説明

電力制御システム、全体電力制御装置、個別電力制御装置及び電力制御方法

【課題】時間経過に伴って変動する消費電力の適切な制御を行う電力制御システム、全体電力制御装置、個別電力制御装置及び電力制御方法を提供する。
【解決手段】ローカルデマンド制御装置100及び200は、時間帯別ローカル上限値を設定して全体デマンド制御装置300へ通知する。全体デマンド制御装置300は、全体上限値を設定するとともに、所定時間帯における時間帯別ローカル上限値の合計値が全体上限値を超過する場合、ローカルデマンド制御装置100及び200の少なくとも一方に対して、所定時間帯におけるローカル上限値の変更を要求する。ローカルデマンド制御装置100及び200の少なくとも一方は、この要求に応じて所定時間帯における時間帯別ローカル上限値を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別電力制御装置間で電力の融通を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、節電対策の目的で、ビルや工場の消費電力を制御する技術であるデマンド制御が注目されている。例えば、複数のテナントが入居したビルにおいて、消費電力を削減する場合を考える。特許文献1に記載のシステムは、ビル全体の消費電力量の上限値と、テナント毎の消費電力量の上限値とを設定し、ビル全体の消費電力量が上限値に達する可能性がある場合、各テナント毎の消費電力量の上限値を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4032903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ビル全体とビルに入居する各テナントとは、各々、一定値である消費電力量の上限値を決定し、個別にその上限値を超えないように消費電力量の制御を行っていた。このため、テナントにおける消費電力量の制御(負荷制御)中に、ビル全体の消費電力量の制御(テナントの消費電力量の上限値の低下)が行われて制御が衝突するなど、時間経過に伴って変動する消費電力の適切な制御が困難であった。
【0005】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、時間経過に伴って変動する消費電力の適切な制御を行う電力制御システム、全体電力制御装置、個別電力制御装置及び電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る電力制御システムは、
配下の負荷の消費電力を制御する複数の個別電力制御装置と、前記各個別電力制御装置のそれぞれの配下の負荷からなるグループ全体の消費電力を制御する全体電力制御装置とを含む電力制御システムであって、
前記個別電力制御装置は、
前記配下の負荷における時間帯毎の消費電力量の上限を示す個別上限値を設定する個別上限値設定手段と、
前記設定された時間帯毎の個別上限値を前記全体電力制御装置へ通知する個別上限値通知手段と、
を備え、
前記全体電力制御装置は、
前記グループ全体の消費電力量の上限を示す全体上限値を設定する全体上限値設定手段と、
前記各個別電力制御装置からの前記時間帯毎の個別上限値を取得する個別上限値取得手段と、
前記取得された所定時間帯における個別上限値の合計値が前記全体上限値を超過する場合に、前記個別電力制御装置に対して、前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を通知する変更要求通知手段と、
を備え、
前記個別電力制御装置は、
前記全体電力制御装置からの前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を取得する変更要求取得手段と、
前記所定時間帯における個別上限値の変更要求に応じて、前記所定時間帯における個別上限値を変更する個別上限値変更手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、時間経過に伴って変動する消費電力の適切な制御を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に係る電力制御システムの構成を示す図である。
【図2】一実施形態に係る電力システムの動作を示すシーケンス図である。
【図3】時間帯別ローカル上限値及び全体上限値の時間遷移を示す図である。
【図4】消費電力量変更の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電力制御システム1の構成を示す図である。電力制御システム1は、テナントA及びテナントBが入居するビルにおける消費電力量を制御するものであり、個別電力制御装置としてのローカルデマンド制御装置100及びローカルデマンド制御装置200と、全体電力制御装置としての全体デマンド制御装置300とを備える。ローカルデマンド制御装置100、ローカルデマンド制御装置200及び全体デマンド制御装置300は、有線又は無線LAN(Local Area Network)等の通信回線400を介して通信可能に接続されている。
【0011】
