説明

電力合成器及び電力分配器

【課題】電力増幅器の内部において、所望の電気長と同軸ケーブルの接続特性を満たしながら無理のない配線ができる電力合成器及び電力分配器を提供する。
【解決手段】本発明にかかる電力合成器は、出力端(13)と、任意の入力端(16,17)において、該入力端(16,17)と給電部(18)が、同軸ケーブル(1)で構成した両接続端部(1a,1b)と、該同軸ケーブル(1)より波長短縮率の小さい接続手段(2)を介して接続されている。本発明にかかる電力分配器は、入力端と、任意の出力端において、該出力端と分岐部が、同軸ケーブル(1)で構成した両接続端部(1a,1b)と、該同軸ケーブル(1)より波長短縮率の小さい接続手段(2)を介して接続されている。該接続手段(2)は同軸管(2)であってもよい。また、該同軸管(2)は、エアーラインであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅器に用いられる電力合成器及び電力分配器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力増幅器により高周波の電力を増幅する場合、開放端の影響をなくすために、開放端にいたる電気長を周波数に対する所定の値に調整する手法が採られている。例えば、特開2002−319832号公報には、携帯電話機などの移動体通信機の無線部に用いられる高周波電力増幅器において、電気長を所望の値に調整する技術が開示されている。この技術によれば、所望の電気長(λ/4)が増幅器全体の寸法と比較して長くなる場合、すなわち、電力増幅器が小型である場合に、配線の実長を短くして限られた空間内に納めることが可能となる。
【特許文献1】特開2002−319832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電力増幅器が大きくなると、小型の電力増幅器の場合とは異なる問題が生じている。
例えば、地上波デジタル放送の中継に使用される電力増幅器においては、開放端にいたる電気長、すなわち、入力端子から電力合成器の給電部まで又は出力端子から電力分配器の分岐部までの到達寸法、がλ/2でなければその性能を十分に満たすことができないところ、これら到達寸法は増幅器の横幅に左右され、λ/2では配線に十分な長さを得ることはできなかった。なお、入力端子からλ/2の電気長をもって給電部に、或いは出力端子からλ/2の電気長をもって分岐部に接続される意味は、入出力端子が開放された時の電力合成器及び電力分配器に与える影響が最も少なくなることにある。
このような問題は、増幅器の横幅を狭くすることができれば解消されるものの、性能等を考慮すると実際に横幅を狭くすることは困難であった。更に、電力増幅器内部における給電部或いは分岐部と開放端との接続手段には、端子における取付寸法に必要な精度を持たせるためのフローティング機構を満足させるなど、一定の接続特性を備えた同軸ケーブルを使用する必要があった。そのため、所望の電気長を満たしながら配線に必要な実長を得られるケーブルを選択することができず、配線に使用する同軸ケーブルの実長が電気長によって制限されることになり、無理のある配線を強いられるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、電力増幅器の内部において、所望の電気長と同軸ケーブルの接続特性を満たしながら無理のない配線ができる電力合成器及び電力分配器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる電力合成器では、出力端と、任意の入力端において、該入力端と合成点(給電部)が、同軸ケーブルで構成した両接続端部と、該同軸ケーブルより波長短縮率の小さい接続手段を介して接続されている。
【0006】
本発明にかかる電力分配器では、入力端と、任意の出力端において、該出力端と分岐点(分岐部)が、同軸ケーブルで構成した両接続端部と、該同軸ケーブルより波長短縮率の小さい接続手段を介して接続されている。
【0007】
該接続手段は同軸管であってもよい。
【0008】
該同軸管は、エアーラインであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる電力合成器及び電力分配器によれば、同軸ケーブルで構成した両接続端部を、同軸ケーブルより波長短縮率の小さい同軸管を介して接続するので、両接続端部においては同軸ケーブルの備える接続特性を維持しながら、この同軸ケーブルより波長短縮率の小さい接続手段を用いて配線全体の実長を調整できる。しかも、この接続手段の選定にあたっては接続特性を考慮する必要性がないため、実長の点のみを考慮した最適のものを採用できる。そのため、所望の電気長と同軸ケーブルの接続特性を満たしながら無理のない配線ができる。
【0010】
接続手段が同軸管であれば、配線全体をより長くとることができる。特にエアーラインは、ケーブル内の絶縁体の誘電率による波長短縮率がほぼ100%(真空とすれば100%)となるため、より好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2に、本発明にかかる電力合成器の具体例を示す。図1は同電力合成器が用いられる電力増幅器の側断面図、図2は同軸ケーブルと同軸管の接合部分の縦断面図である。
【0012】
この電力増幅器は、筐体30の正面に貫設された出力端13と、底面に貫設された入力端14、15、16、17を備える。これら入力端14、15、16、17は、給電部18に直接接続され、出力端13は給電部18に同軸管変整器(インピーダンス整合部)19を介して接続され、入力端14、15、16、17から入力された電気信号は、合成点18及び同軸管変整器19を経て出力端13から出力されるようになっている。
【0013】
入力端14、15は、給電部18を中心として幅方向の対象位置に設けられている。そして、給電部18への接続には、同軸ケーブル1が用いられている。一方、入力端16、17も、入力端14、15と同様に、給電部18を中心として幅方向の対象位置に設けられている。ただし、その設置位置は、入力端14、15よりも給電部18からより離れた、筐体11の壁板により近い場所とされている。そして、給電部18への接続には、同軸ケーブル1と、同軸ケーブル1より波長短縮率の小さい接続手段2が用いられている。なお、この具体例では、接続手段2として同軸管が採用されているため、以後、接続手段を同軸管に替えて説明する。
【0014】
給電部18と入力端16、17の接続に用いられている同軸ケーブル1は、入力端16、17に対する接続端部1aと、給電部18に対する接続端部1bに分離されており、これら両接続端部1a、1bが同軸管2を介して接続されている。なお、同軸ケーブル1と同軸管2は、図2に示すように、それぞれの内部導体11と21、外部導体12と22とが、それぞれはんだ付けされ接合されている。(図2において、符号Hがはんだ付けされた部分である。)
【0015】
この電力合成器において、入力端14、15は、同軸ケーブル1のみを用いても給電部18から伝搬波の波長λの半分、すなわちλ/2、以内の距離に位置するため、給電部18へは同軸ケーブル1のみを用いて接続することが可能となっている。一方、入力端16、17は、同軸ケーブル1のみを用いた場合、給電部18からλ/2以上離れて位置することになってしまう。そこで、同軸ケーブル1で構成した両接続端部1a、1bを、同軸ケーブルより波長短縮率の小さい同軸管2を介して接続し、両接続端部1a、1bにおいては同軸ケーブル1の備える接続特性を維持しながら、同軸管2を用いて配線全体の実長を調整することとしている。そのため、電気長λ/2と同軸ケーブル1の接続特性を満たしながら無理のない配線が可能となっている。
【0016】
同軸管2に制限はないが、エアーラインを用いれば、両接続端部1a、1b間をより長くとることができ好ましい。
【0017】
なお、この電力合成器における入力端14、15、16、17を出力端と、出力端13を入力端と、給電部18を分岐部と想定した場合には、本発明にかかる電力分配器の構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる電力合成器を用いた電力増幅器の側断面図である。
【図2】同軸ケーブルと同軸管の接合部分の縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 同軸ケーブル
1a、1b 接続端部
2 同軸管(接続手段)
11、21 内部導体
12、22 外部導体
13 出力端
14、15、16、17 入力端
18 給電部
19 同軸管変整器
30 筐体
H はんだ付け部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端(13)と、任意の入力端(16,17)において、該入力端(16,17)と給電部(18)が、同軸ケーブル(1)で構成した両接続端部(1a,1b)と、該同軸ケーブル(1)より波長短縮率の小さい接続手段(2)を介して接続されていることを特徴とする電力合成器。
【請求項2】
該接続手段(2)は同軸管(2)である請求項1に記載の電力合成器。
【請求項3】
該同軸管(2)は、エアーラインである請求項2に記載の電力合成器。
【請求項4】
入力端と、任意の出力端において、該出力端と分岐部が、同軸ケーブル(1)で構成した両接続端部(1a,1b)と、該同軸ケーブル(1)より波長短縮率の小さい接続手段(2)を介して接続されていることを特徴とする電力分配器。
【請求項5】
該接続手段(2)は同軸管(2)である請求項4に記載の電力分配器。
【請求項6】
該同軸管(2)は、エアーラインである請求項5に記載の電力分配器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−246071(P2006−246071A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59437(P2005−59437)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(391006991)ノーブル無線株式会社 (6)
【Fターム(参考)】