説明

電動自転車のテンショナー

【課題】補助駆動用輪体の巻角度の変化を抑制することが可能な電動自転車のテンショナーを提供する。
【解決手段】補助駆動用輪体18と同じ一方側から駆動力伝達部材6に歯合する回転自在な第1輪体31と、補助駆動用輪体18と反対の他方側から駆動力伝達部材6に歯合する回転自在な第2輪体32とを有し、第1輪体31は、補助駆動用輪体18の後方に位置し、且つ、駆動力伝達部材6の張力が増減する張力増減方向Gへ移動自在であるとともに、付勢部材によって、駆動力伝達部材6の張力が増える方向に付勢されており、第2輪体32は補助駆動用輪体18と第1輪体31との間に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車のチェン等の駆動力伝達部材に張力を付与するテンショナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動自転車は、図10に示すように、ペダル70に入力された人力駆動力(踏力)によって回転する前部スプロケット71と、後輪72に設けられた後部スプロケット73と、前部スプロケット71と後部スプロケット73との間に巻回されたチェン74と、チェン74に歯合する補助駆動用スプロケット75と、補助駆動用スプロケット75を回転駆動する電動機(図示省略)と、電動機を収納するケース77と、チェン74に張力を付与するテンショナー78とを有するものがある。
【0003】
図11に示すように、補助駆動用スプロケット75は、下位の回動経路のチェン74に下方から歯合して、チェン74を持ち上げている。テンショナー78は取付アーム79と可動プーリー80と戻しバネ(図示省略)とを有している。取付アーム79は、ケース77に、上下揺動自在に設けられている。可動プーリー80は、取付アーム79の遊端部に回転自在に設けられ、下位のチェン74に上方から歯合している。戻しバネは、取付アーム79を下向きに付勢している。
【0004】
これによると、ペダル70を交互に踏むことにより前部スプロケット71が回転し、前部スプロケット71の回転がチェン74を介して後部スプロケット73に伝わり、後輪72が回転する。この際、ペダル70にかかる踏力に応じて電動機が駆動することにより、補助駆動用スプロケット75が回転駆動し、補助駆動力が補助駆動用スプロケット75からチェン74を介して後部スプロケット73に伝わる。これにより、人力駆動力に補助駆動力が加味されて、後輪72が回転する。
【0005】
この時、取付アーム79は戻しバネの付勢力によって下向きに付勢されているため、可動プーリー80は下位のチェン74を上方から下向きに押圧し、チェン74に最適な張力が付与され、チェン74の弛みを防止することができる。
【0006】
尚、上記のようなテンショナーを備えた電動自転車については、例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−341774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記の従来形式では、図11に示すように、車体フレームの前後の長さやチェン74の長さには、製作誤差によりばらつきが生じる。このような長さのばらつきによって、取付アーム79の姿勢が変動し(すなわち水平面に対する取付アーム79の角度Aが増減し)、補助駆動用スプロケット75の巻角度Bが、一定にならず、大幅に変化してしまうという問題がある。尚、上記巻角度Bとは、チェン74が補助駆動用スプロケット75の外周部に巻付いている範囲を示す角度である。
【0009】
例えば、巻角度Bが規定角度よりも小さくなると、チェン74に噛み合う補助駆動用スプロケット75の歯数が減少して、補助駆動用スプロケット75がチェン74に十分に噛み合わず、歯飛び現象が発生するという問題がある。尚、歯飛び現象とは、チェン74が補助駆動用スプロケット75の歯の上に乗り上げて隣りの歯へ飛び移る現象であり、このような歯飛び現象が発生すると、補助駆動用スプロケット75の回転力が十分にチェン74に伝達されないという不具合が生じる。
