説明

電動歯ブラシ

本発明は電動歯ブラシに関するものであるが、1つは、アタッチメントブラシが固定可能で、第1のハウジング側でハンドル部ハウジングから突き出ている、好ましくは柱状の駆動伝達装置と、この駆動伝達装置を動かすための駆動モータと、を有する電動歯ブラシの歯ブラシハンドル部に関し、この場合、駆動伝達装置は、その長軸方向に対して横方向に駆動モータにより旋回可能であるように、ロッカアームのような形で、ベアリング装置によりハンドル部ハウジングの内部に支持されている。他方で、本発明は、このような歯ブラシハンドル部と、その駆動伝達装置に固定されるアタッチメントブラシとを含む歯ブラシ全体に関する。本発明に基づき、このベアリング装置は、ハンドル部ハウジングの外にある旋回点の周りを旋回可能なように駆動伝達装置を保持している。このとき、前記の旋回点は、ハンドル部ハウジングから外へ遠く離され、とくに、アタッチメントブラシのブラシ部分とハンドル部の前面端部との間の口唇部分にくるように移されている。このことによって、歯ブラシのブラシ部分では歯磨きの振幅が大きく、口唇部分では歯ブラシの振幅が小さいという効果的な歯磨き動作を組み合せることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動歯ブラシに関するものであるが、1つは、アタッチメントブラシが固定可能で、第1のハウジング側でハンドル部ハウジングから突き出ている、好ましくは柱状の駆動伝達装置と、この駆動伝達装置を動かすための駆動モータと、を有する電動歯ブラシの歯ブラシハンドル部に関し、この場合、駆動伝達装置は、その長軸方向に対して横方向に駆動モータによって旋回可能であるように、ロッカアームのような形で、ベアリング装置によりハンドル部ハウジングの内部に支持されている。他方で、本発明は、このような歯ブラシハンドル部とアタッチメントブラシとを含む歯ブラシ全体に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の洗浄に重要な歯の縦方向への歯磨き動作、すなわち、隣り合う歯と歯の間の境界に対して平行な歯磨き動作をサポートするため、ブラシチューブの長手方向に対して横方向及びブラシの毛先方向に対して横方向にブラシ部分が駆動される電動歯ブラシは、すでに提案されている。このために、通常は、前面でハンドル部ハウジングから突き出ている一般的な柱状の駆動伝達装置が、電気機械アクチュエータにより駆動伝達装置の長軸に対して横方向に駆動されることから、この駆動伝達装置に固定されたアタッチメントブラシが、振動運動の形で、必要な歯磨き動作を実行する。
【0003】
いわゆる音波歯ブラシには、様々なアクチュエータが周知である。ほとんどのアクチュエータの場合、駆動伝達装置のベアリングには、例えば、ピボットベアリングなどのベアリングが使用されるが、これはコストが高く、更に、不愉快な騒音又はモータの減衰を引き起こすことが多い。別のアクチュエータでは、駆動伝達装置のベアリングにスプリングが使用されているが、この場合はとくにアタッチメントブラシの構造が複雑になり、コストも高くなる。
【0004】
US2006/0225230A1から、ブラシ部分が、歯ブラシの長手方向に対して横方向に往復運動することのできる歯ブラシが周知である。このために、複数のギヤステージ及び1つのスワッシュプレートを有する比較的複雑なギヤ機構が設けられており、このギヤ機構によって、電気モータの回転駆動運動が、必要なアタッチメントブラシの往復動作に転換される。
【0005】
更に、DE2931479から、回転運動を往復傾斜運動に転換する駆動ギヤが周知である。この文献は、適用領域として歯ブラシも挙げているが、このギヤ機構は構造的にかさばるため、細長い歯ブラシ本体に内蔵するのはほとんど不可能である。
【0006】
ブラシ部分が横方向の並進運動を行う、こうした歯ブラシにおける基本的問題は、横方向運動がブラシ部分ばかりでなく、ブラシチューブ部分にも生じるという事実であり、このことが、一方で、切歯及び口唇付近において、ユーザーに不快感を与えることにつながり、他方ではまた、モータの不要な減衰を引き起こし、十分な運動振幅の発生に問題を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2006/0225230A1
【特許文献2】DE2931479
