説明

電動歯ブラシ及びこれを備えた口腔内洗浄装置

【課題】施術者の扱い勝手が良く、また、十分な術野を容易に確保することができ、しかもブラシ交換のためのコストが低廉な電動歯ブラシ等を提供する。
【解決手段】この電動歯ブラシ30は、使用者が把持する胴部33、及び胴部33に連結されるブラシ支持部51からなる容器体32と、ブラシ支持部の先端部に支持されるカップ型歯ブラシ65と、カップ型歯ブラシ65を往復回転させる駆動機構36とを備える。カップ型歯ブラシ65には、中心部に給水用開口部71が形成され、ブラシ支持部51には、カップ型歯ブラシ65の周辺に吸引用の開口部が形成される。また、容器体32内には、内部給水管44,45、及び内部排水管46,47が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介護者の口腔ケアに適した電動歯ブラシ及びこれを備えた口腔内洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、要介護者の口腔ケアに用いられる電動歯ブラシ及び口腔内洗浄装置として、特開平11−103938号公報に開示されたものが知られている。
【0003】
この口腔内洗浄装置は、略円筒状をなす胴部と、この胴部の先端に着脱自在に差し込まれた歯ブラシヘッドからなる電動歯ブラシを備える。歯ブラシヘッドは、胴部の長手方向に沿って直線的に往復動し、その植毛面には、当該植毛面に植えられた刷毛に洗浄液を供給するための給液孔と、刷毛によって掻き落とされた食物残滓,唾液,汚れた洗浄液などを回収するための吸引孔とが穿設されている。
【0004】
また、歯ブラシヘッドの背面には、吸引管コネクタと給液管コネクタを備えたニップルが固設されており、このコネクタに、給液管及び吸引管からなるダブルチューブが接続されている。
【0005】
そして、給液管は、装置本体のチューブポンプに接続され、洗浄液容器に貯留された洗浄液がこのチューブポンプによって給液管内に送液される。また、吸引管は、吸引ポンプに接続され、この吸引ポンプによって生じた負圧が吸引管内に作用する。
【0006】
斯くして、この口腔内洗浄装置では、まず、吸引ポンプを作動させて吸引管内に負圧を作用させ、これに通じる歯ブラシヘッドの吸引孔に負圧を作用させる。ついで、チューブポンプを駆動して洗浄液を給液管内に送液し、この給液管を介して歯ブラシヘッドの給液孔に洗浄液を給液して、当該給液孔から洗浄液を吐出させる。
【0007】
そして、施術者は、このようにして吸引孔に負圧を作用させ、給液孔から洗浄液を吐出させた状態の電動歯ブラシを用い、その歯ブラシヘッドを往復動させて、受術者(要介護者)の口腔内を処置(歯磨き)する。
【0008】
刷毛に洗浄液を供給しながら処置することでで、食物残滓などを効果的に除去することができ、また、吸引孔に負圧を作用させることで、除去した食物残滓,唾液などを、当該吸引孔内に吸引して、これらを口腔内から排出することができる。
【0009】
【特許文献1】特開平11−103938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上述した従来の電動歯ブラシは、吸引孔に負圧を作用させる吸引管と、洗浄液を給液孔に供給する給液管とが外部に設けられ、これらが、歯ブラシヘッドの背面に設けられた各コネクタに接続された構造となっているので、狭い口腔内での電動歯ブラシの操作が容易ではなく、また、歯ブラシヘッドの往復動に伴って、給液管及び吸引管(ダブルチューブ)が振動するため、施術者は、電動歯ブラシの他に、このダブルチューブをも把持して操作しなければならず、その扱い勝手が極めて悪いものであった。
【0011】
また、上述した従来の電動歯ブラシでは、歯ブラシヘッドの中間部分、即ち、胴部に接続される部分と、先端の刷毛が設けられる部分との間が、細くくびれた形状に成形されている。このため、受術者が口を閉じ易く、即ち、施術者からすると、刷毛部分を視認しづらい(術野が十分に確保できない)状態となり易く、十分な歯磨き効果が得られないという問題もあった。この場合、施術者は、指を使って口唇を動かす必要があるが、上記のように、施術者は、電動歯ブラシの他にダブルチューブも操作しなければならないため、このような術野を広げる作業を行い難い。
【0012】
また、使用によって刷毛部分が損耗した場合には、歯ブラシヘッド全体を新品のものと交換する必要があるため、交換のためのコストが高いという問題もあった。
【0013】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたもので、施術者の扱い勝手が良く、また、十分な術野を容易に確保することができ、ブラシ交換のためのコストが低廉な電動歯ブラシ及びこれを備えた口内洗浄装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明は、使用者が使用に際して把持する中空筒型の胴部と、この胴部の一方端部からその外方に延出するように設けられた、同じく中空筒型をしたブラシ支持部とからなる容器体と、
軸中心に回転自在に支持され、且つ前記軸線が前記容器体の長手方向と交差するように、前記ブラシ支持部の先端部に支持されたカップ型歯ブラシと、
前記容器体内に収容される駆動機構であって、電動モータを有し、該電動モータの動力を前記カップ型歯ブラシに伝達して、前記軸中心左右方向に往復回転させる駆動機構とを備えた電動歯ブラシにおいて、
前記カップ型歯ブラシには、中心部に給水用の開口部が形成されるとともに、前記容器体のブラシ支持部には、前記カップ型歯ブラシが装着されるその周辺であって、前記胴部側周辺に吸引用の開口部が形成されてなり、
更に、前記容器体内には、一方端が前記カップ型歯ブラシに形成された給水用開口部に接続され、他端が前記胴部の他方端部から外方に突出した給水管と、一方端が前記ブラシ支持部に形成された吸引用開口部に接続され、他端が前記胴部の他方端部から外方に突出した排水管とが配設された電動歯ブラシに係る。
【0015】
また、本発明は、上記の電動歯ブラシを備えた口腔内洗浄装置であって、前記給水管の前記他端に接続して加圧した洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記排水管の前記他端に接続して該排水管に負圧を作用させる吸引手段とを備えた口腔内洗浄装置に係る。
【0016】
この口腔内洗浄装置によれば、まず、吸引手段を駆動して、電動歯ブラシの排水管に負圧を作用させ、これとともに、洗浄液供給手段を駆動して、電動歯ブラシの給水管に加圧した洗浄液を供給する。これにより、電動歯ブラシの吸引用開口部に負圧が作用するとともに、カップ型歯ブラシの中心部に形成された給水用開口部から洗浄液が吐出される。
【0017】
そして、この状態の電動歯ブラシを用い、施術者は、そのカップ型歯ブラシを往復回転させて、受術者(要介護者)の口腔内を処置(歯磨き)する。斯くして、カップ型歯ブラシの給水用開口部から洗浄液を吐出させて、施術部に洗浄液を供給しながら処置することで、歯ブラシによる食物残滓などの除去を効果的に行うことができ、また、吸引用開口部に負圧を作用させることで、除去した食物残滓や唾液などを、当該吸吸引用開口部から吸引して口腔内から排出することができる。
【0018】
そして、その際、給水管及び排水管が容器体内に収納されているので、施術者は、電動歯ブラシのみを操作すれば良く、上述した従来の電動歯ブラシに比べて、狭い口腔内での操作を容易に行うことでき、その扱い勝手が極めて良好である。
【0019】
また、本発明では、上記のように、給水管及び排水管を、胴部及びブラシ支持部から構成される容器体内に収納しているので、ブラシ支持部は、給水管及び排水管を収納することができる程度の内容積が必要である。このため、ブラシ支持部は、従来のような細くくびれた形状ではなく、自ずと、カップ型歯ブラシの直径と略同じ寸法の太さを有するものとなる。
【0020】
したがって、本発明の電動歯ブラシでは、従来のものに比べて、施術中に受術者が口を閉じ難く、言い換えれば、施術者の術野を確保し易いため、十分な歯磨き効果を得やすいというメリットもある。
【0021】
この意味において、本発明に係る電動歯ブラシは、前記カップ型歯ブラシの軸線を含み、前記容器体の長手方向と平行な平面を基準として、前記ブラシ支持部の両側に、それぞれ外側に膨出する膨出部が形成されたものであるのが好ましい。
【0022】
ブラシ支持部の両側にそれぞれ形成された膨出部は、ブラシ支持部を口腔内に挿入した際に口唇を押し広げる役割を為す。したがって、施術者の術野をより十分に確保することができ、より効果的な歯磨き効果を行うことができる。
【0023】
また、より広い術野を確保するためには、前記ブラシ支持部を、カップ型歯ブラシが装着される側とは反対側に傾倒させた形態とするのが好ましい。このようにすれば、施術者が電動歯ブラシを把持して、そのカップ型歯ブラシを受術者の歯部に当てた際に、ブラシ支持部が傾倒している関係から、電動歯ブラシを把持した施術者自身の手や、電動歯ブラシの胴部が、施術者の視線から外側に外れるため、施術者は、そのままの姿勢で、直接術部を視認することができ、正確な処理を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る電動歯ブラシは、前記カップ型ブラシに向け光を照射して照明するランプを前記胴部に備えたものであっても良い。受術者の口腔内は、薄暗いため、そのままでは、術部を正確に視認し難いが、前記ランプによって術部を照明することができるので、当該術部を正確に視認することができ、より正確な処理を行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る電動歯ブラシは、カップ型歯ブラシが着脱自在にブラシ支持部に支持されていても良い。このようにすれば、使用によってカップ型歯ブラシが損耗した場合に、当該カップ型歯ブラシのみを新たなものと交換すれば良いので、ブラシ支持部とこれに支持されるカップ型歯ブラシとを交換するように構成された従来のものに比べて、ブラシ交換のためのコストを低減することができる。
【0026】
また、本発明における前記洗浄液供給手段は、給水管の前記他端に接続される柔軟性を備えた外部給水管を具備し、更に、この外部給水管に当接して押圧する押圧部材と、この押圧部材を前記外部給水管に対し進退させて、前記外部給水管に対する押圧の度合いを調整する調整機構とからなる流量調節手段を備えていても良い。
【0027】
電動歯ブラシから吐出される洗浄液の量は、これが多すぎると、完全には前記吸引用開口部から吸引,排水することができず、受術者の口腔内に徐々に溜まって、受術者の負担になるばかりでなく、口腔内から洗浄液が漏れ出して周囲が汚れるという不都合があり、逆に少なすぎると、期待通りの洗浄効果を得ることができないという問題がある。したがって、洗浄液の吐出量は、十分な洗浄効果が得られ、しかも、完全に吸引用開口部から吸引して排水することができる程度の適量なものである必要がある。
【0028】
上記構成の流量調節手段を設ければ、外部給水管に対する押圧部材の押圧度合いを調整することによって、前記給水管に供給される洗浄液の供給流量、即ち、前記給水用開口部から吐出される洗浄液の吐出量を微調整することができ、上記の適量な洗浄液を給水用開口部から吐出させることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上詳述したように、本発明によれば、電動歯ブラシの給水管及び排水管が容器体内に収納されているので、施術者は、電動歯ブラシのみを操作すれば良く、上述した従来の電動歯ブラシに比べて、狭い口腔内での操作を容易に行うことでき、その扱い勝手が極めて良好である。
【0030】
また、ブラシ支持部は、自ずとカップ型歯ブラシの直径と略同じ寸法の太さを有するものとなるため、施術中に受術者が口を閉じ難く、言い換えれば、施術者の術野を確保し易いため、十分な歯磨き効果を得やすいというメリットもある。
【0031】
ブラシ支持部の両側にそれぞれ膨出部を設けると、この膨出部が口唇を押し広げる役割を為すため、より十分な術野を確保することができ、より効果的な歯磨き効果を行うことができる。
【0032】
更に、ブラシ支持部を傾倒させた形態とすれば、施術者がカップ型歯ブラシを受術者の歯部に当てた際に、電動歯ブラシを把持した施術者自身の手や、電動歯ブラシの胴部によって、術部が死角となるのを防止することができ、施術者は、そのままの姿勢で、直接術部を視認することができ、正確な処理を行うことができる。
【0033】
また、カップ型ブラシに向けて光を照射して照明するランプを胴部に設ければ、このランプによって術部を照明することができるので、当該術部を正確に確認することができ、正確な処理を行うことができる。
【0034】
また、カップ型歯ブラシをブラシ支持部に対して着脱自在に設けると、当該カップ型歯ブラシのみを新たなものと交換すれば良いので、ブラシ交換のためのコストを低減することができる。
【0035】
更に、外部給水管に対する押圧部材の押圧度合いを調整することによって、給水管に供給される洗浄液の供給流量を調節するように構成された流量調節手段を設ければ、給水用開口部から吐出される洗浄液の吐出量を微調整することができ、適量の洗浄液を給水用開口部から吐出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施形態につき、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る口腔内洗浄装置の概略構成を一部ブロック図で示した説明図である。
【0037】
図1に示すように、本例の口腔内洗浄装置1は、電動歯ブラシ30と、この電動歯ブラシ30に加圧した洗浄液を供給する洗浄液供給部3と、電動歯ブラシ30に負圧を作用させる吸引部21と、コントローラ2とを備える。
【0038】
洗浄液供給部3は、洗浄液を貯留する容器4と、この容器4内の洗浄液を加圧して吐出する加圧ポンプ5と、この加圧ポンプ5を駆動する電動モータ6と、一端が電動歯ブラシ30に接続され、他端が加圧ポンプ5の吐出部に接続される柔軟性を備えた外部給水管7と、この外部給水管7の途中に設けられた流量調節装置10とからなる。
【0039】
容器4はどのような形状のものでも良いが、簡易的には、カップ状のものが適用される。また、電動モータ6は、コントローラ2によってその回転速度が無段階に変速されるようになっており、この電動モータ6の回転速度を制御することによって、加圧ポンプ5から吐出される洗浄液の吐出流量が無段階に調節されるようになっている。
【0040】
流量調節装置10は、図10及び図11に示すように、基部材11と、この基部材11に係合されるカバー部材15と、押圧部材17とからなる。基部材11には、その上面及び長手方向両端面に開口する溝12が形成され、その両側面12b,12cにはそれぞれ溝12の長手方向に沿って、底面12aに対し所定の勾配を持つように溝13,14が形成されている。
【0041】
前記押圧部材17は、操作円板18と、この操作円板18の中心に、その両端面からそれぞれ外方に延出するように設けられた中心軸19,19とからなり、この中心軸19,19の端部がそれぞれ基部材11の溝13,14に挿入されている。
【0042】
そして、上記の柔軟性を備えた外部給水管7が操作円板18と底面12aとの間に配置され、当該操作円板18と底面12aとの間で押圧されて、扁平に変形した状態となっている。
【0043】
斯くして、操作円板18を矢示a方向に回転させると、外部給水管7と操作円板18との摩擦抵抗により、当該操作円板18は矢示c方向、即ち底面12aに対し上り傾斜方向に移動して、操作円板18と底面12aとの間隔がより狭まり、外部給水管7がより扁平に変形して、その管路口径が縮小し、当該外部給水管7内を流通する洗浄液の流量が絞られる。
【0044】
逆に、操作円板18を矢示b方向に回転させると、当該操作円板18は矢示d方向、即ち底面12aに対し下り傾斜方向に移動して、操作円板18と底面12aとの間隔が広がり、外部給水管7が円形に回復する方向に復形して、その管路口径が拡大し、当該外部給水管7内を流通する洗浄液の流量が増加する。
【0045】
このように、この流量調節装置10によれば、操作円板18を矢示a−b方向に移動させることで、外部給水管7内を流通する洗浄液の流量を調整することができ、しかも、溝13,14と底面12aとの勾配によって、外部給水管7に対する操作円板18の押圧の度合い、言い換えれば、外部給水管7の変形の度合いが調整されるので、当該流量を微調整することができる。
【0046】
前記吸引部21は、密閉空間を有する吸引ボックス22と、この吸引ボックス22内の空気を外部に排気する真空ポンプ23と、この真空ポンプ23を駆動する電動モータ24と、一端が電動歯ブラシ30に接続され、他端が吸引ボックス22に接続される外部排水管25とからなる。
【0047】
電動モータ24により駆動される真空ポンプ23によって、吸引ボックス22内の空気が外部に排気されると、当該吸引ボックス22内が負圧となり、この負圧が外部排水管25を介して電動歯ブラシ30に作用する。
【0048】
この電動モータ24も上記の電動モータ6と同様に、コントローラ2によってその回転速度が無段階に変速されるようになっており、この電動モータ24の回転速度を制御することによって、吸引ボックス22内の圧力を無段階に調節することができるようになっている。
【0049】
尚、前記容器4,加圧ポンプ5,電動モータ6,吸引ボックス22,真空ポンプ23及び電動モータ24は、適当なボックス26内に収納されている。
【0050】
前記電動歯ブラシ30は、図2乃至図6に示すように、中空筒型の胴部33と、この胴部33の一方端部に着脱可能に連結された、同じく中空筒型をしたブラシ支持部51とからなる容器体32と、ブラシ支持部51の先端部に支持されたカップ型歯ブラシ65と、容器体32内に設けられた駆動機構36、第1の内部給水管44、第2の内部給水管45、第1の内部排水管46及び第2の内部排水管47などを備える。
【0051】
前記胴部33は、中空筒型の管状部材34と、その連結側の端部を封止する封止部材50と、反対側の端部を封止するエンド部材35とからなり、その内部に、フレーム31が設けられている。また、エンド部材35には給水用コネクタ62、排水用コネクタ63及び電力入力端子64が設けられ、封止部材50には、給水用コネクタ48、排水用コネクタ49及び中空軸状の連結部(図示せず)が設けられている。
【0052】
そして、エンド部材35の給水用コネクタ62と、封止部材50の給水用コネクタ48との間に、第1の内部給水管44が設けられて、この第1の内部給水管44の端部がそれぞれ給水用コネクタ62,48に接続され、また、エンド部材35の排水用コネクタ63と、封止部材50の排水用コネクタ49との間には、第1の内部排水管46が設けられて、この第1の内部排水管46の端部がそれぞれ排水用コネクタ63,49に接続されている。また、給水用コネクタ62の外端には、前記外部給水管7の他端が接続され、排水用コネクタ63の外端には、前記外部排水管25の他端が接続されている。
【0053】
前記駆動機構36は、フレーム31に支持された電動モータ37及びかさ歯車38bと、電動モータ37の出力軸に固着され、前記かさ歯車38bと噛合するかさ歯車38aと、一端が前記かさ歯車38bの端面にピン42によって軸着されたクランクアーム39と、一端がクランクアーム39の他端にピン43によって連結されたクランクロッド40と、このクランクロッド40の他端に対して係脱可能に設けられた駆動ロッド41とからなる。前記電動モータ37は、前記電力入力端子64と電気的に接続されており、この電力入力端子64を通して前記コントローラ2から電力が供給され、前記かさ歯車38aを回転させる。
【0054】
前記ブラシ支持部51は、上面に開口部を有する中空筒型の支持部本体52と、この支持部本体52の前記開口部を封止する蓋部材54と、支持部本体52の連結側の端部を封止する封止部材55とからなる。
【0055】
支持部本体52は、胴部33の軸線(長手方向)を基準として、上面側に反った(傾倒した)状態に形成されており、図7及び図8に示すように、その先端部下面には、フランジ状の縁部を有する円形の開口部61が形成されている。そして、この開口部61には、縁部を上下に貫通するキー溝状の鉤穴61aが、ブラシ支持部51の長手方向に沿って180°間隔で2箇所形成されている。また、この開口部61の胴部33寄りの近傍位置には、当該開口部61に沿った円弧状の開口部60が形成されている。
【0056】
また、この支持部本体52の両側の側面には、それぞれ外方に膨出した膨出部53,53が形成されている。
【0057】
前記封止部材55には、給水用コネクタ56,排水用コネクタ57及び中空軸状の連結部58が設けられ、この連結部58の中空部内に前記胴部33の連結部(図示せず)が挿入されることで、両連結部が連結され、ブラシ支持部51が胴部33に装着,連結される。そして、ブラシ支持部51が胴部33に連結されることで、前記給水用コネクタ48,56の外端面同士が接合,連結され、排水用コネクタ49,57の外端面同士が接合,連結される。
【0058】
尚、前記クランクロッド40の他端及び駆動ロッド41の一端は、封止部材50の連結部(図示せず)及び封止部材55の連結部58の各中空部内に挿通されて、同中空部内で係脱可能に係合しており、ブラシ支持部51が胴部33から取り外されたとき、その係合が解かれ、ブラシ支持部51が胴部33に装着されたとき、両者が係合する。
【0059】
また、前記給水用コネクタ56には第2の内部給水管45の一端が接続され、排水用コネクタ57には第2の内部排水管47の一端が接続されている。
【0060】
図8及び図9に示すように、前記蓋部材54は、その下面に、下方に垂下する中空の支持軸59が形成されている。この支持軸59はその下面が開口しており、その外周面には内周面に貫通する貫通孔59aが穿設されている。
【0061】
そして、この蓋部材54を支持部本体52に装着したとき、その支持軸59と、支持部本体52に固着された第2の内部給水管45の他端部が当接し、この第2の内部給水管45に穿設された貫通孔45aと前記支持軸59の貫通孔59aとが連通するようになっている。
【0062】
前記カップ型歯ブラシ65は、上部68が小径で下部67が大径の段付円柱形状をした基部66と、基部66の下面に植設されたブラシ70とからなる。基部66の上面には、その中心部に、前記支持軸59が挿入される被支持孔69が形成され、この被支持孔69の下面から基部66の下面に貫通する吐出孔71が穿設されている。
【0063】
また、小径部68の外周面上部には、大径部67の上面から、前記開口部61の縁部の厚さ以上の距離を隔てた位置に、前記鉤穴61a内を通過可能なキー状の突出部68aが、周方向に180°間隔で2箇所形成されている。
【0064】
また、基部66の上面には、一つの前記突出部68aと同じ位相位置にピン72が立設され、このピン72によって、前記駆動ロッド41の他端部が係脱可能に軸通されている。
【0065】
斯くして、このカップ型歯ブラシ65は、蓋部材54を支持部本体52から取り外した状態で、駆動ロッド41をピン72から取り外し、この後、前記開口部61に形成された鉤穴61aと、当該カップ型歯ブラシ65の突出部68aとが一致するように当該カップ型歯ブラシ65を回転させて、これを下方に移動させると、これを支持部本体52から取り外すことができる。
【0066】
逆に、前記開口部61に形成された鉤穴61aと、当該カップ型歯ブラシ65の突出部68aとを一致させて、これを上方に移動させると、その小径部68の上部が支持部本体52内に挿入され、ついで、これを中心軸回りに回転させると、大径部67の上面と突出部68aの下面との間に、開口部61の縁部が入り込み、これによってカップ型歯ブラシ65の脱落が防止され、当該カップ型歯ブラシ65が支持部本体52に装着される。
【0067】
ついで、駆動ロッド41をピン72係合させた後、蓋部材54を支持部本体52に装着すると、その支持軸59が、上記のように、第2の内部給水管45の他端部に当接するとともに、カップ型歯ブラシ65の被支持孔69に挿入され、この支持軸59によって当該カップ型歯ブラシ65が回転自在に支持される。
【0068】
以上の作業によって、カップ型歯ブラシ65のみを交換することができる。
【0069】
また、前記第2の内部排水管47の他端は、その開口部47aが、支持部本体52に形成された開口部60と連通するように、当該支持部本体52に固着されている。そして、カップ型歯ブラシ65の大径部67の厚さは、図7及び図8に示した状態において、その胴部33側の厚さtが、先端側の厚さtよりも薄くなっている。
【0070】
また、前記封止部材50の下部側には、カップ型歯ブラシ65に向けて光を照射して照明するランプ75が設けられており、このランプ75は、前記電力入力端子64と電気的に接続され、この電力入力端子64を通して外部から電力が供給される。尚、このランプ75は管状部材34の膨出部34aによってカバーされている。
【0071】
また、前記胴部33には、スイッチ76,77が設けられており、スイッチ76はランプ75と電力入力端子64との間に介在して、ランプ75への通電を入り切りし、スイッチ77は前記電動モータ37と電力入力端子64との間に介在して、当該電動モータ37への通電を入り切りする。
【0072】
尚、駆動機構36の電動モータ37に電力が供給されると、この電動モータ37によってかさ歯車38aが回転し、これによりこれと噛合するかさ歯車38bが回転して、このかさ歯車38bの回転運動が、クランクアーム39及びクランクロッド40のリンク関係によって、胴部33の長手方向に沿った往復直線運動に変換され、この往復直線運動が、クランクロッド40との係合関係によって駆動ロッド41に伝達され、駆動ロッド41とピン72を介して係合するカップ型歯ブラシ65が、この駆動ロッド41の往復直線運動によって、支持軸59の軸心を中心として、その回りに往復回転する。
【0073】
斯くして、以上の構成を備えた本例の口腔内洗浄装置1によれば、施術者は、まず、コントローラ2による制御の下、洗浄液供給部3の電動モータ6と吸引部21の電動モータ6とを作動させる。
【0074】
電動モータ6が駆動されると、これによって加圧ポンプ5が作動し、容器4内に貯留された洗浄液がこの加圧ポンプ5によって加圧され外部給水管7に吐出される。そして、この外部給水管7に供給された洗浄液は、流量調節装置10によってその流量が調節され、調節された流量の洗浄液が電動歯ブラシ30に供給される。
【0075】
一方、電動モータ24が駆動されると、これによって真空ポンプ23が作動し、この真空ポンプ23によって吸引ボックス22内が負圧となり、外部排水管25を介して電動歯ブラシ30に負圧が作用する。尚、この真空ポンプ23によって吸引ボックス22内に生成される負圧も、コントローラ2によって無段階に調節される。
【0076】
そして、洗浄液が供給された電動歯ブラシ30では、給水用コネクタ62から第1の内部給水管44内に洗浄液が流入し、以降、給水用コネクタ48,56、第2の内部給水管45を順次介して、その貫通孔45aから支持軸59の内部空間59b内に流入し、カップ型歯ブラシ65の中心部に穿設された吐出孔71から外部に吐出する。
【0077】
また、排水管25に作用する負圧は、排水用コネクタ63、第1の内部排水管46、排水用コネクタ49,57、及び第2の内部排水管47を順次介して、最終的に、その開口部47aから、支持部本体52の開口部59に作用する。
【0078】
尚、加圧ポンプ5から吐出される洗浄液の吐出流量は、コントローラ2の制御によって無段階に調節することができ、更に、カップ型歯ブラシ65の吐出孔71から吐出される洗浄液の吐出流量は流量調節装置10によって微調整することができる。また、真空ポンプ23によって吸引ボックス22内に生成される負圧は、コントローラ2によって無段階に調節することができ、したがって、電動歯ブラシ30の開口部59に作用する負圧も、無段階に調節することができる。
【0079】
そして、このようにして、電動歯ブラシ30に洗浄液が供給され、負圧が作用すると、次に、施術者は、この状態の電動歯ブラシ30を用い、スイッチ76をONにしてランプ75を点灯させるとともに、スイッチ77をONにしてカップ型歯ブラシを往復回転させ、受術者(要介護者)の口腔内を処置(歯磨き)する。
【0080】
その際、カップ型歯ブラシ65の吐出孔71から洗浄液を吐出させて、施術部に洗浄液を供給しながら処置することができるので、ブラシ70による食物残滓などの除去を効果的に行うことができ、また、開口部59に負圧が作用しているので、除去した食物残滓,洗浄液や唾液などが、この負圧によって当該開口部59から吸引され、口腔内から排出される。
【0081】
尚、開口部59から吸引された食物残滓などは、第2の内部排水管47の開口部47aから当該第2の内部排水管47内に吸引され、以降、第1の内部排水管44,外部排水管25を経て、吸引ボックス22内に回収される。
【0082】
また、第1の給水管44及び第1の排水管46を胴部33内に収納し、第2の給水管45及び第2の排水管47をブラシ支持部51内に収納した構成としているので、施術者は、電動歯ブラシ30のみを操作すれば良く、従来の電動歯ブラシに比べて、狭い口腔内での操作を容易に行うことでき、その扱い勝手が極めて良好である。
【0083】
また、このように第2の給水管45及び第2の排水管47をブラシ支持部51内に収納した構成としているので、ブラシ支持部51は、第2の給水管45及び第2の排水管47を収納するための広い内容積が必要であり、このため、ブラシ支持部51は、従来のような細くくびれた形状ではなく、自ずと、カップ型歯ブラシ65の直径と略同じ寸法の太さを有するものとなっている。更に、その両側面には、外方に膨出する膨出部53,53が設けられている。この膨出部53,53は、ブラシ支持部51を口腔内に挿入した際に口唇を押し広げる役割を為すものである。
【0084】
このように、本例の電動歯ブラシ30では、ブラシ支持部51の太さが従来のものに比べて太いので、施術中に受術者が口を閉じ難く、施術者の術野を確保し易いため、十分な歯磨き効果を得やすいというメリットがある。また、膨出部53,53を用いて口唇を押し広げれば、施術者の術野をより十分に確保することができ、より効果的な歯磨き効果を行うことができる。
【0085】
また、本例の電動歯ブラシ30では、ブラシ支持部51を、カップ型歯ブラシ65が装着される側とは反対側に傾倒させた形態としているので、施術者が電動歯ブラシ30を把持して、そのカップ型歯ブラシ65を受術者の歯部に当てた際に、ブラシ支持部51が傾倒している関係から、電動歯ブラシ30を把持した施術者自身の手や、電動歯ブラシ30の胴部33が、施術者の視線から外側に外れるため、施術者は、そのままの姿勢で、直接術部を視認することができ、より正確な処理を行うことができる。
【0086】
また、本例の電動歯ブラシ30では、カップ型ブラシ65に向けて光を照射して照明するランプ75を胴部33に設けており、このランプ75によって術部を照明することで、当該術部を正確に視認することができ、より正確な処理を行うことができる。
【0087】
また、本例の口腔内洗浄装置1では、電動歯ブラシ30から吐出される洗浄液の吐出流量を、流量調節装置10によって微調整することができるので、洗浄に必要な適量を術部に供給することができる。したがって、給水量が多すぎることで、洗浄液が受術者の口腔内に蓄積して、当該口腔内から漏れ出すといった不都合や、逆に少ないために、期待通りの洗浄効果を得ることができないといった問題が生じるのを防止することができる。
【0088】
カップ型歯ブラシ65の大径部67の厚さは、胴部33側の厚さtが、先端側の厚さtよりも薄くなっているので、電動歯ブラシ30を上下反転させ、カップ型歯ブラシ65を上に向けた状態で洗浄作業を行う場合、基部66のブラシ植毛面が胴部33側に向けた下り傾斜となるため、吐出孔71から吐出された洗浄液がこの傾斜によって、開口部59に導かれ、容易に当該開口部59から排出される。
【0089】
また、本例の電動歯ブラシ30では、カップ型歯ブラシ65が損耗した場合に、当該カップ型歯ブラシ65のみを新品のものに交換することができるので、ブラシ支持部51とこれに支持されるカップ型歯ブラシ65とを交換するように構成された従来のものに比べて、ブラシ交換のためのコストを低減することができる。
【0090】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、これに限定されるものではない。
【0091】
特に付言するならば、上記の例では、ブラシ支持部51の支持部本体52に膨出部53を形成したが、施術者の術野を十分に確保できる場合には、図12及び図13に示すように、特にこれを設ける必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、要介護者の口腔ケア用の電動歯ブラシ及びこれを備えた口腔内洗浄装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施形態に係る口腔内洗浄装置の概略構成を一部ブロック図で示した説明図である。
【図2】本実施形態に係る電動歯ブラシを示した正面図である。
【図3】本実施形態に係る電動歯ブラシの平面図である。
【図4】本実施形態に係る電動歯ブラシの底面図である。
【図5】本実施形態に係る電動歯ブラシの側面である。
【図6】本実施形態に係る電動歯ブラシの底面側から見た破断断面図である。
【図7】本実施形態に係る電動歯ブラシの先端部の平断面図であり、図8における矢示C−C断面図である。
【図8】図7における矢示A−A方向の断面図である。
【図9】図7における矢示B−B方向の断面図である。
【図10】本実施形態に係る流量調整装置の断面図であり、図11における矢示E−E方向の断面図である。
【図11】図10における矢示D−D方向の断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る電動歯ブラシを示した正面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る電動歯ブラシを示した平面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 口腔内洗浄装置
2 コントローラ
3 洗浄液供給部
7 外部給水管
10 流量調整装置
21 吸引部
25 外部排水管
30 電動歯ブラシ
32 容器体
33 胴部
36 駆動機構
44 第1の内部給水管
45 第2の内部給水管
46 第1の内部排水管
47 第2の内部排水管
51 ブラシ支持部
53 膨出部
60 開口部
65 カップ型歯ブラシ
71 吐出孔
75 ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が使用に際して把持する中空筒型の胴部と、この胴部の一方端部からその外方に延出するように設けられた、同じく中空筒型をしたブラシ支持部とからなる容器体と、
軸中心に回転自在に支持され、且つ前記軸線が前記容器体の長手方向と交差するように、前記ブラシ支持部の先端部に支持されたカップ型歯ブラシと、
前記容器体内に収容される駆動機構であって、電動モータを有し、該電動モータの動力を前記カップ型歯ブラシに伝達して、前記軸中心左右方向に往復回転させる駆動機構とを備えた電動歯ブラシにおいて、
前記カップ型歯ブラシには、中心部に給水用の開口部が形成されるとともに、前記容器体のブラシ支持部には、前記カップ型歯ブラシが装着されるその周辺であって、前記胴部側周辺に吸引用の開口部が形成されてなり、
更に、前記容器体内には、一方端が前記カップ型歯ブラシに形成された給水用開口部に接続され、他端が前記胴部の他方端部から外方に突出した給水管と、一方端が前記ブラシ支持部に形成された吸引用開口部に接続され、他端が前記胴部の他方端部から外方に突出した排水管とが、配設されてなることを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記カップ型歯ブラシの軸線を含み、前記容器体の長手方向と平行な平面を基準として、前記ブラシ支持部の両側に、それぞれ外側に膨出する膨出部を形成したことを特徴とする請求項1記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ支持部は、前記カップ型歯ブラシが装着される側とは反対側に傾倒するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記カップ型ブラシに向けて光を照射して照明するランプが、前記胴部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかの電動歯ブラシ。
【請求項5】
前記カップ型歯ブラシが着脱自在に前記ブラシ支持部に支持されてなることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかの電動歯ブラシ。
【請求項6】
請求項1乃至5記載のいずれかの電動歯ブラシと、
前記給水管の前記他端に接続して加圧した洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記排水管の前記他端に接続して該排水管に負圧を作用させる吸引手段とを備えてなることを特徴とする口腔内洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液供給手段は、前記給水管の前記他端に接続される柔軟性を備えた外部給水管を具備してなり、
更に、前記外部給水管に当接して押圧する押圧部材と、この押圧部材を前記外部給水管に対し進退させて、前記外部給水管に対する押圧の度合いを調整する調整機構とからなる流量調節手段を備えてなることを特徴とする請求項6記載の口腔内洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−29659(P2008−29659A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207513(P2006−207513)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(306026315)
【Fターム(参考)】