説明

電力供給方法及び電力供給システム

【課題】 商用交流電源より供給される交流電力を複数の負荷に配分するために、それぞれ所定の定格電流を有する過電流保護用の配線用遮断器が介挿された複数の給電線が配設されてなる既存の配電設備を有効に利用して、その配線用遮断器の定格電流を超える電流を必要とする1つの負荷に適切な電力を供給する。
【解決手段】 三本の分岐給電線4、5、6にあって各給電線上に設けられた配線用遮断器7、8、9の出力側端部に、それら配線用遮断器の定格電流の比に応じた巻数の二次側巻線L2を有するトランス10、11、12の一次側巻線L1を接続する。その3つのトランス10、11、12の二次側巻線L1は直列に接続して共通給電線13として唯一の負荷Dに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場等において外部の商用交流電源より交流電力を受けて負荷に供給する電力供給方法及び電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅や工場などでは、外部の商用交流電源から供給される交流電力を複数の負荷に分配するために、過電流保護用の配線用遮断器などを含む分電盤が設置されている(特許文献1など参照)。
【0003】
図2は、複数(ここでは3つ)の負荷を駆動するための一般的な配電設備を簡略化した構成図である。図2において、100[V]又は200[V]の交流電圧を出力する商用交流電源1から引き込まれた主給電線2は、配電設備3において3本の分岐給電線4、5、6に分岐される。各分岐給電線4、5、6上にはそれぞれ過電流保護用の配線用遮断器7、8、9が設けられており、これら配線用遮断器7、8、9を介して各分岐給電線4、5、6はそれぞれ独立して負荷A、B、Cに接続されている。
【0004】
配線用遮断器は定格電流が規定されており、この定格電流を超える電流が流れようとすると、自動的に給電ラインを遮断することで過電流が負荷に流れることを防止する。通常、配線用遮断器は大きな定格電流のものほど価格が高いため、負荷に応じて適宜の定格電流のものが選択されることが多い。例えば、図2の構成では、配線用遮断器7、8、9の定格電流はそれぞれ50[A]、40[A]、30[A]であるものとする。なお、工場などでは三相交流電力が使用されることが多いが、基本的にはここで記載のような単相と同様である。
【0005】
工場や研究・開発施設等、負荷電流の大きな産業用機器等を負荷として使用する現場では、そうした機器の更新に伴って負荷電流が大きくなり、従来の配線用遮断器の定格電流では賄えなくなる場合がよくある。特に最近は、負荷が集約される傾向にあり、負荷自体の数は少なくなる代わりに負荷電流が大幅に増加するといった場合が多い。そうした場合に、定格電流の大きな配線用遮断器を新たに導入し、工場内の屋内配線等もその定格電流に合わせて交換する、といった方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、こうした方法では多大なコストが掛かるとともに、工事に時間を要するため操業を停止する期間が長くなるといった問題がある。そこで、既存の配電設備を有効に利用しながら、最小限のコスト及び工事期間で、集約化した負荷に大きな負荷電流を供給できるようにすることが要望されている。
【0007】
一つの方法として、配線用遮断器7、8、9の出力側端の分岐給電線4、5、6を抵抗加算する方法が考えられる。しかしながら、この場合、各抵抗に大きな電流が流れるため、抵抗で発生する熱による電力損失が問題となる。また、各分岐給電線4、5、6に挿入される抵抗値のばらつきや分岐給電線4、5、6の長さの相違などに起因するインピーダンスの相違によって各分岐給電線4、5、6で電圧誤差が生じ、各分岐給電線4、5、6に流れる電流が設計通りにならなくなる場合がある。そうした場合、負荷に流れる電流は規定値以下であるにも拘わらず、或る分岐給電線に流れる電流がその給電線上の配線用遮断器の定格電流を超えてしまい、自動的に給電路が遮断されてしまうという事態が生じることになる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−187424号公報(段落[0002])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、既存の配電設備を有効に利用し、低コスト及び短い工事期間で大きな負荷電流を適切に供給することができる電力供給方法及び電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された第1発明は、商用交流電源より供給される入力交流電力をn個(nは2以上の整数)の負荷に配分するために、それぞれ所定の定格電流を有する過電流保護用の配線用遮断器が介挿されたn本の給電線が配設されてなる既存の配電設備を利用して、前記定格電流を超える電流を必要とする負荷に電力を供給するための電力供給方法であって、
前記n本の給電線にあってそれぞれ配線用遮断器の出力側端部に、該配線用遮断器の定格電流の比に応じた巻数の巻線を有するトランスの一次側巻線を接続し、そのn個のトランスの二次側巻線を直列接続して唯一の負荷に電力を供給するようにしたことを特徴としている。
【0011】
また、第2発明は上記第1発明に係る電力供給方法を具現化するシステムであって、商用交流電源より供給される入力交流電力を過電流保護用の配線用遮断器を介挿した給電線を通して負荷に供給するための電力供給システムであって、
a)前記商用交流電源より供給される交流電力をn系統に分岐するために、それぞれ所定の定格電流を有する配線用遮断器が介挿されたn本の分岐給電線と、
b)前記n本の分岐給電線にあってそれぞれ配線用遮断器の出力側端部に接続された、該配線用遮断器の定格電流の比に応じた巻数の巻線を有するn個のトランスと、
c)唯一の負荷に交流電力を供給するべく前記n個のトランスの二次側巻線を直列接続してなる共通給電線と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
第2発明に係る電力供給システムにより具現化される第1発明に係る電力供給方法では、n本の分岐給電線に接続されたn個のトランスの巻線の巻数が各分岐給電線上の配線用遮断器の定格電流の比に応じて設定されているため、各トランスの二次側巻線の両端にはそれぞれ配線用遮断器の定格電流の比に応じた電圧が発生する。そして、これら両端電圧を加算したものが共通給電線を介して唯一の負荷に印加され、n個の配線用遮断器の定格電流を加算した電流を共通給電線から負荷に供給することができる。このとき、トランスの一次側巻線、即ち各分岐給電線に流れる電流の比率はトランスの巻数の比で決まるから、各分岐給電線に流れる電流はほぼ設計通りに設定される。
【0013】
したがって、第1発明に係る電力供給方法及び第2発明に係る電力供給システムによれば、既存の配電設備を有効に利用して集約された負荷に対して負荷電力を供給することができるので、配線用遮断器等を新たに購入する必要がなく、コストを抑制することができる。また、配電設備全体を更新する場合に比べて、工事に要する期間が短くて済む。また、上述したような抵抗加算による方法とは異なり、各分岐給電線に流れる電流がほぼ設計通りとなるので、適切な負荷の駆動状態において配線用遮断器による不所望の遮断動作が発生することがない。さらにまた、熱の発生も少ないので放熱等が問題となることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例である電力供給システムを図1により説明する。図1は本実施例の電力供給システムの概略構成図であり、既に説明した図2と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0015】
本実施例の電力供給システムは、図2に示したような配電設備3を既に備えた現場において、それまで使用していた3つの負荷A、B、Cを集約して1つの負荷Dに更新する場合の構成の一例である。即ち、3つ配線用遮断器7、8、9を含む既存の配電設備3をそのまま利用し、分岐給電線4、5、6にあって配線用遮断器7、8、9の出力側端部をそれぞれトランス10、11、12の一次側巻線L1に接続する。そして、各トランス10、11、12の二次側巻線L2を直列に接続することで共通給電線13とし、これを唯一の負荷Dに接続する。
【0016】
上述の如く、配線用遮断器7、8、9の定格電流がそれぞれ50[A]、40[A]、30[A]であって、負荷電流としてこれら定格電流の和である最大120[A]の電流を取り出せるようにしたい場合、トランス10、11、12の一次側巻線L1と二次側巻線L2との巻数比はそれぞれ、120:50/120、120:40/120、120:30/120、と定める。各トランス10、11、12の一次側巻線L1の両端に印加される電圧は同一であり、この電圧の電圧値をVinとしたとき、各トランス10、11、12の二次側巻線L2の両端電圧は、(5/12)・Vin、(4/12)・Vin、(3/12)・Vinとなる。
【0017】
これら各トランス10、11、12の二次側巻線L2の両端電圧は加算されるから、共通給電線13から負荷Dに印加される電圧は元の入力電圧と同じVinとなる。また、各トランス10、11、12の二次側巻線L2はそれぞれ一次側巻線L1に供給される電流と等しい電流を供給し得るから、共通給電線13上では各トランス10、11、12の二次側巻線L1に現れる電流が加算される。したがって、負荷Dに供給し得る最大電流は120[A]となる。逆に、負荷Dにこの最大電流120[A]が流れるとき、トランス10、11、12の各一次側巻線L1、即ち分岐給電線4、5、6にそれぞれ流れる電流は50[A]、40[A]、30[A]となり、配線用遮断器7、8、9の定格電流に収まる。このとき、分岐給電線4、5、6に流れる電流が上記値からばらつく要因はトランス10、11、12の巻線の巻数のばらつきであるが、通常、こうしたばらつきはあり得ないので、分岐給電線4、5、6に流れる電流は殆ど設計通りになる。
【0018】
上述した各トランスの巻線の巻数の決め方を一般化して表すと次のようになる。いま、n(nは2以上の整数)本の分岐給電線上にそれぞれ設けられた配線用遮断器の定格電流をA1、A2、…、Anとする。負荷に供給したい電流の最大値はこれら定格電流の和、即ちΣAi、但しΣはi=1〜nの総和、である。このとき、1番目の分岐給電線が接続されるトランスの一次側巻線L1と二次側巻線L2との巻数比は、ΣAi:A1/ΣAiとすればよく、m番目(1≦m≦n)の分岐給電線が接続されるトランスの一次側巻線L1と二次側巻線L2との巻数比は、ΣAi:Am/ΣAiとすればよい。上記例で言えば、n=3、A1=50、A2=40、A3=30であり、ΣAi=120となる。
【0019】
以上のようにして、本実施例の電力供給システムによれば、既存の配電設備3をそのまま活かしてトランス等を追加することにより、集約された負荷に適切な電力を供給することができる。
【0020】
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行うことができることは明らかである。例えば、分岐給電線の数や、各配線用遮断器の定格電流などは任意に決めることができる。また、実際のシステムでは、図1中に記載の構成要素以外に、例えば漏電遮断器等の適宜の構成要素を追加することができることも当然である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例である電力供給システムの概略構成図。
【図2】従来の電力供給システムの概略構成図。
【符号の説明】
【0022】
1…商用交流電源
2…主給電線
3…配電設備
4、5、6…分岐給電線
7、8、9…配線用遮断器
10、11、12…トランス
L1…一次側巻線
L2…二次側巻線
13…共通給電線
D…負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源より供給される入力交流電力をn個(nは2以上の整数)の負荷に配分するために、それぞれ所定の定格電流を有する過電流保護用の配線用遮断器が介挿されたn本の給電線が配設されてなる既存の配電設備を利用して、前記定格電流を超える電流を必要とする負荷に電力を供給するための電力供給方法であって、
前記n本の給電線にあってそれぞれ配線用遮断器の出力側端部に、該配線用遮断器の定格電流の比に応じた巻数の巻線を有するトランスの一次側巻線を接続し、そのn個のトランスの二次側巻線を直列接続して唯一の負荷に電力を供給するようにしたことを特徴とする電力供給方法。
【請求項2】
商用交流電源より供給される入力交流電力を過電流保護用の配線用遮断器を介挿した給電線を通して負荷に供給するための電力供給システムであって、
a)前記商用交流電源より供給される交流電力をn系統に分岐するために、それぞれ所定の定格電流を有する配線用遮断器が介挿されたn本の分岐給電線と、
b)前記n本の分岐給電線にあってそれぞれ配線用遮断器の出力側端部に接続された、該配線用遮断器の定格電流の比に応じた巻数の巻線を有するn個のトランスと、
c)唯一の負荷に交流電力を供給するべく前記n個のトランスの二次側巻線を直列接続してなる共通給電線と、
を備えることを特徴とする電力供給システム。


【図1】
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【図2】
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