ローカルデマンド制御装置100は、テナントA内に設置され、配下の負荷である設備機器108−1〜108−3の消費電力量を制御する。ローカルデマンド制御装置200は、テナントB内に設置され、配下の負荷である設備機器208−1〜208−2の消費電力量を制御する。全体デマンド制御装置300は、ビル全体の消費電力量、すなわち、設備機器108−1〜108−3と設備機器208−1〜208−2とからなるグループ全体の消費電力量を制御する。
【0012】
ローカルデマンド制御装置100は、制御部102、メモリ104及び通信部105を備える。
【0013】
制御部102は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成される。制御部102は、メモリ104に記憶されたプログラム(例えば、ローカルデマンド制御装置100による設備機器108−1〜108−3の消費電力量を制御するためのプログラム)に従ってソフトウェア処理を実行することにより、ローカルデマンド制御装置100が具備する各種機能を実現する。本実施形態において、制御部102は、ローカル上限値設定部122、電力比較部124及び負荷制御部126の機能を実現する。制御部102には、設備機器108−1〜108−3の消費電力量(ローカル電力量)を測定する電力量計106が接続される。
【0014】
メモリ104は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)である。メモリ104は、ローカルデマンド制御装置100における制御等に用いられる各種情報(プログラム、上述したローカル電力量、後述する時間帯別テナントAローカル上限値等)を記憶する。通信部105は、通信回線400を介して全体デマンド制御装置300との間で各種データの送受信を行う。
【0015】
ローカルデマンド制御装置200は、ローカルデマンド制御装置100と同様の構成である。すなわち、ローカルデマンド制御装置200は、制御部202、メモリ204及び通信部205を備える。
【0016】
制御部202は、制御部102と同様、例えばCPUによって構成される。制御部202は、メモリ204に記憶されたプログラム(例えば、ローカルデマンド制御装置200による設備機器208−1〜208−3の消費電力量を制御するためのプログラム)に従ってソフトウェア処理を実行することにより、ローカルデマンド制御装置200が具備する各種機能を実現する。本実施形態において、制御部202は、ローカル上限値設定部222、電力比較部224及び負荷制御部226の機能を実現する。制御部202には、設備機器208−1〜208−3の消費電力量(ローカル電力量)を測定する電力量計206が接続される。メモリ204は、例えばRAMやROMである。メモリ204は、ローカルデマンド制御装置200における制御等に用いられる各種情報(プログラム、上述したローカル電力量、後述する時間帯別テナントBローカル上限値等)を記憶する。通信部205は、通信回線400を介して全体デマンド制御装置300との間で各種データの送受信を行う。
【0017】
全体デマンド制御装置300は、制御部302、メモリ304及び通信部305を備える。
【0018】
制御部302は、例えばCPUによって構成される。制御部302は、メモリ304に記憶されたプログラム(例えば、全体デマンド制御装置300によるビル全体の消費電力量を制御するためのプログラム)に従ってソフトウェア処理を実行することにより、全体デマンド制御装置300が具備する各種機能を実現する。本実施形態において、制御部302は、全体上限値設定部322、上限値変更部324の機能を実現する。制御部302には、設備機器108−1〜108−3の消費電力量と設備機器208−1〜208−3の消費電力量との合計を測定する電力量計306が接続される。
【0019】
メモリ304は、例えばRAMやROMである。メモリ304は、全体デマンド制御装置300における制御等に用いられる各種情報(プログラム、上述した全体電力量、後述する全体上限値等)を記憶する。通信部305は、通信回線400を介してローカルデマンド制御装置100及びローカルデマンド装置200との間で各種データの送受信を行う。
【0020】
次に、電力制御システム1の動作を説明する。図2は、電力制御システム1の動作を示すシーケンス図である。
【0021】
ローカルデマンド制御装置100は、時間帯毎(例えば30分毎)のテナントA内の設備機器108−1〜108−3の消費電力量の上限値(時間帯別テナントAローカル上限値)を設定する(ステップS101)。具体的には、制御部102内のローカル上限値設定部122は、作業者による図示しない操作部の操作等に応じて、時間帯別テナントAローカル上限値を生成し、メモリ104に記憶させる。メモリ104には、設備機器108−1〜108−3の消費電力量の実績値であるローカル電力量が記憶されている。このため、作業者は、その実績値に基づいて適切な時間帯別テナントAローカル上限値を定めることができる。
【0022】
同様に、ローカルデマンド制御装置200は、時間帯毎のテナントB内の設備機器208−1〜208−3の消費電力量の上限値(時間帯別テナントBローカル上限値)を設定する(ステップS102)。具体的には、制御部202内のローカル上限値設定部222は、作業者による図示しない操作部の操作等に応じて、時間帯別テナントBローカル上限値を生成し、メモリ204に記憶させる。メモリ204には、設備機器208−1〜208−3の消費電力量の実績値であるローカル電力量が記憶されている。このため、作業者は、その実績値に基づいて適切な時間帯別テナントBローカル上限値を定めることができる。以下、時間帯別テナントAローカル上限値及び時間帯別テナントBローカル上限値をまとめて、適宜「時間帯別ローカル上限値」と称する。
【0023】
全体デマンド制御装置300は、ビル全体の消費電力量の上限値、すなわち、テナントA内の設備機器108−1〜108−3の消費電力量とテナントB内の設備機器208−1〜208−3の消費電力量との合計の上限値(全体上限値)を設定する(ステップS103)。具体的には、制御部302内の全体上限値設定部322は、作業者による図示しない操作部の操作等に応じて、全体上限値を生成し、メモリ304に記憶させる。メモリ304には、設備機器108−1〜108−3及び設備機器208−1〜208−3の消費電力量の実績値である全体電力量が記憶されている。このため、作業者は、その実績値に基づいて適切な全体上限値を定めることができる。全体上限値は、時間帯別テナントAローカル上限値及び時間帯別テナントBローカル上限値と同様に、時間帯毎の上限値でもよく、時間帯によらず一定の上限値でもよい。
【0024】
ローカルデマンド制御装置100は、所定のタイミング(例えば、1日の中で予め定められたタイミング)で、時間帯別テナントAローカル上限値を送信する。全体デマンド制御装置300は、時間帯別テナントAローカル上限値を受信する(ステップS104)。
【0025】
具体的には、ローカルデマンド制御装置100内の制御部102は、メモリ104から時間帯別テナントAローカル上限値を読み出して通信部105へ出力する。通信部105は、時間帯別テナントAローカル上限値に、全体デマンド制御装置300内の通信部305に付与されているIPアドレスやMACアドレスを宛先として付加するとともに、通信部105に付与されているIPアドレスやMACアドレスを送信元として付加する。更に、通信部105は、宛先及び送信元が付加された時間帯別テナントAローカル上限値を通信回線400へ出力する。一方、全体デマンド制御装置300内の通信部305は、宛先が自身である時間帯別テナントAローカル上限値を取得する。通信部305は、取得した時間帯別テナントAローカル上限値を制御部302へ出力する。
【0026】
ローカルデマンド制御装置200は、所定のタイミングで、時間帯別テナントBローカル上限値を送信する。全体デマンド制御装置300は、時間帯別テナントBローカル上限値を受信する(ステップS105)。具体的な処理は、ステップS104と同様である。すなわち、ローカルデマンド制御装置200内の制御部202は、メモリ204から時間帯別テナントBローカル上限値を読み出して通信部205へ出力する。通信部205は、時間帯別テナントBローカル上限値に、全体デマンド制御装置300内の通信部305に付与されているIPアドレスやMACアドレスを宛先として付加するとともに、通信部205に付与されているIPアドレスやMACアドレスを送信元として付加する。更に、通信部205は、宛先及び送信元が付加された時間帯別テナントBローカル上限値を通信回線400へ出力する。一方、全体デマンド制御装置300内の通信部305は、宛先が自身である時間帯別テナントBローカル上限値を取得する。通信部305は、取得した時間帯別テナントBローカル上限値を制御部302へ出力する。
【0027】
全体デマンド制御装置300は、時間帯毎に、時間帯別テナントAローカル上限値と時間帯別テナントBローカル上限値との合計値が全体上限値を超過しているか否かの判定(超過判定)を行う(ステップS106)。
【0028】
具体的には、制御部302内の上限値変更部324は、ステップS104において受信した時間帯別テナントAローカル上限値とステップS105において受信した時間帯別テナントBローカル上限値との合計値を算出する。次に、上限値変更部324は、メモリ304から全体上限値を読み出す。更に、上限値変更部324は、時間帯毎に、当該時間帯に対応する合計値と全体上限値とを比較して、合計値が全体上限値を超過しているか否かを判定する。
【0029】
図3は、時間帯別ローカル上限値及び全体上限値の時間遷移を示す図である。図3(A)に示すように、時間帯T1〜T6のそれぞれにおいて、時間帯別テナントAローカル上限値(LA)が設定されるとともに、図3(B)に示すように、時間帯T1〜T6のそれぞれにおいて、時間帯別テナントBローカル上限値(LB)が設定される場合を考える。
【0030】
図3(C)に示すように、時間帯によらず一定の全体上限値(LT)が設定されている場合、時間帯別テナントAローカル上限値(LA)と時間帯別テナントBローカル上限値(LB)との合計値(LA+LB)は、時間帯T4において、全体上限値(LT)を超過する。また、図3(D)に示すように、時間帯毎に全体上限値(LT)が設定されている場合、時間帯別テナントAローカル上限値(LA)と時間帯別テナントBローカル上限値(LB)との合計値(LA+LB)は、時間帯T4において、全体上限値(LT)を超過する。
【0031】
