説明

電動歯ブラシ及び取替用ブラシ

【課題】口腔清掃時に不快な振動が手や唇などに伝わりにくく、ハンドル部の小型化を図ることによって操作性の向上を図りつつ、刷掃能力の更なる向上を可能とした使い勝手の良い電動歯ブラシを提供する。
【解決手段】電源6及び制御回路7が配置されたハンドル部3と、ハンドル部3から延長されたネック部4と、ネック部4の先端に設けられたヘッド部5とを備え、電源6からヘッド部5に電力が供給されて、制御回路7によりヘッド部5の駆動が制御される電動歯ブラシ1であって、ヘッド部5が、植毛面9aに複数の刷毛10が植設された可動部9と、可動部9を保持する固定部11と、可動部9を少なくとも植毛面9aと直交する方向に往復振動させる駆動機構12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に駆動される電動歯ブラシ及びその取替用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動歯ブラシとしては、回転(スピン)タイプ(例えば、特許文献1を参照。)、振動モータタイプ(例えば、特許文献2を参照。)、リニアモータタイプ(例えば、特許文献3を参照。)、超音波タイプ(例えば、特許文献4を参照。)などの様々なタイプが提案されている。
【0003】
例えば、図4に示す回転タイプの電動歯ブラシ100は、ハンドル部101に電源102及び回転モータ103が配置され、電源102から供給される電力により回転モータ103の駆動力を、ギヤやシャフトなどのリンク機構104を介してハンドル部101から延長されたネック部105の先端にある回転ヘッド106に伝達し、回転ヘッド106を回転させながら、この回転ヘッド106に植設された刷毛107により口腔内を清掃する仕組みとなっている。
【0004】
一方、図5に示す振動タイプの電動歯ブラシ200は、ハンドル部201に電源202及び回転モータ203が配置され、電源202から供給される電力により回転モータ203の回転軸に取り付けられた偏芯錘204を回転させながら、偏芯錘204が回転することによって発生する振動を、ハンドル部201から延長されたネック部205の先端にあるヘッド部206に伝達し、このヘッド部206に植設された刷毛207により口腔内を清掃する仕組みとなっている。
【0005】
一方、図6に示すリニアモータタイプの電動歯ブラシ300は、ハンドル部301に電源302及びリニアモータ303が配置され、電源302から供給される電力によりリニアモータ303が駆動軸304を軸線方向に往復振動させながら、ハンドル部301から延長されたネック部305の先端にあるヘッド部306を往復振動させて、このヘッド部306に植設された刷毛307により口腔内を清掃する仕組みとなっている。
【0006】
一方、図7に示す超音波タイプの電動歯ブラシ400は、ハンドル部401に電源402及び制御回路403が配置されると共に、電源402から電力が供給されて、制御回路403により駆動が制御される超音波振動子404がハンドル部401から延長されたネック部405の先端にあるヘッド部406に内蔵された構造を有し、この超音波振動子404が超音波振動を発生させながら、ヘッド部406に植設された刷毛407により口腔内を清掃する仕組みとなっている。
【特許文献1】特開平6−343513号公報
【特許文献2】特開昭56−500159号公報
【特許文献3】実開昭63−29604号公報
【特許文献4】実開昭57−2829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した電動歯ブラシのうち、回転タイプの電動歯ブラシ100の場合には、リンク機構104により回転モータ103の回転駆動を往復運動に変換した後、再び回転ヘッド106の回転運動に変換するといった動作を行っており、不快な振動や騒音が発生し易いといった欠点がある。また、回転ヘッド106の場合、通常の歯ブラシと比べてヘッドの厚みが増す傾向にあるため、口腔内での操作性が悪くなる。さらに、駆動ロスが大きく、この駆動ロスを補うため、出力の高い回転モータ103及び電源102をハンドル部101内に配置している。この場合、ハンドル部101が大きく、そして重くなるために、ハンドル部101操作性が悪くなる。
【0008】
一方、振動タイプの電動歯ブラシ200の場合には、ハンドル部201を通じて不快な振動が手に伝わり易く、これを防ぐために振動抑制部材をハンドル部201に設けたり、偏芯錘204をネック部205の先端側に設けたりすることが行われている。しかしながら、振動抑制部材をハンドル部201に設けた場合には、ハンドル部201の振動を抑制することは可能であるものの、ハンドル部201が大きくなることにより操作性が悪くなる。一方、偏芯錘204をネック部205の先端側に設けた場合には、口腔清掃時に不快な振動が唇に伝わり易くなる。
【0009】
一方、リニアモータタイプの電動歯ブラシ300の場合には、ハンドル部301における不快な振動を抑制するためのバネ部材を配置することが行われている。しかしながら、この場合も、ハンドル部301が大きくなることにより操作性が悪くなると共に、ネック部305からの不快な振動が唇に伝わり易くなる。
【0010】
一方、超音波タイプの電動歯ブラシ400の場合には、超音波により刷毛の届かない部位の歯垢を除去することが可能である。一方、超音波の周波数は、可聴領域から外れた領域にあるため、使用者が効果を実感し難いといったことがある。
【0011】
電動歯ブラシは、清掃能力に優れ、非常に便利であるが、上述したハンドル部の大きさや重さ、不快な振動や騒音、ヘッド部の厚さや幅などに起因する操作性の悪さなど電動歯ブラシ特有の課題があり、更なる使い勝手の向上が求められている。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、口腔清掃時に不快な振動が手や唇などに伝わりにくく、ハンドル部の小型化を図ることによって操作性の向上を図りつつ、刷掃能力の更なる向上を可能とした使い勝手の良い電動歯ブラシを提供することを目的とする。
また、本発明は、そのような電動歯ブラシにおいて取り替え可能とされた取替用ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、電源及び制御回路が配置されたハンドル部と、ハンドル部から延長されたネック部と、ネック部の先端に設けられたヘッド部とを備え、電源からヘッド部に電力が供給されて、制御回路によりヘッド部の駆動が制御される電動歯ブラシであって、ヘッド部が、植毛面に複数の刷毛が植設された可動部と、可動部を保持する固定部と、可動部を少なくとも植毛面と直交する方向に往復振動させる駆動機構とを有することを特徴とする電動歯ブラシである。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、可動部が、固定部にダイヤフラム又はヒンジを介して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシである。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、駆動機構が、可動部の植毛面とは反対側の面に取り付けられたマグネットと、固定部のマグネットと対向する面に取り付けられた励磁コイルとを有し、又は、可動部の植毛面とは反対側の面に取り付けられた励磁コイルと、固定部の励磁コイルと対向する面に取り付けられたマグネットとを有し、励磁コイルに流す電流の向きを切り替えながら、当該励磁コイルに電流を流すことにより発生する磁界とマグネットに発生する磁界との間に働く電磁的な作用によって、可動部を往復振動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動歯ブラシである。
【0016】
また、請求項4に係る発明は、可動部の振動周波数が可聴領域にあることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電動歯ブラシである。
【0017】
また、請求項5に係る発明は、制御回路が、駆動機構が駆動する可動部の振幅及び振動周波数を可変に制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電動歯ブラシである。
【0018】
また、請求項6に係る発明は、ヘッド部がネック部に対して着脱自在に取り付けられている、又は、ネック部がハンドル部に対して着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の電動歯ブラシである。
【0019】
また、請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の電動歯ブラシにおいて取り替え可能とされた取替用ブラシであって、ネック部及びハンドル部からなる本体部に対してヘッド部を取り替え可能とした、又は、ハンドル部からなる本体部に対してヘッド部及びネック部を一体に取り替え可能としたことを特徴とする取替用ブラシである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、口腔清掃時に不快な振動が手や唇などに伝わりにくく、ハンドル部の小型化を図ることによって操作性の向上を図りつつ、刷掃能力の更なる向上を可能とした使い勝手の良い電動歯ブラシ、並びにそのような電動歯ブラシにおいて取り替え可能とされた取替用ブラシを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を適用した電動歯ブラシ及び取替用ブラシについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を模式的に示している場合があり、各構成要素の形状や寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0022】
