説明

電動巻上下装置用電源装置

【課題】構成が簡単で短い周期で力行・回生が発生する場合でも、電気二重層キャパシタへの有効な蓄電・放電でき、容量の小さい電源ユニットから容量の大きい電動機に電力が供給され、機器の破壊や寿命を短縮させることのない電動巻上下装置用電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】交流電源16からの交流を整流器11、41、21で直流に変換し、直流回路12、42、22からインバータ14、41、21を介して横行用電動機15、走行用電動機45、及び昇降用電動機25に供給する複数の電源回路10、40、20を備え、各直流回路に共通の電気二重層キャパシタ17を接続し、各直流回路と電気二重層キャパシタを接続するラインLA、LB、LCに開閉器WA、WB、WCを設け、電源電圧VI=√2VAC、各直流回路の電圧V1,V2,V3、電気二重層キャパシタ17の電圧VEにより各開閉器の開閉を制御する制御部50を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上下装置用電源装置に関し、特に荷巻下時の昇降用電動機、及び横行・走行時の横行・走行用電動機が発電する回生電力を効率良く電気二重層キャパシタに蓄電でき省エネルギーに好適な電動巻上下装置用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、全産業分野において省エネルギー化が強く要望されている。電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上下装置においても、荷巻下時に昇降用電動機が発電する回生電力のみでなく、横行・走行時に荷振れによる短周期で発生する力行・回生の回生時の回生電力も蓄電することが要望されている。
【0003】
図1は従来のこの種の電動巻上下装置用電源装置の構成例を示す図である。図示するように、電動巻上下装置用電源装置は、横行用電源回路100と昇降用電源回路120を備えている。横行用電源回路100は、整流器101と、平滑コンデンサ103を備えた直流回路102と、インバータ104を備えている。そして交流電源106からの交流を整流器101で直流に変換し、直流回路102を介してインバータ104に供給し、該インバータ104で交流に変換して横行用電動機105に供給するように構成されている。また、昇降用電源回路120は、整流器121と、平滑コンデンサ123を備えた直流回路122と、インバータ124を備えている。そして交流電源106からの交流を整流器121で直流に変換し、直流回路122を介してインバータ124に供給し、該インバータ124で交流に変換して昇降用電動機125に供給するように構成されている。
【0004】
横行用電源回路100の直流回路102には、DC/DCコンバータ107と電気二重層キャパシタ108が接続されている。整流器101で変換された直流、及び横行用電動機105の回生電力をインバータ104で直流に変換してDC/DCコンバータ107を介して電気二重層キャパシタ108に蓄電すると共に、電気二重層キャパシタ108に蓄電された直流をDC/DCコンバータ107を介して直流回路102に放電し、該直流回路102からインバータ104を介して交流に変換し、横行用電動機105に供給している。
【0005】
昇降用電源回路120の直流回路122にはDC/DCコンバータ127と電気二重層キャパシタ128が接続されている。整流器121で変換された直流、及び昇降用電動機125の回生電力をインバータ124で直流に変換してDC/DCコンバータ127を介して電気二重層キャパシタ128に蓄電すると共に、電気二重層キャパシタ128に蓄電された直流をDC/DCコンバータ127を介して直流回路122に放電し、該直流回路122からインバータ124を介して交流に変換し、昇降用電動機125に供給している。
【0006】
また、横行用電源回路100の直流回路102には電圧を検出する電圧センサ109や電流センサ110を設け、その出力を制御回路111で監視し、横行用電動機105の回生時に電気二重層キャパシタ108が満充電の状態にある場合、制動トランジスタ112を導通させ、横行用電動機105からの回生電力を制動抵抗器113に流して消費し、電気二重層キャパシタ108の過充電を防止している。
【0007】
また、昇降用電源回路120の直流回路122にも電圧を検出する電圧センサ129や電流センサ130を設け、その出力を制御回路131で監視し、昇降用電動機125の回生時に電気二重層キャパシタ128が満充電の状態にある場合、制動トランジスタ132を導通させ、昇降用電動機125からの回生電力を制動抵抗器133に流して消費し、電気二重層キャパシタ128の過充電を防止している。
【特許文献1】特開平11−285165号公報
