説明

電動雲台装置

【課題】ステッピングモータの位置ずれ対策を施した電動雲台装置を提供する。
【解決手段】1つ以上の軸(例えば、パン軸、チルト軸)について位置の調整が可能な電動雲台装置において、前記1つ以上の軸のうちの少なくとも1つの軸について、当該軸について位置を変化させるステッピングモータ6、7と、前記ステッピングモータ6、7の位置を検出するロータリエンコーダ2、3と、所定の時間毎に定期的に前記ロータリエンコーダ2、3により前記ステッピングモータ6、7の位置を検出して、位置ずれが検出された場合には、前記ステッピングモータ6、7の駆動モードをマイクロステップからフルステップへ変更する制御手段1と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動雲台装置に関し、特に、電動雲台装置を駆動するステッピングモータの位置ずれ対策に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、屋外の監視システムなどで、カメラを任意の方向へ向けるための電動雲台装置(以下、雲台と呼ぶ)が使用されている。近年のズームレンズの高性能化に伴い、パン、チルト軸の静止位置(角度)に高い精度(分解能)が求められるため、ステッピングモータを(特に停止時に)マイクロステップで駆動することが多い(例えば、特許文献2参照。)。
また、雲台では、パン、チルト軸の位置(角度)、或いはそれらにギヤ等で接続されたステッピングモータ軸の位置をロータリエンコーダにより確認し、強風や振動等により位置ずれが発生した時には元の位置に戻す制御や、励磁電流を増やす制御が実行されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−211012号公報
【特許文献2】特開平11−27990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の雲台のステッピングモータでは、停止中は省電力を狙って励磁電流を弱めた状態にされているため、外部からの振動で容易に位置ずれが発生してしまい、元の位置に戻す制御を頻繁に実行しなければならないといった問題があった。特に、マイクロステップ駆動では、2相の電流の比で基本ステップ間を位置決めを行っており、駆動電流の合計量が同じフルステップ駆動(1相励磁又は2相励磁)よりも静止トルクが若干劣るなど、条件によっては位置ずれが発生しやすい。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、ステッピングモータの位置ずれ対策を施した雲台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、1つ以上の軸(例えば、パン軸やチルト軸)について位置の調整が可能な電動雲台装置において、次のような構成とした。
すなわち、前記1つ以上の軸のうちの少なくとも1つの軸について、当該軸について位置を変化させるステッピングモータと、前記ステッピングモータの位置を検出するロータリエンコーダと、(例えば、予め設定された)所定の時間毎に定期的に前記ロータリエンコーダにより前記ステッピングモータの位置を検出して、位置ずれが検出された場合には、前記ステッピングモータの駆動モードをマイクロステップからフルステップへ変更する制御手段と、を備えた。
【0006】
本発明に係る電動雲台装置では、一構成例として、次のような構成とした。
すなわち、前記制御手段は、前記少なくとも1つの軸について、前記所定の時間毎に定期的に前記ロータリエンコーダにより前記ステッピングモータの位置を検出して、前回の位置と今回の位置が一致した場合にはカウント値を1増加させ、前回の位置と今回の位置が不一致であった場合には、前記カウント値が(例えば、予め設定された)所定の範囲内であり且つ前記ステッピングモータが停止しているときには前記ステッピングモータの励磁電流を制御して位置ずれを低減させて前記カウント値を初期化する(例えば、ゼロ(0)にする)一方、他のときには前記カウント値を初期化する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明に係る雲台によると、省電力と高精度を両立させつつ、ステッピングモータの位置ずれを起こりにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例に係る雲台のステッピングモータに関するハードウエアの概略的な構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係るステッピングモータの位置ずれ対策の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る雲台のステッピングモータに関するハードウエアの概略的な構成例を示してある。
本例の雲台は、CPU(Central Processing Unit)1と、パン(水平回転)軸のロータリエンコーダ2と、チルト(垂直回転)軸のロータリエンコーダ3と、パン軸のモータドライバ4と、チルト軸のモータドライバ5、パン軸のステッピングモータ6と、チルト軸のステッピングモータ7を備えている。
【0010】
一般に電動雲台は、カメラを回動可能な2軸で支える機構(広義の雲台)を有しており、各ステッピングモータ6、7は、パン軸、チルト軸にギヤ(図示せず)を介して結合され、カメラの向き(撮像方向)を変化させる機能を有する。
ロータリエンコーダ2、3はそれぞれ、対応する各軸もしくはステッピングモータ6、7の軸に取り付けられ、絶対角度或いは角度変化を検出する機能を有している。
モータドライバ4、5は、マイクロステップ駆動に対応した一般的な駆動回路であり、駆動電流(励磁電流)も変更可能なものである。
CPU1は、撮像方向を指定する外部からの制御コマンド等を受けて、雲台が指定された方向に向くように制御するが、基本的には開ループ制御であり、電源投入時や静止中には、ロータリエンコーダ2、3により検出される絶対位置から本来の位置からのずれを検出し、当該ずれ分だけ逆向きにステッピングモータを駆動して、本来の位置に戻す制御を行なう。ステッピングモータはトルク特性が複雑でサーボ制御にそもそも不向きであり、風圧や振動等の外乱がある中でリアルタイムに安定に位置ずれ補正制御するのは困難なため、位置ずれを戻す動作は所定時間間隔を置いて行なう。
【0011】
図2には、ステッピングモータの位置ずれ対策の処理の手順の一例を示してある。
ここで、本処理は、CPU1による制御によって行われる。また、CPU1は、各ロータリエンコーダ2、3の検出した角度等や後述のカウント値などの情報を一時的に記憶するメモリを有している。なお、カウント値には、比較対象となる最小値(カウント最小値)と最大値(カウント最大値)が設定されており、それらもCPU1のメモリに記憶されている。
【0012】
また、本処理は、パン軸とチルト軸のそれぞれについてその停止中に行われるが、本例では、同様な処理であるため、まとめて説明する。このため、本処理に係るロータリエンコーダ及びステッピングモータは、パン軸についてはロータリエンコーダ2及びステッピングモータ6となり、チルト軸についてはロータリエンコーダ3及びステッピングモータ7となる。
【0013】
CPU1に内蔵されているタイマを使用して、常時周期的にタイマ割り込みを発生する(ステップS1)。なお、カウント値は、最初は、所定の初期値(例えば、ゼロ(0)など)に設定されているとする。
タイマ割り込みが開始すると、CPU1は、前回(前回のタイマ割り込み時)のロータリエンコーダの位置と今回(今回のタイマ割り込み時)のロータリエンコーダの位置が等しいか否かを判定し(ステップS2)、これらが等しいと判定した場合には、カウント値に1を加算して(ステップS3)、タイマ割り込みを終了する(ステップS4)。
【0014】
一方、前記判定において(ステップS2)、前回のロータリエンコーダの位置と今回のロータリエンコーダの位置が等しくないと判定した場合には、CPU1は、カウント最小値とカウント最大値の間にカウント値があり且つモータが停止中であるか否か、を判定する(ステップS5)。この判定において、CPU1は、そうであると判定した場合には、揺れ(位置ずれ)が有りとみなして(ステップS6)、駆動モードをフルステップ(2相励磁)に変更し駆動電流を最大(最大定格電流)にする一方(ステップS7)、そうではないと判定した場合には、揺れ(位置ずれ)が無しとみなして(ステップS8)、駆動モード等を通常(ステップS7の変更前)に戻す制御をする(ステップS9)。ステップS7又はS9のいずれの場合においても、その後、カウント値をゼロ(0)に設定(リセット)して(ステップS10)、タイマ割り込みを終了する(ステップS4)。
【0015】
ここで、上記ステップS2の比較判断は、脱調の有無の検出を意味し、ロータリエンコーダの検出分解能がステッピングモータのそれより高い場合は、ステッピングモータの分解能と同程度で比較を行なうものとする。
【0016】
また上記ステップS7における2相励磁とは、隣り合う2相の巻き線の両方に最大の励磁電流を流す駆動モードであり、分解能はステッピングモータ固有の基本ステップ角と同じになってしまうが、通常の駆動方法の中では最大の静止トルクが得られるものである。本例では静止時に揺れを検知したときに、本モードを用い、それ以外のとき(ステップS9で変更が解除されたとき)は、フルステップ駆動、ハーフステップ駆動、マイクロステップ駆動等を(速度に応じて共振を避けるように)適宜使い分ける。
【0017】
また、上記ステップS5において、カウント最小値は、ステッピングモータの駆動停止直後のオーバシュート等を位置ずれと検出しないための保護期間を意味し、カウント最大値は、停止からだいぶ時間が経過してから発生した(つまり単発的で再発の可能性が低い)位置ずれに対してまで駆動モードを変更しないようにするためのものである。
【0018】
以上のように、本例の雲台では、パン軸やチルト軸のステッピングモータ6、7について、各軸のロータリエンコーダ2、3で揺れを検出して、揺れがある場合には、駆動モードを変更して、位置ずれが再発しないようにすることにより、元の位置に戻す制御の実行を低減することができる。また、位置ずれが生じないときは本来の位置決め分解能を発揮でき、位置ずれが生じやすい状態では、最適モードの選択により効果的に位置ずれを防ぐことができる。更に本例の制御は、従来の停止中省電力モードと組み合わせることもでき、省電力性を高めることができる。
【符号の説明】
【0019】
1・・CPU、 2・・パン軸ロータリエンコーダ、 3・・チルト軸ロータリエンコーダ、 4・・パン軸モータドライバ、 5・・チルト軸モータドライバ、 6・・パン軸ステッピングモータ、 7・・チルト軸ステッピングモータ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の軸について位置の調整が可能な電動雲台装置において、
前記1つ以上の軸のうちの少なくとも1つの軸について、
当該軸について位置を変化させるステッピングモータと、
前記ステッピングモータの位置を検出するロータリエンコーダと、
所定の時間毎に定期的に前記ロータリエンコーダにより前記ステッピングモータの位置を検出して、位置ずれが検出された場合には、前記ステッピングモータの駆動モードをマイクロステップからフルステップへ変更する制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする電動雲台装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動雲台装置において、
前記制御手段は、前記少なくとも1つの軸について、前記所定の時間毎に定期的に前記ロータリエンコーダにより前記ステッピングモータの位置を検出して、前回の位置と今回の位置が一致した場合にはカウント値を1増加させ、前回の位置と今回の位置が不一致であった場合には、前記カウント値が所定の範囲内であり且つ前記ステッピングモータが停止しているときには前記ステッピングモータの励磁電流を制御して位置ずれを低減させて前記カウント値を初期化する一方、他のときには前記カウント値を初期化する、
ことを特徴とする電動雲台装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−276894(P2010−276894A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129863(P2009−129863)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】