電力変換装置
【課題】電力変換効率が大幅に向上し得た電力変換装置を提供する。
【解決手段】 交流電源101の両端に、インダクタL1とキャパシタC1を直列に介して第1のスイッチQ1を接続する。第1のスイッチQ1の両端に、平滑コンデンサC2を直列に介して第2のスイッチQ2を接続する。パルス生成部105は、交流電源101の電圧の極性が正のとき第1のスイッチQ1を交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第1のパルス信号P1を生成して第1のスイッチQ1に出力する。パルス生成部105は、交流電源101の電圧の極性が負のとき第2のスイッチQ2を交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第2のパルス信号P2を生成して第2のスイッチQ2に出力する。
【解決手段】 交流電源101の両端に、インダクタL1とキャパシタC1を直列に介して第1のスイッチQ1を接続する。第1のスイッチQ1の両端に、平滑コンデンサC2を直列に介して第2のスイッチQ2を接続する。パルス生成部105は、交流電源101の電圧の極性が正のとき第1のスイッチQ1を交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第1のパルス信号P1を生成して第1のスイッチQ1に出力する。パルス生成部105は、交流電源101の電圧の極性が負のとき第2のスイッチQ2を交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第2のパルス信号P2を生成して第2のスイッチQ2に出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交流電源から得られる交流電圧を直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電圧を直流電圧に変換する方法として、次の2つの方法が一般的に知られている。
第1の方法は、ダイオードブリッジ回路と平滑コンデンサとを用いる。ダイオードブリッジ回路は、交流電源からの交流を全波整流する。平滑コンデンサは、全波整流後の直流を平滑する。
【0003】
この第1の方法は、交流電圧が正及び負のいずれの場合においても、常に2つのダイオードの直列回路を電流が流れる。このとき、2つのダイオードでは、それぞれダイオードを流れる電流とダイオードの順方向電圧との積に相当する電力損失が発生する。
【0004】
第2の方法は、第1の方法のダイオードブリッジ回路と平滑コンデンサとの間に力率改善コンバータ(Power Factor Converter:PFC)を用いる。力率改善コンバータは、ダイオードブリッジ回路で全波整流された直流の電圧を昇圧する。
【0005】
この第2の方法も、全波整流の際に2つのダイオードの直列回路を電流が流れるため、電力損失が発生する。それに加えて、力率改善コンバータを構成する電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)とダイオードに交互に電流が流れるため、さらなる損失が生じる。
【0006】
また、力率改善コンバータは、入力電流の波形を正弦波にする必要上、出力電圧を入力電圧よりも高く設定しなければならない。ところが、負荷で必要な電圧は、必ずしも入力電圧より高い電圧であるとは限らない。その場合は、力率改善コンバータの後段に降圧コンバータを接続して、力率改善コンバータで昇圧された電圧を所望の電圧まで降圧する。この降圧の際にも損失が発生し、電力変換装置全体としては、AC-DC変換×DC-DC(昇圧)変換×DC-DC(降圧)変換の3段の構成になり電力損失はこれらの積となって現れる。例えば、一段あたりの効率0.95とした場合、3段では[0.95×0.95×0.95=0.86]、つまり、効率95%の優れた変換であっても3段接続では86%まで落ちてしまう。このように、個々の変換効率は良くても多段にすることで変換効率は著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−110869号公報
【特許文献2】特開2008−295248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
昨今、巷では電子機器の省エネルギー化が叫ばれており、その一環として、負荷へ電力を供給する電力変換装置の変換効率向上が求められている。しかしながら、従来の回路構成では、変換効率の改善に限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、電力変換装置は、交流電源の両端に、インダクタとキャパシタを直列に介して第1のスイッチを接続する。また電力変換装置は、第1のスイッチの両端に、平滑コンデンサを直列に介して第2のスイッチを接続する。さらに電力変換装置は、パルス生成部を備える。パルス生成部は、交流電源の電圧の極性が正のとき、第1のスイッチを交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第1のパルス信号を生成して第1のスイッチに出力する。パルス生成部は、交流電源の電圧の極性が負のとき、第2のスイッチを交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第2のパルス信号を生成して第2のスイッチに出力する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図2】第1の実施形態において、交流電圧と第1及び第2のパルス信号との関係を示す波形図。
【図3】第1の実施形態における電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図4】第1の実施形態において、スイッチング動作をしたときとしないときとの出力電圧波形を示す図。
【図5】第2の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図6】第3の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図7】第4の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図8】第5の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図9】第5の実施形態において、交流電圧の極性が正のときの電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図10】第5の実施形態において、交流電圧の極性が負のときの電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図11】第6の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図12】第6の実施形態において、ラッチ回路の出力を示すタイミング図。
【図13】第6の実施形態において、電圧波形と電流波形との関係を示すタイミング図。
【図14】第7の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図15】第7の実施形態において、交流電圧の極性が正のときの電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図16】第7の実施形態において、交流電圧の極性が負のときの電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図17】電流検出部に係わる第1の変形例を示す回路図。
【図18】電流検出部に係わる第2の変形例を示す回路図。
【図19】電流検出部に係わる第3の変形例を示す回路図。
【図20】電流検出部に係わる第4の変形例を示す回路図。
【図21】100Vの交流電源と200Vの交流電源を印加した場合の始動時の電圧変化を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、交流電源として100Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力とし、所望の直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
はじめに、第1の実施形態を、図1〜図4を用いて説明する。図1は、第1の実施形態の電力変換装置100を示す回路図である。
【0013】
電力変換装置100は、交流電源101の両端に、インダクタL1とキャパシタC1を直列に介して、第1の半導体スイッチQ1を接続する。第1の半導体スイッチQ1は、N型チャネルのMOS型FETを使用する。具体的には、交流電源101の一端にインダクタl1を介してキャパシタC1の一端を接続し、キャパシタC1の他端に第1の半導体スイッチQ1であるMOS型FETのドレイン端子を接続し、当該MOS型FETのソース端子を交流電源101の他端に接続する。
【0014】
電力変換装置100は、第1の半導体スイッチQ1の両端に、平滑コンデンサC2を直列に介して、第2の半導体スイッチQ2を接続する。第2の半導体スイッチQ2は、N型チャネルのMOS型FETを使用する。具体的には、第2の半導体スイッチQ2であるMOS型FETのソース端子をキャパシタC1と第1の半導体スイッチQ1との接続点に接続し、当該MOS型FETQ2のドレイン端子を平滑コンデンサC2の正極端子に接続し、平滑コンデンサC2の負極端子を交流電源101と第1の半導体スイッチQ1との接続点に接続する。
【0015】
電力変換装置100は、平滑コンデンサC2の両端を出力端子102、103とする。そして、これらの出力端子102,103間に、所望の負荷Lを接続する。
【0016】
電力変換装置100は、交流電源101の両端に極性判定部103を接続する。極性判定部104は、交流電源101から得られる交流電圧Vaの極性(正または負)を判定する。電力変換装置100は、極性判定部104で判定された極性の情報をパルス生成部105に供給する。
【0017】
極性判定部104は、例えば交流電圧Vaの極性が正ならば論理“1”の情報をパルス生成部105に出力し、負ならば論理“0”の情報をパルス生成部105に出力する。あるいは極性判定部104は、交流電圧Vaの極性が正ならば5V電圧をパルス生成部105に印加し、負ならば0V電圧をパルス生成部105に印加する。
【0018】
パルス生成部105は、極性判定部104からの出力が正を示すときには第1のパルス信号P1を生成し、負を示すときには第2のパルス信号P2を生成する。
【0019】
図2は、交流電圧Vaと第1及び第2のパルス信号P1,P2との関係を示す波形図である。図2において、区間T1〜T2は、交流電圧Vaの極性が正の区間である。この区間のとき、パルス生成部105は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第1のパルス信号P1を生成する。
【0020】
図2において、区間T2〜T3は、交流電圧Vaの極性が負の区間である。この区間のとき、パルス生成部105は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第2のパルス信号P2を生成する。
【0021】
電力変換装置100は、第1のパルス信号P1を第1の半導体スイッチQ1に供給し、第2のパルス信号P2を第2の半導体スイッチQ2に供給する。第1の半導体スイッチQ1は、第1のパルス信号P1が供給される毎に導通する。第2の半導体スイッチQ2は、第2のパルス信号P2が供給される毎に導通する。
【0022】
第1及び第2のパルス信号P1,P2による電力変換装置100の動作を、図3のタイミング図を用いて説明する。図3は、第1及び第2のパルス信号P1,P2と、第1及び第2の半導体スイッチQ1,Q2を流れる電流を示している。
【0023】
はじめに、交流電圧Vaの極性が正のときの動作について説明する。交流電圧Vaの極性が正のときには第1のパルス信号P1が周期的に出力される。第1のパルス信号P1がオンすると(図3の時点T11,T13)、第1の半導体スイッチQ1が導通する。第1の半導体スイッチQ1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の半導体スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流が、キャパシタC1側から第1の半導体スイッチQ1に流れる(図3の区間T11−T12、T13−T14)。
【0024】
第1のパルス信号P1がオフすると(図3の時点T12、T14)、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の半導体スイッチQ2のボディダイオードを経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む(図3の区間T12−T13)。
【0025】
第1のパルス信号P1が出力される毎に、電力変換装置100は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置100は、出力端子102,103間の電圧Vを昇圧しながら、平滑コンデンサC2を充電する。
【0026】
次に、交流電圧Vaの極性が負のときの動作について説明する。交流電圧Vaの極性が負のときには第2のパルス信号P2が周期的に出力される。第2のパルス信号P2がオンすると(図3の時点T21,T23)、第2の半導体スイッチQ2が導通する。第2の半導体スイッチQ2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の半導体スイッチQ2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の半導体スイッチQ2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置100は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の半導体スイッチQ2に流れる(図3の区間T21−T22、T23−T24)。
【0027】
第2のパルス信号P2がオフすると(図3の時点T22、T24)、第2の半導体スイッチQ2が非導通になる。第2の半導体スイッチQ2が非導通になると、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けようとする。このため、第1の半導体スイッチQ1のボディダイオードを経由してキャパシタC1に電流が流れ込む(図3の区間T22−T23)。
【0028】
第2のパルス信号P2が出力される毎に、電力変換装置100は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置100は、キャパシタC1に電荷を補充する。
【0029】
交流電圧Vaの極性は、正と負を交互に繰り返す。したがって、電力変換装置100は、平滑コンデンサC2を充電する作用とキャパシタC1に電荷を補充する作用とを交互に繰り返す。すなわち電力変換装置100は、キャパシタC1に電荷を補充した後に平滑コンデンサC2を充電する。したがって、平滑コンデンサC2を充電する際にはキャパシタC1に蓄えられた電荷が平滑コンデンサC2に移動する。
【0030】
図1に示した電力変換装置100の回路は、第1及び第2のスイッチ素子Q1,Q2がスイッチング動作しないと、倍電圧回路として動作する。つまり、入力電圧が例えば交流100Vの場合は、図4の電圧波形Aに示すように、略200Vの直流電圧が出力端子102,103間に生じる。
【0031】
前述したように第1及び第2のスイッチ素子Q1,Q2がスイッチング動作すると、キャパシタC1に蓄えられた電荷が平滑コンデンサC2に移動する。このため、電力変換装置100の昇圧効果が加算される。その結果、電力変換装置100は、入力電圧である交流電圧Vaを、その倍電圧よりもさらに高い電圧に昇圧して、直流の出力電圧Vを得ることができる。
【0032】
その出力電圧Vは、第1及び第2のパルス信号P1,P2のパルス幅で制御することができる。つまり、パルス幅を広く設定すれば出力電圧Vは高くなり、狭く設定すれば出力電圧Vは低くなる。入力電圧が例えば交流100Vの場合、第1及び第2のパルス信号P1,P2のパルス幅の設定如何によって、図4の電圧波形Bに示すように、電力変換装置100は、略400Vの直流電圧を出力端子102,103間に得ることができる。
【0033】
このように、第1の実施形態によれば、電力変換装置100は、全波整流を行うことなく、交流電源101から得られる交流電圧を直流電圧に変換して負荷Lへ電力を供給することができる。したがって、全波整流のためのダイオードブリッジ回路が不要となるため、回路部品点数を削減でき、コストの低減を図ることができる。また、ダイオードブリッジ回路で発生していたダイオードの順方向電圧による損失がなくなるので、電力変換装置100は、高効率の電力変換が可能となる。
【0034】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を、図5を用いて説明する。図5は、第2の実施形態の電力変換装置200を示す回路図である。なお、図1と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0035】
第1の実施形態では、第1のパルス信号P1及び第2のパルス信号P2でスイッチング動作する一対のスイッチとして半導体スイッチQ1,Q2を使用した。第2の実施形態では、同スイッチとして、機械的スイッチS1,S2を使用する。
