説明

電動船

【課題】電動モータを船内機か船内外機の内燃機関とプロペラ間に取り付けて、船舶の静粛で広範囲の速度における柔軟な制御を可能にする電動船を提供する。
【解決手段】船内機か船内外機において、内燃機関1とプロペラ6との間に電動モータ4を一軸で取り付けることで、ハイブリッド船、電池等による純電動船としての優れた船舶推進システムを獲得した。この船舶推進システムは、従来運航されている船舶に対し、ほとんど改造することなく、組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の電動化に関する方式であって、従来の船舶をより静粛で柔軟に運航可能にした駆動方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータはその制御が内燃機関に比べ容易であり、排ガスを出さず、静粛な駆動が行える利点をもっている。電動モータの特長を生かして、従来から船舶において、電気モータを用いたハイブリッド駆動方式が用いられてきた。しかし、このような方式は、単純に使用中の船舶に対して改造を施すことが困難であるほか、主に大型船舶における柔軟な駆動を獲得するために行われてきたものである。この方式のものとしては、ディーゼル機関や、ガスタービンで発電機を駆動し、その電力を使った電動モータ駆動による大型旅客船や軍艦、砕氷船などがある(シリーズハイブリッド方式)。また、電動モータと内燃機関を両方、あるいは単独で切り替え使用できるギヤシステムを使用したパラレルハイブリッド式の電動船舶がある。一方、電動モータを用いて電気エネルギーだけで駆動する電動船は古い歴史を持っており、主に小型船舶として利用されてきた。しかし、この方式では、搭載できる電池エネルギーの制限から、大型船舶や長期間の航行は困難であった。すなわち、電動モータの静粛性を生かした航行が可能である特徴があるにも拘わらず、その普及を妨げてきたのは、電池の性能と、単純な船舶の改造方式が存在しなかったことによる。そこでこれらに比べ簡単で電動化が可能になる方式の出現が望まれていた。
【0003】
内燃機関と電動モータとを駆動源として備えたパラレルハイブリッド型の船舶用船外機としては、例えば特許文献1に記載されているように、内燃機関に接続し、その出力をプロペラに伝達する第1の出力軸と、電動モータに接続し、その出力をプロペラに伝達する第2の出力軸とを備えると共に、第1の出力軸と第2の出力軸がそのまま連結される。また、特許文献2には、内燃機関と電動モータとをプロペラの駆動源として備えると共に、内燃機関に接続し、その出力をプロペラに伝達する第1の出力軸と、電動モータに接続し、その電動モータの出力をプロペラに伝達する第2の出力軸とを共軸に配置することを記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−230894号公報
【特許文献2】特開2007−69840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関は、エンジンの回転可能範囲が電動モータに比べて狭く、高速走行と超低速走行を同時に満たすことは困難であった。一方、電動モータは、制御の柔軟性と静粛性があるにも拘わらず、電池の搭載可能容量が不足し、十分な距離の運航や高速運転が困難であった。それらを解決することが課題になってきた。そこで、内燃機関の駆動及び発電能力を生かし、電動モータによる駆動も可能にする方式が必要とされてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その解決法としては、従来ある船舶の内燃機関とプロペラで構成される船内機、あるいは船内外機システムにおいて、内燃機関とプロペラをつなぐプロペラシャフトの一部に電動モータを入れた方式である。
【発明の効果】
【0007】
内燃機関とプロペラをつなぐプロペラシャフトの一部に電動モータを組み入れる船舶改造は、比較的簡単な手法であり、新艇以外にも、従来運航されている船舶に対し、ほとんど改造することなく、電動モータによる優れた制御性などの特長を生かした船舶にすることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】駆動方式1(船内機)を示す図である。(実施例1)
【図2】駆動方式2(船内外機)を示す図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明における船内機での駆動方式1(図1)では、船体8の船内に取り付けられた内燃機関1とプロペラ6間に電動モータ4をつけたものである。内燃機関1はクラッチ3を持っており、駆動軸2を介して電動モータ4とつながっている。クラッチ9は電動モータ4とプロペラ6間に取り付ける。これは必要な場合に用いる。ユニバーサルジョイント10はプロペラシャフト5の軸の角度を調整するため、従来から使われているものである。内燃機関1はクラッチ3、クラッチ9(もし取り付けた場合)を接続すれば、電動モータ4の駆動力の有無に拘わらず、直接プロペラ6を駆動することが可能である。プロペラ6は、内燃機関1あるいは電動モータ4の動力によって、ユニバーサルジョイント10とプロペラシャフト5を介して駆動される。
【0011】
図1に示した駆動方式において説明する。クラッチ9は使用しなくとも良い。内燃機関1が回転し、クラッチ3とクラッチ9がつながっていれば、電動モータ4は空転して内燃機関1によるプロペラ6駆動が出来る。電動モータ4を同時に駆動すれば、両者のトルクの合計が駆動力を発生する。クラッチ3を切ると、電動モータ4だけの駆動になり静粛で、超低速まで柔軟な運転が可能になる。その時、内燃機関1に取り付けられた発電機を用いることにより、直接、電動モータ4の駆動が可能である。また、内燃機関1に取り付けられた発電機により、蓄電池を充電しておき、このエネルギーにより、この電動モータ4の駆動が可能である。あるいは、この電動モータ4を発電機として使用し、航行中に、電池の充電を行うことも可能である。駆動方式1(図1)では、電気モータ4とプロペラ6間にクラッチ9を取り付けることによって、船舶が静止中においても、内燃機関からの動力で発電をすることが出来る。
【実施例2】
【0012】
本発明における船内外機による駆動方式2(図2)では、船内外機において、船体8の船内にある内燃機関1と、船外にあるプロペラ6のあるドライブユニット11間に電動モータ4を取り付けた方式である。
【0013】
駆動方式2(図2)では、船体8の船内にある内燃機関1と船外にあるプロペラ6のあるドライブユニット11間に電動モータ4を取り付けているが、クラッチ3が接続されれば、電動モータ4の駆動の有無に拘わらず、内燃機関1によりプロペラシャフト5を介して、プロペラ6が駆動できる。クラッチ3を非接続にすれば、電動モータ4のみによる柔軟で静粛な運転が可能になる。電動モータ4は、内燃機関1による動力で航行中に電動モータ4駆動用の蓄電池を充電することも可能であるし、内燃機関1そのものにつながれた別の発電機で、電動モータ4駆動用の蓄電池を充電することも可能である。電動モータ4とプロペラ6間に更にもう1個のクラッチを取り付けるか、あるいはプロペラ6のあるドライブユニット11自体に別途クラッチを内蔵することによって、船舶が静止中においても、内燃機関1からの動力で発電をすることが出来るのは、駆動方式1(図1)と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によれば、電動モータを船内機か船内外機の内燃機関とプロペラ間の一軸に取り付けつけることによって、船舶の静粛で広範囲の速度における柔軟な制御を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 エンジン
2 駆動軸
3 クラッチ
4 電動モータ
5 プロペラシャフト
6 プロペラ
7 舵
8 船体
9 クラッチ
10 ユニバーサルジョイント
11 ドライブユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを主機である内燃機関とプロペラとの間に一軸で取り付けた船舶推進システムとしての船内機あるいは船内外機

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−195240(P2010−195240A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43338(P2009−43338)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)