時間帯別テナントAローカル上限値と時間帯別テナントBローカル上限値との合計値が全体上限値を超過している時間帯(超過時間帯)が存在する場合、全体デマンド制御装置300は、ローカルデマンド制御装置100及びローカルデマンド制御装置200の少なくとも一方において、超過時間帯における時間帯別ローカル上限値の低下量を示す削減値を設定する(ステップS107)。
【0032】
具体的には、制御部302内の上限値変更部324は、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値と時間帯別テナントBローカル上限値との合計値から全体上限値を差し引いた値(削減値)を算出する。次に、上限値変更部324は、削減値をローカルデマンド制御装置100及びローカルデマンド制御装置200に配分する。ここで、上限値変更部324は、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値と時間帯別テナントBローカル上限値のうち、値の大きい方を特定し、特定した時間帯別ローカル上限値に対応するローカルデマンド制御装置にのみ全ての削減値を配分してもよい。あるいは、上限値変更部324は、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値と時間帯別テナントBローカル上限値とに応じて、削減値をローカルデマンド制御装置100及びローカルデマンド制御装置200に比例按分してもよい。
【0033】
例えば、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値が40kWh、時間帯別テナントBローカル上限値が80kWhであって、削減値が10kWhである場合を考える。この場合、上限値変更部324は、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値40kWhと時間帯別テナントBローカル上限値80kWhのうち、値の大きい方である時間帯別テナントBローカル上限値80kWhを特定し、対応するトータルデマンド制御装置200にのみ全ての削減値10kWhを配分する。あるいは、上限値変更部324は、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値40kWhと時間帯別テナントBローカル上限値80kWhとに応じて、削減値10kWhを比例按分し、ローカルデマンド制御装置100に対して3.3kWhを配分し、ローカルデマンド制御装置200に対して6.7kWhを配分する。
【0034】
削減値の設定の結果、ローカルデマンド制御装置100に対して削減値を配分した場合、全体デマンド制御装置300は、ローカルデマンド制御装置100に対して、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値の変更の要求(ローカル上限値変更要求情報)を送信する。ローカルデマンド制御装置100は、ローカル上限値変更要求を受信する(ステップS108)。
【0035】
具体的には、全体デマンド制御装置300の制御部302内の上限値変更部324は、超過時間帯の情報と、ローカルデマンド制御装置100に対して配分した削減値とを含んだローカル上限値変更要求情報を生成し、通信部305へ出力する。通信部305は、ローカル上限値変更要求情報に、ローカルデマンド制御装置100内の通信部105に付与されているIPアドレスやMACアドレスを宛先として付加するとともに、通信部305に付与されているIPアドレスやMACアドレスを送信元として付加する。更に、通信部305は、宛先及び送信元が付加されたローカル上限値変更要求情報を通信回線400へ出力する。一方、ローカルデマンド制御装置100内の通信部105は、宛先が自身であるローカル上限値変更要求情報を取得し、制御部102へ出力する。
【0036】
また、削減値の設定の結果、ローカルデマンド制御装置200に対して削減値を配分した場合、全体デマンド制御装置300は、ローカルデマンド制御装置200に対して、超過時間帯における時間帯別テナントBローカル上限値の変更の要求(ローカル上限値変更要求情報)を送信する。ローカルデマンド制御装置200は、ローカル上限値変更要求を受信する(ステップS109)。
【0037】
具体的な処理は、ステップS108と同様である。すなわち、全体デマンド制御装置300の制御部302内の上限値変更部324は、超過時間帯の情報と、ローカルデマンド制御装置200に対して配分した削減値とを含んだローカル上限値変更要求情報を生成し、通信部305へ出力する。通信部305は、ローカル上限値変更要求情報に、ローカルデマンド制御装置200内の通信部205に付与されているIPアドレスやMACアドレスを宛先として付加するとともに、通信部305に付与されているIPアドレスやMACアドレスを送信元として付加する。更に、通信部305は、宛先及び送信元が付加されたローカル上限値変更要求情報を通信回線400へ出力する。一方、ローカルデマンド制御装置200内の通信部205は、宛先が自身であるローカル上限値変更要求情報を取得し、制御部202へ出力する。
【0038】