【0036】
すなわち電力変換装置200は、交流電源101の両端に、インダクタL1とキャパシタC1を直列に介して第1の機械的スイッチS1を接続する。また、電力変換装置200は、第1の機械的スイッチS1の両端に、平滑コンデンサC2を直列に介して第2の機械的スイッチS2を接続する。
【0037】
電力変換装置200は、第1の機械的スイッチS1に対して並列に第1の外付けダイオードD1を接続する。具体的には、第1の機械的スイッチS1と第2の交流電源101との接続点X1に、第1の外付けダイオードD1のアノードを接続し、第1の機械的スイッチS1とキャパシタC1との接続点X2に、第1の外付けダイオードD1のカソードを接続する。
【0038】
また、電力変換装置200は、第2の機械的スイッチS2に対して並列に第2の外付けダイオードD2を接続する。具体的には、第2の機械的スイッチS2とキャパシタC1との接続点X2に、第2の外付けダイオードD2のアノードを接続し、第2の機械的スイッチS2と平滑コンデンサC2との接続点X3に、第2の外付けダイオードD2のカソードを接続する。
【0039】
その他の構成は、第1の実施形態の電力変換装置100と同一である。したがって、交流電圧Vaの極性が正のときには、第1の機械的スイッチS1が、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で導通、非導通を繰り返す。第1の機械的スイッチS1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の機械的スイッチS1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流が、キャパシタC1側から第1の機械的スイッチS1に流れる。
【0040】
第1の機械的スイッチS1が非導通になると、第1の機械的スイッチS1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む。
【0041】
交流電圧Vaの極性が負のときには、第2の機械的スイッチS2が、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で導通、非導通を繰り返す。第2の機械的スイッチS2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の機械的スイッチS2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の機械的スイッチS2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置200は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の機械的スイッチS2に流れる。
【0042】
第2の機械的スイッチS2が非導通になると、第2の機械的スイッチS2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けようとする。このため、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む。
【0043】
このように、電力変換装置200は、MOS型FETが有するボディダイオードの代わりに外付けダイオードD1,D2を使用する。ダイオードD1,D2は、上記ボディダイオードの順方向電圧より低いものを選ぶ。そうすることによって、第1の実施形態の電力変換装置100よりもダイオード順方向電圧による損失を軽減できる効果を奏する。
【0044】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態を、図6を用いて説明する。図6は、第3の実施形態の電力変換装置300を示す回路図である。なお、図1及び図5と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0045】
第2の実施形態では、一対のスイッチとして、機械的スイッチS1,S2を使用した。第3の実施形態では、同スイッチとして、第1の実施形態と同様に、半導体スイッチQ1,Q2を使用する。すなわち、電力変換装置300は、第1の半導体スイッチQ1に対して並列に第1の外付けダイオードD1を接続し、第2の半導体スイッチQ2に対して並列に第2の外付けダイオードD2を接続する。
【0046】
第1の外付けダイオードD1は、第1の半導体スイッチQ1が有するボディダイオードより順方向電圧が低い。同じく、第2の外付けダイオードD2は、第2の半導体スイッチQ2が有するボディダイオードより順方向電圧が低い。
【0047】
第1の実施形態の電力変換装置100では、第1または第2の半導体スイッチQ1,Q2のボディダイオードを流れた電流が、第3の実施形態の電力変換装置300では、第1または第2の外付けダイオードD1,D2を流れる。したがって、電力変換装置300は、電力変換装置100よりもダイオード順方向電圧による損失を軽減できる効果を奏する。
【0048】
スイッチ素子として半導体スイッチQ1,Q2を用いた場合、半導体スイッチQ1,Q2はボディダイオードを有するため、原理的には外付けダイオードD1,D2は不要である。しかし一般的に、ボディダイオードは順方向電圧が高いため(例えば1.2V)、これより低い順方向電圧、例えば0.8Vのダイオードを外付けすれば、順方向電圧の差分だけ効率はよくなる。
【0049】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態を、図7を用いて説明する。図7は、第4の実施形態の電力変換装置400を示す回路図である。なお、図5と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0050】
電力変換装置400は、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成が、第2の実施形態の電力変換装置200と同一である。電力変換装置400は、出力端子102,103間に出力電圧検出部401を接続する。出力電圧検出部401は、平滑コンデンサC2の両端である出力端子102,103間の電圧Voutを検出する。そして、その検出信号を比較部402に出力する。
【0051】
比較部402は、出力電圧検出部401にて検出された出力電圧Voutを、予め設定されているリファレンス電圧Vsと比較する。比較部402は、出力電圧Voutがリファレンス電圧Vsより大きいときには出力電圧大を示す情報、例えば論理“1”の情報をパルス生成部403に出力する。逆に、出力電圧Voutがリファレンス電圧Vsより小さいときには、出力電圧小を示す情報、例えば論理“0”の情報を、比較部402はパルス生成部403に出力する。
【0052】
パルス生成部403は、第1〜第3の実施形態のパルス生成部105と同様に、極性判定部104からの出力が正を示すときには第1のパルス信号P1を生成し、負を示すときには第2のパルス信号P2を生成する。ただし、第4の実施形態では、パルス生成部403は、比較部402から出力される出力電圧大または小の情報に応じて、パルス信号P1,P2のパルス幅を可変する。具体的には、パルス生成部403は、比較部402からの情報が出力電圧小を示すときにはパルス幅を広げる方向に制御し、出力電圧大を示すときにはパルス幅を狭める方向に制御する。
【0053】
かかる構成の電力変換装置400は、出力電圧Voutが所定のリファレンス電圧Vsよりも小さいときには、第1のパルス信号P1及び第2のパルス信号P2のパルス幅が広くなる。したがって、機械的スイッチS1及びS2が導通する時間が長くなる。その結果、機械的スイッチS1及びS2を流れる電流量が増大するので、出力電圧Voutが上昇する。
【0054】
一方、出力電圧Voutが所定のリファレンス電圧Vsよりも大きくなると、第1のパルス信号P1及び第2のパルス信号P2のパルス幅が狭くなる。したがって、機械的スイッチS1及びS2が導通する時間が短くなる。その結果、機械的スイッチS1及びS2を流れる電流量が減少するので、出力電圧Voutが下降する。かくして、電力変換装置400は、出力電圧Voutのフィードバック制御により、出力電圧Voutをリファレンス電圧Vsの近傍で略一定に維持することができる。
【0055】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態を、図8〜図10を用いて説明する。図8は、第5の実施形態の電力変換装置500を示す回路図である。なお、図6と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0056】
電力変換装置500は、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成が、第3の実施形態の電力変換装置300と同一である。電力変換装置500は、第1の半導体スイッチQ1と第1の外付けダイオードD1との接続点X1と交流電源101との間に回路電流検出部501を接続する。回路電流検出部501は、交流電源101に流れる回路電流Iを検出し、その検出信号をパルス生成部502に出力する。
【0057】
パルス生成部502は、第2の実施形態のパルス生成部105と同様に、極性判定部104からの出力が正を示すときには第1のパルス信号P1を出力し、負を示すときには第2のパルス信号P2を出力する。さらに、パルス生成部502は、第1の遅延パルス信号Y1及び第2の遅延パルス信号Y2と、第1のゼロマージンパルス信号Z1及び第2のゼロマージンパルス信号Z2を出力する。
【0058】
第1の遅延パルス信号Y1は、第1のパルス信号P1がオフしてから微小の遅延時間dを経過するとオンし、次の第1のパルス信号P1がオンするタイミングで同時にオフする。第2の遅延パルス信号Y2は、第2のパルス信号P2がオフしてから微小の遅延時間dを経過するとオンし、次の第2のパルス信号P2がオンするタイミングで同時にオフする。
【0059】
第1のゼロマージンパルス信号Z1は、第1のパルス信号P1がオンするタイミングで同時にオンし、第1のパルス信号P1がオフしてから回路電流Iがゼロになる直前にオフする。第2のゼロマージンパルス信号Z2は、第2のパルス信号P2がオンするタイミングで同時にオンし、第2のパルス信号P2がオフしてから回路電流Iがゼロになる直前にオフする。パルス生成部502は、回路電流検出部501から供給される回路電流Iの値を基に、回路電流Iがゼロになる直前か否かを判定して、第1及び第2のゼロマージンパルス信号Z1,Z2のオフタイミングを制御する。
【0060】
電力変換装置500は、第1の論理積ゲート503及び第2の論理積ゲート504と、第1の論理和ゲート505及び第2の論理和ゲート506を備える。第1の論理積ゲート503は、第1の遅延パルス信号Y1と第1のゼロマージンパルス信号Z1との論理積を演算する。第2の論理積ゲート504は、第2の遅延パルス信号Y2と第2のゼロマージンパルス信号Z2との論理積を演算する。第1の論理和ゲート505は、第1のパルス信号P1と、第2の論理積ゲート504の論理積結果である第2のサブパルス信号G2との論理和を演算する。第2の論理和ゲート506は、第2のパルス信号P2と、第1の論理積ゲート503の論理積結果である第1のサブパルス信号G1との論理和を演算する。
【0061】
電力変換装置500は、第1の論理和ゲート505の論理和結果であるパルス信号P11を第1の半導体スイッチQ1に供給し、第2の論理和ゲート506の論理和結果であるパルス信号P21を第2の半導体スイッチQ2に供給する。第1の半導体スイッチQ1は、パルス信号P11が供給されている間、導通し、第2の半導体スイッチQ2は、パルス信号P21が供給されている間、導通する。
【0062】
かかる構成の電力変換装置500の動作を、図9及び図10のタイミング図を用いて説明する。
図9は、交流電圧Vaの極性が正のときの電力変換装置500の動作を示すタイミング図である。交流電圧Vaの極性が正のとき、パルス生成部502は、第1のパルス信号P1を周期的に出力する。第1のパルス信号P1がオンすると(図9の時点T31,T35)、第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11がオンし、第1の半導体スイッチQ1が導通する。
【0063】
第1の半導体スイッチQ1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の半導体スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流Iが、キャパシタC1側から第1の半導体スイッチQ1に流れる(図9の区間T31−T32、T35−T36)。
【0064】
パルス生成部502は、第1のパルス信号P1のオンに同期して、第1のゼロマージンパルス信号Z1をオンする(図9の時点T31,T35)。ただし、この時点では、第1の遅延パルス信号Y1はオフしている。したがって、第1の論理積ゲート503から出力される第1のサブパルス信号G1はオフしている。このとき、第2のパルス信号P2もオフしているので、第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21は、オフのままである。
【0065】
また、第2の遅延パルス信号Y2及び第2のゼロマージンパルス信号Z2もオフしている。したがって、第2の論理積ゲート504から出力される第2のサブパルス信号G2もオフしている。このため、第1のパルス信号P1がオフすると(図9の時点T32、T36)、第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11がオフする。パルス信号P11がオフすると、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む。
【0066】
第1のパルス信号P1がオフしてから微小な遅延時間dが経過すると(図9の時点T33、T37)、第1の遅延パルス信号Y1がオンする。このとき、第1のゼロマージンパルス信号Z1はオンしているので、第1の論理積ゲート503から出力される第1のサブパルス信号G1がオンする。その結果、第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21がオンする。
【0067】
パルス信号P21がオンすると、第2の半導体スイッチQ2が導通する。ここで、第2の半導体スイッチQ2は、オン抵抗が第2の外付けダイオードD2の抵抗よりも十分に小さいと仮定する。その場合、第2の半導体スイッチQ2が導通すると、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、第2の半導体スイッチQ2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込むようになる(図9の区間T33−T34、T37−T38)。
【0068】
その後、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流がゼロになる直前のタイミングで(図9の時点T34、T38)、第1のゼロマージンパルス信号Z1がオフする。第1のゼロマージンパルス信号Z1がオフすると、第1の論理積ゲート503から出力される第1のサブパルス信号G1がオフし、同時に第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21もオフする。
【0069】
パルス信号P21がオフすると、第2の半導体スイッチQ2が非導通になる。第2の半導体スイッチQ2が非導通になると、第2の半導体スイッチQ2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、再び、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込む。
【0070】
図10は、交流電圧Vaの極性が負のときの電力変換装置500の動作を示すタイミング図である。交流電圧Vaの極性が負のとき、パルス生成部502は、第2のパルス信号P2を周期的に出力する。第2のパルス信号P2がオンすると(図10の時点T41,T45)、第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21がオンし、第2の半導体スイッチQ2が導通する。
【0071】
第2の半導体スイッチQ2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の半導体スイッチQ2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の半導体スイッチQ2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置200は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の半導体スイッチQ2に流れる(図10の区間T41−T42、T45−T46)。
【0072】
パルス生成部502は、第2のパルス信号P2のオンに同期して、第2のゼロマージンパルス信号Z2をオンする(図10の時点T41,T45)。ただし、この時点では、第2の遅延パルス信号Y2はオフしている。したがって、第2の論理積ゲート504から出力される第2のサブパルス信号G2はオフしている。このとき、第1のパルス信号P1もオフしているので、第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11は、オフのままである。
【0073】
また、第1の遅延パルス信号Y1及び第1のゼロマージンパルス信号Z1もオフしている。したがって、第1の論理積ゲート503から出力される第1のサブパルス信号G1もオフしている。このため、第2のパルス信号P2がオフすると(図10の時点T42、T46)、第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21がオフする。
【0074】
パルス信号P21がオフすると、第2の半導体スイッチQ2が非導通になる。第2の半導体スイッチQ2が非導通になると、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む。
【0075】
第2のパルス信号P2がオフしてから微小な遅延時間dが経過すると(図10の時点T43、T47)、第2の遅延パルス信号Y2がオンする。このとき、第2のゼロマージンパルス信号Z2はオンしているので、第2の論理積ゲート504から出力される第2のサブパルス信号G2がオンする。その結果、第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11がオンする。
【0076】
パルス信号P11がオンすると、第1の半導体スイッチQ1が導通する。ここで、第1の半導体スイッチQ1は、オン抵抗が第1の外付けダイオードD1による抵抗よりも十分に小さいと仮定する。その場合、第1の半導体スイッチQ1が導通すると、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、第1の半導体スイッチQ1を経由してキャパシタC1に流れ込むようになる(図10の区間T43−T44、T47−T48)。
【0077】
その後、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流がゼロになる直前のタイミングで(図10の時点T44、T48)、第2のゼロマージンパルス信号Z2がオフする。第2のゼロマージンパルス信号Z2がオフすると、第2の論理積ゲート504から出力されるだい2のサブパルス信号G2がオフし、同時に第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11もオフする。パルス信号P11がオフすると、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、再び、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込む。
【0078】
このように、第3の実施形態の電力変換装置300では、第1の半導体スイッチQ1がオフしたことにより第2の外付けダイオードD2に流れていた電流が、第5の実施形態の電力変換装置500では、第1の半導体スイッチQ1がオフした時点から微小な遅延時間経過後に第2の半導体スイッチQ2に流れる。そして、この電流がゼロになる直前で、再び、第2の外付けダイオードD2に流れる。同様に、第2の半導体スイッチQ2がオフしたことにより第1の外付けダイオードD1に流れていた電流が、第2の半導体スイッチQ2がオフした時点から微小な遅延時間経過後に第1の半導体スイッチQ1に流れる。そして、この電流がゼロになる直前で、再び、第1の外付けダイオードD1に流れる。
【0079】
第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2は、外付けダイオードD1,D2と比べてオン抵抗が非常に小さい。したがって、電力変換装置500は、第3の実施形態の電力変換装置300と比較して、より一層の電力変換効率を高めることができる。
【0080】
なお、第1の半導体スイッチQ1がオン,オフするタイミングと第2の半導体スイッチQ2がオフ,オンするタイミングとを一致させると、電力変換効率はより一層高まる。
【0081】
しかし、半導体スイッチQ1,Q2は、特性のばらつきにより、同時にオンする可能性がある。第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2とが同時にオンすると、貫通電流が流れて回路がショートする。
【0082】
このような不具合を防止するために、電力変換装置500は、パルス生成部502で遅延パルス信号Y1,Y2を生成している。この遅延パルス信号Y1,Y2の出力タイミングにより、第1の半導体スイッチQ1がオフしたときには微小な遅延時間を空けて第2の半導体スイッチQ2がオンする。逆に、第2の半導体スイッチQ2がオフしたときには微小な遅延時間を空けて第1の半導体スイッチQ1がオンする。したがって、第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2とが同時にオンする区間が発生することはない。
【0083】
また、回路電流Iがゼロになった後、電力変換装置500では、外付けダイオードD1,D2が遮断する方向に電圧がかかる。仮に回路電流Iがゼロのときに半導体スイッチQ1,Q2が導通していると、外付けダイオードD1,D2による遮断が働かずに動作異常となる。
【0084】
第5の実施形態では、パルス生成部502でゼロマージンパルス信号Z1,Z2を生成している。そして、このゼロマージンパルス信号Z1,Z2の出力タイミングで、回路電流Iがゼロとなる直前に半導体スイッチQ1,Q2を非導通にする。したがって、回路電流Iがゼロになったときには外付けダイオードD1,D2による遮断が必ず働くので、電力変換装置500が動作異常となることはない。
【0085】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態を、図11〜図13を用いて説明する。図11は、第6の実施形態の電力変換装置600を示す回路図である。なお、図5と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0086】
電力変換装置600は、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成が、第2の実施形態の電力変換装置200と同一である。電力変換装置600は、交流電源101の両端に入力電圧検出部601を接続する。入力電圧検出部601は、交流電源101の両端に発生する入力電圧Vinを検出する。そして、その検出信号を電圧信号処理部604に出力する。
【0087】
電力変換装置600は、第1の機械的スイッチS1と第1の外付けダイオードD1との接続点X1と交流電源101との間に回路電流検出部602を接続する。回路電流検出部602は、交流電源101に流れる回路電流Iを検出し、その検出信号を電流信号処理部605に出力する。
【0088】
電力変換装置600は、平滑コンデンサC2の両端である出力端子102,103間に出力電圧検出部603を接続する。出力電圧検出部603は、出力端子102,103間に生じる出力電圧Voutを検出する。そして、その検出信号を比較部606に出力する。
【0089】
電圧信号処理部604は、極性判定部604aと絶対値生成部604bとからなる。極性判定部604aは、入力電圧Vinの極性(正または負)を判定する。絶対値生成部604bは、入力電圧Vinの絶対値を生成する。電圧信号処理部604は、入力電圧Vinの極性及び絶対値を、ピーク電流決定部607とパルス生成部611とに出力する。
【0090】
電流信号処理部605は、極性判定部605aと絶対値生成部605bとからなる。極性判定部605aは、回路電流Iの極性(方向)を判定する。極性は、例えば交流電源101から接続点X1側に流れる電流を正、逆方向に流れる電流を負とする。絶対値生成部605bは、回路電流Iの絶対値を生成する。電流信号処理部605は、回路電流Iの極性及び絶対値を、電流ピーク判定部608と電流ゼロ判定部609とに出力する。
【0091】
比較部606は、出力電圧検出部603にて検出された出力電圧Voutと予め設定されているリファレンス電圧Vsとの差分を算出する。そして、この出力電圧Voutとリファレンス電圧Vsとの差分値をピーク電流決定部607に出力する。差分値は、リファレンス電圧Vsよりも出力電圧Voutの方が小さいときには正の値をとり、大きいときには負の値をとる。
【0092】
ピーク電流決定部607は、電圧信号処理部604から出力される入力電圧Vinの絶対値と、比較部606から出力される電圧差分値とを乗算する。そして、この乗算値を電流ピーク判定部608に出力する。
【0093】
電流ピーク判定部608は、ピーク電流決定部607から入力される乗算値を回路電流Iのピーク値Ipと認識する。そして、電流信号処理部605から入力される回路電流Iの値がピーク値Ipに達したか否かを判定し、達したと判定すると、ラッチ回路610のリセット端子Rに信号を出力する。
【0094】
電流ゼロ判定部609は、電流信号処理部605から入力される回路電流Iの値がゼロになったか否かを判定し、ゼロになったと判定すると、ラッチ回路610のセット端子Sに信号を出力する。
【0095】
ラッチ回路610は、セット端子Sに信号が入力されるとセット状態となり、論理“1”の情報をパルス生成部611に出力する。また、ラッチ回路610は、リセット端子Rに信号が入力されるとリセット状態となり、論理“0”の情報をパルス生成部611に出力する。
【0096】
パルス生成部611は、電圧信号処理部604から入力される信号が正の極性を示すとき、第1のパルス信号P1を生成し、負の極性を示すとき、第2のパルス信号を生成する。そして、ラッチ回路610から入力される状態信号が論理“1”の情報である期間、第1のパルス信号P1を第1の機械的スイッチS1に出力する。同様に、ラッチ回路610から入力される状態信号が論理“1”の情報である期間、第2のパルス信号P2を第2の機械的スイッチS2に出力する。
【0097】
かかる構成の電力変換装置600は、図12に示すように、電流ゼロ判定部609において回路電流Iがゼロであると判定されると(図12の時点T51,T53)、ラッチ回路610の出力が論理“1”となる。また、電流ピーク判定部608において、回路電流Iがピーク値Ipに達したと判定されると(図12の時点T52,T54)、ラッチ回路610の出力が論理“0”となる。
【0098】
ピーク値Ipは、電圧信号処理部604から出力される入力電圧Vinの絶対値と、比較部606から出力される電圧差分値と、所定の係数との乗算値である。このため、ピーク値Ipは、入力電圧Vと比例関係にある。したがって、図13に示すように、ピーク値Ipのエンベロープは、入力電圧Vinと相似形の正弦波状になる。また、出力電圧Voutがリファレンス電圧Vsより低いときには、ピーク値Ipのエンベロープが全体的に高くなる方向に補正がかかる。同様に、出力電圧Voutがリファレンス電圧Vsより高いときには、ピーク値Ipのエンベロープが全体的に低くなる方向に補正がかかる。
【0099】
例えば交流電圧Vaの極性が正のとき、パルス生成部611は、ラッチ回路610の出力に応じて第1のパルス信号P1を周期的に出力する。第1のパルス信号P1がオンすると、第1の機械的スイッチS1が導通する。
【0100】
第1の機械的スイッチS1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の機械的スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流Iが、キャパシタC1側から第1の機械的スイッチS1に流れる。
【0101】
回路電流Iがピーク値Tpに達すると、ラッチ回路610がリセットされる。このため、第1のパルス信号P1がオフする。第1のパルス信号P1がオフすると、第1の機械的スイッチS1が非導通となって、第1の機械的スイッチS1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む。
【0102】
交流電圧Vaの極性が負のときには、パルス生成部611は、ラッチ回路610の出力に応じて第2のパルス信号P2を周期的に出力する。第2のパルス信号P2がオンすると、第2の機械的スイッチS2が導通する。
【0103】
第2の機械的スイッチS2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の機械的スイッチS2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の機械的スイッチS2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置600は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の機械的スイッチS2に流れる。
【0104】
回路電流Iがピーク値Tpに達すると、ラッチ回路610がリセットされる。このため、第2のパルス信号P2がオフする。第2のパルス信号P2がオフすると、第2の機械的スイッチS2が非導通になって、第2の機械的スイッチS2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けようとする。このため、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む。
【0105】
このように、電力変換装置600は、回路電流Iがピーク値Ipを超えないように、第1または第2の機械的スイッチS1,S2をオフする。ピーク値Ipはエンベロープ曲線であり、エンベロープは入力電圧Vinと比例するので、入力電圧Vinが正弦波ならばエンベロープ曲線も正弦波となる。
【0106】
このエンベロープ曲線で規定されたピーク値Ipで第1または第2の機械的スイッチS1,S2をオフする動作を繰り返すことにより、図13に示すように回路電流Iは三角波となる。そして、この回路電流Iの平均値Iaは、ピーク値Ipの略1/2であるとみなすことができる。すなわち、入力側から見れば、この平均電流Iaが正弦波状に現れることになる。
【0107】
このように、電力変換装置600は、入力電圧波形に略等しい正弦波の入力電流波形が得られる。このため、入力ラインに高調波電流が発生することはないので、変電設備への負担を軽減することができる。
【0108】
[第7の実施形態]
次に、第7の実施形態を、図14〜図16を用いて説明する。図14は、第7の実施形態の電力変換装置700を示す回路図である。なお、図11と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0109】
電力変換装置700が、第6の実施形態の電力変換装置600と異なる点は、サブパルス生成部701と、第1及び第2の論理和ゲート702,703を追加した点である。サブパルス生成部701は、電圧信号処理部604にて得られる入力電圧Vinの極性及び絶対値の信号と、電流信号処理部605にて得られる回路電流Iの極性及び絶対値の信号と、ラッチ回路610の状態信号とを入力する。
【0110】
サブパルス生成部701は、電圧信号処理部604にて得られる入力電圧Vinの極性が正の極性を示すとき、第1のサブパルス信号P13を出力する。サブパルス信号P13は、ラッチ回路610から入力される状態信号が論理“1”となってから微小の遅延時間dを経過するとオンする。また、第1のサブパルス信号P13は、電流信号処理部605にて得られる回路電流Iの絶対値がゼロになる直前まで低下するとオフする。
【0111】
サブパルス生成部701は、電圧信号処理部604にて得られる入力電圧Vinの極性が負の極性を示すとき、第2のサブパルス信号P23を出力する。第2のサブパルス信号P23は、ラッチ回路610から入力される状態信号が論理“1”となってから微小の遅延時間dを経過するとオンする。また、第2のサブパルス信号P23は、電流信号処理部605にて得られる回路電流Iの絶対値がゼロになる直前まで低下するとオフする。
【0112】
第1の論理和ゲート702は、パルス生成部611から出力される第1のパルス信号P1とサブパルス生成部701から出力される第2のサブパルス信号P23との論理和を演算する。そして、この論理和結果であるパルス信号P12を第1の機械的スイッチS1に供給する。第1の機械的スイッチS1は、パルス信号P12がオンしている間、導通する。
【0113】
第2の論理和ゲート703は、パルス生成部611から出力される第2のパルス信号P2とサブパルス生成部701から出力される第1のサブパルス信号P13との論理和を演算する。そして、この論理和結果であるパルス信号P22を第2の機械的スイッチS2に出力する。第2の機械的スイッチS2は、パルス信号P22がオンしている間、導通する。
【0114】
かかる構成の電力変換装置600の動作を、図15及び図16のタイミング図を用いて説明する。図15は、交流電圧Vaの極性が正のときの電力変換装置600の動作を示すタイミング図である。第6の実施形態で説明したように、ピーク電流決定部607にて決定されるピーク電流値Ipは、正弦波状のエンベロープ曲線となる。
【0115】
交流電圧Vaの極性が正のとき、パルス生成部611は、第1のパルス信号P1を周期的に出力する。第1のパルス信号P1がオンすると、第1の論理和ゲート702の論理和結果であるパルス信号P12がオンして(図15の時点T61,T65、T69、T73、T77、T81)、第1の機械的スイッチS1が導通する。
【0116】
第1の機械的スイッチS1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の機械的スイッチS1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流Iが、キャパシタC1側から第1の機械的スイッチS1に流れる(図15の区間T61−T62、T65−T66、T69−T70、T73−T74、T77−T78、T81−T82)。
【0117】
回路電流Iがピーク値Tpに達すると(図15の時点T62、T66、T70、T74、T78、T82)、ラッチ回路610がリセットされるため、第1のパルス信号P1がオフする。第1のパルス信号P1がオフすると、第1の論理和ゲート702の論理和結果であるパルス信号P12がオフする。したがって、第1の機械的スイッチS1が非導通となる。
【0118】
第1の機械的スイッチS1が非導通になると、第1の機械的スイッチS1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む(図15の時点T62−T63、T66−T67、T70−T71、T74−T75、T78−T79、T82−T83)。
【0119】
第1のパルス信号P1がオフしてから微小な遅延時間dが経過すると(図15の時点T63、T67、T71、T75、T79、T83)、第1の遅延パルス信号P13がオンする。第1の遅延パルス信号P13がオンすると、第2の論理和ゲート703の論理和結果であるパルス信号P22がオンして、第2の機械的スイッチS2が導通する。第2の機械的スイッチS2が導通すると、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、第2の機械的スイッチS2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込むようになる(図15の区間T63−T64、T67−T68、T71−T72、T75−T76、T79−T80、T83−T84)。
【0120】
その後、第2の機械的スイッチS2を流れる回路電流Iがゼロになる直前のタイミングで(図15の時点T64、T68、T72、T76、T80、T84)、第1の遅延パルス信号P13がオフする。第1の遅延パルス信号P13がオフすると、第2の論理和ゲート703の論理和結果であるパルス信号P22がオフして、第2の機械的スイッチS2が非導通となる。第2の機械的スイッチS2が非導通になると、第2の機械的スイッチS2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、再び、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込む。
【0121】
図16は、交流電圧Vaの極性が負のときの電力変換装置600の動作を示すタイミング図である。交流電圧Vaの極性が負のとき、パルス生成部611は、第2のパルス信号P2を周期的に出力する。第2のパルス信号P2がオンすると、第2の論理和ゲート703の論理和結果であるパルス信号P22がオンして(図16の時点T91,T95、T99、T103、T107、T111)、第2の機械的スイッチS2が導通する。
【0122】
第2の機械的スイッチS2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の半導体スイッチQ2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の半導体スイッチQ2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置200は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の半導体スイッチQ2に流れる(図16の区間T91−T92、T95−T96、T99−T100、T103−T104、T107−T108、T111−T112)。
【0123】
回路電流Iがピーク値Tpに達すると(図16の時点T92、T96、T100、T104、T108、T112)、ラッチ回路610がリセットされるため、第2のパルス信号P2がオフする。第2のパルス信号P2がオフすると、第2の論理和ゲート703の論理和結果であるパルス信号P22がオフして、第2の機械的スイッチS2が非導通となる。
【0124】
第2の機械的スイッチS2が非導通になると、第2の機械的スイッチS2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む(図16の時点T92−T93、T96−T97、T100−T101、T104−T105、T108−T109、T112−T113)。
【0125】
第2のパルス信号P2がオフしてから微小な遅延時間dが経過すると(図16の時点T93、T97、T101、T105、T109、T113)、第2の遅延パルス信号P23がオンする。第2の遅延パルス信号P23がオンすると、第1の論理和ゲート702の論理和結果であるパルス信号P12がオンして、第1の機械的スイッチS1が導通する。第1の機械的スイッチS1が導通すると、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、第1の機械的スイッチS1を経由してキャパシタC1に流れ込むようになる(図16の区間T93−T94、T97−T98、T101−T102、T105−T106、T109−T110、T113−T114)。
【0126】
その後、第1の機械的スイッチS1を流れる回路電流Iがゼロになる直前のタイミングで(図16の時点T94、T98、T102、T106、T110、T114)、第2の遅延パルス信号P23がオフする。第2の遅延パルス信号P23がオフすると、第1の論理和ゲート702の論理和結果であるパルス信号P12がオフして、第1の機械的スイッチS1が非導通となる。第1の機械的スイッチS1が非導通になると、第1の機械的スイッチS1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、再び、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込む。
【0127】
このように、電力変換装置700は、第1の機械的スイッチS1が非導通となったことにより第2の外付けダイオードD2に流れた電流が、第1の機械的スイッチS1が非導通となった時点から微小な遅延時間経過後に第2の機械的スイッチS2に流れる。そして、この電流がゼロになる直前で、再び、第2の外付けダイオードD2に流れる。同様に、第2の機械的スイッチS2が非導通なったことにより第1の外付けダイオードD1に流れていた電流が、第2の機械的スイッチS2が非導通となった時点から微小な遅延時間経過後に第1の機械的スイッチS1に流れる。そして、この電流がゼロになる直前で、再び、第1の外付けダイオードD1に流れる。したがって、より一層の電力変換効率を高めることができる。
【0128】
以上の説明から明らかなように、各実施形態によれば、電力変換効率が大幅に向上し得た電力変換装置を提供することができる。
【0129】
以下、前記各実施形態の変形例について説明する。
第1,第3及び第5の実施形態では、半導体スイッチQ1,Q2としてMOS型FETを使用したが、半導体スイッチQ1,Q2は、MOS型FETに限定されるものではない。例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)等のボディダイオードを有する半導体素子を、半導体スイッチQ1,Q2として使用してもよい。
【0130】
第2,第4,第6及び第7の実施形態では、スイッチS1,S2として機械的スイッチを使用したが、スイッチS1,S2は機械的スイッチに限定されるものではない。例えばトライアックのような双方向で電流の導通及び非導通を制御できるボディダイオードを有しない半導体スイッチであってもよい。要は、電流の向きに依存せず、導通か非導通かを切り替えられるものであればよい。また、第4,第6及び第7の実施形態の場合は、FET等のボディダイオードを有する半導体スイッチであってもよい
第4の実施形態では、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成を第2の実施形態の電力変換装置200と同一としたが、第1の実施形態の電力変換装置100または第3の実施形態の電力変換装置300と同一としてもよい。また、第5の実施形態では、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成を第3の実施形態の電力変換装置300と同一としたが、第1の実施形態の電力変換装置100または第2の実施形態の電力変換装置200と同一としてもよい。第6及び第7の実施形態についても同様であり、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成がその実施形態のものに限定されるものではない。
【0131】
また、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成は、第1〜第3の実施形態のものに限定されるものではない。例えば、交流電源101に接続されるインダクタL1とキャパシタC1とは直列接続である。そこで、図17に示すように、交流電源101の一端にキャパシタC1の一端を接続し、キャパシタC1の他端にインダクタl1を介して第1のスイッチ(第1の半導体スイッチQ1または第1の機械的スイッチS1)を接続することも可能である。
【0132】
また、第5,第6及び第7の実施形態では、交流電源101と接続点X1との間を流れる電流Iを電流検出部501,602で検出したが、回路電流Iを検出する位置は、上記各実施形態の位置に限定されるものではない。例えば、図18〜図20のように回路を構成してもよい。
【0133】
図18は、交流電源101の一端に電流検出部501,602を介してインダクタL1を接続し、交流電源101の他端にキャパシタC1を接続して、交流電源101とインダクタL1との間を流れる電流を回路電流Iとして検出する例である。
【0134】
図19は、インダクタL1に対して2次巻線L2を配置し、この2次巻線L2に発生する電圧から回路電流Iを検出する例である。
【0135】
図20は、第1の機械的スイッチS1及び第2の機械的スイッチS2に対してそれぞれ低抵抗R1,R2を接続し、低抵抗R1,R2毎にその両端にピーク電流検出部81,82を接続する。そして、低抵抗R1,R2を流れる電流を電圧値に変換して、ピーク電流を検出する例である。この例においては、電流検出部501,602は、回路電流Iがゼロとなったのを検出する。
【0136】
また、各実施形態では、交流電源として100Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力電源としたが、交流電源は、100Vの商用電源に限定されるものではない。例えば、200〜220Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力電源とし、所望の直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置であってもよい。
【0137】
例えば、図11に示す電力変換装置600において、100Vの交流電源を印加して200ワットの電力を負荷へ出力する場合には、平均電流Iaが2アンペアになるようにピーク電流決定部607がエンベロープを決定する。これに対し、200Vの交流電源を印加する場合には、平均電流が1アンペアになるようにエンベロープが自動で決まる。出力電圧がリファレンス電圧に等しくなるようにフィードバックがかかるため、結果としてそうなる。
【0138】
図21に、100Vの交流電源と200Vの交流電源を印加した場合の始動時の電圧変化を示す。100Vの交流電源を印加した場合、平滑コンデンサC2にチャージアップされる電圧は、図21中E1に示すように略200Vとなる。これに対し、200Vの交流電源を印加した場合に平滑コンデンサC2にチャージアップされる電圧は、図21中E2に示すように略400Vとなる。しかしいずれの場合においても、スイッチング動作を開始すると(時点t0)、その出力電圧は、リファレンス電圧(この例では600V)に等しくなるように制御がかかる。
【0139】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
100,200,300,400,500,600,700…電力変換装置、101…交流電源、104…極性判定部、105,403,502,611…パルス生成部、401,603…出力電圧検出部、402,606…比較部、501,602…電流検出部、601…入力電圧検出部、604…電圧信号処理部、604a,605a…極性判定部、640b,605b…絶対値生成部、605…電流信号処理部、607…ピーク電流決定部、608…電流ピーク判定部、609…電流ゼロ判定部、610…ラッチ回路、701…サブパルス生成部。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交流電源から得られる交流電圧を直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電圧を直流電圧に変換する方法として、次の2つの方法が一般的に知られている。
第1の方法は、ダイオードブリッジ回路と平滑コンデンサとを用いる。ダイオードブリッジ回路は、交流電源からの交流を全波整流する。平滑コンデンサは、全波整流後の直流を平滑する。
【0003】
この第1の方法は、交流電圧が正及び負のいずれの場合においても、常に2つのダイオードの直列回路を電流が流れる。このとき、2つのダイオードでは、それぞれダイオードを流れる電流とダイオードの順方向電圧との積に相当する電力損失が発生する。
【0004】
第2の方法は、第1の方法のダイオードブリッジ回路と平滑コンデンサとの間に力率改善コンバータ(Power Factor Converter:PFC)を用いる。力率改善コンバータは、ダイオードブリッジ回路で全波整流された直流の電圧を昇圧する。
【0005】
この第2の方法も、全波整流の際に2つのダイオードの直列回路を電流が流れるため、電力損失が発生する。それに加えて、力率改善コンバータを構成する電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)とダイオードに交互に電流が流れるため、さらなる損失が生じる。
【0006】
また、力率改善コンバータは、入力電流の波形を正弦波にする必要上、出力電圧を入力電圧よりも高く設定しなければならない。ところが、負荷で必要な電圧は、必ずしも入力電圧より高い電圧であるとは限らない。その場合は、力率改善コンバータの後段に降圧コンバータを接続して、力率改善コンバータで昇圧された電圧を所望の電圧まで降圧する。この降圧の際にも損失が発生し、電力変換装置全体としては、AC-DC変換×DC-DC(昇圧)変換×DC-DC(降圧)変換の3段の構成になり電力損失はこれらの積となって現れる。例えば、一段あたりの効率0.95とした場合、3段では[0.95×0.95×0.95=0.86]、つまり、効率95%の優れた変換であっても3段接続では86%まで落ちてしまう。このように、個々の変換効率は良くても多段にすることで変換効率は著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−110869号公報
【特許文献2】特開2008−295248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
昨今、巷では電子機器の省エネルギー化が叫ばれており、その一環として、負荷へ電力を供給する電力変換装置の変換効率向上が求められている。しかしながら、従来の回路構成では、変換効率の改善に限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、電力変換装置は、交流電源の両端に、インダクタとキャパシタを直列に介して第1のスイッチを接続する。また電力変換装置は、第1のスイッチの両端に、平滑コンデンサを直列に介して第2のスイッチを接続する。さらに電力変換装置は、パルス生成部を備える。パルス生成部は、交流電源の電圧の極性が正のとき、第1のスイッチを交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第1のパルス信号を生成して第1のスイッチに出力する。パルス生成部は、交流電源の電圧の極性が負のとき、第2のスイッチを交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第2のパルス信号を生成して第2のスイッチに出力する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図2】第1の実施形態において、交流電圧と第1及び第2のパルス信号との関係を示す波形図。
【図3】第1の実施形態における電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図4】第1の実施形態において、スイッチング動作をしたときとしないときとの出力電圧波形を示す図。
【図5】第2の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図6】第3の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図7】第4の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図8】第5の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図9】第5の実施形態において、交流電圧の極性が正のときの電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図10】第5の実施形態において、交流電圧の極性が負のときの電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図11】第6の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図12】第6の実施形態において、ラッチ回路の出力を示すタイミング図。
【図13】第6の実施形態において、電圧波形と電流波形との関係を示すタイミング図。
【図14】第7の実施形態の電力変換装置を示す回路図。
【図15】第7の実施形態において、交流電圧の極性が正のときの電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図16】第7の実施形態において、交流電圧の極性が負のときの電力変換装置の動作を示すタイミング図。
【図17】電流検出部に係わる第1の変形例を示す回路図。
【図18】電流検出部に係わる第2の変形例を示す回路図。
【図19】電流検出部に係わる第3の変形例を示す回路図。
【図20】電流検出部に係わる第4の変形例を示す回路図。
【図21】100Vの交流電源と200Vの交流電源を印加した場合の始動時の電圧変化を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、交流電源として100Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力とし、所望の直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
はじめに、第1の実施形態を、図1〜図4を用いて説明する。図1は、第1の実施形態の電力変換装置100を示す回路図である。
【0013】
電力変換装置100は、交流電源101の両端に、インダクタL1とキャパシタC1を直列に介して、第1の半導体スイッチQ1を接続する。第1の半導体スイッチQ1は、N型チャネルのMOS型FETを使用する。具体的には、交流電源101の一端にインダクタl1を介してキャパシタC1の一端を接続し、キャパシタC1の他端に第1の半導体スイッチQ1であるMOS型FETのドレイン端子を接続し、当該MOS型FETのソース端子を交流電源101の他端に接続する。
【0014】
電力変換装置100は、第1の半導体スイッチQ1の両端に、平滑コンデンサC2を直列に介して、第2の半導体スイッチQ2を接続する。第2の半導体スイッチQ2は、N型チャネルのMOS型FETを使用する。具体的には、第2の半導体スイッチQ2であるMOS型FETのソース端子をキャパシタC1と第1の半導体スイッチQ1との接続点に接続し、当該MOS型FETQ2のドレイン端子を平滑コンデンサC2の正極端子に接続し、平滑コンデンサC2の負極端子を交流電源101と第1の半導体スイッチQ1との接続点に接続する。
【0015】
電力変換装置100は、平滑コンデンサC2の両端を出力端子102、103とする。そして、これらの出力端子102,103間に、所望の負荷Lを接続する。
【0016】
電力変換装置100は、交流電源101の両端に極性判定部103を接続する。極性判定部104は、交流電源101から得られる交流電圧Vaの極性(正または負)を判定する。電力変換装置100は、極性判定部104で判定された極性の情報をパルス生成部105に供給する。
【0017】
極性判定部104は、例えば交流電圧Vaの極性が正ならば論理“1”の情報をパルス生成部105に出力し、負ならば論理“0”の情報をパルス生成部105に出力する。あるいは極性判定部104は、交流電圧Vaの極性が正ならば5V電圧をパルス生成部105に印加し、負ならば0V電圧をパルス生成部105に印加する。
【0018】
パルス生成部105は、極性判定部104からの出力が正を示すときには第1のパルス信号P1を生成し、負を示すときには第2のパルス信号P2を生成する。
【0019】
図2は、交流電圧Vaと第1及び第2のパルス信号P1,P2との関係を示す波形図である。図2において、区間T1〜T2は、交流電圧Vaの極性が正の区間である。この区間のとき、パルス生成部105は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第1のパルス信号P1を生成する。
【0020】
図2において、区間T2〜T3は、交流電圧Vaの極性が負の区間である。この区間のとき、パルス生成部105は、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で第2のパルス信号P2を生成する。
【0021】
電力変換装置100は、第1のパルス信号P1を第1の半導体スイッチQ1に供給し、第2のパルス信号P2を第2の半導体スイッチQ2に供給する。第1の半導体スイッチQ1は、第1のパルス信号P1が供給される毎に導通する。第2の半導体スイッチQ2は、第2のパルス信号P2が供給される毎に導通する。
【0022】
第1及び第2のパルス信号P1,P2による電力変換装置100の動作を、図3のタイミング図を用いて説明する。図3は、第1及び第2のパルス信号P1,P2と、第1及び第2の半導体スイッチQ1,Q2を流れる電流を示している。
【0023】
はじめに、交流電圧Vaの極性が正のときの動作について説明する。交流電圧Vaの極性が正のときには第1のパルス信号P1が周期的に出力される。第1のパルス信号P1がオンすると(図3の時点T11,T13)、第1の半導体スイッチQ1が導通する。第1の半導体スイッチQ1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の半導体スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流が、キャパシタC1側から第1の半導体スイッチQ1に流れる(図3の区間T11−T12、T13−T14)。
【0024】
第1のパルス信号P1がオフすると(図3の時点T12、T14)、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の半導体スイッチQ2のボディダイオードを経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む(図3の区間T12−T13)。
【0025】
第1のパルス信号P1が出力される毎に、電力変換装置100は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置100は、出力端子102,103間の電圧Vを昇圧しながら、平滑コンデンサC2を充電する。
【0026】
次に、交流電圧Vaの極性が負のときの動作について説明する。交流電圧Vaの極性が負のときには第2のパルス信号P2が周期的に出力される。第2のパルス信号P2がオンすると(図3の時点T21,T23)、第2の半導体スイッチQ2が導通する。第2の半導体スイッチQ2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の半導体スイッチQ2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の半導体スイッチQ2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置100は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の半導体スイッチQ2に流れる(図3の区間T21−T22、T23−T24)。
【0027】
第2のパルス信号P2がオフすると(図3の時点T22、T24)、第2の半導体スイッチQ2が非導通になる。第2の半導体スイッチQ2が非導通になると、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けようとする。このため、第1の半導体スイッチQ1のボディダイオードを経由してキャパシタC1に電流が流れ込む(図3の区間T22−T23)。
【0028】
第2のパルス信号P2が出力される毎に、電力変換装置100は上述した動作を繰り返す。その結果、電力変換装置100は、キャパシタC1に電荷を補充する。
【0029】
交流電圧Vaの極性は、正と負を交互に繰り返す。したがって、電力変換装置100は、平滑コンデンサC2を充電する作用とキャパシタC1に電荷を補充する作用とを交互に繰り返す。すなわち電力変換装置100は、キャパシタC1に電荷を補充した後に平滑コンデンサC2を充電する。したがって、平滑コンデンサC2を充電する際にはキャパシタC1に蓄えられた電荷が平滑コンデンサC2に移動する。
【0030】
図1に示した電力変換装置100の回路は、第1及び第2のスイッチ素子Q1,Q2がスイッチング動作しないと、倍電圧回路として動作する。つまり、入力電圧が例えば交流100Vの場合は、図4の電圧波形Aに示すように、略200Vの直流電圧が出力端子102,103間に生じる。
【0031】
前述したように第1及び第2のスイッチ素子Q1,Q2がスイッチング動作すると、キャパシタC1に蓄えられた電荷が平滑コンデンサC2に移動する。このため、電力変換装置100の昇圧効果が加算される。その結果、電力変換装置100は、入力電圧である交流電圧Vaを、その倍電圧よりもさらに高い電圧に昇圧して、直流の出力電圧Vを得ることができる。
【0032】
その出力電圧Vは、第1及び第2のパルス信号P1,P2のパルス幅で制御することができる。つまり、パルス幅を広く設定すれば出力電圧Vは高くなり、狭く設定すれば出力電圧Vは低くなる。入力電圧が例えば交流100Vの場合、第1及び第2のパルス信号P1,P2のパルス幅の設定如何によって、図4の電圧波形Bに示すように、電力変換装置100は、略400Vの直流電圧を出力端子102,103間に得ることができる。
【0033】
このように、第1の実施形態によれば、電力変換装置100は、全波整流を行うことなく、交流電源101から得られる交流電圧を直流電圧に変換して負荷Lへ電力を供給することができる。したがって、全波整流のためのダイオードブリッジ回路が不要となるため、回路部品点数を削減でき、コストの低減を図ることができる。また、ダイオードブリッジ回路で発生していたダイオードの順方向電圧による損失がなくなるので、電力変換装置100は、高効率の電力変換が可能となる。
【0034】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を、図5を用いて説明する。図5は、第2の実施形態の電力変換装置200を示す回路図である。なお、図1と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0035】
第1の実施形態では、第1のパルス信号P1及び第2のパルス信号P2でスイッチング動作する一対のスイッチとして半導体スイッチQ1,Q2を使用した。第2の実施形態では、同スイッチとして、機械的スイッチS1,S2を使用する。
【0036】
すなわち電力変換装置200は、交流電源101の両端に、インダクタL1とキャパシタC1を直列に介して第1の機械的スイッチS1を接続する。また、電力変換装置200は、第1の機械的スイッチS1の両端に、平滑コンデンサC2を直列に介して第2の機械的スイッチS2を接続する。
【0037】
電力変換装置200は、第1の機械的スイッチS1に対して並列に第1の外付けダイオードD1を接続する。具体的には、第1の機械的スイッチS1と第2の交流電源101との接続点X1に、第1の外付けダイオードD1のアノードを接続し、第1の機械的スイッチS1とキャパシタC1との接続点X2に、第1の外付けダイオードD1のカソードを接続する。
【0038】
また、電力変換装置200は、第2の機械的スイッチS2に対して並列に第2の外付けダイオードD2を接続する。具体的には、第2の機械的スイッチS2とキャパシタC1との接続点X2に、第2の外付けダイオードD2のアノードを接続し、第2の機械的スイッチS2と平滑コンデンサC2との接続点X3に、第2の外付けダイオードD2のカソードを接続する。
【0039】
その他の構成は、第1の実施形態の電力変換装置100と同一である。したがって、交流電圧Vaの極性が正のときには、第1の機械的スイッチS1が、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で導通、非導通を繰り返す。第1の機械的スイッチS1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の機械的スイッチS1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流が、キャパシタC1側から第1の機械的スイッチS1に流れる。
【0040】
第1の機械的スイッチS1が非導通になると、第1の機械的スイッチS1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む。
【0041】
交流電圧Vaの極性が負のときには、第2の機械的スイッチS2が、交流電圧Vaの周期よりはるかに高い周波数で導通、非導通を繰り返す。第2の機械的スイッチS2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の機械的スイッチS2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の機械的スイッチS2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置200は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の機械的スイッチS2に流れる。
【0042】
第2の機械的スイッチS2が非導通になると、第2の機械的スイッチS2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けようとする。このため、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む。
【0043】
このように、電力変換装置200は、MOS型FETが有するボディダイオードの代わりに外付けダイオードD1,D2を使用する。ダイオードD1,D2は、上記ボディダイオードの順方向電圧より低いものを選ぶ。そうすることによって、第1の実施形態の電力変換装置100よりもダイオード順方向電圧による損失を軽減できる効果を奏する。
【0044】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態を、図6を用いて説明する。図6は、第3の実施形態の電力変換装置300を示す回路図である。なお、図1及び図5と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0045】
第2の実施形態では、一対のスイッチとして、機械的スイッチS1,S2を使用した。第3の実施形態では、同スイッチとして、第1の実施形態と同様に、半導体スイッチQ1,Q2を使用する。すなわち、電力変換装置300は、第1の半導体スイッチQ1に対して並列に第1の外付けダイオードD1を接続し、第2の半導体スイッチQ2に対して並列に第2の外付けダイオードD2を接続する。
【0046】
第1の外付けダイオードD1は、第1の半導体スイッチQ1が有するボディダイオードより順方向電圧が低い。同じく、第2の外付けダイオードD2は、第2の半導体スイッチQ2が有するボディダイオードより順方向電圧が低い。
【0047】
第1の実施形態の電力変換装置100では、第1または第2の半導体スイッチQ1,Q2のボディダイオードを流れた電流が、第3の実施形態の電力変換装置300では、第1または第2の外付けダイオードD1,D2を流れる。したがって、電力変換装置300は、電力変換装置100よりもダイオード順方向電圧による損失を軽減できる効果を奏する。
【0048】
スイッチ素子として半導体スイッチQ1,Q2を用いた場合、半導体スイッチQ1,Q2はボディダイオードを有するため、原理的には外付けダイオードD1,D2は不要である。しかし一般的に、ボディダイオードは順方向電圧が高いため(例えば1.2V)、これより低い順方向電圧、例えば0.8Vのダイオードを外付けすれば、順方向電圧の差分だけ効率はよくなる。
【0049】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態を、図7を用いて説明する。図7は、第4の実施形態の電力変換装置400を示す回路図である。なお、図5と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0050】
電力変換装置400は、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成が、第2の実施形態の電力変換装置200と同一である。電力変換装置400は、出力端子102,103間に出力電圧検出部401を接続する。出力電圧検出部401は、平滑コンデンサC2の両端である出力端子102,103間の電圧Voutを検出する。そして、その検出信号を比較部402に出力する。
【0051】
比較部402は、出力電圧検出部401にて検出された出力電圧Voutを、予め設定されているリファレンス電圧Vsと比較する。比較部402は、出力電圧Voutがリファレンス電圧Vsより大きいときには出力電圧大を示す情報、例えば論理“1”の情報をパルス生成部403に出力する。逆に、出力電圧Voutがリファレンス電圧Vsより小さいときには、出力電圧小を示す情報、例えば論理“0”の情報を、比較部402はパルス生成部403に出力する。
【0052】
パルス生成部403は、第1〜第3の実施形態のパルス生成部105と同様に、極性判定部104からの出力が正を示すときには第1のパルス信号P1を生成し、負を示すときには第2のパルス信号P2を生成する。ただし、第4の実施形態では、パルス生成部403は、比較部402から出力される出力電圧大または小の情報に応じて、パルス信号P1,P2のパルス幅を可変する。具体的には、パルス生成部403は、比較部402からの情報が出力電圧小を示すときにはパルス幅を広げる方向に制御し、出力電圧大を示すときにはパルス幅を狭める方向に制御する。
【0053】
かかる構成の電力変換装置400は、出力電圧Voutが所定のリファレンス電圧Vsよりも小さいときには、第1のパルス信号P1及び第2のパルス信号P2のパルス幅が広くなる。したがって、機械的スイッチS1及びS2が導通する時間が長くなる。その結果、機械的スイッチS1及びS2を流れる電流量が増大するので、出力電圧Voutが上昇する。
【0054】
一方、出力電圧Voutが所定のリファレンス電圧Vsよりも大きくなると、第1のパルス信号P1及び第2のパルス信号P2のパルス幅が狭くなる。したがって、機械的スイッチS1及びS2が導通する時間が短くなる。その結果、機械的スイッチS1及びS2を流れる電流量が減少するので、出力電圧Voutが下降する。かくして、電力変換装置400は、出力電圧Voutのフィードバック制御により、出力電圧Voutをリファレンス電圧Vsの近傍で略一定に維持することができる。
【0055】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態を、図8〜図10を用いて説明する。図8は、第5の実施形態の電力変換装置500を示す回路図である。なお、図6と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0056】
電力変換装置500は、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成が、第3の実施形態の電力変換装置300と同一である。電力変換装置500は、第1の半導体スイッチQ1と第1の外付けダイオードD1との接続点X1と交流電源101との間に回路電流検出部501を接続する。回路電流検出部501は、交流電源101に流れる回路電流Iを検出し、その検出信号をパルス生成部502に出力する。
【0057】
パルス生成部502は、第2の実施形態のパルス生成部105と同様に、極性判定部104からの出力が正を示すときには第1のパルス信号P1を出力し、負を示すときには第2のパルス信号P2を出力する。さらに、パルス生成部502は、第1の遅延パルス信号Y1及び第2の遅延パルス信号Y2と、第1のゼロマージンパルス信号Z1及び第2のゼロマージンパルス信号Z2を出力する。
【0058】
第1の遅延パルス信号Y1は、第1のパルス信号P1がオフしてから微小の遅延時間dを経過するとオンし、次の第1のパルス信号P1がオンするタイミングで同時にオフする。第2の遅延パルス信号Y2は、第2のパルス信号P2がオフしてから微小の遅延時間dを経過するとオンし、次の第2のパルス信号P2がオンするタイミングで同時にオフする。
【0059】
第1のゼロマージンパルス信号Z1は、第1のパルス信号P1がオンするタイミングで同時にオンし、第1のパルス信号P1がオフしてから回路電流Iがゼロになる直前にオフする。第2のゼロマージンパルス信号Z2は、第2のパルス信号P2がオンするタイミングで同時にオンし、第2のパルス信号P2がオフしてから回路電流Iがゼロになる直前にオフする。パルス生成部502は、回路電流検出部501から供給される回路電流Iの値を基に、回路電流Iがゼロになる直前か否かを判定して、第1及び第2のゼロマージンパルス信号Z1,Z2のオフタイミングを制御する。
【0060】
電力変換装置500は、第1の論理積ゲート503及び第2の論理積ゲート504と、第1の論理和ゲート505及び第2の論理和ゲート506を備える。第1の論理積ゲート503は、第1の遅延パルス信号Y1と第1のゼロマージンパルス信号Z1との論理積を演算する。第2の論理積ゲート504は、第2の遅延パルス信号Y2と第2のゼロマージンパルス信号Z2との論理積を演算する。第1の論理和ゲート505は、第1のパルス信号P1と、第2の論理積ゲート504の論理積結果である第2のサブパルス信号G2との論理和を演算する。第2の論理和ゲート506は、第2のパルス信号P2と、第1の論理積ゲート503の論理積結果である第1のサブパルス信号G1との論理和を演算する。
【0061】
電力変換装置500は、第1の論理和ゲート505の論理和結果であるパルス信号P11を第1の半導体スイッチQ1に供給し、第2の論理和ゲート506の論理和結果であるパルス信号P21を第2の半導体スイッチQ2に供給する。第1の半導体スイッチQ1は、パルス信号P11が供給されている間、導通し、第2の半導体スイッチQ2は、パルス信号P21が供給されている間、導通する。
【0062】
かかる構成の電力変換装置500の動作を、図9及び図10のタイミング図を用いて説明する。
図9は、交流電圧Vaの極性が正のときの電力変換装置500の動作を示すタイミング図である。交流電圧Vaの極性が正のとき、パルス生成部502は、第1のパルス信号P1を周期的に出力する。第1のパルス信号P1がオンすると(図9の時点T31,T35)、第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11がオンし、第1の半導体スイッチQ1が導通する。
【0063】
第1の半導体スイッチQ1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の半導体スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流Iが、キャパシタC1側から第1の半導体スイッチQ1に流れる(図9の区間T31−T32、T35−T36)。
【0064】
パルス生成部502は、第1のパルス信号P1のオンに同期して、第1のゼロマージンパルス信号Z1をオンする(図9の時点T31,T35)。ただし、この時点では、第1の遅延パルス信号Y1はオフしている。したがって、第1の論理積ゲート503から出力される第1のサブパルス信号G1はオフしている。このとき、第2のパルス信号P2もオフしているので、第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21は、オフのままである。
【0065】
また、第2の遅延パルス信号Y2及び第2のゼロマージンパルス信号Z2もオフしている。したがって、第2の論理積ゲート504から出力される第2のサブパルス信号G2もオフしている。このため、第1のパルス信号P1がオフすると(図9の時点T32、T36)、第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11がオフする。パルス信号P11がオフすると、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む。
【0066】
第1のパルス信号P1がオフしてから微小な遅延時間dが経過すると(図9の時点T33、T37)、第1の遅延パルス信号Y1がオンする。このとき、第1のゼロマージンパルス信号Z1はオンしているので、第1の論理積ゲート503から出力される第1のサブパルス信号G1がオンする。その結果、第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21がオンする。
【0067】
パルス信号P21がオンすると、第2の半導体スイッチQ2が導通する。ここで、第2の半導体スイッチQ2は、オン抵抗が第2の外付けダイオードD2の抵抗よりも十分に小さいと仮定する。その場合、第2の半導体スイッチQ2が導通すると、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、第2の半導体スイッチQ2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込むようになる(図9の区間T33−T34、T37−T38)。
【0068】
その後、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流がゼロになる直前のタイミングで(図9の時点T34、T38)、第1のゼロマージンパルス信号Z1がオフする。第1のゼロマージンパルス信号Z1がオフすると、第1の論理積ゲート503から出力される第1のサブパルス信号G1がオフし、同時に第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21もオフする。
【0069】
パルス信号P21がオフすると、第2の半導体スイッチQ2が非導通になる。第2の半導体スイッチQ2が非導通になると、第2の半導体スイッチQ2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、再び、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込む。
【0070】
図10は、交流電圧Vaの極性が負のときの電力変換装置500の動作を示すタイミング図である。交流電圧Vaの極性が負のとき、パルス生成部502は、第2のパルス信号P2を周期的に出力する。第2のパルス信号P2がオンすると(図10の時点T41,T45)、第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21がオンし、第2の半導体スイッチQ2が導通する。
【0071】
第2の半導体スイッチQ2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の半導体スイッチQ2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の半導体スイッチQ2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置200は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の半導体スイッチQ2に流れる(図10の区間T41−T42、T45−T46)。
【0072】
パルス生成部502は、第2のパルス信号P2のオンに同期して、第2のゼロマージンパルス信号Z2をオンする(図10の時点T41,T45)。ただし、この時点では、第2の遅延パルス信号Y2はオフしている。したがって、第2の論理積ゲート504から出力される第2のサブパルス信号G2はオフしている。このとき、第1のパルス信号P1もオフしているので、第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11は、オフのままである。
【0073】
また、第1の遅延パルス信号Y1及び第1のゼロマージンパルス信号Z1もオフしている。したがって、第1の論理積ゲート503から出力される第1のサブパルス信号G1もオフしている。このため、第2のパルス信号P2がオフすると(図10の時点T42、T46)、第2の論理和ゲート506から出力されるパルス信号P21がオフする。
【0074】
パルス信号P21がオフすると、第2の半導体スイッチQ2が非導通になる。第2の半導体スイッチQ2が非導通になると、第2の半導体スイッチQ2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む。
【0075】
第2のパルス信号P2がオフしてから微小な遅延時間dが経過すると(図10の時点T43、T47)、第2の遅延パルス信号Y2がオンする。このとき、第2のゼロマージンパルス信号Z2はオンしているので、第2の論理積ゲート504から出力される第2のサブパルス信号G2がオンする。その結果、第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11がオンする。
【0076】
パルス信号P11がオンすると、第1の半導体スイッチQ1が導通する。ここで、第1の半導体スイッチQ1は、オン抵抗が第1の外付けダイオードD1による抵抗よりも十分に小さいと仮定する。その場合、第1の半導体スイッチQ1が導通すると、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、第1の半導体スイッチQ1を経由してキャパシタC1に流れ込むようになる(図10の区間T43−T44、T47−T48)。
【0077】
その後、第1の半導体スイッチQ1を流れる電流がゼロになる直前のタイミングで(図10の時点T44、T48)、第2のゼロマージンパルス信号Z2がオフする。第2のゼロマージンパルス信号Z2がオフすると、第2の論理積ゲート504から出力されるだい2のサブパルス信号G2がオフし、同時に第1の論理和ゲート505から出力されるパルス信号P11もオフする。パルス信号P11がオフすると、第1の半導体スイッチQ1が非導通になる。第1の半導体スイッチQ1が非導通になると、第1の半導体スイッチQ1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、再び、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込む。
【0078】
このように、第3の実施形態の電力変換装置300では、第1の半導体スイッチQ1がオフしたことにより第2の外付けダイオードD2に流れていた電流が、第5の実施形態の電力変換装置500では、第1の半導体スイッチQ1がオフした時点から微小な遅延時間経過後に第2の半導体スイッチQ2に流れる。そして、この電流がゼロになる直前で、再び、第2の外付けダイオードD2に流れる。同様に、第2の半導体スイッチQ2がオフしたことにより第1の外付けダイオードD1に流れていた電流が、第2の半導体スイッチQ2がオフした時点から微小な遅延時間経過後に第1の半導体スイッチQ1に流れる。そして、この電流がゼロになる直前で、再び、第1の外付けダイオードD1に流れる。
【0079】
第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2は、外付けダイオードD1,D2と比べてオン抵抗が非常に小さい。したがって、電力変換装置500は、第3の実施形態の電力変換装置300と比較して、より一層の電力変換効率を高めることができる。
【0080】
なお、第1の半導体スイッチQ1がオン,オフするタイミングと第2の半導体スイッチQ2がオフ,オンするタイミングとを一致させると、電力変換効率はより一層高まる。
【0081】
しかし、半導体スイッチQ1,Q2は、特性のばらつきにより、同時にオンする可能性がある。第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2とが同時にオンすると、貫通電流が流れて回路がショートする。
【0082】
このような不具合を防止するために、電力変換装置500は、パルス生成部502で遅延パルス信号Y1,Y2を生成している。この遅延パルス信号Y1,Y2の出力タイミングにより、第1の半導体スイッチQ1がオフしたときには微小な遅延時間を空けて第2の半導体スイッチQ2がオンする。逆に、第2の半導体スイッチQ2がオフしたときには微小な遅延時間を空けて第1の半導体スイッチQ1がオンする。したがって、第1の半導体スイッチQ1と第2の半導体スイッチQ2とが同時にオンする区間が発生することはない。
【0083】
また、回路電流Iがゼロになった後、電力変換装置500では、外付けダイオードD1,D2が遮断する方向に電圧がかかる。仮に回路電流Iがゼロのときに半導体スイッチQ1,Q2が導通していると、外付けダイオードD1,D2による遮断が働かずに動作異常となる。
【0084】
第5の実施形態では、パルス生成部502でゼロマージンパルス信号Z1,Z2を生成している。そして、このゼロマージンパルス信号Z1,Z2の出力タイミングで、回路電流Iがゼロとなる直前に半導体スイッチQ1,Q2を非導通にする。したがって、回路電流Iがゼロになったときには外付けダイオードD1,D2による遮断が必ず働くので、電力変換装置500が動作異常となることはない。
【0085】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態を、図11〜図13を用いて説明する。図11は、第6の実施形態の電力変換装置600を示す回路図である。なお、図5と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0086】
電力変換装置600は、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成が、第2の実施形態の電力変換装置200と同一である。電力変換装置600は、交流電源101の両端に入力電圧検出部601を接続する。入力電圧検出部601は、交流電源101の両端に発生する入力電圧Vinを検出する。そして、その検出信号を電圧信号処理部604に出力する。
【0087】
電力変換装置600は、第1の機械的スイッチS1と第1の外付けダイオードD1との接続点X1と交流電源101との間に回路電流検出部602を接続する。回路電流検出部602は、交流電源101に流れる回路電流Iを検出し、その検出信号を電流信号処理部605に出力する。
【0088】
電力変換装置600は、平滑コンデンサC2の両端である出力端子102,103間に出力電圧検出部603を接続する。出力電圧検出部603は、出力端子102,103間に生じる出力電圧Voutを検出する。そして、その検出信号を比較部606に出力する。
【0089】
電圧信号処理部604は、極性判定部604aと絶対値生成部604bとからなる。極性判定部604aは、入力電圧Vinの極性(正または負)を判定する。絶対値生成部604bは、入力電圧Vinの絶対値を生成する。電圧信号処理部604は、入力電圧Vinの極性及び絶対値を、ピーク電流決定部607とパルス生成部611とに出力する。
【0090】
電流信号処理部605は、極性判定部605aと絶対値生成部605bとからなる。極性判定部605aは、回路電流Iの極性(方向)を判定する。極性は、例えば交流電源101から接続点X1側に流れる電流を正、逆方向に流れる電流を負とする。絶対値生成部605bは、回路電流Iの絶対値を生成する。電流信号処理部605は、回路電流Iの極性及び絶対値を、電流ピーク判定部608と電流ゼロ判定部609とに出力する。
【0091】
比較部606は、出力電圧検出部603にて検出された出力電圧Voutと予め設定されているリファレンス電圧Vsとの差分を算出する。そして、この出力電圧Voutとリファレンス電圧Vsとの差分値をピーク電流決定部607に出力する。差分値は、リファレンス電圧Vsよりも出力電圧Voutの方が小さいときには正の値をとり、大きいときには負の値をとる。
【0092】
ピーク電流決定部607は、電圧信号処理部604から出力される入力電圧Vinの絶対値と、比較部606から出力される電圧差分値とを乗算する。そして、この乗算値を電流ピーク判定部608に出力する。
【0093】
電流ピーク判定部608は、ピーク電流決定部607から入力される乗算値を回路電流Iのピーク値Ipと認識する。そして、電流信号処理部605から入力される回路電流Iの値がピーク値Ipに達したか否かを判定し、達したと判定すると、ラッチ回路610のリセット端子Rに信号を出力する。
【0094】
電流ゼロ判定部609は、電流信号処理部605から入力される回路電流Iの値がゼロになったか否かを判定し、ゼロになったと判定すると、ラッチ回路610のセット端子Sに信号を出力する。
【0095】
ラッチ回路610は、セット端子Sに信号が入力されるとセット状態となり、論理“1”の情報をパルス生成部611に出力する。また、ラッチ回路610は、リセット端子Rに信号が入力されるとリセット状態となり、論理“0”の情報をパルス生成部611に出力する。
【0096】
パルス生成部611は、電圧信号処理部604から入力される信号が正の極性を示すとき、第1のパルス信号P1を生成し、負の極性を示すとき、第2のパルス信号を生成する。そして、ラッチ回路610から入力される状態信号が論理“1”の情報である期間、第1のパルス信号P1を第1の機械的スイッチS1に出力する。同様に、ラッチ回路610から入力される状態信号が論理“1”の情報である期間、第2のパルス信号P2を第2の機械的スイッチS2に出力する。
【0097】
かかる構成の電力変換装置600は、図12に示すように、電流ゼロ判定部609において回路電流Iがゼロであると判定されると(図12の時点T51,T53)、ラッチ回路610の出力が論理“1”となる。また、電流ピーク判定部608において、回路電流Iがピーク値Ipに達したと判定されると(図12の時点T52,T54)、ラッチ回路610の出力が論理“0”となる。
【0098】
ピーク値Ipは、電圧信号処理部604から出力される入力電圧Vinの絶対値と、比較部606から出力される電圧差分値と、所定の係数との乗算値である。このため、ピーク値Ipは、入力電圧Vと比例関係にある。したがって、図13に示すように、ピーク値Ipのエンベロープは、入力電圧Vinと相似形の正弦波状になる。また、出力電圧Voutがリファレンス電圧Vsより低いときには、ピーク値Ipのエンベロープが全体的に高くなる方向に補正がかかる。同様に、出力電圧Voutがリファレンス電圧Vsより高いときには、ピーク値Ipのエンベロープが全体的に低くなる方向に補正がかかる。
【0099】
例えば交流電圧Vaの極性が正のとき、パルス生成部611は、ラッチ回路610の出力に応じて第1のパルス信号P1を周期的に出力する。第1のパルス信号P1がオンすると、第1の機械的スイッチS1が導通する。
【0100】
第1の機械的スイッチS1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の機械的スイッチQ1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流Iが、キャパシタC1側から第1の機械的スイッチS1に流れる。
【0101】
回路電流Iがピーク値Tpに達すると、ラッチ回路610がリセットされる。このため、第1のパルス信号P1がオフする。第1のパルス信号P1がオフすると、第1の機械的スイッチS1が非導通となって、第1の機械的スイッチS1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む。
【0102】
交流電圧Vaの極性が負のときには、パルス生成部611は、ラッチ回路610の出力に応じて第2のパルス信号P2を周期的に出力する。第2のパルス信号P2がオンすると、第2の機械的スイッチS2が導通する。
【0103】
第2の機械的スイッチS2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の機械的スイッチS2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の機械的スイッチS2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置600は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の機械的スイッチS2に流れる。
【0104】
回路電流Iがピーク値Tpに達すると、ラッチ回路610がリセットされる。このため、第2のパルス信号P2がオフする。第2のパルス信号P2がオフすると、第2の機械的スイッチS2が非導通になって、第2の機械的スイッチS2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けようとする。このため、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む。
【0105】
このように、電力変換装置600は、回路電流Iがピーク値Ipを超えないように、第1または第2の機械的スイッチS1,S2をオフする。ピーク値Ipはエンベロープ曲線であり、エンベロープは入力電圧Vinと比例するので、入力電圧Vinが正弦波ならばエンベロープ曲線も正弦波となる。
【0106】
このエンベロープ曲線で規定されたピーク値Ipで第1または第2の機械的スイッチS1,S2をオフする動作を繰り返すことにより、図13に示すように回路電流Iは三角波となる。そして、この回路電流Iの平均値Iaは、ピーク値Ipの略1/2であるとみなすことができる。すなわち、入力側から見れば、この平均電流Iaが正弦波状に現れることになる。
【0107】
このように、電力変換装置600は、入力電圧波形に略等しい正弦波の入力電流波形が得られる。このため、入力ラインに高調波電流が発生することはないので、変電設備への負担を軽減することができる。
【0108】
[第7の実施形態]
次に、第7の実施形態を、図14〜図16を用いて説明する。図14は、第7の実施形態の電力変換装置700を示す回路図である。なお、図11と共通する部分には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0109】
電力変換装置700が、第6の実施形態の電力変換装置600と異なる点は、サブパルス生成部701と、第1及び第2の論理和ゲート702,703を追加した点である。サブパルス生成部701は、電圧信号処理部604にて得られる入力電圧Vinの極性及び絶対値の信号と、電流信号処理部605にて得られる回路電流Iの極性及び絶対値の信号と、ラッチ回路610の状態信号とを入力する。
【0110】
サブパルス生成部701は、電圧信号処理部604にて得られる入力電圧Vinの極性が正の極性を示すとき、第1のサブパルス信号P13を出力する。サブパルス信号P13は、ラッチ回路610から入力される状態信号が論理“1”となってから微小の遅延時間dを経過するとオンする。また、第1のサブパルス信号P13は、電流信号処理部605にて得られる回路電流Iの絶対値がゼロになる直前まで低下するとオフする。
【0111】
サブパルス生成部701は、電圧信号処理部604にて得られる入力電圧Vinの極性が負の極性を示すとき、第2のサブパルス信号P23を出力する。第2のサブパルス信号P23は、ラッチ回路610から入力される状態信号が論理“1”となってから微小の遅延時間dを経過するとオンする。また、第2のサブパルス信号P23は、電流信号処理部605にて得られる回路電流Iの絶対値がゼロになる直前まで低下するとオフする。
【0112】
第1の論理和ゲート702は、パルス生成部611から出力される第1のパルス信号P1とサブパルス生成部701から出力される第2のサブパルス信号P23との論理和を演算する。そして、この論理和結果であるパルス信号P12を第1の機械的スイッチS1に供給する。第1の機械的スイッチS1は、パルス信号P12がオンしている間、導通する。
【0113】
第2の論理和ゲート703は、パルス生成部611から出力される第2のパルス信号P2とサブパルス生成部701から出力される第1のサブパルス信号P13との論理和を演算する。そして、この論理和結果であるパルス信号P22を第2の機械的スイッチS2に出力する。第2の機械的スイッチS2は、パルス信号P22がオンしている間、導通する。
【0114】
かかる構成の電力変換装置600の動作を、図15及び図16のタイミング図を用いて説明する。図15は、交流電圧Vaの極性が正のときの電力変換装置600の動作を示すタイミング図である。第6の実施形態で説明したように、ピーク電流決定部607にて決定されるピーク電流値Ipは、正弦波状のエンベロープ曲線となる。
【0115】
交流電圧Vaの極性が正のとき、パルス生成部611は、第1のパルス信号P1を周期的に出力する。第1のパルス信号P1がオンすると、第1の論理和ゲート702の論理和結果であるパルス信号P12がオンして(図15の時点T61,T65、T69、T73、T77、T81)、第1の機械的スイッチS1が導通する。
【0116】
第1の機械的スイッチS1が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1及び第1の機械的スイッチS1の閉回路が形成される。その結果、インダクタL1の線形リアクトル作用により、右上がりの直線的な電流Iが、キャパシタC1側から第1の機械的スイッチS1に流れる(図15の区間T61−T62、T65−T66、T69−T70、T73−T74、T77−T78、T81−T82)。
【0117】
回路電流Iがピーク値Tpに達すると(図15の時点T62、T66、T70、T74、T78、T82)、ラッチ回路610がリセットされるため、第1のパルス信号P1がオフする。第1のパルス信号P1がオフすると、第1の論理和ゲート702の論理和結果であるパルス信号P12がオフする。したがって、第1の機械的スイッチS1が非導通となる。
【0118】
第1の機械的スイッチS1が非導通になると、第1の機械的スイッチS1を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に電流が流れ込む(図15の時点T62−T63、T66−T67、T70−T71、T74−T75、T78−T79、T82−T83)。
【0119】
第1のパルス信号P1がオフしてから微小な遅延時間dが経過すると(図15の時点T63、T67、T71、T75、T79、T83)、第1の遅延パルス信号P13がオンする。第1の遅延パルス信号P13がオンすると、第2の論理和ゲート703の論理和結果であるパルス信号P22がオンして、第2の機械的スイッチS2が導通する。第2の機械的スイッチS2が導通すると、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、第2の機械的スイッチS2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込むようになる(図15の区間T63−T64、T67−T68、T71−T72、T75−T76、T79−T80、T83−T84)。
【0120】
その後、第2の機械的スイッチS2を流れる回路電流Iがゼロになる直前のタイミングで(図15の時点T64、T68、T72、T76、T80、T84)、第1の遅延パルス信号P13がオフする。第1の遅延パルス信号P13がオフすると、第2の論理和ゲート703の論理和結果であるパルス信号P22がオフして、第2の機械的スイッチS2が非導通となる。第2の機械的スイッチS2が非導通になると、第2の機械的スイッチS2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込んでいた電流が、再び、第2の外付けダイオードD2を経由して平滑コンデンサC2に流れ込む。
【0121】
図16は、交流電圧Vaの極性が負のときの電力変換装置600の動作を示すタイミング図である。交流電圧Vaの極性が負のとき、パルス生成部611は、第2のパルス信号P2を周期的に出力する。第2のパルス信号P2がオンすると、第2の論理和ゲート703の論理和結果であるパルス信号P22がオンして(図16の時点T91,T95、T99、T103、T107、T111)、第2の機械的スイッチS2が導通する。
【0122】
第2の機械的スイッチS2が導通すると、交流電源101、インダクタL1、キャパシタC1、第2の半導体スイッチQ2及び平滑コンデンサC2の閉回路が形成される。このとき、平滑コンデンサC2の電圧は、交流電圧Vaより高い。その結果、平滑コンデンサC2の充電電圧が第2の半導体スイッチQ2及びインダクタL1を経由して交流電源101側に戻るように、電力変換装置200は動作する。このため、右上がりの直線的な電流が、平滑コンデンサC2側から第2の半導体スイッチQ2に流れる(図16の区間T91−T92、T95−T96、T99−T100、T103−T104、T107−T108、T111−T112)。
【0123】
回路電流Iがピーク値Tpに達すると(図16の時点T92、T96、T100、T104、T108、T112)、ラッチ回路610がリセットされるため、第2のパルス信号P2がオフする。第2のパルス信号P2がオフすると、第2の論理和ゲート703の論理和結果であるパルス信号P22がオフして、第2の機械的スイッチS2が非導通となる。
【0124】
第2の機械的スイッチS2が非導通になると、第2の機械的スイッチS2を流れる電流はゼロとなる。このとき、インダクタL1は、リアクトルエネルギーにより引き続き電流を同方向に流し続けるようとする。このため、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込む(図16の時点T92−T93、T96−T97、T100−T101、T104−T105、T108−T109、T112−T113)。
【0125】
第2のパルス信号P2がオフしてから微小な遅延時間dが経過すると(図16の時点T93、T97、T101、T105、T109、T113)、第2の遅延パルス信号P23がオンする。第2の遅延パルス信号P23がオンすると、第1の論理和ゲート702の論理和結果であるパルス信号P12がオンして、第1の機械的スイッチS1が導通する。第1の機械的スイッチS1が導通すると、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、第1の機械的スイッチS1を経由してキャパシタC1に流れ込むようになる(図16の区間T93−T94、T97−T98、T101−T102、T105−T106、T109−T110、T113−T114)。
【0126】
その後、第1の機械的スイッチS1を流れる回路電流Iがゼロになる直前のタイミングで(図16の時点T94、T98、T102、T106、T110、T114)、第2の遅延パルス信号P23がオフする。第2の遅延パルス信号P23がオフすると、第1の論理和ゲート702の論理和結果であるパルス信号P12がオフして、第1の機械的スイッチS1が非導通となる。第1の機械的スイッチS1が非導通になると、第1の機械的スイッチS1を経由してキャパシタC1に流れ込んでいた電流が、再び、第1の外付けダイオードD1を経由してキャパシタC1に流れ込む。
【0127】
このように、電力変換装置700は、第1の機械的スイッチS1が非導通となったことにより第2の外付けダイオードD2に流れた電流が、第1の機械的スイッチS1が非導通となった時点から微小な遅延時間経過後に第2の機械的スイッチS2に流れる。そして、この電流がゼロになる直前で、再び、第2の外付けダイオードD2に流れる。同様に、第2の機械的スイッチS2が非導通なったことにより第1の外付けダイオードD1に流れていた電流が、第2の機械的スイッチS2が非導通となった時点から微小な遅延時間経過後に第1の機械的スイッチS1に流れる。そして、この電流がゼロになる直前で、再び、第1の外付けダイオードD1に流れる。したがって、より一層の電力変換効率を高めることができる。
【0128】
以上の説明から明らかなように、各実施形態によれば、電力変換効率が大幅に向上し得た電力変換装置を提供することができる。
【0129】
以下、前記各実施形態の変形例について説明する。
第1,第3及び第5の実施形態では、半導体スイッチQ1,Q2としてMOS型FETを使用したが、半導体スイッチQ1,Q2は、MOS型FETに限定されるものではない。例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)等のボディダイオードを有する半導体素子を、半導体スイッチQ1,Q2として使用してもよい。
