説明

電動歯ブラシ

【課題】 簡単な構造で且つ小電力でブラシ部を軸回りに往復回動する。
【解決手段】 本体1に可動軸3を回転自在に支持し、この可動軸3の外周に、永久磁石4をその2つの磁極4a,4bが該可動軸3の回転方向へ隣り合うように設け、本体1には、永久磁石4の2つの磁極4a,4bのいずれか一方と対向して電磁石5の磁極子5cを設け、この電磁石5に交番電流を通電して該磁極子5cの極性が所定周期で変化することにより、可動軸3が永久磁石4の2つの磁極4a,4bの配置角度分だけ正逆回転して、ブラシ部2が軸回り方向へ往復回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病の予防と治療に効果的な電動歯ブラシに関する。
詳しくは、本体に対してブラシ部が軸回りの往復回動を行う電動歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動歯ブラシとしては、シャフトに装着した可動子ブロックとして、平板状永久磁石の外面とヨークの外面とが周方向に複数個ずつ隣接配置され、各平板状永久磁石の外面を同極とするとともに、これらの間に配置されるヨークの円弧部分を他の磁極とし、また円筒状ケースの内面に配設固定された筒状の電磁ブロックとして、コイルが巻回された巻線ボビンとヨークを設け、各ヨークの内周面に磁極子が平板状永久磁石の同数だけ配置され、コイルに電流を流していないときには平板状永久磁石がヨークに及ぼす磁力とばね部材による回転方向のばね力とが釣り合う位置で可動子ブロックが停止しており、コイルに交番電流を流すことによって可動子ブロック及びシャフトに軸周り方向に小角度で往復回動させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】2008−178678号公報(第5−6頁、図6−10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の電動歯ブラシでは、シャフト側に複数の永久磁石とヨークの外面を周方向へ異極となるように配置し、ケース側にもコイルが巻回された巻線ボビン及び平板状永久磁石と同数の磁極子が設けられたヨークを配置するため、回転駆動部の構造が複雑化してコンパクトに収められず、本体の握り部が太くなるという問題があった。
また、ばね部材を組み込んでブラシの停止位置が保持されるため、可動子ブロック及びシャフトを軸周り方向に往復回動させるには、ばね力を打ち負かすだけの磁力が必要になってより大きな電力が必要になるとともに、ばね部材の分だけ部品点数が増えてコンパクト化が更に困難になるという問題があった。
【0005】
本発明のうち第一の発明は、簡単な構造で且つ小電力でブラシ部を軸回りに往復回動することを目的としたものである。
第二の発明は、第一の発明の目的に加えて、ブラシ部をスムーズに軸回りに往復回動させることを目的としたものである。
第三の発明は、第一の発明又は第二の発明の目的に加えて、ブラシ部から超音波振動を使用者の歯と歯茎及びその周囲の口腔組織へ向け伝播させることを目的としたものである。
第四の発明は、第一の発明、第二の発明又は第三の発明の目的に加えて、ブラシ部が回転停止した時に該ブラシ部を常に一定の位置で止めることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち第一の発明は、本体に対して、ブラシ部が取り付けられた可動軸を軸回りに往復回動させる電動歯ブラシにおいて、前記本体に前記可動軸を回転自在に支持し、この可動軸の外周に、永久磁石をその2つの磁極が該可動軸の回転方向へ隣り合うように設け、前記本体には、前記永久磁石の2つの磁極のいずれか一方と対向して、交番電流が通電される電磁石の磁極子を設け、該磁極子の極性変化に伴って前記可動軸を永久磁石の2つの磁極の配置角度分だけ正逆回転させることを特徴とするものである。
第二の発明は、第一の発明の構成に、前記可動軸を中心としてその軸方向と直交する方向の両側に、前記永久磁石の2つの磁極を一対又は複数配置し、これら磁極と夫々対向するように電磁石の磁極子を一対又は複数配置した構成を加えたことを特徴とする。
第三の発明は、第一の発明又は第二の発明の構成に、前記ブラシ部が取り付けられる前記可動軸の先端に超音波振動体を設け、この超音波振動体の電線を、該可動軸の内部に形成される通孔を通って、前記本体の内部に設けられる駆動電源と電気的に接続した構成を加えたことを特徴とする。
第四の発明は、第一の発明、第二の発明又は第三の発明の構成に、前記可動軸の回転停止時に、前記電磁石の磁極子が同じ極性となるように設定する制御部を備えた構成を加えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち第一の発明は、本体に可動軸を回転自在に支持し、この可動軸の外周に、永久磁石をその2つの磁極が該可動軸の回転方向へ隣り合うように設け、本体には、永久磁石の2つの磁極のいずれか一方と対向して電磁石の磁極子を設け、この電磁石に交番電流を通電して該磁極子の極性が所定周期で変化することにより、可動軸が永久磁石の2つの磁極の配置角度分だけ正逆回転して、ブラシ部が軸回り方向へ往復回動する。
したがって、簡単な構造で且つ小電力でブラシ部を軸回りに往復回動することができる。
その結果、シャフト側に複数の永久磁石とヨークの外面を周方向へ異極となるように配置がある従来のものに比べ、回転駆動部のコンパクト化が図れ、本体の握り部を細くすることができる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の効果に加えて、可動軸を中心としてその軸方向と直交する方向の両側に、永久磁石の2つの磁極を一対又は複数配置し、これら磁極と夫々対向するように電磁石の磁極子を一対又は複数配置することにより、可動軸の重量バランスが良くなってスムーズに正逆回転する。
したがって、ブラシ部をスムーズに軸回りに往復回動させることができる。
【0009】
第三の発明は、第一の発明又は第二の発明の効果に加えて、ブラシ部が取り付けられる可動軸の先端に超音波振動体を設け、この超音波振動体の電線を、該可動軸の内部に形成される通孔を通って、本体の内部に設けられる駆動電源と電気的に接続することにより、超音波振動体から発振した超音波振動がブラシ部に伝わる。
したがって、ブラシ部から超音波振動を使用者の歯と歯茎及びその周囲の口腔組織へ向け伝播させることができる。
【0010】
第四の発明は、第一の発明、第二の発明又は第三の発明の効果に加えて、可動軸の回転停止時に、電磁石の磁極子が同じ極性となるように設定する制御部を備えることにより、ブラシ部の回転停止時に該ブラシ部が常に定位置で停止する。
したがって、ブラシ部が回転停止した時に該ブラシ部を常に一定の位置で止めることができる。
その結果、ブラシ部の回転停止位置を固定できるので、使用者に違和感を与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電動歯ブラシAの実施形態は、図1〜図4に示す如く、使用者の手で把持される本体1と、軸回りに往復回動可能なブラシ部2と、このブラシ部2が取り付けられる可動軸3と、この可動軸3の外周に設けられる永久磁石4と、この永久磁石4と対向して本体1に設けられる電磁石5と、この電磁石5に交番電流(交流電流)を通電する駆動電源6とを備えている。
【0012】
本体1は、例えば合成樹脂などの材料で略筒状に形成され、その一端開口側に後述する可動軸3を回転自在に支持し、この可動軸3の先端側にブラシ部2を着脱自在に嵌挿して相互に密着させることが好ましい。
更に、この本体1の内部には、後述する電磁石5及び駆動電源6以外にも電磁石5の作動を制御するための制御部7などを収納配置することが好ましい。
【0013】
可動軸3は、本体1の一端開口部1aから所定長さ突出するように回転自在に軸支され、本体1内に配置される基端側の外周には、永久磁石4をその2つの磁極4a,4bが該可動軸3の回転方向へ隣り合うように配置している。
その配置例としては、可動軸3を中心としてその軸方向と直交する方向の一方側のみに、2つの磁極4a,4bを配置するか、或いは該可動軸3の軸方向と直交する方向の両側に、2つの磁極4a,4bを一対又は複数配置する。
【0014】
電磁石5は、コア5aと、このコア5aの周りに巻き付けられたコイル5bを有し、該コア5aの端部には、永久磁石4の2つの磁極4a,4bのいずれか一方と対向するように磁極子5cを突設し、後述する駆動電源6からコイル5bに交番電流が通電されることで、該磁極子5cの極性が所定周期で変化するようにしている。
【0015】
駆動電源6の具体例としては、蓄電池を使用して使用することが好ましい。
この蓄電池6の充電方法としては、充電器(図示せず)に充電誘導一次側コイルを設け、本体1には充電誘導二次側コイル6aを内蔵し、該充電器に本体1を保持するなどして、これら一次側コイル及び二次側コイル6aを接近させることにより、上記充電器に交流電源(図示せず)から給電される交流電圧を直流電流電圧に変化して蓄電池6に充電することが好ましい。
また、その他の例として、駆動電源6を蓄電池以外の乾電池などを使用したり、上述した充電方法以外の方法で蓄電池を充電することも可能である。
【0016】
上記制御部7の具体例としては、電磁石5や駆動電源6などに電気的に接続する駆動回路7aと、この駆動回路7aのスイッチ7bに向けて移動可能なスイッチボタン7cを備え、このスイッチボタン7cの手動操作に基づいて電磁石5などを作動制御することが好ましい。
【0017】
駆動回路7aには、スイッチ7bによる作動開始時から所定時間経過後に電磁石5のコイル5bへの通電を停止させるタイマ機能、電磁石5のコイル5bに流す交番電流の周波数を変えることで、磁極子5cの極性変化の周期を調整可能にする速度調整機能、可動軸3の回転停止時に意図的にパルス信号を出力することで、磁極子5cが必ず同じ極性となるように設定する機能などを備えることが好ましい。
また、駆動回路7aには、電磁石5などの作動時に発光するLEDなどからなる表示部7dを設け、レンズ7eを透して本体1の外側から作動状態を確認可能にすることが好ましい。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
この実施例1は、図1〜図2に示す如く、前記電動歯ブラシAが、可動軸3の先端に圧電素子からなる超音波振動体8を設けて、この超音波振動体8に通じる電線8aを、該可動軸3の内部に形成される通孔3aを通って、本体1の内部に設けられる駆動電源6や制御部7などと電気的に接続することにより、超音波振動体8から発振した超音波振動がブラシ部2を介して使用者の歯と歯茎及びその周囲の口腔組織へ向け伝播される超音波歯ブラシである場合を示すものである。
【0019】
可動軸3の基端側には、マグネットホルダ4cを設け、その両側に2つの永久磁石4を夫々の磁極4a,4bの先端部が所定間隔を空けて該可動軸3の回転方向へ隣り合うように配置している。
これら4つの磁極4a,4bと対向するように、電磁石5のコア5aを略C字型に形成して、その両端に磁極子5cが一つずつ突設されて、夫々をS極とN極にしている。
この場合には、4つの磁極4a,4bの極性が図示例のように、ブラシ側とコイル側とでS極とN極が同じになるように並べる必要がある。
【0020】
実施例1では、可動軸3が絶縁性の合成樹脂からなる管体3bと、その基端開口に装着される中空シャフト3cとを有し、この中空シャフト3cと本体1の一端開口部1aとの間に、例えばゴムなどの弾性変形可能な材料からなるパッキング3dを設け、このパッキング3dで隙間をシールすることにより、本体1の外部から内部へ水などの液体が浸入することを防止している。
【0021】
さらに、可動軸3の管体3bの先端空間部には、例えばPZT、水晶、チタン酸バリウムなどの圧電素子(圧電振動子)からなる超音波振動体8を配置して、これら超音波振動体8の外面と可動軸3の内面を接着剤などで一体的に固着している。
【0022】
また、ブラシ部2は、図示例の場合、本体1の一端開口部1aから突出する可動部3の先端側の略全体を覆うガイド筒2aが一体形成され、このガイド筒2aの先端のみにブラシ2bの植毛している。
また、その他の例としてブラシ部2を、ガイド筒2aが一体形成されずに、超音波振動体8が埋設される可動軸3の先端部分のみを覆う形状に形成することも可能である。
【0023】
次に、斯かる電動歯ブラシAの作動及び作用効果について説明する。
先ず、スイッチボタン7cを手動操作すると、制御部7を介して駆動電源6から交番電流が電磁石5のコイル5bに通電され、磁極子5cの極性が所定周期で変化し、磁極子5cの磁気吸引力で磁極4a,4bのいずれか一方が交互に引きつけられるとともに、他方が磁気反発力を受ける。
それにより、図2(a)(b)に示す如く、可動軸3が永久磁石4の2つの磁極4a,4bの配置角度Bの分だけ正逆回転して、ブラシ部2が軸回り方向へ往復回動する。
【0024】
これと同時に、可動軸3の先端に埋設された超音波振動体8から発振した超音波振動がブラシ部2を介して使用者の歯と歯茎及びその周囲の口腔組織へ向け伝播される。
【0025】
また、使用者が制御部7を調整して、電磁石5のコイル5bに流す交番電流の周波数を変えると、磁極子5cの極性変化の周期が変化して、ブラシ部2の軸回り方向へ往復回動速さを変えることができる。
【0026】
さらに、タイマ機能により使用開始時から所定時間経過後や強制的に可動軸3の回転停止された時には、制御部7から意図的にパルス信号を出力して磁極子5cが必ず同じ極性になる。
