説明

電力系統監視制御システム及び情報管理方法

【課題】電力系統監視制御システムにおいて、システム全体として情報の管理及びメンテナンスを容易にし、下位局の現場機器と上位局の制御監視システムの同期がとりやすいようにする。
【解決手段】監視制御システム10と各変電所33間で情報コード70と番号情報80をペアで管理することにより、伝送ポジション一元管理を実現する。具体的には、変電所33内の該当設備又は機器に情報コード70と番号情報80からなる固定情報を割り当て、その固定情報に対応する設備・機器の状態(運用中又は停止状態)を示す情報83を監視制御システム10と各変電所33間でやり取りすることにより実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統監視制御システム及び情報管理方法に関し、特に、変電所設備や変電所内のさまざまな機器をシステム全体で一元管理する電力系統監視制御システム及び一元管理のための情報管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電力系統監視制御システムは、より的確な制御を行うため詳細なデータを計算機に入力して運用するので、計算機システムの導入が進み、そのシステム規模は、ますます大規模化、複雑化している。
【0003】
例えば、電力系統監視制御システムにおいては、例えば、中央給電所、系統給電所、給電制御所、電気所(変電所)、・・・というように電力系統を複数のブロックに分割して階層化し、いずれかのブロックに配置された設備や機器などをブロックごとに監視するシステムが採用されており、各ブロック毎に構築された計算機システムが個別に設備・機器データを管理している。そのため、各システム間で情報の連携を行う場合、システム間で共通に電力系統の電気所、設備、機器を認識するためのコード、例えばいわゆる伝送ポジション(チャネル、ワード、ビット)などを使用している。この伝送ポジションを構成するチャネル、ワード、ビットの組み合わせにより、電力系統内のすべての設備・機器を特定できるようになっている。
【0004】
従来の電力系統監視制御システムの構成例を、図5に示す。この図5に示す例は、IPプロトコルで情報伝送が行われるIPネットワーク網100に、複数の変電所(電力系統)を集中して監視及び制御する監視制御システム(例えば、給電制御所)110と、変電所130と変電所150が接続された構成である。
【0005】
監視制御システム110は、例えば、情報入出力サーバ115、メンテナンス用サーバ116、監視制御用サーバ117、システム制御用サーバ118、周辺機器情報サーバ120、指令卓PCサーバ119a,119bの各種サーバを備え、各サーバはオンライン情報LAN113及び/又はオフライン情報LAN114に接続されている。情報入出力サーバ115及びメンテナンス用サーバ116が、入出力情報LAN112を介して監視制御ルーター111に接続され、監視制御ルーター111を介してIPネットワーク網100と接続している。また、周辺機器情報サーバ120は、周辺機器情報LAN121を介して系統監視盤122、プリンタ123と接続している。
【0006】
変電所130は、所内に変電所内情報LAN132が敷設されており、この変電所内情報LAN132にIP−TC(Internet Protocol−Tele-Control;所謂IPテレコン装置)子局133,143が接続されている。IP−TC133,143は各ブロック毎に構築されたシステムの設備データを管理する装置であり、変電所内情報LAN132を介して変電所ルーター131に接続され、IPネットワーク網100と通信可能に構成されている。
【0007】
接点入出力装置134は、IP−TC133と制御盤・保護盤135a,135b間で所定の接点入出力を行う装置である。IP−TC133は、上記接点入出力装置143に入力された制御盤・保護盤135a,135bや変電所内機器136aの情報を、IPネットワーク網100経由で監視制御システム110に伝送するとともに、監視制御システム110から伝送される制御指令により、制御盤・保護盤135a,135bを介して変電所内機器136a,136bを制御している。
【0008】