【特許文献2】特開2007−267504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の電動巻上下装置用電源装置は、横行用電源回路100及び電動巻上下装置用電源装置のそれぞれにDC/DCコンバータ107、DC/DCコンバータ127を設け、電気二重層キャパシタ108、電気二重層キャパシタ128の充放電を行っている。このDC/DCコンバータ107、127は高価であり、電動巻上下装置用電源装置を高価なものにしていた。また、横行用電動機105の他に走行用電動機を具備する場合は、更にDC/DCコンバータを備えた走行用電源回路を設けるため、更に高価なものとなる。また、電動巻上下装置の横行或いは横行・走行をさせた場合は、荷振れにより、力行・回生が短い周期で繰り返され、リアクトルを備えたDC/DCコンバータではこのように短い周期で力行・回生で繰り返される場合、この短い周期で繰り返される力行・回生に対応して有効に蓄電、放電を行うことが困難であった。
【0009】
また、上記のように荷の巻上下、走行、横行を行う電動巻上下装置において、昇降用電動機の容量、横行用電動機の容量、走行用電動機の容量は夫々異なる。そこで電源装置の製造簡易化、工期短縮化、低コスト化のために、昇降用電源、横行用電源、走行用電源をそれぞれユニット化しておき、対象の電動巻上下装置に応じて、このユニット化した電源を組合わせて該電動巻上下装置の電源装置とする場合がある。このよう各電源をユニット化した場合、各電源の整流器やインバータ等の機器は、昇降用電動機の容量、横行用電動機の容量、走行用電動機の容量(定格容量)に合わせて適正な容量の機器を選択し、ユニット化している。
【0010】
上記のようにユニット化した複数の電源を組合わせて電動巻上下装置の電源装置を構成し、各電源の直流回路を単純に電気二重層キャパシタに接続した場合、後述するように、容量の小さい機器からなる電源、例えば横行用電源或いは、走行用電源から容量の大きい昇降用電動機に電力が供給されるという、所謂回りこみ現象が発生し、容量の小さい整流器等の機器からなる電源の機器が破損したり、その寿命が短くなるという問題がある。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、構成が簡単で電動巻上下装置が走行・横行を行い短い周期で力行・回生が発生する場合でも、電気二重層キャパシタへの有効な蓄電・放電ができる電動巻上下装置用電源装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、電動巻上下装置用電源を容量の異なるユニット化された複数の電源を組合わせて構成した場合でも、構成が簡単で、容量の小さい機器で構成される電源ユニットから容量の大きい電動機に電力が供給され、機器の破壊や寿命を短縮させるということのない電動巻上下装置用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明は、整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を整流器で直流に変換し、直流回路を介してインバータに供給し、該インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給する昇降用電源回路と、整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を整流器で直流に変換し、直流回路を介してインバータに供給し、該インバータで交流に変換して横行用電動機に供給する横行用電源回路と、を備えた電動巻上下装置用電源装置において、昇降用電源回路の直流回路と横行用電源回路の直流回路とに共通の電気二重層キャパシタを接続したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を整流器で直流に変換し、直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給する昇降用電源回路と、整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を整流器で直流に変換し、直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して横行用電動機に供給する横行用電源回路と、整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し、直流回路を介してインバータに供給し、該インバータで交流に変換して走行用電動機に供給する走行用電源回路と、を備えた電動巻上下装置用電源装置において、昇降用電源回路の直流回路と横行用電源回路の直流回路と走行用電源回路の直流回路とに共通の電気二重層キャパシタを接続したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は上記電動巻上下装置用電源装置において、各直流回路はそれぞれ開閉器を設けた接続ラインを通して電気二重層キャパシタに接続されており、電気二重層キャパシタの蓄電電圧が電源電圧より高いときは、開閉器を全部閉じると共に、電気二重層キャパシタの蓄電電圧が電源以下のときは、電気二重層キャパシタの蓄電電圧より高い電圧の直流回路と電気二重層キャパシタを接続する接続ラインの開閉器のみを閉じて蓄電する制御手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、昇降用電源回路の直流回路と横行用電源回路の直流回路とに、或いは昇降用電源回路の直流回路と横行用電源回路の直流回路と走行用電源回路の直流回路とに、共通の電気二重層キャパシタを接続したので、昇降用電動機や横行用電動機や走行用電動機の回生時に発電した電力をインバータで直流に変換して直接蓄電できるので、DC/DCコンバータを使用しない簡単な構成で、且つ安価な電動巻上下装置用電源装置を提供できる。また、特にリアクトルを備えたDC/DCコンバータを使用しないことから、電動巻上下装置の横行或いは横行・走行の場合の荷振れにより発生する短い周期で繰り返される力行・回生にも対応して有効に蓄電・放電することができる。なお、回生時に発電した電力をインバータで直流に変換して直接電気二重層キャパシタに蓄電するためには、交流電源電圧をVACとした場合、耐電圧が√2VAC以上の電気二重層キャパシタを用いる。
【0017】
また、本発明によれば、各直流回路はそれぞれ開閉器を設けた接続ラインを通して電気二重層キャパシタに接続されており、電気二重層キャパシタの蓄電電圧が電源電圧より高いときは、開閉器を全部閉じると共に、電気二重層キャパシタの蓄電電圧が電源以下のときは、電気二重層キャパシタの蓄電電圧より高い電圧の直流回路と電気二重層キャパシタを接続する接続ラインの開閉器のみを閉じて蓄電する制御手段を設けたので、容量の小さい電源から、容量の大きい電動機に電力が供給され、該電源を構成する整流器等の機器が容量オーバーとなり、該機器が破壊したり、その寿命が短縮するということはなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて詳細に説明する。図2は本発明に係る電動巻上下装置用電源装置のシステム構成例を示す図である。図示するように、本電動巻上下装置用電源装置は、横行用電源回路10と昇降用電源回路20を備えている。横行用電源回路10は、整流器11と、平滑コンデンサ13を備えた直流回路12と、インバータ14を備え、交流電源16からの交流を整流器11で直流に変換し、直流回路12を介してインバータ14に供給し、該インバータ14で交流に変換して横行用電動機15に供給するように構成されている。また、昇降用電源回路20は、整流器21と、平滑コンデンサ23を備えた直流回路22と、インバータ24を備え、交流電源16からの交流を整流器21で直流に変換し、直流回路22を介してインバータ24に供給し、該インバータ24で交流に変換して昇降用電動機25に供給するように構成されている。
【0019】
横行用電源回路10の直流回路12と昇降用電源回路20の直流回路22とに、共通に1台の電気二重層キャパシタ17が接続され、整流器11や整流器21で変換された直流、横行用電動機15の回生電力をインバータ14で変換した直流、及び昇降用電動機25の回生電力をインバータ24で変換した直流が電気二重層キャパシタ17に蓄電される。また、電気二重層キャパシタ17に蓄電された直流は横行用電源回路10の直流回路12及び昇降用電源回路20の直流回路22を介してインバータ14やインバータ24に供給され、該インバータ14やインバータ24で交流に変換され、横行用電動機15や昇降用電動機25に供給するように構成されている。
【0020】
また、横行用電源回路10の直流回路12に電流センサ19を設け、昇降用電源回路20の直流回路22に電圧を検出する電圧センサ28と電流センサ29を設け、その出力を制御部26で監視し、横行用電動機15、昇降用電動機25の回生時に電気二重層キャパシタ17が満充電の状態にある場合、制動用トランジスタ27を導通(ON)させ、横行用電動機15や昇降用電動機25からの回生電力を制動抵抗器30に通電させて消費し、直流回路12と直流回路22の過電圧、及び電気二重層キャパシタ17の過充電を防止している。
【0021】
上記のように横行用電源回路10の直流回路12と昇降用電源回路20の直流回路22とに、共通に1台の電気二重層キャパシタ17を接続し、横行用電動機15及び昇降用電動機25の回生電力をそれぞれインバータ14及びインバータ24で直流に変換し、直接電気二重層キャパシタ17に蓄電することにより、図1のような高価なDC/DCコンバータ107とDC/DCコンバータ127を省略でき、電動巻上下装置用電源装置を安価に製造できる。また、ここではDC/DCコンバータのようにリアクトルを備えていないから、電動巻上下装置の横行の場合の荷振れにより、短い周期で繰り返される力行・回生にも対応することができる。
【0022】
また、図1に示す電動巻上下装置用電源装置では、横行用電源回路100の直流回路102と昇降用電源回路120の直流回路122にそれぞれ制御回路111、制御回路131を設け、電圧や電流を監視し、電気二重層キャパシタ108や電気二重層キャパシタ128で過充電を防止しているが、電動巻上下装置用電源装置を図2に示す構成とすることにより、1個の制御部26で電気二重層キャパシタ17の過充電と直流回路12と直流回路22の過電圧を防止できる。
【0023】
上記電動巻上下装置用電源装置の電気二重層キャパシタ17としては、例えば、株式会社明電舎製のバイポーラ型電気二重層キャパシタを使用する。この電気二重層キャパシタは、イオン吸脱着反応で化学反応を伴わないため、応答が早く、大電流の充放電が可能で、サイクル寿命が長く、補水等のメンテナンスが不要という特徴を有する。また、比表面積の大きい活性炭を電極に用いるため、従来型コンデンサに比べて静電容量が大きいという特徴も有している。更に、電解質は重金属を含まず、回収等に規制が無く、環境に優しい電力貯蔵デバイスとされている。
【0024】
図2に示す電動巻上下装置用電源装置では、横行用電動機15と昇降用電動機25を具備する電動巻上下装置用電源装置を示したが、図3に示すように、更に走行用電動機45を具備する場合は、整流器41、平滑コンデンサ43を備えた直流回路42と、インバータ44を具備する走行用電源回路40備えている。この走行用電源回路40では、交流電源16からの交流を整流器41で直流に変換し、直流回路42を介してインバータ44に供給し、該インバータ44で交流に変換して走行用電動機45に供給する。これにより、電動巻上下装置は、例えば東西方向(横行)、南北方向(走行)に移動できるようになる。
【0025】
上記のように昇降用電動機25、横行用電動機15、及び走行用電動機45を備えた電動巻上下装置では、各電動機の容量が異なることが通常である。例えば、昇降用電動機25に3.5KWの電動機を使用すると、横行電動機15及び走行電動機45には0.4KWの電動機を使用する。そして各電源を構成する整流器、平滑コンデンサ、インバータ等の機器は、上述のように各電動機の容量に合わせて最適なものを選定し、各電源をユニット化している。これにより各電源回路のコストの低減化を図っている。なお、図3において、30、31、32は制動抵抗器、18、47、27は制動用トランジスタである。
【0026】
図3に示すように、ユニット化した横行用電源回路10、走行用電源回路40、及び昇降用電源回路20を設け、各直流回路を共通の1台の電気二重層キャパシタ17に接続しただけでは、図3の点線Aで示すように、電源側からの回りこみにより、容量の小さい走行用電源回路40から容量の大きい昇降用電源回路20に電流が流れ、容量の小さい走行用電源回路40にその容量を超える電流が流れ、走行用電源回路40を構成する機器が損傷したり、該機器の寿命を短縮するという問題が発生する。
【0027】
上記問題を解決するため、ここでは図4に示すように、横行用電源回路10の直流回路12、昇降用電源回路20の直流回路22、及び走行用電源回路40の直流回路42の負極(−極)を接続ラインL2を通して電気二重層キャパシタ17の一方の端子に接続すると共に、直流回路12の陽極(+極)を開閉器WCを設けた接続ラインLCを通して電気二重層キャパシタ17の他方の端子に接続し、直流回路22の陽極(+極)を開閉器WAを設けた接続ラインLAを通して電気二重層キャパシタ17の他方の端子に接続し、更に直流回路42の陽極(+極)をそれぞれ開閉器WBを設けた接続ラインLBを通して電気二重層キャパシタ17の他方の端子に接続している。そして後に詳述するように、電気二重層キャパシタ17の初期充電が完了し、電気二重層キャパシタ17の端子電圧(蓄電電圧)VEと電源電圧VIが等しい(VE=VI)場合、開閉器WA、WB、WCを全て開(OFF)とし、この状態で運転を開始する。そして蓄電電圧VEが電源電圧VIより高い(VI<VE)場合は開閉器WA、WB、WCを全て閉(ON)とし、蓄電電圧VEが電源電圧VI以下(VE≦VI)となった場合は開閉器WA、WB、WCを下記のように制御する。
【0028】
各直流回路の電圧V1、V2、V3が蓄電電圧VE以下(V1,V2,V3≦VE)の場合(通常はV1,V2,V3=VE)には、各開閉器WC、WB、WAをそれぞれ開(OFF)のままとし、各直流回路の電圧V1、V2、V3が蓄電電圧VEより高い場合(V1,V2,V3>VE)には各開閉器WC、WB、WAをそれぞれ閉(ON)としている。これにより、各電動機が回生運転を開始したことで電圧が上昇した直流回路からの電気二重層キャパシタ17に蓄電が行われる。電気二重層キャパシタ17に有効な電力が蓄電されないとき(蓄電電圧VEが電源電圧以下のとき)には力行運転している電動機に電力を供給している直流回路を、該直流回路を電気二重層キャパシタ17に接続している接続ライン(接続ラインLC、LB、LAのいずれか)に設けた開閉器(開閉器WC、WB、WAのいずれか)を開として、該直流回路を電気二重層キャパシタ17から切り離すことで、該直流回路を他の直流回路とも切り離す。これにより上記のような電源側からの回り込みを防止できる。なお、ここで電源電圧VIとは、交流電源(3相交流電源)16の交流電圧をVACとした場合、VI=√2×VACである。
【0029】
各電動機の回生電力を各インバータで直流に変換し、直接電気二重層キャパシタ17に蓄電するので、電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧範囲はインバータの直流回路の電圧
範囲と等しくなる。従って、交流電圧VAC=200V級のインバータユニットでは、電気二重層キャパシタの蓄電電圧は、概ね280V〜400Vの範囲で蓄電される。
【0030】
図4に示す本発明に係る電動巻上下装置用電源では、開閉器WA、WB、WCの開閉制御を行うための制御部50を備え、該制御部50には電源電圧VI、電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VE、走行用電源回路40の直流回路42の電圧V1、横行用電源回路10の直流回路12の電圧V2、昇降用電源回路20の直流回路22の電圧V3が入力され、後に詳述する処理を行い、開閉器WAの作動コイル51、開閉器WBの作動コイル52、開閉器WCの作動コイル53に作動電流を供給又は遮断して、開閉器WA、WB、WCの閉・開(ON・OFF)を制御するようになっている。
【0031】
図5は上記開閉器の制御処理フロー(充放電処理フロー)を示す図である。先ず電気二重層キャパシタ17の初期充電が完了し、その蓄電電圧VEと電源電圧VIが等しく(VE=VI)くなり、開閉器WA、WB、WCを全て開(OFF)とし、運転準備が完了した状態で、運転を開始する(ステップST1)。次に電源電圧VIと電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEとを比較し、蓄電電圧VEが電源電圧VIより大きい(VI<VE)場合(ステップST2)は、開閉器WC、WB、WAの全部を「閉」(ON)とする(ステップST3)。前記ステップST2において、電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEが電源電圧VI以下(VI≧VE)の場合は、下記の処理を行う。
【0032】
走行用電源回路40の直流回路42の電圧V1が蓄電電圧VEより大きい(V1>VE)かを判断し(ステップST4)、NO(V1≦VE)の場合は開閉器WAを「開」(OFF)とし(ステップST5)、YES(V1>VE)の場合は開閉器WAを「閉」(ON)とする(ステップST6)。また、横行用電源回路10の直流回路12の電圧V2が蓄電電圧VEより大きい(V2>VE)かを判断し(ステップST7)、NO(V2≦VE)の場合は開閉器WBを「開」(OFF)とし(ステップST8)、YES(V2>VE)の場合は開閉器WBを「閉」(ON)とする(ステップST9)。また、昇降用電源回路20の直流回路22の電圧V3が蓄電電圧VEより大きい(V3>VE)かを判断し(ステップST10)、NO(V3≦VE)の場合は開閉器WCを「開」(OFF)とし(ステップST11)、YES(V3>VE)の場合は開閉器WCを「閉」(ON)とする(ステップST12)。なお、上記制御部50の充放電機能は各インバータ14、44、24の各制御部に持たせてもよい。
【0033】
上記ステップST4、ST7、ST10では、各直流回路の電圧V1、V2、V3と電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEの比較を行っているが、蓄電電圧VEではなく、各直流回路の電圧V1、V2、V3と電源電圧VIと比較し、回生運転中であるか否かを判断してもよい。その理由は、電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEが電源電圧VIより高い時には開閉器WA、WB、WCは全部閉(ON)になっているから、ステップST4、ST7、ST10で各直流回路の電圧V1、V2、V3と比較するときは、VE=VIの状態にあるからである。但し、ステップST4、ST7、ST10で電源電圧VIと各直流回路の電圧V1、V2、V3を比較するだけでは、電気二重層キャパシタ17の自己放電により電圧が下がるなどして、蓄電電圧VEと各直流回路の電圧V1、V2、V3に差が生じても、自動的に充電されないという問題、或いは追加充電するステップを別に備える必要があるという点では、蓄電電圧VEと比較するのに比べて劣る。
【0034】
なお、上記例では、巻上下及び横行の2軸移動の電動巻上下装置の電源装置、又は巻上下、横行、及び走行の3軸移動の電動巻上下装置の電源装置を説明したが、2軸、3軸移動の電動巻上下装置に限定されるものではなく、3軸以上の複数軸移動の電動巻上下装置の電源装置にも本発明は適用できる。
【0035】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の電動巻上下装置用電源装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電動巻上下装置用電源装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】電動巻上下装置用電源装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る電動巻上下装置用電源装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る電動巻上下装置用電源装置の充放電処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 横行用電源回路
11,21,41 整流器
12,22,42 直流回路
13,23,43 平滑コンデンサ
14,24,44 インバータ
15 横行用電動機
16 交流電源
17 電気二重層キャパシタ
18,27,47 制動用トランジスタ
19 電流センサ
20 昇降用電源回路
25 昇降用電動機
26 制御部
28 電圧センサ
29 電流センサ
30,31,32 制動抵抗器
40 走行用電源回路
45 走行用電動機
50 制御部
51,52,53 作動コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し、前記直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給する昇降用電源回路と、
整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し、前記直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して横行用電動機に供給する横行用電源回路と、
を備えた電動巻上下装置用電源装置において、
前記昇降用電源回路の直流回路と前記横行用電源回路の直流回路とに共通の電気二重層キャパシタを接続したことを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。
【請求項2】
整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し、前記直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給する昇降用電源回路と、
整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し、前記直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して横行用電動機に供給する横行用電源回路と、
整流器、直流回路、インバータを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し、前記直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して走行用電動機に供給する走行用電源回路と、
を備えた電動巻上下装置用電源装置において、
前記昇降用電源回路の直流回路と前記横行用電源回路の直流回路と前記走行用電源回路の直流回路とに共通の電気二重層キャパシタを接続したことを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動巻上下装置用電源装置において、
前記各直流回路はそれぞれ開閉器を設けた接続ラインを通して前記電気二重層キャパシタに接続されており、
前記電気二重層キャパシタの蓄電電圧が電源電圧より高いときは、前記開閉器を全部閉じると共に、前記電気二重層キャパシタの蓄電電圧が前記電源以下のときは、前記電気二重層キャパシタの蓄電電圧より高い電圧の前記直流回路と前記電気二重層キャパシタを接続する接続ラインの前記開閉器のみを閉じて蓄電する制御手段を設けたことを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−100384(P2010−100384A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272367(P2008−272367)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)
【Fターム(参考)】