【0010】
尚、上記のような歯飛び現象は、取付アーム79の角度Aが増大した場合でも、チェン74の弛みが増えるため、後部スプロケット73においても発生することがある。
また、巻角度Bが規定角度よりも大きくなると、補助駆動用スプロケット75とチェン74との摩擦が増大し、補助駆動用スプロケット75の回転力のロス(損失)が増えるという不具合がある。
【0011】
本発明は、補助駆動用輪体の巻角度の変化を抑制することが可能な電動自転車のテンショナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本第1発明は、クランク軸と共に回転自在な前部輪体と、後輪に設けられた後部輪体と、前部輪体と後部輪体との間に巻回された無端状の回動自在な駆動力伝達部材と、駆動力伝達部材の回動経路の内外いずれか一方側から駆動力伝達部材に歯合する回転自在な補助駆動用輪体と、補助駆動用輪体に回転駆動力を付与する電動機とを備えた電動自転車の駆動力伝達部材に張力を付与するテンショナーであって、
補助駆動用輪体と同じ一方側から駆動力伝達部材に歯合する回転自在な第1輪体と、補助駆動用輪体と反対の他方側から駆動力伝達部材に歯合する回転自在な第2輪体とを有し、
第1輪体は補助駆動用輪体の後方に位置し、
第2輪体は補助駆動用輪体と第1輪体との間に位置し、
第1輪体と第2輪体とのうちの少なくとも第1輪体は、駆動力伝達部材の張力が増減する張力増減方向へ移動自在であり、
第2輪体の張力増減方向への移動距離は第1輪体の張力増減方向への移動距離よりも小さく、
第1輪体は、付勢部材によって、駆動力伝達部材の張力が増える方向に付勢されているものである。
【0013】
これによると、ペダルを踏むことにより前部輪体が回転し、前部輪体の回転が駆動力伝達部材を介して後部輪体に伝わり、後輪が回転する。この際、ペダルにかかる踏力に応じて電動機が駆動することにより、補助駆動用輪体が回転駆動し、補助駆動力が補助駆動用輪体から駆動力伝達部材を介して後部輪体に伝えられる。これにより、人力駆動力に補助駆動力が加味されて、後輪が回転する。
【0014】
この際、駆動力伝達部材の回動により第1および第2輪体が回転し、第1輪体は、付勢部材の付勢力により、駆動力伝達部材の張力が増える方向へ移動して駆動力伝達部材を押圧する。これにより、駆動力伝達部材に最適な張力が付与され、駆動力伝達部材の弛みを防止することができる。
【0015】
また、第2輪体の張力増減方向への移動距離が第1輪体の張力増減方向への移動距離よりも小さいため、補助駆動用輪体の巻角度の変化を抑制することができる。これにより、歯飛び現象の発生を防止することや補助駆動用輪体の回転力のロスの増加を防止することができる。
【0016】
さらに、上記の移動距離の大小関係を言い換えると、第1輪体の張力増減方向への移動距離が第2輪体の張力増減方向への移動距離よりも大きいことになるため、駆動力伝達部材の長さのばらつきや電動自転車の車体フレームの長さのばらつきを、第1輪体の張力増減方向への移動によって、十分に吸収することができる。
【0017】
本第2発明における電動自転車のテンショナーは、第2輪体の張力増減方向への移動距離が0であるものである。
これによると、第2輪体の取付位置は補助駆動用輪体と第1輪体との間で固定される。これにより、補助駆動用輪体の巻角度の変化を防止して、巻角度を一定に保つことができる。これにより、歯飛び現象の発生を防止することや補助駆動用輪体の回転力のロスの増加を防止することができる。
【0018】
本第3発明における電動自転車のテンショナーは、第1輪体は、第2輪体と後部輪体とを結ぶ架空の直線に対して上下に横切る方向へ移動自在である。
本第4発明における電動自転車のテンショナーは、第1輪体は架空の直線に対して直交する方向に移動自在である。
【0019】
これによると、第1輪体の移動によって、駆動力伝達部材の長さのばらつきや電動自転車の車体フレームの長さのばらつきを、より一層、吸収することができる。
本第5発明における電動自転車のテンショナーは、第1輪体は、左右方向の揺動軸心を中心に揺動自在な取付アームに取付けられ、
付勢部材は、駆動力伝達部材の張力が増える方向に、取付アームを付勢し、
取付アームの揺動方向における取付アームの取付姿勢の許容範囲を表示する取付姿勢表示部が取付アームに設けられているものである。
【0020】
これによると、テンショナーを電動自転車に取り付け、駆動力伝達部材を前部輪体と後部輪体と補助駆動用輪体と第1および第2輪体とに巻回した際、取付アームの取付姿勢の許容範囲が取付姿勢表示部によって表示されているため、取付アームの取付姿勢が許容範囲内に入っているのか或は許容範囲内から外れているのかを容易に目視で把握することができる。
【0021】
取付アームの取付姿勢が許容範囲内から外れている場合、後輪の取付位置を前後方向へずらす等して前部輪体と後部輪体との間の前後距離を調整することにより、取付アームの取付姿勢を許容範囲内に入れることができる。これにより、容易に取付アームを正規の取付姿勢で取り付けることができる。
【0022】
本第6発明における電動自転車のテンショナーは、第1輪体は、左右方向の揺動軸心を中心に揺動自在な取付アームに取付けられ、
取付アームは、取付軸を介して、取付部材に揺動自在に設けられ、
取付部材は電動機を収納するケースの外縁部に取り付けられ、
付勢部材は、駆動力伝達部材の張力が増える方向に、取付アームを付勢し、
取付アームと取付部材との左右方向間隔が取付アームとケースの外縁部との左右方向間隔よりも大きく設定され、
付勢部材は取付アームと取付部材との間に設けられているものである。
【0023】
これによると、取付アームと取付部材との間に付勢部材の取付用空間が形成される。取付アームと取付部材との左右方向間隔が取付アームとケースの外縁部との左右方向間隔よりも大きいので、左右方向に広い取付用空間を確保することができる。このため、付勢力の強い大型の付勢部材を取付用空間に設けることが可能となり、付勢部材は、より一層強い付勢力で、第1輪体を駆動力伝達部材に押圧することができる。これにより、駆動力伝達部材の弛みを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、補助駆動用輪体の巻角度の変化を抑制したり、或は、巻角度を一定に保つことができる。また、駆動力伝達部材の長さのばらつきや電動自転車の車体フレームの長さのばらつきを十分に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1におけるテンショナーを備えた電動自転車の一部切欠き側面図
【図2】同、電動自転車の駆動ユニットの横断面図
【図3】同、テンショナーを備えた駆動ユニットの側面図
【図4】同、テンショナーの断面図
【図5】同、第1取付姿勢のテンショナーと駆動ユニットと後部スプロケットとチェンとの側面図
【図6】同、第2取付姿勢のテンショナーと駆動ユニットと後部スプロケットとチェンとの側面図
【図7】同、第1取付姿勢のテンショナーの側面図
【図8】同、第2取付姿勢のテンショナーの側面図
【図9】本発明の実施の形態2におけるテンショナーの側面図
【図10】従来のテンショナーを備えた電動自転車の一部切欠き側面図
【図11】同、テンショナーを備えた駆動ユニットの側面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
先ず、実施の形態1を以下に説明する。
【0027】
図1に示すように、1は電動自転車であり、車体フレーム2と、車体フレーム2に設けられた前輪(図示省略)および後輪4と、後輪4を回転駆動させる駆動ユニット5と、駆動ユニット5の回転駆動力を後輪4に伝える無端状の回動自在なチェン6(駆動力伝達部材の一例)とを備えている。
【0028】
車体フレーム2は、メインフレーム10と、立パイプ11と、チェンステー12と、立パイプ11とメインフレーム10の後端とチェンステー12の前端とを接合するハンガラグ(図示省略)等を有している。
【0029】
図2に示すように、駆動ユニット5は、ハンガラグに設けられており、ペダル15を踏むことによって回転するクランク軸16と、クランク軸16に外嵌された前部スプロケット17(前部輪体の一例)と、回転自在な補助駆動用スプロケット18(補助駆動用輪体の一例)と、補助駆動用スプロケット18を回転駆動する電動機19と、ケース20とを有している。
【0030】
クランク軸16と前部スプロケット17との間には一方向クラッチ21が設けられている。クランク軸16が一方向Cへ回転すると、クランク軸16から前部スプロケット17への回転力伝達経路が一方向クラッチ21によりつながり、前部スプロケット17がクランク軸16と共に回転する。また、クランク軸16が反対方向Dへ回転すると、クランク軸16から前部スプロケット17への回転力伝達経路が一方向クラッチ21により遮断され、クランク軸16と前部スプロケット17とが個別に回転可能な状態になる。
【0031】
チェン6は、前部スプロケット17と、後輪4の中央軸部分に組み付けられた後部スプロケット23(後部輪体の一例)との間に巻回されている。図1に示すように、補助駆動用スプロケット18は、前部スプロケット17と後部スプロケット23との間に設けられ、チェン6の長円状の回動経路の外側(一方側の一例であり、この場合は下位のチェン6の下方)からチェン6に歯合し、下位のチェン6を持ち上げている。
【0032】
図2に示すように、電動機19から補助駆動用スプロケット18に至る回転力伝達経路上には、減速機構24と一方向クラッチ25とが設けられている。電動機19が回転駆動している際、上記回転力伝達経路は一方向クラッチ25によってつながり、電動機19の回転力が減速機構24を経て補助駆動用スプロケット18に伝えられる。また、電動機19が停止している際、上記回転力伝達経路は一方向クラッチ25によって遮断され、電動機19側の負荷がチェン6に作用することを防いでいる。
【0033】
クランク軸16はケース20に挿入されて回転自在に支持され、電動機19と減速機構24とはケース20内に収納されている。また、ケース20内には、ペダル15に作用する踏力を検出するトルクセンサ26が設けられている。
【0034】
図3,図4に示すように、ケース20には、チェン6に張力(テンション)を付与するテンショナー30が設けられている。テンショナー30は第1プーリー31(第1輪体の一例)と第2プーリー32(第2輪体の一例)と取付アーム33と取付板34(取付部材の一例)とを有している。
【0035】
取付板34には取付軸35が設けられ、取付アーム33は、取付軸35に設けられ、取付軸35を通る左右方向Eの揺動軸心36を中心に揺動自在である。
第1プーリー31は、支軸37を介して取付アーム33の遊端部に回転自在に取り付けられ、補助駆動用スプロケット18の後方に位置しており、補助駆動用スプロケット18と同じ側(すなわち下位のチェン6の下方)からチェン6に歯合し、下位のチェン6を持ち上げている。
【0036】
第2プーリー32は、取付軸35に外嵌されて回転自在に設けられており、補助駆動用スプロケット18と第1プーリー31との間に位置しており、補助駆動用スプロケット18と反対側(他方側の一例であり、この場合は下位のチェン6の上方)から下位のチェン6に歯合している。これにより、下位のチェン6は、補助駆動用スプロケット18の箇所で山状に湾曲し、第2プーリー32の箇所で谷状に湾曲している。
【0037】
取付アーム33が揺動軸心36を中心に揺動することにより、第1プーリー31は、チェン6の張力が増減する張力増減方向Gへ移動する。また、第2プーリー32の取付位置は取付アーム33の基端部に固定されており、これにより、第2プーリー32の張力増減方向Gへの移動距離が0に設定されている。尚、図5に示すように、張力増減方向Gは、第2プーリー32の中心と後部スプロケット23の中心とを結ぶ架空の直線48に対して上下に直交する方向である。また、取付アーム33の揺動軸心36は第2プーリー32の中心と同じ位置にある。
【0038】
また、図4に示すように、取付アーム33を上向き(チェン6の張力が増える方向の一例)に揺動するように付勢する捻りコイルばね38(付勢部材の一例)が、取付軸35に外嵌されて、取付板34と取付アーム33の基端部との間に保持されている。これにより、第1プーリー31は捻りコイルばね38の付勢力で上向きに付勢されている。尚、捻りコイルばね38の一端は取付アーム33に形成された孔39に挿入され、捻りコイルばね38の他端は取付板34に形成された孔40に挿入されている。
【0039】
ケース20は板状の外縁部20aを有しており、取付板34は、ケース20の外縁部20aの裏側面に当て付けられ、ねじ42(連結部材)とナット43(連結部材)によって外縁部20aに取り付けられている。取付アーム33の基端部と取付板34との左右方向間隔H1が取付アーム33の基端部とケース20の外縁部20aとの左右方向間隔H2よりも大きく設定されている。
【0040】
また、図7,図8に示すように、取付アーム33の揺動方向(すなわち張力増減方向G)における取付アーム33の取付姿勢の許容範囲を表示する第1および第2取付姿勢表示突部44,45(取付姿勢表示部の一例)が取付アーム33の基端部に設けられている。
【0041】
図7に示すように、第2プーリー32の回転中心(揺動軸心36)とねじ42の頭部とを結ぶ架空の直線49が第1取付姿勢表示突部44上に位置したときの取付アーム33の取付姿勢を第1取付姿勢とし、図8に示すように、上記直線49が第2取付姿勢表示突部45上に位置したときの取付アーム33の取付姿勢を第2取付姿勢とすると、図5および図7に示すように取付アーム33が第1取付姿勢の場合、捻りコイルばね38から発生するトルクが小さくなり、第1プーリー31がチェン6を押す荷重Fは許容下限値となる。また、図6および図8に示すように取付アーム33が第2取付姿勢の場合、捻りコイルばね38から発生するトルクが大きくなり、第1プーリー31がチェン6を押す荷重Fは許容上限値となる。尚、上記第1取付姿勢と第2取付姿勢との間の範囲が許容範囲Jとして設定されており、取付アーム33は許容範囲J内に入る姿勢で取り付けられている。
【0042】
以下、上記構成における作用を説明する。
図1に示すように、ペダル15を踏むことにより前部スプロケット17が回転し、前部スプロケット17の回転がチェン6を介して後部スプロケット23に伝わり、後輪4が回転する。この際、ペダル15にかかる踏力がトルクセンサ26により検出され、この検出値に基いて電動機19が駆動し、補助駆動用スプロケット18が回転駆動し、補助駆動力が補助駆動用スプロケット18からチェン6を介して後部スプロケット23に伝えられる。これにより、人力駆動力に補助駆動力が加味されて、後輪4が回転する。
【0043】
この際、チェン6の回動により第1および第2プーリー31,32が回転し、取付アーム33が捻りコイルばね38の付勢力により上向きに揺動し、第1プーリー31がチェン6を下側から上向きに押圧する。これにより、チェン6に最適な張力が付与され、チェン6の弛みを防止することができる。
【0044】
また、図3に示すように、第2プーリー32の取付位置は補助駆動用スプロケット18と第1プーリー31との間で固定されているため、補助駆動用スプロケット18の巻角度Bの変化を防止して、巻角度Bを一定に保つことができる。これにより、歯飛び現象の発生を防止することや補助駆動用スプロケット18の回転力のロスの増加を防止することができる。
【0045】
また、取付アーム33が揺動して第1プーリー31が張力増減方向G(上下方向)へ移動することにより、チェン6の長さのばらつきや車体フレーム2の長さのばらつきを吸収することができる。この際、図5に示すように、上記第1プーリー31の移動方向すなわち張力増減方向Gを上記架空の直線48に対して直交させているため、上記チェン6や車体フレーム2の長さのばらつきを吸収するときの第1プーリー31の移動距離を短くすることができる。
【0046】
また、図4に示すように、取付アーム33の基端部と取付板34との間に捻りコイルばね38の取付用空間47が形成される。この際、左右方向間隔H1が左右方向間隔H2よりも大きいので、左右方向Eに広い取付用空間47を確保することができる。このため、付勢力の強い大型の捻りコイルばね38を設けることが可能となり、捻りコイルばね38は、より一層強い付勢力で、第1プーリー31をチェン6に押圧することができる。これにより、チェン6の弛みを確実に防止することができる。
【0047】
また、テンショナー30をねじ42でケース20の外縁部20aに取り付け、チェン6を前部スプロケット17と後部スプロケット23と補助駆動用スプロケット18と第1および第2プーリー31,32とに巻回した際、取付アーム33の取付姿勢が許容範囲J内に入っていると、第2プーリー32の回転中心とねじ42の頭部とを結ぶ架空の直線49が第1取付姿勢表示突部44と第2取付姿勢表示突部45との間に位置する。また、取付アーム33の取付姿勢が許容範囲J内から外れていると、上記直線49が第1取付姿勢表示突部44と第2取付姿勢表示突部45との間からはみ出している。このように、上記直線49と第1および第2取付姿勢表示突部44,45とを目視することで、取付アーム33の取付姿勢が許容範囲内に入っているのか或は許容範囲内から外れているのかを容易に目視で把握することができる。
【0048】
尚、上記のように取付アーム33の取付姿勢が許容範囲内から外れている場合、後輪4の取付位置を前後方向へずらす等して前部スプロケット17と後部スプロケット23との間の前後距離を調整することにより、取付アーム33の取付姿勢を許容範囲内に入れることができる。これにより、容易に取付アーム33を正規の取付姿勢で取り付けることができる。
【0049】
上記実施の形態1では、第2プーリー32を取付アーム33に設けたが、第2プーリー32を取付アーム33とは別の部材(例えば取付板34等)に設け、取付アーム33の揺動軸心36を第2プーリー32の中心と後部スプロケット23の中心とを結ぶ架空の直線48上に設定してもよい。
【0050】
上記実施の形態1では、取付アーム33の揺動軸心36と第2プーリー32の中心とを同じ位置に設定したが、下記実施の形態2のように異なった位置に設定してもよい。
(実施の形態2)
実施の形態2では、図9に示すように、第2プーリー32は取付アーム33に設けられ、第2プーリー32の中心は取付アーム33の揺動軸心36と第1プーリー31の中心との間に位置している。したがって、取付アーム33の揺動により、第1プーリー31と第2プーリー32とが共に張力増減方向Gへ移動し、この際、第2プーリー32の張力増減方向Gへの移動距離55は第1プーリー31の張力増減方向Gへの移動距離56よりも小さくなる。
【0051】
以下、上記構成における作用を説明する。
第2プーリー32の移動距離55が第1プーリー31の移動距離56よりも小さいため、補助駆動用スプロケット18の巻角度Bの変化を抑制して小さくすることができる。これにより、歯飛び現象の発生を防止することや補助駆動用スプロケット18の回転力のロスの増加を防止することができる。
【0052】
さらに、上記の移動距離の大小関係を言い換えると、第1プーリー31の張力増減方向Gへの移動距離56が第2プーリー32の張力増減方向への移動距離55よりも大きいことになるため、チェン6の長さのばらつきや車体フレーム2の長さのばらつきを、第1プーリー31の移動によって、十分に吸収することができる。
【0053】
上記実施の形態2では、第2プーリー32の中心は、取付アーム33の揺動軸心36と第1プーリー31の中心37との間を結ぶ架空の直線上に位置しているが、直線上からずれた位置であってもよい。
【0054】
上記各実施の形態では、駆動力伝達部材の一例としてチェン6を用いたが、チェン6の代わりにベルトを用いてもよい。