また、IP−TC143は、LANインターフェース144を経由してパーソナルコンピュータからなる制御PC145a,145bに接続され、この制御PC145a,145bによって、直接又はリレー146a,146bを介して変電所内機器147a,147bが制御される。変電所150も同様の構成より形成されている。
【0009】
図5に示されるように、従来の電力系統監視制御システムでは、状態を把握する計算機(サーバ)と機器制御を行う計算機(サーバ)を分けて(機器制御を統括する目的でTC親局として分離)設置している。これにより、複数変電所内の情報を一括管理し、上位計算機システムへと情報を連携するための変換を行っている。このTC親局及び上位計算機システムのデータベースの管理は前述の如く、システム毎に別管理であり、また、人間系による管理表ベースでのポジション管理が行われている。
【0010】
電力系統を構成する一つの設備・機器に対して、上記コードを用いて、送信側システム(監視制御システム110)と受信側システム(変電所130,150)双方が同一の電力系統内における一つの設備・機器を認識できるようにしている。
【0011】
このようなポジション管理の例として、例えば、電力系統を監視制御する電力系統監視制御装置とその電力系統設備情報生成装置に関するもので、膨大な量のデータ入力に伴う入力間違い等に対処するため、電力系統設備間の関連を表す情報を入力したデータから自動生成するとともに、人が入力したデータを自動チェックする装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)すなわち、この装置では、前記自動生成や自動チェックを可能とするための設備コードを用いるが、この設備コードは、電力系統の個々の設備をその電力系統の構成に沿って階層的に特定するコード化方式に基づいて作成される。したがって、人が系統設備間の関連を表す情報を入力する必要がなくなるとともに、その情報を記憶するための記憶手段も不要とすることができる。
【0012】
また、変電所監視制御システムにおけるデータの入力方法に関するものであって、従来、一旦ポジション番号データを入力した後において、開閉器やリレーの変更がないにもかかわらず、制御システム側でポジション番号の変更を大量に必要としていたという問題があり、これに対処するため、開閉器及びリレーデータと、テレコンポジションデータ及び開閉器・リレーに関係するその他のデータとを分離して独立にデータ入力する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)このデータの入力方法によれば、変電所設備の変更無しにテレコン伝送系だけの変更を行う場合、ポジションテーブルのテレコン番号、ワード番号、及びビット番号に対応する開閉器、リレーの定義変更を行えばよいものとなり、データの変更を簡易に行うことができるとともに、変電所監視システムの保守管理の作業性が向上する。
【特許文献1】特開2001−251763号公報
【特許文献2】特開平6−296326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したような従来の技術は、電力系統を構成する設備・機器のレベルまでの情報伝達であり、設備及び機器を特定するためにコードを使用しても、対象とする設備及び機器の数が増大すると、当該設備・機器を特定するための情報量が膨大となって、システム全体としてさまざまな支障を来たしていた。すなわち、電力系統を監視制御する計算機システムにおいては、より下位の系統レベルまで制御対象が広がるので、複数の計算機システムを対象として、システム間で協調を取りながら運用する必要があった。この場合、複数の計算機システム全体を考慮して情報の連携を行おうとすると、それぞれのシステムに設置される設備・機器を特定するコード関連の情報量が膨大となり、既存の伝送路の許容情報量を超えてしまうという問題がある。このため、伝送路の負荷が増大する弊害や伝送遅れによる情報伝達遅延が生じ、これに伴って系統事故時の復旧の遅れなどの悪影響が問題となっていた。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、情報連携方式を統一することによって情報量を少なくするとともに、伝送負荷の低減及び伝送速度の迅速性を確保することにより、より迅速に電力系統の状況変化を監視員へ提供することを目的とする。
また、現状機器を制御するために設置されているTC親局とその伝送装置を廃止し、上位計算機システムと変電所を直接ネットワーク網で連携し、ネットワーク網を介して上位計算機システムが直接制御指令を発して機器を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、電力系統を構成する複数のブロック毎に配置された設備及び機器を監視制御するものであって、電力系統の設備・機器をその電力系統の構成に基づきコード化した情報コードと、電力系統のブロック毎の設備・機器を連続番号で採番した番号情報からなる固定情報を記憶する固定情報記憶手段と、固定情報を基に、電力系統の当該設備・機器の状態を監視制御するための演算を行い制御情報を生成する制御手段と、制御情報を通信網に送信する通信手段とを備える監視制御装置と、通信網に接続可能な通信手段と、電力系統を構成する設備・機器と、情報コード及び番号情報からなる固定情報を記憶する設備・機器記憶手段と、監視制御装置からの制御情報に基づいて設備・機器を制御する設備・機器制御手段とを備える設備・機器管理装置とから構成されるシステムを構築する。
【0016】
上述発明の好適な実施の形態の例として、上記情報コードは、電力系統を分割した単位を示す領域分割コード、変電所を示す変電所コード、設備種別を示す設備コード、設備の号機を示す号機コード、設備認識のための拡張コード、機器を識別する機器コードから構成し、上記番号情報は、変電所番号、当該変電所内の設備・機器を連続番号で示した変電所内連番から構成するようにする。
【0017】
斯かる本発明によれば、電力系統の構成に基づき割り当てられた情報コード、変電所及び機器連番を採用することにより、上位の監視制御装置と下位の設備・機器管理装置との間で情報連携方式が統一化され、その結果、情報を一元化して取り扱うことができる。したがって、例えば各変電所内の電力系統の設備・機器をシステム間で共通の認識とすることができる。また、上記通信網として例えばIPプロトコル転送可能なものを採用することにより、従来機器を制御するために設置されているTC親局とその伝送装置を廃止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上位計算機システムのデータベース管理と各変電所の各種設備・機器に関する情報を管理する計算機を監視制御システム内に設置するので、情報の一元管理が実現されるとともに、きめ細かな保守情報の把握が実現できるという効果がある。
【0019】
さらに、設備・機器管理装置に情報提供手段を設けることにより、これまでデータベースの交換でしかできなかったオンライン情報の取り込みを現場と同期をとって自動で行うことができるようになるという効果がある。
【0020】
また、伝送路の大容量化にともなって増大するオンライン伝送の情報量に対し、伝送すべき情報量を低減することができ、伝送負荷の低減及びそれによる伝送速度の迅速性が確保されることにより、より迅速に電力系統の状況変化を監視員へ提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態の例について、図1〜図4を参照しながら説明する。近年、電力系統監視制御システムは、より的確な制御を行うため、詳細なデータを計算機に入力し、運用を行うため、計算機システムの導入が進んでいる。また、計算機システム間は、IPネットワーク網で接続され、そのネットワーク機器の高性能化、伝送路の大容量化、低価格化の実現により、ネットワーク技術基盤が整備されつつある。本例はこのような背景を踏まえ、今後IPネットワーク化が一層加速されることが予想される電力系統監視制御システムの構成例を考慮し、システム全体がネットワークで接続され大規模化されることによる制御情報データベースの一元管理について規定する。
【0022】
図1は本発明の一実施の形態の例の電力系統監視制御システム構成例を示した図である。本例では、IPプロトコルで情報伝送が行われ二重化処理されているIPネットワーク網(通信網)1に、例えば給電制御所のような複数の変電所(電力系統)を集中して監視及び制御する監視制御システム(監視制御装置)10と、変電所(設備・危機管理装置)30及び50が接続される。すなわち、監視制御システムと変電所側に設置される変電所情報サーバがIPネットワーク網を介して接続され、変電所側の情報サーバの配下に制御機器が接続された構成となっている。監視制御システム10において、各変電所の設備及び機器状態を監視するとともに、監視結果に応じて、変電所に対し制御指令を送出し、電力系統を監視制御している。
【0023】
変電所内の構成は、IPv6(Internet Protocol Version 6)の採用により、機器単位に設けられたチップに1つのIPアドレスが割り当てられる。これにより、複数の変電所を統括していたTC親局や伝送装置が不要となり、変電所情報サーバでIPアドレスから変電所内連番に単純に変換されることにより、情報連携が行われる。なお、図1に示す例は一例であり、監視制御システム内構成、変電所数、所内設備構成等、この例に限るものではない。
【0024】
監視制御システム10は、例えば、情報入出力サーバ(制御手段)15、メンテナンス用サーバ(固定情報記憶手段)16、監視制御用サーバ17、システム制御用サーバ18、周辺機器情報サーバ20、指令卓PCサーバ19a,19b(以上、制御手段)の各種サーバを備える。所内には、リアルタイム情報が伝送されるオンライン情報LAN13と、オフラインで使用されるオフライン情報LAN14が敷設されている。オンライン情報LAN13には、情報入出力サーバ15、メンテナンス用サーバ16、監視制御用サーバ17、システム制御用サーバ18、周辺機器情報サーバ20が接続される。また、オフライン情報LAN14には、メンテナンス用サーバ16、監視制御用サーバ17、システム制御用サーバ18、周辺機器情報サーバ20、パーソナルコンピュータからなる指令卓PCサーバ19a,19bが接続される。また、周辺機器情報サーバ20は、周辺機器情報LAN21を介して系統監視盤22、プリンタ23と接続している。
【0025】
そして、情報入出力サーバ15及びメンテナンス用サーバ16が、入出力情報LAN12を介して監視制御ルーター(通信手段)11に接続され、監視制御ルーター11を介してIPネットワーク網1と接続している。
【0026】
監視制御システム10における情報入出力サーバ15は、IPネットワーク網1を介して複数の変電所と情報通信を行うためのサーバであり、メンテナンス用サーバ16は後述する情報コード及び番号情報をキー情報とするマスターデータベースへの入力及び修正を行うためのサーバである。監視制御用サーバ17は、電力系統の監視及び制御を管理しているサーバである。システム制御用サーバ18は、各サーバの運用状態(停止中/運用中)を管理するためのサーバである。上記監視制御用サーバ17で把握した情報が例えば指令卓PCサーバ19a,19bに送られてモニターに表示され、監視員は、このモニターの表示画面を見ながら、系統状態を把握するとともに、変電所への制御指令を発するようにしている。
【0027】
また、系統監視盤22は電力系統の主要情報を表示する機器であり、監視制御用サーバ17や指令卓PCサーバ19a,19bが全停止した場合でも主要な電力系統の情報が表示できるようになっている。この系統監視盤22とプリンタ23等の周辺機器は周辺機器情報サーバ20により管理される。
【0028】
変電所30(変電所50も同様の構成)には、変電所情報サーバ(設備・機器記憶手段、設備・機器制御手段)33と、各変電所内機器35a,35b,35cとそれぞれシリアル伝送を行う機能統合端末(設備・機器制御手段)36a,36b,36cが設けられており、IPプロトコルでの情報伝送可能な変電所内情報LAN34により接続されている。変電所情報サーバ33は、LANインターフェース32及び変電所ルーター(通信手段)31を介して、IPネットワーク網1に接続されている。
【0029】
この変電所情報サーバ33は、変電所内の情報管理を行うとともに、IPネットワーク網1を通して監視制御システム10との情報伝送を行う。また、機能統合端末35a,35b,35cは、変電所情報サーバ33よりの指示に基づき複数の機器を集中監視及び制御する。例えば、変電所情報サーバ33が監視制御システム10からの制御情報を受信し、変電所内情報LAN34を経由して、機能統合端末35a等に送信する。そして、機能統合端末35aを通じ上記制御情報内容に沿って制御対象とする変電所内機器36aが制御される。
【0030】
また、変電所30は情報提供端末(情報提供手段)37を備えており、例えば監視員が情報提供端末37を操作して現地機器/設備の運用状態(運用中/停止中)等を設定すると、その設定内容を表すフラグ情報が監視制御システム10に送られるようになっている。
【0031】
なお、図1に示されるIPネットワーク網1、監視制御システム10側及び各変電所側のルーター31,51は二重化されている。また、本例の情報コード及び番号情報をキー情報とするマスターデータベースが格納されたメンテナンス用サーバ16も二重化されている。
【0032】
図2は、上位の監視制御システムと下位の変電所情報サーバとで情報コードを用いて行われる情報のやり取りに関する説明に供する図である。図2(A)は、上位局の監視制御システム10、広域IPネットワーク網1、下位局の変電所情報サーバ33、変電所内IPネットワーク網(変電所内情報LAN)34、端局の変電所内機器36a,36b,36cを階層構成で表した図である。図2(B)は、上記監視制御システム10、変電所情報サーバ33及び変電所内機器36a,36b,36cとの間でやり取りされる情報の構成を示した図である。
【0033】
図2(B)に示される情報コード70は、監視制御システム10及び変電所情報サーバ33で互いに認識可能な統一化されたデータベースのキー情報であり、電力系統全体を分割したコードが割り付けられた領域分割コード71、各変電所を示す変電所コード72、各変電所内にある主変圧器、調相器、引き出し口等の設備種別単位に割り付けられた設備コード73、該当する設備が何号機かを示す号機コード74、設備認識のための拡張コード75、及び例えば日本電機工業規格JEM1090に基づく、開閉器種別、43SW種別、リレー種別、TM(テレメータ)種別等を識別する機器コード76から構成される。このようにコードを割り付けることにより、人にとって視認性が良く、管理しやすいコード構成としている。
【0034】
また、情報コード70と対(ペア)で管理される番号情報80は、情報コード70と同様、監視制御システム10、変電所情報サーバ33で互いに認識可能な統一化されたデータベースのキー情報であり、変電所番号81と当該変電所内の設備機器を連番(変電所内連番82)で表現したものである。さらに番号情報80に付加されるフラグ83は、設備・機器が運用中か停止中かの運用状態を示す情報である。
【0035】
本システムでは、上記情報コード70及び番号情報80を固定情報、フラグ83を可変情報として処理する。メンテナンス用サーバ16で固定情報を管理し、他のサーバでは、固定情報と可変情報を監視し、その監視結果に応じて所定の制御を行うようにしている。
【0036】
上述の情報コード及び番号情報の適用例について、図2(A)に示す階層構成と関連付けて説明する。まず、上位の監視制御システム10において、これらの情報コード70と番号情報80をキー情報とするデータベースを作成し、メンテナンス用サーバ16に格納する。そして、広域IPネットワーク網1を経由して、作成したデータベースを変電所情報サーバ33に配信する。下位の変電所情報サーバ33では、IPネットワーク網1より情報コード70及び番号情報80をキー情報とするデータベースを受信し、上位局(監視制御システム10)と下位局(変電所情報サーバ33)でデータベースを一元化する。
【0037】
データベースを変更する必要が発生した場合は、監視制御システム10で、例えばメンテナンス用サーバ16を操作してデータベースを変更した後、メンテナンス用サーバ16より変電所情報サーバ33に変更情報を配信する。なお、図2(A)における上位局の監視制御システムから下位局の変電所情報サーバへのデータベースの配信は、管理下にある全変電所の変電所情報サーバに対し行われる。
【0038】
下位の変電所情報サーバ33では、変電所内機器36a,36b,36cの機器の運用/停止状態を表す情報を、番号情報80にフラグ83を付加して監視制御システム10に送信する。監視制御システム10は、広域IPネットワーク網1を介して受信した番号情報80に付加されたフラグ状態により、監視制御システム10の処理を変更する。例えば、フラグ状態により、機器の制御が必要とされた場合、監視制御システム10から機器制御情報を発信し、これを受信した変電所情報サーバ33は、変電所内の制御対象機器に対し機器制御情報に基づく制御を行う。
【0039】
また、図2(B)に示されるように、情報コード70の中に、領域分割コード71、変電所コード72、設備コード73、号機コード74、拡張コード75、機器コード76が含まれているが、この機器コード76を除いた各コードを利用して、変電所設備・機器が保有する定格値、インピーダンス等の固有情報を変電所情報サーバにアップロードし、情報コード70とペアで上位の監視制御システム10に伝送している。そして、この伝送された情報を蓄積し、運用中の設備の保守情報として一元的に管理するようにしている。これにより、電気所固有情報の一元管理が可能となる。
【0040】
次に、オンラインの自動認識合わせについて説明する。図2(B)の番号情報80に付加されるフラグ83により、設備・機器の運用状態を把握することが可能になる。その動作について、図3を参照しながら説明する。
【0041】
まず、図2を用いて説明したように、監視制御システム10において、情報コード70と番号情報80をキー情報(固定情報)とするデータベースを作成し、監視制御システム10内の各サーバ、例えば情報入出力サーバ15、監視制御用サーバ17、指令卓PCサーバ19a,19b、周辺機器情報サーバ20に配信する(S1)。同時に、IPネットワーク網1を介して、作成したデータベースを下位局の各変電所の変電所情報サーバ、図3の例では変電所情報サーバ33に配信し(S2)、上位局と下位局のデータベースを統一しておく。
【0042】
ある設備・機器について番号情報に付加されたフラグ83が“0”(運用中)の場合は、その設備・機器は監視制御システム10、及びその管理下にあるすべての変電所情報サーバから運用中(オンライン状態)として認識される。
【0043】
一方、フラグ83が“1”(停止中)の場合は、その設備・機器は監視制御システム10の中で未運用中(オフライン状態)の設備・機器として認識される。例えば変電所内に設備・機器を追設した場合、監視制御システム10のメンテナンス用サーバ16のマスターデータベースにその設備・機器のレコードを追加するが、このとき初期値としてフラグ“1”が与えられ、各サーバに認識される。この場合において、変電所情報サーバ33内では、試験中の設備・機器として扱われ、変電所内において試験ができる状態として認識されるようになっている。
【0044】
フラグ83が“1”(停止中)とされた該当設備・機器を運用中として認識させるためには、監視員が情報提供端末37(図1参照)を操作して、当該設備・機器36aを指定し、上位の監視制御システム10に対し運用開始のタイミングで認識合わせの指示を行う(S3)。そのようにすると、変電所情報サーバ33から、自動認識合わせ情報、すなわち情報コード70とフラグ83を運用中とした番号情報80が監視制御システム10の情報入出力サーバ15を経由して各サーバに送られる。
【0045】
各サーバでは、変電所情報サーバ33から送られた自動認識合わせ情報を受信すると、該当する設備・機器36aの情報を情報コードで識別し、ペアで持つ番号情報80に付加されたフラグ83を“0”(運用中)に落として正式な番号情報として認識し、各サーバ内のデータベースを更新する。この動作により、監視制御システム10内では、当該設備・機器36aを運用中(オンライン状態)として認識する。
【0046】
つまり、情報コード70及びフラグ83が付加された番号情報80を受信した監視制御システム10側で、該当する設備・機器を識別し、番号情報80に付加されたフラグ83を運用中(オンライン)として認識する。このように、監視制御システム10において作成されたデータベースの番号情報80は、監視制御システム10や複数の変電所内の各設備・機器において連携されて用いられる。これにより、監視制御システム10と変電所情報サーバ間、及び変電所情報サーバと変電所内設備・機器間のいずれにおいても番号情報をベースに情報連携が実現され、したがって、情報連携方式が番号情報80によって統一化される。
【0047】
上述のフラグ83は、例えば、設備・機器の運用開始時期と同期をとる場合などに有効に利用することができる。図4を参照して、設備・機器の運用開始時期との同期をとる具体例を説明する。図4は、変電所内設備の一例を示すものである。
【0048】
図4に示す変電所30において、発電所60で発電された電力を送電しているV甲母線とV乙母線、V甲母線とV乙母線に得られる電圧を変圧してV甲母線とV乙母線に接続するトランスTR1,TR2、V甲母線とV乙母線より得られた電力を送電する送電線1Lと送電線2Lより構成される。トランスTR1とTR2の一次側及び二次側には、それぞれ遮断器CB11とCB12、CB21とCB22が設置されている。また、V甲母線,V乙母線と送電線1L,送電線2Lの間には、それぞれ遮断器CB111とCB211が設置されている。さらに、V乙母線には、遮断器CB212を介して設備が追加される。なお、この設備構成は模式的に表したものであって、実際の変電所の設備構成とは異なる。
【0049】
図4に示されるV乙母線に設置された遮断器CB212の下流に設備・機器を設置する場合を考える。現状、遮断器CB212が開(停止中)であれば、母線(電力系統)から遮断されるので、CB212以下の設備・機器の追設工事及び試運転等を安全に行える。当該設備・機器は遮断器CB212が開であるので、電力系統監視制御システムにおける統一データベースの遮断器CB212及び該当設備・機器は停止中と認識され、フラグ情報はともに“1”である。
【0050】
次に、追設した設備・機器の試運転を行った結果、良好であれば次段階として本運用に入る。監視員は遮断器CB212を閉とし、遮断器CB212以下に設けられた設備・機器を稼動させるとともに、情報提供端末37を操作して、変電所情報サーバ33に対し運用開始指示S3(図3参照)を発信する。そして、変電所情報サーバ33から監視制御システム10に、当該設備・機器を特定する情報コード70及び番号情報80(固定情報)と、運用中(=0)とするフラグ83(可変情報)が送信される。したがって、変電所内設備・機器の運用と同時に監視制御システム10のデータベースの更新が行われるので、上位局と下位局間で、設備・機器の運用開始時期と同期をとることができる。勿論、設備・機器を運用中から停止中とする際にも同様の方式を適用して、同じ効果が得られる。
【0051】
上述した実施の形態の例によれば、監視制御システムと変電所の設備・機器の間で番号情報を採用しているので、従来のIP−TC等の伝送装置で必要としていた、チャネル番号、ワード番号、ビット番号の認識が不要となる。さらに、この情報コード体系を導入することにより、上位の監視制御システムのデータベースメンテナンス機能によってすべてのサーバ内データベースのメンテナンス入力が行われ、かつ、この情報コードと番号情報がペアで付与されることにより、現場機器の運用開始と同期をとった状態で電力系統状態を把握することができるようになる。また、このような情報コード体系を採用することにより、伝送ポジションの集中管理が可能となる。
【0052】
さらに、監視制御システムと変電所情報サーバは、オンライン運転を継続的に行いながら、それぞれの変電所に属する設備・機器のフラグ情報のオフラインからオンラインへの移行を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態である監視制御システムと変電所情報サーバの接続構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態の例で用いられる情報コード体系と番号情報の適用例を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態の例の説明に供する図である。
【図4】本発明の一実施の形態の例の説明に供する図である。
【図5】従来の電力系統監視制御システムの一例の構成図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・IPネットワーク網、10・・・監視制御システム、15・・・情報入出力サーバ、16・・・メンテナンス用サーバ、17・・・監視制御用サーバ、19a,19b・・・指令卓PCサーバ、20・・・周辺機器情報サーバ、30,50・・・変電所、33・・・変電所情報サーバ、34・・・変電所内情報LAN、36a,36b,36c・・・変電所内機器(設備)、70・・・情報コード、71・・・領域分割コード、72・・・変電所コード、73・・・設備コード、74・・・号機コード、75・・・拡張コード、76・・・機器コード、80・・・番号情報、81・・・変電所番号、82・・・変電所内連番、83・・・フラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統を構成する複数のブロック毎に配置された設備、機器を監視制御する電力系統監視制御システムであって、
前記電力系統の設備、機器を前記電力系統の構成に基づきコード化した情報コードと、前記電力系統のブロック毎の設備、機器を所定の規則に従い採番した番号情報からなる固定情報を記憶する固定情報記憶手段と、前記固定情報を基に、前記電力系統の当該設備、機器の状態を監視制御するための演算を行い制御情報を生成する制御手段と、前記制御情報を通信網に送信する通信手段とを備える監視制御装置と、
前記通信網に接続可能な通信手段と、前記情報コード及び前記番号情報からなる固定情報を記憶する設備機器記憶手段と、前記監視制御装置からの前記制御情報に基づいて管理下にある前記設備、機器を制御する設備機器制御手段とを備える設備機器管理装置と
から構成される電力系統監視制御システム。
【請求項2】
前記情報コードは、電力系統を分割した単位を示す領域分割コード、変電所を示す変電所コード、設備種別を示す設備コード、設備の号機を示す号機コード、設備認識のための拡張コード、機器を識別する機器コードから構成され、
前記番号情報は、変電所番号、当該変電所内の設備、機器を連続番号で示した変電所内連番から構成される
ことを特徴とする請求項1記載の電力系統監視制御システム。
【請求項3】
前記番号情報に前記設備、機器の状態を表すフラグ情報を付加するとともに、
前記設備機器管理装置に情報提供手段を設け、
前記設備機器管理装置の任意の設備、機器の運用状態を変更した場合、操作指示により前記情報提供手段から前記設備機器記憶手段に運用状態変更情報を送信し、前記設備機器記憶手段が前記監視制御装置に対して前記固定情報に加え対応するフラグ情報を付加して送信する
ことを特徴とする請求項1記載の電力系統監視制御システム。
【請求項4】
前記情報コードの領域分割コード、変電所コード、設備コード、号機コード、拡張コードから得られる、前記設備機器管理装置が管理する当該設備、機器の固有情報を、前記設備機器管理装置から前記監視制御装置に対し送信する
ことを特徴とする請求項2記載の電力系統監視制御システム。
【請求項5】
電力系統を構成する複数のブロック毎に配置された設備及び機器を一元的に監視制御するための情報管理方法であって、
監視制御装置において、前記電力系統の設備、機器を前記電力系統の構成に基づきコード化した情報コードと、前記電力系統のブロック毎の設備、機器を所定の規則に従い採番した番号情報からなる固定情報を記憶し、
前記固定情報を、通信網を介して設備機器管理装置に送信し、
前記設備機器管理装置において、前記情報コードと前記番号情報からなる前記固定情報を受信して記憶する
ことを特徴とする情報管理方法。
【請求項6】
前記情報コードは、電力系統を分割した単位を示す領域分割コード、変電所を示す変電所コード、設備種別を示す設備コード、設備の号機を示す号機コード、設備認識のための拡張コード、機器を識別する機器コードから構成され、
前記番号情報は、変電所番号、当該変電所内の設備、機器を連続番号で示した変電所内連番から構成される
ことを特徴とする請求項5記載の情報管理方法。
【請求項7】
前記番号情報に前記設備、機器の状態を表すフラグ情報を付加し、
前記設備機器管理装置の任意の設備、機器の運用状態を変更した場合、前記設備機器管理装置に設けられた情報提供手段への操作指示により、前記情報提供手段から前記設備機器記憶手段に運用状態変更情報を送信し、
前記設備機器記憶手段が前記監視制御装置に対して前記固定情報に加え対応するフラグ情報を付加して送信する
ことを特徴とする請求項5記載の情報管理方法。
【請求項8】
前記情報コードの領域分割コード、変電所コード、設備コード、号機コード、拡張コードから得られる、前記設備機器管理装置が管理する当該設備、機器の固有情報を、前記設備機器管理装置から前記監視制御装置に対し送信する
ことを特徴とする請求項6記載の情報管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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