【0130】
第2,第4,第6及び第7の実施形態では、スイッチS1,S2として機械的スイッチを使用したが、スイッチS1,S2は機械的スイッチに限定されるものではない。例えばトライアックのような双方向で電流の導通及び非導通を制御できるボディダイオードを有しない半導体スイッチであってもよい。要は、電流の向きに依存せず、導通か非導通かを切り替えられるものであればよい。また、第4,第6及び第7の実施形態の場合は、FET等のボディダイオードを有する半導体スイッチであってもよい
第4の実施形態では、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成を第2の実施形態の電力変換装置200と同一としたが、第1の実施形態の電力変換装置100または第3の実施形態の電力変換装置300と同一としてもよい。また、第5の実施形態では、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成を第3の実施形態の電力変換装置300と同一としたが、第1の実施形態の電力変換装置100または第2の実施形態の電力変換装置200と同一としてもよい。第6及び第7の実施形態についても同様であり、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成がその実施形態のものに限定されるものではない。
【0131】
また、交流電源101から出力端子102,103までの回路構成は、第1〜第3の実施形態のものに限定されるものではない。例えば、交流電源101に接続されるインダクタL1とキャパシタC1とは直列接続である。そこで、図17に示すように、交流電源101の一端にキャパシタC1の一端を接続し、キャパシタC1の他端にインダクタl1を介して第1のスイッチ(第1の半導体スイッチQ1または第1の機械的スイッチS1)を接続することも可能である。
【0132】
また、第5,第6及び第7の実施形態では、交流電源101と接続点X1との間を流れる電流Iを電流検出部501,602で検出したが、回路電流Iを検出する位置は、上記各実施形態の位置に限定されるものではない。例えば、図18〜図20のように回路を構成してもよい。
【0133】
図18は、交流電源101の一端に電流検出部501,602を介してインダクタL1を接続し、交流電源101の他端にキャパシタC1を接続して、交流電源101とインダクタL1との間を流れる電流を回路電流Iとして検出する例である。
【0134】
図19は、インダクタL1に対して2次巻線L2を配置し、この2次巻線L2に発生する電圧から回路電流Iを検出する例である。
【0135】
図20は、第1の機械的スイッチS1及び第2の機械的スイッチS2に対してそれぞれ低抵抗R1,R2を接続し、低抵抗R1,R2毎にその両端にピーク電流検出部81,82を接続する。そして、低抵抗R1,R2を流れる電流を電圧値に変換して、ピーク電流を検出する例である。この例においては、電流検出部501,602は、回路電流Iがゼロとなったのを検出する。
【0136】
また、各実施形態では、交流電源として100Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力電源としたが、交流電源は、100Vの商用電源に限定されるものではない。例えば、200〜220Vの商用電源(50Hz/60Hz)を入力電源とし、所望の直流電圧に変換して負荷へ電力を供給する電力変換装置であってもよい。
【0137】
例えば、図11に示す電力変換装置600において、100Vの交流電源を印加して200ワットの電力を負荷へ出力する場合には、平均電流Iaが2アンペアになるようにピーク電流決定部607がエンベロープを決定する。これに対し、200Vの交流電源を印加する場合には、平均電流が1アンペアになるようにエンベロープが自動で決まる。出力電圧がリファレンス電圧に等しくなるようにフィードバックがかかるため、結果としてそうなる。
【0138】
図21に、100Vの交流電源と200Vの交流電源を印加した場合の始動時の電圧変化を示す。100Vの交流電源を印加した場合、平滑コンデンサC2にチャージアップされる電圧は、図21中E1に示すように略200Vとなる。これに対し、200Vの交流電源を印加した場合に平滑コンデンサC2にチャージアップされる電圧は、図21中E2に示すように略400Vとなる。しかしいずれの場合においても、スイッチング動作を開始すると(時点t0)、その出力電圧は、リファレンス電圧(この例では600V)に等しくなるように制御がかかる。
【0139】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
100,200,300,400,500,600,700…電力変換装置、101…交流電源、104…極性判定部、105,403,502,611…パルス生成部、401,603…出力電圧検出部、402,606…比較部、501,602…電流検出部、601…入力電圧検出部、604…電圧信号処理部、604a,605a…極性判定部、640b,605b…絶対値生成部、605…電流信号処理部、607…ピーク電流決定部、608…電流ピーク判定部、609…電流ゼロ判定部、610…ラッチ回路、701…サブパルス生成部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の両端に、インダクタとキャパシタを直列に介して接続する第1のスイッチと、
前記第1のスイッチの両端に、平滑コンデンサを直列に介して接続する第2のスイッチと、
前記交流電源の電圧の極性が正のとき前記第1のスイッチを前記交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第1のパルス信号を生成して前記第1のスイッチに出力し、前記交流電源の電圧の極性が負のとき前記第2のスイッチを前記交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第2のパルス信号を生成して前記第2のスイッチに出力するパルス生成部と、
を具備したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のスイッチは、ボディダイオードを有する半導体スイッチであることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のスイッチは、機械的スイッチまたはボディダイオードを有しない半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列にダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のスイッチは、ボディダイオードを有する半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列に前記ボディダイオードよりも順方向電圧の低いダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記交流電源に流れる回路電流を検出してその検出値を前記パルス生成部に出力する回路電流検出部、をさらに具備し、
前記パルス生成部は、前記交流電源の電圧の極性が正のとき、前記第1のパルス信号がオフしてから次にオンするまでの間の前記回路電流が流れている間に前記第2のスイッチを所定時間導通させるための第3のパルス信号を生成して前記第2のスイッチに出力し、前記交流電源の電圧の極性が負のとき、前記第2のパルス信号がオフしてから次にオンするまでの間の前記回路電流が流れている間に前記第1のスイッチを所定時間導通させるための第4のパルス信号を生成して前記第1のスイッチに出力することを特徴とする請求項3または4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記平滑コンデンサの両端の電圧を検出してその検出値を前記パルス生成部に出力する出力電圧検出部、をさらに具備し、
前記パルス生成部は、前記出力電圧検出部で検出された電圧が所定の電圧より高ければ前記第1または第2のパルス信号のパルス幅を狭くし、前記所定の電圧より低ければ前記第1または第2のパルス信号のパルス幅を広くすることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記交流電源に流れる回路電流を検出してその検出値を前記パルス生成部に出力する回路電流検出部と、
前記交流電源の電圧を検出する入力電圧検出部と、
前記平滑コンデンサの両端の電圧を検出してその検出値を前記パルス生成部に出力する出力電圧検出部と、
出力電圧検出部で検出される出力電圧と所定の設定電圧との差分値を算出する比較部と、
前記入力電圧検出部で検出される入力電圧と前記比較部で算出される電圧差分値との乗算値を電流のピーク値として算出するピーク電流決定部と、
セット端子に信号が入力されてからリセット端子に信号が入力されるのまでの間、前記パルス生成部に信号を出力するラッチ回路と、
前記回路電流検出部で検出される電流値がゼロになると前記ラッチ回路のセット端子に信号を出力する電流ゼロ判定部と、
前記回路電流検出部で検出される電流値が前記ピーク電流決定部で算出されたピーク値に達すると前記ラッチ回路のリセット端子に信号を出力する電流ピーク判定部とをさらに具備し、
前記パルス生成部は、前記第1または第2のパルス信号のパルス幅を、前記ラッチ回路の出力が入力されている期間に制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1及び第2のスイッチは、機械的スイッチまたはボディダイオードを有しない半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列にダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項7記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1及び第2のスイッチは、ボディダイオードを有する半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列に前記ボディダイオードよりも順方向電圧の低いダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項7記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記入力電圧検出部で検出される入力電圧と前記回路電流検出部で検出される回路電流と前記ラッチ回路から出力される信号とを入力し、前記入力電圧の極性が正のとき、前記ラッチ出力がリセット状態になり所定時間を経過してから前記回路電流がゼロとなる直前までの期間中、前記第2のスイッチをオンするための第2のサブパルス信号を前記第2のスイッチに対して出力し、前記入力電圧の極性が負のとき、前記ラッチ出力がリセット状態になり所定時間を経過してから前記回路電流がゼロとなる直前までの期間中、前記第1のスイッチをオンするための第1のサブパルス信号を前記第1のスイッチに対して出力するサブパルス生成部、
をさらに具備したことを特徴とする請求項8または9記載の電力変換装置。
【請求項1】
交流電源の両端に、インダクタとキャパシタを直列に介して接続する第1のスイッチと、
前記第1のスイッチの両端に、平滑コンデンサを直列に介して接続する第2のスイッチと、
前記交流電源の電圧の極性が正のとき前記第1のスイッチを前記交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第1のパルス信号を生成して前記第1のスイッチに出力し、前記交流電源の電圧の極性が負のとき前記第2のスイッチを前記交流電圧の周期より高い周波数でパルス駆動するための第2のパルス信号を生成して前記第2のスイッチに出力するパルス生成部と、
を具備したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のスイッチは、ボディダイオードを有する半導体スイッチであることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のスイッチは、機械的スイッチまたはボディダイオードを有しない半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列にダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のスイッチは、ボディダイオードを有する半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列に前記ボディダイオードよりも順方向電圧の低いダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記交流電源に流れる回路電流を検出してその検出値を前記パルス生成部に出力する回路電流検出部、をさらに具備し、
前記パルス生成部は、前記交流電源の電圧の極性が正のとき、前記第1のパルス信号がオフしてから次にオンするまでの間の前記回路電流が流れている間に前記第2のスイッチを所定時間導通させるための第3のパルス信号を生成して前記第2のスイッチに出力し、前記交流電源の電圧の極性が負のとき、前記第2のパルス信号がオフしてから次にオンするまでの間の前記回路電流が流れている間に前記第1のスイッチを所定時間導通させるための第4のパルス信号を生成して前記第1のスイッチに出力することを特徴とする請求項3または4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記平滑コンデンサの両端の電圧を検出してその検出値を前記パルス生成部に出力する出力電圧検出部、をさらに具備し、
前記パルス生成部は、前記出力電圧検出部で検出された電圧が所定の電圧より高ければ前記第1または第2のパルス信号のパルス幅を狭くし、前記所定の電圧より低ければ前記第1または第2のパルス信号のパルス幅を広くすることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記交流電源に流れる回路電流を検出してその検出値を前記パルス生成部に出力する回路電流検出部と、
前記交流電源の電圧を検出する入力電圧検出部と、
前記平滑コンデンサの両端の電圧を検出してその検出値を前記パルス生成部に出力する出力電圧検出部と、
出力電圧検出部で検出される出力電圧と所定の設定電圧との差分値を算出する比較部と、
前記入力電圧検出部で検出される入力電圧と前記比較部で算出される電圧差分値との乗算値を電流のピーク値として算出するピーク電流決定部と、
セット端子に信号が入力されてからリセット端子に信号が入力されるのまでの間、前記パルス生成部に信号を出力するラッチ回路と、
前記回路電流検出部で検出される電流値がゼロになると前記ラッチ回路のセット端子に信号を出力する電流ゼロ判定部と、
前記回路電流検出部で検出される電流値が前記ピーク電流決定部で算出されたピーク値に達すると前記ラッチ回路のリセット端子に信号を出力する電流ピーク判定部とをさらに具備し、
前記パルス生成部は、前記第1または第2のパルス信号のパルス幅を、前記ラッチ回路の出力が入力されている期間に制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1及び第2のスイッチは、機械的スイッチまたはボディダイオードを有しない半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列にダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項7記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1及び第2のスイッチは、ボディダイオードを有する半導体スイッチであり、
前記第1及び第2のスイッチに対してそれぞれ並列に前記ボディダイオードよりも順方向電圧の低いダイオードを外付けしたことを特徴とする請求項7記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記入力電圧検出部で検出される入力電圧と前記回路電流検出部で検出される回路電流と前記ラッチ回路から出力される信号とを入力し、前記入力電圧の極性が正のとき、前記ラッチ出力がリセット状態になり所定時間を経過してから前記回路電流がゼロとなる直前までの期間中、前記第2のスイッチをオンするための第2のサブパルス信号を前記第2のスイッチに対して出力し、前記入力電圧の極性が負のとき、前記ラッチ出力がリセット状態になり所定時間を経過してから前記回路電流がゼロとなる直前までの期間中、前記第1のスイッチをオンするための第1のサブパルス信号を前記第1のスイッチに対して出力するサブパルス生成部、
をさらに具備したことを特徴とする請求項8または9記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図4】
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【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−23868(P2012−23868A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160008(P2010−160008)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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