説明

電力制御システム

【課題】本発明は、自家発電装置の自家発比率を増加し、電力会社からの買電料金を削減することができる電力制御システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る電力制御システムは、広域電力系統5から電力を受け、当該電力を設備における負荷2に出力する受電部1と、設備における負荷2に供給する電力の発電を行う自家発電装置4と、設備における電力系統に配置され、電力の充放電が可能な蓄電池3とを備えている。そして、蓄電池3は、受電部1における受電電力の変化と、自家発電装置4における発電電力の変化とに基づいて、充放電を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域電力系統からの電力と自家発電装置の発電による電力とを利用した負荷の運転の際に適用できる、電力制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広域電力系統(つまり電力会社)からの電力供給を少なくするために、工場などの電力需要の多い設備において自家発電装置を配設することがある。また、自家発電装置を設置する場合に、「逆潮流なし」の契約を電力会社と締結することもある。
【0003】
この場合、広域電力系統からの電力供給を極力抑えつつ、逆潮流が発生しないように、広域電力系統からの受電電力の変化に追従するように、自家発電装置は、発電の制御を実施する。
【0004】
なお、自家発電装置を備えた場合における逆潮流防止を目的とした従来技術として、たとえば特許文献1が存在する。
【0005】
当該特許文献1に係る技術では、工場負荷が急激に減少し、自家発電装置が発電する電力によって商用電源に対する逆潮流が発生する前に、受電電力用電力変換器によって受電電力が最低受電設定値より低下することを検出している。ガバナコントローラは、受電電力の低下が高速制御開始設定時間を超えて継続すると、切換えスイッチを高速制御用演算器側に切換えて、自家発電装置の発電出力が予め設定される発電量だけ減少するようにエンジンガバナからの燃料供給量を制限する制御を行っている。また、自家発電装置からの発電出力の低下で受電電力が回復すれば、エンジンガバナの燃料供給量の制御は、速度制御用演算器による通常の速度制御に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−299110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自家発電装置の自家発容量が負荷よりも大きい需要家においては、電力会社(広域電力系統)からの買電を減らして、自家発量を増やしたい。しかしながら、自家発量を増やしすぎると、広域電力系統への逆潮流が発生する。一方、広域電力系統からの受電電力に追従した自家発電装置の発電制御において、当該自家発電装置の当該追従速度は、それほど速くない。したがって、「逆潮流なし」の契約を行っている場合には、逆潮流の発生を防止するために、負荷に対して余裕を持って、自家発電装置による発電量を、全体的に絞って発電する必要がある。
【0008】
図4は、自家発電装置による発電量を全体的に絞って発電している様子を示す図である。
【0009】
図4に示すように、自家発電装置は、広域電力系統から負荷に供給される電力(つまり、受電部で受電する電力)の変化に追従した、発電制御を実施している。自家発電装置の追従速度を考慮して、急激な負荷変動に対して逆潮流が発生しないように(図4の丸で囲まれた部分参照)、自家発電装置の発電量を全体的に抑制している(つまり、自家発電装置の自家発電比率を抑制している)。
【0010】
そこで、本発明は、自家発電装置の自家発比率を増加し、電力会社からの買電料金を削減することができる電力制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電力制御システムは、広域電力系統から電力を受け、当該電力を設備における負荷に出力する受電部と、前記設備における前記負荷に供給する電力の発電を行う自家発電装置と、前記設備における電力系統に配置され、電力の充放電が可能な蓄電池とを、備えており、前記蓄電池は、前記受電部における受電電力の変化と、前記自家発電装置における発電電力の変化とに基づいて、充放電を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電力制御システムは、広域電力系統から電力を受け、当該電力を設備における負荷に出力する受電部と、前記設備における前記負荷に供給する電力の発電を行う自家発電装置と、前記設備における電力系統に配置され、電力の充放電が可能な蓄電池とを、備えており、前記蓄電池は、前記受電部における受電電力の変化と、前記自家発電装置における発電電力の変化とに基づいて、充放電を制御する。
【0013】
したがって、本発明に係る電力制御システムは、逆潮流を防止することができる。よって、「逆潮流なし」の契約をした場合に、当該契約違反を防止することができる。また、逆潮流が発生すると、自家発電装置に大きな負担がかかるが、本発明に係る電力制御システムでは逆潮流を防止することができるので、当該逆潮流により自家発電装置に過度の負担がかかることを防止できる。
【0014】
また、本発明に係る電力制御システムは、自家発電装置の自家発電比率を全体的に増加させることができる。これにより、広域電力系統からの買電を少なくすることができ、結果として基本電力料金の削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】受電部1、蓄電池3および自家発電装置4が通信可能に接続されている構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電力制御システムの動作および効果を説明する図である。
