説明

電動車両用駆動装置

【課題】2つの回転電機、出力用差動歯車装置、及びエアコンディショナ用のコンプレッサを備える場合において、各構成要素を適切に配置して全体として小型化することが容易な電動車両用駆動装置が求められる。
【解決手段】第一回転電機の回転軸は、出力用差動歯車装置の回転軸と同軸上に配置され、第二回転電機の回転軸は、第一回転電機の回転軸とは異なる軸上に配置され、第二回転電機は、出力用差動歯車装置と第一回転電機とのいずれか直径が小さい方と径方向視で重複すると共にいずれか直径が大きい方と径方向視で重複しないように配置され、且つ、出力用差動歯車装置と第一回転電機とのいずれか直径が大きい方と軸方向視で重複するように配置されている電動車両用駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に駆動連結される出力用差動歯車装置と、エアコンディショナ用のコンプレッサと、を有し、前記出力用差動歯車装置及び前記コンプレッサに伝達する駆動力を回転電機のみにより発生させる電動車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置に関して、例えば下記の特許文献1には、以下のような技術が開示されている。特許文献1の技術では、エアコンディショナ用の回転電機のロータ軸を、コンプレッサ連結部材だけでなく出力部材にも駆動連結することにより、エアコンディショナ用の回転電機の駆動力により、車輪駆動用の回転電機を補助して、車両を駆動できるように構成されている。
【0003】
特許文献1の技術では、遊星歯車装置のリングギヤに車輪駆動用の回転電機のロータ軸が駆動連結され、遊星歯車装置のサンギヤにエアコンディショナ用の回転電機のロータ軸及びコンプレッサ連結部材が駆動連結され、遊星歯車装置のキャリヤに出力部材が駆動連結されている。これにより、遊星歯車装置を介して、車輪駆動用の回転電機のロータ軸と、エアコンディショナ用の回転電機のロータ軸と、出力部材とが常に駆動連結されている。すなわち、特許文献1の技術は、各回転電機及び出力部材の回転速度の変化が、互いに影響するように構成されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、車輪駆動用の回転電機のロータ軸とエアコンディショナ用の回転電機のロータ軸と遊星歯車装置の回転軸と出力用差動歯車装置の回転軸とが同軸上に配置されているため、各回転電機、遊星歯車装置、及び出力用差動歯車装置の配置が同軸上に制約され、各構成要素を適切に配置して車両用駆動装置を小型化し難い。また、各回転電機の軸方向長さの制約が大きく、各回転電機が大径化し易い。
そして、同軸上に配置された各構成要素に対して径方向外側にコンプレッサのみが配置されているため、コンプレッサ及びコンプレッサの連結ギヤ機構が、同軸上に配置された他の構成要素に対して突出し、車両用駆動装置の全体としても大型化し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−178403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、2つの回転電機、出力用差動歯車装置、及びエアコンディショナ用のコンプレッサを備える場合において、各構成要素を適切に配置して全体として小型化することが容易な電動車両用駆動装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、車輪に駆動連結される出力用差動歯車装置と、エアコンディショナ用のコンプレッサと、を有し、前記出力用差動歯車装置及び前記コンプレッサに伝達する駆動力を回転電機のみにより発生させる電動車両用駆動装置の特徴構成は、前記出力用差動歯車装置に駆動連結される第一回転電機と、前記コンプレッサに駆動連結されると共に、前記出力用差動歯車装置に駆動連結される第二回転電機と、を備え、前記第一回転電機の回転軸は、前記出力用差動歯車装置の回転軸と同軸上に配置され、前記第二回転電機の回転軸は、前記第一回転電機の回転軸とは異なる軸上に配置され、前記第二回転電機は、前記出力用差動歯車装置と前記第一回転電機とのいずれか直径が小さい方と径方向視で重複すると共にいずれか直径が大きい方と径方向視で重複しないように配置され、且つ、前記出力用差動歯車装置と前記第一回転電機とのいずれか直径が大きい方と軸方向視で重複するように配置されている点にある。
【0008】
なお、本願において「回転電機」とは、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
【0009】
上記の特徴構成によれば、第二回転電機は、同軸上に配置された出力用差動歯車装置と第一回転電機とのいずれか直径が小さい方のみと径方向視で重複するように配置されると共に、直径が大きい方と軸方向視で重複するように配置される。よって、出力用差動歯車装置と第一回転電機とのいずれか直径が小さい方に対して径方向外側の空間を有効利用して第二回転電機を配置することができ、電動車両用駆動装置を全体として小型化することができる。
【0010】
ここで、前記コンプレッサの外径は前記第二回転電機の外径より小さく、前記コンプレッサの回転軸は、前記第二回転電機の回転軸と同軸上に配置され、前記コンプレッサは、前記出力用差動歯車装置と前記第一回転電機とのいずれか直径が大きい方と径方向視で重複するように配置されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、第二回転電機より小径のコンプレッサは、出力用差動歯車装置と第一回転電機とのいずれか直径が大きい方に対して径方向外側の領域であって、第二回転電機と軸方向視で重複する領域に配置され、当該直径が大きい方に対して径方向外側の空間を有効利用することができる。
よって、出力用差動歯車装置の径方向外側の空間及び第一回転電機の径方向外側の空間を有効利用して、第二回転電機及びコンプレッサが配置される。これにより、第一回転電機、第二回転電機、出力用差動歯車装置及びコンプレッサを、集合させてコンパクトに配置することができ、電動車両用駆動装置を全体として小型化することができる。
【0012】
ここで、前記第一回転電機及び前記第二回転電機は、動力伝達機構を介して前記出力用差動歯車装置に駆動連結され、前記動力伝達機構は、前記第一回転電機の回転軸に平行な軸方向における前記第一回転電機と前記出力用差動歯車装置との間であって、前記第二回転電機の回転軸に平行な軸方向における前記第二回転電機と前記コンプレッサとの間に配置されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、動力伝達機構は、軸方向における第一回転電機、第二回転電機、出力用差動歯車装置及びコンプレッサの間の空間を有効使用して配置されるとともに、これらの各構成要素の間を効率的に駆動連結できる。
従って、電動車両用駆動装置の構成要素である第一回転電機、第二回転電機、出力用差動歯車装置、コンプレッサ及び動力伝達機構を、集合させてコンパクトに配置することができ、電動車両用駆動装置を全体として小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る電動車両用駆動装置のスケルトン図及び軸方向視での配置図である。
【図2】その他の実施形態に係わる電動車両用駆動装置のスケルトン図及び軸方向視での配置図である。
【図3】その他の実施形態に係わる電動車両用駆動装置のスケルトン図及び軸方向視での配置図である。
【図4】その他の実施形態に係わる電動車両用駆動装置のスケルトン図及び軸方向視での配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電動車両用駆動装置1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電動車両用駆動装置1の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、電動車両用駆動装置1の歯車装置及び係合装置などの動力伝達機構の構造を表したスケルトン図であり、図1(b)は、電動車両用駆動装置1の各構成要素の軸方向視での配置を表した配置図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る電動車両用駆動装置1は、車輪Wに駆動連結される出力用差動歯車装置DFと、エアコンディショナ用のコンプレッサCMと、を有しており、出力用差動歯車装置DF及びコンプレッサCMに伝達する駆動力を回転電機MG1、MG2のみにより発生させる駆動装置である。
電動車両用駆動装置1は、出力用差動歯車装置DFに駆動連結される第一回転電機MG1と、コンプレッサCMに駆動連結されると共に、出力用差動歯車装置DFに駆動連結される第二回転電機MG2と、を備えている。
【0017】
このような構成において、図1(a)に示すように、第一回転電機のロータ軸RS1は、出力用差動歯車装置DFの回転軸と同軸上に配置され、第二回転電機のロータ軸RS2は、第一回転電機のロータ軸RS1とは異なる軸上に配置されている。また、第二回転電機MG2は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が小さい方(本例では、出力用差動歯車装置DF)と径方向視で重複すると共にいずれか直径が大きい方(本例では、第一回転電機MG1)と径方向視で重複しないように配置されている。そして、第二回転電機MG2は、図1(b)に示すように、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方(本例では、第一回転電機MG1)と軸方向視で重複するように配置されている。
なお、図1(b)は、電動車両用駆動装置1を、図1(a)に示すIb−Ib断面の位置から、第一回転電機のロータ軸RS1の軸方向に、軸第一方向X1側(図1(a)の左側、以下同じ)から、当該軸第一方向X1側とは反対側である軸第二方向X2側(図1(a)の右側、以下同じ)を見た図である。また、第一回転電機のロータ軸RS1が、本発明における「第一回転電機の回転軸」であり、第二回転電機のロータ軸RS2が、本発明における「第二回転電機の回転軸」である。
【0018】
本実施形態では、図1(a)に示すように、第一回転電機MG1は、動力伝達機構CGを介して出力用差動歯車装置DFに駆動連結されている。また、第二回転電機MG2は、動力伝達機構CGを介して出力用差動歯車装置DFに駆動連結されると共に、第一クラッチCL1を介しコンプレッサCMに駆動連結されている。
コンプレッサCMの外径は、第二回転電機MG2の外径より小さい。また、コンプレッサの回転軸CMCは、第二回転電機のロータ軸RS2と同軸上に配置されている。コンプレッサCMは、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方(本例では、第一回転電機MG1)と径方向視で重複するように配置されている。
【0019】
本実施形態では、第一回転電機のロータ軸RS1と、第二回転電機のロータ軸RS2と、動力伝達機構CGのカウンタ軸CGSと、は互いに平行に配置されている。よって、第一回転電機のロータ軸RS1の軸方向と、カウンタ軸CGSの軸方向と、第二回転電機のロータ軸RS2の軸方向とは、いずれも同じ方向となる。また、第一回転電機のロータ軸RS1と、出力用差動歯車装置DFの回転軸と、車軸AXと、は同軸上に配置されているよって、上記の軸第一方向X1及び軸第二方向X2は、これらの軸並びにカウンタ軸CGS及び第二回転電機のロータ軸RS2に共通した軸方向となる。
以下、本実施形態に係る電動車両用駆動装置1について、詳細に説明する。
【0020】
1.電動車両用駆動装置1の構成
