミ部4eが形成されて、下側の係止環4dに対して上側の係止環4dを起こし易く係止され易くしている。
この吊り紐固定具4も固定板4bに配設されたビス孔4aを介して固定板4bが座盤2にビス止めされ、それぞれの係止環4dに吊り紐7が挿通されて結び付けられる。
【0016】
図9に示した吊り紐固定具4は、ビス孔4aの配設された固定板4bに立設されるスタンド4cには分図(b)に示すように、一本の係止環4dが揺動自在に係着されて成り、固定板4bが座盤2にビス止めされ、係止環4dには分図(a)に示すように、仮想線で示すとおり吊り紐7の先端が係止環4dの突端の下側から挿し込まれて手前側の上部に出されて下側へ曲げられ、後方の上部から係止環4dの内部へ差し込まれてその突端の下側から出されて本体7aと先端部7bを一緒にして引き込めば、吊り紐7は簡単に係止環4dに結ばれる。このように係止環4dが設けられた吊り紐固定具4では、吊り紐7にこぶを設けたり、わざわざ結び目によって縛ることなく、単に吊り紐7を所定の要領で係止環4dに挿通するのみで締結できる。分図(c)に示したものは係止環4dに滑り止め4fを被覆したもので吊り紐7はより固く締結される。
【実施例6】
【0017】
次の図10に示した吊り紐固定具について説明すると、分図(a)に示すように正面視矩形枠で底板12aの上面に部分的(吊り紐7の挿入口側)に突起12bを多数列立設したスタンド12cには、左右の周壁12dに上下方向で後傾状に各段に円弧状の係止凹部12eが横設された溝部12fが形成され、両溝部12fの係止凹部12eには軸本体12gの全長に渡り多数条の係止突起12hが周設される押さえ棒12iの左右の軸部12jが案内されて抜け止めされる。
この吊り紐固定具12を座盤2にビス止めしたときは、スタンド12cの挿入口から挿し込まれた吊り紐7は底板12aに立設された突起12bと押さえ棒12iの係止突起12hとに挟持されて吊り紐7は簡単に固定される。
以上のように雪吊り具A乃至Dと各種の吊り紐固定具4、11、12の実施例を示したものであるが、本発明は、嵌着体1の円環体3に吊り紐7の振り分けに向けられる係止溝3aと座盤2に設ける吊り紐固定具4、11、12とを要件とするものであるから、本実施例で示した雪吊り具A乃至Dでは、一種類の吊り紐固定具4が対象として示されたが、このものに限定されるものではなく、後述の各種の吊り紐固定具4、11、12も対象とされることは勿論のこと、各種の吊り紐固定具4、11、12が混在して座盤2に設けられることも勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は雪吊り作業に用いる吊り紐が係止し易いため、その作業が能率的かつ省力的であるため、造園業関係に貢献できる上、吊り紐固定具の技術範囲が広範であるため製造分野での需要も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わる雪吊り具Aの平面図。
【図2】同上雪吊り具Aの右半分を断面で示した正面図。
【図3】本発明に係わる雪吊り具Bの右半分を断面で示した正面図。
【図4】本発明に係わる雪吊り具Cの右半分を断面で示した正面図。
【図5】同上雪吊り具Cの平面図。
【図6】本発明に係わる雪吊り具Dの平面図。
【図7】同上雪吊り具Dの上部を破断した正面図。
【図8】吊り紐固定具4の他の実施態様を示す説明図で、(a)はその平面図、(b)はその正面図。
【図9】吊り紐固定具4の他の実施態様を示す説明図で、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)は係止環の他の実施態様を示す平面図。
【図10】吊り紐固定具12の他の実施態様を示す説明図で、(a)はその正面図、(b)はその右側面図。
【図11】本発明の雪吊り具Aの使用状態の説明図。
【符号の説明】
【0020】
1a:ネジ孔
1b:押しボルト
1c:握り頭部
1:嵌着体
2:座盤
3:円環体
3a:係止溝
4:吊り紐固定具
4a:ビス孔
4b:固定板
4c:スタンド
4d:係止環
4e:ツマミ部
4f:滑り止め
5:樹木
6:支柱
7:吊り紐
7a:本体
7b:先端部
8:枝
9:口部
10:ネジ孔
11:吊り紐固定具
11a:ネジ軸
11b:突起
11c:押さえ盤
11d:押圧ナット
11e:コイルスプリング
11f:ネジ孔
12:吊り紐固定具
12a:底板
12b:突起
12c:スタンド
12d:周壁
12e:係止凹部
12f:溝部
12g:軸本体
12h:係止突起
12i:押さえ棒
12j:軸部
12k:挿入口
A乃至D:雪吊り具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に嵌着される円筒状の嵌着体の頂部に外郭円形の座盤を設けるとともに、周面の適所に押しボルトを螺着し、該座盤の周縁に所要高さで周設される円環体には係止溝が所要数凹設され、座盤上には各態様の吊り紐固定具が配設されて成る雪吊り具。
【請求項2】
座盤に嵌着体の内周と連通する同径の貫通孔を開口して成る請求項1記載の雪吊り具。
【請求項3】
座盤の中央を貫通して嵌着体の頂部に向けてネジ孔を配設して成る請求項1記載の雪吊り具。
【請求項4】
ビス孔を配設した固定板に立設されたスタンドと、該スタンドに両端が揺動自在に係着される所要数の係止環とから成り、座盤上で吊り紐を拘束して成る雪吊り具用吊り紐固定具。
【請求項5】
前記係止環が横向き又は縦向きに2系列に配列されて成る請求項4記載の雪吊り具用吊り紐固定具。
【請求項6】
前記係止環に滑り止めが被覆されて成る請求項4又は5記載の雪吊り具用吊り紐固定具。
【請求項7】
前記座盤の中央に立設されるネジ軸と、該ネジ軸に遊嵌される押さえ盤と、該押さえ盤の上部でネジ軸に外嵌されるコイルスプリングと、該コイルスプリングの上部でネジ軸に螺合される押圧ナットとから成る雪吊り具用吊り紐固定具。
【請求項8】
正面視矩形枠で底板の上面に部分的に突起を立設したスタンドと、該スタンドの左右の周壁に上下方向で後傾状に各段に係止凹部が横設された溝部と、両溝部に左右の軸部が案内され、軸本体全長に渡って多数条の係止突起が周設される押さえ棒とから成る雪吊り具用吊り紐固定具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate