説明

電力変換装置

【課題】ケースの水密性を確保しつつ小型化を容易にする電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置1は、ケース2の内部に、直流電源と接続するための一対の電源用端子3と、交流負荷と接続するための複数の負荷用端子4とを有する。ケース2は、電源用端子3及び負荷用端子4のうちの少なくとも2個の端子に向って開口した連通開口部21と、連通開口部21の全周にわたって形成されると共に、連通開口部21を覆うカバーとの間に配設されるシール材が密着するシール面22と、シール面22の外側に形成され、カバーをケース2に締結するネジを螺合するための複数のネジ穴23とを有する。複数のネジ穴23のうちの少なくとも一つの内側には、連通開口部21の輪郭の一部が内方に向って張り出した内向部24が形成されている。内向部24には、シール面22の一部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源と交流負荷との間に接続され、両者の間の電力を変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電気自動車やハイブリッド自動車等には、直流電源(車載バッテリー)と交流負荷(三相交流回転電機)との間に接続され、両者の間の電力を変換する電力変換装置(インバータ)が搭載されている。
かかる電力変換装置9は、図16に示すごとく、ケース92の内部に、電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した半導体モジュールやコンデンサ等の構成部品が内蔵されている(特許文献1参照)と共に、上記直流電源と接続するための一対の電源用端子93と、上記交流負荷と接続するための複数(3個)の負荷用端子94とが配置されている。
【0003】
電源用端子93には、直流電源の一対の電極と電気的に接続されたコネクタ端子96が、ケース92の外側から挿入されると共に接続される。また、負荷用端子94には、交流負荷におけるU相、V相、W相の電極とそれぞれ電気的に接続されたバスバーのバスバー端子97が、ケース92の外側から挿入されると共に接続される。
【0004】
そして、上記電源用端子93と上記コネクタ端子96、並びに上記負荷用端子94とバスバー端子97とは、互いにボルトによって締結される(図3、図10、図11参照)。
このボルトを締結するために、ケース92には、ボルト締結部に向って、つまり電源用端子93及び負荷用端子94に向って開口した開口部921が形成されている。すなわち、ケース92内において、上記電源用端子93と上記コネクタ端子96、並びに上記負荷用端子94とバスバー端子97とを重ね合わせたうえで、上記開口部92からボルトをこれらの端子の重ね合わせ部に挿入し、締結工具で締結する。
【0005】
ケース92に設けた開口部921には、ボルト締結後において、開口部921を覆うカバーを取り付けると共に、カバーとケース92との間にシール材を介在させて、防水する必要がある(図6、図10〜図12参照)。そのため、ケース92には、開口部921の外側全周にわたってシール面922を形成すると共に、その外側に複数のネジ穴923を設け、このネジ穴923において、カバーをネジによって締結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−174759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のごとく、開口部921の全周にシール面922を形成し、さらにその外側にネジ穴923を複数形成するということは、ケース92に、開口部921用のスペースだけでなく、その周囲にシール面922及びネジ穴923を形成するためのスペースも必要となるということになる。そのため、ケース92の大型化を招き、電力変換装置9の小型化を阻害するおそれがある。
一方、ケース92の大型化を防ぐべく、ネジ穴923を開口部921に近い位置に形成しようとすると、ネジ穴923と開口部921との間のスペースが狭くなり、その部分に設けるシール面922の幅が小さくなってしまう。その結果、ケース92の水密性が低下するという問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、ケースの水密性を確保しつつ小型化を容易にする電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、直流電源と交流負荷との間に接続され、両者の間の電力を変換する電力変換装置において、
該電力変換装置は、外郭を構成するケースの内部に、上記直流電源と接続するための一対の電源用端子と、上記交流負荷と接続するための複数の負荷用端子とを有し、
上記ケースは、上記電源用端子及び上記負荷用端子のうちの少なくとも2個の端子に向って開口した連通開口部と、
該連通開口部の全周にわたって形成されると共に、該連通開口部を覆うカバーとの間に配設されるシール材が密着するシール面と、
該シール面の外側に形成され、上記カバーを上記ケースに締結するネジを螺合するための複数のネジ穴とを有し、
該複数のネジ穴のうちの少なくとも一つの内側には、上記連通開口部の輪郭の一部が内方に向って張り出した内向部が形成され、
該内向部には、上記シール面の一部が形成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記電力変換装置においては、上記ケースにおける少なくとも一つのネジ穴の内側に、上記連通開口部の輪郭の一部が内方に向って張り出した内向部が形成されている。そして、内向部には上記シール面の一部が形成されている。そのため、内向部の外側に設けるネジ穴を連通開口部に近付けることができる。すなわち、ネジ穴を連通開口部に近付けても、ネジ穴と連通開口部との間にシール面を充分な幅をもって形成することができる。
【0011】
それゆえ、連通開口部の外周における広い範囲にネジ穴を形成するスペースを設ける必要がなくなる。その結果、ケースの小型化を容易にすることができる。
このように、本発明によれば、連通開口部の全周にわたって充分な幅のシール面の形成を可能にしつつ、ケースの小型化を容易にすることができる。これにより、ケースの水密性を確保しつつ、電力変換装置の小型化を容易にすることができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、ケースの水密性を確保しつつ小型化を容易にする電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、電力変換装置の平面図。
【図2】実施例1における、電力変換装置とコネクタ及びバスバーアッセンブリの平面図。
【図3】実施例1における、コネクタ及びバスバーアッセンブリを接続した電力変換装置の平面図。
【図4】実施例1における、電力変換装置の側面図。
【図5】実施例1における、電力変換装置の斜視図。
【図6】実施例1における、コネクタ及びバスバーアッセンブリを接続した電力変換装置の側面図。
【図7】図3のA−A線矢視断面相当の部分断面拡大図。
【図8】図3のB−B線矢視断面相当の部分断面拡大図。
【図9】図3のC−C線矢視断面相当の部分断面拡大図。
【図10】実施例1における、図3のA−A線矢視断面相当のカバーを取り付けた状態の部分断面拡大図。
【図11】実施例1における、図3のB−B線矢視断面相当のカバーを取り付けた状態の部分断面拡大図。
【図12】実施例1における、図3のC−C線矢視断面相当のカバーを取り付けた状態の部分断面拡大図。
【図13】群中内向部を対向させた場合における、電力変換装置の平面図。
【図14】実施例2における、電力変換装置の平面図。
【図15】実施例3における、電力変換装置の平面図。
【図16】背景技術における、電力変換装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、上記交流負荷としては、例えば、三相交流回転電機等がある。
また、上記連通開口部は、上記一対の電源用端子と上記複数の負荷用端子とに向って開口しており、上記内向部の少なくとも一つは、上記連通開口部の開口方向から見たとき、上記一対の電源用端子からなる電源用端子群と、上記複数の負荷用端子からなる負荷用端子群との間に向って形成された群間内向部であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記内向部(群間内向部)を、上記電源用端子及び上記負荷用端子から充分な距離をもって形成することができる。つまり、電源用端子群と負荷用端子群との間には、電源用端子同士や負荷用端子同士の間よりも比較的大きな間隔が形成されやすいため、この部分に向って内向部を形成しても、内向部と電源用端子又は負荷用端子との間に充分な距離を保つことができる。
【0015】
そのため、上記電源用端子及び上記負荷用端子と、直流電源及び交流負荷に電気的に接続される接続端子との締結を行う際に、ボルトや締結工具が上記内向部(群間内向部)に干渉し難くなる。その結果、締結作業に支障を来すことなく、効果的に内向部を形成することができる。
【0016】
また、上記群間内向部は、上記連通開口部における互いに対向する位置に少なくとも一対形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記一対の内向部の外方に形成されるネジ穴を、連通開口部に近付けて形成することができる。そのため、ケースの小型化を一層容易にすることができ、電力変換装置の一層の小型化を図ることができる。
【0017】
また、上記内向部の少なくとも一つは、上記連通開口部の開口方向から見たとき上記電源用端子群又は上記負荷用端子群に向って形成された群中内向部であり、該群中内向部に対向する位置には、上記内向部が形成されていないことが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記電源用端子又は上記負荷用端子におけるボルト等の締結部材の締結時において、締結部材や締結工具が上記内向部に干渉することを抑制しつつ、電力変換装置の小型化を容易にすることができる。
【0018】
すなわち、上記群中内向部を形成することにより、ケースの小型化を容易にすることができるが、互いに対向する位置に一対の群中内向部を設けると、両者の間のスペースが小さくなりすぎ、電源用端子または負荷用端子の周囲における連通開口部の開口スペースが小さくなってしまう。その結果、上記締結部材や締結工具が内向部に干渉しやすくなり、その締結作業が困難となるおそれがある。
そこで、群中内向部に対向する位置には内向部を設けないこととすることによって、電源用端子または負荷用端子の周囲における連通開口部の開口スペースを確保し、締結作業を容易にすることができる。
【0019】
また、上記電力変換装置は複数の上記交流負荷に接続され、上記複数の負荷用端子は、接続先が上記交流負荷ごとに異なる複数の負荷用端子群を構成しており、上記連通開口部は上記複数の負荷用端子群に向って開口しており、上記内向部の少なくとも一つは、上記連通開口部の開口方向から見たとき、隣り合う2つの上記負荷用端子群の間に向って形成された群間内向部であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記内向部(群間内向部)を、上記負荷用端子から充分な距離をもって形成することができる。つまり、負荷用端子群の間には、同じ負荷用端子群の中における負荷用端子同士の間よりも比較的大きな間隔が形成されやすいため、この部分に向って内向部を形成しても、内向部と負荷用端子との間に充分な距離を保つことができる。
そのため、上記負荷用端子と、交流負荷に電気的に接続される接続端子との締結を行う際に、ボルト等の締結部材や締結工具が上記内向部(群間内向部)に干渉し難くなる。その結果、締結作業に支障を来すことなく、効果的に内向部を形成することができる。
【0020】
また、上記群間内向部は、上記連通開口部における互いに対向する位置に少なくとも一対形成されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記請求項3の発明と同様に、ケースの小型化を一層容易にすることができ、電力変換装置の一層の小型化を図ることができる。
【0021】
また、上記内向部の少なくとも一つは、上記連通開口部の開口方向から見たとき上記負荷用端子群に向って形成された群中内向部であり、該群中内向部に対向する位置には、上記内向部が形成されていないことが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記請求項4の発明と同様に、上記電源用端子又は上記負荷用端子におけるボルトの締結時において、ボルトや締結工具が上記内向部に干渉することを防ぎつつ、電力変換装置の小型化を容易にすることができる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
本発明の実施例に係る電力変換装置につき、図1〜図12を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、直流電源と交流負荷との間に接続され、両者の間の電力を変換する。
図1に示すごとく、電力変換装置1は、外郭を構成するケース2の内部に、直流電源と接続するための一対の電源用端子3と、交流負荷と接続するための複数の負荷用端子4とを有する。
【0023】
ケース2は、電源用端子3及び負荷用端子4に向って開口した連通開口部21を有する。そして、連通開口部21の全周にわたって、連通開口部21を覆うカバー51との間に配設されるシール材52(図6)が密着するシール面22が形成されている。
シール面22の外側には、カバー51をケース2に締結するネジ53を螺合するための複数のネジ穴23が形成されている。
複数のネジ穴23のうちの少なくとも一つの内側には、連通開口部21の輪郭の一部が内方に向って張り出した内向部24が形成されている。
そして、内向部24には、シール面22の一部が形成されている。
【0024】
図1において、符号221を付した破線は、シール面22の外縁の一部を表しているが、これは仮想的な線であり外形上表れるものではない。ただし、シール材52は、この外縁221よりも外側に接触しないようにしてあり、外縁221の外側はシール面22ではない。つまり、ネジ穴23はシール面22の外縁221の外側に存在する。
【0025】
本例においては、内向部24は3個形成されており、そのうちの2個は、連通開口部21の開口方向から見たとき、一対の電源用端子3からなる電源用端子群30と、複数の負荷用端子4からなる負荷用端子群40との間に向って形成された群間内向部241である。群間内向部241は、連通開口部21における互いに対向する位置に一対形成されている。
また、内向部24の他の一つは、開口方向から見たとき負荷用端子群40に向って形成された群中内向部242である。そして、群中内向部242に対向する位置には、内向部24が形成されていない。
【0026】
2本の電源用端子3と3本の負荷用端子4とは、連通開口部21の開口方向から見たとき、略直線状に一列に配置されている。これら5本の端子のすべてを囲むようにして、全体形状が略長孔形状の連通開口部21が形成されている。
また、隣り合う電源用端子3と負荷用端子4との間隔は、一対の電源用端子3同士の間隔および隣り合う負荷用端子4同士の間隔のいずれよりも大きい。すなわち、電源用端子群30と負荷用端子群40との間には、比較的広い間隙が設けられ、この間隙に向って一対の上記群間内向部241が形成されている。
また、群中内向部242は、負荷用端子群40における隣り合う2本の負荷用端子4の間に向って形成されている。
【0027】
これら3個の内向部24(2個の群間内向部241及び1個の群中内向部242)が形成されることによって、連通開口部21は、長孔形状において、両側からくびれた大きなくびれ部211と、片側からくびれた小さなくびれ部212とを有することとなる。くびれ部211は、ボルト11が通過できない程度の幅となっている。
【0028】
ネジ穴23は、連通開口部21から一定以上の間隔をもって形成されている。そして、上記3個の内向部24の外側には、それぞれ一つずつネジ穴23が形成されている。また、これら以外にも、連通開口部21の外周に複数のネジ穴23が形成されている。
これらすべてのネジ穴23と連通開口部21との間には、平坦なシール面22が形成されている。このシール面22は、連通開口部21の輪郭に直交する方向の幅が一定以上となるように形成されている。
【0029】
また、図4〜図9に示すごとく、ケース2は、連通開口部21の外周部分の全周を他の部分よりも厚く形成してあり、ケース2の外方へ突出させている。そして、この部分に、シール面22およびネジ穴23を形成してある。
【0030】
本例の電力変換装置1は、たとえば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載され、直流電源(車載バッテリー)と交流負荷(三相交流回転電機)との間に接続され、両者の間の電力を変換する。
電力変換装置1は、アルミニウム又はその合金からなるケース2の内部に、電力変換回路を構成するスイッチング素子を内蔵した半導体モジュールやコンデンサ等の構成部品が内蔵されている。そして、この電力変換回路における入出力端子として、一対の電源用端子3及び3個の負荷用端子4が、ケース2内に配置されている。
【0031】
図2、図3に示すごとく、電源用端子3には、直流電源の一対の電極と電気的に接続されるコネクタ端子6が、ケース2の外側から挿入されると共に接続される。また、負荷用端子4には、交流負荷におけるU相、V相、W相の電極とそれぞれ電気的に接続されるバスバー端子7が、ケース2の外側から挿入されると共に接続される。
一対のコネクタ端子6は樹脂製筐体内に保持されてコネクタ60を構成している。また、3本のバスバー端子7も樹脂によって一体化されたバスバーアッセンブリ70を構成している。
【0032】
コネクタ60におけるコネクタ端子6及び、バスバーアッセンブリ70における3本のバスバー端子7は、図4、図5に示すごとく、ケース2における上記連通開口部21が形成された面に略直交する面に形成された端子挿通用孔251、252から、それぞれケース2内に挿入される。
【0033】
そして、図3に示すごとく、電源用端子3とコネクタ端子6、並びに負荷用端子4とバスバー端子7とは、互いにボルト11によって締結される。
このボルト11を締結するために、ケース2には、ボルト締結部に向って、すなわち電源用端子3及び負荷用端子4に向って開口した上記連通開口部21が形成されている。つまり、図7、図8に示すごとく、ケース2内において、電源用端子3とコネクタ端子6、並びに負荷用端子4とバスバー端子7とを重ね合わせたうえで、連通開口部21からボルト11をこれらの端子の重ね合わせ部に挿入し、締結工具で締結する。
【0034】
図7に示すごとく、コネクタ60は、コネクタ端子6をその一方の面から支持する端子台61を有し、該端子台61に雌ネジ部62が形成されている。また、図2に示すごとく、電源用端子3及びコネクタ端子6にはボルト挿通孔301、601がそれぞれ形成されている。
そして、電源用端子3とコネクタ端子6とを締結するに当たっては、図7に示すごとく、電源用端子3とコネクタ端子6とを重ね合わせ、ボルト11を、電源用端子3のボルト挿通孔301とコネクタ端子6のボルト挿通孔601とに貫通させると共に、端子台61における雌ネジ部62に螺合させる。これにより、ボルト11によって、電源用端子3とコネクタ端子6とを端子台61上において締結し、接続する。
【0035】
また、図8に示すごとく、負荷用端子4は、ケース2内に配設された端子台41によって、一方の面から支持されている。端子台41にも雌ネジ部42が形成されている。また、図2に示すごとく、負荷用端子4及びバスバー端子7にはボルト挿通孔401、701がそれぞれ形成されている。
そして、負荷用端子4とバスバー端子7とを締結するに当たっては、図8に示すごとく、負荷用端子4とバスバー端子7とを重ね合わせ、ボルト11をバスバー端子7のボルト挿通孔701と負荷用端子4のボルト挿通孔401とに貫通させると共に、端子台41における雌ネジ部42に螺合させる。これにより、ボルト11によって、負荷用端子4とバスバー端子7とを端子台41上において締結し、接続する。
【0036】
図3に示すごとく、一対の電源用端子3と一対のコネクタ端子6とをそれぞれ締結し、3本の負荷用端子4と3本のバスバー端子7とをそれぞれ締結した後、図6、図10〜図12に示すごとく、連通開口部21にカバー51を取り付けて連通開口部21を閉塞する。
カバー51には、ケース2に形成したシール面22に対向する位置に、シール材52を取り付けてなる。連通開口部21にカバー51を取り付けるに当たっては、シール材52をシール面22に圧接しながら、ボルト53によって、カバー51をケース2に締結する。このとき、ボルト53は、ケース2に設けたネジ穴23に螺合する。
【0037】
なお、図7、図8に示すごとく、連通開口部21を上方へ向けた状態において、連通開口部21の下方であって、電源用端子3及び負荷用端子4の上方に、ボルト11の落下を防止するための落下防止壁43が配設されている。落下防止壁43は、連通開口部21の開口方向から見たとき、電源用端子群30を囲むように形成されていると共に、負荷用端子群40の周囲の一部に形成されている。この落下防止壁43は、負荷用端子4の端子台41と一体成形されてなる。
【0038】
そして、落下防止壁43と端子台41、61と連通開口部21の内壁213との間に、ボルト11の落下を防止する落下防止空間12が形成される。すなわち、ボルト11の締結作業時に、電源用端子3や負荷用端子4の周囲にボルト11が落下したとき、ボルト11が落下防止空間12内に留まるよう構成されている。
【0039】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記電力変換装置1においては、図1に示すごとく、ケース2における少なくとも一つのネジ穴23の内側に、連通開口部21の輪郭の一部が内方に向って張り出した内向部24が形成されている。そして、内向部24にはシール面22の一部が形成されている。そのため、内向部24の外側に設けるネジ穴23を連通開口部21に近付けることができる。すなわち、ネジ穴23を連通開口部21に近付けても、ネジ穴23と連通開口部21との間にシール面22を充分な幅をもって形成することができる。
【0040】
それゆえ、連通開口部21の外周における広い範囲にネジ穴23を形成するスペースを設ける必要がなくなる。その結果、ケース2の小型化を容易にすることができる。
このように、本例によれば、連通開口部21の全周にわたって充分な幅のシール面22の形成を可能にしつつ、ケース2の小型化を容易にすることができる。これにより、ケース2の水密性を確保しつつ、電力変換装置1の小型化を容易にすることができる。
【0041】
また、内向部24の少なくとも一つは、連通開口部21の開口方向から見たとき、電源用端子群30と負荷用端子群40との間に向って形成された群間内向部241である。これにより、内向部24(群間内向部241)を、電源用端子3及び負荷用端子4から充分な距離をもって形成することができる。つまり、電源用端子群30と負荷用端子群40との間には、電源用端子3同士や負荷用端子4同士の間よりも比較的大きな間隔が形成されやすいため、この部分に向って内向部24を形成しても、内向部24と電源用端子3又は負荷用端子4との間に充分な距離を保つことができる。
そのため、電源用端子3及び負荷用端子4と、コネクタ端子6及びバスバー端子7との締結を行う際に、ボルト11や締結工具が内向部24(群間内向部241)に干渉し難くなる。その結果、締結作業に支障を来すことなく、効果的に内向部24を形成することができる。
【0042】
また、群間内向部241は、連通開口部21における互いに対向する位置に一対形成されている。これにより、一対の内向部24の外方に形成されるネジ穴23を、連通開口部21に近付けて形成することができる。そのため、ケース2の小型化を一層容易にすることができ、電力変換装置1の一層の小型化を図ることができる。
【0043】
また、内向部24の少なくとも一つは、開口方向から見たとき負荷用端子群40に向って形成された群中内向部242であり、該群中内向部242に対向する位置には、内向部24が形成されていない。これにより、電源用端子3又は負荷用端子4におけるボルト11の締結時において、ボルト11や締結工具が内向部24に干渉することを抑制しつつ、電力変換装置1の小型化を容易にすることができる。
【0044】
すなわち、群中内向部242を形成することにより、ケース2の小型化を容易にすることができるが、仮に、図13に示すごとく、互いに対向する位置に一対の群中内向部242を設けると、両者の間のスペース210が小さくなりすぎ、負荷用端子4の周囲における連通開口部21の開口スペースが小さくなってしまう。その結果、ボルト11や締結工具が内向部24に干渉しやすくなり、その締結作業が困難となるおそれがある。
そこで、図1に示すごとく、群中内向部242に対向する位置には内向部24を設けないこととすることによって、負荷用端子4の周囲における連通開口部21の開口スペースを確保し、締結作業を容易にすることができる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、ケースの水密性を確保しつつ小型化を容易にする電力変換装置を提供することができる。
【0046】
(実施例2)
本例は、図14に示すごとく、負荷用端子群40を2つ有する電力変換装置1において、これら2つの負荷用端子群40に向って開口した連通開口部21をケース2に設けた例である。
【0047】
すなわち、本例の電力変換装置1は2個の交流負荷に接続され、複数の負荷用端子4は、接続先が交流負荷ごとに異なる2個の負荷用端子群40を構成している。2個の負荷用端子群40をそれぞれ構成する合計6個の負荷用端子4は、連通開口部21の開口方向から見たとき、略直線状に一列に並んで配置されている。これら6本の端子のすべてを囲むようにして、全体形状が略長孔形状の連通開口部21が形成されている。
そして、連通開口部21の周囲には、実施例1と同様に、シール面22と複数のネジ穴23とが形成されていると共に、一部のネジ穴23の内側に内向部24が形成されている。
【0048】
また、本例においては、上記内向部24は、連通開口部21の開口方向から見たとき、隣り合う2つの負荷用端子群40の間に向って形成された群間内向部241である。群間内向部241は、連通開口部21における互いに対向する位置に一対形成されている。
なお、本例においても、実施例1(図1)と同様に、開口方向から見たとき負荷用端子群40に向う群中内向部242を形成することもできる。
その他は、実施例1と同様である。
【0049】
本例の場合には、内向部24(群間内向部241)を、負荷用端子4から充分な距離をもって形成することができる。つまり、負荷用端子群40の間には、同じ負荷用端子群40の中における負荷用端子4同士の間よりも比較的大きな間隔が形成されやすいため、この部分に向って内向部24を形成しても、内向部24と負荷用端子4との間に充分な距離を保つことができる。
そのため、負荷用端子4と、バスバー端子7との締結を行う際に、ボルト11や締結工具が内向部24(群間内向部241)に干渉し難くなる(図2、図3参照)。その結果、締結作業に支障を来すことなく、効果的に内向部24を形成することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0050】
(実施例3)
本例は、図15に示すごとく、負荷用端子群40を2つ有する電力変換装置1において、これら2つの負荷用端子群40と該負荷用端子群40に隣接配置された電源用端子群30に向って開口した連通開口部21をケース2に設けた例である。
【0051】
本例の電力変換装置1も、実施例2と同様に、2個の交流負荷に接続され、複数の負荷用端子4は、接続先が交流負荷ごとに異なる2個の負荷用端子群40を構成している。2個の負荷用端子群40をそれぞれ構成する合計6個の負荷用端子4と、電源用端子群30を構成する2個の電源用端子3とは、連通開口部21の開口方向から見たとき、略直線状に一列に並んで配置されている。これら8本の端子のすべてを囲むようにして、全体形状が略長孔形状の連通開口部21が形成されている。