ローカルデマンド制御装置100は、受信したローカル上限値変更要求情報に基づいて、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値を変更する(ステップS110)。具体的には、制御部102内のローカル上限値設定部122は、ローカル上限値変更要求情報に基づいて超過時間帯と削減値とを認識する。次に、ローカル上限値設定部122は、メモリ104に記憶された超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値を、削減値だけ低下させた値に更新する。
【0039】
ローカルデマンド制御装置200は、受信したローカル上限値変更要求情報に基づいて、超過時間帯における時間帯別テナントBローカル上限値を変更する(ステップS111)。具体的な処理は、ステップS110と同様である。すなわち、制御部202内のローカル上限値設定部222は、ローカル上限値変更要求情報に基づいて超過時間帯と削減値とを認識する。次に、ローカル上限値設定部222は、メモリ204に記憶された超過時間帯における時間帯別テナントBローカル上限値を、削減値だけ低下させた値に更新する。
【0040】
図4は、消費電力量変更の一例を示す図である。図4(A)及び図4(B)は、時間帯T4が超過時間帯であり、超過量が10kWhである場合を示す。図4(A)は、全体デマンド制御装置300が、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値40kWhと時間帯別テナントBローカル上限値80kWhのうち、値の大きい方である時間帯別テナントBローカル上限値に対応するローカルデマンド制御装置200に対してのみ、削減値10kWhを含んだローカル上限値変更要求情報を送信した場合の例である。この場合、ローカルデマンド制御装置200の制御部202内のローカル上限値設定部222は、時間帯別テナントBローカル上限値を80kWhから70kWhに変更する。
【0041】
一方、図4(B)は、全体デマンド制御装置300が、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値40kWhと時間帯別テナントBローカル上限値80kWhに応じて削減値を比例按分し、ローカルデマンド制御装置100に対して、削減値3.3kWhを含んだローカル上限値変更要求情報を送信し、ローカルデマンド制御装置200に対して、削減値6.7kWhを含んだローカル上限値変更要求情報を送信した場合の例である。この場合、ローカルデマンド制御装置100の制御部102内のローカル上限値設定部122は、時間帯別テナントAローカル上限値を40kWhから36.7kWhに変更する。また、ローカルデマンド制御装置200の制御部202内のローカル上限値設定部222は、時間帯別テナントBローカル上限値を80kWhから73.3kWhに変更する。
【0042】
その後、ローカルデマンド制御装置100は、設備機器108−1〜108−3の消費電力量を制御する(ステップS112)。具体的には、制御部102内の電力比較部124は、メモリ104に記憶されているローカル電力量の時間推移に基づいて、将来の所定時間帯における設備機器108−1〜108−3の消費電力量を予測する。次に、電力比較部124は、将来の所定時間帯における予測値と、メモリ104に記憶された、将来の所定時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値とを比較する。将来の所定時間帯における予測値が時間帯別テナントAローカル上限値を超過する場合、負荷制御部126は、将来の所定時間帯が到来したときに、設備機器108−1〜108−3の消費電力量が将来の所定時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値を下回るように、設備機器108−1〜108−3への供給電力を削減したり、遮断する。この際、負荷制御部126は、予め定められた優先度に応じて決定した設備機器に対してのみ、供給電力の制御を行うようにしてもよい。
【0043】
また、ローカルデマンド制御装置200は、設備機器208−1〜208−3の消費電力量を制御する(ステップS113)。具体的な処理は、ステップS113と同様である。すなわち、制御部202内の電力比較部224は、メモリ204に記憶されているローカル電力量の時間推移に基づいて、将来の所定時間帯における設備機器208−1〜208−3の消費電力量を予測する。次に、電力比較部224は、将来の所定時間帯における予測値と、メモリ204に記憶された、将来の所定時間帯における時間帯別テナントBローカル上限値とを比較する。将来の所定時間帯における予測値が時間帯別テナントBローカル上限値を超過する場合、負荷制御部226は、将来の所定時間帯が到来したときに、設備機器208−1〜208−3の消費電力量が将来の所定時間帯における時間帯別テナントBローカル上限値を下回るように、設備機器208−1〜208−3への供給電力を削減したり、遮断する。この際、負荷制御部226は、予め定められた優先度に応じて決定した設備機器に対してのみ、供給電力の制御を行うようにしてもよい。
【0044】