(電動歯ブラシ)
先ず、図1に示す本発明を適用した電動歯ブラシ1について説明する。
この電動歯ブラシ1は、図1に示すように、本体部2を備え、この本体部2は、ハンドル部3と、ハンドル部3の一端から軸線方向に延長されたネック部4とを有し、このネック部4の先端にヘッド部5が着脱自在に取り付けられた構造を有している。
【0023】
ハンドル部3は、使用者が把持する部分であり、その形状については特に限定されないものの、例えば略円柱状を為している。このハンドル部3の内部は、後述するヘッド部5に電力を供給する内部電源6と、ヘッド部5の駆動を制御する制御回路7とが配置された水密構造となっている。
【0024】
内部電源6としては、例えばニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池(バッテリ)を搭載することが可能である。また、内部電源6として二次電池を搭載する場合には、外部電源(商用電源)から充電器を介して内部電源6への充電が可能である。この場合、無接点充電方式を用いた方が使用性が高く安全性の点で望ましい。なお、内部電源6としては、上述した二次電池の他にも、例えば一次電池(単3又は単4の乾電池)を交換可能に搭載する構成としてもよい。
【0025】
制御回路7は、CPUやメモリ等からなり、内部電源6と接続されて、ハンドル部3に設けられた操作ボタン(図示せず。)を使用者が操作した場合に、その操作に応じた制御信号を生成し、この制御信号に基づいてヘッド部5への電力供給、並びにヘッド部5の駆動を制御する。
【0026】
ネック部4は、ハンドル部3とヘッド部5との間を連結する部分であり、細長く括れた形状を有している。また、ネック部4の形状は、図1に示すようなストレート形状に限らず、奥歯を磨き易いように緩やかなカーブ形状としてもよい。また、ネック部4の幅又は厚みは、操作性と強度を考慮して、4〜10mmの範囲とすることが好ましく、更に好ましくは5〜7mmの範囲である。ネック部4の内部には、ヘッド部5と制御回路7との間を電気的に接続するための配線8が配置されている。この配線8は、中空のネック部4内に配置するか、インサート成形によってネック部4内に埋設して配置することができる。なお、ネック部4の先端には、図示を省略するが、ヘッド部5を着脱自在に取り付けるための取付機構や、配線8をヘッド部5側の配線と接続するための接点などが設けられている。
【0027】
ヘッド部5は、口腔内を清掃しやすい形状や大きさであればよく、その形状について特に限定されないものの、一般的に略直方体状を為している。ヘッド部5は、上述した本体部2内の内部電源6から電力が供給されて、制御回路7により駆動が制御されるものである。具体的に、このヘッド部5は、図2に拡大して示すように、植毛面9aに複数の刷毛10が植設された植毛プレート9と、植毛プレート9を保持するケーシング11と、植毛プレート9を植毛面9aと直交する方向(以下、上下方向という。)に往復振動させるリニア駆動機構12とを有している。
【0028】
植毛プレート9は、扁平平板状を為しており、その一面が植毛面9aとされている。この植毛プレート9の厚みは、1〜5mm程度が好ましく、より好ましくは2〜3.5mm程度である。植毛プレート9は、ケーシング11内で可動する可動部として、ケーシング11にダイヤフラム13を介して取り付けられている。ダイヤフラム13は、例えばエラストマー(ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー等)やシリコーンなどの弾性部材からなる。また、ダイヤフラム13は、後述するケーシング11の凹部11aと植毛プレート9との間を密閉した状態(水密状態)で、その弾性変形により植毛プレート9を上下方向に移動可能に支持している。
【0029】
刷毛10は、その材質について特に限定されないものの、例えば、ポリアミド(例:6−12ナイロン、6−10ナイロン)、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)、エラストマー(例:オレフィン系、スチレン系)などの合成樹脂材料を挙げることができる。また、これらの樹脂材料を複数組み合わせて用いてもよく、例えば芯鞘構造などのように、芯部と鞘部で異なる樹脂材料を用いることもできる。
刷毛10の縦断面形状は、通常は円形であるが、そのような形状に限定されるものではなく、例えば、楕円形、三角形、四角形、六角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形など任意の形状とすることができる。
また、刷毛10の毛先形状については、毛先を丸めたもの、毛先に向かうに従って徐々に外径が細くなるテーパー状のもの、さらに、ヘラ状、球状、先割れ状など任意の形状とすることができる。
刷毛10の毛丈は、植毛プレート9の植毛面9aから、大人用で8mm〜13mm、子供用で6mm〜9mmとすることが好ましい。刷毛10の太さ(最大径)は、口腔内の使用性や使用感の点から、0.12mm〜0.26mmであることが好ましい。また、使用感や、刷掃感、清掃効果、耐久性など考慮して、太さの異なる複数本の刷毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
なお、植毛プレート9の植毛面9aには、通常はヘッド部5の長さ方向や幅方向において、刷毛10の毛束が格子状や千鳥状に所定の間隔で複数並んで配置されるが、これら毛束の配置や間隔、それらの組み合わせ等については、特に限定されるものではなく、目的用途に応じて任意に設定することができる。
また、毛束は、通常は複数本の刷毛10を略円形状に束ねたものを用いるが、このような略円形状に束ねたものに限らず、略三角形や略四角形などの略多角形状に束ねてもよく、さらに、略楕円状や、略長円状、略長方形状、略多角形状など長径と短径が異なる形状に束ねたものを用いてもよい。
刷毛10の植毛方法としては、刷毛10の毛束を二つ折りにし、その間に平線を挟んで植毛プレート9に設けられた植毛穴に固定する平線植毛法や、刷毛10の下端を植毛プレート9となる溶融樹脂中に圧入して固定する熱融着法、刷毛10の下端を加熱して溶融塊を形成した後に、金型のキャビティ内に溶融樹脂を充填して植毛プレート9と一体に成形するインモールド法などを用いることができる。
【0030】
ケーシング11は、略直方体状を為しており、ネック部4の先端に固定される固定部として、ネック部4の先端に着脱自在に取り付けられている。ケーシング11の一面には、植毛プレート9及びリニア駆動機構12を収納するための凹部11aが設けられている。植毛プレート9は、この凹部11aの上面開口部を閉塞するように配置されている。また、ケーシング11は、図示を省略するが、ネック部4の取付機構に対して着脱自在に取り付けられる被取付機構や、後述する励磁コイル15側の配線15aとネック部4側の配線8と接続するための接点などを備えている。
【0031】
リニア駆動機構12は、植毛プレート9の植毛面9aとは反対側の面に取り付けられたマグネット(可動子)14と、ケーシング11のマグネット14と対向する面(凹部11aの底面)に取り付けられた励磁コイル(固定子)15とを有している。
【0032】
マグネット14は、励磁コイル15の周囲を囲む位置に複数並んで配置されている。マグネット14の磁化方向は、励磁コイル15に向けて内側をN極(外側をS極)としている。また、マグネット14の磁化方向は、内側をS極(外側をN極)としてもよい。また、マグネット14は、励磁コイル15を挟んで対称となる位置に配置することが好ましく、図2に示すマグネット14は、励磁コイル15を挟んで対称となる植毛プレート9の先端側と後端側とに配置されている。
【0033】
励磁コイル15は、凹部11aの底面中央部に設けられた磁芯16の周囲に巻回された状態で配置されている。また、励磁コイル15の両端から引き延ばされた配線15aがネック部4側の配線8と電気的に接続されている。
【0034】
このリニア駆動機構12では、励磁コイル15に流す電流の向きを切り替えながら、この励磁コイル15に電流を流すことにより発生する磁界と、マグネット14に発生する磁界との間に働く電磁的な作用によって、ダイヤフラム13に弾性支持された植毛プレート9を上下方向に往復振動させることができる。具体的に、リニア駆動機構12によって駆動される植毛プレート9の振動周波数は、50Hz〜2万Hzの可聴領域にあることが好ましく、清掃実感を高めるためには、150Hz〜1000Hz(9000〜6万rpm/min)の範囲とすることがより好ましい。また、リニア駆動機構12によって駆動される植毛プレート9の植毛プレート9の振幅は、刷毛10の先端で0.1〜10mmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.5〜5mmの範囲である。また、リニア駆動機構12が駆動する植毛プレート9の振幅及び振動周波数は、制御回路7により可変に制御することが可能である。
【0035】
以上のような構造を有する電動歯ブラシ1では、ヘッド部5のうち、ネック部4の先端に固定されたケーシング11に対して植毛プレート9のみが上下方向に往復振動するため、ネック部4やハンドル部3を通じて不快な振動が手や唇などに伝わりにくい。また、リニア駆動機構12は、騒音を発生させることがなく、植毛プレート9のみを駆動するためエネルギー効率が高い。また、本体部2は、ハンドル部3内に電源6及び制御回路7を配置するだけでよいため、小型化及び軽量化が可能である。また、ヘッド部5の小型化も可能である。さらに、ネック部4の形状についても自由度が高く、口腔内での操作性の向上が可能である。また、ヘッド部5は、構造がシンプルなため、安価に製造することが可能であり、故障によるリスクも小さい。
【0036】
