説明

電動耕耘機

【課題】残耕が生じず、年に数回しか使われなくても不調とならない小型電動耕耘機を提供する。
【解決手段】耕耘軸21と、耕耘軸21に取り付けられた耕耘爪22からなる耕耘ロータ20を備え、耕耘軸21に耕耘ロータ20を回転させる電気モータ40が組み込まれている。電気モータ40で耕耘ロータ20を回転させるので、年に数回しか使われなくてもガソリンエンジンのように調子が悪くなることがない。耕耘軸21に電気モータ40が組み込まれているので、耕耘ロータ20に隙間なく耕耘爪22を取り付けられ、残耕のない耕耘作業ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動耕耘機に関する。さらに詳しくは、家庭菜園など小規模圃場で土を耕すのに適した小型の電動耕耘機に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭菜園に適した小型耕耘機の一例として特許文献1の従来技術がある。
図7に示すように、特許文献1に記載の小型耕耘機110は、エンジン120の下方にメインクラッチ130を介してトランスミッション150を配置して構成される機体と、トランスミッション150の正面に斜め下向きに突出して設けられた筒状ケース173と、筒状ケース173の前端に一体形成された収納ケース194と、収納ケース194から機体幅方向へ水平に延びる耕耘軸195,196、および耕耘軸195,196に取り付けられた複数の耕耘爪からなる耕耘ロータ190とを備えている。
図8に示すように、エンジン120の出力軸121とトランスミッション150の入力軸151はメインクラッチ130を介して接続されており、入力軸151の下端部に設けた駆動ベベルギヤ152と第1従動ベベルギヤ154とを噛み合わせ、第1従動ベベルギヤ154と伝動軸171の一端に設けた第2従動ベベルギヤ172とを噛み合わせることにより、エンジン120の動力を伝動軸171に伝達している。伝動軸171は筒状ケース173の内部に軸支されている。伝動軸171の他端に設けた第1ベベルギヤ181と、第1ベベルギヤ181に噛み合う第2ベベルギヤ182が収納ケース194に収められている。第2ベベルギヤ182には前記の耕耘軸195,196が接続されている。
このような構成であるから、エンジン120の動力は伝動軸171や第2ベベルギヤ182等を介して耕耘軸195,196に伝達され、耕耘ロータ190を回転させて耕耘作業ができるようになっている。
【0003】
しかるに、従来の小型耕耘機110は左右の耕耘軸195,196の間に筒状ケース173と収納ケース194があるため、耕耘ロータ190の中央に幅方向の隙間ができ、中央部分に残耕ができるという問題があった。
【0004】
また、小型耕耘機は、例えば秋の収穫期に一度耕し春に除草を兼ねてもう一度耕す様に、通常は年に2回程度しか使われない。エンジンの燃料であるガソリンをタンク内に半年間放置するとタンクが腐食し、その結果エンジンがかかりにくくなる場合がある。この場合、プラグ掃除などに時間がとられ、エンジンが動いたとしても調子が悪く力が出ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−274704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、残耕が生じず、年に数回しか使われなくても不調とならない小型電動耕耘機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の電動耕耘機は、耕耘軸と、該耕耘軸に取り付けられた耕耘爪からなる耕耘ロータを備え、前記耕耘軸に、前記耕耘ロータを回転させる電気モータが組み込まれていることを特徴とする。
第2発明の電動耕耘機は、第1発明において、前記耕耘軸が中空の回転筒と、該回転筒に挿入された固定軸とからなり、前記回転軸にモータケースが取り付けられており、前記モータケースに磁石が取り付けられており、前記固定軸に前記磁石に対向するコイルが取り付けられていることを特徴とする。
第3発明の電動耕耘機は、第2発明において、前記モータケースの外周に耕耘爪が取り付けられていることを特徴とする。
第4発明の電動耕耘機は、第1,第2または第3発明において、前記電動耕耘機のフレームに荷台を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、電気モータで耕耘ロータを回転させるので、年に数回しか使われなくてもガソリンエンジンのように調子が悪くなることがない。また、耕耘軸に電気モータが組み込まれているので、耕耘ロータに隙間なく耕耘爪を取り付けられ、その結果残耕のない耕耘作業ができる。
第2発明によれば、回転筒に取り付けられたモータケースをロータとし、固定軸をステータとした電気モータが構成されるので、電気モータを耕耘軸にコンパクトに組み込むことができる。また、電気モータの動力がダイレクトに耕耘ロータに伝わるので、機械損失が少なく、効率が良い。
第3発明によれば、モータケースの外周に耕耘爪が取り付けられているので、耕耘ロータに隙間なく耕耘爪を取り付けられ、その結果残耕のない耕耘作業ができる。
第4発明によれば、耕耘軸に電気モータが組み込まれているから、電動耕耘機のフレームに駆動源を載せるスペースが必要なくなり、荷台を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動耕耘機の正面図である。
【図2】同電動耕耘機の側面図である。
【図3】同電動耕耘機の平面図である。
【図4】同電動耕耘機の耕耘ロータの正面視断面図である。
【図5】耕耘爪の説明図であって、(A)は図4におけるA矢視図、(B)は図4におけるB矢視図、(C)は図4におけるC矢視図、(D)は図4におけるD矢視図である。
【図6】他の実施形態に係る電動耕耘機の耕耘ロータの正面図である。
【図7】従来技術の小型耕耘機の正面図である。
【図8】図7におけるVIII-VIII線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1,2,3に示すように、本発明の一実施形態に係る電動耕耘機1は、フレーム10に耕耘ロータ20、培土器31、ガイド輪32等が取り付けられた小型耕耘機である。
フレーム10は主に金属製のパイプで形成されており、パイプを格子状に接合することで平面視矩形に形成した水平部11と、水平部11の幅方向中央後方寄りに立設した正面視逆U字形の垂直部12とを有している。垂直部12の上端にはアップハンドル型のハンドルバー13の中央部がボルト・ナットで締結されている。
水平部11の底面後方寄りには培土器31やガイド輪32がボルト等で締結されており、使用目的によって、培土器31を畝立器等に付け替えたり、培土器31やガイド輪32を取り外したりすることができるようになっている。
【0011】
水平部11の幅方向両端には一対の支持板14,14が下垂するように接合されており、この支持板14,14の先端に耕耘ロータ20が取り付けられている。耕耘ロータ20は水平部11の下方前方寄りに位置しており、培土器31やガイド輪32より前方に位置している。
耕耘ロータ20は耕耘軸21と、耕耘軸21に取り付けられた複数の耕耘爪22とを有している。そして、耕耘軸21には耕耘ロータ20を回転させる電気モータ40が組み込まれている。
【0012】
垂直部12の背面には、この電気モータ40に電力を供給するバッテリ51,51と、電力の供給を制御するコントロールパネル52が取り付けられている。バッテリ51,51はコントロールパネル52の左右に2つ取り付けられている。コントロールパネル52には、始動・停止のためのキースイッチ、耕耘ロータ20の回転方向を切り替える前・後進切替スイッチ、非常停止スイッチ、運転表示灯、バッテリ残量計、ヒューズホルダ、ブレーカ等が備えられている。
ハンドルバー13の先端にはスロットルグリップ53が取り付けられており、スロットルグリップの信号はコントロールパネル52に入力されるようになっている。このため、スロットルの操作により電気モータ40に供給される電力量を調整でき、耕耘ロータ20の回転速度を調整することができるようになっている。
【0013】
以上のような構成であり、電気モータ40とバッテリ51で耕耘ロータ20を回転させるので、年に数回しか使われなくてもガソリンエンジンのように調子が悪くなることがない。
【0014】
また、耕耘軸21に電気モータ40が組み込まれているから、ガソリンエンジン等の駆動源をフレーム10に載せる必要がない。そのためフレーム10を上記のような簡易な構成とすることができ、空いたスペースを荷台とすることができる。本実施形態では水平部11と垂直部12とで荷台が形成されており、コンテナ2等を積載することができる様になっている。
【0015】
つぎに、耕耘ロータ20の構成について説明する。
図4に示すように、耕耘軸21は中空の回転筒21aと、その回転筒21aの内部に挿入された固定軸21bとからなる。固定軸21bの両端は支持板14,14の先端にナットで締結されており、フレーム10に対して回転不能となっている。なお、固定軸21bを締結するナットを保護し、目隠しするために支持板14,14にキャップ15,15が取り付けられている。
【0016】
回転筒21aは左右2つの部材から構成されており、その間に電気モータ40のモータケース41が接合されている。本実施形態ではモータケース41は回転筒21aの中央に位置している。すなわち、左右の回転筒21a,21aとモータケース41とが一体となって中央が膨らんだ筒状の部材に形成されており、その中に固定軸21bが挿入されている。
また、固定軸21bと回転筒21aとの間、および固定軸21bとモータケース41との間にはベアリングが挿入されており、回転筒21aとモータケース41は固定軸21bに回転自在に支持されている。
【0017】
固定軸21bのモータケース41に内包される部分には、円盤状の固定子42が固定されている。固定子42の外周には径方向に延びる複数の鉄心43が設けられており、鉄心43にはコイル44が巻き付けられている。また、モータケース41の内周面に沿って永久磁石45が固定されている。鉄心43の先端と永久磁石45とはわずかに隙間を持って対向している。
これらモータケース41、固定子42、鉄心43、コイル44、永久磁石45により電気モータ40が構成されており、固定子42、鉄心43、コイル44がステータであり、モータケース41、永久磁石45がロータとなっている。モータケース41をホイールと見ると電気モータ40はホイールインモータとなっている。したがって、電気モータ40を駆動させることにより、モータケース41と回転筒21aを回転させることができる。
【0018】
このように、ホイールインモータとして電気モータ40を構成することにより、電気モータ40を耕耘軸21にコンパクトに組み込むことができる。また、電気モータ40の動力がダイレクトに耕耘ロータ20に伝わるので、機械損失が少なく、効率が良い。
【0019】
なお、固定軸21bにはその一端から固定子42の近傍まで繋がる導線孔21cが形成されている。この導線孔21cに図示しない導線を通し、コントロールパネル52とコイル44とを電気的に接続することで、電気モータ40に電力を供給することができる。
【0020】
回転筒21aとモータケース41には、複数の耕耘爪22a〜22dと排土板23が取り付けられている。具体的には、回転筒21aには、その左右両端から中央に向かって排土板23、耕耘爪22a,22c,22dがこの順番に取り付けられており、モータケース41の外周には耕耘爪22dが取り付けられている。これら耕耘爪22a〜22dと排土板23は左右対称となるように取り付けられている。
【0021】
図5に示すように、排土板23は円盤状の部材であり、耕耘爪22aは先端が内向き(耕耘軸21の中央向き)に曲げられた4つの爪からなる(A)。耕耘爪22bは先端が内向きに曲げられた2つの爪からなる(B)。耕耘爪22cは先端が外向きに曲げられた2つの爪からなる(C)。これらは、回転筒21aに固定された円盤状の取付部材24にボルト等で締結されている。また、耕耘爪22dは先端が右向き(耕耘軸21の一端向き)に曲げられた2つの爪と、左向き(耕耘軸21の他端向き)に曲げられた2つの爪からなり、モータケース41の外周に形成された取付部41aに左右交互になるようにボルト等で締結されている(D)。なお、耕耘爪22a〜22dの回転半径はそれぞれ同じになるように構成されている。
【0022】
このように、耕耘軸21に加えてモータケース41にも耕耘爪22が取り付けられているので、耕耘ロータ20に隙間なく耕耘爪22を取り付けられる。したがって、この耕耘ロータ20を用いれば、残耕のない耕耘作業ができる。
【0023】
(他の実施形態)
前記実施形態では、電気モータ40を耕耘軸21の中央に1つ設けたが、左右に偏って設けてもよいし、複数個設けてもよい。例えば、耕耘軸21の左右両端に2つの電気モータ40を設ける実施形態としてもよい。
電気モータ40を複数個設けることで駆動力を増すことができ、その結果、電気モータ40を小型にすることができる。
【0024】
また、前記実施形態では、モータケース41に耕耘爪22dを取り付けたが、モータケース41には耕耘爪22を取り付けず、回転筒21aのみに耕耘爪22を取り付ける実施形態としてもよい。例えば、図6に示すように、先端が内向きに曲げられた耕耘爪22e,22eを回転筒21aに取り付け、耕耘爪22eの爪先で電気モータ40を覆うようにしてもよい。
このようにしても、耕耘ロータ20に隙間なく耕耘爪22を取り付けられ、残耕のない耕耘作業ができる。また、この場合、モータケース41に取付部41aを形成する必要がないため、電気モータ40を単純な形状とすることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 電動耕耘機
10 フレーム
14 支持板
20 耕耘ロータ
21 耕耘軸
21a 回転筒
21b 固定軸
22 耕耘爪
40 電気モータ
41 モータケース
42 固定子
43 鉄心
44 コイル
45 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘軸と、該耕耘軸に取り付けられた耕耘爪からなる耕耘ロータを備え、
前記耕耘軸に、前記耕耘ロータを回転させる電気モータが組み込まれている
ことを特徴とする電動耕耘機。
【請求項2】
前記耕耘軸が中空の回転筒と、該回転筒に挿入された固定軸とからなり、
前記回転軸にモータケースが取り付けられており、
前記モータケースに磁石が取り付けられており、
前記固定軸に前記磁石に対向するコイルが取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電動耕耘機。
【請求項3】
前記モータケースの外周に耕耘爪が取り付けられている
ことを特徴とする請求項2記載の電動耕耘機。
【請求項4】
前記電動耕耘機のフレームに荷台を設けた
ことを特徴とする請求項1,2または3記載の電動耕耘機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate