説明

電動機制御装置

【課題】電動機の取り付け方向の変更が容易な電動機制御装置を提供する。
【解決手段】電動機制御装置100は、正方形状の金属基板3と、金属基板3に実装されたスイッチング素子6と、金属基板3の上方に設けられたプリント基板5と、両基板3、5を収納するケース1と、電動機とスイッチング素子6とを接続するための接続部4と、金属基板3の直上にあるプリント基板5の正方形状の領域50内に実装された半導体素子8、9と、領域50外に実装された電源部品12、13およびコネクタ14と、金属基板3とプリント基板5とを板面間で接続する端子7とを備える。電動機の取り付け方向を変更する場合は、ケース1に対する接続部4と金属基板3と端子7と固定部15の設置位置を、金属基板3と平行に回転させ、プリント基板5の正方形状の領域50内の半導体素子8、9と実装レイアウトを、プリント基板5と平行に回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機制御装置の部品実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機制御装置として、たとえば、特許文献1〜4に開示されているような、自動車の電動式パワーステアリングシステムで使用されるECU(電子制御装置)がある。
【0003】
ECUは、電動機の一例である電動モータの駆動を制御する。ECUには、電動モータ駆動用のスイッチング素子、電動モータ制御用の半導体素子、電源部品、コネクタ、および電動モータの接続部などが備わっている。
【0004】
スイッチング素子は、金属基板、ケース、またはプリント基板に実装されている。電動モータ制御用の半導体素子は、少なくともマイクロコンピュータやメモリなどから成る。この半導体素子とコネクタは、プリント基板に実装されている。電源部品は、プリント基板または樹脂枠に実装されている。
【0005】
金属基板、プリント基板、および樹脂枠は、ケースとカバーを組み合わせて形成される内部空間に収納される。接続部は、電動モータ側に設けられた端子をネジなどで接着させる端子などから成る。接続部は、ケースの側面に設けられている。上記各部は、電気的に接続されている。
【0006】
ECUと電動モータとは、特許文献1および特許文献3に開示されているように、ネジにより取り付けられて、電気的に接続される。
【0007】
ECUでは、搭載される自動車の仕様や、設置される位置や周囲の構造などに依存して、電動モータの取り付け方向が変わることがある。その場合、ECUの接続部の設置位置を変更する必要がある。しかし、それに伴って、ECUの内部の部品や構造を変更しなければならず、新たな設計と機能の評価が必要となり、開発工数の増大とコストアップを招いていた。すなわち、機能が同じにもかかわらず、新規のECUを開発するようなものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−188932号公報
【特許文献2】特開2003−309384号公報
【特許文献3】特開2005−212722号公報
【特許文献4】特開2010−245174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、電動機の取り付け方向の変更が容易な電動機制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電動機制御装置は、正方形状の金属基板と、金属基板に実装された電動機駆動用のスイッチング素子と、金属基板の上方に設けられたプリント基板と、両基板を収納するケースと、両基板に対して垂直なケースの側面に設けられた、電動機とスイッチング素子とを接続するための接続部と、プリント基板の金属基板と対面する正方形状の領域内に実装された電動機制御用の半導体素子と、プリント基板の正方形状の領域外に実装された電源部品およびコネクタと、金属基板とプリント基板とを板面間で接続する端子とを備える。
【0011】
また、本発明に係る他の電動機制御装置は、正方形状の金属基板と、金属基板に実装された電動機駆動用のスイッチング素子と、金属基板の上方に設けられたプリント基板と、両基板を収納するケースと、両基板に対して垂直なケースの側面に設けられた、電動機とスイッチング素子とを接続するための接続部と、プリント基板の金属基板と対面する正方形状の領域内に実装された電動機制御用の半導体素子と、プリント基板の正方形状の領域外に実装されたコネクタと、金属基板とプリント基板とを板面間で接続する端子と、金属基板とプリント基板との間に設けられた樹脂枠と、樹脂枠内に設けられた電源部品とを備える。
【0012】
上記構成によると、電動機の取り付け方向を変更する際には、それに応じて、ケースに対する接続部と金属基板と端子の設置位置を、金属基板と平行に回転させて変更すればよい。また、プリント基板の正方形状の領域内の半導体素子と実装レイアウトを、プリント基板と平行に回転させて変更すればよい。これにより、電動機の取り付け方向の変更を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明では、上記電動機制御装置において、電動機制御用の半導体素子は、少なくともマイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0014】
さらに、本発明では、上記電動機制御装置において、電源部品は、少なくともコイルを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電動機の取り付け方向の変更が容易な電動機制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による電動機制御装置の分解斜視図である。
【図2】図1の電動機制御装置の別角度の分解斜視図である。
【図3】図1の電動機制御装置の正面図である。
【図4】図1の電動機制御装置の側面図である。
【図5】図1の電動機制御装置の底面図である。
【図6】図1の電動機制御装置の断面図である。
【図7】図1の電動機制御装置内の金属基板を示した図である。
【図8】図1の電動機制御装置内のプリント基板を示した図である。
【図9】図1の電動機制御装置と電動機の取り付け状態を示した図である。
【図10】電動機の取り付け方向を反時計回りに90°変更した場合の、電動機制御装置内の金属基板を示した図である。
【図11】同上の場合の、電動機制御装置内のプリント基板を示した図である。
【図12】同上の場合の、電動機制御装置と電動機の取り付け状態を示した図である。
【図13】電動機の取り付け方向を時計回りに90°変更した場合の、電動機制御装置内の金属基板を示した図である。
【図14】同上の場合の、電動機制御装置内のプリント基板を示した図である。
【図15】同上の場合の、電動機制御装置と電動機の取り付け状態を示した図である。
【図16】他の実施形態による電動機制御装置内の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0018】
図1〜図9は、本発明の一実施形態による電動機制御装置100を示している。電動機制御装置100は、自動車の電動式パワーステアリングシステムで使用されるECU(電子制御装置)である。電動機制御装置100は、電動モータから成る電動機60(図9)の駆動を制御する。
【0019】
図1および図2に示すように、電動機制御装置100は、ケース1、カバー2、金属基板3、接続部4、プリント基板5を備えている。ケース1は、図6〜図8に示すように、金属基板3とプリント基板5を収納する。カバー2は、図3および図4に示すように、ケース1の上側を覆う。ケース1とカバー2は、図示しない公知のロック構造により嵌め合わされる。
【0020】
金属基板3は、図7に示すように、ほぼ正方形状に形成されている。金属基板3の中央付近には、電動機60を駆動するためのスイッチング素子6が複数実装されている。スイッチング素子6は、たとえば、FET(Field Effect Transistor)などから成る。金属基板3は、図6および図7に示すように、ケース1内にネジ止めされる。
【0021】
図1、図2、および図7に示すように、金属基板3の端部には、複数の端子7が実装されている。端子7の先端は、はんだ付けにより、プリント基板5に実装される。これにより、端子7は、図6に示すように、金属基板3とプリント基板5とを両者の板面間で接続する。プリント基板5は、金属基板3の上方に金属基板3と平行に設けられる。また、プリント基板5は、図6および図8に示すように、ケース1内にネジ止めされる。
【0022】
両基板3、5に対して垂直なケース1の一方の側面には、接続部4が設けられている。詳しくは、接続部4は、ケース1の短手方向の一方の側面にネジ止めされている。接続部4には、図3に示すように、3つの端子11が設けられている。端子11には、図9に示すように、電動機60に設けられた端子61の先端がネジ止めされる。
【0023】
端子11の先端は、図1に示すように、接続部4の上端から突出している。端子11の先端は、図6に示すように、はんだ付けにより、プリント基板5に実装される。これにより、接続部4は、基板3、5と端子7、11、61を介して、電動機60とスイッチング素子6とを接続する。電動機60は、図9に示すように、ケース1の底面に設けられた固定部15にネジ止めされる。
【0024】
図1および図8に示すように、金属基板3の直上にあるプリント基板5の正方形状の領域50内には、電動機60の駆動を制御するための半導体素子8、9が実装されている。また、端子7、11とコンデンサ10、および図示しない他の電子部品も領域50内に実装されている。
【0025】
半導体素子8、9は、少なくともマイクロコンピュータを含む。本実施形態では、一方の半導体素子8は、主制御用のマイクロコンピュータである。他方の半導体素子9は、スイッチング素子6のON・OFF切り替え用のドライバである。他に、メモリやASICなどの半導体素子を正方形状の領域50内に設けるようにしてもよい。
【0026】
プリント基板5の正方形状の領域50外には、電源部品12、13とコネクタ14とが実装されている。電源部品12、13は、少なくともコイルを含む。本実施形態では、一方の電源部品12は、コイルである。他方の電源部品13は、リレーである。電源部品12、13の実装高さは、他の電子部品に比べて高い。
【0027】
コネクタ14には、図2および図5に示すように、給電用の挿し込み口14aと通信用の挿し込み口14bとが設けられている。コネクタ14の挿し込み口14a、14bは、ケース1の底面に設けられた開口部16から臨める。コネクタ14は、図1、図2、および図6に示すように、プリント基板5にネジ止めされている。
【0028】
次に、上述した電動機制御装置100における、電動機60の取り付け方向の変更について説明する。
【0029】
図10〜図12は、電動機60の取り付け方向を変更した電動機制御装置の例を示している。電動機制御装置100’では、上述の電動機制御装置100と比較して(図7〜図9参照)、ケース1に対する接続部4と金属基板3と固定部15の設置位置が、金属基板3と平行に反時計回りに90°回転している。また、これに伴って、端子7とコンデンサ10の位置も、金属基板3と平行に反時計回りに90°回転している。
【0030】
さらに、プリント基板5の正方形状の領域50内の半導体素子8、9と実装レイアウトが、プリント基板5と平行に反時計回りに90°回転している。これらにより、電動機60が基板3、5に対して平行に反時計回りに90°回転した向きで、電動機制御装置100’に取り付けられている(図9と図12参照)。
【0031】
図13〜図15は、電動機60の取り付け方向を変更した電動機制御装置の他の例を示している。電動機制御装置100”では、上述の電動機制御装置100と比較して(図7〜図9参照)、ケース1に対する接続部4と金属基板3と固定部15の設置位置が、金属基板3と平行に時計回りに90°回転している。また、これに伴って、端子7とコンデンサ10の位置も、金属基板3と平行に時計回りに90°回転している。
【0032】
さらに、プリント基板5の正方形状の領域50内の半導体素子8、9と実装レイアウトが、プリント基板5と平行に時計回りに90°回転している。これらにより、電動機60が基板3、5に対して平行に時計回りに90°回転した向きで、電動機制御装置100”に取り付けられている(図9と図15参照)。
【0033】
このように、上記実施形態によると、電動機60の取り付け方向を変更する際には、それに応じて、ケース1に対する接続部4と金属基板3と端子7と固定部15の設置位置を、金属基板3と平行に回転させて変更すればよい。また、プリント基板5の正方形状の領域50内の半導体素子8、9と実装レイアウトを、プリント基板5と平行に回転させて変更すればよい。これにより、電動機60の取り付け方向の変更を容易に行うことができる。
【0034】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、電源部品12、13をプリント基板5に設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば図16に示すように、金属基板3とプリント基板5との間に樹脂枠17を設けて、この樹脂枠17内に電源部品12、13を設けるようにしてもよい。図16の電動機制御装置200の場合、たとえば、電源部品12、13と接続した端子18を樹脂枠17に設けて、該端子18をプリント基板5に接続するようにすればよい。
【0035】
また、上記実施形態では、接続部4の端子11をプリント基板5に接続した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、接続部4の端子11を金属基板3に接続するようにしてもよい。このようにしても、電動機60とスイッチング素子6とが電気的に接続される。
【0036】
さらに、上記実施形態では、電動式パワーステアリングシステムで使用される電動機制御装置100に本発明を適用した例を挙げたが、これ以外の電動機制御装置に対しても本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ケース
2 カバー
3 金属基板
4 接続部
5 プリント基板
6 スイッチング素子
7 端子
8、9 半導体素子
12、13 電源部品
14 コネクタ
17 樹脂枠
50 プリント基板の正方形の領域
60 電動機
100、100’、100”、200 電動機制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正方形状の金属基板と、
前記金属基板に実装された電動機駆動用のスイッチング素子と、
前記金属基板の上方に設けられたプリント基板と、
前記両基板を収納するケースと、
前記両基板に対して垂直な前記ケースの側面に設けられた、電動機と前記スイッチング素子とを接続するための接続部と、
前記金属基板の直上にある前記プリント基板の正方形状の領域内に実装された電動機制御用の半導体素子と、
前記プリント基板の前記正方形状の領域外に実装された電源部品およびコネクタと、
前記金属基板と前記プリント基板とを板面間で接続する端子と、を備えたことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項2】
正方形状の金属基板と、
前記金属基板に実装された電動機駆動用のスイッチング素子と、
前記金属基板の上方に設けられたプリント基板と、
前記両基板を収納するケースと、
前記両基板に対して垂直な前記ケースの側面に設けられた、電動機と前記スイッチング素子とを接続するための接続部と、
前記金属基板の直上にある前記プリント基板の正方形状の領域内に実装された電動機制御用の半導体素子と、
前記プリント基板の前記正方形状の領域外に実装されたコネクタと、
前記金属基板と前記プリント基板とを板面間で接続する端子と、
前記金属基板と前記プリント基板との間に設けられた樹脂枠と、
前記樹脂枠内に設けられた電源部品と、を備えたことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動機制御装置において、
前記電動機制御用の半導体素子は、少なくともマイクロコンピュータを含む、ことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記電源部品は、少なくともコイルを含む、ことを特徴とする電動機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−65696(P2013−65696A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203525(P2011−203525)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】