このように、本実施形態における電力制御システム1において、ローカルデマンド制御装置100は、配下の設備機器108−1〜108−3の時間帯毎の消費電力の上限値である時間帯別テナントAローカル上限値を設定して全体デマンド制御装置300へ通知し、ローカルデマンド制御装置200は、配下の設備機器208−1〜208−3の時間帯毎の消費電力の上限値である時間帯別テナントBローカル上限値を設定して全体デマンド制御装置300へ通知する。一方、全体デマンド制御装置300は、設備機器108−1〜108−3及び設備機器208−1〜208−3からなるグループ全体の消費電力量の上限を示す全体上限値を設定するとともに、時間帯別テナントAローカル上限値及び時間帯別テナントBローカル上限値を取得し、所定時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値と時間帯別テナントBローカル上限値との合計値が全体上限値を超過する場合、ローカルデマンド制御装置100及びローカルデマンド制御装置200の少なくとも一方に対して、所定時間帯におけるローカル上限値の変更を要求する。ローカルデマンド制御装置100及びローカルデマンド制御装置200の少なくとも一方は、この要求に応じて所定時間帯における時間帯別ローカル上限値を低下させる。
【0045】
従って、各テナントの消費電力量の上限値をビル全体の消費電力量の上限値に合わせて、予め適切な値に変更することにより、時間帯別ローカル上限値は時間経過に伴って変動し、更には、時間帯別ローカル上限値の合計値が全体上限値を超えないように制御される。これにより、ビル全体の消費電力量の制御が不要となるため、従来のように、テナントの消費電力量の制御とビル全体の消費電力量の制御とが衝突することがなくなり、時間経過に伴って変動する消費電力の適切な制御が可能となる。
【0046】
また、全体デマンド制御装置300は、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値と時間帯別テナントBローカル上限値のうち、値の大きい方に対応するローカルデマンド制御装置にのみ全ての削減値を配分することで、突出した時間帯別ローカル上限値を低くすることができる。また、全体デマンド制御装置300は、超過時間帯における時間帯別テナントAローカル上限値と時間帯別テナントBローカル上限値とに応じて、削減値をローカルデマンド制御装置100及びローカルデマンド制御装置200に比例按分することで、各テナントに公平に削減値を配分することができる。
【0047】
また、ローカルデマンド制御装置100及び200は、配下の設備機器の時間帯毎の消費電力量を予測し、所定時間帯における予測値が、所定時間帯における時間帯別ローカル上限値を超過する場合に、配下の設備機器への供給電力を削減したり、遮断するとこで、消費電力を制御しており、設備機器の消費電力量が時間帯別ローカル上限値を超過することを事前に防止することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態によって限定されるものではない。本発明は、実施形態及び以下の変形例を適宜組み合わせたものも含み、また、それらと均等なものも含む。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、テナントが2つの場合について説明したが、3つ以上のテナントが存在し、各テナントに、ローカルデマンド制御装置と、当該ローカルデマンド制御装置の配下の設備機器が設置されている場合においても、同様に本発明を適用することができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、ビル全体の消費電力制御とビル内の各テナントにおける消費電力制御とについて説明したが、工場全体の消費電力制御と工場内の各小工場における消費電力制御とを行う場合にも、同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100、200 ローカルデマンド制御装置
102、202、302 制御部
104、204、304 メモリ
105、205、305 通信部
106、206、306 電力量計
108−1〜108−3、208−1〜208−3 設備機器
122、222 ローカル上限値設定部
124、224 電力比較部
126、226 負荷制御部
200 ローカルデマンド制御装置
300 全体デマンド制御装置
322 全体上限値設定部
324 上限値変更部
400 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配下の負荷の消費電力を制御する複数の個別電力制御装置と、前記各個別電力制御装置のそれぞれの配下の負荷からなるグループ全体の消費電力を制御する全体電力制御装置とを含む電力制御システムであって、
前記個別電力制御装置は、
前記配下の負荷における時間帯毎の消費電力量の上限を示す個別上限値を設定する個別上限値設定手段と、
前記設定された時間帯毎の個別上限値を前記全体電力制御装置へ通知する個別上限値通知手段と、
を備え、
前記全体電力制御装置は、
前記グループ全体の消費電力量の上限を示す全体上限値を設定する全体上限値設定手段と、
前記各個別電力制御装置からの前記時間帯毎の個別上限値を取得する個別上限値取得手段と、
前記取得された所定時間帯における個別上限値の合計値が前記全体上限値を超過する場合に、前記個別電力制御装置に対して、前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を通知する変更要求通知手段と、
を備え、
前記個別電力制御装置は、
前記全体電力制御装置からの前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を取得する変更要求取得手段と、
前記所定時間帯における個別上限値の変更要求に応じて、前記所定時間帯における個別上限値を変更する個別上限値変更手段と、
を備えることを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
前記変更要求通知手段は、前記所定時間帯における消費電力の削減値を含んだ前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を通知し、
前記個別上限値変更手段は、前記設定された所定時間帯における個別上限値から前記所定時間帯における消費電力の削減値を差し引いた値を、変更後の前記所定時間帯における個別上限値とすることを特徴とする請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記変更要求通知手段は、前記複数の個別電力制御装置のうち、前記所定時間帯における個別上限値が最大である個別電力制御装置に対して、前記所定時間帯における消費電力の削減値を含んだ前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を通知することを特徴とする請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記変更要求通知手段は、前記複数の個別電力制御装置に対して、前記所定時間帯における個別上限値に応じて、前記所定時間帯における消費電力の削減値を比例按分した値を含んだ前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を通知することを特徴とする請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記個別電力制御装置は、
前記配下の負荷の前記時間帯毎の消費電力量の予測値を取得する予測手段と、
前記予測手段により取得された前記所定時間帯における予測値が、前記個別上限値変更手段によって変更された前記所定時間帯における個別上限値を超過する場合に、前記配下の負荷の消費電力を制御する負荷制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電力制御システム。
【請求項6】
複数の個別電力制御装置のそれぞれの配下の負荷からなるグループ全体の消費電力を制御する全体電力制御装置であって、
前記グループ全体の消費電力量の上限を示す全体上限値を設定する全体上限値設定手段と、
前記各個別電力制御装置からの前記個別電力制御装置の配下の負荷における時間帯毎の消費電力量の上限を示す個別上限値を取得する個別上限値取得手段と、
前記取得された所定時間帯における個別上限値の合計値が前記全体上限値を超過する場合に、前記個別電力制御装置に対して、前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を通知する変更要求通知手段と、
を備えることを特徴とする全体電力制御装置。
【請求項7】
配下の負荷の消費電力を制御する個別電力制御装置であって、
前記配下の負荷の時間帯毎の消費電力量の上限を示す個別上限値を設定する個別上限値設定手段と、
前記設定された時間帯毎の個別上限値を、複数の個別電力制御装置のそれぞれの配下の負荷からなるグループ全体の消費電力を制御する全体電力制御装置へ通知する個別上限値通知手段と、
を備えることを特徴とする個別電力制御装置。
【請求項8】
配下の負荷の消費電力を制御する個別電力制御装置であって、
前記配下の負荷の時間帯毎の消費電力量の上限を示す個別上限値を設定する個別上限値設定手段と、
複数の個別電力制御装置のそれぞれの配下の負荷からなるグループ全体の消費電力を制御する全体電力制御装置からの所定時間帯における個別上限値の変更要求を取得する変更要求取得手段と、
前記所定時間帯における個別上限値の変更要求に応じて、前記所定時間帯における個別上限値を変更する個別上限値変更手段と、
を備えることを特徴とする個別電力制御装置。
【請求項9】
複数の個別電力制御装置のそれぞれの配下の負荷からなるグループ全体の消費電力を制御する電力制御方法であって、
前記グループ全体の時間帯毎の消費電力量の上限を示す全体上限値を設定し、
前記各個別電力制御装置からの前記個別電力制御装置の配下の負荷における時間帯毎の消費電力量の上限を示す個別上限値を取得し、
前記取得された所定時間帯における個別上限値の合計値が前記全体上限値を超過する場合に、前記個別電力制御装置に対して、前記所定時間帯における個別上限値の変更要求を通知する
ことを特徴とする電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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