そして、連通開口部21の周囲には、実施例1と同様に、シール面22と複数のネジ穴23とが形成されていると共に、一部のネジ穴23の内側に内向部24が形成されている。
【0052】
また、本例においても、上記内向部24はいずれも群間内向部241である。そして、そのうちの一対の群間内向部241は、連通開口部21の開口方向から見たとき、隣り合う2つの負荷用端子群40の間に向って形成され、他の一対は、負荷用端子群40と電源用端子群30との間に向って形成されている。
また、上記二対の群間内向部241は、それぞれ、連通開口部21における互いに対向する位置に形成されている。
【0053】
なお、本例においても、実施例1(図1)と同様に、連通開口部21の開口方向から見たとき負荷用端子群40に向う群中内向部242を形成することもできる。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
なお、上記実施例1〜3において、連通開口部21の開口方向から見たとき、負荷用端子群40に向う群中内向部(図1の符号242参照)と同様に、電源用端子群30に向って形成された群中内向部を設けることもできる。この場合も、群中内向部に対向する位置には内向部24を設けない。
【符号の説明】
【0055】
1 電力変換装置
2 ケース
21 連通開口部
22 シール面
23 ネジ穴
24 内向部
241 群間内向部
242 群中内向部
3 電源用端子
30 電源用端子群
4 負荷用端子
40 負荷用端子群
6 コネクタ端子
7 バスバー端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と交流負荷との間に接続され、両者の間の電力を変換する電力変換装置において、
該電力変換装置は、外郭を構成するケースの内部に、上記直流電源と接続するための一対の電源用端子と、上記交流負荷と接続するための複数の負荷用端子とを有し、
上記ケースは、上記電源用端子及び上記負荷用端子のうちの少なくとも2個の端子に向って開口した連通開口部と、
該連通開口部の全周にわたって形成されると共に、該連通開口部を覆うカバーとの間に配設されるシール材が密着するシール面と、
該シール面の外側に形成され、上記カバーを上記ケースに締結するネジを螺合するための複数のネジ穴とを有し、
該複数のネジ穴のうちの少なくとも一つの内側には、上記連通開口部の輪郭の一部が内方に向って張り出した内向部が形成され、
該内向部には、上記シール面の一部が形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記連通開口部は、上記一対の電源用端子と上記複数の負荷用端子とに向って開口しており、上記内向部の少なくとも一つは、上記連通開口部の開口方向から見たとき、上記一対の電源用端子からなる電源用端子群と、上記複数の負荷用端子からなる負荷用端子群との間に向って形成された群間内向部であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、上記群間内向部は、上記連通開口部における互いに対向する位置に少なくとも一対形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電力変換装置において、上記内向部の少なくとも一つは、上記連通開口部の開口方向から見たとき上記電源用端子群又は上記負荷用端子群に向って形成された群中内向部であり、該群中内向部に対向する位置には、上記内向部が形成されていないことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力変換装置において、該電力変換装置は複数の上記交流負荷に接続され、上記複数の負荷用端子は、接続先が上記交流負荷ごとに異なる複数の負荷用端子群を構成しており、上記連通開口部は上記複数の負荷用端子群に向って開口しており、上記内向部の少なくとも一つは、上記連通開口部の開口方向から見たとき、隣り合う2つの上記負荷用端子群の間に向って形成された群間内向部であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、上記群間内向部は、上記連通開口部における互いに対向する位置に少なくとも一対形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電力変換装置において、上記内向部の少なくとも一つは、上記連通開口部の開口方向から見たとき上記負荷用端子群に向って形成された群中内向部であり、該群中内向部に対向する位置には、上記内向部が形成されていないことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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