それにより、ブラシ部2の回転停止時に該ブラシ部2が常に一定の位置で止まる。
【実施例2】
【0027】
この実施例2は、図3(a)(b)に示す如く、前記可動軸3の基端側にマグネットホルダ4cを設けず、これに代えて直接1つの永久磁石4に設けて、そのブラシ側とコイル側がS極とN極に分割されるようにした構成が、前記図1〜図2に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図2に示した実施例1と同じものである。
【0028】
従って、図3に示す実施例2も、上述した実施例1と同様な作用効果が得られ、更に加えてマグネットホルダ4cを設けない分だけ部品点数を減らせるとともに、永久磁石4が大きくなるので磁極4a,4bの磁力を増大できるという利点がある。
【実施例3】
【0029】
この実施例3は、図4(a)(b)に示す如く、前記可動軸3の基端側に直接設けられた1つの永久磁石4の外周に、S極の磁極4aとN極の磁極4bを一対ずつ突出させて形成するとともに、これら4つの磁極4a,4bと対向して、略C字型に形成されたコア5aの両端に磁極子5cを一対ずつ4つ設けた構成が、前記図3に示した実施例2とは異なり、それ以外の構成は図3に示した実施例2と同じものである。
【0030】
従って、図4に示す実施例3も、上述した実施例2と同様な作用効果が得られ、磁極4a,4bと磁極子5cとの磁気吸引力を増大できるという利点がある。
【0031】
尚、前示実施例では、電動歯ブラシAが超音波振動体8を内蔵した超音波歯ブラシである場合を示したが、これに限定されず、超音波振動体8が配備されない一般的な電動歯ブラシであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の電動歯ブラシの一実施例を示しており、(a)が縦断正面図で、(b)が横断平面図で、(c)が図1(b)の(1C)−(1C)線に沿える拡大断面図である。
【図2】(a)(b)が作動説明図である。
【図3】本発明の電動歯ブラシの他の実施例を示しており、(a)(b)が作動説明図である。
【図4】本発明の電動歯ブラシの他の実施例を示しており、(a)(b)が作動説明図である。
【符号の説明】
【0033】
A 電動歯ブラシ 1 本体
1a 一端開口部 2 ブラシ部
2a ガイド筒 2b ブラシ
3 可動軸 3a 通孔
3b 管体 3c 中空シャフト3c
3d パッキング 4 永久磁石
4a,4b 磁極 4c マグネットホルダ
5 電磁石 5a コア
5b コイル 5c 磁極子
6 駆動電源(蓄電池) 6a 充電誘導二次側コイル
7 制御部 7a 電気回路基板
7b スイッチ 7c スイッチボタン
7d 表示部 7e レンズ
8 超音波振動体 8a 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して、ブラシ部が取り付けられた可動軸を軸回りに往復回動させる電動歯ブラシにおいて、
前記本体に前記可動軸を回転自在に支持し、この可動軸の外周に、永久磁石をその2つの磁極が該可動軸の回転方向へ隣り合うように設け、前記本体には、前記永久磁石の2つの磁極のいずれか一方と対向して、交番電流が通電される電磁石の磁極子を設け、該磁極子の極性変化に伴って前記可動軸を永久磁石の2つの磁極の配置角度分だけ正逆回転させることを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記可動軸を中心としてその軸方向と直交する方向の両側に、前記永久磁石の2つの磁極を一対又は複数配置し、これら磁極と夫々対向するように電磁石の磁極子を一対又は複数配置した請求項1記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ部が取り付けられる前記可動軸の先端に超音波振動体を設け、この超音波振動体の電線を、該可動軸の内部に形成される通孔を通って、前記本体の内部に設けられる駆動回路と電気的に接続した請求項1又は2記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記可動軸の回転停止時に、前記電磁石の磁極子が同じ極性となるように設定する制御部を備えた請求項1、2又は3記載の電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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