説明

電動車両用給電システム

【課題】ユーザに対して充電の進行状態を知らせることができる給電システムを提供する。
【解決手段】電動車両の車載電池に給電するための給電スタンド10と、ユーザが利用する端末機20と、給電スタンド10及び端末機20の各々と通信するサーバ30とを備える。給電スタンド10は、端末機20からのサーバ30を介した要求に応じて、車載電池への給電を行い、その電力量を計測する。サーバ30は、ユーザとその登録電動車両50とを特定するためのユーザマスタ情報と、登録電動車両50とその車載電池の充電特性データとを関連付けるテーブルとを有し、充電進行状態演算手段を備える。充電進行状態演算手段は、登録電動車両50に対応する充電特性データをテーブルから抽出し、電力量の計測結果を抽出された充電特性データと参照して車載電池の充電進行状態を演算する。演算結果はサーバ30から端末機20に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド車などの電動車両に搭載された電池の充電を行うための給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷の低減を目的として、電気自動車やハイブリッド車などの電動自動車が開発されている。これら電動自動車を広く普及させるには、車載電池を充電するための給電スタンドが各所に整備される必要がある。特に、電動自動車を駐車場に入庫中、車載電池を充電できる給電スタンドが効率的な充電を可能にするものとして期待されている。そのような給電スタンドに関する技術として、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
この技術は、車両を駐車場に入庫させる時に入庫時刻を記録した駐車券を発行し、出庫時にこの駐車券を料金精算機に読み取らせて駐車料金の精算を済ませると、車両の出庫を許可するように構成した駐車場装置に関する。この駐車場内には、電気自動車のバッテリー(車載電池)を充電する充電装置(給電スタンド)と充電情報入出力装置が設けられている。この充電情報入出力装置は、駐車券に対して充電装置によるバッテリーへの充電時間の算定情報を記録することができる充電情報記録手段を具備する。また、料金精算機は、駐車券に記録されている充電情報から充電料金を算出する充電料金算出手段を具備する。そして、この駐車場装置は、駐車料金と充電料金の精算を済ませると、車両の出庫を許可するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-312772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の給電システムは、車載電池に給電した電力量から充電に要する料金を算出することはできるが、充電がいつ完了するか、或いは電池容量のどの程度の割合まで充電が完了したか、といった充電の進行状態に関する情報をユーザに提供することができない。特に、低速充電を行うための給電システムの場合、通常、充電時間が6〜8時間程度と長いため、充電の進行状態をユーザに提供する必要性が高い。その一方で、車載電池と給電スタンドとを接続する充電ケーブルには、給電路となる電力線が設けられているだけであり、車載電池と給電スタンドとで充電状態に関するデータを授受するための通信線を備えていないため、給電スタンドが車載電池自体の電気量を把握することが困難である。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、ユーザに対して充電終了時刻などの充電の進行状態を予測して知らせることができる電動車両用給電システムを提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、電池の取り換え時期など車載電池の劣化状態を予測してユーザに知らせることができる電動車両用給電システムを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、車載電池の劣化状態を他のユーザの車載電池の劣化状態と対比してユーザに知らせることができる電動車両用給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動車両用給電システムは、電動車両の車載電池に給電するための給電スタンドと、この給電スタンドのユーザが利用する端末機と、前記給電スタンド及び端末機の各々と通信網を介して通信するサーバとを備える。前記給電スタンドは、前記端末機からのサーバを介した要求に応じて、車載電池への給電を行うスイッチ手段と、前記車載電池に給電した電力量を計測する電力量計測手段とを有する。前記サーバは、記憶手段と、ユーザ認証手段と、充電進行状態演算手段とを備える。この記憶手段は、前記ユーザとその登録電動車両とを特定するためのユーザマスタ情報とテーブルとを有する。テーブルは、登録電動車両と、その車載電池の充電特性データであって前記電力量計測手段で取得できる物理量の特性データとを関連付ける。ユーザ認証手段は、前記端末機から送信されたユーザ入力情報と前記ユーザマスタ情報とを参照して、ユーザの認証を行う。そして、充電進行状態演算手段は、認証されたユーザの登録電動車両に対応する充電特性データを前記テーブルから抽出し、前記給電スタンドから送信された電力量計測手段の計測データを抽出された充電特性データと参照して車載電池の充電進行状態を演算し、この演算結果を端末機に送信するための充電進行状態データとして生成する。
【0010】
この構成によれば、登録電動車両の車載電池に対応した充電特性データを利用して、その電池の充電進行状態を充電進行状態演算手段により的確に認識することができる。また、その充電特性データは、車載電池の充電特性データであって電力量計測手段で取得できる物理量(例えば充電電力などの電気量)の特性データであるため、給電スタンドと車載電池とを接続する充電ケーブルが、給電スタンドと車載電池との間で充電状態に関するデータを授受するための通信線を備えていなくても、給電スタンド側で把握できる物理量を利用して充電状態の演算を行うことができる。そのため、充電進行状態データをサーバから端末機に送信することで、ユーザが車載電池の充電進行状況を知ることができる。
【0011】
本発明の一形態として、前記充電進行状態データを、充電終了時刻、充電終了までの所要時間、電池容量に対する充電率、充電率に応じた充電終了時刻、及び充電率に応じた充電終了までの所要時間の少なくとも一つとすることが挙げられる。
【0012】
この構成によれば、充電進行状態データとして、上記規定の各パラメータを選択することで、ユーザは充電の進行状態を具体的に知ることができる。
【0013】
本発明の一形態として、前記記憶手段は、前記ユーザによる過去の給電において電力量計測手段が計測した充電履歴データを記憶する。さらに、前記サーバは、最新の充電履歴データを過去の充電履歴データや劣化のない車載電池の充電特性データと対比することで、車載電池の劣化状況を判定し、この判定結果を端末機に送信するための判定結果データとして生成する電池状態判定手段を備えることが挙げられる。
【0014】
この構成によれば、例えば電池容量が初期容量に比べて低下している、といった車載電池の劣化状態をユーザに知らせることができる。そのため、ユーザは車載電池の交換やメンテナンスの時期を知ることができる。
【0015】
本発明の一形態として、前記サーバは、登録電動車両の車種ごとに、過去の給電において電力量計測手段が計測した充電履歴データを統計処理する統計処理手段を備えることが挙げられる。その場合、前記充電進行状態演算手段は、抽出された充電特性データとして、統計処理手段で統計処理された充電履歴データを用いる。
【0016】
この構成によれば、登録電動車両の車種ごとに、過去の給電において電力量計測手段が計測した充電履歴データを統計処理した結果を用いるので、各車両ごとの充電履歴データのばらつきを低減した充電履歴データを用いて充電進行状態を判断することができる。
【0017】
本発明の一形態として、登録電動車両の車種ごとに、過去の給電において電力量計測手段が計測した充電履歴データを統計処理する統計処理手段を備え、さらに前記電池状態判定手段は、最新の充電履歴データとの比較対象として、統計処理手段で統計処理された充電履歴データを用いることが挙げられる。
【0018】
この構成によれば、他のユーザの充電履歴データとの対比により、自己の車載電池の劣化状態などを把握することができる。また、統計処理手段を用いることで、各車両ごとの充電履歴データのばらつきを低減した充電履歴データを用いて車載電池の劣化状況を判定することができる。
【0019】
本発明の一形態として、前記充電進行状態演算手段は、給電対象となる電動車両が前記登録電動車両と異なる場合に、端末機を介して前記テーブルから選択された電動車両に対応する充電特性データを抽出することが挙げられる。
【0020】
この構成によれば、給電対象となる車両が登録電動車両以外の場合でも、その給電対象の車載電池に応じた充電特性データを利用して、的確な充電進行情報の演算を行うことができる。
【0021】
本発明の一形態として、前記充電特性データを、充電電力との関係を示す充電カーブとすることが挙げられる。
【0022】
この構成によれば、充電時、給電スタンド側で認識できるパラメータにより、充電進行状態を把握することができる。
【0023】
本発明の一形態として、前記給電スタンドは、登録車両側から送信された車載電池の充電に相関する物理量を受信する給電スタンド側通信手段を備えることが挙げられる。その場合、前記充電進行状態演算手段は、充電進行状態データとして、前記電力量計測手段で取得できる物理量の特性データの代わりに、又は前記特性データに加味して前記物理量を利用する。
【0024】
この構成によれば、給電スタンド側で車載電池自体の充電に相関する物理量、例えば車載電池の端子電圧や充電電流などを直接把握することができ、より正確な充電進行状態の予測を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電動車両用給電システムによれば、給電スタンドから電動車両の車載電池を充電した際、充電の進行状態を、端末機を通じてユーザに知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る給電システムの概略説明図である。
【図2】図1のシステムに用いる給電スタンドの機能ブロック図である。
【図3】図1のシステムに用いるサーバの機能ブロック図である。
【図4】充電特性データグラフの一例であって、(A)は充電時間と端子電圧または充電電流との関係、(B)は充電時間と充電容量との関係、(C)は充電時間と充電電力との関係を示すグラフである。
【図5】図1のシステムを用いた処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1〜図4を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
[実施形態1]
〔システムの構成〕
{概要}
この電動車両用給電システム1は、図1に示すように、月極駐車場などの駐車場に設置された給電スタンド10と、このスタンド10のユーザが利用する端末機20と、給電スタンド10及び端末機20の各々と通信網を介して通信するサーバ30とを主たる構成要素とする。ユーザは、駐車場に登録電動車両50を駐車し、充電ケーブル60で給電スタンド10と車載電池とを接続して、端末機20からサーバ30を介した要求により、給電スタンド10から車載電池に給電させる。登録電動車両50とは、予めユーザの個人情報と共に車両情報をサーバ30に登録している電動車両のことである。この給電に伴い車載電池は充電され、給電スタンド10にて充電に要した電力量が計測される。その計測結果は給電スタンド10からサーバ30に送信され、サーバ30にて充電進行状態の演算に供されると共に、充電終了時には前記電力量に基づいて給電システムの利用料金が算出される。充電の進行状態や前記利用料金は、サーバ30から端末機20に送信されることで、ユーザに知らされる。以下、各部の構成を詳しく説明する。
【0029】
{給電スタンド}
給電スタンド10は、登録電動車両50の車載電池に対して給電と給電停止とを行い、車載電池を低速充電するための装置である。本例では、駐車場に区画された複数の駐車スペースの各々に給電スタンド10が設けられ、それらスタンド10の一つがサーバ30との通信機能を有する親機、残りを親機の通信機能を利用してサーバ30と通信する子機としている。この親機は、図2に示すように、低圧電源に接続され、スイッチ(SW)手段11、電力量計測手段12、スタンド側通信手段13、及びスタンド制御手段14を備える。子機は、親機と通信ケーブルで接続され、親機のスタンド側通信手段13をサーバ30との通信に利用するように構成されている。それ以外の子機の構成は親機と同様である。
【0030】
<スイッチ手段>
スイッチ手段11は、ユーザが端末機20からサーバ30を介して行った要求により車載電池への給電を実行し、電動車両50側からの受電の遮断又は電力量計測手段12の計測結果からの給電停止指令に基づいて給電を停止する。
【0031】
<電力量計測手段>
電力量計測手段12は、給電スタンド10から車載電池に給電した電力量を計測する。電力量の計測には、種々の公知の電力量計が利用できる。例えば、特開2006-258443号公報に示すように、給電スタンド10からの車載電池に供給される電力の電圧・電流を計測し、各々適宜な電圧に変換して、電力量の計量を行い、計量パルスに変換する電力量計が利用できる。この電力量計での計測結果は、例えば1kWH当たり○○パルスとしてサーバ30に送信される。
【0032】
<スタンド側通信手段>
スタンド側通信手段13は、スイッチ手段11の給電・停止の指令や電力量計測手段12の計測結果などの各種データをサーバ30と送受信する。本例では、給電スタンド10とサーバ30との通信には、携帯電話網を利用している。勿論、必要なデータの通信が実用的な速度で可能であれば、無線・有線を問わず、種々の通信網を利用できる。有線による通信の具体例としては、光ファイバを用いた通信が挙げられる。
【0033】
<スタンド制御手段>
スタンド制御手段14は、上記スイッチ手段11、電力量計測手段12、及びスタンド側通信手段13の協働を統合して制御する。
【0034】
<その他>
また、給電スタンド10には、そのスタンド10を特定するための識別コード15が表示されている。この識別コード15は、端末機20を介してサーバ30に送信されることで、どの給電スタンド10から給電を行うかをサーバ30が認識するためのものである。本例では、給電スタンド10の見やすい位置にQRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)を表示して識別コード15としている。勿論、給電スタンド10を特定する情報が表示できれば、他の認識コードであっても構わない。
【0035】
さらに、給電スタンド10には、給電スタンド10の動作状態、例えば準備状態、給電中、及び給電終了をそれぞれ青、赤、緑で示す各ランプ(図示略)や、一端が電動車両50につながれた充電ケーブル60の他端を接続するコンセント16が設けられている。必要に応じて、給電スタンド10で音声ガイダンスが出力できるようにしてもよい。例えば、給電スタンド10の動作状態に応じて、「準備ができました。充電コードを接続してください。」、「充電中です。充電コードを抜かないで下さい。」、「充電が終了しました。充電コードを外して下さい。」などの音声出力を行ってもよい。
【0036】
その他、給電スタンド10には、充電コードの盗難を防止するため、充電中は充電コードがコンセント16から抜けないようにロックを設けることが好ましい。このロックは、給電の終了により、或いは端末機20からサーバ30を介した給電スタンド10への要求により解除される。
【0037】
{端末機}
端末機20(図1)は、ユーザが保有して、給電スタンド10に給電要求を行うためのユーザ入力情報などをサーバ30に送信したり、充電進行状態やシステムの利用料金などの情報をサーバ30から受信する。ユーザ入力情報としては、代表的にはユーザに固有のIDとパスワードが利用される。このような端末機20は、ユーザ入力情報の入力手段(図示略)を備え、サーバ30と通信するための端末側通信手段(図示略)及び識別コード15の読み取り手段(カメラ:図示略)を備える。本例ではカメラ付き携帯電話を端末機20として利用しており、サーバ30への情報の送信はインターネットを介して携帯サイトにアクセスすることで行い、サーバ30からの情報の受信は電子メールにて行われる。
【0038】
{サーバ}
サーバ30は、給電スタンド10及び端末機20の各々と通信を行って、給電システム全体の制御を行う装置で、図3に示すように、サーバ側通信手段31、記憶手段32、ユーザ認証手段33、充電進行状態演算手段34、料金演算手段35、給電制御手段36、及びシステム制御手段39とを備える。統計処理手段37については、後に変形例1-2、変形例2-1で、電池状態判定手段38については、後に実施形態2で説明する。
【0039】
<サーバ側通信手段>
サーバ側通信手段31は、給電スタンド10とは携帯電話網を介して、端末機20とはインターネットを介して必要な情報の送受信を行う。このサーバ側通信手段31が利用する通信網には、携帯電話網などの無線通信網や、光ファイバなどの有線通信網が挙げられる。
【0040】
<記憶手段>
記憶手段32は、ユーザマスタ情報、テーブルを含む電池情報、料金情報、スタンド情報を記憶している。ユーザマスタ情報は、各ユーザのID、パスワード、個人情報(氏名、住所、電子メールアドレス、電話番号など)、登録電動車両50の車両情報(カーメーカ、車種、年式など)が含まれる。
【0041】
