説明

電力受給システム

【課題】住宅用蓄電池を用意しなくても、複数の作業車両のバッテリを有効に利用して各バッテリの充電状態を監視調整することで、太陽光発電が不充分な場合や停電に対応出来るようにする。
【解決手段】太陽光発電装置(1)と複数の作業車両(5,8,10,14)の各バッテリ(7,10,13,16)を配電システムに接続した電力供給システムにおいて、各バッテリ(7,10,13,16)の充電状態を監視するメイン制御装置(4)を備え、太陽光発電装置(1)で発電した電力のうちの余剰電力を各バッテリ(7,10,13,16)の充電量に応じて充電量の少ないバッテリから順次充電して、各バッテリ(7,10,13,16)を常時使用可能な充電状態に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力受給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の電力受給システムとして、特許文献1に記載の構成が有る。
その構成は、太陽光発電によって得られた電力と、外部系統の深夜電力と、外部系統の一般電力とのコストを比較して、コストの安い電力を優先的に住宅用電気設備と住宅用蓄電池および又は電気自動車の車両用蓄電池に供給できるようにし、かつ、太陽光発電によって得られた電力の余剰分は外部系統へ送給して売電できるようにした構成である。
【0003】
また、太陽光発電によって得られた電力の余剰分を外部系統へ売電できない場合、該太陽光発電によって得られた電力の余剰分を、住宅用蓄電池および又は電気自動車の車両用蓄電池に充電するようにした構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−178237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の家庭用電力供給システムは、住宅用バッテリおよび又は電気自動車の車両用バッテリを備え、太陽光発電によって得られた電力の余剰分を充電するようにしているので、充電のために高価な充電装置と住宅用バッテリを必要としている。
【0006】
本発明は、住宅用蓄電池を用意しなくても、複数の作業車両のバッテリを有効に利用して各バッテリの充電状態を監視調整することで、太陽光発電が不充分な場合や停電に対応出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1記載の発明は、太陽光発電装置(1)と複数の作業車両(5,8,10,14)の各バッテリ(7,10,13,16)を配電システムに接続した電力供給システムにおいて、前記各バッテリ(7,10,13,16)の充電状態を監視するメイン制御装置(4)を備え、太陽光発電装置(1)で発電した電力のうちの余剰電力を前記各バッテリ(7,10,13,16)の充電量に応じて充電量の少ないバッテリから順次充電して、各バッテリ(7,10,13,16)を常時使用可能な充電状態に維持することを特徴とする電力受給システムとする。
【0008】
請求項2記載の発明は、商業電力の供給が停止した場合に、複数の作業車両(5,8,10,14)の各バッテリ(7,10,13,16)から電力を供給することを特徴とする請求項1記載の電力受給システムとする。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記メイン制御装置(4)に計時手段(19)を設け、各作業車両(5,8,10,14)の稼働時期が現在の時期に属している作業車両(5,8,10,14)のバッテリ(7,10,13,16)を優先的に充電することを特徴とする 請求項1または請求項2記載の電力受給システムとした。
請求項4記載の発明は、前記作業車両(5,8,10,14)の各バッテリ(7,10,13,16)に対する優先的な充電は、太陽光発電装置(1)からの余剰電力の供給と、非優先作業車両からの充電電力の供給で行うことを特徴とする請求項3記載の電力受給システムとした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、太陽光発電装置(1)で発電した電力は、主として家庭用電気機器の電力として使用し、余剰電力で複数の作業車両(5,8,10,14)のバッテリ(7,10,13,16)を充電するので、家庭用のバッテリを用意することなく、作業車両(5,8,10,14)のバッテリ(7,10,13,16)が余剰電力の蓄電に利用されるので、家庭用電力供給システムのコストを低下できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、家庭用電力が停電した場合に、作業車両(5,8,10,14)のバッテリ(7,10,13,16)から家庭用消費電力を供給するので、別に家庭用電力を設ける必要が無く、低コストの家庭用電力供給システムを構築出来る。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2記載の発明の効果に加え、例えば、作業車両が乗用車であればそのバッテリを常時優先的に充電し、田植え機であれば6月にそのバッテリを常時優先的に充電するようにすることで、余剰電力が少ない場合にも必要な作業車両を使用可能な状態に維持出来る。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明の効果に加え、太陽光発電装置(1)の余剰電力が少なくても優先される作業車両(5,8,10,14)を常時使用可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】家庭用電力供給システムの概念図である。
【図2】複数の作業車両の相互充電制御のフローチャート図である。
【図3】複数の作業車両の相互充電制御のフローチャート図である。
【図4】複数の作業車両の相互充電制御のフローチャート図である。
【図5】複数の作業車両の相互充電制御のフローチャート図である。
【図6】家庭用供給電力が停電した場合の制御フローチャート図である。
【図7】常時使用する作業車両の充電制御フローチャート図である。
【図8】田植え機の制御フローチャート図である。
【図9】コンバインの充電制御フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1は、本発明の家庭用電力供給システムの模式図で、家屋2の屋根に取り付けた太陽光発電装置1の給配電を第一スマートメータ3で監視制御し、作業車両として自動車5とトラクタ8と田植え機11とコンバイン14を用意し、自動車5の自動車バッテリ7に対する給配電を第二スマートメータ6で監視制御し、トラクタ8のトラクタバッテリ10に対する給配電を第三スマートメータ9で監視制御し、田植え機11の田植え機バッテリ13に対する給配電を第四スマートメータ12で監視制御し、コンバイン14のコンバインバッテリ16に対する給配電を第五スマートメータ15で監視制御している。
【0016】
なお、自動車バッテリ7とトラクタバッテリ10と田植え機バッテリ13とコンバインバッテリ16は、走行用の駆動モータに給電するバッテリであっても電装品に給電するバッテリであっても良い。
【0017】
太陽光発電装置1と自動車バッテリ7と田植え機バッテリ10とコンバインバッテリ16は、電力線18で連結し、第一スマートメータ3と第二スマートメータ6と第三スマートメータ9と第四スマートメータ12と第五スマートメータ15はメイン制御装置4に信号線17で連結され、メイン制御装置4の指令で各スマートメータ3,6,9,12,15の給配電を制御している。
【0018】
メイン制御装置4には、計時手段19を設けて季節の移り変わりをメイン制御装置4に知らせている。
図2乃至図5は、太陽光発電装置1の発電量が少なく各作業車5,8,11,14の各バッテリ7,10,13,16への給電が行われない場合の制御フローチャートで、充電量が最も高い作業車から最も低い作業車に給電される。この制御が繰り返されることで、各作業車5,8,11,14の充電量が同一に維持されることになる。
【0019】
まず、ステップS1からS4で、自動車バッテリ7とトラクタバッテリ10と田植え機バッテリ13とコンバインバッテリ16の充電量を各スマートメータ6,9,12,15からメイン制御装置4に読み込み、ステップS5,8,14で、充電量の一番多いバッテリを判断し、例えば、ステップS5で自動車バッテリ7の充電量が一番多いと、ステップS6,S7,S25,S26,S27で、トラクタバッテリ10と田植え機バッテリ13とコンバインバッテリ16の内で一番充電量が少ないバッテリに自動車バッテリ7から電力を供給して充電する。
【0020】
また、ステップS8でトラクタバッテリ10の充電量が一番多いと、ステップS9,S10,S11,S12,S13で、自動車バッテリ7と田植え機バッテリ13とコンバインバッテリ16の内で一番充電量が少ないバッテリにトラクタバッテリ10から電力を供給して充電する。
【0021】
また、ステップS14で田植え機バッテリ13の充電量が一番多いと、ステップS15,S16,S17,S18,S19で、自動車バッテリ7とトラクタバッテリ10とコンバインバッテリ16の内で一番充電量が少ないバッテリに田植え機バッテリ13から電力を供給して充電する。
【0022】
また、ステップS14の判断がNOでコンバインバッテリ16の充電量が一番多いとなると、ステップS20,S21,S22,S23,S24で、自動車バッテリ7とトラクタバッテリ10と田植え機バッテリ13の内で一番充電量が少ないバッテリにコンバインバッテリ16から電力を供給して充電する。
【0023】
上記では、自動車バッテリ7とトラクタバッテリ10と田植え機バッテリ13とコンバインバッテリ16の間で電力の融通を行っていたが、例えば、トラクタバッテリ10と田植え機バッテリ13の間のみ、或いは、トラクタバッテリ10とコンバインバッテリ16の間のみ、田植え機バッテリ13とコンバインバッテリ16の間のみで電力の融通を行うようにしても良い。
【0024】
図6は、曇っていて太陽光発電装置1の発電量が少ない場合に商用電力から家屋2への電力供給が停止した場合の緊急時における電力供給で、自動車バッテリ7とトラクタバッテリ10の充電量が多い側或いは共に多い場合には両方から家屋2側へ電力を供給する。
【0025】
なお、家屋2に緊急電力を供給するのは、自動車バッテリ7と田植え機バッテリ13でも、自動車バッテリ7とコンバインバッテリ16でも、自動車バッテリ7とトラクタバッテリ10と田植え機バッテリ13とコンバインバッテリ16でも良い。
【0026】
図7は、太陽光発電装置1が充分に発電して家庭用として余剰電力が有る場合の電力管理で、自動車バッテリ7とトラクタバッテリ10の充電量を確認して、満充電になっていない方へ充電を行って、自動車5とトラクタ8を常時満充電の状態に維持するようにする。
【0027】
図8は、メイン制御装置4に持っている計時手段17が4,5,6月の春を計時すると、特に田植え機バッテリ13を優先的に満充電にする制御である。
同様に、図9では、メイン制御装置4に持っている計時手段19が8,9,10,11月の秋を計時すると、特にコンバインバッテリ16を優先的に満充電にする制御である。
【符号の説明】
【0028】
1 太陽光発電装置
4 メイン制御装置
5 自動車
7 自動車バッテリ
8 トラクタ
10 トラクタバッテリ
11 田植え機
13 田植え機バッテリ
14 コンバイン
16 コンバインバッテリ
19 計時手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置(1)と複数の作業車両(5,8,10,14)の各バッテリ(7,10,13,16)を配電システムに接続した電力供給システムにおいて、前記各バッテリ(7,10,13,16)の充電状態を監視するメイン制御装置(4)を備え、太陽光発電装置(1)で発電した電力のうちの余剰電力を前記各バッテリ(7,10,13,16)の充電量に応じて充電量の少ないバッテリから順次充電して、各バッテリ(7,10,13,16)を常時使用可能な充電状態に維持することを特徴とする電力受給システム。
【請求項2】
商業電力の供給が停止した場合に、複数の作業車両(5,8,10,14)の各バッテリ(7,10,13,16)から電力を供給することを特徴とする請求項1記載の電力受給システム。
【請求項3】
前記メイン制御装置(4)に計時手段(19)を設け、各作業車両(5,8,10,14)の稼働時期が現在の時期に属している作業車両(5,8,10,14)のバッテリ(7,10,13,16)を優先的に充電することを特徴とする請求項1または請求項2記載の電力受給システム。
【請求項4】
前記作業車両(5,8,10,14)の各バッテリ(7,10,13,16)に対する優先的な充電は、太陽光発電装置(1)からの余剰電力の供給と、非優先作業車両からの充電電力の供給で行うことを特徴とする請求項3記載の電力受給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−31295(P2013−31295A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165716(P2011−165716)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】