説明

電位差法用端子固定具

【課題】電位差法に用いる端子を溶接することなく容易かつ迅速に安定度良く設置することができる電位差法用端子固定具を提供すること。
【解決手段】電流印加用端子11又は電位差測定用端子12を配管5に着脱自在に固定する固定具10であって、電気絶縁体からなり、電流印加用端子11又は電位差測定用端子12の先端部を露出させた状態で支持する端子固定体20と、配管5の外周面に締結自在に巻き付けられ、電流印加用端子11又は電位差測定用端子12の先端部が配管5と当接するように端子固定体20を配管5に固定する固定ベルト30と、を備える。電流印加用端子11又は電位差測定用端子12は雄ねじ状に形成され、端子固定体20は、当該端子固定体20の表面から裏面に貫通し、電流印加用端子11又は電位差測定用端子12と螺合する一対のねじ穴22,22を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位差法に用いる電流印加用端子や電位差測定用端子(以下、これらを総称して、単に「端子」と称する場合もある)を配管に設置するための電位差法用端子固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電プラント等においては、導電性の金属で形成された各種配管(例えば、蒸気、石油、石炭灰等を輸送する配管)の保守点検のために、配管の減肉や亀裂等を電位差法と呼ばれる非破壊検査によって診断している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電位差法は、配管の減肉や亀裂等の損傷が予想される箇所の電位差を測定し、この電位差を、減肉や亀裂等が生じていない健全部位で測定した電位差と比較することによって、損傷の有無の判定を行うものである。図16は、電位差法による測定システムを示す原理図であり、(a)は健全部位での測定の様子を示し、(b)は損傷部位での測定の様子を示している。
【0004】
図16に示すように、電位差法による測定システムは、測定対象の配管5の2点間に電源50からの電流を印加するように固定された一対の電流印加用端子11,11と、測定対象箇所である2点間の電位差を電位差計52によって測定するための一対の電位差測定用端子12,12と、を備える。なお、図16において、符号16は、電気配線用のケーブルを示し、矢印は電流の流れを示している。
【0005】
そして、電源50から電流印加用端子11,11間に電流を流し、電位差測定用端子12,12間の電位差V0,V1を電位差計52で測定する。電位差V0は、図16(a)に示すように、上記健全部位で測定されたものである。また、電位差V1は、図16(b)に示すように、減肉等の損傷部位5aで測定されたものである。
【0006】
この電位差V1を電位差V0と比較することによって、損傷があるか否かの判定を行う。例えば、図16(b)に示すように、配管5に損傷部位5aがあった場合、当該の電位差V1は、健全部位での電位差V0よりも大きな値として検出されるので、配管5に損傷(例えば、減肉)があると判定することができる。
【0007】
このように、電位差法で配管5の検査をする場合、電流印加用端子(電極)11,11を配管5に固定する必要があった。配管5への固定は、通常、電流印加用端子11,11をスタッドピンとして、スタッド溶接機により溶接していた。また、電位差測定用端子12,12は、作業員が手で把持することで測定箇所との接触(当接)を維持したり、或いは接着剤等で配管5に固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−3235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、配管5に可燃性物質が充填されていたり、周囲環境が火気厳禁の場合には、溶接時に火花が散る上記スタッド溶接は実施できない。このため、スタッド溶接により電流印加用端子11,11を配管5に固定するには、プラント設備の休止中に行うか、或いは、可燃性物質を配管5から除去した後に行う必要があり、検査時期が制約されると共に、多大な手間を要してしまう、という課題があった。
【0010】
また、スタッド溶接が実施できる環境であったとしても、溶接には専用の溶接機や熟練が必要となると共に、溶接作業や検査後の上記スタッドピンの除去作業に多大な手間がかかり、多くの作業時間を要していた。
【0011】
また、電位差測定用端子12,12の配管5への固定手段については、作業員の把持による当接では、安定性が悪く人員コストもアップしてしまい、また接着固定では、作業効率が悪かった。
【0012】