以上のように、本発明を適用した電動歯ブラシ1では、口腔清掃時に不快な振動が手や唇などに伝わりにくく、ハンドル部3の小型化を図ることによって操作性の向上を図りつつ、刷掃能力の更なる向上を図ることが可能である。
【0037】
なお、本発明を適用した電動歯ブラシ1は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。具体的に、本発明を適用した電動歯ブラシ1では、上記ヘッド部5の代わりに、例えば図3に示すヘッド部50を備えた構成としてもよい。
【0038】
このヘッド部50は、植毛プレート9がヒンジ51を介してケーシング11に取り付けられた構造を有している。ヒンジ51は、ケーシング11の凹部11aに嵌合された植毛プレート9を上下方向に移動可能に支持している。なお、この構成の場合、植毛プレート9とケーシング11との間は、水密に嵌合されていないため、リニア駆動機構12を構成するマグネット14及び励磁コイル15は、防水膜で被覆したり、インサート成形により励磁コイル15を被覆したりするなどの防水対策が施されている。
【0039】
以上のようなヘッド部50を備えた電動歯ブラシ1では、上記ヘッド部5を備えた場合と同様に、口腔清掃時に不快な振動が手や唇などに伝わりにくく、ハンドル部3の小型化を図ることによって操作性の向上を図りつつ、刷掃能力の更なる向上を図ることが可能である。
【0040】
また、上記ヘッド部5,50は、ハンドル部2及びネック部4からなる本体部2に対して着脱自在に取り付けた構成に限らず、ヘッド部5,50とネック部4とが一体に形成されたものをハンドル部3からなる本体部2に対して着脱自在に取り付けた構成とすることも可能である。
【0041】
また、リニア駆動機構12は、上述した植毛プレート9側にマグネット(可動子)14が取り付けられ、ケーシング11側に励磁コイル(固定子)15が取り付けられた構成に限らず、植毛プレート9側に励磁コイル(可動子)15が取り付けられ、ケーシング11側にマグネット(固定子)14が取り付けられた構成としてもよい。
【0042】
また、上記マグネット14の磁化方向は、上側をS極(下側をN極)とした場合や、上側をN極(下側をS極)とした場合でも、励磁コイル15に流す電流の向きを切り替えながら、この励磁コイル15に電流を流すことにより発生する磁界と、マグネット14に発生する磁界との間に働く電磁的な作用によって、植毛プレート9を上下方向に往復振動させることが可能である。また、上記リニア駆動機構12では、マグネット14をヨークに取り付けたものを可動子又は固定子として用いてもよい。また、ケーシング11内を防磁構造としてもよい。
【0043】
また、上記リニア駆動機構12では、上述した植毛プレート9を上下方向に往復振動させるだけでなく、上述したマグネット14及び励磁コイル15の数や配置等を変更することによって、植毛プレート9を植毛面9と平行な面内で往復振動させることも可能である。
【0044】
(取替用ブラシ)
次に、本発明を適用した取替用ブラシについて説明する。
本発明を適用した取替用ブラシは、上記ハンドル部3及びネック部4からなる本体部2に対して上記ヘッド部5,50を取り替え可能としたもの、又は、上記ハンドル部3からなる本体部2に対して上記ヘッド部5,50及びネック部4を一体に取り替え可能としたものからなる。
【0045】
これら取替用ブラシは、上述した本体部2に対して着脱自在に取り付けることが可能なことから、本体部2とは別個に販売して、一定使用後に交換することが可能となっている。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0047】
本実施例では、図2に示すヘッド部5を備えた電動歯ブラシ1(実施例1)、図3に示すヘッド部50を備えた電動歯ブラシ1(実施例2)、図4に示す回転タイプの電動歯ブラシ100(比較例1)、図5に示す振動モータタイプの電動歯ブラシ200(比較例2)、図6に示すリニアモータタイプの電動歯ブラシ300(比較例3)、図7に示す超音波タイプの電動歯ブラシ400(比較例4)を実際に作製し、「清掃実感」、「振動/騒音」、「口腔内操作性」、「持ちやすさ」、及びこれらの「総合評価」を行った。なお、各評価については、20人の専門パネラーによる官能評価とし、○は「非常によい。」、△は「どちらともいえない。」、×は「良くない。」という評価である。
なお、実施例1,2及び比較例1〜4の刷毛には、何れも毛丈10.0mmの6−12ナイロン(2.0mil)を用いた。
また、実施例1では、厚み2.0mmのポリプロピレンからなる植毛プレートに熱融着法により刷毛を固定した。内部電源には、ニッケル水素電池を用いた。
