説明

電力制御装置、電力制御プログラムおよび電力制御方法

【課題】電力過不足に即時に対応し、送電時の電力ロスを軽減することを課題とする。
【解決手段】発電設備および蓄電設備を備えた領域ごとに設置されるスマートメータの制御装置は、記憶部と、選択部と、送受信部とを有する。記憶部は、送電網および通信網で接続された他の領域ごとに、当該他の領域との間の送電負荷に係る評価値と、当該他の領域の電力収支とを対応付けて記憶する。選択部は、自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、記憶部に記憶された評価値および電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の領域を選択する。送受信部は、選択部によって選択された他の領域に対して、当該他の領域から自領域に対して送電網を介して電力を送電すべき旨の要求を、通信網を介して送信する。なお、選択部の送信とスイッチとを連携させることにより、送電要求とスイッチ制御が同時に実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、電力制御装置、電力制御プログラムおよび電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電力網は、電力会社や太陽光発電設備などを有する各家庭など、電力の供給元が複数存在するネットワーク構造を有しており、電力需給の管理が困難となっている。そこで、電力網を効率的に制御し、電力網全体の電力使用量を効率化する仕組みの構築が進められている。
【0003】
例えば、電力網の各領域ごとに電力需給を制御する技術がある。図26は、電力網の一例を示す図である。図26に示すように、この技術は、電力網Aをエリアと呼ばれる複数の領域Aとゾーンと呼ばれる複数の領域Aに分割する。また、電力需給を制御する技術は、ゾーン内の各家庭にスマートメータを設置する。このスマートメータは、定期的にその時点での電力の供給可能量、および要求される電力消費量とを含んだ電力収支に関する情報を自身が属するゾーン内の他のスマートメータに送信する。また、このスマートメータは、他のスマートメータから電力収支に関する情報を受信すると、自身の電力収支に関する情報に基づいて応答を送信する。このようして、電力需給を制御する技術は、ゾーン内での電力需給のマッチングを行うことにより、ゾーン内における電力需給を制御する。
【0004】
また、上述の電力需給を制御する技術は、図26に示すように、エリア内の電力需給を管理するエリアブローカーDを各エリアに設置する。このエリアブローカーDは、各ゾーン内で集約された電力の需給収支に関する情報に基づいてエリア内の各ゾーンに関する電力の過不足を把握する。そして、エリアブローカーDは、ゾーン間での電力の融通を決定することにより、エリア内における電力需給を制御する。
【0005】
なお、電力需給の制御に関連する技術として、蓄電ステーションを利用することによって、短時間における需給調整、昼や夜などの時間帯に応じた需給調整、晴や雨など天候に応じた需給調整などのエネルギーマネジメントを行う技術などもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】清水 翔、外4名、「ゾーン内最適化およびエリア内最適化に基づく電力消費量最適化アーキテクチャの提案」、[online]、2010年3月16日、電子情報通信学会総合大会、[2011年2月22日検索]、インターネット<http://biblio.yamanaka.ics.keio.ac.jp/file/shimizu_ieice_zenkoku_bs_08_010.pdf>
【非特許文献2】山口 雅英、(株)ジーエス・ユアサ パワーサプライ、「新エネルギー分野における蓄電池技術」、[online]、2008年3月14日、[2011年2月22日検索]、インターネット<http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80423b04j.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが,非特許文献1の技術では、ゾーン内最適化はローカル(各家庭間)で即時マッチング(即時に電力を供給しあう)を基本とする。このため、非特許文献1の技術では、ゾーン内での電力需給の大幅な偏りや時間軸方向での電力使用量のばらつきを最適化することは難しいことが示されている。例えば、ある家庭の電力使用量が電力供給量を上回った場合に、即座に電力不足を検知し、速やかに電力を供給することは困難であった。また、太陽光発電など、各家庭に設置される発電装置は、低電圧の直流電源により送電を行う。低電圧の直流電源により送電を行う場合には、距離に比例して送電時における電力の損失が大きくなる。しかしながら、上述した電力需給を制御する技術は、送電を行う場合に、電力の供給を行う側と電力の供給を受ける側との位置関係が考慮されていないので、供給可能な側が電力の供給を受ける側の電力不足を即座に検知できないだけでなく、送電時の電力の損失が大きくなる場合が考えられるという問題がある。なお、上述した蓄電ステーションを利用する技術でも、需給調整などのエネルギーマネジメントを行う場合に、電力の供給を行う側と電力の供給を受ける側との位置関係を考慮するものではないので、送電までの遅延と送電時における電力の損失は起こり得る。
【0008】
また、電力網に蓄電ステーションが収容されている場合には、蓄電ステーションから電力の供給を受けた方が送電時の電力の損失が少ない場合も考えられる。しかし、上述した電力需給を制御する技術は、家庭間の電力需給を前提としているので、蓄電ステーションが電力網に収容されていても、送電時の電力の損失を免れない。
【0009】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、電力需給の過不足を速やかに検出し、相互に供給可能することが可能な電力制御装置、電力制御プログラムおよび電力制御方法であって、さらに送電時の電力ロスを軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の開示する電力制御装置は、一つの態様において、発電設備および蓄電設備を備えた領域ごとに設置される。そして、電力制御装置は、記憶部と、選択部と、送受信部とを有する。記憶部は、送電網および通信網で接続された他の領域ごとに、当該他の領域との間の送電負荷に係る評価値と、当該他の領域の電力収支とを対応付けて記憶する。選択部は、自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、前記記憶部に記憶された評価値および電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の領域を選択する。また、選択部は、送電の要求先となる他の領域を選択し、スイッチと連動することで、サーバ等の中央制御装置を介することなく、自律分散的に速やかに送電網の切り替えを行う。送受信部は、前記選択部によって選択された他の領域に対して、当該他の領域から自領域に対して前記送電網を介して電力を送電すべき旨の要求を、前記通信網を介して送信する。また、送受信部は、他の領域が送信した前記送電要求を受信する。
【発明の効果】
【0011】
本願の開示する技術の一つの態様によれば、送電要求とスイッチ(スイッチの開閉制御)が同時に行われるので速やかな電力供給が可能となり、さらに送電時の電力ロスを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1に係る全体構成を示す図である。
【図2】図2は、電力送電網のイメージ図である。
【図3】図3は、スマートメータの構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、検針情報の一例を示す図である。
【図6】図6は、実施例1に係る経路情報の一例を示す図である。
【図7】図7は、パケットの構成例を示す図である。
【図8】図8は、経路情報の生成方法の一例を示す図である。
【図9】図9は、スイッチの開閉制御パターンの一例を示す図である。
【図10】図10は、電力受給のイメージを示す図である。
【図11】図11は、電力供給のイメージを示す図である。
【図12】図12は、電力中継のイメージを示す図である。
【図13】図13は、電力中継のイメージを示す図である。
【図14】図14は、スイッチの構成例を示す図である。
【図15】図15は、スイッチの構成例を示す図である。
【図16】図16は、実施例1に係る処理の流れを示す図である。
【図17】図17は、電力制御処理の流れを示す図である。
【図18】図18は、電力受給先決定処理の流れを示す図である。
【図19】図19は、電力受給ルートの接続順序の一例を示す図である。
【図20】図20は、実施例2に係る全体構成を示す図である。
【図21】図21は、蓄電ステーションの構成を示すブロック図である。
【図22】図22は、実施例2に係る経路情報の一例を示す図である。
【図23】図23は、供給可能量の説明に用いる図である。
【図24】図24は、実施例2に係る蓄電ステーションによる処理の流れを示す図である。
【図25】図25は、電力制御プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【図26】図26は、電力網の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しつつ、本願の開示する電力制御装置、電力制御プログラムおよび電力制御方法の一実施形態について説明する。後述する実施例は一実施形態にすぎず、本願の開示する電力制御装置、電力制御プログラムおよび電力制御方法を限定するものではない。また、後述する各実施例は処理内容に矛盾を生じさせない範囲で適宜組み合わせることもできる。
【実施例1】
【0014】
[実施例1の構成]
図1は、実施例1に係る全体構成を示す図である。図1に示すように、実施例1では、全体構成として、発電所10と、サーバ20と、蓄電ステーション30と、変電所40と、各家庭とが収容されている。そして、実施例1では、各家庭が、自家庭に設置された発電装置により生成した電力で家庭内の電力消費を賄い、家庭内の電力収支(電力需給のバランス)に応じて、家庭間あるいは家庭と他の電力供給源との間で電力需給を行う場合を例に挙げて説明する。
【0015】
なお、図1に示す発電所10、蓄電ステーション30および変電所40などからなる電力系統の構成は一例であり、この構成に限定されるものではない。また、図1には、説明の便宜上、発電所10およびサーバ20が各1つ、蓄電ステーション30と変電所40が各2つを記載するが、この数に限定されるものではない。また、図1には、説明の便宜上、家庭a、家庭a、家庭b、家庭b、家庭k、家庭k、家庭nおよび家庭nの8つの家庭を記載するが、この数に限定されるものではない。
【0016】
図1に示すように、発電所10は、高圧電線網1を介して変電所40に接続される。そして、発電所10は、高圧電線網1を介して変電所40に対して電力を供給する。また、図1に示すように、サーバ20は、ネットワーク2を介して変電所40に設置されたゲートウェイ(GW:Gate Way)装置に接続される。そして、サーバ20は、ネットワーク2を介して、蓄電ステーション30、変電所40および各家庭との間で電力需給に関する情報をやり取りするための通信を行う。
【0017】
また、図1に示すように、蓄電ステーション30は、通信網3、蓄電送電網4および一般送電網5を介して、変電所40と接続される。そして、蓄電ステーション30は、通信網3を介して、サーバ20、変電所40、および各家庭との間で電力需給に関する情報をやり取りするための通信を行う。
【0018】
また、図1に示すように、変電所40は、通信網3を介してサーバに接続される。また変電所40は、通信網3、蓄電送電網4および一般送電網5を介して、蓄電ステーション30と接続される。また、変電所40は、通信網3、蓄電送電網4および一般送電網5を介して、各家庭と接続される。そして、変電所40は、通信網3を介して、サーバ20、蓄電ステーション30および各家庭との間で電力需給に関する情報をやり取りするための通信を行う。また、変電所40は、蓄電送電網4を介して、蓄電ステーション30からの電力を各家庭に供給する。また、変電所40は、一般送電網5を介して、発電所10からの電力を各家庭に供給する。
【0019】
また、図1に示すように、各家庭には、各家庭を特定するための情報が付与されている。例えば、図1に示すように、各家庭を特定するための情報として、a、a、b、b、k、k、nあるいはnが付与されている。なお、以下では、例えば、「a」が付与された家庭を家庭aと表記するものとし、他の家庭についても、家庭a、家庭b、家庭b、家庭k、家庭k、家庭nあるいは家庭nのように同様に表記する。また、図1に示すように、家庭a、家庭a、家庭b、家庭b、家庭k、家庭k、家庭n、家庭nは、通信網3や蓄電送電網4、一般送電網5などを介して、他の家庭や変電所40に接続される。各家庭は、通信網3を介して、サーバ20、蓄電ステーション30、変電所40および他の家庭との間で、電力需給に関する情報をやり取りするための通信を行う。また、各家庭は、蓄電送電網4を介して、蓄電ステーション30や他の家庭から電力を受給する。また、各家庭は、一般送電網5を介して、発電所10からの電力を受給する。
【0020】
以下、図2を用いて、電力送電網のイメージを説明する。図2は、電力送電網のイメージ図である。図2に示すように、各家庭には、太陽電池101、充電器102、蓄電池103、家庭用電源104およびスマートメータ200が設置される。太陽電池101は、スマートメータ200に接続される。充電器102は、スマートメータ200および蓄電池103に接続される。蓄電池103は、充電器102に接続される。家庭用電源104はスマートメータ200に接続される。スマートメータ200は、太陽電池101、充電器102および家庭用電源104に接続されるとともに、蓄電送電網4および一般送電網5に接続される。スマートメータ200は、自家庭内の電力収支をモニタし、電力収支に応じて電力の需給に関する処理を実行する。家庭内は、一般送電網5を介して、発電所10から供給される電力を家庭用電源104から使用することができる。また、家庭では、太陽電池101を用いて生成された電力を充電器102を用いて蓄電池103に蓄えるとともに、蓄電池103に蓄えた電力を家庭用電源104から使用することができる。
【0021】
(スマートメータの構成)
以下、図3を用いて、スマートメータの構成を説明する。なお、以下では、説明の便宜上、図1に示す家庭nに設置されているスマートメータ200を主体として、スマートメータ200により実施される処理を説明するが、他の家庭でも同様の処理が実行される。図3は、スマートメータの構成を示すブロック図である。
【0022】
図3に示すように、スマートメータ200は、アンテナ210、アドホック通信装置220、I/F(以下、インターフェースと表記する)230、分配器240、計測器250および制御装置260を有する。アンテナ210は、アドホック通信装置220から出力される通信の電波を発信し、他の家庭からの通信の電波を受信する。アドホック通信装置220は、他の家庭に設置されたスマートメータとの間でネットワークを構築し、このネットワークを介して、電力収支の状況に関する情報をやり取りする為の通信を行う。なお、アドホック通信装置220により構築されるネットワークは、上述した図1に示す通信網の一例である。インターフェース230は、蓄電送電網4、太陽電池101、一般送電網5と接続する接続部である。分配器240は、蓄電池103側への接続と、家庭用電源104側への接続とを切り替える。計測器250は、スマートメータ200が設置されている家庭内の消費電力、発電量および蓄電量を計測する。ここで、計測器250は、発電量や蓄電量を計測する場合には、後述する制御装置260によりスイッチの接続を切り替えて計測を行う。なお、図3では、スマートメータ200に設置された計測器250は1台のみであるが、これに限定されるものではない。例えば、消費電力を計測する為の計測器を家庭用電源104と分配器240との間に設け、発電量を計測する為の計測器を太陽電池101と分配器240との間に設け、蓄電量を計測する為の計測器を充電器102と分配器240との間に設けてもよい。
【0023】
制御装置260は、アドホック通信装置220、インターフェース230、分配器240および各スイッチに接続される。そして、制御装置260は、自家庭内の電力収支をモニタし、自家庭内の電力収支の状況に応じた処理を実行する。なお、ここで、電力収支とは、発電量と消費電力との差を意味する。以下、図4を用いて制御装置260の構成を説明する。図4は、制御装置の構成を示すブロック図である。
【0024】
図4に示すように、制御装置260は、記憶部261、選択部262、送受信部263、経路情報生成部264およびスイッチ制御部265を有する。
【0025】
記憶部261には、図4に示すように、検針情報261aおよび経路情報261bが記憶されている。なお、記憶部261は、例えば、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子である。
【0026】
記憶部261に記憶される検針情報261aは、所定の検針タイミングで、計測器250により計測された消費電力、発電量および蓄電量の情報である。図5は、計測部250により計測される検針情報の一例を示す。図5は、検針情報の一例を示す図である。図5に示すように、記憶部261には、検針情報261aとして、消費電力「0.500キロワット」、発電量「1.000キロワット/時」および蓄電量「1,000ミリアンペア/時」が記憶されている。なお、記憶部261は、全ての検針情報261aをログとして記憶してもよいし、新たな検針情報261aを上書きして記憶してもよい。
【0027】
記憶部261に記憶される経路情報261bは、後述する経路情報生成部264により生成される情報であり、他の家庭ごとに、他の家庭との間の送電負荷に係る評価値と、他の家庭の電力収支とを対応付けて記憶する。なお、経路情報261bは、他の家庭との間の送電負荷に係る評価値として、自家庭と他の家庭との位置関係に基づく距離(ホップ数)を記憶しており、距離の値が大きいほど送電の負荷が大きくなることを示す。なお、他の家庭との間の送電負荷に係る評価値として記憶する情報は、ホップ数に限られるのではなく、他の家庭の緯度および経度からなる位置情報を採用することができる。さらに、他の家庭との間の送電負荷に係る評価値として、他の家庭における送電時の電圧値と、この家庭から送電を受けたときの自家庭での電圧値との差を採用することもできる。以下、図6を用いて、記憶部261に記憶される経路情報261bの一例を説明する。
【0028】
図6は、図1に示す家庭nに設置されたスマートメータ200により生成される経路情報の一例を示す。図6は、実施例1に係る経路情報の一例を示す図である。図6に示すように、記憶部261には、経路情報261bとして、拠点名、消費電力、発電量、蓄電量、距離(ホップ数)および収支の各情報が記憶されている。拠点名は、各家庭や蓄電ステーションなど、電力の需給が行われる各拠点を特定する情報である。消費電力は、各拠点において計測された消費電力の情報である。発電量は、各拠点で計測された発電量の情報である。蓄電量は、各拠点で計測された蓄電量の情報である。距離(ホップ数)は、拠点間の距離を特定する情報である。
【0029】
図6では、拠点名として、上述した各家庭に一意に付与された情報「a」、「b」および「k」や、図1に示す蓄電ステーションに一意に特定する情報「蓄電1」などが記憶されている。また、図6では、拠点ごとに、他の家庭で計測された他の家庭における消費電力が記憶されており、例えば、拠点「a」については「0.500(キロワット)」が記憶されている。また、図6では、拠点ごとに、他の家庭で計測された他の家庭における発電量が記憶されており、例えば、拠点「a」については「1.000(キロワット/時)」が記憶されている。また、図6では、拠点ごとに、他の家庭で蓄電された他の家庭における蓄電量が記憶されており、例えば、拠点「a」については「1,000(ミリアンペア/時)」が記憶されている。
【0030】
また、図6では、拠点ごとに、他の家庭との間の送電負荷に係る評価値である距離(ホップ数)が記憶されており、例えば、拠点「a」については「4」が記憶されている。なお、図6に示す距離(ホップ数)は、他の家庭の電力収支に関する情報を得るためにアドホック通信を利用して拠点間でやり取りされるパケットに含まれる中継情報を用いて、後述する経路情報生成部264により生成される。例えば、図6に示す距離(ホップ数)は、パケットを中継したスマートメータ200の数や、各家庭に設置されたスマートメータ200間を接続する通信網3や蓄電送電網4、一般送電網5など接続パスの数に相当する情報となる。例えば、図1に示す場合を例に挙げれば、家庭kから家庭nにパケットが送信された場合、家庭nからみた家庭kの距離(ホップ数)は「1」となる。なお、中継情報については後述するが、パケットの送信元と宛先との対応関係を示す情報である。なお、蓄電ステーション30は家庭のように電力システム内に新規に導入されるケースは少ないと考えられる。よって、例えば、図1に示すような電力系統の電力システムの敷設が完了した後に、蓄電ステーション30との距離については予め算出して経路情報261bに含めておいてもよいが、後述する経路情報生成部264により生成してもよい。
【0031】
また、図6では、拠点ごとに、他の家庭における発電量と消費電力との差(発電量から消費電力を減算した値)である収支が記憶されており、拠点「a」については「0.500」が記憶されている。なお、蓄電ステーション30については、自己発電や自己消費が得られないので、収支として蓄電量が記憶される。なお、収支の計算は、パケットの受信先にて計算してもよいし、パケットの送信元にて予め計算しておいてもよい。
【0032】
図4に戻り、選択部262は、自己であるスマートメータ200が設置されている家庭の電力収支が所定の閾値未満である場合に、他の家庭との間の送電負荷に係る評価値と他の家庭の電力収支とに基づいて、送電の要求先となる他の家庭を選択する処理を行う。例えば、選択部262は、自家庭の消費電力、発電量および蓄電量の検針時間に到達しているか否かを判定する。検針時間に到達している場合には、選択部262は、計測器250により計測された消費電力、発電量および蓄電量の検針データをそれぞれ取得し、発電量から消費電力を減算した電力収支を計算する。なお、検針は、自家庭への電力の供給が不安定にならないような適当な時間間隔で滞らないような時間間隔で実行する。また、選択部262は、取得した検針データを検針情報261aとして記憶部260に格納するが、履歴として全ての検針データを格納してもよいし、上書き更新する形で検針データを格納してもよい。
【0033】
電力収支の計算後、選択部262は、電力制御処理および受給先決定処理を順に実行する。なお、以下に表記する閾値A、閾値B、閾値Cは予め設定される値であり、少なくとも、閾値Bは閾値Aよりも大きい値であるものとする。まず、選択部262は、電力収支が所定の閾値A未満であるか否かを判定する。つまり、選択部262は、自家庭において所定のレベル以上の電力消費が行われているか否かを判定する。判定の結果、電力収支が所定の閾値A未満である場合には、選択部262は蓄電量を参照し、蓄電量が所定の閾値C未満であるか否かを判定する。つまり、選択部262は、所定レベル以上の蓄電量が確保されているか否かを判定する。判定の結果、蓄電量が所定の閾値C未満である場合には、選択部262は、電力収支が所定の閾値B未満であるか否かを判定する。つまり、選択部262は、上述した判定が行われている間に、蓄電量が所定レベル以上確保されていなくても、自己の発電設備による電力で賄っていけるレベルにまで自家庭の消費電力が減少したか否かを判定する。なお、閾値Bは、上述した閾値Aよりも大きい値とする。
【0034】
判定の結果、選択部262は、電力収支が閾値B未満である場合には、電力受給先決定処理へ移る。つまり、選択部262は、自家庭での消費電力が大きくなり、蓄電量も十分ではないので、安定した電力供給を確保する観点から、自家庭以外の電力の供給元を探索する。
【0035】
まず、選択部262は、記憶部260に記憶されている経路情報261bを参照して、自家庭の近隣で、電力収支が正の家庭があるか否かを検索する。すなわち、選択部262は、他の家庭の中から、電力収支が正で、かつ自家庭から最も近い家庭を検索する。例えば、図6に示す経路情報を例に挙げれば、選択部262は、電力収支が正である家庭a、bおよび家庭kの中から、距離がもっとも小さい(距離=1)の家庭kの距離を、電力収支が正で、自家庭から最も近い家庭kとして検出できる。
【0036】
なお、選択部262は、記憶部260の経路情報261bに、他の家庭との間の送電負荷に係る評価値として、他の家庭の緯度および経度からなる位置情報が記憶されている場合には、次のような判定を行う。すなわち、選択部262は、経路情報261bに含まれる位置情報を参照して、電力収支が正で、かつ自家庭から最も近い家庭を選択する。また、選択部262は、記憶部260の経路情報261bに、他の家庭における送電時の電圧値と、この家庭から送電を受けたときの自家庭での電圧値との差が記憶されている場合には、次のような判定を行う。すなわち、選択部262は、経路情報261bに含まれる電圧値の差を参照して、電力収支が正で、かつ電圧値の差がもっとも小さい他の家庭を選択する。
【0037】
判定の結果、自家庭の近隣で、電力収支が正の家庭を検出できた場合には、続いて、選択部262は、記憶部260に記憶されている経路情報261bを参照して、検出した家庭の方が蓄電ステーション30よりも近いか否かを判定する。つまり、選択部262は、近隣の家庭から送電を受けるよりも、蓄電ステーション30から送電を受けた方が送電時の電力のロスが少ないか否かを判定する趣旨である。判定の結果、検出した家庭の方が、蓄電ステーション30よりも近い場合には、選択部262は、検出した家庭に送電の要求を送信するように送受信部263に指示する。
【0038】
送電の指示後、選択部262は、送電を要求した家庭(スマートメータ200)から、要求に応じる旨の応答を受信したか否かを判定する。判定の結果、要求に応じる旨の応答を受信した場合には、選択部262は、検出した家庭から電力が受給できるように、この家庭との接続をスイッチ制御部265に指示する。一方、判定の結果、要求に応じられない旨の応答を受信した場合には、選択部262は、記憶部260に記憶されている経路情報261bを参照して、再び、送電の要求が可能な家庭の検索を実行する。
【0039】
また、選択部262は、検出した家庭の方が蓄電ステーション30よりも近くなかった場合(蓄電ステーション30の方が近い場合)には、蓄電ステーション30に送電の要求を送信するように送受信部263に指示する。続いて、選択部262は、送電を要求した蓄電ステーション30から、要求に応じる旨の応答を受信したか否かを判定する。判定の結果、要求に応じる旨の応答を受信した場合には、選択部262は、蓄電ステーション30からの送電が受けられるように、蓄電ステーション30との接続をスイッチ制御部265に指示する。一方、判定の結果、要求に応じられない旨の応答を受信した場合には、発電所10から供給される電力を使用可能なように、発電所10との接続をスイッチ制御部265に指示する。
【0040】
また、選択部262は、自家庭の近隣で、電力収支が正の家庭を検出できなかった場合には、発電所10の電力を使用可能なように、発電所10との接続をスイッチ制御部265に指示する。
【0041】
また、選択部262は、電力収支が閾値Bを大きく越えている場合、つまり発電量が消費電力を大きく上回っている場合には、余剰電力を蓄電池103に蓄電するように、充電器102との接続をスイッチ制御部265に指示する。
【0042】
また、選択部262は、他の家庭から送電の要求を受けた場合には、自家庭の電力収支の状況に応じて、送電の要求を受入れるか否かを判定する。そして、選択部262は、受入れるか否かの決定結果を、要求に対する応答として送信するように送受信部263に指示する。送電の要求を受入れることを決定した場合には、選択部262は、他の家庭に対して電力が供給できるように、他の家庭との接続をスイッチ制御部265に指示する。なお、選択部262は、電力の供給を指示する場合、自家庭に設置された発電装置である太陽電池101による電力の供給、または蓄電池103の電力による電力の要求を指示する。
【0043】
また、選択部262は、他家庭間、あるいは他の家庭と蓄電ステーション30との間の電力の需給を中継する場合には、電力が中継されるように、スイッチの開閉をスイッチ制御部265に指示する。
【0044】
また、選択部262は、他の家庭あるいは蓄電ステーション30から送電された電力を受給しつつ、他家庭間、あるいは他の家庭と蓄電ステーション30との間の電力の需給を中継する場合には、対応するスイッチの開閉をスイッチ制御部265に指示する。
【0045】
なお、選択部262からの指示に応じたスイッチ制御のパターンついては、図9〜図13を用いて、以下で後述する。
【0046】
送受信部263は、選択部262からの指示に応じて、送電の要求を他の家庭や蓄電ステーション30に送信するとともに、他の家庭から送信された送電の要求を受信する。なお、送受信部263による送電要求の送信と、後述するスイッチ制御部265のスイッチの開閉動作とが連携されることにより、送電要求の送信とスイッチの開閉とが同時に実行される。
【0047】
また、送受信部263は、アドホック通信装置220を介して、所定の送信周期で、自家庭の消費電力、発電量および蓄電量を含む電力収支に関する情報を他の家庭に通知するためのパケットを送信する。一方、送受信部263は、他の家庭からパケットを受信すると、後述する経路情報生成部264に送るとともに、記憶部260に格納する。なお、送受信部263には、図1に示す他の家庭によるパケットの送信のタイミングと重畳することなく、全体として分散するような送信周期が予め設定されており、この送信周期で1ホップ以内の各家庭にパケットを送信する。なお、送受信部263に設定される送信周期としては、スマートメータ200の処理に負担をかけない通信量も考慮すると、約1分程度の間隔が妥当である。このようにして、スマートメータ200は、家庭間でパケットをやり取りすることで、他の家庭の電力収支の状況を家庭間で互いに把握できるようにする。なお、送受信部263は、例えば、特開2009−267532などに開示されている通信技術で用いられる「Helloパケット」を利用して自家庭の電力収支に関する情報を他の家庭に通知する。「Helloパケット」とは、リンクステート型のルーティングプロトコルで用いられるパケットであり、ネットワークノード間の経路情報の交換やネットワークノードの生存確認などに用いられる。
【0048】
例えば、送受信部263は、上述した所定の送信周期に到達すると、他の家庭から受信済みであるパケットに格納されていた情報を記憶部260から取得する。そして、送受信部263は、取得した受信済みパケットの情報と合わせて、自家庭の電力収支に関する情報および中継情報を挿入したパケットを生成し、他の家庭に対して送信する。
【0049】
図7は、送受信部263が送信するパケットのフレーム構成の一例を示す。図7は、パケットの構成例を示す図である。図7に示すように、送受信部263が送信するパケットのパケットフレームは、パケット長やパケット種別が格納されるアドホックヘッダと、拠点名、消費電力、発電量、蓄電量および中継情報が格納されるデータ領域とを有する。なお、図7に示すデータPおよびデータPは、他の家庭から受信済みのパケットに格納されていた情報に該当する。また、図7に示すデータPは、後述するが、送受信部263により生成されるパケットに挿入される情報である。アドホックヘッダに格納されるパケット長は、パケット全体の長さである。また、アドホックヘッダに格納されるパケット種別は、例えば、「Helloパケット」など、パケットの種別を示す。また、データ領域に格納される拠点名は、例えば、上述した図1に示すように、各家庭を特定するために各家庭に一意に付与された情報である。また、消費電力、発電量、蓄電量は自家庭における消費電力、発電量、蓄電量の検針データである。また、中継情報は、パケットの送信元と宛先との対応関係を示す情報である。
【0050】
図7を参照しつつ、送受信部263によるパケットの送信処理を説明する。送受信部263は、上述した所定の送信周期に到達すると、記憶部260から検針情報261bを取得する。例えば、送受信部263は、図7に示すような検針情報261bから消費電力「0.500」、発電量「1.000」、蓄電量「1,000」を取得する。続いて、送受信部263は、パケットの送信元となる自家庭に付与されている拠点名「n」を取得する。続いて、送受信部263は、中継情報を生成する。例えば、送受信部263は、パケットの送信元となる自家庭に付与された拠点名nと、パケットの送信先なる1ホップ以内の他の家庭に付与された拠点名bとを対応付けた中継情報、例えば、「n→b」を生成する。続いて、送受信部260は、パケットフレームのアドホックヘッダにパケット長およびパケット種別を格納する。続いて、送受信部260は、パケットフレームのデータ領域に、自家庭の拠点名、消費電力、発電量、蓄電量および中継情報からなるデータPを格納する。さらに、送受信部263は、受信済みであるパケットのデータPおよびデータPをパケットフレームに重畳させて生成したパケットを、パケットの宛先である1ホップ以内の他の家庭に向けて送信する。このように、各家庭が1ホップ以内の他の家庭に向けて図7に示すようなパケットを逐次送信することで、家庭間で電力収支に関する情報を共有でき、さらに各家庭において他の家庭との位置関係(距離)を把握できる。
【0051】
なお、送受信部263は、受信済みであるパケットに含まれるデータと、拠点名および中継情報が同一であるデータを含むパケットを新たに受信した場合には、そのまま合成してもよいが、次のように処理してもよい。送受信部263は、パケットに格納されている情報を相互に比較する。その結果、電力収支が同一である場合には、送受信部263は、新たに受信したパケットをそのまま棄却してもよい。なお、電力収支が異なる場合には、送受信部263は、受信済みのパケットに格納されている情報を、新たに受信したパケットの情報で更新する。
【0052】
経路情報生成部264は、送受信部263から取得したパケット、言い換えればアドホック通信を用いて拠点間でやり取りされるパケットから取得した情報に基づいて、上述した記憶部260に記憶されている経路情報261bを生成し、記憶部260に格納する。なお、拠点とは、図1に示す各家庭のほか、蓄電ステーション30を表すものとする。以下、図8を用いて、送受信部263からパケットを取得するたびに実行される経路情報生成部264による経路情報の生成について説明する。図8は、経路情報の生成方法の一例を示す図である。例えば、経路情報生成部264は、図8に示すデータPおよびデータPを有するパケットを送受信部263から取得すると、パケット長を用いて、データPおよびデータPをパケット単位に切り分ける。
【0053】
続いて、経路情報生成部264は、パケット単位に切り分けたデータPおよびデータPにそれぞれ含まれる中継情報をそれぞれ参照し、他の家庭から送信されたパケットが自家庭nに到達するまでに中継されてきた拠点名からなるルートを全て算出する。例えば、図7に示すデータPに格納された中継情報「b→k,a,b」と、図7に示すデータPに格納された中継情報「k→n」とに基づいて、「ルート1:b→k→n」と、「ルート2:k→n」とを算出する。続いて、経路情報生成部264は、算出したルート1から、データPが格納されたパケットの送信元である家庭「b」と自家庭「n」との距離として「ホップ数=2」を取得する。続いて、経路情報生成部264は、データPの消費電力および発電量から収支「0.800」を計算する。続いて、経路情報生成部264は、データPから、拠点名「b」、消費電力「0.400」、発電力「1.200」、蓄電量「2,000」を取得する。そして、経路情報生成部264は、拠点名「b」に対応付けて、消費電力「0.400」、発電力「1.200」、蓄電量「2,000」、距離「2」および収支「0.800」を、例えば、上述した図6に示す経路情報261bとして記憶部260に格納する。選択部262は、経路情報生成部264により格納された経路情報261bを参照することにより、拠点名「b」に対応する家庭の電力収支や、拠点名「b」と自家庭「n」との距離を把握することができる。
【0054】
同様に、経路情報生成部264は、データPが格納されたパケットの送信元である家庭「k」と自家庭「n」との距離として「ホップ数=1」を取得する。続いて、経路情報生成部264は、データPの消費電力および発電量から収支「0.900」を計算する。続いて、経路情報生成部264は、データPから、拠点名「k」、消費電力「0.100」、発電力「1.000」、蓄電量「3,000」を取得する。そして、経路情報生成部264は、拠点名「k」に対応付けて、消費電力「0.100」、発電力「1.000」、蓄電量「3,000」、距離「1」および収支「0.900」を、例えば、上述した図6に示す経路情報261bとして記憶部260に格納する。選択部262は、経路情報生成部264により格納された経路情報261bを参照することにより、拠点名「k」に対応する家庭の電力収支や、拠点名「k」と自家庭「n」との距離を把握することができる。
【0055】
スイッチ制御部265は、基本的に、自家庭にある発電装置により生成した電力で家庭内の電力消費を賄うようにスイッチの開閉を制御し、選択部262からの指示があった場合には、この指示に応じて、図3に示す各スイッチS〜S17の開閉を制御する。以下、図3、図9〜図13を参照しつつ、スイッチ制御部265によるスイッチの開閉制御について説明する。図9は、スイッチの開閉制御パターンの一例を示す図である。図10は、電力受給のイメージを示す図である。図11は、電力供給のイメージを示す図である。図12および図13は、電力中継のイメージを示す図である。
【0056】
スイッチ制御部265は、選択部262からの例えば、図9に示す24通りのパターンでスイッチの開閉を制御する。スイッチ制御部265は、通常、以下に説明するパターン1の状態にスイッチの開閉の状態に制御し、選択部262からの指示に応じて、以下に説明するパターン2〜パターン24の状態にスイッチの開閉の状態に制御する。以下、図9に示すパターン1〜パターン24の各パターンのスイッチ制御について説明する。なお、図9に示す自家発電装置とは、自家庭に設置された発電装置を意味し、例えば、図3に示す太陽電池101がこれに該当する。また、図3に示す蓄電送電網4の(1)〜(4)は、図10〜図13には、他の家庭(1)〜他の家庭(4)に対応する。
【0057】
例えば、スイッチ制御部265は、自家発電装置の電力で自家庭の消費電力をまかなう場合には、図3に示すスイッチS15をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン1)。
【0058】
また、スイッチ制御部265は、自家庭の蓄電池103に蓄えられた電力で自家庭の消費電力をまかなう場合には、図3に示すスイッチS17をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン2)。
【0059】
また、スイッチ制御部265は、自家発電装置の余剰電力を蓄電池103に蓄電する場合には、図3に示すスイッチS15およびスイッチS17をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン3)。
【0060】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(1)あるいは蓄電ステーション30からの送電を受ける場合には、図3に示すスイッチS11をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン4)。パターン4による電力受給のイメージは、例えば、図10のイメージIに示すように、他の家庭(1)から自家庭(5)に電力が受給されるイメージである。
【0061】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(2)あるいは蓄電ステーション30からの送電を受ける場合には、図3に示すスイッチS12をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン5)。パターン5による電力受給のイメージは、例えば、図10のイメージIに示すように、他の家庭(2)から自家庭(5)に電力が受給されるイメージである。
【0062】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(3)あるいは蓄電ステーション30からの送電を受ける場合には、図3に示すスイッチS13をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン6)。パターン5による電力受給のイメージは、例えば、図10のイメージIに示すように、他の家庭(3)から自家庭(5)に電力が受給されるイメージである。
【0063】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(4)あるいは蓄電ステーション30からの送電を受ける場合には、図3に示すスイッチS14をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン7)。パターン5による電力受給のイメージは、例えば、図10のイメージIに示すように、他の家庭(4)から自家庭(5)に電力が受給されるイメージである。
【0064】
また、スイッチ制御部265は、一般送電網5を介して、発電所10から電力を受給する場合には、図3に示すスイッチS16をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン8)。
【0065】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、自家庭(5)の自家発電装置の電力を他の家庭(1)に送電する場合には、図3に示すスイッチSおよびスイッチS15をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン9)。パターン9による電力供給のイメージは、例えば、図11のイメージIに示すように、自家庭(5)から他の家庭(1)に電力が供給されるイメージである。
【0066】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、自家庭(5)の自家発電装置の電力を他の家庭(2)に送電する場合には、図3に示すスイッチSおよびスイッチS15をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン10)。パターン10による電力供給のイメージは、例えば、図11のイメージIに示すように、自家庭(5)から他の家庭(2)に電力が供給されるイメージである。
【0067】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、自家庭(5)の自家発電装置の電力を他の家庭(3)に送電する場合には、図3に示すスイッチSおよびスイッチS15をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン11)。パターン11による電力供給のイメージは、例えば、図11のイメージIに示すように、自家庭(5)から他の家庭(3)に電力が供給されるイメージである。
【0068】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、自家庭(5)の自家発電装置の電力を他の家庭(4)に送電する場合には、図3に示すスイッチSおよびスイッチS15をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン12)。パターン12による電力供給のイメージは、例えば、図11のイメージIに示すように、自家庭(5)から他の家庭(4)に電力が供給されるイメージである。
【0069】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、自家庭(5)の蓄電池103の電力を他の家庭(1)に送電する場合には、図3に示すスイッチS11およびスイッチS17をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン13)。パターン13による電力供給のイメージは、例えば、図11のイメージIに示す場合と同様である。
【0070】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、自家庭の蓄電池103の電力を他の家庭(2)に送電する場合には、図3に示すスイッチS12およびスイッチS17をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン14)。パターン14による電力供給のイメージは、例えば、図11のイメージIに示す場合と同様である。
【0071】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、自家庭の蓄電池103の電力を他の家庭(3)に送電する場合には、図3に示すスイッチS13およびスイッチS17をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン15)。パターン15による電力供給のイメージは、例えば、図11のイメージIに示す場合と同様である。
【0072】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、自家庭の蓄電池103の電力を他の家庭(4)に送電する場合には、図3に示すスイッチS14およびスイッチS17をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン16)。パターン16による電力供給のイメージは、例えば、図11のイメージIに示す場合と同様である。
【0073】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(1)からの送電を他の家庭(2)に中継する場合には、図3に示すスイッチSをONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン17)。パターン17による電力の中継のイメージは、例えば、図12のイメージIに示すように、他の家庭(1)から他の家庭(2)に供給される電力が、自家庭(5)により中継されるイメージである。
【0074】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(1)からの送電を他の家庭(3)に中継する場合には、図3に示すスイッチSをONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン18)。パターン18による電力の中継のイメージは、例えば、図12のイメージI10に示すように、他の家庭(1)から他の家庭(3)に供給される電力が、自家庭(5)により中継されるイメージである。
【0075】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(1)からの送電を他の家庭(4)に中継する場合には、図3に示すスイッチSをONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン19)。パターン19による電力の中継のイメージは、例えば、図12のイメージI11に示すように、他の家庭(1)から他の家庭(4)に供給される電力が、自家庭(5)により中継されるイメージである。
【0076】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(2)からの送電を他の家庭(3)に中継する場合には、図3に示すスイッチSをONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン20)。パターン20による電力の中継のイメージは、例えば、図12のイメージI12に示すように、他の家庭(2)から他の家庭(3)に供給される電力が、自家庭(5)により中継されるイメージである。
【0077】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(2)からの送電を他の家庭(4)に中継する場合には、図3に示すスイッチSをONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン21)。パターン21による電力の中継のイメージは、例えば、図13のイメージI13に示すように、他の家庭(2)から他の家庭(4)に供給される電力が、自家庭(5)により中継されるイメージである。
【0078】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(3)からの送電を他の家庭(4)に中継する場合には、図3に示すスイッチS10ONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン22)。パターン22による電力の中継のイメージは、例えば、図13のイメージI14に示すように、他の家庭(3)から他の家庭(4)に供給される電力が、自家庭(5)により中継されるイメージである。
【0079】
また、スイッチ制御部265は、図3に示す蓄電送電網4を介して、他の家庭(1)あるいは蓄電ステーション30からの送電を受けつつ、他の家庭(2)からの送電を他の家庭(3)に中継する場合には、次のようにスイッチの開閉を制御する。すなわち、スイッチ制御部265は、図3に示すスイッチSおよびスイッチS11をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン23)。パターン23による電力受給および電力中継のイメージは、例えば、図13のイメージI15に示すようになる。すなわち、他の家庭(1)から自家庭(5)に電力が受給されるとともに、他の家庭(2)から他の家庭(3)に供給される電力が自家庭(5)により中継されるイメージである。
【0080】
また、スイッチ制御部265は、自家発電装置の電力で自家庭の消費電力を賄いながら、蓄電送電網4を介して、他の家庭(1)からの送電を他の家庭(2)に中継する場合には、次のようにスイッチの開閉を制御する。すなわち、スイッチ制御部265は、図3に示すスイッチSおよびスイッチS15をONにし、他のスイッチを全てOFFにする(図9のパターン24)。パターン24による電力利用および電力中継のイメージは、例えば、図13のイメージI16に示すようになる。自家庭(5)において自力で電力が賄われるとともに、他の家庭(1)から他の家庭(2)に供給される電力が自家庭(5)により中継されるイメージである。
【0081】
なお、上述してきたスイッチ制御部265によるスイッチ制御のパターンは一例であり、電力系統の構成や電力の供給元と供給先との関係などに合わせて、適宜変更することができる。
【0082】
図14および図15に、スイッチ制御部265により制御されるスイッチの構成の一例を示す。図14および図15は、スイッチの構成例を示す図である。図14に示すスイッチでは、半導体素子のサイリスタαが実装されている。図14に示す構成を有するスイッチでは、スイッチ制御部265の入出力をONにし、サイリスタαのゲートをONにすることで、ラインLからラインLに電流が流れる。なお、ラインLからラインLに電流を流したい場合には、サイリスタαを逆向きに実装することで実現可能である。図15に示すスイッチでは、リレー回路βを実装する。図15に示す構成を有するスイッチでは、スイッチ制御部265の入出力をONにし、リレー回路βをONにすることで、ラインLとラインLが結線されて電流が流れる。
【0083】
なお、上述してきた選択部262、送受信部263、経路情報生成部264およびスイッチ制御部265は、例えば、電子回路や集積回路により実装することができる。電子回路としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)がある。また、集積回路としては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などがある。
【0084】
[スマートメータ200による処理(実施例1)]
次に、図16〜図18を用いて、スマートメータ200による処理の流れを説明する。図16は、実施例1に係る処理の流れを示す図である。図17は、電力制御処理の流れを示す図である。図18は、電力受給先決定処理の流れを示す図である。なお、以下に説明する図16〜図18に示す処理は、各家庭に設置されているスマートメータによりそれぞれ実行される。
【0085】
(処理全体の流れ)
まず、図16を用いて、スマートメータ200による処理全体の流れを説明する。図16に示すように、選択部262は、自家庭の消費電力、発電量および蓄電量の検針時間に到達しているか否かを判定する(S101)。検針時間に到達していない場合には(S101,No)、選択部262は、S101の判定を繰り返す。一方、検針時間に到達している場合には(S101,Yes)、選択部262は、計測器250により計測された消費電力、発電量および蓄電量の検針データをそれぞれ取得し、発電量から消費電力を減算した電力収支を計算する(S102)。続いて、選択部262は、電力制御処理を実行する(S103)。そして、選択部262は、電力受給先決定処理を実行して(S104)、処理を終了する。
【0086】
(電力制御処理)
続いて、図17を用いて、電力制御処理の流れを説明する。なお、図17に示す処理は、スマートメータ200の起動中、繰り返し実行される。選択部262は、電力収支が所定の閾値A未満であるか否かを判定する(S201)。つまり、選択部262は、自家庭において所定のレベル以上の電力消費が行われているか否かを判定する趣旨である。なお、S201の判定は、電力収支が所定の閾値A未満となるまで繰り返し実行される。判定の結果、電力収支が所定の閾値A未満である場合には(S201,Yes)、選択部262は蓄電量を参照し(S202)、蓄電量が所定の閾値C未満であるか否かを判定する(S203)。つまり、選択部262は、所定レベル以上の蓄電量が確保されているか否かを判定する趣旨である。
【0087】
判定の結果、蓄電量が所定の閾値C未満である場合には(S203,Yes)、選択部262は、電力収支が所定の閾値B未満であるか否かを判定する(S204)。つまり、選択部262は、上述した判定が行われている間に、蓄電量が所定レベル以上確保されていなくても、自己の発電設備による電力で賄っていけるレベルにまで自家庭の消費電力が減少したか否かを判定する趣旨である。なお、閾値Bは、上述した閾値Aよりも大きい値とする。
【0088】
判定の結果、選択部262は、電力収支が閾値B未満である場合には(S204,Yes)、後述する図18の電力受給先決定処理へ移る。
【0089】
なお、上述したS204において、電力収支が閾値B未満ではない場合には(S204,No)、選択部262は上述したS201の判定に戻る。なお、上述したS203において、蓄電量が所定の閾値C未満ではない場合には(S203,No)、選択部262は、電力収支が所定の閾値B未満であるか否かを判定する(S205)。つまり、上述したS201からS204の処理を行っている間に、上述したステップS204の判定と同様に、自己の発電設備による電力で賄っていけるレベルにまで自家庭の消費電力が減少したか否かを判定する趣旨である。
【0090】
判定の結果、電力収支が閾値B未満である場合には(S205,Yes)、選択部262は、蓄電池103に蓄えられて電力を使用して、自家庭の電力供給を行うように、充電器102との接続をスイッチ制御部265に指示する(S206)。そして、選択部262は、上述したS203の判定に戻る。つまり、蓄電池103に蓄えられている電力の残量を監視する趣旨である。一方、判定の結果、電力収支が閾値B未満ではない場合には(S205,No)、選択部262は、上述したS201の判定に戻る。つまり、自己の発電設備による電力で賄っていけるレベルにまで自家庭の消費電力が減少したものとして、電力収支の監視に戻る趣旨である。
【0091】
(電力受給先決定処理)
続いて、図18を用いて、電力受給先決定処理の流れを説明する。なお、電力受給先決定処理は、上述した図17に示す電力制御処理のS204の判定結果がYesであった場合に移行する。すなわち、以下に説明する図18の処理は、自家庭の消費電力が大きく、蓄電量も乏しい場合に、自家庭以外から電力の供給先を探索するために実行される。
【0092】
図18に示すように、選択部262は、記憶部260に記憶されている経路情報261bを参照して、自家庭の近隣で、電力収支が正の家庭があるか否かを検索する(S301)。すなわち、選択部262は、他の家庭の中から、電力収支が正で、かつ自家庭から最も近い家庭を検索することにより、電力に余裕があり、かつ送電のロスが最も少ない家庭を検出する趣旨である。例えば、図6に示す経路情報を例に挙げれば、選択部262は、電力収支が正である家庭a、bおよび家庭kの中から、距離がもっとも小さい(距離=1)の家庭kの距離を、電力収支が正で、自家庭から最も近い家庭kとして検出できる。
【0093】
自家庭の近隣で、電力収支が正の家庭がある家庭を検出できた場合には(S301,Yes)、選択部262は、検出した家庭の方が蓄電ステーション30よりも近いか否かを判定する(S302)。つまり、近隣の家庭から送電を受けるよりも、蓄電ステーション30から送電を受けた方が送電時の電力のロスが少ないか否かを判定する趣旨である。
【0094】
判定の結果、検出した家庭の方が、蓄電ステーション30よりも近い場合には(S302,Yes)、選択部262は、検出した家庭に送電の要求を送信するように送受信部263に指示する(S303)。
【0095】
続いて、選択部262は、送電を要求した家庭から、要求に応じる旨の応答を受信したか否かを判定する(S304)。判定の結果、要求に応じる旨の応答を受信した場合には(S304,Yes)、選択部262は、検出した家庭から電力が受給できるように、この家庭との接続をスイッチ制御部265に指示し(S305)、処理を終了する。一方、判定の結果、要求に応じられない旨の応答を受信した場合には(S304,No)、選択部262は、上述したS301の判定に戻る。
【0096】
なお、上述したS302において、検出した家庭の方が、蓄電ステーション30よりも近くない(遠い)場合には(S302,No)、選択部262は、蓄電ステーション30に送電の要求を送信するように送受信部263に指示する(S306)。続いて、選択部262は、蓄電ステーション30から、要求に応じる旨の応答を受信したか否かを判定する(S307)。判定の結果、要求に応じる旨の応答を受信した場合には(S307,Yes)、選択部262は、蓄電ステーション30から電力が受給できるように、蓄電ステーション30との接続をスイッチ制御部265に指示し(S308)、処理を終了する。一方、判定の結果、要求に応じられない旨の応答を受信した場合には(S307,No)、選択部262は、発電所10の電力を使用可能なように、発電所10との接続をスイッチ制御部265に指示し(S309)、処理を終了する。
【0097】
なお、上述したS301において、自家庭の近隣で、電力収支が正の家庭がある家庭を検出できなかった場合には(S301,No)、選択部262は、上述したS309の処理に移り、発電所10の電力使用を決定し、処理を終了する。
【0098】
上述したS304にて、例えば、送電の要求に応じる旨の応答が受信された場合に、電力の送電元から送電先に至る電力受給ルートの接続順序の一例を説明する。図19は、電力受給ルートの接続順序の一例を示す図である。
【0099】
(到達保証型)
まず、図19を用いて、到達保証型の接続順序を説明する。家庭Aは、家庭Bに向け送電要求を送信する(図19の(1))。家庭Aから家庭B宛の送電要求を受信した家庭Xは、家庭Bに向け送電要求を転送する(図19の(2))。家庭Xから家庭Aを送信元とする送電要求を受信した家庭Bは、次ぎのように処理を実行する。すなわち、家庭Bは、電力の供給が可能であれば電力を供給する接続構成にスイッチを切り替えて要求受付の応答を家庭Aに向けて送信し、電力の供給が不可能であれば要求拒否の応答を家庭Aに向けて送信する(図19の(3))。家庭Bから家庭A宛の応答を受信した家庭Xは、応答の内容が要求受付であれば、上述した図9のパターン17〜パターン22のように、電力中継用の接続構成にスイッチを切り替えた後、家庭Bから受信した応答を家庭Aに転送する(図19の(4))。一方、家庭Xは、応答の内容が要求拒否であれば、スイッチの接続構成はそのままで、家庭Bから受信した応答を家庭Aに転送する(図19の(4))。家庭Xから家庭Bの応答を受信した家庭Aは、応答の内容が要求受付であれば、電力供給を受ける接続構成にスイッチを切り替える。一方、家庭Aは、応答の内容が要求拒否であれば、スイッチを切り替えずに、他の家庭の検索を行う。なお、蓄電ステーション30に接続する場合も同様である。
【0100】
(処理時間優先型)
次に、同じく図19を用いて、処理時間優先型の接続順序を説明する。家庭Aは、家庭Bに向け送電要求を送信すると同時に(図19の(1))、電力供給を受ける接続構成にスイッチを切り替える。家庭Aから家庭B宛の送電要求を受信した家庭Xは、電力中継用の接続構成にスイッチを切り替えた後、家庭Bに向け送電要求を転送する(図19の(2))。家庭Xから家庭Aを送信元とする送電要求を受信した家庭Bは、電力の供給が可能であれば電力を供給する接続構成に切り替えて処理を終了する。一方、家庭Bは、電力の供給が不可能であれば要求拒否の応答を家庭Aに向けて送信する(図19の(3))。家庭Bから家庭A宛の応答を受信した家庭Xは、スイッチの接続構成を元に戻した後、家庭Bから受信した応答を家庭Aに転送する(図19の(4))。家庭Xから家庭Bの応答を受信した家庭Aは、スイッチの接続構成を元に戻し、他の家庭の検索を行う。なお、蓄電ステーション30に接続する場合も同様である。
【0101】
[実施例1による効果]
上述してきたように、スマートメータ200は、自家庭の電力収支が所定の閾値未満である場合に、記憶部260に記憶された他の家庭との間の送電負荷に係る評価値および他の家庭の電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の家庭を選択する。そして、スマートメータ200は、選択した他の家庭に送電の要求を送信する。なお、スマートメータ200は、スイッチと連動することで、サーバ等の中央制御装置を介することなく、自律分散的に速やかに送電網の切り替えを行う。このようにして、スマートメータ200は、送電要求とスイッチ(スイッチの開閉制御)が同時に行うことができる。このため、実施例1によれば、電力過不足に即時に対応して速やかな電力供給が可能となり、さらに送電時の電力ロスを軽減できる。
【0102】
また、スマートメータ200は、自家庭の電力収支が所定の閾値未満である場合に、経路情報261bに評価値として含まれる距離(ホップ数)および他の家庭の電力収支を参照して、電力収支が正で、かつ最も近い他の家庭を選択する。そして、スマートメータ200は、選択した家庭に送電の要求を送信する。このようなことから、実施例1によれば、スマートメータ200間でやり取りするパケットに基づいて取得できるホップ数を用いて、他の家庭との間の送電負荷に係る評価値を設定できるので、評価値がもっとも高い(距離が近い)他の家庭を簡易に選択できる。この結果、実施例1によれば、送電時の電力のロスを簡易に軽減できる。
【0103】
また、スマートメータ200は、電力収支が正で、かつ最も近い他の家庭よりも、蓄電ステーション30の方が近い場合には、蓄電ステーション30に送電を要求する。このようなことから、スマートメータ200は、蓄電ステーション30よりも遠い他の家庭から送電を受ける効率の悪い送電を回避でき、送電時の電力のロスを最大限に軽減できる。
【0104】
また、スマートメータ200は、受信した送電の要求が、自己宛でない場合には、宛先に転送する。このようなことから、送電の要求元から要求先が離れている場合であっても、送電の要求を確実に到達させることができる。この結果、送電時の電力のロスを軽減する場合に、同一の通信網3や蓄電送電網4、一般送電網5などにより接続された同一のエリア内の電力需給を平滑化できる。
【0105】
従来の電力需給を制御する技術において、刻々と変化する各家庭の電力収支の変化に追従した情報を得るためには、スマートメータ間で、例えば、1分や100秒程度の時間間隔での情報のやり取りが必要となる。しかし、短い時間間隔での情報のやり取りを可能とする通信技術では、例えば、各スマートメータから電力収支に関するメッセージがブロードキャストされるので、スマートメータの数の増加に応じてネットワークに対する負荷が大きくなってしまう。一方、ネットワークに対する負荷が少ない通信技術では、十分に短い時間間隔で情報のやり取りを行えないので、刻々と変化する各家庭の電力収支について、その変化に追従した情報を得ることができない。このように、従来の電力需給を制御する技術は、各家庭における電力収支に関する情報として、適時性のある情報をやり取りできていない。このため、従来の電力需給を制御する技術は、電力需給の制御が必ずしも適切に行えているとはいえないという問題もある。これに対して、スマートメータ200は、他の家庭によるパケットの送信のタイミングと重畳することなく、全体として分散するような所定の送信周期で、自家庭の消費電力、発電量および蓄電量を含む電力収支に関する情報を含んだパケットを送信する。このようなことから、スマートメータ200は、ネットワークに負担をかけることなく、さらに各家庭の電力収支の変化に追従した電力収支の状況を把握でき、送電時の電力のロスを軽減させる処理を適切に行うことができる。
【0106】
なお、電力収支に関する情報を含んだパケットをやり取りすることで、各家庭の電力収支の変化に追従した電力収支の状況を把握できるので、電力収支に関する情報の管理に必要な電力を極力削減できる。
【0107】
なお、蓄電ステーション30から電力を需給できるので、発電所10から電力を受給できない状況でも、大規模な停電などを回避できる。
【0108】
なお、実施例1では、家庭内の電力収支をモニタし、家庭内の電力収支の状況に応じて他の家庭に送電の要求を送信する場合を説明した。これに対して、例えば、複数の家庭を含む各領域ごとに、上述した実施例1に係るスマートメータ200に相当する装置を設置し、領域内の電力収支をモニタし、領域内の電力収支の状況に応じて他の領域に送電の要求を送信するという実施形態も考えられる。
【0109】
なお、実施例1では、蓄電ステーション30から電力の供給を受ける場合に、蓄電ステーションの蓄電量を考慮していないが、蓄電ステーション30の蓄電量が所定のレベルにない場合には、蓄電ステーション30から電力の供給を受けないようにしてもよい。
【実施例2】
【0110】
また、実施例1にて説明した家庭間での電力需給の方法を、蓄電ステーション間に適用することもできる。そこで、蓄電ステーションの電力の供給可能量に応じて、他の蓄電ステーション30との間で電力需給を行う場合の一実施形態について説明する。なお、以下の実施例2では、蓄電ステーションが、配下に接続された各家庭に電力の供給を行い、蓄電量をモニタして、蓄電量に応じて、他の蓄電ステーションとの間で電力需給を行う場合を例に挙げて説明する。
【0111】
図20は、実施例2に係る全体構成を示す図である。図20に示すように、実施例2では、基本的には実施例1の全体構成と同様であるが、複数の蓄電ステーションを有する点が異なる。そして、図20に示すように、蓄電ステーション間は、蓄電送電網4により相互に接続されている。なお、図20では、説明の便宜上、蓄電ステーション410〜440の4つの蓄電ステーションを記載するが、この数に限定されるものではない。以下では、蓄電ステーション410を取り上げて説明する。
【0112】
[蓄電ステーション構成(実施例2)]
以下、図21を用いて、蓄電ステーション410の構成を説明する。図21は、蓄電ステーションの構成を示すブロック図である。蓄電ステーション410は、図21に示すように、アドホック通信装置411、インターフェース412、分配器413、計測器414および制御装置415を有する。アドホック通信装置411は、他の蓄電ステーションとの間でネットワークを構築し、このネットワークを介して、電力の供給可能量に関する情報をやり取りする為の通信を行う。インターフェース412は、蓄電送電網4、変電所40、一般送電網5と接続する接続部である。分配器413は、蓄電池302側への接続と、他の蓄電ステーション30側への接続とを切り替える。計測器414は、充電器310を介して蓄電量を計測する。制御装置415は、実施例1で説明したスマートメータ200の制御装置260と同様の処理機能を有する。
【0113】
制御装置415は、他の蓄電ステーションの供給可能量と、他の蓄電ステーションとの距離とを対応付けて記憶する経路情報を有する。なお、図22に示す経路情報は、上述した実施例1と同様に、蓄電ステーション間でやり取りされるパケットに含まれる情報に基づいて制御装置415により生成される。図22は、実施例2に係る経路情報の一例を示す図である。図22に示すように、制御装置415が有する経路情報には、拠点名と、供給可能量と距離(ホップ数)とを対応付けて記憶されている。図22では、拠点名として、例えば、図20に示す蓄電ステーションを特定するために、蓄電ステーションのそれぞれに一意に付与された情報「蓄電1」、「蓄電2」、「蓄電3」および「蓄電4」などが記憶されている。また、図22では、拠点名ごとに、他の蓄電ステーションとの間の送電負荷に係る評価値である距離(ホップ数)が記憶されており、例えば、「蓄電1」については距離「8」が記憶されている。なお、距離の値が大きいほど送電の負荷が大きくなる。また、図22では、拠点名ごとに、他の蓄電ステーションに供給可能な電力の量である供給可能量が記憶されており、例えば、「蓄電1」については「10万(ミリアンペア/時)」が記憶されている。以下、図23を用いて、供給可能量について説明する。
【0114】
図23は、供給可能量の説明に用いる図である。図23に示す円柱は、蓄電ステーション410が有する蓄電池302の電力の蓄電量を表す。そして、図23の蓄電量hは、蓄電ステーション410が蓄電池302に蓄電可能な最大電力量を示す。図23の基準蓄電量hは、蓄電送電網4を介して、蓄電ステーション410の配下に接続された全ての家庭で消費される最大の消費電力量を示す。図23の閾値hは、他の蓄電ステーションに送電を要求する処理のトリガーとなる電力量を示す。図23の危険域hは、蓄電ステーション410が機能不全に陥る電力量を示す。そして、供給可能量は、蓄電量hから基準蓄電量hを減算したときに残存する電力量に該当する。つまり、配下に接続された全ての家庭に電力を供給したとしても、蓄電ステーション410に蓄電池302に残される電力量が供給可能量となる。以下、図23を参照しつつ、制御装置415による動作について説明する。
【0115】
例えば、制御装置415は、蓄電池302に蓄積されている蓄電量をモニタし、図23に示す閾値h未満となる時点を検出する。そして、制御装置415は、蓄電池302に蓄積されている蓄電量が閾値h未満となった場合には、蓄電量が閾値h未満となった時点で、配下に接続された家庭に対し、蓄電池302から電力を供給中であるか否かを判定する。判定の結果、配下に接続された家庭に対して電力を供給中である場合には、制御装置415は、電力の供給を継続する一方で、蓄電池302の蓄電量のモニタを継続し、図23に示す危険域h未満となる時点を検出する。そして、制御装置415は、蓄電量が危険域h未満になった場合には、蓄電量が危険域h未満になった時点で、配下に接続された家庭に対する電力供給を、発電所10からの電力供給に切り替える。このとき、制御装置415は、電力を供給している家庭に対し、発電所10からの電力供給に切り替えるよう指示する。
【0116】
なお、制御装置415は、蓄電量が図23に示す閾値h未満となった時点で、配下に接続された家庭に対し、電力を供給中ではない場合は、図23に示す基準蓄電量hまで充電できるように他の蓄電ステーションから電力供給を受ける。例えば、制御装置415は、図23に示す経路情報を参照して、供給可能量が基準蓄電量hを満足できる他の蓄電ステーションを検索する。例えば、基準蓄電量hを満足できる蓄電ステーションとして、蓄電2および蓄電4が該当したものとする。このとき、制御装置415は、蓄電2および蓄電4の中から、より距離が近い蓄電ステーションを選択し、電力供給依頼を送信する。そして、制御装置415は、電力供給依頼の宛先である蓄電ステーションから、電力供給の許可が受信されるか否かを判定する。
【0117】
判定の結果、電力供給の許可の応答を受信した場合には、制御装置415は、電力供給元の蓄電ステーションから電力の供給が受けられるようにスイッチの接続構成を変更する。そして、制御装置415は、充電器301を介して、電力供給元の蓄電ステーションから送電された電力を、基準蓄電量hまで蓄電池302に充電する。一方、判定の結果、電力供給の不許可の応答を受信した場合には、制御装置415は、基準蓄電量hを満足できるものとして検出した蓄電ステーションの中から、次に距離の近い蓄電ステーションを選択する。例えば、基準蓄電量hを満足できる蓄電ステーションとして、蓄電2および蓄電4が該当した場合には、制御装置415は、蓄電4を選択する。
【0118】
また、基準蓄電量hを満足できるものとして検出した蓄電ステーションの中から、次に距離の近い蓄電ステーションを検出できない場合には、制御装置415は、図23に示す経路情報に基づいて、以下の検索条件を満足する蓄電ステーションを検索する。例えば、検索条件として、供給可能量÷距離>閾値Pを満足する蓄電ステーションのうち、「供給可能量÷距離の値」が最大である蓄電ステーションを満足するものを選択するという条件を設定できる。なお、閾値Pは、例えば、他の蓄電ステーションの蓄電量が基準蓄電量となるまで電力を供給しても、自己の蓄電量が基準蓄電量を下回らないような値が予め設定されるものとする。
【0119】
そして、制御装置415は、上述した検索条件を満足する蓄電ステーションを検出できた場合には、その蓄電ステーションに供給可能量の電力供給を要求し、基準蓄電量hまで電力の充電を実行する。
【0120】
[蓄電ステーションによる処理(実施例2)]
図24を用いて、蓄電ステーションによる処理の流れを説明する。図24は、実施例2に係る蓄電ステーションによる処理の流れを示す図である。なお、図24に示す処理は、蓄電ステーションの起動中に実行される。
【0121】
図24に示すように、制御装置415は、蓄電量データを取得し(S401)、蓄電量が閾値未満であるか否か判定する(S402)。例えば、制御装置415は、蓄電量が、図23に示す閾値h未満となる時点を検出する。
【0122】
そして、蓄電量が閾値未満ではない場合には(S402,No)、制御装置415は、上述したS401に戻る。一方、蓄電量が閾値未満である場合には(S402,Yes)、制御装置415は、配下に接続された家庭に対し、蓄電池302から電力を供給中であるか否かを判定する(S403)。判定の結果、配下に接続された家庭に対して電力を供給中ではない場合には(S403,No)、制御装置415は、経路情報を参照して、供給可能量が基準蓄電量を満たす蓄電ステーションを検索する(S404)。例えば、制御装置415は、供給可能量が、図23に示す基準蓄電量hまで充電できるような蓄電ステーションを検索する。S404の検索の結果、該当蓄電ステーションを検出できた場合には(S405,Yes)、制御装置415は、検出できた蓄電ステーションの中から距離の一番近い蓄電ステーションを選択する(S406)。続いて、制御装置415は、選択した蓄電ステーションに電力供給依頼を送信する(S407)。続いて、制御装置415は、電力供給の依頼先である蓄電ステーションによる電力供給の可否の判定を待機する(S408)。そして、電力供給の依頼先である蓄電ステーションにより電量供給依頼が許可された場合には(S408,Yes)、制御装置415は、電力供給の依頼先として選択した蓄電ステーションから、電力の供給が受けられるようにスイッチの接続構成を変更する(S409)。続いて、制御装置415は、電力の供給を受けて充電を開始し(S410)、蓄電量をモニタし、蓄電量が基準蓄電量以上となる時点を検出する(S411)。制御装置415は、蓄電量が基準蓄電量未満である場合には(S411,No)、S410に戻って蓄電を継続する。一方、制御装置415は、蓄電量が基準蓄電量以上となった場合には(S411,Yes)、処理を終了する。
【0123】
なお、上述したS408において、電力供給の依頼先である蓄電ステーションにより電量供給依頼が許可されなかった場合には(S408,No)、制御装置415は、次のように処理する。すなわち、制御装置415は、S405にて複数の蓄電ステーションを検出できた場合には、S406で選択した蓄電ステーションの次に距離の近い蓄電ステーションの検出を試みる(S412)。次に距離の近い蓄電ステーションを検出できた場合には(S412,Yes)、制御装置415は、検出した蓄電ステーションを選択して(S413)、上述したS407の処理に移る。一方、次に距離の近い蓄電ステーションを検出できなかった場合には(S412,No)、制御装置415は、経路情報を参照して、「供給可能量÷距離>閾値P」を満たす蓄電ステーションを検索する(S414)。
【0124】
「供給可能量÷距離>閾値P」を満たす蓄電ステーションを検出できた場合には(S414,Yes)、制御装置415は、検出できた蓄電ステーションの中から、「供給可能量÷距離」の値がもっとも大きい蓄電ステーションを選択する(S415)。続いて、制御装置415は、選択した蓄電ステーションに電力供給依頼を送信する(S416)。続いて、制御装置415は、電力供給の依頼先である蓄電ステーションによる電力供給の可否の判定を待機する(S417)。そして、電力供給の依頼先である蓄電ステーションにより電量供給依頼が許可された場合には(S417,Yes)、制御装置415は、電力供給の依頼先として選択した蓄電ステーションから、電力の供給が受けられるようにスイッチの接続構成を変更する(S418)。続いて、制御装置415は、電力の供給を受けて充電を開始し(S419)、蓄電量をモニタし蓄電量が基準蓄電量以上となる時点を検出する(S420)。制御装置415は、蓄電量が基準蓄電量未満である場合には(S420,No)、S419に戻って充電を継続する。一方、制御装置415は、蓄電量が基準蓄電量以上となった場合には(S420,Yes)、処理を終了する。
【0125】
なお、上述したS417において、電力供給の依頼先である蓄電ステーションにより電量供給依頼が許可されなかった場合には(S417,No)、制御装置415は、次のように処理する。すなわち、制御装置415は、S414にて複数の蓄電ステーションを検出できた場合には、S415で選択した蓄電ステーションの次に、「供給可能量÷距離」の値の大きい蓄電ステーションの検出を試みる(S421)。次に距離の近い蓄電ステーションを検出できた場合には(S421,Yes)、制御装置415は、検出した蓄電ステーションを選択して(S422)、上述したS416の処理に移る。一方、次に距離の近い蓄電ステーションを検出できなかった場合には(S421,No)、制御装置415は、そのまま処理を終了する。
【0126】
なお、上述したS414において、「供給可能量÷距離>閾値P」を満たす蓄電ステーションを検出できなかった場合には(S414,No)、制御装置415は、そのまま処理を終了する。
【0127】
なお、上述したS405において、該当蓄電ステーションを検出できなかった場合には(S405,No)、制御装置415は、上述したS414の処理に移る。
【0128】
なお、上述したS403において、判定の結果、配下に接続された家庭に対して電力を供給中である場合には(S403,Yes)、制御装置415は、電力の供給を継続する(S423)。続いて、制御装置415は、蓄電池302の蓄電量のモニタを継続し、蓄電量が危険域未満となる時点を検出する(S424)。例えば、制御装置415は、蓄電量が、図23に示す危険域h未満となる時点を検出する。蓄電量が危険域未満となっていない場合には(S424,No)、制御装置415は、S423に戻る。一方、蓄電量が危険域未満となった場合には(S424,Yes)、制御装置415は、配下に接続された家庭に対する電力供給を、発電所10からの電力供給に切り替える(S425)。そして、制御装置415は、電力を供給している家庭に対し、発電所10からの電力供給に切り替えるよう指示し(S426)、上述したS404の処理に移る。
【0129】
[実施例2による効果]
上述してきたように、実施例2に係る蓄電ステーションは、自己の蓄電量が所定値未満となった場合には、基準蓄電量となるまでの充電が可能な供給可能量を有する他の蓄電ステーションのうち、距離が最も近い蓄電ステーションに電力供給を受ける。このようなことから、実施例2によれば、送電時の電力ロスを軽減させつつ、蓄電ステーションの配下に接続された各家庭への安定した電力の供給を実現できる。
【0130】
また、実施例2に係る蓄電ステーションは、基準蓄電量となるまでの充電が可能な供給可能量を有する他の蓄電ステーションを検出できなかった場合には、できるだけ供給可能量に余裕があり、距離の近い蓄電ステーションから電力の供給を受ける。このため、実施例2によれば、突然の停電などの事態をできるだけ回避することができる。
【実施例3】
【0131】
以下、本願の開示する電力制御装置、電力制御プログラムおよび電力制御方法の他の実施形態を説明する。
【0132】
(1)装置構成等
例えば、図4に示した制御装置260の構成は概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、図4に示した制御装置260の選択部262、送受信部263および経路情報生成部264を機能的または物理的に統合してもよい。このように、例えば、図4に示した制御装置260の機能ブロックの全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散または統合して構成することができる。
【0133】
(2)電力制御プログラム
また、上述の実施例にて説明したスマートメータ200の制御装置260により実行される各種の処理は、例えば、電子回路や集積回路などを有するコンピュータで所定のプログラムを実行することによって実現できる。そこで、以下では、図25を用いて、上述の実施例にて説明したスマートメータ200の制御装置260により実行される処理と同様の機能を実現する電力制御プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。図25は、電力制御プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【0134】
図25に示すように、コンピュータ500は、例えば、メモリ501と、CPU(Central Processing Unit)502を有する。また、コンピュータ500は、図25に示すように、ハードディスクドライブインタフェース503と、光ディスクドライブインタフェース504を有する。また、コンピュータ500は、図25に示すように、シリアルポートインタフェース505と、ビデオアダプタ506と、ネットワークインタフェース507を有する。そして、コンピュータ500は、これらの各部501〜507をバス508によって接続する。
【0135】
メモリ501は、図25に示すように、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース503は、図25に示すように、ハードディスクドライブ509に接続される。光ディスクドライブインタフェース504は、図25に示すように、光ディスクドライブ510に接続される。例えば、光ディスクドライブ510には、光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が挿入される。シリアルポートインタフェース505は、図25に示すように、例えば、マウス600およびキーボード700に接続される。ビデオアダプタ506は、図25に示すように、例えば、ディスプレイ800に接続される。
【0136】
ここで、図25に示すように、ハードディスクドライブ509は、例えば、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、プログラムモジュール、プログラムデータを記憶する。
【0137】
すなわち、開示の技術に係る電力制御プログラムは、コンピュータ500によって実行される指令が記述されたプログラムモジュールとして、例えばハードディスクドライブ509に記憶される。つまり、上述の実施例で説明したスマートメータ200の制御装置260と同様の処理を実行する手順が記述されたプログラムモジュールが、ハードディスクドライブ509に記憶される。例えば、このプログラムモジュールには、上述した図16〜図18に示す処理と同様の処理を実行する手順が記述されている。
【0138】
また、電力制御プログラムによる処理に用いられるデータは、プログラムデータとして、例えばハードディスクドライブ509に記憶される。例えば、このプログラムデータは、上述の実施例で説明した記憶部261に記憶される各種情報に対応する。
【0139】
そして、CPU502が、ハードディスクドライブ509に記憶されたプログラムモジュールやプログラムデータを必要に応じてRAMに読み出し、上述の実施例で説明したものと同様の処理(図16〜図18)を実行するための手順を実行する。
【0140】
なお、電力制御プログラムに係るプログラムモジュールやプログラムデータは、ハードディスクドライブ509に記憶される場合に限られるものではなく、例えば、着脱可能な記憶媒体である光ディスクドライブ510等に記憶されていてもよい。この場合には、CPU502が、光ディスクドライブ510を介して、電力制御プログラムに係るプログラムモジュールやプログラムデータを読み出す。あるいは、電力制御プログラムに係るプログラムモジュールやプログラムデータは、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等)を介して接続された他のコンピュータに記憶されていてもよい。この場合には、CPU502が、ネットワークインタフェース507を介して、電力制御プログラムに係るプログラムモジュールやプログラムデータを他のコンピュータから読み出す。
【0141】
なお、プログラムによりCPU502が動作して各種処理を行う代わりに、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの電子回路を用いて処理を行うこともできる。また、メモリ501として、フラッシュメモリ(flash memory)などを用いることもできる。
【0142】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0143】
(付記1)発電設備および蓄電設備を備えた領域ごとに設置される電力制御装置であって、
送電網および通信網で接続された他の領域ごとに、当該他の領域との間の送電負荷に係る評価値と、当該他の領域の電力収支とを対応付けて記憶する記憶部と、
自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、前記記憶部に記憶された評価値および電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の領域を選択する選択部と、
前記選択部によって選択された他の領域に対して、当該他の領域から自領域に対して前記送電網を介して電力を送電すべき旨の要求を、前記通信網を介して送信する送受信部と
を有することを特徴とする電力制御装置。
【0144】
(付記2)前記選択部は、前記要求の送信先の決定に応じて、スイッチの開閉を行うことを特徴とする付記1に記載の電力制御装置。
【0145】
(付記3)前記記憶部は、前記自領域から前記他の領域に至るまでの接続経路上に位置する領域に設置された電力制御装置の数であるホップ数、または前記他の領域に設置された電力制御装置の位置情報を前記評価値として記憶し、
前記選択部は、前記自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、前記記憶部に記憶されている前記ホップ数または前記位置情報に基づいて、前記自領域以外の他の領域のうち、電力収支が正で、かつ前記自領域から最も近い領域に設置された電力制御装置を選択することを特徴とする付記1に記載の電力制御装置。
【0146】
(付記4)前記記憶部は、前記他の領域に設置された電力制御装置による送電時の電圧値と、該他の領域から送電を受けたときの電圧値との差を前記評価値として記憶し、
前記選択部は、前記自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、前記記憶部に記憶されている前記電圧値に基づいて、前記自領域以外の他の領域のうち、電力収支が正で、かつ前記差が最も小さい他の領域に設置された電力制御装置を選択することを特徴とする付記1に記載の電力制御装置。
【0147】
(付記5)前記他の領域に設置された電力制御装置を宛先とする前記送電の要求を受信した場合には、該要求を宛先に転送する転送部をさらに有することを特徴とする付記2または3に記載の電力制御装置。
【0148】
(付記6)前記自領域における消費電力量、発電量および蓄電量を含む電力収支を通知するためのパケットを、前記他の領域に設置された電力制御装置に対して送信することを特徴とする付記4に記載の電力制御装置。
【0149】
(付記7)前記送受信部は、前記自領域における消費電力量、発電量および蓄電量を含む電力収支を通知するためのパケットを送信する場合に、該パケットに、前記他の領域に設置された電力制御装置から受信済みのパケットに含まれている該他の領域における消費電力量、発電量および蓄電量を含む電力収支の情報を挿入して、前記他の領域に転送することを特徴とする付記5に記載の電力制御装置。
【0150】
(付記8)発電設備および蓄電設備を備えた領域ごとに設置される電力制御装置としてのコンピュータに実行させる電力制御プログラムであって、
前記コンピュータに、
自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、送電網および通信網で接続された他の領域ごとに、当該他の領域との間の送電負荷に係る評価値と、当該他の領域の電力収支とを対応付けて記憶する記憶部を参照し、該記憶部に記憶された評価値および電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の領域を選択し、
選択された他の領域に対して、当該他の領域から自領域に対して前記送電網を介して電力を送電すべき旨の要求を、前記通信網を介して送信する
各処理を実行させることを特徴とする電力制御プログラム。
【0151】
(付記9)発電設備および蓄電設備を備えた領域ごとに設置される電力制御装置としてのコンピュータが実行する電力制御方法であって、
前記コンピュータが、
自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、送電網および通信網で接続された他の領域ごとに、当該他の領域との間の送電負荷に係る評価値と、当該他の領域の電力収支とを対応付けて記憶する記憶部を参照し、該記憶部に記憶された評価値および電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の領域を選択し、
選択された他の領域に対して、当該他の領域から自領域に対して前記送電網を介して電力を送電すべき旨の要求を、前記通信網を介して送信する
各処理を実行することを特徴とする電力制御方法。
【符号の説明】
【0152】
1 高圧電線網
2 ネットワーク
3 通信網
4 蓄電送電網
5 一般送電網
10 発電所
20 サーバ
30 蓄電ステーション
40 変電所
101 太陽電池
102 充電器
103 蓄電池
104 家庭用電源
200 スマートメータ
210 アンテナ
220 アドホック通信装置
230 インターフェース
240 分配器
250 計測器
260 制御装置
261 記憶部
262 選択部
263 送受信部
264 経路情報生成部
265 スイッチ制御部
301 充電器
302 蓄電池
410〜440 蓄電ステーション
411 アドホック通信装置
412 インターフェース
413 分配器
414 計測器
415 制御装置
500 コンピュータ
501 メモリ
502 CPU
503 ハードディスクドライブインタフェース
504 光ディスクドライブインタフェース
505 シリアルポートインタフェース
506 ビデオアダプタ
507 ネットワークインタフェース
508 バス
509 ハードディスクドライブ
600 マウス
700 キーボード
800 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備および蓄電設備を備えた領域ごとに設置される電力制御装置であって、
送電網および通信網で接続された他の領域ごとに、当該他の領域との間の送電負荷に係る評価値と、当該他の領域の電力収支とを対応付けて記憶する記憶部と、
自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、前記記憶部に記憶された評価値および電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の領域を選択する選択部と、
前記選択部によって選択された他の領域に対して、当該他の領域から自領域に対して前記送電網を介して電力を送電すべき旨の要求を、前記通信網を介して送信する送受信部と
を有することを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記要求の送信先の決定に応じて、スイッチの開閉を行うことを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記自領域から前記他の領域に至るまでの接続経路上に位置する領域に設置された電力制御装置の数であるホップ数、または前記他の領域に設置された電力制御装置の位置情報を前記評価値として記憶し、
前記選択部は、前記自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、前記記憶部に記憶されている前記ホップ数または前記位置情報に基づいて、前記自領域以外の他の領域のうち、電力収支が正で、かつ前記自領域から最も近い領域に設置された電力制御装置を選択することを特徴とする請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記送受信部は、前記他の領域に設置された電力制御装置を宛先とする前記送電の要求を受信した場合には、該要求を宛先に転送することを特徴とする請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記送受信部は、前記自領域における消費電力量、発電量および蓄電量を含む電力収支を通知するためのパケットを、前記他の領域に設置された電力制御装置に対して所定の送信周期で送信することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の電力制御装置。
【請求項6】
発電設備および蓄電設備を備えた領域ごとに設置される電力制御装置としてのコンピュータに実行させる電力制御プログラムであって、
前記コンピュータに、
自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、送電網および通信網で接続された他の領域ごとに、当該他の領域との間の送電負荷に係る評価値と、当該他の領域の電力収支とを対応付けて記憶する記憶部を参照し、該記憶部に記憶された評価値および電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の領域を選択し、
選択された他の領域に対して、当該他の領域から自領域に対して前記送電網を介して電力を送電すべき旨の要求を、前記通信網を介して送信する
各処理を実行させることを特徴とする電力制御プログラム。
【請求項7】
発電設備および蓄電設備を備えた領域ごとに設置される電力制御装置としてのコンピュータが実行する電力制御方法であって、
前記コンピュータが、
自領域の電力収支が所定の閾値未満である場合に、送電網および通信網で接続された他の領域ごとに、当該他の領域との間の送電負荷に係る評価値と、当該他の領域の電力収支とを対応付けて記憶する記憶部を参照し、該記憶部に記憶された評価値および電力収支に基づいて、送電の要求先となる他の領域を選択し、
選択された他の領域に対して、当該他の領域から自領域に対して前記送電網を介して電力を送電すべき旨の要求を、前記通信網を介して送信する
各処理を実行することを特徴とする電力制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2012−213256(P2012−213256A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76750(P2011−76750)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】