説明

電動ピペット

本発明は、電動ピペットに関し、この電動ピペット1は、本体2、先端部4、フック部5、プッシュボタン部6、及び表示部7から構成される。本体2は、垂直軸3を有し、フック部5、プッシュボタン部6、及び表示部7からなる群から選択された少なくとも1つの部分が、電動ピペット1の垂直軸3の回りにそれぞれに対応する角度ψ1、ψ2、ψ3で回転可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ピペットに関する。より特定すると、本発明は、電動ピペットの人間工学的な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ピペットは、ある容器から他の容器に種々の液体を投与するために用いられる。この液体は、ピペットの先端部分の開口を介してピペット内に吸入される。ピペットは、シリンダピストンによってピストンを上方に移動させることにより、液体がピペットの先端容器に充填される。それゆえ、次にピストンを下方に移動させることによって、先端容器が空になる。ピペット(ピストン)は、手動または電気的に作動させることができる。実験室の作業者は、連続して繰り返し、投与作業を実行するので、作業者の手が緊張のため傷める結果を招くことがある。このことは、ピペットにおける操作上の人間工学に基づく強い要求を強いることになる。他の物との間において取扱い上の設計によって、ピペットの人間工学的な改良の努力がこれまでなされてきた。
【0003】
人間工学に関係した設計上の問題を解決するための解法が、多くの参考文献に開示されている。これらの参考文献に加えて、国際特許出願 WO02/00346A2は、改良された人間工学のために回転フックを含むピストル形式のハンドヘルド型ピペットを開示している。この国際特許出願のピペットにおいて、回転フックは、使用者の親指と人さし指との間の領域で支持され、ピペットの先端は、反対方向に向いている。このピペットは、ピストル形式のものであり、使用者側から見て、反対方向から人さし指上にピペットを支持する実際的なフックを含むものではなく、使用者は、自身の親指と人さし指の間の領域内でピペットを支えながらシフトすることができる。
【0004】
従来の電動ピペットは、ピペットを作業中、使用者の手で支持できるように意図されたフック部を有している。このフックは、通常、使用者の方向から見て前方に向けて人さし指または中指で支えられる。このフック部に加えて、電動ピペットは、液量の適応量を監視するための表示部と、所望の方向にシリンダピストンを移動させるためのプッシュボタン部とを有する。
【特許文献1】国際特許出願 WO02/00346A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(本発明の特徴)
本発明の目的は、使用によって生じる手の緊張障害を防止して、電動ピペットの作業が気楽に行えるように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の電動ピペットは、回転フック部、プッシュボタン部、表示部、または、上記回転部品との組み合せから構成されることを特徴としている。フック部は、使用者の人さし指または中指で支持され、使用者の方向から見て前側に向けられ、使用中ピペットを安定させる。このフック部は回転可能であるので、使用者の指上の最も楽な位置に適合して、使用の容易性を高めることができる。プッシュボタン部は、電動モータによってシリンダピストンを移動して、先端容器内に液体を吸入するために用いられる。プッシュボタン部の回転機能は、人間工学的にピペット内の最適な位置にプッシュボタン部が設けられている。表示部は、同時に先端容器内の液量を監視することができる。表示部の回転機能は、使用者の手の中でピペットを回転する必要がないように、使用時に、表示部を絶えず見えるようにする。
【0007】
本発明のピペットは、人間工学的に適合した改良を与えて、緊張傷害を減少させ。同一の電動ピペットの中で、複数の使用者に対して好みの選択をもたらすものである。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載の構成によって特徴付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(図面に示された複数のピペットのより詳細な説明)
以下の例示により、また、図面を参照して、本発明は、より詳細に説明される。
【0010】
図1は、電動ピペット1の側面から垂直に見た図である。この電動ピペット1は、垂直軸3を有する本体2、先端部4、フック部5、プッシュボタン部6、および表示部7から構成される。使用時には、プッシュボタン部6が使用者の人さし指によって操作され、フック部が使用者の中指に支持される。このフック部5は、使用中、電動ピペット1を安定および支持のために設けられる。このフック部は、多チャンネルピペットの場合に、手で扱うのが難しくなるので、特に重要なものである。プッシュボタン部6を押すことにより、使用者は電気モータによってシリンダピストンを作動させ、先端容器内の液量を制御する。同時に、同一の液量が表示部7で監視される。
【0011】
図2は、前側から垂直に見た図1の電動ピペット1を示す。「前側から垂直に見た」という表現は、その方向性を意味し、フック部5とプッシュボタン部6が従来の電動ピペットと同様であることを示し、これらの部分5,6,7は、本体2とともに一体化された固定ユニットを形成する。
【0012】
図3aは、前側から垂直に見た電動ピペットの一部側面図を示し、フック部5は、垂直軸3の回りを回転する。プッシュボタン部6と表示部7は、その位置を維持する。電動ピペット1の垂直軸回りにおけるフック部5の回転は、フック部の環状形状と、フック部とピペット本体2の両方に設けられた摺動面とによって可能となり、これらの特徴によって、フック部を回転させることができる。
【0013】
