説明

電動式ケーブルカッター

【課題】ケーブルの切断作業が容易な電動式ケーブルカッターを提供。
【解決手段】動力源となる標準の手持型工具と併用される電動式ケーブルカッターCであって、ギアボックスとしてのハウジング1と、ハウジングに支持されて相対的に開閉する一対の切断刃11・12と、手持型工具から動力を入力する一対の直交型ギア4,5と、一対の直交型ギア側の出力ギアに取り付けられる偏心軸部6aを有する駆動軸6と、駆動軸の回転を減速する差動ギア機構7と、差動ギア機構側の出力ギアの偏心回転を中心線上の回転に矯正するオルダム継手とを備え、一対の切断刃中、一方の切断刃に開閉可能に軸支される他方の切断刃の円弧状外側面にオルダム継手側の出力ギアと噛合する外側歯部12aを形成し、且つ、一対の直交型ギア側の入力ギアをワンタッチで着脱ができるアダプターピン13を介して手持型工具と接続した電動式ケーブルカッター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ワイヤーロープ・電力線・通信線・鉄筋バー等の各種ケーブルを切断する電動式ケーブルカッターに関し、特に詳しくは、動力源となる標準の手持型工具と併用される電動式ケーブルカッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブルカッターは、大別すると、手動式と油圧式と電動式の三種類に区別され、夫々が長所と短所を有している。第一の手動式カッターは、安価で保守管理にも優れているが、作業者に肉体的負担が強いられるという難点があり、第二の油圧式カッターは、作業者の肉体的負担は軽減できるが、油漏れ等の保守管理の面で劣り、又、重量があるので携帯には不便で、価格も高めとなる難点があり、第三の電動式カッターは、やはり、作業者の肉体的負担は軽減できるが、現在市場に出回っているものは、動力部が一体型の専用工具となっているので、特に、価格が非常に高く、故障した際の修理はメーカー任せという難点があった。
【0003】
そこで、斯かる実情に鑑み、動力源を標準の手持型電動ドリルに求めて、ケーブルカッターをこの電動ドリルに接続すれば、電動式として使用できるアタッチメント方式のケーブルカッターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
当該電動式ケーブルカッターは、具体的には図示しないが、ギアボックスとしてのハウジングと、該ハウジングに支持されて相対的に旋回する一対の固定切断刃及び可動切断刃と、ハウジングから回転可能に延在して電動ドリルのチャックに着脱可能に接続する駆動軸と、ハウジング内に取り付けられて該駆動軸と一緒に回転するウォームと、ハウジング内で回転するように取り付けられた主軸と、該主軸に取り付けられて上記ウォームと噛合するウォームホイールと、主軸に取り付けられて上記可動切断刃の外側歯部と噛合する駆動歯車とを備える構成となっている。
【0005】
これに加えて、ハウジングに支持される固定切断刃と可動切断刃には、手錠式が採用されて、固定切断刃の基端部をハウジング側に固定して、該固定切断刃の先端部に可動切断刃を旋回可能に軸支するものであるが、この固定切断刃は可動切断刃よりも上位に位置し、可動切断刃は下位に位置する状態に軸支されている。そして、上記した手持型電動ドリルの動力で、駆動軸を経てウォームを回転させると、主軸を介してウォームホイールと駆動歯車とが回転し、該駆動歯車に自身の外側歯部を噛合する可動切断刃を旋回させて、ケーブルを該各切断刃の内側縁に形成された受刃部と押刃部とで切断できる構成となっている。
【0006】
更に、上記ハウジングの下部側に円筒部を横設して、該円筒部の両側から把持ハンドルと固定アームの端部を保持する保持具を差し込んで両者を螺合させると共に、該保持具の穿孔内に上記固定アームの一端部を嵌合する一方、該固定アームの他端部を電動ドリルのハンドルに嵌合する構成となっている。
【0007】