1−1.第一回転電機MG1
図1(a)に示すように、第一回転電機MG1は、ケースなどの非回転部材に固定されたステータSt1と、このステータSt1の径方向内側に、回転自在に支持されたロータ軸RS1を備えたロータRo1と、を有している。ステータSt1は、例えば、円環状の電磁鋼板を軸方向に多数積み重ねた積層鋼板等からなるステータコアを有している。本実施形態において、第一回転電機MG1の直径は、ステータSt1の直径、詳しくはステータコアの直径を意味する。
【0021】
第一回転電機MG1は、直流交流変換を行う第一インバータを介して蓄電装置としてのバッテリに電気的に接続されている。そして、第一回転電機MG1は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。
【0022】
第一回転電機のロータ軸RS1の回転が動力伝達機構CGを介して伝達されて出力用差動歯車装置DFに伝達されるように駆動連結されている。すなわち、第一回転電機のロータ軸RS1は、動力伝達機構CGを介して出力用差動歯車装置DFに駆動連結されている。そして、本実施形態では、出力用差動歯車装置DFは、左右二つの車軸AXに駆動連結され、各車軸AXは、左右二つの車輪Wのそれぞれに駆動連結されている。よって、第一回転電機MG1からロータ軸RS1へ伝達されたトルクは、動力伝達機構CG、出力用差動歯車装置DF、及び車軸AXを介して、左右2つの車輪Wに伝達される。なお、第一回転電機MG1から車輪Wまでの動力伝達経路上に、動力伝達機構CGに加えて、変速比が変更可能に構成された変速装置や遊星歯車機構などの各種の変速機構が備えられてもよい。
【0023】
また、第一回転電機のロータ軸RS1は、動力伝達機構CG及び第一クラッチCL1を介して、コンプレッサCMに駆動連結されるように構成されている。よって、第一回転電機MG1からロータ軸RS1へ伝達されたトルクは、第一クラッチCL1及び第二クラッチCL2が係合状態にある場合には、コンプレッサCMにも伝達される。
【0024】
1−2.第二回転電機MG2
第二回転電機MG2は、ケースなどの非回転部材に固定されたステータSt2と、このステータSt2の径方向内側に、回転自在に支持されたロータ軸RS2を備えたロータRo2と、を有している。ステータSt2は、例えば、円環状の電磁鋼板を軸方向に多数積み重ねた積層鋼板等からなるステータコアを有している。本実施形態において、第二回転電機MG2の直径は、ステータSt2の直径、詳しくはステータコアの直径を意味する。
【0025】
第二回転電機MG2は、直流交流変換を行う第二インバータを介して蓄電装置としてのバッテリに電気的に接続されている。そして、第二回転電機MG2は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。
【0026】
第二回転電機のロータ軸RS2は、第一回転電機のロータ軸RS1とは異なる軸上に配置されると共に、コンプレッサCM(回転軸CMC)と同軸上に配置されている。
第二回転電機のロータ軸RS2は、第一クラッチCL1を介してコンプレッサの回転軸CMCに駆動連結される。また、第二回転電機のロータ軸RS2は、動力伝達機構CGを介して出力用差動歯車装置DFに駆動連結される。
第一クラッチCL1が係合状態にある場合には、第二回転電機MG2からロータ軸RS2へ伝達されたトルクは、コンプレッサの回転軸CMCに伝達される。
また、第二回転電機MG2からロータ軸RS2へ伝達されたトルクは、動力伝達機構CG、出力用差動歯車装置DF、及び車軸AXを介して、左右2つの車輪Wに伝達される。
【0027】
1−3.動力伝達機構CG
本実施形態においては、第一回転電機のロータ軸RS1及び第二回転電機のロータ軸RS2は、動力伝達機構CGを介して出力用差動歯車装置DFに駆動連結されるように構成されている。また、動力伝達機構CGは、第一回転電機のロータ軸RS1の回転速度を所定の変速比(減速比)で減速して出力用差動歯車装置DFに伝達すると共に、第二回転電機のロータ軸RS2の回転速度を所定の変速比(減速比)で減速して出力用差動歯車装置DFに伝達する減速機として機能する。ここで、動力伝達機構CGの変速比は、出力用差動歯車装置DFの回転速度に対するロータ軸RS1又はロータ軸RS2の回転速度の比であり、ロータ軸RS1又はロータ軸RS2の回転速度を出力用差動歯車装置DFの回転速度で除算した値である。本実施形態の動力伝達機構CGの各変速比は、1より大きく設定されている。
また、本実施形態に係わる動力伝達機構CGでは、出力用差動歯車装置DFは、クラッチ(本例では、ドグクラッチDG)により、第一回転電機のロータ軸RS1及び第二回転電機のロータ軸RS2の何れか一方に選択的に駆動連結される、或いは双方と分離されるように構成されている。
【0028】
本実施形態では、動力伝達機構CGは、第一回転電機のロータ軸RS1とは異なる軸上に配置されたカウンタ軸CGSと、カウンタ軸CGS周りに回転する複数のカウンタギヤを備えたカウンタギヤ機構とされている。図1(a)に示す例では、動力伝達機構CGは、カウンタ軸CGSと一体回転するように駆動連結された第一カウンタギヤCG1と、カウンタ軸CGS周りに回転可能に支持され、ドグクラッチDGの係合によりカウンタ軸CGSと一体回転するように駆動連結される第二カウンタギヤCG2及び第三カウンタギヤCG3とを備えている。ここで、第二カウンタギヤCG2及び第三カウンタギヤCG3は、第一カウンタギヤCG1より大径である。
【0029】
第一カウンタギヤCG1は、出力用差動歯車装置DFと一体回転するように駆動連結されている第一ギヤG1と噛み合っている。第三カウンタギヤCG3は、第一回転電機のロータ軸RS1と一体回転するように駆動連結されている第二ギヤG2と噛み合っている。また、第二カウンタギヤCG2は、第二回転電機のロータ軸RS2と一体回転するように駆動連結されている第三ギヤG3と噛み合っている。そして、ドグクラッチDGは、第二カウンタギヤCG2と第三カウンタギヤCG3との間であって、軸方向に移動可能な状態で、カウンタ軸CGSにスプライン嵌合されている。
【0030】
ドグクラッチDGのギヤセレクタGSが、カウンタ軸CGSの軸上を軸第一方向X1側(図1(a)の左側)に移動されて、第二カウンタギヤCG2と連結した場合は、ドグクラッチDGを介して第一カウンタギヤCG1と第二カウンタギヤCG2とが一体回転するように駆動連結される。これにより、第二回転電機のロータ軸RS2が出力用差動歯車装置DFと駆動連結された係合状態となる。
一方、ドグクラッチDGのギヤセレクタGSが、カウンタ軸CGSの軸上を軸第二方向X2(図1(a)の右側)に移動されて、第三カウンタギヤCG3と連結した場合は、ドグクラッチDGを介して第一カウンタギヤCG1と第三カウンタギヤCG3とが一体回転するように駆動連結される。これにより、第一回転電機のロータ軸RS1が出力用差動歯車装置DFと駆動連結された係合状態となる。
【0031】
また、ドグクラッチDGのギヤセレクタGSが、第二カウンタギヤCG2と第三カウンタギヤCG3との中間位置にある場合は、第一カウンタギヤCG1が、第二カウンタギヤCG2及び第三カウンタギヤCG3の何れにも駆動連結されない。これにより、出力用差動歯車装置DFが第一回転電機のロータ軸RS1及び第二回転電機のロータ軸RS2の何れとも駆動連結されていない分離状態となる。
なお、ドグクラッチDGを、第二カウンタギヤCG2の連結分離用と、第三カウンタギヤCG3の連結分離用とに分けて備えてもよい。この場合、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2の双方を出力用差動歯車装置DFに連結させて、2つの回転電機により車両を駆動することができる。
【0032】
1−4.出力用差動歯車装置DF
出力用差動歯車装置DFは、互いに噛み合う複数の傘歯車DF1、DF2を用いた差動歯車機構とされており、出力用差動歯車装置DFに伝達される回転及びトルクを分配して、それぞれ車軸AXを介して左右2つの車輪Wに伝達する。
本実施形態では、出力用差動歯車装置DFは、第一ギヤG1に駆動連結されて第一ギヤG1と一体回転する差動キャリヤDF4を備えている。差動キャリヤDF4内には、各車軸AXとそれぞれ一体回転する一対のサイドギヤDF2と、当該2つのサイドギヤDF2をつなぐと共に差動キャリヤDF4と共に回転する一対のピニオンギヤDF1と、が収容されている。
【0033】
差動キャリヤDF4は、差動キャリヤDF4の回転軸心に直交交差すると共に差動キャリヤDF4と一体回転するピニオン回転軸DF3を備えており、ピニオンギヤDF1は、ピニオン回転軸DF3周りに自転可能に支持されている。すなわち、ピニオンギヤDF1は、差動キャリヤDF4と共に回転(公転)すると共に、ピニオン回転軸DF3周りに自転可能にされている。
各ピニオンギヤDF1は、左右二つのサイドギヤDF2の双方と噛み合っている。差動キャリヤDF4が回転すると、差動キャリヤDF4と共に回転するピニオンギヤDF1を介して、左右二つのサイドギヤDF2が回転し、各サイドギヤDF2に駆動連結された各車軸AXが回転する。そして、各車軸AXが回転すると、各車軸AXに駆動連結された各車輪Wが回転する。ここで、各ピニオンギヤDF1は、ピニオン回転軸DF3周りに自転することにより、左右二つのサイドギヤDF2を差動動作させる。
【0034】
出力用差動歯車装置DFの回転軸は、差動キャリヤDF4及びサイドギヤDF2の回転軸であり、第一回転電機のロータ軸RS1と同軸上に配置されている。車軸AXは、第一回転電機のロータ軸RS1と同軸上に配置されており、軸第二方向X2側の車軸AXは、筒状に形成された差動キャリヤDF4及び第一回転電機のロータ軸RS1の径方向内側を貫通するように配置され、電動車両用駆動装置1の軸第二方向X2側まで延出している。なお、本実施形態において、出力用差動歯車装置DFの直径は、差動キャリヤDF4の直径を意味する。
【0035】
1−5.第一クラッチCL1
第一クラッチCL1は、第二回転電機のロータ軸RS2を、コンプレッサCMに、選択的に駆動連結又は駆動連結を解除(分離)する係合装置である。本実施形態では、第一クラッチCL1の入力側部材は、第二回転電機のロータ軸RS2と一体回転するように駆動連結されており、第一クラッチCL1の出力側部材は、コンプレッサの回転軸CMCと一体回転するように駆動連結されている。そして、第一クラッチCL1の入力側部材と出力側部材との間が、選択的に係合又は解放される。本実施形態では、第一クラッチCL1は、電磁クラッチとされている。なお、第一クラッチCL1に、油圧クラッチ又は電動クラッチなどが用いられてもよい。
【0036】
1−6.コンプレッサCM
車両には、車内の温度及び湿度を調節するためのエアコンディショナが備えられている。コンプレッサCMは、エアコンディショナに用いられる熱媒を圧縮する装置であり、外部からの回転駆動力により駆動されるものとなっている。本実施形態では、コンプレッサCMとして、ベーンロータリー式のコンプレッサが用いられている。コンプレッサCMのロータは、コンプレッサの回転軸CMCと一体回転するように駆動連結されている。なお、コンプレッサCMとして、スクロール式、斜板式、可変容量式(片側斜板式)等のコンプレッサが用いられてもよい。
【0037】
本実施形態では、コンプレッサの回転軸CMCは、第一クラッチCL1を介して、第二回転電機のロータ軸RS2に駆動連結されるように構成されている。よって、第一クラッチCL1が係合状態にある場合には、第二回転電機のロータ軸RS2の回転が、コンプレッサCMの回転軸CMCに伝達され、コンプレッサCMを回転駆動することが可能となっている。
【0038】
2.電動車両用駆動装置1の配置
次に、電動車両用駆動装置1の各構成要素の配置を説明する。
<第二回転電機MG2の配置>