【図4】逆潮流を防止するために自家発電装置の自家発電比率を抑制している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0017】
<実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る電力制御システムの構成を示す概略図である。
【0018】
当該電力制御システムは、電力供給を受けて稼働する複数の負荷2が使用される工場やビルなど(以下、当該複数の負荷2が使用される工場やビルなどの場所を「設備」と称する)において設置され、当該設備における電力制御を行う。図1に示すように、本実施の形態に係る電力制御システムは、受電部1と、負荷2と、蓄電池3と自家発電装置4とから構成されている。
【0019】
受電部1は、広域電力系統5(つまり電力会社)から供給される電力を受け、当該電力を設備(図1では、工場を例示している)における負荷2等に出力する。受電部1は、広域電力系統5と設備側の電力系統との境界となる。ここで、図1では、図面簡略化のため、負荷2は一つのみ図示しているが、工場などには、複数の負荷2が存在する。負荷2としては、生産ライン装置、測定装置、試験装置、空調装置、照明装置などがある。
【0020】
自家発電装置4は、設備側に設置され、発電の制御が可能である。当該自家発電装置4は、負荷電力の変動に追従した、つまり受電部1における受電電力の変化に追従した、発電制御を行う。当該自家発電装置4で発電された電力は、負荷3に対して出力され、また蓄電池3の充電にも寄与することもある。
【0021】
蓄電池3は、充放電の応答が速い(つまり、充放電能力「Cの高い(=1C以上)」)例えばリチウム充電池が採用でき、設備側の電力系統に設置される。当該蓄電池3は、受電部1から出力される電力や自家発電装置4で発電され出力された電力を、充電することができる。また、蓄電池3は、電力を放電することにより、当該放電電力を負荷2に対して出力することもできる。なお、設備側に設置される蓄電池3の数は、1つに限らず複数であっても良い。
【0022】
また、蓄電池3は、図2に示すように、ネットワーク通信網を介して、受電部1、自家発電装置4などと、双方向通信可能に接続されている。当該蓄電池3は、図2に示すネットワーク構成を利用して、受電部1における広域電力系統5からの受電状況(負荷電力の消費電力状況とも把握できる)と、自家発電装置4での発電状況とを、監視・管理している。
【0023】
また、蓄電池3には、設定値(後述する、第一の設定値および第二の設定値)が設定されており、当該設定値と受電部1の受電状況と自家発電装置4の発電状況とを考慮して、充放電の制御を実施する。当該蓄電池3による充放電制御については、本実施の形態に係る電力制御システムの動作の説明において詳述する。
【0024】
次に、本実施の形態に係る電力制御システムの動作を、図3を用いて説明する。ここで、図3の縦軸は電力であり、図3の横軸は時間である。また、図3には、受電部1における受電電力の変動の様子、本発明に係る自家発電装置4における発電電力の変動の様子、および本発明を適用しない場合の自家発電装置における発電電力の変動の様子を示している。
【0025】
まず、前提として、蓄電池3には、第一の設定値と第二の設定値とが、予め設定されている(ここで、第一の設定値>第二の設定値である)。また、蓄電池3は、受電部1における受電電力の変動および自家発電装置4における発電電力の変動を、図2に示したネットワーク構成を利用して、モニターしている。
【0026】
また、自家発電装置4は、受電部1における受電電力の変動に追従した発電制御を実施している。なお、自家発電装置4は、受電部1における受電電力の変動と正確に一致する変動を行うことができない。これは、自家発電装置4の追従速度がさほど迅速でないためである。したがって、図3に示すように、自家発電装置4は、受電部1における受電電力の大きな変化の流れに追従する発電制御となる。
【0027】
さて、蓄電池3は、受電部1における受電電力の変化と自家発電装置4における発電電力の変化とに基づいて、充放電を制御する。具体的には、次のとおりである。
【0028】
蓄電池3における受電部1および自家発電装置4のモニターの結果、蓄電池3が、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差D1が、第一の設定値以上になったことを検出したとする(差D1≧第一の設定値)。このとき、蓄電池3は、放電を実施する。なお、蓄電池3が、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差が、第一の設定値未満になったことを検出したとき、当該放電を停止する。なお、放電開始と停止する設定値は、チャタリングを防止する目的のために、ヒステリシスを設けることも可能である。
【0029】
図3の丸で囲まれた領域Aに示すように、蓄電池3による放電により、受電部1における受電電力の削減が図られ、かつ、受電部1における受電電力の変動も滑らかになる(つまり、突出した変動となることが防止できる)。図3の当該領域Aの点線で示した曲線は、蓄電池3による放電が実施されなかった場合を示す。
【0030】
上記から分かるように、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差が大きくなるときに、蓄電池3は放電を行う。ここで、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差がどの程度離れたときに、放電を行う必要があるかは、自家発電装置4の能力と経験則によって決定される。つまり、第一の設定値は、自家発電装置4の能力と経験則に応じて決定される。
【0031】
上記に対して、蓄電池3における受電部1および自家発電装置4のモニターの結果、蓄電池3が、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差D2が、第二の設定値以下になったことを検出したとする(差D2≦第二の設定値)。このとき、蓄電池3は、充電を実施する。なお、蓄電池3が、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差が、第二の設定値より大きくなったことを検出したとき、当該充電を停止する。なお、充電開始と停止する設定値は、チャタリングを防止する目的のために、ヒステリシスを設けることも可能である。
【0032】
図3の丸で囲まれた領域Bに示すように、蓄電池3による充電により、受電部1における受電電力の変動が滑らかになる(つまり、突出した変動となることが防止できる)。これにより、受電部1における受電電力の急激な減少により、自家発電装置4の発電電力が、受電部1における受電電力より大きくなることを防止できる。つまり、逆潮流が発生することを防止できる。図3の当該領域Bの点線で示した曲線は、蓄電池3による充電が実施されなかった場合を示す。
【0033】
上記から分かるように、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差が小さくなるときに、蓄電池3は充電を行う。ここで、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差がどの程度近づいたときに、充電を行う必要があるかは、自家発電装置4の応答速度より、自家発電装置4での追従速度では逆潮流が発生する電力差により決定される。つまり、第二の設定値は、自家発電装置4の応答速度より、自家発電装置4での追従速度では逆潮流が発生する電力差に応じて決定される。
【0034】
また、本実施の形態に係る発明では、蓄電池3による充電により逆潮流が発生することを防止できるので、逆潮流を考慮して、自家発電装置4による発電量を全体的に絞って発電する必要もない。したがって、図3に示すように、本発明を適用しない場合の自家発電装置と比べて、本発明に係る自家発電装置4の方が、自家発電比率を全体的に増加させることができる。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係る電力制御システムでは、蓄電池3は、受電部1における受電電力の変化と自家発電装置4における発電電力の変化とに基づいて、充放電を制御している。具体的に、蓄電池3は、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差が第二の設定値以下になったとき、充電を行う。
【0036】
したがって、本実施の形態に係る電力制御システムでは、逆潮流を防止することができる。よって、「逆潮流なし」の契約をした場合に、当該契約違反を防止することができる。また、逆潮流が発生すると、自家発電装置4に大きな負担がかかるが、本実施の形態に係る電力制御システムでは逆潮流を防止することができるので、当該逆潮流により自家発電装置4に過度の負担がかかることを防止できる。
【0037】
また、本実施の形態に係る電力制御システムでは逆潮流を防止することができるので、上述したように、自家発電装置4の自家発電比率を全体的に増加させることができる。これにより、広域電力系統5からの買電を少なくすることができ、結果として基本電力料金の削減も可能となる。
【0038】
また、本実施の形態に係る電力制御システムでは、蓄電池3は、受電部1における受電電力と自家発電装置4における発電電力との差が第一の設定値以上になったとき、放電を行う。
【0039】
したがって、本実施の形態に係る電力制御システムは、受電部1における受電電力が急激に増加することを防止できる。これにより、広域電力系統5からの買電を少なくすることができ、結果として基本電力料金の削減も可能となる。
【0040】
また、本実施の形態に係る電力制御システムは、蓄電池3による充放電動作により、受電部1における受電電力の急激な増加および急激な減少を防止できる(つまり、図3の領域A,Bに示すように、受電部1における受電電力の変動を滑らかにすることができる)。これにより、受電部1の受電電力に追従して発電制御を行う自家発電装置4は、急激な発電変化動作を行うことが防止でき、当該自家発電装置4に過度の動作負担がかかることを防止できる。
【符号の説明】
【0041】
1 受電部
2 負荷
3 蓄電池
4 自発発電装置
5 広域電力系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域電力系統から電力を受け、当該電力を設備における負荷に出力する受電部と、
前記設備における前記負荷に供給する電力の発電を行う自家発電装置と、
前記設備における電力系統に配置され、電力の充放電が可能な蓄電池とを、備えており、
前記蓄電池は、
前記受電部における受電電力の変化と、前記自家発電装置における発電電力の変化とに基づいて、充放電を制御する、
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
前記自家発電装置は、
前記受電部における受電電力の変化に追従した発電制御を行い、
前記蓄電池は、
前記受電部における受電電力と前記自家発電装置における発電電力との差が、予め設定された第一の設定値以上になったとき、放電を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記自家発電装置は、
前記受電部における受電電力の変化に追従した発電制御を行い、
前記蓄電池は、
前記受電部における受電電力と前記自家発電装置における発電電力との差が、予め設定された第二の設定値以下になったとき、充電を行う、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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