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このことから、本発明は、改良された前述のような種類の歯ブラシ及び改良された歯ブラシハンドル部を提供し、従来技術の欠点を回避して、有利な方法で従来技術を発展させるという課題に基づいている。とくに、口唇部分では歯ブラシの振幅が小さく、ブラシ部分では効果的な歯磨き動作を生じ、それによって歯磨き性能を向上させる、極めて簡単かつ低コスト構造のアクチュエータが提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本課題は、請求項1による歯ブラシハンドル部及び請求項18による歯ブラシによって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【0010】
すなわち、ハンドル部ハウジング内部に駆動伝達装置が取り付けられているにもかかわらず、駆動伝達装置及びそれに固定されているアタッチメントブラシの上下振動又は旋回運動の動作中心を、ハンドル部ハウジングからブラシ部分の方向へ移すことが提案され、それによって、ブラシ部分は、前記の動作中心の周りを旋回又は揺動することができるが、口唇付近のブラシチューブはまったく動かないか、又は僅かに動くだけとなる。本発明に基づき、このベアリング装置は、ハンドル部ハウジングの外部にある旋回点の周りを旋回可能なように駆動伝達装置を保持している。このことによって、歯ブラシのブラシ部分では歯磨きの振幅が大きく、口唇部分では歯ブラシの振幅が小さいという効果的な歯磨き動作を組み合せることが可能となる。このとき、とくに、前記の旋回点は、ハンドル部ハウジングから外へ遠く離され、好ましくは、アタッチメントブラシのブラシ部分とハンドル部の前面端部との間の口唇付近にくるように移されている。
【0011】
駆動伝達装置のベアリング装置は、様々に形成することができる。本発明の有利な実施形態によれば、ベアリング装置は、好ましくは2つのベアリング脚を備えた4アクションリンクの形で、マルチジョイントのマウントを有することができ、2つのベアリング脚は、それぞれ一方の端部が、駆動伝達装置にヒンジで固定され、もう一方の端部が、ハンドル部ハウジング又はハンドル部ハウジングに固定された部品、例えば、モータ類サポートにヒンジで固定されている。マルチジョイントのマウントは、この場合、その動作機構に関して、前記の旋回点をハンドル部ハウジングの外に設定するように形成されている。有利であるのは、その際、このマウントを、単純な4アクションリンクの形で構成することができ、そのベアリング脚が、実質的に互いに平行な回転軸を有することができることである。
【0012】
好ましくは、駆動伝達装置のベアリング装置が、4アクションリンクのように駆動伝達装置を保持する単純な2つのスプリングエレメント、例えば、リーフスプリングからなり、このために、2つのスプリングエレメントは、それぞれ一方の端部が、駆動伝達装置に固定され、もう一方の端部が、ハンドル部ハウジング又はハンドル部ハウジングに固定された部品に固定されている。リーフスプリングの替わりに、一般的には、例えば柱状の渦巻バネの形で、その他のスプリングエレメントも使用することがきるが、リーフスプリングは、様々な方向で剛性が異なっている点が有利であり、とりわけ駆動伝達装置のマウントに適している。ここでは、曲がりやすく、柔軟な構造によって、リーフスプリングをヒンジで支持する必要はなく、むしろ、それらの端部を強固に固定するこが可能である。これらのリーフスプリングは、駆動伝達装置と、これを保持する接続部品と、駆動モータサポート及び/又はハウジングとに取り付けられており、とくに、リーフスプリングがプラスチックによって射出形成されている場合は、とりわけ低コストの形態にすることができる。リーフスプリングを用いた駆動伝達装置のマウントにより、駆動伝達装置の前記の旋回点の配置にもかかわらず、駆動運動の動作機構は適切な状態のまま、駆動伝達装置のマウントを極めて単純に形成することができる。更に、旋回点は特定の位置であるにもかかわらず、減衰問題はほとんど回避される。
【0013】
4アクションリンクのリーフスプリング又はベアリング脚の寸法及びそれらの配置並びに調整は、基本的に、歯ブラシハンドル部又はアタッチメントブラシの形態に適合させることができる。この場合、状況に応じて、例えば、リーフスプリング又はベアリング脚の長さ、接続ポイントの位置及び/又はリーフスプリング若しくはベアリング脚の角度調整は、スペース内で変更可能である。本発明の有利な実施形態によれば、この場合、ベアリング脚又はリーフスプリングを、鋭角に傾けて配置することができるため、駆動伝達装置又はその上に固定されているアタッチメントブラシの動作中心へ向かう長軸が交差する。とくに、ベアリング脚又はリーフスプリングの長軸によって想定される延長線が、ハンドル部ハウジングの外で、駆動伝達装置の長軸上の交点を決定するように、ベアリング脚又はリーフスプリングを、相互に傾けて配置することが可能である。その際、交点は、必ずしも駆動体そのものの上になくてもよく、必要に応じて、駆動伝達装置の仮想延長軸上に置くこともできる。
【0014】
この場合、ベアリング脚又はリーフスプリングの傾斜角は、10°〜75°が有利であり、好ましくは15°〜45°、とくに20°〜40°の範囲にすることができる。
【0015】
この場合、本発明の発展形態においては、マルチジョイントのベアリング脚又は前記のリーフスプリングが同一の平面に配置されており、この平面は、ベアリング装置のベアリング面を形成し、及び/又は、ベアリング脚又はスプリングエレメントの動作面を決定し、この動作面においてベアリング脚又はスプリングエレメントがその動作を実行する。
【0016】
駆動伝達装置と連結される駆動モータ自体は、様々に形成することができる。例えば、回転する電気モータの回転運動は、カップリングエレメント又は類似のものによって、往復運動に転換され、駆動伝達装置に伝達される。しかし、本発明の有利な実施形態では、駆動モータがリニアモータ、好ましくは磁気振動モータとして形成されており、このモータが、駆動伝達装置に伝達される直線的な往復運動を直接発生させる。駆動モータの駆動運動は、この場合、1つの駆動面にあるのが有利であり、とくに、単軸で形成することができる。
【0017】
駆動伝達装置及びこれに固定されているアタッチメントブラシの均一な上下振動を生み出すため、本発明の発展形態においては、駆動モータの駆動面又は直線の駆動軸が、ベアリング装置のベアリング脚又はスプリングエレメントが配置されている前記のベアリング面に対して、平行に延びるように、駆動モータが調整されている。これによって、駆動伝達装置は、単一面において、駆動モータの駆動運動と平行に上下振動する。
【0018】
これに対する代替として、駆動伝達装置の三次元的な駆動運動も作り出すことができる。駆動モータとしてリニアモータを使用するが、とくに、駆動伝達装置は、実質的に二重円錐形の駆動軌道上を動くことができる。このために、マルチジョイントのベアリング脚又はベアリング装置のリーフスプリングが配置されている、ベアリング装置の前記ベアリング面に対して、駆動モータの駆動面を鋭角に傾けることができ、この場合、45°より小さく傾けられるのが好ましい。このことによって、好ましくは楕円形の円錐断面をもつ、実質的に二重円錐形の駆動軌道をとる、駆動伝達装置の、いわゆる三次元的な上下振動が作り出される。この場合、冒頭に述べた駆動伝達装置の旋回点は、前記の二重円錐形の駆動軌道の縮小部を形成し、この場合、旋回点そのものは、実際、空間的に固定された点である必要はなく、動作軌道上を回転することができるが、その軌道は、ブラシ部の動作振幅と比べはるかに小さい。
【0019】
好ましくは、駆動伝達装置は、これに固定されているアタッチメントブラシ及び、必要に応じて、駆動マグネット、連結ピースなど、その他の一緒に振動する部品とともに、揺動可能な駆動系を形成し、その際、とくに有利な方法では、駆動系の共振周波数がモータの揺動周波数と一致するか、又はその逆である。揺動システムは、アタッチメントブラシのブラシ部と駆動モータとが逆位相又は同位相で揺動するように設計することができ、同位相の場合は、アタッチメントブラシ及び駆動伝達装置を含めた駆動系に沿って、2つの揺動結節点がある。この場合、スプリングエレメントによって決定される旋回点が結節点の1つに位置するように、前記のスプリングエレメント又はリーフスプリングによりマウントが選択されるのが有利である。もう一方の結節点は、口唇付近のアタッチメントブラシ部分にあるのが有利であり、この場合、前記の旋回点は、口唇付近ではなく、歯ブラシハンドル部の近くに位置している。スプリングエレメントは、揺動システムの共鳴スプリングとして作用することができる。
【0020】