そして、実際にケーブルを切断する場合には、上記駆動軸を電動ドリルのチャック内に接続する状態を得て、ケーブルカッターを電動ドリル側に取り付けて、可動切断刃と固定切断刃の間に画成される空域内にケーブルを挿通して、可動切断刃の外側歯部を駆動歯車に噛合させた後、左手で上記把持ハンドルを把持する一方、右手で電動ドリルのハンドルを握りながら電動ドリルのスイッチをオンさせれば、可動切断刃が上記空域を零とするまで自動的に旋回するので、これにより、可動切断刃と固定切断刃とでケーブルが自動的に切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−125486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この従来の電動式ケーブルカッターにあっては、既述した如く、その減速機構にウォームとウォームホイールから成るウォームギア機構を採用している関係で、切断中に、ウォームとウォームホイール間で想像以上の摩擦力が掛かり、電動ドリルの能力をフルに切断刃の刃先まで伝えることが困難であると共に、一定期間使用後にギアを必ず交換しなければならないので、メンテナンスの面でも大いに問題視されていた。又、ウォームギア機構の下では、ケーブルカッター自体の重量が嵩むので、その取り扱いも不便であった。
【0010】
又、従来のケーブルカッターにあっては、ハウジングに対して、固定切断刃を上位に位置させ、可動切断刃を下位に位置させて、可動切断刃を下から上へと旋回させる構成を採用している関係で、ケーブルを当該可動切断刃と固定切断刃の間に画成される空域内に挿通させる場合には、ケーブル自体が自重で下方へ下がろうとする一方、可動切断刃自体も自重で下方へ下がろうとしてしまうので、切断を行なう時には、可動切断刃と駆動歯車とが確実に噛合するまで、作業者は自身の手で可動切断刃の背とケーブルとを一緒にしっかりと添えてやらなければならないので、手錠式の切断刃においては、切断開始前の作業が煩わしくなる。特に、この作業では、可動切断刃の外側歯部と駆動歯車が完全に噛合したことを確認しなければならないので、この点からも、自ずと、作業が大変となる。
【0011】
又、作業者の左手を添える把持ハンドルがハウジングの下部左側に位置しているので、切断を開始する時に、この下部左側位置において左手で把持ハンドルに把持しながら、右手で可動切断刃とケーブルとを支えようとすると、左手に大きな負担が掛かり、逆に、右手で電気ドリルのハンドルを握り、左手で可動切断刃とケーブルとを支えようとすると、今度は、先端に存する一対の切断刃が重たくなり、ケーブルカッター自体を右手だけでは支えきれなくなる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、斯かる従来の電動式ケーブルカッターの課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、動力源となる標準の手持型工具と併用される電動式ケーブルカッターであって、ギアボックスとしてのハウジングと、該ハウジングに支持されて相対的に開閉する一対の切断刃と、上記手持型工具から動力を入力する一対の直交型ギアと、該一対の直交型ギア側の出力ギアに取り付けられる偏心軸部を有する駆動軸と、該駆動軸の回転を減速する差動ギア機構と、該差動ギア機構側の出力ギアの偏心回転を中心線上の回転に矯正するオルダム継手とを備え、上記一対の切断刃中、一方の切断刃に開閉可能に軸支される他方の切断刃の円弧状外側面に上記オルダム継手側の出力ギアと噛合する外側歯部を形成し、且つ、上記一対の直交型ギア側の入力ギアをワンタッチで着脱ができるアダプターピンを介して上記手持型工具と接続したことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、上記一対の直交型ギアは、大小のベベルギアから成ることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1乃至請求項2を前提として、上記差動ギア機構は、ハウジング側に固定される内歯ギアと、該内歯ギアと噛合して上記駆動軸の偏心軸部に取り付けられる遊星ギアとから成り、該遊星ギアの一面に凸部を形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3を前提として、上記オルダム継手は、ギアなしの第一スライダとギアありの第二スライダとから成り、第一スライダは、その一面に上記遊星ギアの凸部をスライド可能に係合する第一凹部を形成すると共に、同他面に該第一凹部の凹線方向と直交する第一凸部を形成し、第二スライダは、その一面に上記他方の切断刃の外側歯部と噛合する出力ギアを形成すると共に、同他面に上記第一スライダの第一凸部をスライド可能に係合する第二凹部を形成したことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4を前提として、把持ハンドルはU字形状を呈して、その両端部が上記ハウジングのブラケット部に固定されることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5を前提として、上記他方の切断刃の外側歯部を覆う安全カバーを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
依って、本発明にあっては、従来とは異なり、減速機構に内歯ギアと遊星ギアとから成る差動ギア機構を使用する関係で、ウォームギア機構と比べると、形状的に薄型小型化が可能となり、動力源となる手持型工具の能力を切断刃の刃先までフルに伝えることが可能となる。又、手持型工具との装脱には、アダプターピンを介して行うので、恰も、ソケットレンチにアダプターを装脱するように装脱作業が簡単となると共に、従来のように電動ドリルに限定されることなく、その他の充電式電動ドライバー、ドリルチャックを有しない空圧式・電動式・充電式インパクトレンチや、近年普及している電動式及び充電式インパクトドライバーや、手持型工具の充電が切れたような場合には、手動式ソケットハンドルも装着が可能となる。
【0019】
特に、差動ギア機構をハウジング側に固定される内歯ギアと該内歯ギアと噛合する遊星ギアとから構成することは、ケーブルカッター自体の薄型小型化が一層可能となる。
【0020】
又、本発明にあっては、差動ギア機構の遊星ギアの偏心回転を中心線上の回転に矯正するオルダム継手を使用する関係で、そのズレを遊星ギアと第一・第二スライダの直交したスライドによって確実に吸収できるので、等速回転でかなり大きな回転力を伝えることができる。
【0021】
又、本発明にあっては、左手を添える把持ハンドルのグリップが上部、横部、下部の3辺からなるU字形状を呈しているので、ハンドルの上部付け根位置を握ることで、作業開始準備の際の手持型工具との接続がバランス良く行なえると共に、作業開始後は、必要に応じて、握る位置を変えることができる。例えば、横ケーブルを切断する際は、ハンドルの上部を握り、縦ケーブルを切断する際は、ハンドルの横部を握り、そのまま上部に移動することで無理なく作業ができる。
【0022】
更に、可動切断刃の外側歯部を覆う安全カバーを有する関係で、素手や保護グローブなどの巻き込みの防止を図り、安全な作業が保障できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係る電動式ケーブルカッターを電動ドリルとの関係で示す分解斜視図である。
【図2】ケーブルカッターを左側から示す分解斜視図である。
【図3】ケーブルカッターを右側から示す分解斜視図である。
【図4】小ベベルギアと大ベベルギアの関係を示す説明図である。
【図5】内歯ギアと遊星ギアから成る差動ギア機構と第一スライダと第二スライダから成るオルダム継手の関係を示す分解斜視図である。
【図6】蓋と大ベベルギアと駆動軸の関係を示す説明図である。
【図7】ハウジングと内歯ギアの関係を示す説明図である。
【図8】蓋と大ベベルギアと遊星ギアと駆動軸と第一スライダの関係を示す説明図である。
【図9】遊星ギアと第一スライダとをスライド可能に係合した状態を示す説明図である。
【図10】第一スライダと第二スライダとをスライド可能に係合した状態を示す説明図である。
【図11】固定切断刃をハウジング側に固定した状態を示す説明図である。
【図12】固定切断刃に可動切断刃を軸支して、可動切断刃の外側歯部を第二スライダの出力ギアの噛合した状態を示す説明図である。
【図13】組み付けられたケーブルカッターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、動力源となる標準の手持型工具と併用される電動式ケーブルカッターを前提として、ギアボックスとしてのハウジングと、該ハウジングに支持されて相対的に開閉する一対の切断刃と、上記手持型工具から動力を入力する一対の直交型ギアと、該一対の直交型ギア側の出力ギアに取り付けられる偏心軸部を有する駆動軸と、該駆動軸の回転を減速する差動ギア機構と、該差動ギア機構側の出力ギアの偏心回転を中心線上の回転に矯正するオルダム継手とを備え、上記一対の切断刃中、一方の切断刃に開閉可能に軸支される他方の切断刃の円弧状外側面に上記オルダム継手側の出力ギアと噛合する外側歯部を形成し、且つ、上記一対の直交型ギア側の入力ギアをワンタッチで着脱ができるアダプターピンを介して上記手持型工具と接続することにより、ケーブルの切断作業が容易な電動式ケーブルカッターを提供せんとするものである。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述すれば、該実施例に係る電動式ケーブルカッターCも、図1に示す如く、従来と同様に、標準の手持型電動ドリルDと併用されるもので、該電動ドリルDを動力源として、固定切断刃11と可動切断刃12とでケーブルを切断するものであるから、作業者の肉体的な負担を軽減して、コスト的にも、今までの動力部が一体型のカッターと比べ1/4の価格で提供できる。尚、本実施例では、携帯性を考慮して、蓄電池を備える電動ドリルDを対象としているが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0026】
そこで、具体的な構造を説明すると、本実施例は、後述するギア群を内部に収納するハウジング1を備え、該ハウジング1は、図2・図3にも示す如く、左右両側面が開口する短巾な円筒状を呈して、その中央部に対しては、内部と連通する円筒ボックス部1aをハウジング1の軸方向と直交する状態に設けると共に、上・下部に対しては、後述する把持ハンドル16の両端部を固定する一対のブラケット部1bを立設して、上記した左側の開口を切断刃側の安全カバー2で閉塞し、右側の開口を大ベベルギア側の蓋3で閉塞する構成となっている。
【0027】
又、本実施例は、図4・図5・図6にも示す如く、上記ハウジング1の円筒ボックス部1a内に回転可能に収納される小ベベルギア4と、上記蓋3に回転可能に取り付けられて該小ベベルギア4と直交して噛合する大ベベルギア5と、該大ベベルギア5に固定されて一体に回転する偏心軸部6a付の駆動軸6と、ハウジング1の右側開口の縁部に固定される内歯ギア7と、該内歯ギア7と噛合して公転と自転を繰り返す遊星ギア8と、ギアなしの第一スライダ9と、ギアありの第二スライダ10と、上記ハウジング1の左側開口部に固定される固定切断刃11と、該固定切断刃11に開閉可能に軸支される可動切断刃12とを備える構成となっている。
【0028】
そして、上記小ベベルギア4は、その後端面に電動ドリルD側に接続されたアダプターピン13をワンタッチで着脱可能に嵌合する角孔4aを形成し、駆動軸6は、図6にも示す如く、後端部側に偏心軸部6aを設けて、該偏心軸部6aに上記遊星ギア8を固定し、該遊星ギア8と上記内歯ギア7とで減速機構たる差動ギア機構14を構成し、且つ、上記第一スライダ9と第二スライダ10とで該遊星ギア8の偏心回転を中心線上の回転に矯正するオルダム継手15を構成する。尚、上記アダプターピン13は棒状を呈し、先端部が上記小ベベルギア4の角孔4aに嵌合する駒形状を呈し、後端部が電動ドリルDのチャックに固定されるビットとなっている。
【0029】
又、上記遊星ギア8に対しては、図示する如く、その一面側の軸孔周囲に凸部8aを形成し、上記オルダム継手15を構成するギアなしの第一スライダ9に対しては、その一面側に上記遊星ギア8の凸部8aをスライド可能に係合する第一凹部9aを形成し、同他面側に該第一凹部9aの凹線方向と直交する第一凸部9bを形成し、同ギアありの第二スライダ10に対しては、その一面側に後述する可動切断刃12の外側歯部12aと噛合する出力ギア10aを形成し、同他面側に上記第一凸部9bをスライド可能に係合する第二凹部10bを形成する構成となっている。
【0030】
尚、上記固定切断刃11と可動切断刃12に関しては、従来のような手錠式を採用せずに鋏式を採用したものであり、固定切断刃11は、ハウジング1の左側開口縁にボルトを介して固定され、該固定切断刃11と開閉可能に軸支される可動切断刃12は、その後端の円弧状外側面に上記第二スライダ10の出力ギア10aと噛合する外側歯部12aを連続して形成する構成となっている。
【0031】
更に、上記ハウジング1の上下ブラケット部1bに固定される把持ハンドル16は、図示する如く、横U字形状に成形されて、該把持ハンドル16の上部付け根位置を握ることで、作業開始準備の際の手持型工具との接続がバランス良く行なえると共に、作業開始後は、必要に応じて、握る位置を変えることができる。例えば、横ケーブルを切断する際は、把持ハンドル16の上部を握り、縦ケーブルを切断する際は、把持ハンドル16の横部を握り、そのまま上部に移動することで無理なく作業ができる構成となっている。
【0032】
そして、斯かる構成の電動式ケーブルカッターCを組み付ける場合には、まず、図7に示す如く、ハウジング1の右側開口縁に内歯ギア7をボルトで固定する状態を得て、図6に示す如く、駆動軸6を大ベベルギア5に固定しながら、該大ベベルギア5を蓋3側に回転可能に支持すると同時に、図8に示す如く、上記した駆動軸6の偏心軸部6aに遊星ギア8を固定する。従って、該遊星ギア8は駆動軸6の回転に応じて公転と自転を繰り返しながら回転することとなるが、偏心軸部6aとの関係で、偏心しながら回転することとなる。
【0033】
そして、今度は、図9に示す如く、オルダム継手15を構成する第一スライダ9を駆動軸6に回転可能に取り付けることとなるが、この場合には、遊星ギア8の凸部8aを該第一スライダ9の第一凹部9aとスライド可能に係合させながら行うものとする。従って、遊星ギア8が偏心回転すると、この第一スライダ9は、その凹凸の案内で、遊星ギア8に対してスライドしながら回転する。
【0034】
次に、図10に示す如く、更に、オルダム継手15を構成する第二スライダ10を駆動軸6の先端部に回転可能に取り付けることとなるが、この場合も、第一スライダ9の凸部9bを該第二スライダ10の第二凹部10bとスライド可能に係合させながら行うものとする。従って、第一スライダ9がスライドしながら回転すると、この第二スライダ10は、やはり、凹凸の案内で、第一スライダ9に対してスライドしなから回転することとなるが、第一スライダ9の第一凸部9bと第二スライダ10の第二凹部10bとは、第一スライダ9の凹部9aと遊星ギア8の凸部8aと直交する状態で係合しているので、第一スライダ9と第二スライダ10は直交しながらスライドして、遊星ギア8の自転を取り出すことにより、該遊星ギア8の偏心回転を駆動軸6の中心線上の回転に矯正することが可能となる。
【0035】
他方、図11に示す如く、ハウジング1の左側開口縁に固定切断刃11をネジを介して固定して、ハウジング1の右側開口から蓋3と共にオルダム継手15の第二スライダ10を差し込むと、該第二スライダ10の出力ギア10aが固定切断刃11の中央開口孔から外方に突出するので、後は、図12に示す如く、該出力ギア10aとの噛合状態を得て、可動切断刃12を固定切断刃11に開閉可能にボルトを介して軸支して、該可動切断刃12の外側歯部12aを覆う安全カバー2を取り付けながら、U字状を呈する把持ハンドル16をハウジング1の上下ブラケット部1bに固定すれば、これにより、図1・図13に示す如く、電動式ケーブルカッターCが容易に組み付けられる。
【0036】
依って、斯かる構成の電動式ケーブルカッターCを使用して各種のケーブルを切断する場合には、まず、最初に、電動ドリルDのチャック内に上記アダプターピン13の後端部を接続する状態を得て、左手でケーブルカッターCの把持ハンドル16を握りながら、右手で小ベベルギア4の角孔4aに当該アダプターピン13の先端部を嵌合すると、これだけで、ケーブルカッターC自体が電動ドリルD側にワンタッチで取り付けられるので、後は、可動切断刃12を固定切断刃11から開放して、該両切断刃11・12間に画成される空域S内にケーブル(図示せず)を挿通する。
【0037】
そして、可動切断刃12の外側歯部12aをオルダム継手15の第二スライダ10の出力ギア10aと噛合させれば、切断準備が完了する。尚、本実施例にあっても、固定切断刃11は上部に位置し可動切断刃12は下部に位置しているが、この各切断刃11・12は鋏式となっているので、手錠式のように、事前に、可動切断刃12を持ち上げながらケーブルを挟み込み、出力ギア10aに噛み合わせる必要がないので、切断作業を開始する際には、上部に位置する固定切断刃11をケーブル線上に載せて、電動ドリルDのスイッチを入れるだけで、簡単に両切断刃11・12が自動的に噛み合っていく。
【0038】
従って、後は、電動ドリルDのスイッチをオンすると、これにより、小ベベルギア4が回転して、大ベベルギア5を駆動軸6と一緒に回転させるので、該駆動軸6の偏心軸部6aに取り付けられている遊星ギア8が内歯ギア7との噛合状態を維持しながら回転することとなるが、両者7・8の歯数の相違から、遊星ギア8が公転と自転を繰り返しながら回転する。しかし、既述した如く、遊星ギア8は駆動軸6の偏心軸部6aに取り付けられている関係で、駆動軸6の中心線上での回転が得られないので、遊星ギア8を中心線上の回転に矯正しなければならない。
【0039】
そこで、今度は、オルダム継手15を利用するとなるが、このオルダム継手15の第一スライダ9は、上記遊星ギア8の凸部8aにスライド可能に係合する第一凹部9aを有しているので、遊星ギア8の回転に応じて、この凹凸係合状態を維持して、第一スライダ9はスライドしながら回転することとなる。すると、オルダム継手15の第二スライダ10は、第一スライダ9の第一凸部9bにスライド可能に係合する第二凹部10bを有しているので、第一スライダ9の回転に応じて、この凹凸係合状態を維持して、第二スライダ10もスライドしながら回転する。
【0040】
これにより、回転中心がズレでいても、そのズレを第一・第二スライダ9・10のスライド回転によって吸収することとなるので、駆動軸6と第二スライダ10の出力ギア10aとが中心線上で等速に回転することとなる。
【0041】
従って、第二スライダ10の出力ギア10aの回転により、これと噛合している外側歯部12aを有する可動切断刃12が空域Sを零とするように移動して、切断対象物たるケーブルを各切断刃11・12の受刃部と押刃部とで極めて軽く切断することとなるので、作業者に肉体的な負担をかけずに、ケーブルを簡単に切断することが可能となる。又、ケーブルの切断に際しては、可動切断刃12の外側歯部12aが安全カバー2で覆われているので、これにより、不測の巻き込み事故の発生を防止できる。
【0042】
又、ケーブルの切断を終了すると、可動切断刃12の移動も自動的に停止する。これは、可動切断刃12の外側歯部12aが一定の範囲にしか形成されていないので、それ以上の移動は、出力ギア10aとの噛合が解けるからである。又、その後、連続して切断する場合には、電動ドリルDを逆転させて、可動切断刃12を最初の待機状態に復帰させれば良い。尚、この時も、上記外側歯部12aが一定の範囲にしか形成されていない関係で、可動切断刃12は待機位置で自動的に停止する。
【0043】
尚、上記実施例では、従来とは異なり、減速機構に内歯ギア7と遊星ギア8から成る差動ギア機構14を使用した関係で、従来のウォームギア機構と比べると、形状的に薄型小型化が可能となり、動力源となる手持型工具の能力を切断刃の刃先までフルに伝えることが可能となる。又、手持型工具との装脱には、アダプターピン13を介して行うので、恰も、ソケットレンチにアダプターを装脱するように作業が簡単となると共に、従来のように電動ドリルDに限定されることなく、その他の充電式電動ドライバー、ドリルチャックを有しない空圧式・電動式・充電式インパクトレンチや、近年普及している電動式及び充電式インパクトドライバーに装着できる。更に、電動ドリルDの電源が停止もしくは充電式バッテリーの消耗で動力源を失った場合には、手動式ソケットハンドルでの代用が可能となる。
【0044】
又、従来のケーブルカッターにあっては、ウォームギア機構の採用で、ハウジングが大きくなって、カッター自体をテーブル面上などに載置した時は、安定性を欠いて転がる恐れがあるが、本実施例にあっては、差動ギア機構14を採用している関係で、ハウジング1自体が頗る薄型となって、安定して載置が保障できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る電動式ケーブルカッターは、動力源となる既存の手持型工具と併用できるので、これをワイヤーロープ・電力線・通信線・鉄筋バー等の各種ケーブルの切断に応用すれば、頗る好都合となる。
【符号の説明】
【0046】
1 ハウジング
1a 円筒ボックス部
1b ブラケット部
2 安全カバー
3 蓋
4 小ベベルギア(直交型ギア)
4a 角孔
5 大ベベルギア(直交型ギア)
6 駆動軸
6a 偏心軸部
7 内歯ギア
8 遊星ギア
8a 凸部
9 第一スライダ
9a 第一凹部
9b 第一凸部
10 第二スライダ
10a 出力ギア
10b 第二凹部
11 固定切断刃
12 可動切断刃
12a 外側歯部
13 アダプターピン
14 差動ギア機構
15 オルダム継手
16 把持ハンドル
C 電動式ケーブルカッター
D 電動ドリル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源となる標準の手持型工具と併用される電動式ケーブルカッターであって、ギアボックスとしてのハウジングと、該ハウジングに支持されて相対的に開閉する一対の切断刃と、上記手持型工具から動力を入力する一対の直交型ギアと、該一対の直交型ギア側の出力ギアに取り付けられる偏心軸部を有する駆動軸と、該駆動軸の回転を減速する差動ギア機構と、該差動ギア機構側の出力ギアの偏心回転を中心線上の回転に矯正するオルダム継手とを備え、上記一対の切断刃中、一方の切断刃に開閉可能に軸支される他方の切断刃の円弧状外側面に上記オルダム継手側の出力ギアと噛合する外側歯部を形成し、且つ、上記一対の直交型ギア側の入力ギアをワンタッチで着脱ができるアダプターピンを介して上記手持型工具と接続したことを特徴とする電動式ケーブルカッター。
【請求項2】
上記一対の直交型ギアは、大小のベベルギアから成ることを特徴とする請求項1記載の電動式ケーブルカッター。
【請求項3】
上記差動ギア機構は、ハウジング側に固定される内歯ギアと、該内歯ギアと噛合して上記駆動軸の偏心軸部に取り付けられる遊星ギアとから成り、該遊星ギアの一面に凸部を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の電動式ケーブルカッター。
【請求項4】
上記オルダム継手は、ギアなしの第一スライダとギアありの第二スライダとから成り、第一スライダは、その一面に上記遊星ギアの凸部をスライド可能に係合する第一凹部を形成すると共に、同他面に該第一凹部の凹線方向と直交する第一凸部を形成し、第二スライダは、その一面に上記他方の切断刃の外側歯部と噛合する出力ギアを形成すると共に、同他面に上記第一スライダの第一凸部をスライド可能に係合する第二凹部を形成したことを特徴とする請求項3記載の電動式ケーブルカッター。
【請求項5】
把持ハンドルはU字形状を呈して、その両端部が上記ハウジングのブラケット部に固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電動式ケーブルカッター。
【請求項6】
上記他方の切断刃の外側歯部を覆う安全カバーを有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電動式ケーブルカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−206192(P2012−206192A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72559(P2011−72559)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(505082497)株式会社東亜インターシステム (2)
【Fターム(参考)】