説明

電動式作業機械の暖房装置

【課題】通常の耐熱性を備えた安価なポンプを使用しながら、ポンプの熱負担を下げてその耐久性を向上させる。
【解決手段】電動ショベル等の電動式の作業機械において、ヒータユニット24の放熱部25の出口と、電熱器22によって湯を沸かすタンク21の入口とを結ぶ戻り管路27にポンプ23を設け、このポンプ23により、放熱によって低温化した湯をタンク21に戻すことによって循環作用を行わせる構成とした。また、機械製造段階での装置組み込み時や使用段階でのメンテナンス後の立ち上げ式に、つなぎパイプ33を用いて外部水源から回路に所謂呼び水を供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動ショベル等の電動式作業機械においてキャビン内を暖房する暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電動機を動力源とする電動ショベルでは、エンジンがなく、エンジン冷却水を暖房装置の熱媒体として使用できないため、図2に示すように、タンク1内の水を電熱器2で加熱し、沸かした湯をポンプ3によりヒータユニット4の放熱部5に送る湯沸し方式がとられている(特許文献1参照)。
【0003】
図2中、6はタンク1の出口と放熱部5の入口とを結ぶ(タンク1内の湯を放熱部5に供給する)給湯管路、7は放熱部5の出口とタンク1の入口とを結ぶ(放熱済みの湯をタンク1に戻す)戻り管路、8はポンプ3を駆動する電動機、9はタンク1内の圧力を制御するリザーブタンク、10はタンク1とリザーブタンク9とを結ぶ圧力調節管路、11,12は同管路10とタンク1の接続部分に設けられた圧力調節弁である。
【0004】
また、図2中の実線矢印はタンク1と放熱部5との間での水の流れ、破線矢印はタンク1とリザーブタンク9との間での水または圧力の流れをそれぞれ示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−267037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公知技術では、図示のようにポンプ3を給湯管路6に設け、タンク1内で沸かした高温(たとえば100℃)の湯をポンプ3で直接放熱部5に送る構成をとっている。
【0007】
ところが、この構成によると、ポンプ3が高温湯にさらされるため、ポンプ3(具体的にはインペラやシール材等)の熱負担が大きくなって耐久性が低下するという問題があった。あるいは、耐熱性の高い高価なポンプを使用することでコストアップとなっていた。
【0008】
そこで本発明は、通常の耐熱性を備えた安価なポンプを使用しながら、ポンプの熱負担を下げてその耐久性を向上させることができる電動式作業機械の暖房装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、タンク内の水を電熱器で加熱し、電動機で駆動されるポンプによりヒータユニット内の放熱部に供給して放熱させた後、上記タンクに戻すように構成された作業機械の暖房装置において、上記ポンプを、上記放熱部の出口とタンクの入口とを結ぶ戻り管路に設けたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記タンク、放熱部、タンクの出口と放熱部の入口とを結ぶ給湯管路、及び上記戻り管路から成る回路が空の状態で、外部水源から同回路に通水するための通水手段を具備するものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、上記通水手段として、入水側が外部水源に接続されるつなぎパイプを備え、上記給湯管路の入水側の接続先を上記タンクの出口と上記つなぎパイプの出水側との間で切換え得るように構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ポンプを、放熱部の出口とタンクの入口とを結ぶ戻り管路に設け、このポンプにより、放熱によって低温化した湯をタンクに戻すことによって循環作用を行わせる構成としたから、タンク内の高温湯を直接ポンプに吸い込む公知技術と比較して、ポンプの熱負担を下げることができる。
【0013】
このため、通常の耐熱性を備えた安価なポンプを使用しながらその耐久性を向上させることができる。
【0014】
ところで、このように放熱部の下流側にポンプを設けると、機械製造段階で装置を機械に組み込んだ状態、または出荷後の使用段階でメンテナンスのために回路内の水を抜いた状態から運転可能な状態に立ち上げる際に、ポンプの入口側に水が無いためポンプの吸い込み作用が行われず、循環作用も開始されないという問題が生じる。
【0015】
この点、請求項2,3の発明によると、通水手段によって回路内に外部水源からの水を供給することができるため、回路内に通水してポンプの吸い込み作用及び回路の循環作用を確保することができる。
【0016】
すなわち、製造段階での装置組み込み後や、使用段階でのメンテナンス後に運転可能な状態に簡単かつスムーズに立ち上げることができる。
【0017】
この場合、予め給湯管路にバルブ付きの外部給水管路を固定管路として分岐接続しておき、立ち上げに際してバルブ操作によって外部水源からの水を回路に供給する構成をとってもよいが、使用頻度が低いことを考慮するとコスト面で不利となる。
【0018】
この点、請求項3の発明によると、立ち上げに際して、つなぎパイプの入水側を外部水源に接続する一方、給湯管路の入水側をタンクから外して同パイプの出水側につなぎ換えることによって水源の切換えを行うことができるため、コストが安くてすむ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態にかかる暖房装置の回路構成図である。
【図2】従来の暖房装置の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図1によって説明する。
【0021】
実施形態にかかる暖房装置おいて、タンク21内の水を電熱器22で加熱し、沸かした湯をポンプ23によりヒータユニット24の放熱部25に送り、放熱後、タンク21に戻す点の基本構成は、図2に示す公知技術と同じである。
【0022】
図1中、26はタンク21の出口と放熱部25の入口とを結ぶ給湯管路、27は放熱部25の出口とタンク21の入口とを結ぶ戻り管路、28はポンプ23を駆動する電動機、29はタンク21内の圧力を制御するリザーブタンク、30はタンク21とリザーブタンク29とを結ぶ圧力調節管路、31,32は同管路30とタンク21の接続部分に設けられた圧力調節弁である。
【0023】
また、図1中の実線矢印はタンク21と放熱部25との間での水の流れ、破線矢印はタンク21とリザーブタンク29との間での水または圧力の流れをそれぞれ示す。
【0024】
この暖房装置の特徴的構成として、図示のように放熱部25の出口とタンク21の入口とを結ぶ戻り管路27にポンプ23が設けられ、このポンプ23により、回路内の湯を吸い込み、かつ、タンク21に戻す(循環作用を行わせる)ように構成されている。
【0025】
この構成によると、図2に示す公知技術のようにタンク1内で沸かされた高温(たとえば100℃)の湯をポンプ3に直接吸い込むのではなく、放熱部25での放熱によって低温化(たとえば90℃以下まで低下)した湯をポンプ23に吸い込むため、公知技術と比較して、ポンプ23(インペラやシール材等)の熱負担を下げることができる。
【0026】
このため、ポンプ23として通常の耐熱性を備えた安価なものを使用しながら、その耐久性を向上させることができる。
【0027】
ところで、このように放熱部25の下流側にポンプ23を設けるこの暖房装置の構成によると、製造段階で装置を機械に組み込んだ状態、または出荷後の使用段階でメンテナンスのために回路内の水を抜いた状態から運転可能な状態に立ち上げる際に、回路(タンク21、放熱部25、管路26,27)内に水が無いため、ポンプ23の吸い込み作用が行われず、循環作用も開始されないという問題が生じる。
【0028】
そこでこの実施形態では、通水手段としてのつなぎパイプ33を備え、このつなぎパイプ33によって外部水源から回路内に所謂呼び水を供給するように構成されている。
【0029】
詳述すると、装置の組立後やメンテナンス後の立ち上げに際して、つなぎパイプ33の入水側をホース34によって図示しない外部水源(たとえば上水道の蛇口)に接続する。
【0030】
一方、給湯管路26の入水側をタンク21から外してつなぎパイプパイプ33の出水側につなぎ換え、二点鎖線矢印で示すように外部水源から給水する。
【0031】
こうすれば、給湯管路26、放熱部25、戻り管路27に水が満たされるため、この状態でポンプ23を回転させれば吸い込み及びタンク21への押し込み作用が行われる。
【0032】
すなわち、回路内に水が充満して水の循環が可能な状態となり、タンク21から放熱部25への給湯作用(暖房運転)が可能となる。
【0033】
こうして、製造段階での装置組み込み後や、使用段階でのメンテナンス後の立ち上げを簡単かつスムーズに行うことができる。
【0034】
しかも、給湯管路26の入水側の切換えをつなぎパイプ33によって行う構成であるため、コストが安くてすむ。
【0035】
なお、つなぎパイプ33は、給湯管路26の近くにフリーな状態で保管しておいてもよいし、タンク架台等に固定しておいてもよい。
【0036】
一方、コストアップが問題とならない場合は、予め給湯管路26に図1のホース34に相当するバルブ付きの外部給水管路を固定管路として分岐接続しておき、立ち上げに際してバルブ操作によって外部水源からの水を回路に供給する構成をとってもよい。
【符号の説明】
【0037】
21 タンク
22 電熱器
23 ポンプ
24 ヒータユニット
25 放熱部
26 給湯管路
27 戻り管路
28 ポンプを駆動する電動機
29 つなぎパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の水を電熱器で加熱し、電動機で駆動されるポンプによりヒータユニット内の放熱部に供給して放熱させた後、上記タンクに戻すように構成された作業機械の暖房装置において、上記ポンプを、上記放熱部の出口とタンクの入口とを結ぶ戻り管路に設けたことを特徴とする電動式作業機械の暖房装置。
【請求項2】
上記タンク、放熱部、タンクの出口と放熱部の入口とを結ぶ給湯管路、及び上記戻り管路から成る回路が空の状態で、外部水源から同回路に通水するための通水手段を具備することを特徴とする請求項1記載の電動式作業機械の暖房装置。
【請求項3】
上記通水手段として、入水側が外部水源に接続されるつなぎパイプを備え、上記給湯管路の入水側の接続先を上記タンクの出口と上記つなぎパイプの出水側との間で切換え得るように構成したことを特徴とする請求項2記載の電動式作業機械の暖房装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−265712(P2010−265712A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119638(P2009−119638)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】