このため、電位差法に用いる電流印加用端子や電位差測定用端子を溶接することなく容易かつ迅速に安定度良く設置することができる手段の提供が望まれていた。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電位差法に用いる端子を溶接することなく容易かつ迅速に安定度良く設置することができる電位差法用端子固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、以下のような電位差法用端子固定具を提供する。
【0015】
(1) 本発明は、電流印加用端子又は電位差測定用端子を配管に着脱自在に固定する電位差法用端子固定具であって、電気絶縁体からなり、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の先端部を露出させた状態で支持する端子固定体と、前記配管の外周面に締結自在に巻き付けられ、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の前記先端部が当該配管と当接するように前記端子固定体を当該配管に固定する固定ベルトと、を備えることを特徴とする。
【0016】
(1)の発明によれば、配管の外周面に巻き付けた固定ベルトを締結し、端子固定体を配管側に押し付けることによって、種々の配管径に柔軟に対応できると共に、電流印加用端子又は電位差測定用端子の先端部を当該配管と安定度良く当接させることができる。このため、従来のようなスタッド溶接による端子固定作業が不要となる。また、固定ベルトによる締結を緩め、或いは固定ベルトを配管から取り外すことにより、端子固定体を次の測定箇所に容易に移動することができる。したがって、電位差法に用いる端子を溶接することなく容易かつ迅速に安定度良く設置することができる。
【0017】
(2) (1)の発明においては、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子は雄ねじ状に形成され、前記端子固定体は、当該端子固定体の表面から裏面に貫通し前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子と螺合するねじ穴を備えることが好ましい。
【0018】
(2)の発明によれば、電流印加用端子又は電位差測定用端子の先端部を端子固定体のねじ穴に螺合させることによって、当該先端部を当該端子固定体の裏面側に露出させた状態で当該電流印加用端子又は当該電位差測定用端子を容易かつ安定度良く支持することができる。
【0019】
(3) (2)に記載の発明においては、前記端子固定体の裏面には、前記ねじ穴を中心に有し当該裏面から突設された凸部を備えることが好ましい。
【0020】
配管が断熱材によって被覆されている場合には、電流印加用端子又は電位差測定用端子を固定する箇所において、断熱材に所定径の貫通穴を設けることにより、必要最小限の断熱材を除去し、当該電流印加用端子又は当該電位差測定用端子を挿通するスペースを確保する。したがって、(3)の発明によれば、前記貫通穴に端子固定体の凸部を挿入することにより、端子固定体の断熱材への位置決めを容易かつ迅速に行うことができる。
【0021】
(4) (2)又は(3)に記載の発明においては、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の先端部には、前記配管の表面被覆物を除去可能な刃部を備え、前記端子固定体の裏面であって前記ねじ穴の開口部には、当該ねじ穴よりも大きな径の凹部を備えることが好ましい。
【0022】
(4)の発明によれば、固定ベルトで配管に固定された端子固定体の電流印加用端子又は電位差測定用端子を、当該配管側に更にねじ込むことによって、刃部が配管の表面被覆物(例えば、塗装や汚れ等による被覆膜)を除去することができるので、金属ブラシ等による表面被覆物の除去処理が不要となる。
【0023】
また、除去した表面被覆物を凹部に溜めることができるので、電流印加用端子又は電位差測定用端子の先端部と配管との間に、除去した表面被覆物が介在しにくくなる。したがって、電流印加用端子又は電位差測定用端子の先端部と配管との電気的導通性をより一層確保することができる。
【0024】
(5) 電流印加用端子又は電位差測定用端子を配管に着脱自在に固定する電位差法用端子固定具であって、電気絶縁体からなり、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の先端部を露出させた状態で支持し、前記配管を挟み込むように当該配管の外周面に配置される一対の端子固定体と、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の前記先端部が前記配管と当接するように前記一対の端子固定体を互いに固定する締結手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