上記各実施の形態では、付勢手段として、捻りコイルばね38を用いたが、捻りコイルばね以外の種類のばねを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のテンショナーは、チェンに張力を付与してチェンの弛みを防止するのに最適であるが、チェンの代わりにベルトを用いた電動自転車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 電動自転車
4 後輪
6 チェン(駆動力伝達部材)
16 クランク軸
17 前部スプロケット(前部輪体)
18 補助駆動用スプロケット(補助駆動用輪体)
19 電動機
20 ケース
20a 外縁部
23 後部スプロケット(後部輪体)
30 テンショナー
31 第1プーリー(第1輪体)
32 第2プーリー(第2輪体)
33 取付アーム
34 取付板(取付部材)
35 取付軸
36 揺動軸心
38 捻りコイルばね(付勢手段)
44 第1取付姿勢表示突部(取付姿勢表示部)
45 第2取付姿勢表示突部(取付姿勢表示部)
48 架空の直線
55 第2プーリー(第2輪体)の張力増減方向への移動距離
56 第1プーリー(第1輪体)の張力増減方向への移動距離
E 左右方向
G 張力増減方向,揺動方向
H1,H2 左右方向間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と共に回転自在な前部輪体と、後輪に設けられた後部輪体と、前部輪体と後部輪体との間に巻回された無端状の回動自在な駆動力伝達部材と、駆動力伝達部材の回動経路の内外いずれか一方側から駆動力伝達部材に歯合する回転自在な補助駆動用輪体と、補助駆動用輪体に回転駆動力を付与する電動機とを備えた電動自転車の駆動力伝達部材に張力を付与するテンショナーであって、
補助駆動用輪体と同じ一方側から駆動力伝達部材に歯合する回転自在な第1輪体と、補助駆動用輪体と反対の他方側から駆動力伝達部材に歯合する回転自在な第2輪体とを有し、
第1輪体は補助駆動用輪体の後方に位置し、
第2輪体は補助駆動用輪体と第1輪体との間に位置し、
第1輪体と第2輪体とのうちの少なくとも第1輪体は、駆動力伝達部材の張力が増減する張力増減方向へ移動自在であり、
第2輪体の張力増減方向への移動距離は第1輪体の張力増減方向への移動距離よりも小さく、
第1輪体は、付勢部材によって、駆動力伝達部材の張力が増える方向に付勢されていることを特徴とする電動自転車のテンショナー。
【請求項2】
第2輪体の張力増減方向への移動距離が0であることを特徴とする請求項1記載の電動自転車のテンショナー。
【請求項3】
第1輪体は、第2輪体と後部輪体とを結ぶ架空の直線に対して上下に横切る方向へ移動自在であることを特徴とする請求項2記載の電動自転車のテンショナー。
【請求項4】
第1輪体は架空の直線に対して直交する方向に移動自在であることを特徴とする請求項3記載の電動自転車のテンショナー。
【請求項5】
第1輪体は、左右方向の揺動軸心を中心に揺動自在な取付アームに取付けられ、
付勢部材は、駆動力伝達部材の張力が増える方向に、取付アームを付勢し、
取付アームの揺動方向における取付アームの取付姿勢の許容範囲を表示する取付姿勢表示部が取付アームに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動自転車のテンショナー。
【請求項6】
第1輪体は、左右方向の揺動軸心を中心に揺動自在な取付アームに取付けられ、
取付アームは、取付軸を介して、取付部材に揺動自在に設けられ、
取付部材は電動機を収納するケースの外縁部に取り付けられ、
付勢部材は、駆動力伝達部材の張力が増える方向に、取付アームを付勢し、
取付アームと取付部材との左右方向間隔が取付アームとケースの外縁部との左右方向間隔よりも大きく設定され、
付勢部材は取付アームと取付部材との間に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電動自転車のテンショナー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate