説明

電動射出成形機の射出速度制御方式

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電動射出成形機の制御方式に関し、特に射出速度、圧力の制御方式に関する。
【0002】
【従来の技術】図3を参照して、ボールネジ、ナットによりサーボモータの回転運動を直動運動に変換して溶融樹脂の充填を行う射出成形機について説明する。図3において、射出用のサーボモータ1の回転はボールネジ2に伝えられる。ボールネジ2の回転により前後進するナット3はプレッシャプレート4に固定され、プレッシャプレート4はフレーム(図示せず)に固定されたガイドバー5,6上を移動自在に取り付けられている。プレッシャプレート4の前後進運動は、ベアリング7、ロードセル8を介してスクリュ10に伝えられる。
【0003】射出シリンダ11の中をスクリュ10が前進することにより、計量工程により貯えられた溶融樹脂を金型内に充填し、加圧することにより成形がおこなわれる。この時樹脂を押す力がロードセル8により反力として検出され、ロードセルアンプ12より増幅されてコントローラ15に入力される。プレッシャプレート4には、スクリュ10の移動量を検出するための位置検出器9が取り付けられており、この検出信号は増幅器13により増幅されてコントローラ15に入力される。コントローラ15は、オペレータの設定に応じて各々の工程に応じた電流(トルク)指令をサーボ駆動系14に出力し、サーボ駆動系14ではサーボモータ1の駆動電流を制御してサーボモータ1の出力トルクを制御するようになっている。
【0004】電動射出成形機におけるこれまでの射出速度、圧力の制御系、すなわち図3のサーボ駆動系14の一例を図4、図5を参照して説明する。図4を参照して、射出用のサーボモータ1の回転は、ボールネジとナットとの組み合わせによる変換機構で直線運動に変換される。ナットの前後進運動はプレッシャプレートを介して成形機本体30のスクリュに伝達される。
【0005】サーボモータ1の制御系は、PID補償等の機能を有し速度指令値を増幅してサーボモータ1の出力トルク指令値を出力する速度アンプ32、この速度アンプ32の出力に応じてサーボモータ1を駆動するモータドライバ33、サーボモータ1の速度を検出する速度検出器34、速度アンプ32の入力側で速度検出器34の出力と速度指令値との減算を行うように設けられた減算器35とを有して速度フィードバック制御系を構成している。なお、速度の検出は、速度検出器34の代わりに速度オブザーバ等により行われることもある。これは、モータに供給する電流と電圧の値からモータ速度を判定できるからである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図4のような制御系では、速度制御を行う場合に、樹脂の性質に起因した外乱負荷を受けた時には、これが速度検出器34の検出結果に反映されて、図5(a)に示すように、減算器35において速度指令値Vr と速度検出値Vf との間に、偏差が必要であった。図5(b)はロードセルで検出される圧力の変化を示す。
【0007】このような偏差は小さい方が望ましいことは言うまでもないが、これを小さくするために制御系のループゲイン、すなわち速度アンプ32のゲインを大きくすると制御系全体が不安定となってしまう。
【0008】このような問題点に鑑み、本発明の課題は、射出速度、圧力制御系における安定かつ高速応答性を実現することのできる電動射出成形機の射出速度制御方式を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、サーボモータによる駆動系を備えスクリュを前進させることにより溶融樹脂の充填を行い、前記サーボモータの速度制御系として、前記サーボモータの速度を検出する手段よりの速度検出値と速度指令値との偏差を速度アンプにより演算しサーボモータを駆動するモータドライバに供給し、該モータドライバで前記サーボモータを制御する速度フィードバック系を有する電動射出成形機において、前記スクリュの駆動系に樹脂圧力を検出するための圧力検出器を設け、この圧力検出器の検出信号を前記速度アンプと前記モータドライバとの間に設けた加算器により前記速度アンプよりの信号に加算し、前記モータドライバへの信号とすることを特徴とする電動射出成形機の射出速度制御方式が得られる。
【0010】なお、前記圧力検出器よりの信号は、前記スクリュの前進と後退とによりそれぞれゲインを切り換えて加算されることが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】図1を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1において、図3と同じ部分には同一番号を付している。本発明においては、成形機本体30のスクリュの駆動系、例えばプレッシャプレートとスクリュとの間の駆動力伝達部にロードセルによる圧力検出器21を設ける。この圧力検出器21は、スクリュにより溶融樹脂を金型内に充填、加圧する際の射出圧力を検出する。圧力検出器21の検出信号はアンプ22で増幅され、速度アンプ32とモータドライバ33との間に設けられた加算器23に入力される。加算器23は、速度アンプ32の出力とアンプ22の出力とを加算してモータドライバ33に供給する。
【0012】このようにして、速度アンプ32の出力であるサーボモータ1の出力トルク指令値にアンプ22の出力を加算してモータドライバ33に与える。
【0013】このように、検出圧力値を用いてモータドライバ33に対するトルク指令値を補正することにより、樹脂の外乱負荷を受けた場合でも、図2(a)に示すように、速度指令値Vr と速度検出値Vf との間の偏差無しで安定かつ高速応答性を実現することができる。図2(b)はロードセルで検出される圧力をボールネジ軸推力換算で示す。
【0014】なお、圧力検出器21よりの信号は、スクリュの前進と後退とによりそれぞれアンプ22のゲインを切り換えて加算されることが望ましい。すなわち、スクリュの前進、つまり圧力を上げる場合にはアンプ22のゲインをG1とし、スクリュの後退、つまり圧力を下げる場合にはアンプ22のゲインをG2(但し、G1>G2)とする。これらのゲインは、射出装置における駆動力伝達機構の伝達効率により決まる。
【0015】
【発明の効果】以上のように、サーボモータの速度を検出して速度フィードバック制御を行う制御系に、樹脂圧を検出してモータドライバ33に対するトルク指令値を補正することにより、樹脂の外乱負荷を受けた場合でも、速度指令値Vr と速度検出値Vf との間の偏差無しで安定かつ高速応答性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による射出速度、圧力制御系のブロック図である。
【図2】図2(a)は図1の制御系における速度指令値と速度検出値との時間変化を示した特性図、図2(b)は検出圧力の変化を換算値で示した特性図である。
【図3】射出装置の概略構成を説明するための図である。
【図4】従来の射出速度、圧力制御系のブロック図である。
【図5】図5(a)は図4の制御系における速度指令値と速度検出値との時間変化を示した特性図、図5(b)は検出圧力の変化を示した特性図である。
【符号の説明】
1 サーボモータ
21 圧力検出器
23 加算器
32 速度アンプ
34 速度検出器
35 減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 サーボモータによる駆動系を備えスクリュを前進させることにより溶融樹脂の充填を行い、前記サーボモータの速度制御系として、前記サーボモータの速度を検出する手段よりの速度検出値と速度指令値との偏差を速度アンプにより演算しサーボモータを駆動するモータドライバに供給し、該モータドライバで前記サーボモータを制御する速度フィードバック系を有する電動射出成形機において、前記スクリュの駆動系に樹脂圧力を検出するための圧力検出器を設け、この圧力検出器の検出信号を前記速度アンプと前記モータドライバとの間に設けた加算器により前記速度アンプよりの信号に加算し、前記モータドライバへの信号とすることを特徴とする電動射出成形機の射出速度制御方式。
【請求項2】 前記圧力検出器よりの信号は、前記スクリュの前進と後退とによりそれぞれゲインを切り換えて加算されることを特徴とする請求項1記載の電動射出成形機の射出速度制御方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3023539号(P3023539)
【登録日】平成12年1月21日(2000.1.21)
【発行日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−69680
【出願日】平成8年3月26日(1996.3.26)
【公開番号】特開平9−254207
【公開日】平成9年9月30日(1997.9.30)
【審査請求日】平成9年11月25日(1997.11.25)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【参考文献】
【文献】特開 平3−43227(JP,A)
【文献】特開 平7−308946(JP,A)
【文献】特開 平6−285938(JP,A)