第一回転電機のロータ軸RS1は、出力用差動歯車装置DFの回転軸と同軸上に配置され、第二回転電機のロータ軸RS2は、第一回転電機のロータ軸RS1とは異なる軸上に配置されている。本実施形態では、第二回転電機のロータ軸RS2は、第一回転電機のロータ軸RS1と平行に配置されている。
【0039】
第二回転電機MG2は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が小さい方と径方向視で重複すると共にいずれか直径が大きい方と径方向視で重複しないように配置されている。また、第二回転電機MG2は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方と軸方向視で重複するように配置されている。
本実施形態では、図1(a)に示すように、出力用差動歯車装置DFの直径は、第一回転電機MG1の直径より小さくされている。よって、第二回転電機MG2は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が小さい方である出力用差動歯車装置DFと径方向視で重複すると共に、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方である第一回転電機MG1と径方向視で重複しないように配置されている。また、図1(b)に示すように、第二回転電機MG2は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方である第一回転電機MG1と軸方向視で重複するように配置されている。
【0040】
上記の構成によれば、図1(b)に示すように、同軸上に配置された第一回転電機MG1と出力用差動歯車装置DFとのいずれか直径が大きい方である第一回転電機MG1の径方向外側の部分が、軸方向視で、直径が小さい方である出力用差動歯車装置DFに対して径方向外側に突出する。よって、直径が大きい方である第一回転電機MG1の径方向外側の突出部と軸方向視で重複する領域であって、直径が小さい方である出力用差動歯車装置DFに対して径方向外側の領域には、無駄な空間が生じ得る。
【0041】
上記の構成によれば、第二回転電機MG2は、直径が小さい方である出力用差動歯車装置DFと径方向視で重複すると共に、直径が大きい方である第一回転電機MG1と径方向視で重複しないように配置されている。よって、第二回転電機MG2は、図1(a)に示すように、直径が小さい方である出力用差動歯車装置DFに対して径方向外側に配置される。また、上記の構成によれば、第二回転電機MG2は、直径が大きい方である第一回転電機MG1と軸方向視で重複するように配置されている。よって、図1(b)に示すように、第二回転電機MG2は、直径が小さい方である出力用差動歯車装置DFの突出部と重複して配置される。
従って、第二回転電機MG2を、上記した直径が小さい方に対して径方向外側の無駄な空間を有効利用して配置することができ、電動車両用駆動装置1を全体として小型化することができる。
また別の視点では、本実施形態とは異なり、第二回転電機MG2を直径が大きい方である第一回転電機MG1に対して径方向外側に配置する場合に比べて、第二回転電機MG2と直径が小さい方である出力用差動歯車装置DFとの全体での径方向の大きさ、より小さくすることができる。よって、電動車両用駆動装置1を全体として小型化することができる。
【0042】
また、上記の構成によれば、第二回転電機MG2は、直径が小さい方である出力用差動歯車装置DFに対して径方向外側に隣接して配置される。なお、第二回転電機MG2と出力用差動歯車装置DF又は第一回転電機MG1との間には、各回転電機MG1、MG2のステータSt1、St2及び出力用差動歯車装置DFを支持するケース、などの支持部材が配置されていてもよく、この支持部材を除いて、第二回転電機MG2と出力用差動歯車装置DF又は第一回転電機MG1とが、互いに径方向に隣接して配置される。ここで、第二回転電機MG2と出力用差動歯車装置DF又は第一回転電機MG1との間に配置される支持部材には、配線、油路などの周辺部材が含まれてもよい。
【0043】
<コンプレッサCMの配置>
第二回転電機MG2が配置されることにより、図1(a)に示すように、第二回転電機MGと軸方向視で重複する領域であって、直径が大きい方である第一回転電機MG1に対して径方向外側の領域には、無駄な空間が生じ得る。
本実施形態では、コンプレッサの回転軸CMCは、第二回転電機のロータ軸RS2と同軸上に配置されている。そして、コンプレッサCMは、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方である第一回転電機MG1と径方向視で重複するように配置されている。
上記の構成によれば、コンプレッサCMは、第二回転電機MG2と軸方向視で重複する領域であって、直径が大きい方である第一回転電機MG1に対して径方向外側の領域に配置され、上記した直径が大きい方に対して径方向外側の無駄な空間を有効利用することができる。
【0044】
また、本実施形態では、コンプレッサCMの直径は、第二回転電機MG2の直径より小さくされている。
従って、本実施形態では、同軸上に配置された第二回転電機MG2とコンプレッサCMとのいずれか直径が大きい方は、同軸上に配置された出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が小さい方と径方向視で重複するように配置されている。そして、同軸上に配置された第二回転電機MG2とコンプレッサCMとのいずれか直径が小さい方は、同軸上に配置された出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方と径方向視で重複するように配置されている。
【0045】
すなわち、異なる軸の間で、上記した直径が大きい方と直径が小さい方とが、径方向視で互いに重複するように配置される。よって、各構成要素MG1、MG2、CM、及びDFを、集合させてコンパクトに配置することができ、電動車両用駆動装置1を全体として小型化することができる。
【0046】
<動力伝達機構CGの配置>
動力伝達機構CGは、第一回転電機のロータ軸RS1に平行な軸方向における第一回転電機MG1と出力用差動歯車装置DFとの間であって、第二回転電機のロータ軸RS2に平行な軸方向における第二回転電機MG2とコンプレッサCMとの間に配置されている。
【0047】
本実施形態では、図1(a)に示すように、出力用差動歯車装置DFと径方向視で重複するように第二回転電機MG2が配置され、第一回転電機MG1と径方向視で重複するようにコンプレッサCMが配置されている。そして、動力伝達機構CGは、軸方向における出力用差動歯車装置DF及び第二回転電機MG2と、第一回転電機MG1及びコンプレッサCMとの間の空間に配置されている。図1(b)に示すように、動力伝達機構CGは、第一回転電機MG1、第二回転電機MG2及び出力用差動歯車装置DFと、軸方向視で少なくとも一部が重複するように配置されている。
【0048】
また、軸方向における各構成要素MG1、MG2、CM、及びDFの間の空間に、動力伝達機構CGと、各構成要素MG1、MG2、CM、及びDFとを駆動連結する第一ギヤG1、第二ギヤG2、及び第三ギヤG3が配置されている。このため、動力伝達機構CGと各構成要素MG1、MG2、CM、及びDFとの間の距離を短くでき、駆動連結に必要な部材を最小限にすることができる。なお、動力伝達機構CGの定義として、動力伝達機構CGに加えて、各構成要素MG1、MG2、CM、及びDFとの駆動連結機構である第一ギヤG1、第二ギヤG2、及び第三ギヤG3を含めるようにしてもよい。
【0049】
よって、動力伝達機構CG及び駆動連結機構G1、G2、G3は、軸方向における各構成要素MG1、MG2、CM、及びDFの間の空間を有効使用して配置されるとともに、各構成要素MG1、MG2、CM、及びDFの間を効率的に駆動連結できる。
【0050】
従って、図1(a)に示すように、電動車両用駆動装置1の各構成要素MG1、MG2、CM、DF、並びにCG、G1、G2、G3を、集合させてコンパクトに配置することができ、電動車両用駆動装置1を全体として小型化することができている。
【0051】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0052】
(1)上記の実施形態においては、出力用差動歯車装置DFの直径は、第一回転電機MG1の直径より小さくされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、図2(a)に示すように、第一回転電機MG1の直径は、出力用差動歯車装置DFの直径より小さくされるように構成されてもよい。この場合は、第二回転電機MG2は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が小さい方である第一回転電機MG1と径方向視で重複すると共に、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方である出力用差動歯車装置DFと径方向視で重複しないように配置される。また、図2(b)に示すように、第二回転電機MG2は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方である出力用差動歯車装置DFと軸方向視で重複するように配置される。なお、図2(b)は、電動車両用駆動装置1を、図2(a)に示すIIb−IIb断面の断面位置から、第一回転電機のロータ軸RS1の軸方向に、軸第一方向X1側(図2(a)の左側)から、軸第二方向X2側(図2(a)の右側)を見た図である。
【0053】
この場合、コンプレッサCMは、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方である出力用差動歯車装置DFと径方向視で重複するように配置される。
また、この場合も、動力伝達機構CGは、第一回転電機のロータ軸RS1に平行な軸方向における第一回転電機MG1と出力用差動歯車装置DFとの間であって、第二回転電機のロータ軸RS2に平行な軸方向における第二回転電機MG2とコンプレッサCMとの間に配置されている。
従って、図2(a)に示すように、電動車両用駆動装置1の各構成要素MG1、MG2、CM、DF、並びにCG、G1、G2、G3を、集合させてコンパクトに配置することができ、電動車両用駆動装置1を全体として小型化することができている。
【0054】
(2)上記の実施形態においては、動力伝達機構CGは、カウンタ軸CGSと一体回転するように駆動連結された第一カウンタギヤCG1と、ドグクラッチDGの係合によりカウンタ軸CGSと一体回転するように駆動連結される第二カウンタギヤCG2と第三カウンタギヤCG3とを備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、動力伝達機構CGは、第一回転電機のロータ軸RS1及び第二回転電機のロータ軸RS2を出力用差動歯車装置DFに駆動連結する機構であればいずれの機構でもよく、例えば、複数のギヤで構成されたギヤ機構、ベルト及び複数のプーリで構成された機構、チェーンと複数のギヤで構成された機構であってもよい。
【0055】
例えば、図3(a)及び図4(a)に示すように、動力伝達機構CGは、カウンタ軸CGSと一体回転するように駆動連結された第一カウンタギヤCG1及び第二カウンタギヤCG2を備えたカウンタギヤ機構とされてもよい。ここで、第二カウンタギヤCG2は、第一カウンタギヤCG1より大径である。
【0056】
図3(a)に示す場合では、第二カウンタギヤCG2は、第一回転電機のロータ軸RS1と一体回転するように駆動連結されている第二ギヤG2と噛み合うと共に、第二ギヤG2とは異なる周方向の位置で、第二回転電機MG2のロータ軸RS2と第二クラッチCL2を介して一体回転するように駆動連結される第三ギヤG3と噛み合っている。
なお、図3(a)は、動力伝達機構の構造を表すスケルトン図であるため、第三ギヤG3は、第二ギヤG2に対して180度の異なる周方向の位置で、第二カウンタギヤCG2に噛み合っているように示されているが、正しい周方向の噛み合い位置を示していない。正しくは、図3(b)に示すように、第三ギヤG3は、第二ギヤG2に対して例えば45度の異なる周方向の位置で、第二カウンタギヤCG2に噛み合うように配置されている。すなわち、第三ギヤG3は、第二回転電機MG2が出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方と軸方向視で重複するように配置されるような周方向の位置で、第二カウンタギヤCG2に噛み合うように配置されている。よって、第二回転電機MG2は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が小さい方に対して径方向外側に隣接して配置される。
なお、図3(b)は、電動車両用駆動装置1を、図3(a)に示すIIIb−IIIb断面の位置から、第一回転電機のロータ軸RS1の軸方向に、軸第一方向X1側(図3(a)の左側)から、軸第二方向X2側(図3(a)の右側)を見た図である。
【0057】
また、図4(a)に示す場合では、第二カウンタギヤCG2は、第一回転電機のロータ軸RS1と一体回転するように駆動連結されている第二ギヤG2と噛み合っている。また、カウンタ軸CGSは、第二クラッチCL2を介して、第二回転電機のロータ軸RS2と一体回転するように駆動連結されている。
この場合も、図4(b)に示すように、第二回転電機MG2が出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方と軸方向視で重複するように配置される。
なお、図4(b)は、電動車両用駆動装置1を、図4(a)に示すIVb−IVb断面の位置から、第一回転電機のロータ軸RS1の軸方向に、軸第一方向X1側(図4(a)の左側)から、軸第二方向X2側(図4(a)の右側)を見た図である。
【0058】
或いは、動力伝達機構CGは、カウンタ軸CGSと一体回転するように駆動連結された第一カウンタギヤCG1と、軸方向に移動可能な状態で、カウンタ軸CGSにスプライン嵌合されている第二カウンタギヤCG2と、を備えたカウンタギヤ機構とされてもよい。そして、第二カウンタギヤCG2が、カウンタ軸CGS上を軸方向に移動されて、異なる軸方向の位置に配置された第三ギヤG3と第二ギヤG2と選択的に噛み合う、或いは双方と噛み合わない又は双方と噛み合うように構成されてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態においては、動力伝達機構CGが、減速機とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、動力伝達機構CGは、第一回転電機のロータ軸RS1の回転速度と出力用差動歯車装置DFと間の変速比、及び第二回転電機のロータ軸RS2の回転速度と出力用差動歯車装置DFと間の変速比の一方又は双方が1より小さい値とされた増速機、又は変速比が1であってもよい。
【0060】
(3)上記の実施形態においては、コンプレッサCMは、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方と径方向視で重複するように配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、図3(a)、図4(a)に示すように、コンプレッサCMは、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方に対して、軸方向に直径が小さい方側に配置されるように構成されるように構成されてもよい。この場合は、第二回転電機MG2とコンプレッサCMとをまとめて、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方に対して、軸方向に直径が小さい方側に配置される。また、この場合は、出力用差動歯車装置DFと第一回転電機MG1とのいずれか直径が大きい方に対して径方向外側には、電動車両用駆動装置1の構成要素が配置されない。
よって、直径が小さい方に対して径方向外側の無駄な空間を有効利用して、第二回転電機MG2とコンプレッサCMをまとめて配置することができる。従って、この場合にも、電動車両用駆動装置1を全体として小型化することができる。
【0061】
(4)上記の実施形態においては、第一回転電機のロータ軸RS1と、第二回転電機のロータ軸RS2と、動力伝達機構CGのカウンタ軸CGSと、は互いに平行に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一回転電機のロータ軸RS1と、第二回転電機のロータ軸RS2と、動力伝達機構CGのカウンタ軸CGSとの何れかの軸が、他の軸に対して立体的に交差するように配置されていてもよい。
【0062】
(5)上記の実施形態においては、第一回転電機のロータ軸RS1及び第二回転電機のロータ軸RS2が、動力伝達機構CGを介して出力用差動歯車装置DFに駆動連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一回転電機のロータ軸RS1及び第二回転電機のロータ軸RS2の一方又は双方が、動力伝達機構CGに代えて又は加えて、ギヤ機構や遊星歯車機構や変速比が変更可能に構成された変速装置などの各種の動力伝達機構が備えられて、出力用差動歯車装置DFに駆動連結されるように構成されてもよい。
【0063】
(6)上記の図3又は図4に示す実施形態においては、第一回転電機のロータ軸RS1が、動力伝達機構CGにクラッチを介することなく駆動連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一回転電機のロータ軸RS1は、クラッチを介して、動力伝達機構CGに駆動連結される構成であってもよい。
【0064】
(7)上記の実施形態においては、第二回転電機のロータ軸RS2が、第一クラッチCL1を介して、コンプレッサCMに駆動連結されるように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、電動車両用駆動装置1に第一クラッチCL1が備えられずに、第二回転電機のロータ軸RS2が、コンプレッサCMの回転軸CMCと分離不可に駆動連結されるように構成されてもよい。この場合、コンプレッサCMに、駆動負荷(負トルク)を調整可能な可変容量型のコンプレッサが用いられるように構成されてもよい。
【0065】
(8)上記の実施形態においては、電動車両用駆動装置1に備えられる第一クラッチCL1などのクラッチは、係合又は解放が制御される種類のクラッチである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、電動車両用駆動装置1に備えられるクラッチは、一方向にのみ回転力を伝達し、逆方向には空転し回転力を伝達しない一方向クラッチ(ワンウェイクラッチ)であってもよい。
或いは、電動車両用駆動装置1に備えられるクラッチは、回転部材を非回転部材に係合又は解放するブレーキであってもよい。例えば、駆動連結又は分離させる2つの回転部材間に、3つの回転要素を有する遊星歯車機構などを備えるように構成し、ブレーキにより、1つの回転要素を非回転部材に係合又は解放させ、他の2つの回転要素の間が駆動連結又は分離されるように構成することができる。
【0066】
(9)上記の実施形態においては、コンプレッサの回転軸CMCが、第二回転電機のロータ軸RS2と同軸上に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、コンプレッサの回転軸CMCは、第二回転電機のロータ軸RS2とは異なる軸上に配置されていてもよい。この場合、コンプレッサの回転軸CMCは、第一クラッチCL1に加え、ギヤ機構やベルト、プーリ機構などの各種の動力伝達機構を介して、第二回転電機のロータ軸RS2に駆動連結されるように構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、車輪に駆動連結される出力用差動歯車装置と、エアコンディショナ用のコンプレッサと、を有し、前記出力用差動歯車装置及び前記コンプレッサに伝達する駆動力を回転電機のみにより発生させる電動車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 :電動車両用駆動装置
AX :車軸
CG :動力伝達機構
CG1 :第一カウンタギヤ
CG2 :第二カウンタギヤ
CG3 :第三カウンタギヤ
CGS :カウンタ軸
DG :ドグクラッチ
GS :ギヤセレクタ
CL1 :第一クラッチ
CM :コンプレッサ
CMC :コンプレッサの回転軸
DF :出力用差動歯車装置
DF1 :ピニオンギヤ
DF2 :サイドギヤ
DF3 :ピニオン回転軸
DF4 :差動キャリヤ
G1 :第一ギヤ
G2 :第二ギヤ
G3 :第三ギヤ
MG1 :第一回転電機
MG2 :第二回転電機
RS1 :第一回転電機のロータ軸(回転軸)
RS2 :第二回転電機のロータ軸(回転軸)
Ro1 :第一回転電機のロータ
Ro2 :第二回転電機のロータ
St1 :第一回転電機のステータ
St2 :第二回転電機のステータ
W :車輪
X1 :軸第一方向
X2 :軸第二方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に駆動連結される出力用差動歯車装置と、エアコンディショナ用のコンプレッサと、を有し、前記出力用差動歯車装置及び前記コンプレッサに伝達する駆動力を回転電機のみにより発生させる電動車両用駆動装置であって、
前記出力用差動歯車装置に駆動連結される第一回転電機と、
前記コンプレッサに駆動連結されると共に、前記出力用差動歯車装置に駆動連結される第二回転電機と、を備え、
前記第一回転電機の回転軸は、前記出力用差動歯車装置の回転軸と同軸上に配置され、
前記第二回転電機の回転軸は、前記第一回転電機の回転軸とは異なる軸上に配置され、
前記第二回転電機は、前記出力用差動歯車装置と前記第一回転電機とのいずれか直径が小さい方と径方向視で重複すると共にいずれか直径が大きい方と径方向視で重複しないように配置され、且つ、前記出力用差動歯車装置と前記第一回転電機とのいずれか直径が大きい方と軸方向視で重複するように配置されている電動車両用駆動装置。
【請求項2】
前記コンプレッサの外径は、前記第二回転電機の外径より小さく、
前記コンプレッサの回転軸は、前記第二回転電機の回転軸と同軸上に配置され、
前記コンプレッサは、前記出力用差動歯車装置と前記第一回転電機とのいずれか直径が大きい方と径方向視で重複するように配置されている請求項1に記載の電動車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第一回転電機及び前記第二回転電機は、動力伝達機構を介して前記出力用差動歯車装置に駆動連結され、
前記動力伝達機構は、前記第一回転電機の回転軸に平行な軸方向における前記第一回転電機と前記出力用差動歯車装置との間であって、前記第二回転電機の回転軸に平行な軸方向における前記第二回転電機と前記コンプレッサとの間に配置されている請求項1又は2に記載の電動車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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