説明

電力系統管理システム及び電力系統の管理方法

【課題】多数の分散型電源が連系された電力系統において、電圧逸脱の発生をできるだけ回避しつつ、電圧逸脱が発生した場合でも分散型電源による発電量抑制を低減できる電力系統管理システム及び電力系統の管理方法を提供する。
【解決手段】電圧計により各配電フィーダ線の需要家の受電電圧をそれぞれ測定する。制御装置は、測定された電圧測定値を収集し、最も高い電圧値である第1電圧と最も低い電圧値である第2電圧の差が予め設定されたしきい値よりも小さい場合、第1電圧が予め設定された上限値を超えない範囲で最も高くなるように配電用変圧器に送り出し電圧を変更させ、第1電圧と第2電圧の差がしきい値よりも大きい場合、第2電圧が予め設定された下限値よりも低くならない範囲で最も低くなるように配電用変圧器に送り出し電圧を変更させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多数の分散型電源が連系された電力系統を管理するための電力系統管理システム及び電力系統の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電用変電所に設置された配電用変圧器からの出力電圧(送り出し電圧)は、需要家の受電電圧が適正範囲内(日本の場合、標準電圧100Vに対しては101±6V以内、標準電圧200Vに対しては202±20V以内)に収まるようにしつつ、配電線損失を低減するために高めの電圧に設定する必要がある。
【0003】
従来、各需要家へ電力を供給するための配電フィーダ線には負荷のみが接続されており、配電フィーダ線毎の電力消費量を比較的精度よく予測することが可能である。そのため、これまでは事前に作成された計画にしたがって配電用変電所に設置された配電用変圧器(送電用変電所と配電用変電所の間の送電線電圧22〜154kVを、配電用変電所から配電フィーダ線へ送り出す電圧、例えば6、6kVに変換する変圧器)からの送り出し電圧を決定する方法が採用されてきた。この方法では、事前に予測された、所定の単位時間(例えば30分間)毎の電力消費量から配電フィーダ線毎の電圧分布を推定し、各需要家の受電電圧が適正範囲内にあり、かつ比較的高めの送り出し電圧が決定される。送り出し電圧を比較的高めにする理由は、配電フィーダ線の電圧を上げる事で配電線損失を低減するためである。
【0004】
しかしながら、再生可能電源に代表される分散型電源が普及し、該分散型電源から電力系統に電力が供給されるようになると、上記方法では電圧逸脱を回避できなくなる。分散型電源が大量に連系された配電フィーダ線では、負荷のみ連系された、もしくは少量の分散形電源のみしか連系していない、従来の配電フィーダ線と比べて配電電圧が高電圧側に移動する。配電用変圧器の同一のタップに対して、分散型電源が大量に連系された配電フィーダ線と、従来の配電フィーダ線とが混在して接続されると、同一の配電用変圧器に連系した全配電フィーダ線の中での最高電圧と最低電圧の差が大きくなり、上述した送り出し電圧の調整方法では全ての需要家の受電電圧を適正範囲内に収めることができなくなる。
【0005】
この電圧逸脱の発生を考慮して、分散型電源の動作を制御するPCS(Power Conditioning System)には、電圧上昇を抑制するための「電圧上昇抑制機能」を搭載することが義務付けられている(非特許文献1参照)。
【0006】
電圧上昇抑制機能とは、PCSにより配電電圧を監視し、配電電圧が高電圧側へ逸脱しそうなとき、無効電力制御または発電量抑制により電圧上昇を抑制する機能である。無効電力制御とは、出力電力の力率を調整することで電圧上昇を緩和する技術であり、発電量抑制は分散型電源による発電(有効電力)量自体を低減する技術である。
【0007】
図6は、背景技術の電力系統の構成例を示すブロック図である。
【0008】
図6は、配電用変電所の配電用変圧器100から分岐された複数の配電フィーダ線のうち、配電フィーダ線Aに、負荷(L)120のみ備えた需要家が柱上変圧器110を介して連系され、配電フィーダ線Bに、負荷120及び分散型電源(例えば多数の太陽光発電(PV:Photovoltaic)システム)130を備えた需要家が柱上変圧器110を介して連系された電力系統の構成例を示している。なお、図6では、各柱上変圧器110に低圧配電線を介して一戸の需要家のみ接続された構成例を示しているが、現実の柱上変圧器110には複数の需要家が連系される。
【0009】
柱上変圧器110は、配電用変圧器100から出力された電圧(例えば、6.6kV)を標準電圧100Vまたは標準電圧200Vに降圧し、低圧配電線を介して各需要家に供給する。
【0010】
負荷120は、需要家が備える、電力を消費する各種電気機器である。
【0011】
PVシステム130は、PVパネル及び該PVパネルで発電された直流電力を電力系統へ供給するための交流電力に変換するPCSを備えている。
【0012】
図7は、図6に示した配電フィーダ線A及び配電フィーダ線Bに関し、PCSにより電圧上昇抑制を実施した場合と電圧上昇抑制を実施しない場合の各需要家の受電電圧(標準電圧100V)の分布例を示している。図7に示すグラフの縦軸は、配電フィーダ線における配電電圧を、需要家の受電点における配電電圧に換算した値(低圧換算)で示している。
【0013】
図6に示した配電フィーダ線Aでは、負荷120のみ備える需要家が接続されているため、図7に示すように線路インピーダンスによって末端に近づく(配電用変圧器から離れる)ほど、配電電圧が低下する。
【0014】
一方、図6に示した配電フィーダ線Bでは、PVシステム130を備える需要家が接続されているため、末端に近づく(配電用変圧器から離れる)ほど、配電電圧が上昇する。図7の点線で示す配電フィーダ線Bの電圧分布は、電圧上昇抑制を実施しない場合の様子を示し、図7の実線で示す配電フィーダ線Bの電圧分布は、各PCSで電圧上昇抑制を実施した場合の様子を示している。
【0015】
図7に示すように、背景技術の電力系統管理システムでは、配電フィーダ線Aで示したような分散型電源が無い配電フィーダ線を想定しているため、配電線損失が小さくなるよう、高めの配電電圧に設定される。その結果、再生可能電源が多数連系された配電フィーダ線Bでは、連系された各PVシステム130が電圧上昇抑制を実施しない場合、配電電圧が適正範囲の上限値である107Vを超えてしまう。このような配電電圧が適正値から逸脱するのを防止するため、実際にはPVシステム130が備えるPCSの電圧上昇抑制機能が作動して、図7の実線で示す配電フィーダ線Bの電圧分布のように配電電圧が107Vを超えることはない。しかしながら、PCSによる無効電力制御だけでは電圧逸脱を回避できないケースが多いため、各PCSで発電量抑制が作動してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】社団法人日本電気協会、系統連系専門部会編、「系統連系規程 JEAC9701−2006」、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
一般に、太陽光発電(PV)等の再生可能電源の多くは発電量を自由に制御できる構成ではなく、例えばPVパネルは、光エネルギーを電力へ変換する変換効率を意図的に低下させることで発電量を抑制(発電量抑制)する。発電量の抑制は、再生可能電源を、その発電能力以下で動作させることであり、再生可能電源における発電量抑制はせっかく発電した電力を廃棄することに等しく、持続可能な社会を実現するために導入するPVシステム等の再生可能電源の利用方法として効率的ではない。
【0018】
無効電力制御や発電量抑制等に代わって分散型電源で発電された電力を蓄電池等に蓄積することで電圧上昇を抑制する方法も考えられるが、その場合でもインバータの変換効率や蓄電池の内部放電等により、少なく見積もっても5%程度の充放電損失が生じる。
【0019】
したがって、分散型電源が普及すると、配電電圧が適正範囲から逸脱する電圧逸脱問題が発生し、それを回避しようとすると有効活用できない電力が増えるという課題が生じる。よって、多数の分散型電源が連系される電力系統では、電圧逸脱の発生をできるだけ回避しつつ、電圧逸脱が発生した場合でも分散型電源による発電量抑制を低減できることが望ましい。
【0020】
本発明は上述したような背景技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、多数の分散型電源が連系された電力系統において、電圧逸脱の発生をできるだけ回避しつつ、電圧逸脱が発生した場合でも分散型電源による発電量抑制を低減できる電力系統管理システム及び電力系統の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため本発明の電力系統管理システムは、送り出し電圧が外部からの指示にしたがって変更可能な配電用変圧器と、
前記配電用変圧器から需要家に電力を供給する配電フィーダ線に連系される分散型電源と、
前記配電フィーダ線の任意の位置の電圧を測定する複数の電圧計と、
前記電圧計で測定された電圧測定値を収集し、収集された電圧測定値のうち、最も高い電圧値を第1電圧とし、最も低い電圧値を第2電圧としたとき、前記第1電圧と前記第2電圧の差が予め設定されたしきい値よりも小さい場合、前記第1電圧が予め設定された上限値を超えない範囲で最も高くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させ、前記第1電圧と前記第2電圧の差が前記しきい値よりも大きい場合、前記第2電圧が予め設定された下限値よりも低くならない範囲で最も低くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させる制御装置と、
を有する。
【0022】
一方、本発明の電力系統の管理方法は、送り出し電圧が外部からの指示にしたがって変更可能な配電用変圧器と、
前記配電用変圧器から需要家に電力を供給する配電フィーダ線に連系される分散型電源と、
を有する電力系統の電力系統の管理方法であって、
前記配電フィーダ線の任意の位置に取り付けられた電圧計で、前記配電フィーダ線の電圧を測定し、
コンピュータが、
前記電圧計で測定された電圧測定値を収集し、
収集された電圧測定値のうち、最も高い電圧値を第1電圧とし、最も低い電圧値を第2電圧としたとき、前記第1電圧と前記第2電圧の差が予め設定されたしきい値よりも小さい場合、前記第1電圧が予め設定された上限値を超えない範囲で最も高くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させ、
前記第1電圧と前記第2電圧の差が前記しきい値よりも大きい場合、前記第2電圧が予め設定された下限値よりも低くならない範囲で最も低くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させる方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多数の分散型電源が連系された電力系統において、電圧逸脱の発生をできるだけ回避しつつ、電圧逸脱が発生した場合でも分散型電源による発電量抑制を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の電力系統管理システムの一構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示した制御装置の一構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示した電力系統において、配線フィーダ線の最も高い電圧と最も低い電圧との差が適正範囲内にある場合の電圧分布の一例を示すグラフである。
【図4】図1に示した電力系統において、配線フィーダ線の最も高い電圧と最も低い電圧との差が適正範囲を超える場合の電圧分布の一例を示すグラフである。
【図5−1】本発明の電力系統の管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5−2】本発明の電力系統の管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5−3】本発明の電力系統の管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】背景技術の電力系統の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6に示した電力系統において、電圧上昇抑制を実施した場合と電圧上昇抑制を実施しない場合の配線フィーダ線毎の電圧分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明について図面を用いて説明する。
【0026】
本実施形態の電力系統管理システムでは、配電用変圧器の同一のタップに接続された各配電フィーダ線の配電電圧を監視し、
(1)収集された電圧測定値のうち、最も高い電圧値を第1電圧とし、最も低い電圧値を第2電圧としたとき、第1電圧と第2電圧の差が予め設定されたしきい値よりも小さい場合、第1電圧が予め設定された上限値を超えない範囲で最も高くなるように配電用変圧器の送り出し電圧を設定する。
(2)第1電圧と第2電圧の差が上記しきい値よりも大きい場合、第2電圧が予め設定された下限値よりも低くならない範囲で最も低くなるように配電用変圧器の送り出し電圧を設定する。
【0027】
このように配電用変圧器の送り出し電圧を制御することで、電圧逸脱の発生をできるだけ回避しつつ、電圧逸脱が発生した場合でも分散型電源による発電量抑制を低減して、経済的に無駄の少ない高効率な電力系統管理システムを実現する。
【0028】
図1は、本発明の電力系統管理システムの一構成例を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、本発明の電力系統管理システムは、図6に示した電力系統に、各需要家の受電電圧を測定する電圧計(V)140をそれぞれ追加し、さらにPVシステムを備えた需要家に蓄電システム(B)150を追加した構成である。また、本発明の電力系統管理システムは、電圧計140、PVシステム130、負荷(L)120のうちの一部及び蓄電システム150の動作を制御すると共に、配電用変圧器100による送り出し電圧を制御する制御装置200を有する構成である。制御装置200と、電圧計140、PVシステム130、負荷120、蓄電システム150及び配電用変圧器100とは、周知の通信手段を介して情報の送受信が可能に接続される。その他の構成は、図6に示した電力系統と同様である。
【0030】
なお、図1に示す電力系統は、本発明の特徴を説明するために例示した構成であり、各配電フィーダ線には、PVシステム130や蓄電システム150を備えた需要家、負荷120及び電圧計140のみ備える需要家が混在して連系されていてもよい。また、PVシステム130を備える需要家は、必ずしも蓄電システム150を備えていなくてもよい。図1では、各柱上変圧器110に一戸の需要家のみ接続された構成例を示しているが、現実の柱上変圧器110には複数の需要家が連系される。
【0031】
電圧計140は、需要家の受電電圧を測定する機器であり、需要家の受電電圧を計測する計測手段、並びに計測した電圧を制御装置200へ通知するための通信手段をそれぞれ備えている。電圧計140は、図1に示すように各需要家の受電点の近傍に取り付けるだけでなく、例えば柱上変圧器110の近傍や配電フィーダ線の任意の位置に取り付けてもよい。また、電圧計140は、PVシステム130等が有するPCSに内蔵されていてもよい。電圧計140を配電フィーダ線の任意の位置に取り付ける場合、該電圧計140には計測した電圧(例えば6.6kV)を需要家の受電電圧に換算(低圧換算)する機能を備えていてもよい。電圧計140は、配電フィーダ線における柱上変圧器110の近傍、配電フィーダ線におけるSVR(Step Voltage Regulator)の近傍、配電フィーダ線の末端、分散型電源の連系点等のように、電圧逸脱が発生しやすい箇所に接続することが特に好ましい。
【0032】
PVシステム130は、PVパネル、該PVパネルで発電された直流電力を電力系統に適した交流電力に変換するPCS及び外部と情報を送受信するための通信手段を備えている。PCSは、上記無効電力制御または発電量抑制により電圧上昇を抑制する電圧上昇抑制機能を有し、制御装置200の指示にしたがって該電圧上昇抑制機能を動作させる。
【0033】
図1では、全てのPVシステム130が通信手段を有する構成例を示しているが、PVシステム130には通信手段を持たない構成もある。本実施形態では、通信手段を持たないPVシステム130は制御対象から除外する。また、図1では、分散型電源として需要家が備えるPVシステム130を例示しているが、分散型電源は、風力発電等の他の発電設備でもよい。また、分散型電源は、需要家が備える装置に限定されるものではなく、事業者等により配電フィーダ線や低圧配電線に直接連系されていてもよい。上記無効電力制御は、PVシステム130が備えるPCSに限らず、例えば通信手段を有する燃料電池、電気自動車、蓄電システム150等が備えるPCSでも実施可能である。
【0034】
負荷120は、需要家が備える、電力を消費する各種電気機器である。負荷120には、制御装置200からの指示にしたがって電力消費量が制御可能な可制御負荷が含まれる。可制御負荷は、需要家が備える各種負荷120のうち、需要家が許可した負荷であり、該可制御負荷は通信手段を介して制御装置200により稼働/停止を制御できる。可制御負荷は、ある一定の時間内に一定時間稼働すればよく、また需要家の意思と関係なく稼働/停止されても需要家の利便性が損なわれない機器が望ましい。そのような可制御負荷としては、例えばエア・コンディショナー、ヒートポンプ給湯器、冷蔵庫等の温度差によってエネルギーを蓄積する機器、ノート型のパーソナルコンピュータ、電気自動車、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)等の蓄電池を内蔵している電気機器、あるいは洗濯機や食器洗い機等がある。
【0035】
蓄電システム150は、不図示の蓄電池、PCS及び通信手段を備え、制御装置200の指示にしたがって電力系統と電力のやりとりが可能な構成である。図1では、蓄電システム150が需要家に設置された構成例を示しているが、蓄電システム150は、電力系統の運用者等により配電フィーダ線や低圧配電線に直接接続されていてもよい。蓄電システム150は、上記電圧計140と同様に、配電フィーダ線の末端、柱上変圧器110のタップ近傍、SVR近傍等の電圧逸脱が発生しやすい箇所に設置することが望ましい。蓄電池には、リチウムイオン蓄電池、ナトリウム硫黄蓄電池、ニッケル水素電池等が用いられる。蓄電システム150のPCSがPVシステム130と同様に無効電力制御が可能な構成の場合、該PCSは制御装置200の指示にしたがって無効電力を出力してもよい。なお、蓄電システム150は、上記可制御負荷と同様に制御装置200からの指示にしたがって電力消費量の制御が可能であるため、負荷120の一部と見なすこともできる。
【0036】
制御装置200は、処理装置及び通信手段を備え、通信手段を介して電圧計140で測定された電圧測定値、並びに各PCSによるPVパネルや蓄電池、ヒートポンプ給湯器等の制御状態に関する情報(例えば、PVパネルの発電量や無効電力量、蓄電池の充電量、ヒートポンプ給湯器の貯湯量など、各機器を用いて電圧上昇抑制制御を行う余地を知る上で必要な情報)を収集し、PCS及び配電用変圧器100へ制御指示を送信する。制御装置200は、各電圧計140から収集した電圧測定値に基づいて、電力系統における電圧計140が取り付けられていない位置の電圧を推測してもよい。
【0037】
制御装置200は、例えば図2に示すようなコンピュータによって実現できる。図2に示すコンピュータは、プログラムにしたがって所定の処理を実行する処理装置10と、処理装置10に対してコマンドや情報等を入力するための入力装置20と、処理装置10の処理結果を出力するための出力装置30とを有する構成である。
【0038】
処理装置10は、CPU11と、CPU11の処理で必要な情報を一時的に保持する主記憶装置12と、CPU11に本発明の電力系統の管理方法を実行させるためのプログラムが記録された記録媒体13と、電力系統に関する情報、電圧計140から通知される電圧測定値、上記低圧換算に必要な係数等が格納されるデータ蓄積装置14と、主記憶装置12、記録媒体13およびデータ蓄積装置14とのデータ転送を制御するメモリ制御インタフェース部15と、入力装置20および出力装置30とのインタフェース装置であるI/Oインタフェース部16と、電圧計140、PVシステム130、負荷120、蓄電システム150及び配電用変圧器100と情報を送受信するための通信制御装置17とを備え、それらがバス18を介して接続された構成である。
【0039】
処理装置10は、記録媒体13に記録されたプログラムにしたがって、後述する制御装置200としての処理を実行する。記録媒体13は、磁気ディスク、半導体メモリ、光ディスクあるいはその他の記録媒体であってもよい。データ蓄積装置14は、処理装置10内に備える必要はなく、独立した装置であってもよい。制御装置200が備える通信制御装置17と、電圧計140、PVシステム130、負荷120、蓄電システム150及び配電用変圧器100との通信を可能にする通信手段としては、光ファイバー、電力線、インターネット等を利用した周知の有線通信手段、あるいはZigBee、Wi−Fi等の周知の無線通信手段等がある。
【0040】
次に本発明の電力系統の管理方法について図面を用いて説明する。
【0041】
図3は、図1に示した電力系統において、配線フィーダ線の最も高い電圧と最も低い電圧との差が適正範囲内にある場合の電圧分布の一例を示すグラフであり、図4は、図1に示した電力系統において、配線フィーダ線の最も高い電圧と最も低い電圧との差が適正範囲を超える場合の電圧分布の一例を示すグラフである。
【0042】
本実施形態の制御装置200は、各電圧計140から通知される電圧測定値に基づいて、例えば、配電用変圧器100の同一のタップに接続された複数の配電フィーダ線のうち、最も低い電圧の受電点を有する配電フィーダ線を配電フィーダ線Aに設定し、最も高い電圧の受電点を有する配電フィーダ線を配電フィーダ線Bに設定する。
【0043】
そして、上記最も高い電圧(第1電圧)をVMAXとし、最も低い電圧(第2電圧)をVMINとしたとき、VMAX−VMINをしきい値ΔVと比較し、VMAX−VMIN<ΔVであるか、VMAX−VMIN≧ΔVであるかに応じて、以下に記載する制御を実施する。なお、しきい値ΔVは、予め設定された目標電圧範囲の上限値VULと下限値VLLの差(VUL−VLL)である。目標電圧範囲は、例えば法規上の配電電圧の適正範囲(日本の場合、標準電圧100Vに対しては101±6V以内、標準電圧200Vに対しては202±20V以内)、あるいはそれよりも狭い範囲である。すなわち、上限値VULは、上記法規上の適正範囲の上限電圧またはそれよりも低い電圧であり、下限値VLLは、上記法規上の適正範囲の下限電圧またはそれよりも高い電圧である。
【0044】
MAX−VMIN<ΔVの場合、図3に示すように、制御装置200は、上記VMAXが、目標電圧範囲内であり、かつ予め設定された目標電圧範囲の上限値VULに近い値となるように、配電用変圧器100に対して配電フィーダ線A、Bが接続されるタップを変更するよう指示する(変更後の配電用変圧器100を状態Aとする)。このとき、図3に示すように、配電電圧の急激な変動に備えて、上限値VULは法規上の配電電圧の適正範囲の上限電圧よりもわずかに低い電圧に設定してもよい。例えば、法規上の配電電圧の適正範囲が101V±6Vの場合、1Vの余裕を持たせて上限値VULを106Vに設定する、または0.5Vの余裕を持たせて106.5Vに設定する、などが考えられる。
【0045】
一方、VMAX−VMIN≧ΔVの場合、図4に示すように、制御装置200は、上記VMINが、目標電圧範囲内であり、かつ予め設定された目標電圧範囲の下限値VLLに近い値となるように、配電用変圧器100に対して配電フィーダ線A、Bが接続されるタップを変更するよう指示する(変更後の配電用変圧器100を状態Bとする)。このとき、図4に示すように、配電電圧の急激な変動に備えて、下限値VLLは法規上の配電電圧の適正範囲の下限電圧よりもわずかに高い電圧に設定してもよい。例えば、法規上の配電電圧の適正範囲が101V±6Vの場合、1Vの余裕を持たせて下限値VLLを96Vに設定する、または0.5Vの余裕をもたせて95.5Vに設定する、などが考えられる。
【0046】
状態Bにおいて、配電用変圧器100のタップを変更した後も電圧逸脱が解消しない場合、制御装置200は、配電電圧を監視して電圧逸脱が解消するまで、配電フィーダ線Bに連系された需要家の負荷120内の可制御負荷、蓄電システム150、PVシステム130等の各種電力コンポーネントに対して電圧上昇抑制を指示する。
【0047】
電力コンポーネントによる電圧上昇抑制には、以下のa〜cの手法がある。
【0048】
a.配電フィーダ線に連系された各PCSに対して進相無効電力制御を行う。
【0049】
b.需要家の持つ可制御負荷を動作させて電力消費量を増大させる。
【0050】
c.分散型電源による発電量を抑制する。
【0051】
電圧上昇を抑制するための制御a〜cのうち、電圧上昇抑制の効果に対する、電力の無駄が少ない順に、電圧上昇抑制を行うことで、電力の無駄を最小化することができる。制御a〜cにより生じる電力の無駄は、一般に制御aまたは制御bが比較的少なく、制御cが多い。よって、制御aまたはbを先に実施し、それでも配電電圧が上記上限値を超える場合は制御cを実施する。この方法により制御a、bを実施する余地がある状態で制御cを先に実施する場合と比較して無駄を低減できる。
【0052】
さらに、制御a、bについても無駄の量が多い方を先に実施することで、より無駄を低減することが可能である。上記制御aにおいて生じる無駄は配電線損失である。上記制御bによって生じる無駄は、本来必ずしも現在動かす必要がない装置を稼働させることで生じると考えられる無駄であるが、これは装置に種類による。一般の家庭電化製品(電灯、テレビジョン受像機等)を稼働させた場合、元々稼働していない以上は、稼働させても誰も利用せず無駄になる可能性が高い。一方で、ある一定の時間内に一定時間稼働すればよく、また稼働/停止が需要家の意思と関係なく行われても需要家の利便性が損なわれない機器(電気自動車、ヒートポンプ給湯器等)の場合、無駄は少ない。例えば、本来の充電予定よりも早く電気自動車に充電を行ったとしても、僅かに自然放電により生じる無駄がある程度である。上記制御cにおいて生じる無駄は、発電可能であった電力を発電しない、つまり電気を捨てる無駄である。多くの場合、制御a、b、cの順に生じる電力の無駄は大きくなるため、以下ではそのような前提に基づいて本発明について説明する。
【0053】
電圧逸脱が発生した場合、まず配電フィーダ線Bに連系されたPVシステム130や蓄電システム150が備えるPCSにより、無効電力量を増大させて電圧上昇を抑制する。無効電力制御は、PCSの空き容量を使用し、かつ力率が制限値(例えば、非特許文献1によると力率が0.85)以上である範囲内で実施する。力率が0.85以下になる、またはPCSの有効電力の絶対量(PVシステムのPCSなら発電量、蓄電システムのPCSなら充放電量)を低下させないと無効電力量を増加させることができなくなったら、無効電力量が上限に到達したとして、次の電圧上昇抑制の手法を行う。
【0054】
無効電力量が上限に到達しても電圧逸脱が解消されない場合、配電フィーダ線Bに連系された負荷120のうち、需要家が制御装置200による稼働/停止制御を許可した可制御負荷を稼働させる、または蓄電システム150に充電させることで電力消費量を増大させて電圧上昇を抑制する。
【0055】
可制御負荷、または蓄電システム150による電力消費量の増大でも電圧逸脱が解消されない場合、PVシステム130等の分散型電源の発電量を抑制させる。
【0056】
なお、電圧上昇抑制は、上記制御a(無効電力制御)、b(負荷による電力消費量の増加)、c(分散型電源の発電量抑制)の順に行う必要はなく、制御b、a、cの順に行ってもよく、制御a、cの順に行ってもよく、制御b、cの順に行ってもよい。すなわち、少なくとも制御aまたはbのいずれか一方を行った後、それでも電圧逸脱が解消されない場合に制御cを行えばよい。
【0057】
図5−1、5−2及び5−3は、本発明の電力系統の管理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0058】
図5−1は、電圧逸脱が発生した場合に上記制御a,b,cを順次実施することで、電圧上昇を抑制する例を示している。図5−2は電圧逸脱が発生した場合に電圧上昇を抑制するために上記制御aのみを実施する例を示し、図5−3は電圧逸脱が発生した場合に電圧上昇を抑制するために上記制御bのみを実施する例を示している。なお、図5−1、5−2及び5−3では、同一の処理については、同一のステップ番号を付与している。
【0059】
図5−1に示す処理において、制御装置200は、まず配電用変圧器100の同一のタップに接続された配電フィーダ線が備える各電圧計140から電圧測定値を収集し、配電フィーダ線毎の電圧分布を取得する(ステップA1)。このとき、電圧計140からの電圧測定値の取得に失敗した場合、または電圧計140が設置されていない部位については、センサ付き開閉器等から電力の潮流量を取得する、各分散型電源からそれぞれの発電量を取得する、各需要家の電力量計から需要家毎の消費電力を取得する等の手法を利用して、電圧値を推定してもよい。
【0060】
なお、電圧計140による電圧測定値は、電圧逸脱が生じる時間をできだけ短縮したい場合には瞬時値を使用し、予め設定した所定時間(例えば30分間)における平均電圧が逸脱しなければよいと考える場合には該所定時間毎の平均値を使用してもよい。
【0061】
次に、制御装置200は、配電フィーダ線毎の電圧分布に基づき、全配電フィーダ線上で測定、または推定された電圧値の中での電圧から最も高い電圧VMAXと最も低い電圧VMINとを抽出し、その差(VMAX−VMIN)がしきい値ΔVよりも大きいか否かを判定する(ステップA2)。なお、しきい値ΔVは、予め設定された目標電圧範囲の上限値VULと下限値VLLの差(VUL−VLL)である。
【0062】
上限値VUL及び下限値VLLは、上述したように、法規上の電圧範囲に基づいて設定してもよく(標準電圧100Vの場合、VUL=107V、VLL=95V)、それらの値にそれぞれマージンを持たせた値に設定してもよい。
【0063】
MAX−VMINがVUL−VLLよりも小さい場合、制御装置200は、VMAXがVULを超えない範囲で、低圧換算した配電電圧が最も高くなるよう、配電フィーダ線が接続するタップを配電用変圧器100に変更させて、送り出し電圧を上昇させる(ステップA8)。配電フィーダ線の電圧を高めに設定する理由は、負荷の消費電力を一定とすると、配電フィーダ線の電圧が高い程流れる電流量が低下するため、配電線損失が低減され、電力の無駄を減少させることができるからである。その後、制御装置200は、ステップA1の処理に戻って、ステップA1からの処理を繰り返す。配電フィーダ線に対する配電用変圧器100のタップの接続を変更しなくてもよい場合、すなわち、VMAXがVULを超えない範囲で低圧換算した配電電圧が最も高くなるように、配電フィーダ線が配電用変圧器100に既に接続されている場合、制御装置200は、何も処理することなく、ステップA1の処理に戻って、ステップA1からの処理を繰り返す。
【0064】
一方、VMAX−VMINがVUL−VLLよりも大きい場合、制御装置200は、VMINがVLLよりも低くならない範囲で、低圧換算した配電電圧が最も低くなるよう、配電フィーダ線が配電用変圧器100に接続されているか否かを判定する(ステップA3)。
【0065】
MINがVLLよりも低くならない範囲で、配電電圧が最も低くなるよう、配電フィーダ線が配電用変圧器100に接続されている場合、制御装置200は、ステップA5の処理へ移行する。VMINがVLLよりも低くならない範囲で、配電電圧が最も低くなるよう、配電フィーダ線が配電用変圧器100に接続されていない場合、制御装置200は、ステップA9の処理へ移行する。
【0066】
ステップA9において、制御装置200は、VMINがVLLよりも低くならない範囲で、低圧換算した配電電圧が最も低くなるよう、配電フィーダ線が接続するタップを配電用変圧器100に変更させて、送り出し電圧を低下させる。その後、制御装置200は、ステップA1の処理に戻って、ステップA1からの処理を繰り返す。
【0067】
ステップA5において、制御装置200は、VMAXがVULを超える電圧逸脱を解消するために、電圧逸脱が発生している配電フィーダ線(配電フィーダ線B)に連系するPVシステム130や蓄電池システム150が備えるPCSで無効電力制御による無効電力量の増大が可能か否かを判定する。無効電力制御による無効電力量の増大が可能な場合、制御装置200は、該制御可能なPCSに無効電力制御による無効電力量を増大させ、電圧上昇を抑制する(ステップA11)。
【0068】
無効電力制御による無効電力量の増大が可能か否かは、例えば通信手段を介して各PCSに問い合わせればよい。なお、無効電力制御による無効電力量が増大すると、配電線損失が大きくなることが知られている。また、電圧上昇の抑制制御は電圧逸脱が発生している箇所で実施するのが最も効果が大きいことが知られている。したがって、無効電力制御による無効電力量の増大が可能な全てのPCSに無効電力制御による無効電力量を増大させてもよいが、電圧逸脱の発生した場所に対する電圧感度が高い位置に接続されたPCS、例えば電圧逸脱の発生位置近傍や電圧逸脱の発生位置よりも末端側(配電フィーダ線上において、配電用変圧器に対して電圧逸脱の発生位置よりも遠い位置)に接続されたPCSに無効電力制御による無効電力量の増大を優先的に指示すれば、無効電力量を低減でき、配電線損失の増大を抑制できる。
【0069】
各PCSで無効電力制御が実施できない場合、制御装置200は、電圧逸脱が発生している配電フィーダ線(配電フィーダ線B)に連系する、需要家が外部からの制御を許可した負荷120(可制御負荷を含む)が稼働しているか否かを判定する(ステップA6)。稼働していない制御可能な負荷120が有る場合は、それらの負荷120を稼働させる(ステップA12)。稼働できるか否かは、例えば通信手段を介して各負荷120に問い合わせればよい。なお、上述したように、電圧上昇抑制は、電圧逸脱が発生している箇所で実施するのが最も効果が大きいため、制御可能な負荷120を全て稼働させてもよいが、電圧逸脱の発生近傍に接続された負荷120を優先的に稼働させてもよい。
【0070】
制御可能な負荷120が無い、または制御可能な負荷120が既に全て動作している場合、制御装置200は、電圧逸脱が発生している配電フィーダ線(配電フィーダ線B)に連系する複数の蓄電システム150のうち、充電速度を増加させる、または放電速度を低下させることが可能な蓄電システム15の有無を判定する(ステップA7)。充電速度を増加させる、または放電速度を低下させることが可能な蓄電システム150が有る場合、制御装置200は、それらの蓄電システム150が備える蓄電池の充電速度を増加させる、または放電速度を低下させる(ステップA13)。充電速度を増加させる、または放電速度を低下させることが可能であるか否かは、例えば通信手段を介して各蓄電システム150に問い合わせればよい。なお、上述したように、電圧上昇抑制は、電圧逸脱が発生している箇所で実施するのが最も効果が大きいため、充電速度を増加させる、または放電速度を低下させることが可能な蓄電システム150を全て動作させてもよいが、電圧逸脱の発生近傍に接続された蓄電システム150を優先的に動作させてもよい。
【0071】
充電速度を増加させる、または放電速度を低下させることが可能な蓄電システム150が無い場合、制御装置200は、電圧逸脱が発生している地点の近傍に接続されたPCSに発電量を抑制させる(ステップA14)。
【0072】
図5−2に示す処理において、ステップA1〜A3、A5、並びにステップA8〜A9、A11の処理は、上述した図5−1で示した処理と同様である。図5−2に示す処理では、ステップA5において、制御装置200は、各PCSで無効電力制御が実施できない場合、ステップA1の処理へ戻って、ステップA1〜A3、A5、並びにステップA8〜A9、A11の処理を繰り返す。
【0073】
図5−3に示す処理において、ステップA1〜A3、並びにステップA8〜A9の処理は、上述した図5−1で示した処理と同様である。図5−3に示す処理では、ステップA3において、VMINがVLLよりも低くならない範囲で、配電電圧が最も低くなるよう、配電フィーダ線が配電用変圧器100に接続されている場合、制御装置200は、ステップA6の処理へ移行する。そして、図5−1で示した処理と同様に、ステップA6にて、需要家が外部からの制御を許可した負荷120(可制御負荷を含む)が稼働しているか否かを判定し、稼働していない制御可能な負荷120が有る場合は、それらの負荷120を稼働させる(ステップA12)。制御可能な負荷120が無い、または制御可能な負荷120が既に全て動作している場合、制御装置200は、電圧逸脱が発生している配電フィーダ線(配電フィーダ線B)に連系する複数の蓄電システム150のうち、充電速度を増加させる、または放電速度を低下させることが可能な蓄電システム15の有無を判定する(ステップA7)。充電速度を増加させる、または放電速度を低下させることが可能な蓄電システム150が有る場合、制御装置200は、それらの蓄電システム150が備える蓄電池の充電速度を増加させる、または放電速度を低下させる(ステップA13)。
【0074】
充電速度を増加させる、または放電速度を低下させることが可能な蓄電システム150が無い場合、制御装置200は、ステップA1の処理へ戻って、ステップA1〜A3、A6〜A7、並びにステップA8〜A9、A12〜A13の処理を繰り返す。
【0075】
本実施形態の電力系統管理システムによれば、配電用変圧器100の同一のタップに接続された各配電フィーダ線における最も高い第1電圧と最も低い第2電圧の差がしきい値(配電電圧の適正範囲の幅、またはその幅よりも狭い値)よりも小さい場合、第1電圧が上限値VULを超えない範囲で最も高くなるように配電用変圧器100の送り出し電圧を設定することで、配電用変圧器100による送り出し電圧の制御だけで電圧逸脱を回避できる。そのため、分散型電源による発電量抑制が不要になる。一方、第1電圧と第2電圧の差がしきい値よりも大きい場合、第2電圧が下限値VLLよりも低くならない範囲で最も低くなるように配電用変圧器100の送り出し電圧を設定すれば、配電フィーダ線における第1電圧(最も高い電圧)が法規上の配電電圧の適正範囲の上限電圧を超えるまでのマージンを最大限に確保できる。そのため、電圧逸脱の発生を抑制できる。また、電圧逸脱が発生した場合でも、無効電力制御及び負荷の増加により電圧上昇を抑制し、それでも電圧逸脱が回避できないときに分散型電源に発電量を抑制させるため、電圧逸脱が発生した場合でも分散型電源による発電量抑制を低減できる。
【0076】
よって、多数の分散型電源が連系された電力系統において、電圧逸脱の発生をできるだけ回避しつつ、電圧逸脱が発生した場合でも分散型電源による発電量抑制を低減できる。
【符号の説明】
【0077】
10 処理装置
11 CPU
12 主記憶装置
13 記録媒体
14 データ蓄積装置
15 メモリ制御インタフェース部
16 I/Oインタフェース部
17 通信制御装置
18 バス
100 配電用変圧器
110 柱上変圧器
120 負荷
130 PVシステム
140 電圧計
150 蓄電システム
200 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り出し電圧が外部からの指示にしたがって変更可能な配電用変圧器と、
前記配電用変圧器から需要家に電力を供給する配電フィーダ線に連系される分散型電源と、
前記配電フィーダ線の任意の位置の電圧を測定する複数の電圧計と、
前記電圧計で測定された電圧測定値を収集し、収集された電圧測定値のうち、最も高い電圧値を第1電圧とし、最も低い電圧値を第2電圧としたとき、前記第1電圧と前記第2電圧の差が予め設定されたしきい値よりも小さい場合、前記第1電圧が予め設定された上限値を超えない範囲で最も高くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させ、前記第1電圧と前記第2電圧の差が前記しきい値よりも大きい場合、前記第2電圧が予め設定された下限値よりも低くならない範囲で最も低くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させる制御装置と、
を有する電力系統管理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記需要家に供給される受電電圧が前記上限値よりも高くなる電圧逸脱を検出したとき、
(a)前記配電フィーダ線に連系された前記分散型電源に無効電力を出力させる、または、
(b)配電フィーダ線に連系される、外部から稼働/停止の制御が可能な電気機器である負荷による電力消費を増大させる、
の少なくともいずれか一方の制御を実施する請求項1記載の電力系統管理システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記需要家に供給される受電電圧が前記上限値よりも高くなる電圧逸脱を検出したとき、
(a)前記配電フィーダ線に連系された前記分散型電源に無効電力を出力させる、
(b)配電フィーダ線に連系される、外部から稼働/停止の制御が可能な電気機器である負荷による電力消費を増大させる、
(c)前記分散型電源に発電量を抑制させる、
制御を順次実施する請求項1記載の電力系統管理システム。
【請求項4】
前記しきい値は、法規上の配電電圧の適正範囲の幅よりも狭い値であり、
前記上限値は、前記適正範囲の上限電圧よりも低い電圧であり、
前記下限値は、前記適正範囲の下限電圧よりも高い電圧である請求項1から3のいずれか1項記載の電力系統管理システム。
【請求項5】
送り出し電圧が外部からの指示にしたがって変更可能な配電用変圧器と、
前記配電用変圧器から需要家に電力を供給する配電フィーダ線に連系される分散型電源と、
を有する電力系統の電力系統の管理方法であって、
前記配電フィーダ線の任意の位置に取り付けられた電圧計で、前記配電フィーダ線の電圧を測定し、
コンピュータが、
前記電圧計で測定された電圧測定値を収集し、
収集された電圧測定値のうち、最も高い電圧値を第1電圧とし、最も低い電圧値を第2電圧としたとき、前記第1電圧と前記第2電圧の差が予め設定されたしきい値よりも小さい場合、前記第1電圧が予め設定された上限値を超えない範囲で最も高くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させ、
前記第1電圧と前記第2電圧の差が前記しきい値よりも大きい場合、前記第2電圧が予め設定された下限値よりも低くならない範囲で最も低くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させる電力系統の管理方法。
【請求項6】
前記コンピュータが、
前記需要家に供給される受電電圧が前記上限値よりも高くなる電圧逸脱を検出したとき、
(a)前記配電フィーダ線に連系された前記分散型電源に無効電力を出力させる、または、
(b)配電フィーダ線に連系される、外部から稼働/停止の制御が可能な電気機器である負荷による電力消費を増大させる、
の少なくともいずれか一方の制御を実施する請求項5記載の電力系統の管理方法。
【請求項7】
前記コンピュータが、
前記需要家に供給される受電電圧が前記上限値よりも高くなる電圧逸脱を検出したとき、
(a)前記配電フィーダ線に連系された前記分散型電源に無効電力を出力させる、
(b)配電フィーダ線に連系される、外部から稼働/停止の制御が可能な電気機器である負荷による電力消費を増大させる、
(c)前記分散型電源に発電量を抑制させる、
制御を順次実施する請求項5記載の電力系統の管理方法。
【請求項8】
前記しきい値は、法規上の配電電圧の適正範囲の幅よりも狭い値であり、
前記上限値は、前記適正範囲の上限電圧よりも低い電圧であり、
前記下限値は、前記適正範囲の下限電圧よりも高い電圧である請求項5から7のいずれか1項記載の電力系統の管理方法。
【請求項9】
送り出し電圧が外部からの指示にしたがって変更可能な配電用変圧器と、
前記配電用変圧器から需要家に電力を供給する配電フィーダ線に連系される分散型電源と、
を有する電力系統を管理する制御装置であって、
前記配電フィーダ線の任意の位置に取り付けられた電圧計で測定された、前記配電フィーダ線の電圧である電圧測定値を収集し、収集された電圧測定値のうち、最も高い電圧値を第1電圧とし、最も低い電圧値を第2電圧としたとき、前記第1電圧と前記第2電圧の差が予め設定されたしきい値よりも小さい場合、前記第1電圧が予め設定された上限値を超えない範囲で最も高くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させ、前記第1電圧と前記第2電圧の差が前記しきい値よりも大きい場合、前記第2電圧が予め設定された下限値よりも低くならない範囲で最も低くなるように前記配電用変圧器に前記送り出し電圧を変更させる処理装置と、
前記配電用変圧器、前記分散型電源、前記電圧計と情報の送受信が可能に接続する通信手段と、
を有する制御装置。
【請求項10】
前記通信手段は、
前記配電フィーダ線に連系される、外部から稼働/停止の制御が可能な電気機器である負荷と情報の送受信が可能に接続され、
前記処理装置は、
前記需要家に供給される受電電圧が前記上限値よりも高くなる電圧逸脱を検出したとき、
(a)前記配電フィーダ線に連系された前記分散型電源に無効電力を出力させる、または、
(b)配電フィーダ線に連系される、外部から稼働/停止の制御が可能な電気機器である負荷による電力消費を増大させる、
の少なくともいずれか一方の制御を実施する請求項9記載の制御装置。
【請求項11】
前記通信手段は、
前記配電フィーダ線に連系される、外部から稼働/停止の制御が可能な電気機器である負荷と情報の送受信が可能に接続され、
前記処理装置は、
前記需要家に供給される受電電圧が前記上限値よりも高くなる電圧逸脱を検出したとき、
(a)前記配電フィーダ線に連系された前記分散型電源に無効電力を出力させる、
(b)配電フィーダ線に連系される、外部から稼働/停止の制御が可能な電気機器である負荷による電力消費を増大させる、
(c)前記分散型電源に発電量を抑制させる、
制御を順次実施する請求項9記載の制御装置。
【請求項12】
前記しきい値は、法規上の配電電圧の適正範囲の幅よりも狭い値であり、
前記上限値は、前記適正範囲の上限電圧よりも低い電圧であり、
前記下限値は、前記適正範囲の下限電圧よりも高い電圧である請求項9から11のいずれか1項記載の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図5−3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−249500(P2012−249500A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121868(P2011−121868)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】