テーブルは、登録電動車両50と各車両の車載電池の充電特性データとの対応関係が記憶されている。充電特性データには、充電時に給電スタンド側で把握できる車両ごとの充電カーブが挙げられる。一般に、電動車両は車載電池と充電器を備えており、充電器で車載電池の端子電圧や充電電流を監視しつつ、給電スタンドから供給された電力を調整して車載電池に供給する。つまり、通常、給電スタンド側からは、充電器がどのような条件で車載電池に対して電力を供給しているかを把握することはできない。しかし、この充電器も含めた車載電池の充電電力は給電スタンド側で把握できる。例えば、車載電池の端子電圧又は充電電流と充電時間との関係が図4(A)に示す関係となるように充電器が充電を行っており、その際の電池容量の変化は図4(B)のようになるとする。この場合、給電スタンド側で車載電池の端子電圧や充電電流は把握できなくても、図4(C)に示すように、上記端子電圧と充電電流とを合成して、充電器も含めた車載電池の充電電力カーブとして見れば給電スタンド側で把握することができる。そのため、この充電電力カーブ(基準充電電力カーブ)と電池容量との相関をテーブルに記憶させておけば、充電器も含めた車載電池の充電電力カーブを車載電池の充電特性データとみなして取り扱うことで、充電進行状態を判断することができる。
【0042】
基準充電電力カーブは、例えば初期状態の車載電池をその充電器を介して充電した場合の充電電力カーブとすることが挙げられる。充電スタンドを初めて使用する場合、登録電動車両50の充電履歴データは存在しないが、初期状態の車載電池をその充電器を介して充電した場合の充電電力カーブを基準充電電力カーブとすれば、充電スタンド利用開始時から基準充電電力データを利用することができる。このような充電電力カーブは、車種ごと、より特定的には車載電池と充電器の組合せごとに記憶手段32に記憶しておけばよい。この記憶しておく充電電力カーブは、少なくとも登録電動車両50の充電電力カーブであればよく、さらに登録電動車両50以外の充電電力カーブを記憶しておいても構わない。
【0043】
料金情報は、各料金体系ごとの単価が含まれる。料金体系には、太陽光発電による電力や深夜電力などの電気メニューがあり、利用料金の算出に際しては、ユーザが選択した電気メニューに応じた単価が適用される。スタンド情報は、充電に利用しようとする給電スタンド10を特定するための情報で、具体的には、どの駐車場のどの給電スタンド10かを特定できるデータである。
【0044】
<ユーザ認証手段>
ユーザ認証手段33は、端末機20から送信されたユーザ入力情報を記憶手段32から読み出したユーザマスタ情報と参照してユーザの認証を行う。このユーザ認証により、承認されたユーザに対してのみ給電システム1の利用を許可する。
【0045】
<充電進行状態演算手段>
充電進行状態演算手段34は、認証されたユーザの登録電動車両50に対応する充電特性データ(基準充電電力カーブ)を前記テーブルから抽出し、給電スタンド10から送信された電力量計測手段12の計測データを抽出された充電特性データと参照して車載電池の充電進行状態を演算する。例えば、給電スタンドで電力量計測手段が計測した充電電力値を微分し、その微分値(充電電力カーブの傾き)を記憶手段から読み出した基準充電電力カーブと照合して、現時点での充電進行状態が基準充電電力カーブ上のどこに対応するかを演算し、その基準充電電力カーブ上の位置から充電が終了するまでの所要時間を演算することができる。
【0046】
また、この充電終了までの所要時間は、充電終了時刻として演算することもできる。さらに、基準充電電力カーブと電池容量との対応関係も把握できているので、充電終了までの所要時間が求められるということは、電池容量のどの程度の割合まで充電が進行したかを充電率(充電深度)として演算することもでき、充電率50%までの所要時間とか、充電率80%までの所要時間といったように、充電率に応じた所要時間として演算することもできる。この演算結果の表示形態は、予めユーザが選択できるようにしておいてもよい。演算結果は、充電進行状態データとしてサーバ30からユーザの端末機20に送信される。
【0047】
<料金演算手段>
料金演算手段35は、給電スタンド10から送信された電力量と記憶手段32から読み出した料金情報に基づいて、給電システム1の利用料金を算出する。より具体的には、例えば電力量とユーザの選択した料金体系の単価とから利用した電気料金を算出し、さらにシステムの使用料を加算してシステムの利用料金とする。
【0048】
<給電制御手段>
給電制御手段36は、充電に利用しようとする給電スタンド10を特定すると共に、そのスタンド10に対して、端末機20を介した給電の要求に応じて、給電スタンド10に給電の指令を行ったり、給電の停止を制御したりする。給電スタンド10の特定は、端末機20で読み取られたQRコードデータをサーバ30のスタンド情報と参照することで行う。
【0049】
<システム制御手段>
システム制御手段39は、上述したサーバ30の各構成手段を連携して制御する。このシステム制御手段39は、端末機20がサーバ30にアクセスした際のユーザインターフェースの制御なども含む。本例では、ユーザが端末機20を用いてサーバ30にアクセスした場合、充電時間(1時間、8時間、フル充電など)が選択できるようにしている。
【0050】
〔システムの処理手順〕
次に、上記の給電システムを運用する処理手順を図5のフローチャートに基づいて説明する。図5において、左列のフローはサーバの処理手順を示し、中列のフローは給電スタンドの処理手順を示し、右列のフローは端末機の処理手順を示す。また、各列のフロー間をつなぐ破線矢印は、通信網を介してサーバ、給電スタンド、端末機の相互でデータの通信がなされることを示す。以下の説明において、システムの各構成要素については、必要に応じて図1〜図3を参照する。
【0051】
(1)まず、ユーザは端末機20のカメラで使用する給電スタンド10のQRコードを撮影し、インターネットを介してサーバ30の携帯サイトにアクセスする(ステップSc1)。
【0052】
(2)次に、端末機20から自己のID及びパスワードをサーバ30に送信し、ユーザ認証手段33によりユーザ認証を行う(ステップSs1)。このとき、給電制御手段36は、QRコードの読み取りデータと記憶手段32のスタンド情報とを参照して、給電に供される給電スタンド10をサーバ30に認識させる。
【0053】
(3)ユーザ認証が承認されれば、端末機20がアクセスしているサイトの画面で、認証OKの通知がなされる(ステップSc2)。
【0054】
(4)ユーザ認証と給電スタンド10の特定が済めば、サーバ30は給電準備指令を給電スタンド10に送信し(ステップSs2)、その指令を受信した給電スタンド10では、例えば準備状態を示す青ランプを点灯させる(ステップSe1)。
【0055】
(5)給電スタンド10が準備状態となれば、充電ケーブル60で電動車両50と給電スタンド10を接続する(ステップSe2)。
【0056】
(6)ユーザは端末機20でサーバ30に接続した状態で、サイト上の給電メニューから、例えば「1時間」、「8時間」、「フル充電」などの給電条件を選択し、給電開始要求を行う(ステップSc3)。
【0057】
(7)サーバ30が給電開始要求を受信すると(ステップSs3)、給電スタンド10に給電開始指令を送信する(ステップSs4)。
【0058】
(8)給電スタンド10は、サーバ30からの要求に応じて、登録電動車両50の車載電池に給電を開始する(ステップSe3)。その際、給電スタンド10では、充電中を示す赤色のランプが点灯する。
【0059】
(9)給電開始と共に、給電スタンド10では、電力量計測手段12により電力量の計測が行われ、スタンド側通信手段13を介して、その計測結果がサーバ30に送信される(ステップSe4)。
【0060】
(10)電力量の計測結果を受信したサーバ30は、記憶手段32のテーブルから登録電動車両50に対応する車載電池の充電特性データを読み出し、このデータを計測結果と参照することで、充電進行状態を演算する。そして、その演算結果はサーバ側通信手段31を介して端末機20に送信される(ステップSs5)。この送信は電子メールにて行われる。
【0061】
(11)ユーザは、端末機20で電子メールを受信することにより、充電の進行状態を把握することができる(ステップSc4)。例えば、「充電終了まで約8時間です。」、「充電終了予定時刻は、○○日のAM6:00です。」、或いは「充電率50%までの所要時間は約4時間です。」などの通知を受けることができる。この段階で、充電時間、充電終了時の充電率などの充電条件を変更したい場合は、前記電子メールにサーバ30へアクセスするURLを表示しておくことで、ユーザは端末機20によりそのURLからサーバ30にアクセスして、現在進行中の充電の条件を変更することができる。例えば、当初は充電率を「50%」と設定したが、この充電率を「フル充電」に変更したい場合、上述したサーバ30へのアクセスにより、充電条件を変更することができる。充電条件が変更されると、その旨、及び変更後の条件に応じた充電進行状態が電子メールにより通知される。
【0062】
(12)この給電スタンド10による電力量の計測とサーバ30による充電進行状態の演算は、必要に応じて繰り返し行って、充電進行状態を適宜な間隔で、ユーザの端末機20に複数回通知するようにしてもよい。
【0063】
(13)給電スタンド10では、車載電池の充電が終了したか否かを判断する(ステップSe5)。通常、電動車両は、車載電池の充電が終了すれば、電動車両側から受電を遮断する機能を有しており、この電動車両側からの受電の遮断(電力量計測手段12での計測電力量がゼロになる)、或いは給電メニューから選択した充電時間の経過などにより、給電スタンド10はスイッチ手段11をオフにすることで充電を終了させることができる。
【0064】
(14)車載電池への給電を停止して充電が終了すると、給電スタンド10のスタンド制御手段14によりスタンド側通信手段13を介して給電完了通知がサーバ30に送信される(ステップSe6)。その際、給電スタンド10では、充電終了を示す緑ランプが点灯する。サーバ30では、給電スタンド10からの給電完了通知を受信する(ステップSs6)。
【0065】
(15)また、給電スタンド10からは充電終了までの利用電力量をサーバ30に送信し(ステップSe7)、サーバ30では、この利用電力量を受信する(ステップSs7)。
【0066】
(16)サーバ30は、この受信した利用電力量と記憶手段32より読み出した料金情報の単価を元に料金演算手段35で利用料金を算出する(ステップSs8)。
【0067】
(17)この時点で、給電スタンド10における処理は終了しているため、ユーザは充電コードを給電スタンド10から取り外すことができる(ステップSe8)。
【0068】
(18)一方、サーバ30では、演算された利用料金と共に、充電完了通知をユーザの端末機20に電子メールで送信する(ステップSs9)。
【0069】
(19)ユーザは、端末機20の電子メールを確認することで、充電が終了したことに加え、いつの充電において、どの程度の電力使用量で、利用料金がいくらであったかを知ることができる(ステップSc4)。この段階で、電池容量が100%でなく、さらに追加の充電を行いたい場合は、前記電子メールにサーバ30へアクセスするURLを表示しておくことで、ユーザは端末機20によりそのURLからサーバ30にアクセスして追加の充電条件を設定することで、さらに追加充電を行うことができる。その場合も、追加の充電条件にて充電が行われること、及びその条件に応じた充電進行状態が電子メールにより通知される。
【0070】
〔作用効果〕
以上の給電システムによれば、次の作用効果を奏することができる。
【0071】
サーバ30がテーブルを含む電池情報と充電進行状態演算手段34とを有することで、予めユーザマスタ情報に登録された登録電動車両50の車載電池に応じた的確な充電進行状態を把握することができる。
【0072】
給電スタンド10で把握できる充電電力を、充電器も含めた車載電池の充電電力カーブととらえ、その充電カーブを車載電池の充電カーブとみなすことで、電力線のみを備える低速充電用の充電ケーブル60であっても、車載電池の充電状態を把握することができる。
【0073】
低速充電を行う給電システムなので、給電スタンド10の設置に際して、高圧電源を引き込む必要はなく、低圧電源の利用により給電システムを構築できる。
【0074】
ユーザ認証手段33を用いることで、利用料金の請求も行うことができ、給電システムの無断使用を排除することができる。
【0075】
複数台の駐車スペースの各々に給電スタンド10を設置する場合、そのいずれかをサーバ30との通信機能を有する親機とし、残りを親機の通信機能を利用する子機とすることで、全ての給電スタンド10に通信機能を持たせる必要がない。また、給電スタンド自体にテーブルを含む電池情報と充電進行状態演算手段34とを持たせる必要もない。そのため、給電スタンド全体の構成を簡略化し、そのコストを低減することができる。
【0076】
給電スタンド10に、給電中の充電ケーブル60の取り外しを阻止するロック機構を設けることで、ユーザの安全を確保すると共に、充電ケーブル60の盗難を防止することができる。
【0077】
月極駐車場、マンションなどの集合住宅に付設される駐車場、或いは各種商業施設の駐車場などに本発明システムに対応した給電スタンド10を設置しておくことで、ユーザは電動車両50の充電機会を幅広く得ることができ、しかも充電進行状態や利用料金を給電スタンド10から離れても把握することができる。
【0078】
[変形例1-1]
実施形態1の変形例として、利用料金はクレジットカードで決済するようにしてもよい。その場合、ユーザ認証を行う際(図5のステップSs1)に、サーバ30からクレジット会社に対して与信認証を行うことが挙げられる。そして、料金演算手段35で求められた利用料金のデータは、図5のステップSs9において、ユーザの個人情報と共にサーバ30からクレジット会社に送信するよう構成すればよい。
【0079】
[変形例1-2]
実施形態1の変形例として、過去の充電履歴データを考慮して基準充電電力カーブを求めるようにしてもよい。統計処理手段37は、過去の充電履歴データを統計処理する。例えば、車載電池と充電器が同じ車種ごとに、充電履歴データを取得し、その充電履歴データを平均化して、その車種の基準充電電力データとする。充電履歴データは、車載電池の経年度合い(3年経過、5年経過など)ごとに分けて記憶しておき、その利用年数ごとに基準充電電力データを演算してもよい。車載電池の経年度合いは、車種の年式から算出できる。
【0080】
この場合、統計処理手段により求められた基準充電電力データを用いることで、車載電池の経年変化に応じたより正確な充電進行状態の演算を行うことができる。また、車両ごとの充電電力のばらつきを平均化によりならすことができ、より適切な基準充電電力データを得ることができる。
【0081】
[変形例1-3]
実施形態1の変形例として、充電進行状況演算手段34を利用して設定時間で充電できる電力量や充電率を演算したり、充電進行状況演算手段34と料金演算手段35との協働により、充電料金を先に設定して、その充電料金で充電できる電力量、さらには到達できる充電率を演算するようにしてもよい。
【0082】
前者の場合、例えば、1時間といった充電時間を設定する。その場合、端末機20からサーバ30にアクセスして、充電時間を設定する。1時間でどの程度の電力量を充電できるかは基準充電電力データを参照することで求められる。さらに、その1時間に充電できる電力量により、どの程度まで充電率を高められるかも基準充電電力データを参照して求めることができる。これは、実施形態1で述べたように、車載電池の充電を僅かに行うことで、車載電池の充電深度を予測することができるからである。従って、この参照結果をサーバ30から端末機20に送信することにより電子メール又は携帯サイトの画面にてユーザに知らせることができる。具体的には「1時間ですと、○○kwH利用可能です。」などのメッセージをサーバ30から端末機20に送信すればよい。
【0083】
後者の場合、例えば、200円でどの程度充電できるかを演算する。その場合、まず、端末機20から充電料金を設定して、サーバに送信する。サーバ30では、その設定充電料金(ここでは200円)を記憶手段32から読み出した料金単価で除することにより、その設定充電料金にて充電可能な電力量を演算する。この演算には料金演算手段35を利用すればよい。
【0084】
実施形態1で述べたように、車載電池の充電を僅かに行うことで、車載電池の充電深度を予測することができる。そのため、設定充電料金で充電できる電力量を基準充電電力カーブと参照することで、さらにどの程度まで充電率を高められるかや、その電力量分を充電するための所要時間も予測することができる。そのため、設定充電料金にて充電可能な電力量や、その電力量の充電により達成できる充電率、或いはその電力量分を充電するための所要時間をサーバ30から端末機20に送信することにより電子メール又は携帯サイトの画面にてユーザに知らせることができる。具体的には、「200円での充電量は8kwHになり、約4時間かかります。充電完了時の充電率は約70%です。」などのメッセージをサーバから端末機に送信すればよい。
【0085】
[変形例1-4]
実施形態1で述べたように、充電進行状態として充電終了時刻が予測できるため、各給電スタンド10ごとの充電終了予測時刻を給電スタンド10の空き情報として利用し、これから給電スタンド1を利用しようとするユーザに対して、この空き情報をサーバ30から端末機20に通知することができる。
【0086】
例えば、ある給電スタンド10の充電終了予測時刻がある日のAM6:00であったとすると、AM6:00以降はその給電スタンド10が空き状態になることが把握できる。そのため、これから給電スタンド10を利用しようとするユーザが端末機20を介してサーバ30にアクセスし、どの地域のどの給電スタンド群かを選択すると、その給電スタンド群のうち、どの給電スタンド10がいつ頃空き状態となっているかを携帯サイトの画面を通じてユーザに知らせることができる。さらに、サーバ30が給電スタンド10の予約システムを持っている場合、空き状態を把握したユーザは、そのまま予約システムを利用して当該給電スタンド10の予約をすることもできる。
【0087】
[変形例1-5]
以上の実施形態1とその変形例では、車載電池の端子電圧や充電電流は直接給電スタンド10側で把握できないことが前提であった。但し、有線又は無線による適宜な通信手段を用いて車両側から給電スタンド側へ車載電池の充電に相関する物理量、例えば、端子電圧、充電電流、電池温度などを送信することができる場合、この端子電圧と充電時間との相関関係、充電電流と充電時間の相関関係などを充電特性データとして記憶して利用することで、より高精度の充電進行状態の予測を行うことができる。上記通信手段には、スタンド側通信手段を利用することができる。
【0088】
[実施形態2]
実施形態1では、車載電池の充電進行状態をユーザに知らせることができたが、本例では、さらに登録電動車両の車載電池の劣化状態をもユーザに知らせることができる給電システムを説明する。本例のシステムは、図1のシステムと基本構成は共通であり、主な相違はサーバが電池状態判定手段を備え、記憶手段に過去の充電履歴データを記憶している点である。そのため、以下の説明は相違点を中心に行う。
【0089】
〔システムの概要〕
このシステムは、例えば記憶手段32のユーザマスタ情報の一つとして、過去の充電履歴データを記憶すると共に、図3に破線枠で示すように、電池状態判定手段38を備えている。過去の充電履歴データは、過去の車載電池の充電において、給電スタンド10(図1、図2)からサーバ30(図1)に送られてきた電力量の計測結果であり、充電時間と電力量の相関関係が含まれる。一方、二次電池は、一般に充放電サイクルを繰り返すと、電池容量が低下したり、電池抵抗が増加したりする傾向があり、一定以上の電池容量の低下などが生じると、電池の交換が必要になる。例えば、劣化のない電池であれば、単位時間当たりの充電電力の変位が大きいにもかかわらず、劣化した電池では、その変位が小さくなったりする。そのため、電池状態判定手段38により、最新の充電履歴データを過去の充電履歴データや劣化のない車載電池の充電特性データ(基準充電電力カーブを含む)と対比することで車載電池の劣化状態を判定することができる。具体的には対比対象データの間に所定の許容範囲を超える乖離が認められた場合、車載電池が劣化していると判定し、その乖離が許容範囲内の場合は劣化がないと判定する。その判定結果は、サーバ側通信手段31を介して、充電終了や利用料金を通知する際(図5のステップSc4)に、電子メールにて併せて通知される。具体的には。「電池が劣化しています。点検の上、取り換えをご検討ください。」などのメッセージを通知する。
【0090】
〔作用効果〕
本例の実施形態によれば、過去の充電履歴データをサーバ30に保有しておき、最新の充電履歴データを過去の充電履歴データや劣化のない車載電池の充電特性データと対比することで車載電池の劣化状態を検知することができる。その検知状態は、サーバ30から端末機20を介してユーザに通知されるため、ユーザは車載電池の交換時期を知ることができる。
【0091】
[変形例2-1]
変形例1-2で述べた統計処理手段37の処理結果は、電池状態の劣化を判定することにも利用することができる。つまり、変形例1-2と同様に、車載電池と充電器が同じ車種ごとに、充電履歴データを取得し、その充電履歴データを平均化して、その車種の基準充電電力データとする。充電履歴データは、車載電池の経年度合い(3年経過、5年経過など)ごとに分けて記憶しておき、その利用年数ごとに基準充電電力データを演算してもよい。
【0092】
そして、実施形態2と同様に、電池状態判定手段38は、最新の充電履歴データとの比較対象として、統計処理手段37で統計処理された基準充電電力データを用いる。これにより、同車種の他のユーザと比較して自分の車載電池がどの程度劣化しているかといった比較判定も行うことができる。勿論、その判定結果は、電子メールにてサーバ30から端末機20に送られ、ユーザに知らされる。或いは、サーバ30にアクセスした携帯サイトの画面にて上記判定結果をユーザに知らせることもできる。
【0093】
[実施形態3]
実施形態1では、給電システムの給電対象が登録電動車両に限られているが、本例では、登録電動車両以外の電動車両に対しても給電が可能な給電システムを説明する。本例でも基本構成は図1のシステムと共通であるため、相違点を中心に以下に説明する。
【0094】
〔システムの概要〕
例えば、ユーザの登録電動車両50がトヨタ製プリウスだが、ユーザの友人が所有するホンダ製インサイトの車載電池に充電を行いたい場合、通常は車種によって車載電池の仕様も異なるため、的確な充電進行状態の把握を行うには、給電対象となる車載電池に応じた充電特性データが必要になる。
【0095】
この場合、ユーザ認証を行う際(図5のステップSs1)などに、さらに給電対象の車種を選択できるようにすればよい。一般に、電動車両の運転者は自己の電動車両の車種程度は把握しているが、その車載電池の種類についてまでは把握していないことが多い。一方、記憶手段32のテーブルには、登録電動車両を含む各カーメーカの車種(必要に応じて年式)とその車種の車載電池の充電特性データとの対応関係を記憶させておく。それにより、ユーザに給電対象の車種を選択させれば、その車載電池の充電特性データもテーブルから抽出することができる。これにより、充電進行状態演算手段34が参照する充電特性データは、給電対象となる車載電池の種類に応じた適切な充電特性データを利用することができる。さらに、実施形態2や変形例2-1と同様に電池状態判定手段38を用いることで、登録電動車両以外の車両に対しても車載電池の劣化程度を評価することができる。
【0096】
なお、充電終了や利用料金の通知対象者及び利用料金の請求対象者は登録されているユーザに対して行われる。もっとも、ユーザマスタ情報として、電子メールアドレスを複数登録しておき、その複数のアドレスからユーザの友人のアドレスを選択できるようにすれば、充電終了や利用料金の通知対象者をユーザの友人にすることも可能である。
【0097】
〔作用効果〕
本例の実施形態によれば、ユーザが給電システムの使用を許可した電動車両に限られるが、給電対象が登録電動車両50以外の電動車両であっても、その電動車両の車載電池に応じた的確な充電進行状態を把握することができる。
【0098】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施し得ることは言うまでもない。例えば、実施形態1では、給電スタンドの一つを親機とし、残りを子機としたが、複数ある給電スタンドの全てを親機としてもよい。また、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等な範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の給電システムは、電動車両の車載電池を充電するための給電スタンドの運用に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 電動車両用給電システム
10 給電スタンド
11 スイッチ手段 12 電力量計測手段 13 スタンド側通信手段
14 スタンド制御手段 15 識別コード 16 コンセント
20 端末機
30 サーバ
31 サーバ側通信手段 32 記憶手段 33 ユーザ認証手段
34 充電進行状態演算手段 35 料金演算手段 36 給電制御手段
37 統計処理手段 38 電池状態判定手段 39 システム制御手段
50 電動車両
60 充電ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の車載電池に給電するための給電スタンドと、
この給電スタンドのユーザが利用する端末機と、
前記給電スタンド及び端末機の各々と通信網を介して通信するサーバとを備え、
前記給電スタンドは、
前記端末機からのサーバを介した要求に応じて、車載電池への給電を行うスイッチ手段と、
前記車載電池に給電した電力量を計測する電力量計測手段とを有し、
前記サーバは、
前記ユーザとその登録電動車両とを特定するためのユーザマスタ情報と、この登録電動車両とその車載電池の充電特性データであって前記電力量計測手段で取得できる物理量の特性データとを関連付けるテーブルとを有する記憶手段と、
前記端末機から送信されたユーザ入力情報と前記ユーザマスタ情報とを参照して、ユーザの認証を行うユーザ認証手段と、
認証されたユーザの登録電動車両に対応する充電特性データを前記テーブルから抽出し、前記給電スタンドから送信された電力量計測手段の計測データを抽出された充電特性データと参照して車載電池の充電進行状態を演算し、この演算結果を端末機に送信するための充電進行状態データとして生成する充電進行状態演算手段とを有することを特徴とする電動車両用給電システム。
【請求項2】
前記充電進行状態データは、充電終了時刻、充電終了までの所要時間、電池容量に対する充電率、充電率に応じた充電終了時刻、及び充電率に応じた充電終了までの所要時間の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の電動車両用給電システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記ユーザによる過去の給電において電力量計測手段が計測した充電履歴データを記憶し、
さらに、前記サーバは、最新の充電履歴データを過去の充電履歴データや劣化のない車載電池の充電特性データと対比することで、車載電池の劣化状況を判定し、この判定結果を端末機に送信するための判定結果データとして生成する電池状態判定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動車両用給電システム。
【請求項4】
前記サーバは、登録電動車両の車種ごとに、過去の給電において電力量計測手段が計測した充電履歴データを統計処理する統計処理手段を備え、
前記充電進行状態演算手段は、抽出された充電特性データとして、統計処理手段で統計処理された充電履歴データを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動車両用給電システム。
【請求項5】
前記サーバは、登録電動車両の車種ごとに、過去の給電において電力量計測手段が計測した充電履歴データを統計処理する統計処理手段を備え、
前記電池状態判定手段は、最新の充電履歴データとの比較対象として、統計処理手段で統計処理された充電履歴データを用いることを特徴とする請求項3に記載の電動車両用給電システム。
【請求項6】
前記記憶手段は、さらに登録電動車両以外の電動車両の充電特性データも記憶しておき、
前記充電進行状態演算手段は、給電対象となる電動車両が前記登録電動車両と異なる場合に、端末機を介して前記テーブルから選択された電動車両に対応する充電特性データを抽出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動車両用給電システム。
【請求項7】
前記充電特性データは、充電時間と充電電力との関係を示す充電カーブであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動車両用給電システム。
【請求項8】
前記給電スタンドは、登録車両側から送信された車載電池の充電に相関する物理量を受信するスタンド側通信手段を備え、
前記充電進行状態演算手段は、充電進行状態データとして、前記電力量計測手段で取得できる物理量の特性データの代わりに、又は前記特性データに加味して前記物理量を利用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動車両用給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161241(P2012−161241A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54788(P2012−54788)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2010−28180(P2010−28180)の分割
【原出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000220882)株式会社エネゲート (42)
【Fターム(参考)】