電力変換装置
【課題】インバータから流出する高調波電流を抑制できる電力変換装置を得る。
【解決手段】出力電流制御部8において、インバータ4から系統9へ出力される出力電流Jaと目標電流Jasとの差ΔJaが、第1の制御器822または第2の制御器823にて増幅されPWM信号出力手段83にてインバータ4の図示しないスイッチング素子を開閉制御するためのPWM信号Sgが生成される。同時に出力電流Ja中の高調波電流が高調波電流検出手段85にて検出され、電流制御系が発振し上限値JHLを越えたとき比較器86からOR回路88を介して真理値「1」の信号が制御器切替手段821に出力され、制御器切替手段821は第1の制御器822から第1の制御器822よりもゲインの低い第2の制御器823に切り替え、電流制御系のゲインを下げて発振しないようにして、インバータ4から流出する高調波電流を抑制する。
【解決手段】出力電流制御部8において、インバータ4から系統9へ出力される出力電流Jaと目標電流Jasとの差ΔJaが、第1の制御器822または第2の制御器823にて増幅されPWM信号出力手段83にてインバータ4の図示しないスイッチング素子を開閉制御するためのPWM信号Sgが生成される。同時に出力電流Ja中の高調波電流が高調波電流検出手段85にて検出され、電流制御系が発振し上限値JHLを越えたとき比較器86からOR回路88を介して真理値「1」の信号が制御器切替手段821に出力され、制御器切替手段821は第1の制御器822から第1の制御器822よりもゲインの低い第2の制御器823に切り替え、電流制御系のゲインを下げて発振しないようにして、インバータ4から流出する高調波電流を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置、例えば太陽電池などの分散電源の直流電力を交流電力に変換して交流系統に出力する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置としてのパワーコンディショナ装置として、次のような、太陽電池などの発電システムからの直流電力を交流電力に変換して系統に出力するものがある。
すなわち、発電システム内で発電した直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を、前記発電システム内部のシステム補機を経由して前記発電システム外部の系統にシステム出力として出力するパワーコンディショナ装置であって、前記システム出力のシステム出力電流を検出するシステム出力電流検出手段と、このシステム出力電流検出手段にて検出したシステム出力電流に基づいて、前記交流電力の出力電流を制御する電流制御手段とを有し、前記電流制御手段は、前記システム出力電流検出手段にて検出したシステム出力電流から高調波電流を抽出する高調波電流抽出手段と、前記高調波電流抽出手段にて抽出した高調波電流に基づいて、前記システム出力に含まれる高調波電流をキャンセルするように、前記交流電力の出力電流を制御する高調波電流キャンセル手段とを有するパワーコンディショナ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−274813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の電力変換装置においては、系統の出力インピーダンスの大きさによっては、電流制御系の発振を誘発し、発振が継続することにより大きな高調波電流がインバータから流出し続け系統に悪影響を与える場合があった。
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、インバータから流出する高調波電流を抑制できる電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る電力変換装置においては、インバータと出力電流制御装置とを備えた電力変換装置であって、
上記インバータは、直流を交流に変換して交流系統へ出力電流を出力するものであり、
上記出力電流制御装置は、高調波電流検出手段と制御手段と電流制御指令手段とゲイン変更手段とを有し、
上記高調波電流検出手段は、上記出力電流に含まれる高調波電流を検出するものであり、
上記制御手段は、上記出力電流と目標電流との差を増幅して電流偏差として出力するものであり、
上記電流制御指令手段は、上記電流偏差に基づいて上記出力電流を制御する電流制御指令信号を上記インバータへ発信するものであり、
上記ゲイン変更手段は、上記高調波電流の大きさに基づいて上記制御手段のゲインを変更するものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明は、インバータと出力電流制御装置とを備えた電力変換装置であって、
上記インバータは、直流を交流に変換して交流系統へ出力電流を出力するものであり、
上記出力電流制御装置は、高調波電流検出手段と制御手段と電流制御指令手段とゲイン変更手段とを有し、
上記高調波電流検出手段は、上記出力電流に含まれる高調波電流を検出するものであり、
上記制御手段は、上記出力電流と目標電流との差を増幅して電流偏差として出力するものであり、
上記電流制御指令手段は、上記電流偏差に基づいて上記出力電流を制御する電流制御指令信号を上記インバータへ発信するものであり、
上記ゲイン変更手段は、上記高調波電流の大きさに基づいて上記制御手段のゲインを変更するものであるので、
インバータから流出する高調波電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施の形態1である電力変換装置の構成を示すものであり、図1(a)は全体の構成を示す構成図、図1(b)は出力電流制御手段の詳細構成を示す構成図である。
【図2】図1の第1の制御器の詳細構成を示す構成図である。
【図3】図1の高調波電流検出手段の動作を説明するための波形図である。
【図4】図1の出力フィルタの詳細構成を示す構成図である。
【図5】電流制御系の周波数特性を示す特性図である。
【図6】電流制御系の周波数特性に制御器のゲインが及ぼす影響を説明するための特性図である。
【図7】系統のインピーダンスの大小によって出力電制御部の即応性と安定性に対する要求事項を示す図である。
【図8】実施の形態2である制御信号波発生手段の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図7は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は電力変換装置の構成を示すものであり図1(a)は全体の構成を示す構成図、図1(b)は出力電流制御部の詳細構成を示す構成図である。図2は第1の制御器の詳細構成を示す構成図、図3は高調波電流検出手段の動作を説明するための波形図、図4は出力フィルタの詳細構成を示す構成図である。図5は電流制御系の周波数特性を示す特性図、図6は電流制御系の周波数特性に制御器のゲインが及ぼす影響を説明するための特性図である。図7は、系統のインピーダンスの大小によって出力電流制御部の即応性と安定性に対する要求事項を示す図である。
【0009】
図1において、電力変換装置は直流電源1からの直流電力を三相交流電力に変換して交流の系統(負荷)9に出力するものである。なお、直流電源1は例えば太陽電池、燃料電池などで構成される。電力変換装置は、直流電源1と接続するための入力回路2と、直流電源1の電圧をインバータ4を動作させるのに最適な電圧に昇降圧するコンバータ3と、コンバータ3の出力である直流電圧を交流電圧に変換するインバータ4と、インバータ4の出力電圧中の高調波を低減し出力電圧波形を平滑化するフィルタ装置としての出力フィルタ5と、系統9と接続するための出力回路6と、直流電源1の電圧Vdおよび電流Jdをそれぞれ検出する入力電圧センサ11と入力電流センサ12と、系統電圧Va、出力電流Jaをそれぞれ検出する系統電圧センサ21と、出力電流センサ22と、各センサの検出値に応じてコンバータ3及びインバータ4を制御することで系統9への出力電力Paを制御する総合制御装置7とを備えている。
【0010】
総合制御装置7は、出力電流制御装置としての出力電流制御部8を有する。出力電流制御部8は、その詳細構成を図1(b)に示すが、減算器81と、制御信号波発生手段82と、電流制御指令手段としてのPWM信号出力手段83と、高調波電流検出手段85と、比較器86と、外部入力手段87と、OR回路88とを有する。制御信号波発生手段82は、ゲイン変更手段としての制御器切替手段821と制御手段としての第1及び第2の制御器822,823と、積分器内容同一化手段825とを有する。
【0011】
以上のように構成された電力変換装置の動作を、以下に説明する。
電力変換装置の総合制御装置7は、直流電源1から入力される直流電圧Vdと直流電流Jdおよび交流の系統電圧Vaを検出し、直流電源1の状態、または系統電圧Vaの状態に応じて、目標電流Jas(図1(b))を決定する。減算器81にて目標電流Jasと電流センサの出力であるインバータ4の現在の出力電流Jaとの差ΔJaを求め、第1の制御器822または第2の制御器823は、入力された差ΔJaをPI演算及び増幅してインバータ4のスイッチング素子のデューティファクタを調整するための電流偏差としての信号波Vcを出力する。PWM信号出力手段83は、第1の制御器822または第2の制御器823から出力される信号波Vcからインバータ4の開閉手段としての図示しないスイッチング素子の開閉動作を制御する電流制御指令信号としてのPWM信号Sgを生成し、インバータ4の出力電流Jaを制御する。
【0012】
一方、高調波電流検出手段85は、出力電流Ja中の高調波電流Jahを検出する(詳細動作は後述する)。比較器86は、時限機能付の比較器であり、高調波電流検出手段85の出力と予め設定された流出高調波電流の上限値JHLとを比較し、高調波電流検出手段85の出力が所定値としての上限値JHLを越えた状態が所定時間継続したとき信号を発する(詳細後述)。OR回路88は、比較器86から信号と外部入力手段87からの入力との論理和を真理値として信号S1を出力する。制御器切替手段821は、真理値「1」が入力されたとき制御器822と制御器823とを切り替えるが、制御器822と制御器823とを切り替える際に、積分器内容同一化手段825により制御器822及び制御器823がそれぞれ有する図示しない積分器の値を第1及び第2の制御器822,823間で揃える。
【0013】
図4は、出力電流Ja中の高調波電流Jahを検出する高調波電流検出手段85の動作の一例を模式的に示したものである。この例では、高調波電流検出手段85は、検出された出力電流Jaから、基本波成分Jafのみを抽出するようにフィルタリングした抽出値(基本波成分)Jafを、出力電流Jaから差し引くことにより高調波電流Jahを求めている。このようにして求めた出力電流中の高調波電流Jahを絶対値化処理して絶対値|Jah|を求め、さらに平均化して平均値Jahmを求めることで出力電流Ja中の高調波電流含有量を正規化して出力する。この出力電流Ja中の高調波電流含有量の正規化値である平均値Jahmと、流出高調波電流の上限値(正規化値の基準値)JHLとを比較器86により比較し、高調波電流含有量が上限値JHLを越えた状態が所定時間継続した場合に、OR回路88へ信号を出力する。信号を受けたOR回路88は、制御器切替手段821に真理値「1」の信号である切替信号を出力し、第1の制御器822と第2の制御器823とを切り替え、切り替えられた第2の制御器823にて演算処理及び増幅が行われる。
【0014】
本実施の形態における出力電流制御部8は、出力電流Jaをフィードバック制御する制御器を2つすなわち第1及び第2の制御器822,823を有する。図2に第1及び第2の制御器822の構成を示す。第1の制御器822は、比例ゲイン822a、加算器822b、制御器出力リミッタ822c、及び積分回路822dを有する。積分回路822dは積分ゲイン822eと積分リミッタ822fと一次遅れ822fを有している。第2の制御器823についても第1の制御器822と同様の構成であり、図示しないが比例ゲイン、加算器、制御器出力リミッタ、及び積分回路を有し、当該積分回路は積分ゲインと積分リミッタと一次遅れを有している。各制御器822,823は入力信号に基づいてPI演算及び増幅を行うものである。そして、各制御器822,823は想定しうる系統9のインピーダンス条件に応じた、二つの制御器の間で異なるゲインを持っており、この実施の形態においては制御器823のゲインは制御器822のゲインよりも小さく設定されている。そして、上記のように高調波電流含有量が一定値を越えたとき比較器86から発信される信号、または外部入力手段87から入力される外部からの切替信号が入力された場合に、OR回路88から出力される真理値「1」が制御器切替手段821へ出力され、これを受けた制御器切替手段821が制御器822と制御器823とを切り替えることにより制御手段のゲインを変更する。制御器822と制御器823との切り替えの際、制御器822,823がそれぞれ有する積分器の内容が、各制御器822,823で異なると、切替えの際に制御器822,823の出力が不連続で切り替るおそれがあるため、積分器内容同一化手段825により、各制御器822,823の積分器の内容を同一化する。
【0015】
ここで、出力電流制御部8の制御器822,823を切り替えることによる効果の詳細について、説明する。
一般に、制御器のゲインを決定する要素としては、その即応性と安定性がある。即応性とは、出力電流を目標とする出力電流に収束させる速度、安定性とは、想定し得る全ての条件において、制御器の影響により出力電流のハンチングなどを生じさせることなく安定に電流制御装置を動作させることをいう。
【0016】
まず、即応性に対する要求について説明する。
本実施の形態に示したような直流電源と系統とを連系するための電力変換器においては、系統9の過渡的な変動に対して可能な限り動作し続けるべきという要求がある場合がある。このため、例えば、系統電圧に瞬時低下が生じた場合などに、運転を継続するためには、装置としての出力電流は上限値を越えないよう、出力電流Jaの増加を抑制するように制御器が働く必要がある。この時の出力電流の増加割合dJa/dtは、系統9のインピーダンスが、例えばインダクタンス成分のみであったと仮定すると、以下の式で表される。
dJa/dt=dVs/Ls
ここに、dVs:系統電圧変動量、Ls:系統インピーダンスである。
すなわち、系統インピーダンスが大きい程、出力電流Jaの増加割合が小さくなる。このことから、系統インピーダンスが小さい程、電流制御系の即応性が必要となり、系統インピーダンスが大きい程、電流制御系の即応性は低くてよいといえる。従って、即応性は、対応すべき系統擾乱の程度と、系統インピーダンスの大きさによって決定される。
【0017】
次に、安定性に対する要求について説明する。
電力変換装置を構成する出力フィルタ5が、例えば図4に示すようなT型のLCLフィルタの場合には、制御器を含む電力変換装置の電流制御系の一巡伝達特性(周波数特性)は、図5に示すような特性となり、不安定点周波数を含む。この不安定点周波数におけるゲイン(図5における縦軸)の値が大きい程、電流制御系の安定性が損なわれる可能性が大きくなる。なお、図4において、出力フィルタ5は、リアクトル51,52とコンデンサ53とがT型に接続されたLCLフィルタである。
【0018】
図5(a)は、系統インピーダンスが小さい場合の電流制御系の一巡伝達特性Aであり、不安定点A1(4kHz,ゲイン2)を有する。図5(b)は系統インピーダンスが大きい場合の電流制御系の一巡伝達特性Bであり、不安定点B1(18kHz,ゲイン23)を有する。系統インピーダンスが大きい程(図5(b))、電流制御系の不安定点B1におけるゲインが大きくなる。すなわち、電流制御系の安定性は系統インピーダンスの大きさによって変化する。電流制御系の不安定点周波数におけるゲインが大きくなると、制御器がハンチングし、インバータ4の出力電流に余分な高調波電流を含む確率が高くなる。なお、ゲインと電流制御系の安定性を示すもので、電流制御系のゲインに対応するものである。
【0019】
上述したような制御器のハンチングを抑制するためには、制御器の増幅ゲインを小さくすることが有効である。例えば、図6(a)は図5(b)に示した電流制御系の一巡伝達特性Bと同じものであるが、図6(b)は図6(a)の制御器のゲインを1/10にした場合の電流制御系の一巡伝達特性Cであり、図6(a)に比べて不安定点C1におけるゲインが小さくなる。以上から、即応性および安定性は系統インピーダンスの大きさに影響を受けることがわかる。系統インピーダンス条件に対して、系統擾乱時に必要な即応性と電流制御系の安定性の関係を表にまとめたものを図7に示す。
【0020】
図7より、制御器の安定性を保つためには、見込まれる最大の系統インピーダンスでゲイン設計をする必要があるが、他方で、系統インピーダンスが低い場合のことを想定し電流制御系の即応性を高くする必要があることがわかる。上述したように、電流制御系の即応性を高くするためには制御器のゲインを大きくすることが必要であるが、安定性を保つためには制御器のゲインを小さくする必要があり、通常、これらの要求を両方満たすための制御器のゲイン設定は困難であることが多い。このようなゲイン設定の困難な場合における有効な対策の一つとして、電力変換器の出力フィルタ5を構成するリアクトル51,52に、インダクタンス値の大きなものを使用するという対策がある。しかしながら、このような対策では、見込むべき系統擾乱によっては、出力フィルタ5のリアクトル51,52が大きくなり、電力変換装置が大型化、高コスト化する場合がある。
【0021】
本実施の形態による電力変換装置では、出力電流制御部8はゲイン設定の異なる二つの制御器822,823を有し、出力電流Ja中の高調波電流Jahを検出し高調波電流Jahがある一定以上となった場合に制御器822,823を切り替える制御器切替手段821を有する。これにより電流制御系の発振(ハンチング)が継続して出力フィルタ5や系統9へ大きな高調波電流が流出し続けて出力フィルタ5や系統9に悪影響を与えるのを防止できる。すなわち、インバータ4から出力フィルタ5や系統9へ流出する高調波電流を抑制して、出力フィルタ5や系統9に悪影響を与えることを防止できる。また、異なる系統インピーダンスを有する場所に電力変換装置が設置された場合に、検出される出力電流Ja中の高調波電流Jahの大きさによって制御器822,823を切り替えることにより、出力フィルタ5のリアクトル51,52のインダクタンス値を大きくすることなく、設置場所に応じて生じる系統インピーダンスの変化と系統擾乱とに対応することができるため、装置の小型化、低コスト化、軽量化を図ることが可能である。
さらに、予め系統インピーダンスが判明している場合や、工事などにより系統インピーダンスが変更されることが判明している場合には、外部入力手段87を用いて切替信号をOR回路88に入力し、手動で制御器822,823を切り替えることにより電流制御ゲインを変更することも可能である。
【0022】
なお、本実施の形態による電力変換装置では、その出力電流制御部8において、制御器を2つ有しているが、3つ以上有し、高調波電流のレベルに応じて各制御器を切り替えるように構成してもよい。
また、出力電流制御部8において、制御器を第1及び第2の制御器822,823の2つにて構成し、高調波電流Jahのレベルに応じて使用する制御器を制御器822,823の間で切り替えているが、高調波電流発生時には、出力フィルタ5や出力回路6、もしくはインバータ4の高調波電流Jahすなわち出力電流Jaが流れる導電部が高調波電流Jahの大きさに応じて加熱され温度上昇するため、温度検出装置を設けそれらの温度を監視し、温度を介して高調波電流を検出しその大きさに応じて制御器を切り替えるような構成としてもよい。この場合は、比較器86における時限機能は温度上昇の時定数によって代替可能である。
【0023】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2である制御信号波発生手段の構成を示す構成図である。図8において、制御信号波発生手段182は、制御手段としてのPI演算器182a及びゲイン変更手段としてのゲイン調整器182bを有する。制御信号波発生手段182は、図1における制御信号波発生手段82の代わりに設けられるものであり、出力電流制御部のその他の構成については、図示しないが図1に示した実施の形態1と同様のものである。
【0024】
このような制御信号波発生手段182においては、減算器81から差ΔJaがPI演算器182aに入力され、PI演算及び増幅された信号がゲイン調整器182bに入力され、ゲインが調整されて信号波VcとしてPWM信号出力手段83(以下、図1(b)も参照)へ出力される。信号波Vcを受けたPWM信号出力手段83は、信号波Vcからインバータ4の図示しないスイッチング素子の開閉動作を制御するPWM信号Sgを生成し、インバータ4から系統9へ出力される出力電流Jaを制御することにより高調波電流Jahを低減する。このとき、高調波電流検出手段85にて検出された出力電流Ja中の高調波電流含有量が上限値JHLを越えた状態が所定時間継続した場合に、比較器86からOR回路88へ信号が出力され、信号を受けたOR回路88は、ゲイン調整器182bへ真理値「1」の信号を発し、ゲイン調整器182bはゲインを予め決められた値に変更する。
なお、OR回路88から真理値「0」、「1」信号を発するのではなく、高調波電流検出手段85から検出された高調波電流Jahのアナログ値を直接ゲイン調整器182bへ出力してこのアナログ値の大きさに応じてゲインを調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 直流電源、4 インバータ、7 総合制御装置、8 出力電流制御部、9 系統、
5 出力フィルタ、22 出力電流センサ、51 リアクトル、53 コンデンサ、
81 減算器、82 制御信号波発生手段、821 制御器切替手段、
822,823 制御器、825 積分器内容同一化手段、83 PWM信号出力手段、
85 高調波電流検出手段、86 比較器、87 外部入力手段、88 OR回路、
182 制御信号波発生手段、182a PI演算器、182b ゲイン調整器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置、例えば太陽電池などの分散電源の直流電力を交流電力に変換して交流系統に出力する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置としてのパワーコンディショナ装置として、次のような、太陽電池などの発電システムからの直流電力を交流電力に変換して系統に出力するものがある。
すなわち、発電システム内で発電した直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を、前記発電システム内部のシステム補機を経由して前記発電システム外部の系統にシステム出力として出力するパワーコンディショナ装置であって、前記システム出力のシステム出力電流を検出するシステム出力電流検出手段と、このシステム出力電流検出手段にて検出したシステム出力電流に基づいて、前記交流電力の出力電流を制御する電流制御手段とを有し、前記電流制御手段は、前記システム出力電流検出手段にて検出したシステム出力電流から高調波電流を抽出する高調波電流抽出手段と、前記高調波電流抽出手段にて抽出した高調波電流に基づいて、前記システム出力に含まれる高調波電流をキャンセルするように、前記交流電力の出力電流を制御する高調波電流キャンセル手段とを有するパワーコンディショナ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−274813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の電力変換装置においては、系統の出力インピーダンスの大きさによっては、電流制御系の発振を誘発し、発振が継続することにより大きな高調波電流がインバータから流出し続け系統に悪影響を与える場合があった。
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、インバータから流出する高調波電流を抑制できる電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る電力変換装置においては、インバータと出力電流制御装置とを備えた電力変換装置であって、
上記インバータは、直流を交流に変換して交流系統へ出力電流を出力するものであり、
上記出力電流制御装置は、高調波電流検出手段と制御手段と電流制御指令手段とゲイン変更手段とを有し、
上記高調波電流検出手段は、上記出力電流に含まれる高調波電流を検出するものであり、
上記制御手段は、上記出力電流と目標電流との差を増幅して電流偏差として出力するものであり、
上記電流制御指令手段は、上記電流偏差に基づいて上記出力電流を制御する電流制御指令信号を上記インバータへ発信するものであり、
上記ゲイン変更手段は、上記高調波電流の大きさに基づいて上記制御手段のゲインを変更するものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明は、インバータと出力電流制御装置とを備えた電力変換装置であって、
上記インバータは、直流を交流に変換して交流系統へ出力電流を出力するものであり、
上記出力電流制御装置は、高調波電流検出手段と制御手段と電流制御指令手段とゲイン変更手段とを有し、
上記高調波電流検出手段は、上記出力電流に含まれる高調波電流を検出するものであり、
上記制御手段は、上記出力電流と目標電流との差を増幅して電流偏差として出力するものであり、
上記電流制御指令手段は、上記電流偏差に基づいて上記出力電流を制御する電流制御指令信号を上記インバータへ発信するものであり、
上記ゲイン変更手段は、上記高調波電流の大きさに基づいて上記制御手段のゲインを変更するものであるので、
インバータから流出する高調波電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施の形態1である電力変換装置の構成を示すものであり、図1(a)は全体の構成を示す構成図、図1(b)は出力電流制御手段の詳細構成を示す構成図である。
【図2】図1の第1の制御器の詳細構成を示す構成図である。
【図3】図1の高調波電流検出手段の動作を説明するための波形図である。
【図4】図1の出力フィルタの詳細構成を示す構成図である。
【図5】電流制御系の周波数特性を示す特性図である。
【図6】電流制御系の周波数特性に制御器のゲインが及ぼす影響を説明するための特性図である。
【図7】系統のインピーダンスの大小によって出力電制御部の即応性と安定性に対する要求事項を示す図である。
【図8】実施の形態2である制御信号波発生手段の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図7は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1は電力変換装置の構成を示すものであり図1(a)は全体の構成を示す構成図、図1(b)は出力電流制御部の詳細構成を示す構成図である。図2は第1の制御器の詳細構成を示す構成図、図3は高調波電流検出手段の動作を説明するための波形図、図4は出力フィルタの詳細構成を示す構成図である。図5は電流制御系の周波数特性を示す特性図、図6は電流制御系の周波数特性に制御器のゲインが及ぼす影響を説明するための特性図である。図7は、系統のインピーダンスの大小によって出力電流制御部の即応性と安定性に対する要求事項を示す図である。
【0009】
図1において、電力変換装置は直流電源1からの直流電力を三相交流電力に変換して交流の系統(負荷)9に出力するものである。なお、直流電源1は例えば太陽電池、燃料電池などで構成される。電力変換装置は、直流電源1と接続するための入力回路2と、直流電源1の電圧をインバータ4を動作させるのに最適な電圧に昇降圧するコンバータ3と、コンバータ3の出力である直流電圧を交流電圧に変換するインバータ4と、インバータ4の出力電圧中の高調波を低減し出力電圧波形を平滑化するフィルタ装置としての出力フィルタ5と、系統9と接続するための出力回路6と、直流電源1の電圧Vdおよび電流Jdをそれぞれ検出する入力電圧センサ11と入力電流センサ12と、系統電圧Va、出力電流Jaをそれぞれ検出する系統電圧センサ21と、出力電流センサ22と、各センサの検出値に応じてコンバータ3及びインバータ4を制御することで系統9への出力電力Paを制御する総合制御装置7とを備えている。
【0010】
総合制御装置7は、出力電流制御装置としての出力電流制御部8を有する。出力電流制御部8は、その詳細構成を図1(b)に示すが、減算器81と、制御信号波発生手段82と、電流制御指令手段としてのPWM信号出力手段83と、高調波電流検出手段85と、比較器86と、外部入力手段87と、OR回路88とを有する。制御信号波発生手段82は、ゲイン変更手段としての制御器切替手段821と制御手段としての第1及び第2の制御器822,823と、積分器内容同一化手段825とを有する。
【0011】
以上のように構成された電力変換装置の動作を、以下に説明する。
電力変換装置の総合制御装置7は、直流電源1から入力される直流電圧Vdと直流電流Jdおよび交流の系統電圧Vaを検出し、直流電源1の状態、または系統電圧Vaの状態に応じて、目標電流Jas(図1(b))を決定する。減算器81にて目標電流Jasと電流センサの出力であるインバータ4の現在の出力電流Jaとの差ΔJaを求め、第1の制御器822または第2の制御器823は、入力された差ΔJaをPI演算及び増幅してインバータ4のスイッチング素子のデューティファクタを調整するための電流偏差としての信号波Vcを出力する。PWM信号出力手段83は、第1の制御器822または第2の制御器823から出力される信号波Vcからインバータ4の開閉手段としての図示しないスイッチング素子の開閉動作を制御する電流制御指令信号としてのPWM信号Sgを生成し、インバータ4の出力電流Jaを制御する。
【0012】
一方、高調波電流検出手段85は、出力電流Ja中の高調波電流Jahを検出する(詳細動作は後述する)。比較器86は、時限機能付の比較器であり、高調波電流検出手段85の出力と予め設定された流出高調波電流の上限値JHLとを比較し、高調波電流検出手段85の出力が所定値としての上限値JHLを越えた状態が所定時間継続したとき信号を発する(詳細後述)。OR回路88は、比較器86から信号と外部入力手段87からの入力との論理和を真理値として信号S1を出力する。制御器切替手段821は、真理値「1」が入力されたとき制御器822と制御器823とを切り替えるが、制御器822と制御器823とを切り替える際に、積分器内容同一化手段825により制御器822及び制御器823がそれぞれ有する図示しない積分器の値を第1及び第2の制御器822,823間で揃える。
【0013】
図4は、出力電流Ja中の高調波電流Jahを検出する高調波電流検出手段85の動作の一例を模式的に示したものである。この例では、高調波電流検出手段85は、検出された出力電流Jaから、基本波成分Jafのみを抽出するようにフィルタリングした抽出値(基本波成分)Jafを、出力電流Jaから差し引くことにより高調波電流Jahを求めている。このようにして求めた出力電流中の高調波電流Jahを絶対値化処理して絶対値|Jah|を求め、さらに平均化して平均値Jahmを求めることで出力電流Ja中の高調波電流含有量を正規化して出力する。この出力電流Ja中の高調波電流含有量の正規化値である平均値Jahmと、流出高調波電流の上限値(正規化値の基準値)JHLとを比較器86により比較し、高調波電流含有量が上限値JHLを越えた状態が所定時間継続した場合に、OR回路88へ信号を出力する。信号を受けたOR回路88は、制御器切替手段821に真理値「1」の信号である切替信号を出力し、第1の制御器822と第2の制御器823とを切り替え、切り替えられた第2の制御器823にて演算処理及び増幅が行われる。
【0014】
本実施の形態における出力電流制御部8は、出力電流Jaをフィードバック制御する制御器を2つすなわち第1及び第2の制御器822,823を有する。図2に第1及び第2の制御器822の構成を示す。第1の制御器822は、比例ゲイン822a、加算器822b、制御器出力リミッタ822c、及び積分回路822dを有する。積分回路822dは積分ゲイン822eと積分リミッタ822fと一次遅れ822fを有している。第2の制御器823についても第1の制御器822と同様の構成であり、図示しないが比例ゲイン、加算器、制御器出力リミッタ、及び積分回路を有し、当該積分回路は積分ゲインと積分リミッタと一次遅れを有している。各制御器822,823は入力信号に基づいてPI演算及び増幅を行うものである。そして、各制御器822,823は想定しうる系統9のインピーダンス条件に応じた、二つの制御器の間で異なるゲインを持っており、この実施の形態においては制御器823のゲインは制御器822のゲインよりも小さく設定されている。そして、上記のように高調波電流含有量が一定値を越えたとき比較器86から発信される信号、または外部入力手段87から入力される外部からの切替信号が入力された場合に、OR回路88から出力される真理値「1」が制御器切替手段821へ出力され、これを受けた制御器切替手段821が制御器822と制御器823とを切り替えることにより制御手段のゲインを変更する。制御器822と制御器823との切り替えの際、制御器822,823がそれぞれ有する積分器の内容が、各制御器822,823で異なると、切替えの際に制御器822,823の出力が不連続で切り替るおそれがあるため、積分器内容同一化手段825により、各制御器822,823の積分器の内容を同一化する。
【0015】
ここで、出力電流制御部8の制御器822,823を切り替えることによる効果の詳細について、説明する。
一般に、制御器のゲインを決定する要素としては、その即応性と安定性がある。即応性とは、出力電流を目標とする出力電流に収束させる速度、安定性とは、想定し得る全ての条件において、制御器の影響により出力電流のハンチングなどを生じさせることなく安定に電流制御装置を動作させることをいう。
【0016】
まず、即応性に対する要求について説明する。
本実施の形態に示したような直流電源と系統とを連系するための電力変換器においては、系統9の過渡的な変動に対して可能な限り動作し続けるべきという要求がある場合がある。このため、例えば、系統電圧に瞬時低下が生じた場合などに、運転を継続するためには、装置としての出力電流は上限値を越えないよう、出力電流Jaの増加を抑制するように制御器が働く必要がある。この時の出力電流の増加割合dJa/dtは、系統9のインピーダンスが、例えばインダクタンス成分のみであったと仮定すると、以下の式で表される。
dJa/dt=dVs/Ls
ここに、dVs:系統電圧変動量、Ls:系統インピーダンスである。
すなわち、系統インピーダンスが大きい程、出力電流Jaの増加割合が小さくなる。このことから、系統インピーダンスが小さい程、電流制御系の即応性が必要となり、系統インピーダンスが大きい程、電流制御系の即応性は低くてよいといえる。従って、即応性は、対応すべき系統擾乱の程度と、系統インピーダンスの大きさによって決定される。
【0017】
次に、安定性に対する要求について説明する。
電力変換装置を構成する出力フィルタ5が、例えば図4に示すようなT型のLCLフィルタの場合には、制御器を含む電力変換装置の電流制御系の一巡伝達特性(周波数特性)は、図5に示すような特性となり、不安定点周波数を含む。この不安定点周波数におけるゲイン(図5における縦軸)の値が大きい程、電流制御系の安定性が損なわれる可能性が大きくなる。なお、図4において、出力フィルタ5は、リアクトル51,52とコンデンサ53とがT型に接続されたLCLフィルタである。
【0018】
図5(a)は、系統インピーダンスが小さい場合の電流制御系の一巡伝達特性Aであり、不安定点A1(4kHz,ゲイン2)を有する。図5(b)は系統インピーダンスが大きい場合の電流制御系の一巡伝達特性Bであり、不安定点B1(18kHz,ゲイン23)を有する。系統インピーダンスが大きい程(図5(b))、電流制御系の不安定点B1におけるゲインが大きくなる。すなわち、電流制御系の安定性は系統インピーダンスの大きさによって変化する。電流制御系の不安定点周波数におけるゲインが大きくなると、制御器がハンチングし、インバータ4の出力電流に余分な高調波電流を含む確率が高くなる。なお、ゲインと電流制御系の安定性を示すもので、電流制御系のゲインに対応するものである。
【0019】
上述したような制御器のハンチングを抑制するためには、制御器の増幅ゲインを小さくすることが有効である。例えば、図6(a)は図5(b)に示した電流制御系の一巡伝達特性Bと同じものであるが、図6(b)は図6(a)の制御器のゲインを1/10にした場合の電流制御系の一巡伝達特性Cであり、図6(a)に比べて不安定点C1におけるゲインが小さくなる。以上から、即応性および安定性は系統インピーダンスの大きさに影響を受けることがわかる。系統インピーダンス条件に対して、系統擾乱時に必要な即応性と電流制御系の安定性の関係を表にまとめたものを図7に示す。
【0020】
図7より、制御器の安定性を保つためには、見込まれる最大の系統インピーダンスでゲイン設計をする必要があるが、他方で、系統インピーダンスが低い場合のことを想定し電流制御系の即応性を高くする必要があることがわかる。上述したように、電流制御系の即応性を高くするためには制御器のゲインを大きくすることが必要であるが、安定性を保つためには制御器のゲインを小さくする必要があり、通常、これらの要求を両方満たすための制御器のゲイン設定は困難であることが多い。このようなゲイン設定の困難な場合における有効な対策の一つとして、電力変換器の出力フィルタ5を構成するリアクトル51,52に、インダクタンス値の大きなものを使用するという対策がある。しかしながら、このような対策では、見込むべき系統擾乱によっては、出力フィルタ5のリアクトル51,52が大きくなり、電力変換装置が大型化、高コスト化する場合がある。
【0021】
本実施の形態による電力変換装置では、出力電流制御部8はゲイン設定の異なる二つの制御器822,823を有し、出力電流Ja中の高調波電流Jahを検出し高調波電流Jahがある一定以上となった場合に制御器822,823を切り替える制御器切替手段821を有する。これにより電流制御系の発振(ハンチング)が継続して出力フィルタ5や系統9へ大きな高調波電流が流出し続けて出力フィルタ5や系統9に悪影響を与えるのを防止できる。すなわち、インバータ4から出力フィルタ5や系統9へ流出する高調波電流を抑制して、出力フィルタ5や系統9に悪影響を与えることを防止できる。また、異なる系統インピーダンスを有する場所に電力変換装置が設置された場合に、検出される出力電流Ja中の高調波電流Jahの大きさによって制御器822,823を切り替えることにより、出力フィルタ5のリアクトル51,52のインダクタンス値を大きくすることなく、設置場所に応じて生じる系統インピーダンスの変化と系統擾乱とに対応することができるため、装置の小型化、低コスト化、軽量化を図ることが可能である。
さらに、予め系統インピーダンスが判明している場合や、工事などにより系統インピーダンスが変更されることが判明している場合には、外部入力手段87を用いて切替信号をOR回路88に入力し、手動で制御器822,823を切り替えることにより電流制御ゲインを変更することも可能である。
【0022】
なお、本実施の形態による電力変換装置では、その出力電流制御部8において、制御器を2つ有しているが、3つ以上有し、高調波電流のレベルに応じて各制御器を切り替えるように構成してもよい。
また、出力電流制御部8において、制御器を第1及び第2の制御器822,823の2つにて構成し、高調波電流Jahのレベルに応じて使用する制御器を制御器822,823の間で切り替えているが、高調波電流発生時には、出力フィルタ5や出力回路6、もしくはインバータ4の高調波電流Jahすなわち出力電流Jaが流れる導電部が高調波電流Jahの大きさに応じて加熱され温度上昇するため、温度検出装置を設けそれらの温度を監視し、温度を介して高調波電流を検出しその大きさに応じて制御器を切り替えるような構成としてもよい。この場合は、比較器86における時限機能は温度上昇の時定数によって代替可能である。
【0023】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2である制御信号波発生手段の構成を示す構成図である。図8において、制御信号波発生手段182は、制御手段としてのPI演算器182a及びゲイン変更手段としてのゲイン調整器182bを有する。制御信号波発生手段182は、図1における制御信号波発生手段82の代わりに設けられるものであり、出力電流制御部のその他の構成については、図示しないが図1に示した実施の形態1と同様のものである。
【0024】
このような制御信号波発生手段182においては、減算器81から差ΔJaがPI演算器182aに入力され、PI演算及び増幅された信号がゲイン調整器182bに入力され、ゲインが調整されて信号波VcとしてPWM信号出力手段83(以下、図1(b)も参照)へ出力される。信号波Vcを受けたPWM信号出力手段83は、信号波Vcからインバータ4の図示しないスイッチング素子の開閉動作を制御するPWM信号Sgを生成し、インバータ4から系統9へ出力される出力電流Jaを制御することにより高調波電流Jahを低減する。このとき、高調波電流検出手段85にて検出された出力電流Ja中の高調波電流含有量が上限値JHLを越えた状態が所定時間継続した場合に、比較器86からOR回路88へ信号が出力され、信号を受けたOR回路88は、ゲイン調整器182bへ真理値「1」の信号を発し、ゲイン調整器182bはゲインを予め決められた値に変更する。
なお、OR回路88から真理値「0」、「1」信号を発するのではなく、高調波電流検出手段85から検出された高調波電流Jahのアナログ値を直接ゲイン調整器182bへ出力してこのアナログ値の大きさに応じてゲインを調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 直流電源、4 インバータ、7 総合制御装置、8 出力電流制御部、9 系統、
5 出力フィルタ、22 出力電流センサ、51 リアクトル、53 コンデンサ、
81 減算器、82 制御信号波発生手段、821 制御器切替手段、
822,823 制御器、825 積分器内容同一化手段、83 PWM信号出力手段、
85 高調波電流検出手段、86 比較器、87 外部入力手段、88 OR回路、
182 制御信号波発生手段、182a PI演算器、182b ゲイン調整器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータと出力電流制御装置とを備えた電力変換装置であって、
上記インバータは、直流を交流に変換して交流系統へ出力電流を出力するものであり、
上記出力電流制御装置は、高調波電流検出手段と制御手段と電流制御指令手段とゲイン変更手段とを有し、
上記高調波電流検出手段は、上記出力電流に含まれる高調波電流を検出するものであり、
上記制御手段は、上記出力電流と目標電流との差を増幅して電流偏差として出力するものであり、
上記電流制御指令手段は、上記電流偏差に基づいて上記出力電流を制御する電流制御指令信号を上記インバータへ発信するものであり、
上記ゲイン変更手段は、上記高調波電流の大きさに基づいて上記制御手段のゲインを変更するものである
電力変換装置。
【請求項2】
フィルタ装置を有するものであって、
上記フィルタ装置は、上記インバータと上記交流系統との間に介挿され上記インバータの出力電圧を平滑化するものである
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
上記制御手段は、ゲインの異なる第1及び第2の制御器を有し、上記出力電流と上記目標電流との差が上記第1の制御器または上記第2の制御器にて増幅されるものであり、
上記ゲイン変更手段は、上記第1の制御器と上記第2の制御器とを切り替えることにより上記制御手段のゲインを変更するものである
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記第1及び第2の制御器は、それぞれ積分手段を有し、上記積分手段は上記出力電流と上記目標電流との差を積分するものであり、
上記ゲイン変更手段は、積分手段内容同一化手段を有し、上記積分手段内容同一化手段は上記第1の制御器と上記第2の制御器とを切り替える際上記積分手段の内容を上記各制御器で同一とするものである
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記ゲイン変更手段は、上記高調波電流の大きさが所定値を越えたとき上記制御手段のゲインを変更するものである
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
上記高調波電流検出手段は、上記出力電流が流れる導電部の温度を検出する温度検出装置を有し、上記温度を介して上記高調波電流を検出するものである
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記ゲイン変更手段は、上記温度が一定値を越えたとき上記制御手段のゲインを変更するものである
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上記ゲイン変更手段は、外部からのゲイン変更信号により上記制御手段のゲインを変更可能にされたものである
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項1】
インバータと出力電流制御装置とを備えた電力変換装置であって、
上記インバータは、直流を交流に変換して交流系統へ出力電流を出力するものであり、
上記出力電流制御装置は、高調波電流検出手段と制御手段と電流制御指令手段とゲイン変更手段とを有し、
上記高調波電流検出手段は、上記出力電流に含まれる高調波電流を検出するものであり、
上記制御手段は、上記出力電流と目標電流との差を増幅して電流偏差として出力するものであり、
上記電流制御指令手段は、上記電流偏差に基づいて上記出力電流を制御する電流制御指令信号を上記インバータへ発信するものであり、
上記ゲイン変更手段は、上記高調波電流の大きさに基づいて上記制御手段のゲインを変更するものである
電力変換装置。
【請求項2】
フィルタ装置を有するものであって、
上記フィルタ装置は、上記インバータと上記交流系統との間に介挿され上記インバータの出力電圧を平滑化するものである
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
上記制御手段は、ゲインの異なる第1及び第2の制御器を有し、上記出力電流と上記目標電流との差が上記第1の制御器または上記第2の制御器にて増幅されるものであり、
上記ゲイン変更手段は、上記第1の制御器と上記第2の制御器とを切り替えることにより上記制御手段のゲインを変更するものである
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
上記第1及び第2の制御器は、それぞれ積分手段を有し、上記積分手段は上記出力電流と上記目標電流との差を積分するものであり、
上記ゲイン変更手段は、積分手段内容同一化手段を有し、上記積分手段内容同一化手段は上記第1の制御器と上記第2の制御器とを切り替える際上記積分手段の内容を上記各制御器で同一とするものである
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
上記ゲイン変更手段は、上記高調波電流の大きさが所定値を越えたとき上記制御手段のゲインを変更するものである
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
上記高調波電流検出手段は、上記出力電流が流れる導電部の温度を検出する温度検出装置を有し、上記温度を介して上記高調波電流を検出するものである
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
上記ゲイン変更手段は、上記温度が一定値を越えたとき上記制御手段のゲインを変更するものである
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
上記ゲイン変更手段は、外部からのゲイン変更信号により上記制御手段のゲインを変更可能にされたものである
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−253835(P2012−253835A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122090(P2011−122090)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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