駆動伝達装置の前記マルチジョイントマウント又はスプリングマウントにより、簡単な方法で、歯磨き時に生じる圧力、すなわち、ユーザーが歯ブラシを歯に押し付ける接触圧を検知することができる。このために、とくに、本発明の発展形態においては、横方向負荷検知装置を、駆動伝達装置及び/又は駆動モータに配置することができる。駆動伝達装置のマウントにより、ブラシ部へ圧力がかかった場合、駆動モータ又はその駆動エレメントの相対的なずれが生じ、このずれは、簡単な方法で、とりわけ磁界センサーにより簡単に測定することができる。
【0021】
横方向負荷検知は、有利な方法においては、駆動モータを制御するために用いることができる。このために、横方向負荷検知装置に接続されている制御装置が設けられ、この制御装置は、とくに、検知された接触圧に応じて、駆動モータの振動振幅及び/又は振動周波数を制御する。例えば、歯に加わるブラシ部の接触圧が大きい場合は、振動振幅及び/又は振動周波数が長くされ、必要に応じて、完全に停止させることができる。代替又は追加の方法では、制御装置が、加えられている接触圧をユーザーに表示するか、又は、歯磨きの圧力が高すぎる場合にユーザーに警告するインジケータを制御することができる。更に、代替又は追加の方法では、検知された横方向負荷に応じて、制御装置が始動制御も行い、特定の接触圧が生じた場合、及び/又は、特定の圧力が一定時間を超えて維持された場合、駆動モータを自動的に始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
次に、本発明を好ましい実施例及び関連する図を用いて詳しく説明する。
【図1】駆動伝達装置及びこれを駆動する駆動モータのマウントを図示した、本発明の有利な実施形態による電動歯ブラシの平面図。
【図2】歯ブラシの長軸方向と平行に見た場合の、駆動伝達装置及び駆動モータのマウントの外観図。この場合、アタッチメントブラシの平面的な上下振動を作り出すために、駆動モータは、その駆動面がマウントのベアリング面と平行に配置されている。
【図3】図2と同様に、歯ブラシの長軸方向と平行に見た場合の、駆動伝達装置及び駆動モータのマウントの外観図。この場合、図3によれば、アタッチメントブラシのブラシ部の楕円形の動作軌道を作り出すために、駆動モータの駆動面が駆動伝達装置のマウントのベアリング面に対して傾けられている。
【図4】本発明の更なる好ましい実施形態に基づく、図1に類似した、歯ブラシの平面図。駆動系が共振体を形成し、この場合、駆動系に沿って形成されている2つの揺動結節点が図の中に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示されている歯ブラシ1は、実質的には柱状の長い歯ブラシハンドル部2と、この歯ブラシハンドル部2に取付け可能なアタッチメントブラシ3を有しており、このアタッチメントブラシ3は、実質的に柱状のブラシチューブ23と、これに固定されている、多数のブラシの毛を含むブラシ部24とを有する。
【0024】
アタッチメントブラシ3は、柱状の駆動伝達装置7に強固に、しかし取外し可能に固定されており、駆動伝達装置7は、第1の前面5で、歯ブラシハンドル部2のハンドル部ハウジング4から突き出ている。ハンドル部ハウジング4は、その内部に、駆動モータ8と、この駆動モータ8に電源を供給する、例えばバッテリ又は蓄電池などの電源ユニット又はエネルギーアキュムレータの形のエネルギー供給部25と、駆動モータ8を制御するための制御装置21とを内蔵している。
【0025】
図1に示されているように、駆動伝達装置7は、いくらかハンドル部ハウジング4の中に延び、この場合、図に示された実施形態においては、ハンドル部ハウジング4の内部にある駆動伝達装置7部分の長さの方が、ハンドル部ハウジング4の第1の前面5から突き出ている駆動伝達装置7部分の長さよりも長い。ハンドル部ハウジング4の内部には、駆動伝達装置7のためにベアリング装置9が設けられており、このベアリング装置9は、駆動伝達装置7を可動的に支持しているため、駆動伝達装置7は、その長軸に対して横方向の横運動と、とくに、図1の図の平面に対して垂直線を軸とする傾斜運動又は上下振動とを実施することができる。そのため、アタッチメントブラシ3に固定されているブラシ部24は、アタッチメントブラシの長軸に対して横方向に、及び、図1の図の平面に対して垂直なブラシの毛先方向に対して横方向に、往復振動を行うことができる。図1において図の符号26を付けられているブラシ部の運動方向は、歯のエッジに沿って、実質的に歯間空隙と平行に行う磨き動作に相当する。
【0026】
この場合、図1に示された実施形態において、ベアリング装置9は、2つの傾斜したリーフスプリング14、15からなり、これらのスプリングエレメントは、一方の端部が、駆動伝達装置7に固定され、対向するもう一方の端部が、ハンドル部ハウジングに固定されたポイント、例えば、とくに図示されていないモータサポート群に強固に固定されている。リーフスプリング14及び15は、この場合、4アクションリンク11のベアリング脚12及び13を形成するとともに、駆動伝達装置7は、4アクションリンク11により、図1の図の平面に相当し、両方のリーフスプリング14及び15によって張られるベアリング面18において往復運動が可能である。ベアリング装置9が4アクションリンクのように形成されていることより、駆動電動装置7用のベアリング装置9は、この場合、仮想の旋回点10を決定し、この旋回点10は、ベアリング装置9がハンドル部ハウジング4の内部に配置されているにもかかわらず、ハンドル部ハウジング4の外、すなわち、ハンドル部ハウジング4の第1の前面5とアタッチメントブラシ3のブラシ部24との間に位置している。有利であるのは、このとき、前記旋回点10が、大まかに言ってブラシチューブ23の中央部分に位置しており、歯磨きの際に、このブラシチューブ23が大体口唇付近にくるように、ベアリング装置9が配置されていることである。このことによって、口唇付近におけるアタッチメントブラシ3の動作振幅はわずかしか生じないが、ブラシ部24の付近では、大きな動作振幅が生じるため、効果的な歯磨き動作が生じる。
【0027】
駆動伝達装置7及びこれに固定されているアタッチメントブラシ3は、駆動モータ8によって、ロッカアームのように、前記の旋回点10の周りを振動しながら旋回される。有利であるのは、このために、駆動モータ8が、リニアモータとして、直線的に往復運動する駆動部品27を有する磁気振動モータの形で形成されていることである。図1には、2つのマグネット28及び付属コイル29の形の駆動モータ8の形態が図示されており、付属コイル29は、該当する刺激によってマグネット28を往復運動させ、次にマグネット28が、動作矢印30に従って、駆動部品27を直線的に往復運動させる。直線的に駆動可能な駆動部品27は、ハンドル部ハウジング4の中にある駆動伝達装置7の端部に連結されているため、それに応じて駆動伝達装置7は往復運動を行い、これにより、旋回点10の周りで該当する旋回運動が生じる。
【0028】
図2に示されているように、この場合、駆動部品27の動作方向のある駆動面17が、リーフスプリング14及び15が張られている前記のベアリング面18と平行であることは有利である。このことにより、前記のベアリング面18において、駆動伝達装置7の二次元の上下振動が生じる。
【0029】
代替の方法として、このために、駆動モータ8は、図3に示されるように、その駆動面17を前記のベアリング面18に対して傾けることもできる。これに対応して、駆動部品27の動作方向30は、ベアリング装置9の前記のベアリング面18に対して鋭角に傾いた状態になり、このとき、駆動面17とベアリング面18との間の傾斜角は、有利な場合、45°よりも小さく、好ましくは25°より小さくすることができる。前記の傾斜により、二重円錐形の駆動軌道をとって、旋回点10の周りを振動する駆動伝達装置7の三次元の駆動運動が生じ、この場合、駆動面17の傾斜角に応じて、前記の二重円錐形の断面は、ほぼ平坦に押される。図3に示されている、わずかな傾斜の場合は、符号31で示されているように、ブラシ部24の楕円形の周回運動が生じる(図3を参照)。これによって、歯のエッジに沿ったワイパ動作に加えて、実質的に歯のエッジに対して垂直な突き動作が、ブラシ部24に追加され、この突き動作により、ブラシが歯間空隙に侵入しやすくなる。
【0030】
仮想の旋回点10の位置は、歯ブラシハンドル部2における振動が最小になるように選択されるのが有利である。有利であるのは、このために、旋回点10が、歯ブラシの可動部品によって形成されている揺動システムの質量中心点に置かれることである。アタッチメントブラシ3、駆動伝達装置7、これに固定されている駆動部品27及びマグネット28を含む駆動系の質量は、揺動する駆動系の質量中心点がアタッチメントブラシ3のブラシチューブ23付近及び旋回点10付近に位置するように配分されるのが有利である。
【0031】
アタッチメントブラシ3、駆動伝達装置7、駆動モータ8の駆動部品27及びその往復運動するマグネット28を含む駆動系は、モータが電気的に制御される周波数と一致している共振周波数を有するように、前記の駆動系の剛性を選択することが有利である。実際には、この駆動系は多数の共振周波数を有している。したがって、モータが相応に制御される場合には、アタッチメントブラシ3及び駆動モータ8のマグネット28が同位相で揺動することが可能となり、その際、図4で明らかなように、2つの揺動結節点は、駆動系に沿って形成される。有利であるのは、この場合、ベアリング装置10の4アクションリンクのような形態によって決定される仮想の旋回点10が一方の揺動結節点32に位置し、もう1つの揺動結節点33は、歯磨き時にほぼ口唇付近にくるアタッチメントブラシ3の部分に位置するよう、リーフスプリング14及び15によるマウントが選択されることである。
【0032】
制御装置21による駆動モータ8の制御は、様々に形成されることができる。有利であるのは、駆動モータ8の制御が一定の周波数によって行われることであり、このことは極めてわずかな回路技術の費用により実施することができる。供給電圧が低下した場合、例えば、バッテリが弱くなった場合には、振動振幅を一定に保つために、制御パルスを発信することができるのは有利である。本発明の発展形態においては、モータによる誘起電圧又はモータ振幅センサーを用いてモータ振幅が測定され、この測定信号に応じて、モータ振幅が一定に制御される。
【0033】
本発明の発展形態においては、制御装置21が横方向負荷検知装置19に接続されており、この装置により、駆動伝達装置7に対して横方向に作用する負荷及び歯磨き時における歯ブラシの接触力が検知される。ベアリング装置9による、説明した駆動伝達装置7のマウントにより、アタッチメントブラシ3へ圧力がかかった場合、駆動モータ8のマグネット28の相対的なずれが生じ、このずれは、例えば、磁界センサー20により簡単に測定することができる。歯磨き時の歯ブラシの接触圧を量的に示す磁界センサー20の信号は、制御装置20によって、様々な形及び方法で利用することができる。例えば、接触圧が高過ぎる場合、ユーザーに信号を送るため、図には詳しく示されていないユーザーインジケータを制御することができる。有利であるのは、接触圧が高すぎる場合に、制御装置21が、モータ振幅も低下させることができることである。更に、制御装置21は、特定の接触圧が一定時間持続して加わっている場合に、駆動モータ8をスタートさせる自動スタートを行うことができる。
【0034】
リーフスプリング14及び15の傾斜は、歯ブラシハンドル部2及びアタッチメントブラシ3の形態、とくにそれらの寸法及び質量分布に適合させることができる。図1に示されている実施形態の場合は、リーフスプリング14と15との間の角度16が、20°〜40°の範囲にあり、したがって、ハンドル部ハウジング4の前方の3分の1にリーフスプリング14及び15が配置されている場合、旋回点10は、アタッチメントブラシ3のブラシチューブ23部分の、ハンドル部ハウジング4の外に位置することができる。
【0035】
本発明によって提案されている駆動伝達装置7のマウント及びこれに属する、単純なリニアモータ形の駆動モータ8の形態により、非常に大きな利点を有することができる。すなわち、ハンドル部においては、わずかな振動しか発生しない。この場合、ブラシ部付近においては、大きな歯磨きの振幅が実行されると同時に、一方で、口唇付近での揺動振幅は小さくなる。周波数は、基本的に、作動電圧とは無関係に制御可能であり、負荷、劣化、温度又はその他の影響にも左右されない。特別な制御措置なしに、比較的安定した振幅を達成することが可能であり、更に、アタッチメントブラシの揺動運動の振幅及び周波数は、非常に簡単かつ互いに無関係に調整可能である。このことから、例えば、ソフトモード又はマッサージモードなど、様々なモード変更が可能である。加えて、安い製造コストと同時に、コンパクトな構成による単純なモータ構造が特徴となっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル部ハウジング(4)と、第1のハウジング側(5)で前記ハンドル部ハウジング(4)から突き出ている、好ましくはほぼ柱状のアタッチメントブラシ(3)用駆動伝達装置(7)と、該駆動伝達装置(7)を動かすための駆動モータ(8)と、を有し、前記駆動伝達装置(7)が、その長軸方向に対して横方向に前記駆動モータ(8)により旋回可能であるように、ロッカアームのような形で、ベアリング装置(9)により前記ハンドル部ハウジング(4)の内部に支持されている、電動歯ブラシ(1)の歯ブラシハンドル部であって、前記駆動伝達装置(7)が、前記ベアリング装置(9)によって、前記ハンドル部ハウジング(4)の外に位置する旋回点(10)の周りを旋回可能に保持されている歯ブラシハンドル部。
【請求項2】
前記旋回点(10)が、前記の第1のハウジング側(5)から距離をおいて位置し、該距離は、前記の第1のハウジング側(5)を超えて延びる前記駆動伝達装置(7)の突き出し部よりも長い、及び/又は、前記ハンドル部ハウジング(4)の全長よりも短い、請求項1に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項3】
前記ベアリング装置(9)は、好ましくは、2つのベアリング脚(12、13)を備えた4アクションリンク(11)の形で、マルチジョイントのマウントを有し、前記2つのベアリング脚は、一方の端部が、前記駆動伝達装置(7)にヒンジで固定され、もう一方の端部が、前記ハンドル部ハウジング(4)又は前記ハンドル部ハウジングに固定された部品にヒンジで固定されている、請求項1又は2に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項4】
前記ベアリング装置(9)が、2つのスプリングエレメント、例えば、リーフスプリング(14、15)を有し、該リーフスプリングは、4アクションリンクのように前記駆動伝達装置(7)を前記ハンドル部ハウジング(4)の中で支持し、該リーフスプリングの一方の端部が、前記駆動伝達装置(7)に固定され、もう一方の端部が、前記ハンドル部ハウジング(4)又は前記ハンドル部ハウジングに固定された部品に固定されている、請求項1の前提部分又は請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項5】
前記ベアリング脚(12、13)又は前記スプリング(14、15)が、前記駆動伝達装置(7)の対向する側において、前記駆動伝達装置(7)の前記旋回点(10)へ向かって交差するような形で、互いに鋭角に傾けられた状態で配置されている、請求項3又は4に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項6】
前記ベアリング脚(12、13)又は前記スプリング(14、15)の長軸によって想定される延長線が、前記ハンドル部ハウジング(4)の外で、前記駆動伝達装置(7)の長軸上の交点を決定するように、前記ベアリング脚(12、13)又は前記スプリング(14、15)が相互に傾けられている、請求項5に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項7】
前記ベアリング脚(12、13)又は前記スプリング(14、15)が、互いに角度を有し、該角度は、10°〜60°、好ましくは15°〜45°、とくに20°〜40°の範囲である、請求項5又は6に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項8】
前記駆動モータ(8)が、駆動面(17)において直線的な往復の駆動運動を作り出すための手段を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項9】
前記駆動モータ(8)がリニアモータ、好ましくは振動モータとして形成されている、請求項8に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項10】
前記モータ(8)の前記駆動面(17)が、前記駆動伝達装置(7)のベアリング面(18)と平行に位置し、該ベアリング面の中に前記ベアリング装置(9)の前記ベアリング脚(12、13)又は前記スプリング(14、15)が配置されている、請求項3又は4と組み合せた請求項8又は9に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項11】
前記駆動伝達装置(7)が、三次元で動くように前記ベアリング装置(9)によって支持され、前記駆動モータ(8)によって三次元的に駆動可能であり、とくに二重円錐形の駆動軌道をとって駆動可能である、請求項8又は9に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項12】
前記ベアリング装置(9)の前記ベアリング脚(12、13)又は前記スプリング(14、15)が配置されている、前記ベアリング装置(9)のベアリング面(18)に対して、前記モータ(8)の前記駆動面(17)が鋭角に傾けられている、請求項3又は4と組み合わせた請求項11に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項13】
前記駆動伝達装置(7)又は前記駆動モータ(8)に、歯ブラシの接触圧を検知する横方向負荷検知装置(19)が配置されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項14】
前記横方向負荷検知装置(19)が、前記駆動モータ(8)の負荷を検知する手段を有している、請求項13に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項15】
前記横方向負荷検知装置(19)が、前記駆動モータ(8)内で生じる磁界を検知する磁界センサー(20)を有している、請求項14に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項16】
前記横方向負荷検知装置(19)の信号に応じて、前記駆動モータ(8)を制御する制御装置(21)が設けられている、請求項13〜15のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項17】
前記制御装置(20)が、前記横方向負荷検知装置(19)の信号に応じて、前記駆動モータ(8)の揺動振幅及び/又は揺動周波数を変更する手段を有する、請求項16に記載の歯ブラシハンドル部。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の歯ブラシハンドル部(2)と、該歯ブラシハンドル部(2)の前記駆動伝達装置(7)に固定されているアタッチメントブラシ(3)と、を有する電動歯ブラシ。
【請求項19】
前記ベアリング装置(9)によって決定される、前記駆動伝達装置(7)のための前記旋回点(10)が、前記アタッチメントブラシ(3)のブラシ部(22)と前記アタッチメントブラシ(3)のハンドル部側端部との間の、前記歯ブラシハンドル部(2)上に取り付けられた前記アタッチメントブラシ(3)のブラシチューブ部分に位置する、請求項18に記載の歯ブラシ。
【請求項20】
前記ベアリング装置(9)によって決定される、前記駆動伝達装置(7)のための前記旋回点(10)が、前記歯ブラシ(1)の可動部品によって形成されている揺動システムの質量中心点付近に位置する、請求項18又は19に記載の歯ブラシ。
【請求項21】
前記駆動伝達装置(7)が、これに固定された前記アタッチメントブラシ(3)とともに、揺動可能な駆動系を形成し、2つの揺動結節点(32、33)が前記駆動系に沿って形成されるように、前記駆動モータ(8)及び前記ベアリング装置(9)が形成されている、請求項1〜20のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項22】
揺動可能な前記駆動系が、更に、前記駆動モータ(8)を前記駆動伝達装置(7)に接続する駆動部品と、前記駆動モータ(8)の駆動マグネットと、を含む、請求項21に記載の歯ブラシ。
【請求項23】
前記ベアリング装置(9)によって決定される、前記駆動伝達装置(7)のための前記旋回点(10)が、2つの前記揺動結節点の一方の部分に位置するよう、前記ベアリング装置(9)が形成されている、請求項21又は22に記載の歯ブラシ。
【請求項24】
前記駆動系が、前記駆動モータ(8)によって共振揺動を起こさせる共振揺動体を形成し、該共振揺動の際、前記アタッチメントブラシ(3)の前記ブラシ部(22)及び前記駆動モータ(8)が同位相で揺動する、請求項21〜23のいずれか一項に記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−531175(P2010−531175A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513712(P2010−513712)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004645
【国際公開番号】WO2009/000418
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(591027846)ブラウン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Braun GmbH
【Fターム(参考)】