図3aに対応する図3bは、プッシュボタン部6を垂直軸3回りにどのようにシフトするかを示し、フック部5と表示部7がその位置を保持している。この場合、プッシュボタン部6は、上述の例において、フック部5の方向に対して反対の方向にシフトされる。これは、負の角度を形成する。電動ピペット1の垂直軸回りにおけるプッシュボタン部6の回転は、フック部の回転と同一の原理で与えられる。さらに、摺動面上に電気接点表面が設けられ、プッシュボタン部の位置にかかわらず、ピストンを移動する電気モータの駆動を可能にする。
【0014】
図3a、図3bに対応して、図3cは、フック部5およびプッシュボタン部7が、その位置に固定されたままで、表示部7が垂直軸3回りにどのようにシフトされるかを示すものである。表示部7の回転、すなわち、電気的に駆動される表示部の異なる位置への作動が、上記プッシュボタン部6の場合と同様に与えられる。
【0015】
図4は、下方から見た図で、電動ピペット1のフック部5が、前側から垂直に向いた位置から変位するように、角度ψ1だけ図3aの位置からシフトした状態を示している。表示部7とプッシュボタン部6は、前側に垂直に位置している。同様に、フック部5は、他の方向と同様に変位することができる。プッシュボタン部6は、角度ψ2の範囲で変位し、表示部7は、角度ψ3の範囲で変位することができる。これらの部分6,7は、反対方向に変位することができる。これらの3つの部分5,6,7の回転は、右利きおよび左利きの両方の人に対して電動ピペットの適用を可能にしている。さらに、これらの部分は、電動ピペット1のバランスに影響を与えるものであり、重量のある多チャンネルピペットの場合には、特に重要な特徴となる。
【0016】
回転可能な部分5,6,7は、すべて、360°回転可能になるように配置することができる。即ち、ピペットの本体2に対していかなる位置にも移動できる。便利な使用として、角度ψ1〜ψ3は、−90°〜+90°、好ましくは、−70°〜+70°、さらに、有利な場合には、−50°〜+50°の範囲に制限することができる。電動ピペット1は、3つの位置回転部分5,6,7の1つのみを垂直軸3の回りに回転可能にすることで実施できる。3つの位置回転部分の2つまたは3つの部分5,6,7の全てを、垂直軸3の回りに回転させることも可能である。
【0017】
図5は、表示部7の回転軸8がピペットの垂直軸3からどのように変位しているかを示している。この結果、表示部の回転は、使用差の好みにより、表示部の傾きを同時に調整することができる。回転軸3と回転軸8との間の角度αは、0〜60°、好ましくは、0〜50°、さらに好ましくは、0〜40°である。
【0018】
上述した図面は、複数の好ましい実施形態だけを説明するものであり、本発明を限定するものではない。本発明の好ましい実施形態は、添付する請求項によって定める保護範囲内に自由に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の電動ピペットを側面から見た図である。
【図2】図1の電動ピペットを前側から垂直に見た図である。
【図3】3a〜3cは、電動ピペットのフック部、プッシュボタン部、および表示部の各位置を交互にシフトされる電動ピペットの部分側面図である。
【図4】図3aの場合における下方から見た図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直軸(3)を有する本体(2)、先端部(4)、フック部(5)、プッシュボタン部(6)、及び表示部(7)とを含む電動ピペット(1)であって、
前記フック部(5)、プッシュボタン部(6)、及び表示部(7)からなる群から選択された少なくとも1つの部分が、前記電動ピペット(1)の垂直軸(3)の回りに回転可能であることを特徴する電動ピペット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの部分(5,6,7)は、0〜360°にわたって回転可能であることを特徴とする請求項1記載の電動ピペット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの部分の回転角度ψ1、ψ2、またはψ3が、−90°〜90°の範囲であることを特徴とする請求項1記載の電動ピペット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの角度ψ1、ψ2、またはψ3が、−70°〜70°の範囲であることを特徴とする請求項1記載の電動ピペット。
【請求項5】
前記少なくとも1つの角度ψ1、ψ2、またはψ3が、−50°〜50°の範囲であることを特徴とする請求項1記載の電動ピペット。
【請求項6】
前記表示部(7)の回転軸(8)が、さらに、前記電動ピペット(1)の垂直軸(3)に対して0〜60°の範囲内の角度αを有することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の電動ピペット。
【請求項7】
前記表示部(7)の回転軸(8)が、さらに、前記電動ピペット(1)の垂直軸(3)に対して0〜50°の範囲内の角度αを有することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の電動ピペット。
【請求項8】
前記表示部(7)の回転軸(8)が、さらに、前記電動ピペット(1)の垂直軸(3)に対して0〜40°の範囲内の角度αを有することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の電動ピペット。



【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−511359(P2007−511359A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540479(P2006−540479)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000675
【国際公開番号】WO2005/049208
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(501286093)サーモ エレクトロン オイ (13)
【Fターム(参考)】