(5)の発明によれば、一対の端子固定体により配管を挟み込んで固定することによって、電流印加用端子又は電位差測定用端子の先端部を当該配管と安定度良く当接させることができるので、従来のようなスタッド溶接による端子固定作業が不要となる。したがって、電位差法に用いる端子を溶接することなく容易かつ迅速に安定度良く設置することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電位差法に用いる端子を溶接することなく容易かつ迅速に安定度良く設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る固定具を用いて電流印加用端子を配管に固定した状態を示す斜視図である。
【図2】固定具を示す斜視図である。
【図3】端子固定体の裏面を示す斜視図である。
【図4】固定具の使用状態を示す断面図である。
【図5】断熱材が設けられた配管に固定具を使用した状態を示す断面図である。
【図6】固定具を用いて電位差測定用端子を配管に固定した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る固定具の使用状態を示す断面図である。
【図8】端子固定体の裏面を示す斜視図である。
【図9】電流印加用端子の刃部を示す側面図である。
【図10】電流印加用端子の刃部を示す正面図である。
【図11】図10に示す刃部のA−A断面及びB−B断面を示す断面図である。
【図12】他の刃部を示す側面図である。
【図13】他の刃部を示す正面図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る固定具を示す分解斜視図である。
【図15】固定具の使用状態を示す断面図である。
【図16】電位差法による測定システムを示す原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0029】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る電位差法用端子固定具(以下、単に「固定具」と称する)を用いて電流印加用端子を配管に固定した状態を示す斜視図、図2は、固定具を示す斜視図、図3は、端子固定体の裏面を示す斜視図、図4は、固定具の使用状態を示す断面図である。
【0030】
また、図5は、断熱材が設けられた配管に固定具を使用した状態を示す断面図である。図6は、固定具を用いて電位差測定用端子を配管に固定した状態を示す斜視図である。なお、以下の説明において、既に説明した部材と同一若しくは相当する部材には、同一の符号を付して重複説明を省略又は簡略化する。
【0031】
図1及び図6に示すように、固定具10は、電位差法に用いる電流印加用端子11や電位差測定用端子12を配管5に設置する際に用いられる。固定具10は、図1〜図4に示すように、電流印加用端子11の先端部を露出させた状態で支持する端子固定体20と、配管5の外周面に締結自在に巻き付けられ端子固定体20を配管5に固定する固定ベルト30と、を備える。
【0032】
図1及び図2に示すように、電流印加用端子11は、導電性金属からなり、雄ねじ部11aを有するボルトとして形成されている。また、後述する電位差測定用端子12(図6参照)も、導電性金属からなり、雄ねじ部を有するボルトとして形成されている。
【0033】
電流印加用端子11と電位差測定用端子12は、外径や長さが異なる(例えば、電位差測定用端子12よりも電流印加用端子11の外径の方が大きい)のみであり、後述する端子固定体20のねじ穴22に螺合させて固定する点において共通である。
【0034】
したがって、電流印加用端子11又は電位差測定用端子12を固定する端子固定体20は、全体の外径寸法やねじ穴22の径等が若干異なるのみであるので、以下、電流印加用端子11を固定する固定具10を中心に説明する。
【0035】
端子固定体20は、図2及び図3に示すように、一対のねじ穴22,22と、ベルト用係止凹部24と、凸部26とを備える。
【0036】
端子固定体20は、電気絶縁体(例えば、非導電性の合成樹脂等)からなり、全体形状が略直方体に形成されている。一対のねじ穴22,22は、端子固定体20の表面から裏面に貫通して設けられ、電流印加用端子11及び後述する調節ピン13(図1及び図4参照)と螺合する。
【0037】
ベルト用係止凹部24は、図1〜図4に示すように、端子固定体20の上面中央部に設けられ、固定ベルト30を係止する。ベルト用係止凹部24は、図4に示すように、固定ベルト30の厚さよりも大きい深さを有すると共に、固定ベルト30の幅よりも大きい幅を有する。
【0038】
凸部26は、図2、図3及び図5に示すように、端子固定体20の裏面に設けられている。凸部26は、端子固定体20の裏面から円柱状に突設され、中心にねじ穴22を有している。この凸部26は、図5に示すように、配管5を被覆する断熱材7に設けられた貫通穴7aに挿入可能に構成されている。
【0039】
すなわち、凸部26は、貫通穴7aに凸部26を挿入することにより、端子固定体20の断熱材7への位置決めを容易かつ迅速に行えるように設けられている。なお、貫通穴7aは、断熱材7に電流印加用端子11を挿通するための必要最小限のスペースを確保できれば良いので、雄ねじ部11aの外径の数倍程度の大きさの内径を有していれば良い。
【0040】
固定ベルト30は、電流印加用端子11の先端部が当該配管5と当接するように端子固定体20を配管5に固定する。固定ベルト30は、配管5の外周長さよりも十分に長い寸法を有している。また、固定ベルト30は、配管5に対する締結力を調節するためのバックル31(図1及び図6参照)を備えている。
【0041】
調節ピン13は、図1及び図4に示すように、電流印加用端子11と同様に形成されたボルトである。すなわち、調節ピン13は、電流印加用端子11と対にしてねじ穴22に螺合され、端子固定体20の裏面から所定量を突出させることにより、端子固定体20の配管5に対する姿勢を調節できるようにしたものである。なお、調節ピン13は、電流印加用端子11と同様に形成されているので、電流印加用端子11として用いることもできる。
【0042】
また、図1及び図4に示すように、電流印加用端子11には、ケーブル16の端子16aがナット15,15によって固定されている。なお、ケーブル16の他端は、電源50(図16参照)に接続される。
【0043】
次に、固定具10の使用方法について図1及び図4等を参照して説明する。以下、断熱材で被覆されていない配管5に固定具10を使用する場合について説明する。
【0044】
電流印加用端子11の先端部を当接させる配管5の所定箇所は、予め表面被覆物(例えば、塗装や汚れ等による被覆膜)を金属ブラシ等で除去しておく。
【0045】
また、図1及び図4に示すように、電流印加用端子11には、ケーブル16の端子16aをナット15,15によって予め固定しておく。そして、端子固定体20のねじ穴22に電流印加用端子11及び調節ピン13を螺合させ、電流印加用端子11及び調節ピン13の先端部を端子固定体20の裏面から所定量突出させておくことが好ましい(図4参照)。なお、端子固定体20を配管5に装着した後に、電流印加用端子11等の螺合量を適宜調節しても良い。
【0046】
このように、電流印加用端子11を端子固定体20に容易に螺合固定できると共に、電流印加用端子11の先端部の端子固定体20裏面からの突出量を調整し易くなる。このため、配管5との当接力(押圧力)を調節することができ、電気的導通性を確保することができる。
【0047】
次に、図1及び図4に示すように、端子固定体20を配管5の所定箇所に配置し、ベルト用係止凹部24に固定ベルト30を係止させながら、固定ベルト30を配管5の外周面に巻き付ける。
【0048】
そして、電流印加用端子11及び調節ピン13の端子固定体20への螺合量を調節することにより、端子固定体20の姿勢を調節すると共に、電流印加用端子11の配管5に対する当接力を調節する。
【0049】
また、固定ベルト30の配管5に対する締結力は、バックル31によって調節する。他の電流印加用端子11も上記と同様の要領で固定具10を用いることにより、配管5の所定箇所に固定する。
【0050】
このように固定具10を用いることにより、電流印加用端子11を配管5の所定箇所に容易かつ迅速に安定度良く固定することができる。
【0051】
また、図6に示すように、電位差測定用端子12も、上記電流印加用端子11と同様の要領で固定具10を用いることにより、配管5の所定箇所に必要数を容易かつ迅速に安定度良く固定することができる。
【0052】
また、電位差測定用端子12を固定した端子固定体20を複数用意し、これらの端子固定体20を、配管5に巻き付けた1本の固定ベルト30によって同一円周上の任意の位置に固定すれば、当該箇所の電位差を容易かつ迅速に測定することができる。
【0053】
電流印加箇所や電位差測定箇所を変更する場合には、固定ベルト30による締結を緩め、或いは固定ベルト30を配管5から取り外すことにより、端子固定体20を次の測定箇所に容易に移動することができる。
【0054】
次に、断熱材7で被覆されている配管5に固定具10を使用する場合について図5を参照して説明する。この場合、断熱材7の厚みを考慮した長さの電流印加用端子11又は電位差測定用端子12(図5には図示せず)が使用される。また、この場合、調節ピン13は不要である。
【0055】
図5に示すように、配管5が断熱材7で被覆されている場合には、電流印加用端子11を挿通するための必要最小限のスペースを確保するために、断熱材7に貫通穴7aを設けておく。
【0056】
そして、端子固定体20を配管5に固定する際には、貫通穴7aに端子固定体20の凸部26を挿入することにより、端子固定体20の断熱材7(配管5)への位置決めを容易かつ迅速に行うことができる。
【0057】
その他の手順は、配管5が断熱材7で被覆されていない上記場合と略同様であるので、重複説明を省略する。
【0058】
以上のように、この第1実施形態に係る固定具10によれば、従来のようなスタッド溶接による端子固定作業が不要となる。
【0059】
したがって、配管5に可燃性物質が充填されていたり、周囲環境が火気厳禁の場合であっても、電流印加用端子11及び電位差測定用端子12をプラント設備の稼働中に容易かつ迅速に安定度良く設置することができる。
【0060】
また、電位差測定後には、固定ベルト30を配管5から取り外すことにより、電流印加用端子11及び電位差測定用端子12の設置を容易に解除することができる。
【0061】
なお、上記第1実施形態においては、端子固定体20に凸部26を設けるものとして説明したが、これに限定されず、端子固定体20の裏面に凸部26を設けず、平坦に形成しても良い。
【0062】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態に係る固定具の使用状態を示す断面図、図8は、端子固定体の裏面を示す斜視図である。また、図9は、電流印加用端子の刃部を示す側面図、図10は、電流印加用端子の刃部を示す正面図、図11は、図10に示す刃部のA−A断面及びB−B断面を示す断面図である。本実施形態でも、電流印加用端子11を固定する固定具10を中心にして説明する。
【0063】
図7、図9〜図11に示すように、電流印加用端子11の先端部には、配管5の表面被覆物(例えば、塗装や汚れ等による被覆膜)を除去可能な刃部11bを備える。すなわち、刃部11bの溝部11cは、電流印加用端子11の先端面に十字状に凹設されている。
【0064】
また、端子固定体20の裏面であってねじ穴22の開口部には、ねじ穴22よりも大きな径の凹部28を備える。
【0065】
固定具10のその他の構成及び使用方法は、上記第1実施形態の場合と同様であるので、重複説明を省略する。また、電位差測定用端子12を固定する固定具10は、上記電流印加用端子11を固定する固定具10の場合と略同様に構成されているので、重複説明を省略する。
【0066】
以上のように、この第2実施形態に係る固定具10によれば、上記第1実施形態の場合と同様の効果を奏する他、固定ベルト30で配管5に固定された端子固定体20の電流印加用端子11を、配管5側に更にねじ込むことによって、刃部11bが配管5の上記表面被覆物を除去することができるので、金属ブラシ等による表面被覆物の除去処理が不要となる。
【0067】
また、除去した表面被覆物を凹部28に溜めることができるので、電流印加用端子11の先端部と配管5との間に、除去した表面被覆物が介在しにくくなる。したがって、電流印加用端子11の先端部と配管5との電気的導通性をより一層確保することができる。また、電位差測定用端子12を固定する固定具10についても、同様の効果を奏することができる。
【0068】
なお、上記第2実施形態においては、刃部11bは、電流印加用端子11の先端面に十字状の溝部11cを備えるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、図12及び図13に示すように、適宜湾曲させた刃部11bを略放射状に多数突設しても良い。この場合も上記と同様の効果を期待できる。ここで、図12は、他の刃部を示す側面図、図13は、他の刃部を示す正面図である。
【0069】
また、上記各実施形態においては、端子固定体20に固定ベルト30を係止するためのベルト用係止凹部24を設け、端子固定体20と固定ベルト30とを係脱自在に構成したが、これに限定されず、端子固定体20と固定ベルト30とを固定しても良い。
【0070】
また、上記各実施形態においては、電流印加用端子11及び電位差測定用端子12を、雄ねじ部を有するボルトとして形成し、端子固定体20に対して螺合可能に構成するものとして説明したが、電流印加用端子11及び電位差測定用端子12を螺合可能に構成せず、端子固定体20に対して固定しても良い。
【0071】
また、上記各実施形態においては、端子固定体20は、2つのねじ穴22,22を備えるものとして説明したが、これに限定されず、1つ或いは3つ以上のねじ穴22を備えるように構成されていても良い。
【0072】
また、上記各実施形態においては、固定ベルト30による締結力を調節するバックル31を備えるものとして説明したが、必要な締結力を確保できれば、このようなバックル31を備えなくても良い。この場合、バックル31の代わりに、例えば、いわゆるマジックテープ(登録商標)等のような面ファスナー類やその他の手段を用いても良い。
【0073】
〔第3実施形態〕
図14は、本発明の第3実施形態に係る固定具40を示す分解斜視図、図15は、固定具40の使用状態を示す断面図である。本実施形態に係る固定具40も電流印加用端子11又は電位差測定用端子12(図6参照)を固定可能に構成されているが、以下、電流印加用端子11を例にして説明する。
【0074】
固定具40は、図14及び図15に示すように、電位差法に用いる電流印加用端子11や電位差測定用端子(図示を省略するが、上述した電位差測定用端子12に相当する端子)を配管5に設置する際に用いられる。
【0075】
固定具40は、電流印加用端子11の先端部を露出させた状態で支持し、配管5を挟み込むように当該配管5の外周面に配置される一対の端子固定体41,41と、電流印加用端子11の先端部が配管5と当接するように一対の端子固定体41,41を互いに固定するボルト(締結手段)45及びナット(締結手段)47と、を備える。
【0076】
端子固定体41は、図14及び図15に示すように、一対のねじ穴42,42と、凹部43と、貫通穴46を有するフランジ部44とを備える。端子固定体41は、電気絶縁体(例えば、非導電性の合成樹脂等)からなり、全体形状が略Ω字状に形成されている。
【0077】
一対のねじ穴42,42は、端子固定体41の表面から裏面に貫通し電流印加用端子11と螺合する。なお、固定具40を上記電位差測定用端子の固定具として使用する場合には、ねじ穴42には、当該電位差測定用端子が螺合される。
【0078】
凹部43は、端子固定体41の内面(裏面)に断面半円状に形成されている。凹部43は、配管5の外周面に沿って当接可能に形成されている。
【0079】
フランジ部44は、端子固定体41の両端部に形成されている。フランジ部44は、貫通穴46を有する。貫通穴46には、ボルト45が挿通される。
【0080】
このように固定具40は、一対の端子固定体41,41で配管5を挟み込み、フランジ部44の貫通穴46にボルト45を挿通してナット47で締結することによって配管5に固定されるように構成されている。
【0081】
次に、固定具40の使用方法について図15を参照して説明する。以下、断熱材で被覆されていない配管5に固定具40を使用する場合について説明する。
【0082】
電流印加用端子11の先端部を当接させる配管5の所定箇所は、予め表面被覆物を金属ブラシ等で除去しておく。また、図15に示すように、電流印加用端子11には、ケーブル16の端子16aをナット15,15によって予め固定しておく。
【0083】
そして、端子固定体41のねじ穴42に電流印加用端子11を螺合させ、電流印加用端子11の先端部を端子固定体41の裏面から所定量突出させておくことが好ましい。
【0084】
このように、電流印加用端子11を雄ねじ状に形成すると共に、端子固定体41には、ねじ穴22を備えるので、電流印加用端子11を端子固定体41に容易に螺合固定できると共に、電流印加用端子11の先端部の端子固定体41裏面からの突出量を調整し易くなる。このため、配管5との当接力(押圧力)を調節することができ、電気的導通性を確保することができる。
【0085】
次に、図15に示すように、端子固定体41,41を配管5の所定箇所に配置して当該配管5を挟み込み、フランジ部44の貫通穴46にボルト45を挿通してナット47で締結することによって、端子固定体41,41を配管5に固定する。
【0086】
そして、電流印加用端子11の螺合量を適宜調節し、電流印加用端子11と配管5との当接力を調節することで、両者の電気的導通性を確保する。他の電流印加用端子11も、上記と同様の要領で別の固定具40を用いることにより、配管5の所定箇所に固定する。
【0087】
このように固定具40を用いることにより、電流印加用端子11を配管5の所定箇所に容易かつ迅速に安定度良く固定することができる。
【0088】
また、上記電位差測定用端子も、上記電流印加用端子11と同様の要領で固定具40を用いることにより、配管5の所定箇所に必要数を容易かつ迅速に安定度良く固定することができる。特に、この固定具40は、同一の径を有する配管5に、数多くの上記電位差測定用端子を適用する場合に効果的である。
【0089】
また、配管5に装着された一対の端子固定体41,41には、合計4つのねじ穴42が設けられているので、これらのねじ穴42のうち、任意の位置のねじ穴42に上記電位差測定用端子を螺合させることによって当該箇所の電位差を容易かつ迅速に測定することができる。
【0090】
また、電流印加箇所や電位差測定箇所を変更する場合には、ボルト45及びナット47による締結を緩め、或いは解除することにより、固定具40を次の測定箇所に容易に移動することができる。
【0091】
以上のように、この第3実施形態に係る固定具40によれば、一対の端子固定体41,41により配管5を挟み込んで固定することによって、電流印加用端子11及び電位差測定用端子12の先端部を当該配管5と安定度良く当接させることができるので、従来のようなスタッド溶接による端子固定作業が不要となる。
【0092】
したがって、配管5に可燃性物質が充填されていたり、周囲環境が火気厳禁の場合であっても、電位差法に用いる電流印加用端子11及び電位差測定用端子12を、プラント設備の稼働中に容易かつ迅速に安定度良く設置することができる。
【0093】
また、電位差測定後には、ボルト45及びナット47による締結を解除し、端子固定体41,41を配管5から取り外すことにより、電流印加用端子11及び電位差測定用端子12の設置を容易に解除することができる。
【0094】
なお、上記第3実施形態においては、端子固定体41は、2つのねじ穴42,42を備えるものとして説明したが、これに限定されず、1つ或いは3つ以上のねじ穴42を備えるように構成されていても良い。
【0095】
また、上記第3実施形態においては、電流印加用端子11及び上記電位差測定用端子を、雄ねじ部を有するボルトとして形成し、端子固定体41に対して螺合可能に構成するものとして説明したが、電流印加用端子11及び上記電位差測定用端子を螺合可能に構成せず、端子固定体41に対して固定しても良い。
【符号の説明】
【0096】
5 配管
10 固定具(電位差法用端子固定具)
11 電流印加用端子
11a 雄ねじ部
11b 刃部
12 電位差測定用端子
20 端子固定体
22 ねじ穴
26 凸部
28 凹部
30 固定ベルト
40 固定具(電位差法用端子固定具)
41 端子固定体
42 ねじ穴
45 ボルト(締結手段)
47 ナット(締結手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流印加用端子又は電位差測定用端子を配管に着脱自在に固定する電位差法用端子固定具であって、
電気絶縁体からなり、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の先端部を露出させた状態で支持する端子固定体と、
前記配管の外周面に締結自在に巻き付けられ、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の前記先端部が当該配管と当接するように前記端子固定体を当該配管に固定する固定ベルトと、
を備えることを特徴とする電位差法用端子固定具。
【請求項2】
前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子は雄ねじ状に形成され、
前記端子固定体は、当該端子固定体の表面から裏面に貫通し前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子と螺合するねじ穴を備えることを特徴とする請求項1に記載の電位差法用端子固定具。
【請求項3】
前記端子固定体の裏面には、前記ねじ穴を中心に有し当該裏面から突設された凸部を備えることを特徴とする請求項2に記載の電位差法用端子固定具。
【請求項4】
前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の先端部には、前記配管の表面被覆物を除去可能な刃部を備え、
前記端子固定体の裏面であって前記ねじ穴の開口部には、当該ねじ穴よりも大きな径の凹部を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電位差法用端子固定具。
【請求項5】
電流印加用端子又は電位差測定用端子を配管に着脱自在に固定する電位差法用端子固定具であって、
電気絶縁体からなり、前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の先端部を露出させた状態で支持し、前記配管を挟み込むように当該配管の外周面に配置される一対の端子固定体と、
前記電流印加用端子又は前記電位差測定用端子の前記先端部が前記配管と当接するように前記一対の端子固定体を互いに固定する締結手段と、
を備えることを特徴とする電位差法用端子固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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