また、実施例1では、厚み3.0mmのポリプロピレンからなる植毛プレートに平線植毛法により刷毛を固定した。内部電源には、単4の乾電池を用いた。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1,2の電動歯ブラシは、清掃実感、振動/騒音、口腔内操作性、持ちやすさの何れの評価も良い結果が得られたため、総合評価についても非常に良い結果が得られた。一方、比較例1の回転タイプの電動歯ブラシは、清掃実感以外の評価が悪く、総合評価についても良い結果が得られなかった。一方、比較例2の振動モータタイプの電動歯ブラシでは、振動/騒音の評価が悪く、総合評価について実施例1,2の電動歯ブラシよりも良い結果が得られなかった。一方、比較例3のリニアモータタイプの電動歯ブラシでは、振動/騒音と持ちやすさの評価が悪く、総合評価について実施例1,2の電動歯ブラシよりも良い結果が得られなかった。一方、比較例4の超音波タイプの電動歯ブラシでは、清掃実感と持ちやすさの評価が悪く、総合評価について実施例1,2の電動歯ブラシよりも良い結果が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明を適用した電動歯ブラシの一例を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示す電動歯ブラシのヘッド部を拡大して示す断面図である。
【図3】図3は、ヘッド部の変形例を示す断面図である。
【図4】図4は、回転タイプの電動歯ブラシの一例を示す断面図である。
【図5】図5は、振動モータタイプの電動歯ブラシの一例を示す断面図である。
【図6】図6は、リニアモータタイプの電動歯ブラシの一例を示す断面図である。
【図7】図7は、超音波タイプの電動歯ブラシの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…電動歯ブラシ 2…本体部 3…ハンドル部 4…ネック部 5…ヘッド部 6…内部電源 7…制御回路 8…配線 9…植毛プレート(可動部) 9a…植毛面 10…刷毛 11…ケーシング(固定部) 11a…凹部 12…リニア駆動機構 13…ダイヤフラム 14…マグネット 15…励磁コイル 15a…配線 16…磁芯 50…ヘッド部 51…ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源及び制御回路が配置されたハンドル部と、前記ハンドル部から延長されたネック部と、前記ネック部の先端に設けられたヘッド部とを備え、前記電源から前記ヘッド部に電力が供給されて、前記制御回路により前記ヘッド部の駆動が制御される電動歯ブラシであって、
前記ヘッド部は、植毛面に複数の刷毛が植設された可動部と、前記可動部を保持する固定部と、前記可動部を少なくとも前記植毛面と直交する方向に往復振動させる駆動機構とを有することを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記可動部は、前記固定部にダイヤフラム又はヒンジを介して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記可動部の前記植毛面とは反対側の面に取り付けられたマグネットと、前記固定部の前記マグネットと対向する面に取り付けられた励磁コイルとを有し、又は、前記可動部の前記植毛面とは反対側の面に取り付けられた励磁コイルと、前記固定部の前記励磁コイルと対向する面に取り付けられたマグネットとを有し、
前記励磁コイルに流す電流の向きを切り替えながら、当該励磁コイルに電流を流すことにより発生する磁界と前記マグネットに発生する磁界との間に働く電磁的な作用によって、前記可動部を往復振動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記可動部の振動周波数が可聴領域にあることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電動歯ブラシ。
【請求項5】
前記制御回路は、前記駆動機構が駆動する前記可動部の振幅及び振動周波数を可変に制御することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電動歯ブラシ。
【請求項6】
前記ヘッド部が前記ネック部に対して着脱自在に取り付けられている、又は、前記ネック部が前記ハンドル部に対して着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の電動歯ブラシ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の電動歯ブラシにおいて取り替え可能とされた取替用ブラシであって、
前記ネック部及び前記ハンドル部からなる本体部に対して前記ヘッド部を取り替え可能とした、又は、前記ハンドル部からなる本体部に対して前記ヘッド部及び前記ネック部を一体に取り替え可能としたことを特徴とする取替用ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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