説明

電動補助自転車

【課題】バッテリーケースの不完全な装着を防止することを課題とする。
【解決手段】
ペダルによる踏力を伝達する人力駆動系と、電動ユニットによる動力を伝達するモータ駆動系とを有する電動補助自転車であって、車体に電動ユニットに接続される接続端子を有する電池ホルダー20を設け、接続端子に接続される接続端子を有するバッテリーケース14を、電池ホルダー20に支持した状態で揺動させて装着可能に形成し、車体に、バッテリーケース14に係脱自在に係合してバッテリーケース14を固定するロック機構23を設け、バッテリーケース14とロック機構23との間に、バッテリーケース14をロック機構23から離れる方向に付勢する弾性体を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルによる踏力を伝達する人力駆動系と、電動ユニットによる電動駆動力を伝達するモータ駆動系とを有する電動補助自転車の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動補助自転車は、ペダルによる踏力を検出し、踏力に応じた電動駆動力を伝達して人力を補助するように構成されている。電動駆動力を出力する電力ユニットに電力を供給するためのバッテリーケースは、例えば、特許文献1に示されるように、車体のシートポストと後車輪との間に着脱自在に装着されている。
【0003】
バッテリーケースは、下端部を、車体に配置した電池ホルダーに引っ掛けた状態で、引っ掛かった部分を支点として揺動させ、バッテリーケースの上部側を車体に配置したロック機構に係止する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−231493
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のバッテリーケースのロック機構は、バッテリーケースに係合溝を形成し、車体に配置したロック機構のフックをバネによって係合溝に向かって付勢し、フックをバネの付勢力により係合溝に係止してバッテリーケースを固定するようになっている。
【0006】
しかしながら、フックが係合溝に完全に係合していない状態であっても、係合溝の内の異物や係合溝周縁の凹凸などにフックが引っ掛かって、バッテリーケースが完全に装着されたと使用者が誤判断する場合があり、バッテリーケースが完全に装着されていない状態で走行した場合には、走行中にバッテリーケースが脱落する問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、バッテリーケースの不完全装着を防止し得る電動補助自転車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の電動補助自転車は、ペダルによる踏力を伝達する人力駆動系と、電動ユニットによる動力を伝達するモータ駆動系とを有する電動補助自転車において、車体に電動ユニットに接続される接続端子を有する電池ホルダーを設け、前記接続端子に接続される接続端子を有するバッテリーケースを、前記電池ホルダーに支持した状態で揺動させて装着可能に形成し、前記車体に、バッテリーケースに係脱自在に係合してバッテリーケースを固定するロック機構を設け、前記バッテリーケースとロック機構との間に、前記バッテリーケースをロック機構から離間する方向に付勢する付勢機構を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の電動補助自転車は、ペダルによる踏力を伝達する人力駆動系と、電動ユニットによる動力を伝達するモータ駆動系とを有する電動補助自転車において、車体に電動ユニットに接続される接続端子を有する電池ホルダーを設け、前記接続端子に接続される接続端子を有するバッテリーケースを、前記電池ホルダーに支持した状態で揺動させて装着可能に形成し、前記車体に、バッテリーケース上部に形成した係止リブに係脱自在に係合してフックを有するロック機構を設け、前記ロック機構に、バッテリーケースに当接してバッテリーケースをロック機構から離間する方向に付勢する付勢機構を設けたことを特徴とする。
【0010】
前記付勢機構は、バッテリーケースの当接面とロック機構との間に介在させた弾性体により構成することが好ましい。
【0011】
前記付勢機構は、バッテリーケースの当接面とロック機構との間に介在させた押圧体と該押圧体を付勢するバネとから構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バッテリーケースが不完全な係合状態の場合には、付勢機構によりバッテリーケースがロック機構から離間する方向に押圧されて外れ、バッテリーケースの不完全な装着状態となることを阻止することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の電動補助自転車を示す側面図である。
【図2】同バッテリーケースの上面図である。
【図3】同バッテリーケースとロック機構との係合状態を示す要部断面図である。
【図4】同要部拡大断面図である。
【図5】同他の実施形態のバッテリーケースを車体に装着した状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図1から図4に示す電動補助自転車に基づいて以下に詳述する。
【0015】
図1において、電動補助自転車1は、前車輪2を支持する前フォーク3、ダウンチューブ4、サドル5を支持するシートポスト6、後車輪7を支持するチェーンステー8、シートステー9、ペダル10を連結するクランク11、ハンドルバー12などにより車体を構成している。前記前車輪2には、モータを内蔵するハブユニット13が配設され、前記シートポスト6と後車輪7との間にバッテリーケース14が搭載されている。前記ペダル10に加わる踏力が作用する適所に、ペダル10に加わる踏力が一定値に達すると、ハブユニット13のモータ(図示せず)にバッテリーケース14から給電して電動駆動力を付与するセンサー(図示せず)が配備されている。前記ハブユニット13、バッテリーケース14及びセンサー等により電動ユニットによる電動駆動力を伝達するモータ駆動系を構成している。
【0016】
前記バッテリーケース14を、図1から図4に基づいて詳述すると、バッテリーケース14は、内部にバッテリーセル(図示せず)を多数収納しており、バッテリーケース14のシートポスト6側側面と後車輪7側側面に突設した軸部15を後述する電池ホルダー20に形成した図示しない溝部に引っ掛けて位置決めし、この状態で車幅方向へ揺動可能にしている。前記バッテリーケース14は、後述するロック機構23のフック24が係合溝17の係止リブ18に係合していない状態では、軸部15を溝部に係止した状態で重心が車体を正面から見て車体の右側に位置するように形成され、バッテリーケース14は自重により係合溝17から押し出される方向に傾くように構成されている。
【0017】
前記バッテリーケース14の後車輪7側の上面には、車幅方向に略コ字状に上方へ突出する取手16が一体に形成され、また、車体を正面から見て前記バッテリーケース14の車体左側上面には、後述するロック機構23のフック24が係合する係合溝17が形成されている。前記係合溝17には、底面から上方に向かってロック機構23のフック24が係合する係止リブ18が突出形成されており、前記係止溝17は、図2に示す如く、側面の開口側から係止リブ18に向かうに従って漸次幅狭になるように形成され、後述するロック機構23のフック24を係止リブ18に向かって確実に案内するようになっている。
【0018】
19は前記バッテリーケース14の下部に形成された接続端子(図示せず)が配設された端子収納部で、前記軸部15が突出形成されている。
【0019】
20は前記シートポスト6後方のチェーンステー8上に固定される電池ホルダーで、電池ホルダー20上にバッテリーケース14が載置された状態で、バッテリーケース14の接続端子に接続される接続端子21が配設されている。前記電池ホルダー20には、シートポスト6側と後車輪7側に側壁22が形成されており、該側壁22には、前記バッテリーケース14の軸部15を引っ掛けるための略U字状の溝部(図示せず)が形成されている。
【0020】
23は前記シートポスト6上部に固定されたロック機構で、フック24を上下動自在に支持するハウジング25を有し、前記フック24は図示しないバネにより下方に向かって突出するように付勢されている。前記バッテリーケース14を車体に装着する際に、バッテリーケース14を車体に対して揺動するのに伴って、前記フック24が係合溝17内を移動し、前記係止リブ18に当接する。さらにバッテリーケース14を揺動すると、フック24端部の傾斜面に係止リブ18が当接し、係止リブ18に押されてフック24がバネの付勢力に抗して上方へ移動し、フック24が係止リブ18を乗り越えてフック24がバネの付勢力により下方へ移動し、フック24が係止リブ18に係合する。前記フック24は、キー26の操作により上方へ移動し、係止リブ18との係合が外れて、係合溝17から離脱するように構成されている。
【0021】
27は前記ハウジング25側面に設けられたゴム等の弾性体で、前記フック24が係止リブ18を乗り越える位置まで移動する前にバッテリーケース14の当接面28に当接し、前記フック24が係止リブ18を乗り越えて係止リブ18に係合する前の状態では、弾性体27の弾性力によりバッテリーケース14を係合溝17から外れる方向に付勢するようになっており、前記弾性体27により不完全な係合状態のバッテリーケース14をロック機構23から離間させる付勢機構を構成している。図4は、バッテリーケース14の係止リブ18にフック24が係合した状態を示し、弾性体27がバッテリーケース14の当接面28に当接して変形している状態を示している。
【0022】
而して、バッテリーケース14を車体に装着する際には、バッテリーケース14を車体右側よりバッテリーケース14の軸部15を電池ホルダー20の溝部に引っ掛けて位置決めし、この状態で、軸部15を中心にバッテリーケース14を車体側に向けて揺動させる。バッテリーケース14の係合溝17にロック機構23のフック24が挿入され、バッテリーケース14の揺動に伴って係合溝17側壁に沿ってフック24が係止リブ18に向かって案内され、フック24が係止リブ18を乗り越えて係止リブ18に係合する。この状態で、バッテリーケース14がロック機構23に固定され、車体に完全に装着された状態となる。
【0023】
フック24が係止リブ18を乗り越えていない不完全な係合状態でバッテリーケース14の揺動を中止すると、弾性体27の付勢力によりバッテリーケース14が係合溝17から外れる方向に付勢される。この状態では、バッテリーケース14は重心が車体を正面から見て軸部15よりも右側に位置しているので、バッテリーケース14は自重により係合溝17から押し出される方向に傾いて不装着となり、装着されていないことを使用者が容易に判断できるようになり、不完全な装着を阻止することができる。
【0024】
係合溝17は、側面の開口側から係止リブ18に向かうに従って漸次幅狭になるように形成されているので、ロック機構23のフック24を係止リブ18に向かって確実に案内することができ、バッテリーケース14の装着作業性を向上することができる。さらに、係合溝17の側面の摩耗や傷つきを抑制することができ、耐久性を向上することができる。
【0025】
図4は本発明の他の実施形態を示し、ケーシング25に、バッテリーケース14の当接面28に向かってバネ29により付勢される押圧体30を配設している。
【0026】
本実施形態においても、上記実施形態と同様に、フック24が係止リブ18に完全に係合していない状態でバッテリーケース14の揺動を中止すると、バネ29の付勢力により押圧体30がバッテリーケース14の当接面28を押圧し、バッテリーケース14を係合溝17から外れる方向に付勢される。この状態では、バッテリーケース14は重心が車体を正面から見て軸部15よりも右側に位置しているので、バッテリーケース14は自重により係合溝17から押し出される方向に傾いて不装着となり、装着されていないことを使用者が容易に判断できるようになり、不完全な装着状態となることを阻止することができる。
【0027】
上記各実施形態では、ロック機構23は、フック24を設け、フック24が係合溝17の係止リブ18を乗り越えて係合することによりバッテリーケース14をロック機構23に係止する構成を採用したが、他の構成のロック機構を用いても良い。
【0028】
また、バッテリーケース14が完全に係合していない状態で、バッテリーケース14をロック機構23から離れる方向に付勢する付勢機構として、弾性体27を用いた実施形態、及びバネ29により付勢される押圧体30を用いた実施形態を用いて本発明を説明したが、その他の構成を採用しても良く、付勢機構をバッテリーケース14に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、バッテリーケースを着脱自在に装着する電動補助自転車に利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 電動自転車
14 バッテリーケース
17 係合溝
18 係止リブ
20 電池ホルダー
21 接続端子
23 ロック機構
24 フック
25 ハウジング
27 弾性体
28 当接面
29 バネ
30 押圧体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルによる踏力を伝達する人力駆動系と、電動ユニットによる動力を伝達するモータ駆動系とを有する電動補助自転車において、
車体に電動ユニットに接続される接続端子を有する電池ホルダーを設け、前記接続端子に接続される接続端子を有するバッテリーケースを、前記電池ホルダーに支持した状態で揺動させて装着可能に形成し、前記車体に、バッテリーケースに係脱自在に係合してバッテリーケースを固定するロック機構を設け、
前記バッテリーケースとロック機構との間に、前記バッテリーケースをロック機構から離間する方向に付勢する付勢機構を設けたことを特徴とする電動補助自転車。
【請求項2】
ペダルによる踏力を伝達する人力駆動系と、電動ユニットによる動力を伝達するモータ駆動系とを有する電動補助自転車において、
車体に電動ユニットに接続される接続端子を有する電池ホルダーを設け、前記接続端子に接続される接続端子を有するバッテリーケースを、前記電池ホルダーに支持した状態で揺動させて装着可能に形成し、前記車体に、バッテリーケース上部に形成した係止リブに係脱自在に係合してフックを有するロック機構を設け、
前記ロック機構に、バッテリーケースに当接してバッテリーケースをロック機構から離間する方向に付勢する付勢機構を設けたことを特徴とする電動補助自転車。
【請求項3】
前記付勢機構を、バッテリーケースの当接面とロック機構との間に介在させた弾性体により構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動補助自転車。
【請求項4】
前記付勢機構を、バッテリーケースの当接面とロック機構との間に介在させた押圧体と該押圧体を付勢するバネとから構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動補助自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−207250(P2011−207250A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74038(P2010−74038)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)