説明

電場増強度の絶対値の測定方法および電場増強度の絶対値の測定装置、および、測定部材の評価方法および測定部材の評価装置、ならびに、アナライトの検出方法およびアナライトの検出装置

【課題】真の測定したい金属薄膜の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができ、また、金属薄膜の厚さ、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの高さ位置に対応した、電場増強度の3次元的な分布を得ることができ、正確な電場増強度を測定(推定)する。
【解決手段】光源より第1の励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させるとともに、誘電体部材を介して、金属薄膜に向かって、第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、金属薄膜表面に伝播光を発生させ、表面プラズモン光と前記伝播光とによる干渉縞を発生させ、第2の励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材を用いて、誘電体部材の下方において、誘電体部材の外側から、誘電体部材を介して、金属薄膜に向かって、光源より励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させて、金属薄膜上の電場を増強して、表面プラズモン光の電場増強効果を得る際に、その電場増強度の絶対値を測定するための電場増強度の絶対値の測定方法および電場増強度の絶対値の測定装置に関する。
【0002】
また、本発明は、このような電場増強度の絶対値の測定方法および電場増強度の絶対値の測定装置を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、測定部材の評価を行うことを特徴とする測定部材の評価方法および測定部材の評価装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は、このような電場増強度の絶対値の測定方法および電場増強度の絶対値の測定装置を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの検出を行うアナライトの検出方法およびアナライトの検出装置に関する。
【背景技術】
【0004】
従来より、極微少な物質の検出を行う場合において、物質の物理的現象を応用することでこのような物質の検出を可能とした様々な検体検出装置が用いられている。
このような検体検出装置の一つとしては、ナノメートルレベルなどの微細領域中で電子と光とが共鳴することにより、高い光出力を得る現象(表面プラズモン共鳴(SPR;Surface Plasmon Resonance)現象)を応用し、例えば、生体内の極微少なアナライトの検出を行うようにした表面プラズモン共鳴装置(以下、「SPR装置」と言う)が挙げられる。
【0005】
また、表面プラズモン共鳴(SPR)現象を応用した表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS;Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy)の原理に基づき、SPR装置よりもさらに高精度にアナライト検出を行えるようにした表面プラズモン増強蛍光分光測定装置(以下、「SPFS装置」と言う)も、このような検体検出装置の一つである。
【0006】
この表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)は、光源より照射したレーザー光などの励起光が、金属薄膜表面で全反射減衰(ATR;attenuated total reflectance)する条件において、金属薄膜表面に表面プラズモン光(粗密波)を発生させることによって、光源より照射した励起光が有するフォトン量を数十倍〜数百倍に増やして、表面プラズモン光の電場増強効果を得るようになっている。
【0007】
そして、この電場増強効果により、金属薄膜近傍の金属薄膜近傍に捕捉したアナライトと結合(標識)した蛍光物質を効率良く励起させ、この蛍光を観察することによって、極微量、極低濃度のアナライトを検出する方法である。
【0008】
ところで、このような表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を知ることは、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)を用いた、血液検査などの臨床試験のような、高精度の検出が要求される分野においては、電場増強度の絶対値を用いて、検出データを補正することにより、アナライトの検出の測定精度を向上するためには重要である。
【0009】
しかしながら、この増強電場は、非伝播光であるため、直接観察することは不可能であり、電場増強の可視化の検討が従来よりなされている。
例えば、非特許文献1(「Surface plasmons at single nanoholes in Au films」, Yin et al., Appl. Phys. Lett., vol. 85, No. 3, 19 July 2004, pp. 468-469)では、入射させた励起光によって発生したプラズモン光と励起光との干渉による干渉縞を、近接場プローブを用いて観察して、電場増強度を測定する試みがなされている。
【0010】
すなわち、この非特許文献1の方法では、図17に示したように、誘電体100の上面に金属薄膜(金膜)102を形成するとともに、この中央部分にピンホール104を形成している。そして、誘電体100の真下から、誘電体100を介して、誘電体100の上面に形成した金属薄膜(金膜)102に、励起光106を照射している。
【0011】
そして、この入射させた励起光106によって、ピンホール104のエッジ部分104aで発生したプラズモン光101と励起光106との干渉による干渉縞を、ピンホール104の直上に配置した近接場プローブ110によって観察している。
【0012】
その結果、図18に示したように、同心円状の干渉縞が観察され、これにより、電場増強度を測定(推定)するようになっている。
また、非特許文献2(「Local excitation of surface plasmon polaritons at discontinuities of a metal film: Theoretical analysis and optical near-field measurements」, L Salomon et al., PHYSICAL REVIEW B. vol. B, 125409)では、入射させた励起光によって発生したプラズモン光と、入射させた励起光との干渉を近接場プローブを用いて観察して、電場増強度を測定する試みがなされている。
【0013】
すなわち、この非特許文献2の方法では、図19に示したように、誘電体200の上面に金属薄膜(金膜)202を形成するとともに、誘電体200の斜め下方から、誘電体200を介して、誘電体200の上面に形成した金属薄膜(金膜)202に、励起光206を照射している。
【0014】
これにより、金属薄膜(金膜)202のエッジ部分204において、プラズモン光201を発生させて、プラズモン光と励起光206との干渉を、近接場プローブ210によって観察している。
【0015】
その結果、図20のグラフに示したように、エッジ部分204からの距離に応じた電場増強度の分布を得るようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】「Surface plasmons at single nanoholes in Au films」, Yin et al., Appl. Phys. Lett., vol. 85, No. 3, 19 July 2004, pp. 468-469
【非特許文献2】「Local excitation of surface plasmon polaritons at discontinuities of a metal film: Theoretical analysis and optical near-field measurements」, L Salomon et al., PHYSICAL REVIEW B. vol. B, 125409
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、このような従来の電場増強度を測定する方法では、以下のような問題がある。
すなわち、非特許文献1の電場増強度を測定する方法では、図17に示したように、誘電体100の斜め下方から、入射角度を変えて、誘電体100を介して、誘電体100の上面に形成した金属薄膜(金膜)102に、励起光108を照射した場合には、例えば、図21に示したように、干渉縞が同心円状とはならず、これにより、正確な電場増強度を測定(推定)することが困難な場合が生じてしまうことになる。
【0018】
また、非特許文献1の電場増強度を測定する方法では、ピンホール104のエッジ部分104aで発生したプラズモン光101と励起光106との干渉による干渉縞であるので、真の測定したい金属薄膜(金膜)102の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができない。
【0019】
さらに、ピンホール104のエッジ部分104aの形状の違いによって、電場増強度が変化してしまうので、電場増強度の絶対値の測定は、現実的に困難である。
また、金属薄膜(金膜)102にピンホール104を設けなければならず、例えば、マイクロチップなどの測定部材として使用する場合には、製造工程が煩雑となり、コストも高くつくことにもなる。
【0020】
一方、非特許文献2の電場増強度を測定する方法では、エッジ部分204からの距離に応じた電場増強度の分布を得ることはできるが、電場増強度の絶対値の測定することは、現実的に困難である。
【0021】
また、非特許文献2の電場増強度を測定する方法でも、金属薄膜(金膜)202のエッジ部分204で発生したプラズモン光201と励起光206との干渉による測定であるので、真の測定したい金属薄膜(金膜)202の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができない。
【0022】
さらに、金属薄膜(金膜)202のエッジ部分204の形状の違いによって、電場増強度が変化してしまうので、電場増強度の絶対値の測定は、現実的に困難である。
また、金属薄膜(金膜)202のエッジ部分204を設けなければならず、例えば、マイクロチップなどの測定部材として使用する場合には、製造工程が煩雑となり、コストも高くつくことにもなる。
【0023】
また、いずれの電場増強度を測定する方法においても、金属薄膜の厚さの影響、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの高さ位置に対応した、電場増強度の3次元的な分布を得ることは到底不可能である。
【0024】
本発明は、このような現状に鑑み、従来のように、金属薄膜にピンホールやエッジを設ける必要がなく、真の測定したい金属薄膜の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができ、また、金属薄膜の厚さ、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの高さ位置に対応した、電場増強度の3次元的な分布を得ることができ、正確な電場増強度を測定(推定)することが可能な、電場増強度の絶対値の測定方法および電場増強度の絶対値の測定装置を提供することを目的とする。
【0025】
また、本発明は、表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を正確に知ることができ、これにより、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップなどの測定部材として使用する場合に、金属薄膜の形成の状態をチェックし、選別することが可能な、工程検査、管理、品質保証用として使用できる測定部材の評価方法および測定部材の評価装置を提供すること目的とする。
【0026】
さらに、本発明は、表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を正確に知ることができ、これにより、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップなどの測定部材として使用する場合に、基板毎の電場増強度把握することで、後工程である検出工程における検出シグナル測定値を補正して、測定精度を向上することが可能なアナライトの検出方法およびアナライトの検出装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法は、
誘電体部材を介して、誘電体部材上に形成された金属薄膜に向かって、光源より励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させて、金属薄膜上の電場を増強する際に、電場増強度の絶対値を測定する測定方法であって、
前記金属薄膜表面の所定の高さ位置に、電場増強度測定用部材を配置して、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記光源より第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させるとともに、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に伝播光を発生させ、
前記表面プラズモン光と前記伝播光とによる干渉縞を発生させ、
前記第2の励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定装置は、
誘電体部材を介して、誘電体部材上に形成された金属薄膜に向かって、光源より励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させて、金属薄膜上の電場を増強する際に、電場増強度の絶対値を測定する測定装置であって、
前記金属薄膜表面の所定の高さ位置に配置した電場増強度測定用部材と、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記光源より第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させる第1の励起光発生装置と、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に伝播光を発生させる第2の励起光発生装置と、
前記表面プラズモン光と前記伝播光とによる干渉縞を発生した際に、
前記第2の励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定する電場増強度換算装置とを備えることを特徴とする。
【0029】
このように構成することによって、誘電体部材を介して、誘電体部材上に形成された金属薄膜に向かって、光源より第1の励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させるとともに、誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、金属薄膜表面に伝播光を発生させさせることができる。
【0030】
そして、表面プラズモン光と伝播光とによる、表面プラズモン光が走る方向である金属薄膜の平面に平行な方向の波数成分が異なることに起因して、干渉光の干渉縞が発生する。
【0031】
この際、第2の励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することができる。
【0032】
従って、従来のように、金属薄膜にピンホールやエッジを設ける必要がなく、真の測定したい金属薄膜の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができ、また、金属薄膜の厚さ、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの高さ位置に対応した、電場増強度の3次元的な分布を得ることができ、正確な電場増強度を測定(推定)することができる。
【0033】
しかも、第2の励起光を、第1の励起光と同じように、誘電体部材の下方において、誘電体部材を介して同じ方向から照射するので、下方に励起光照射装置を配置して集約できるので、測定装置をコンパクト化することができる。
【0034】
また、第2の励起光を、第1の励起光と同じように、誘電体部材の下方において、誘電体部材を介して同じ方向から照射するので、レーザー光の可干渉距離が短くなり、光路長内でレーザー光を重ね合わせて干渉して干渉縞を発生することができ、干渉性が向上して、より正確な電場増強度を測定(推定)することができる。
【0035】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法は、前記第2の励起光が、前記第1の励起光と同一の光源から分光した励起光であることを特徴とする。
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定装置は、前記第2の励起光発生装置が、前記第2の励起光を、前記第1の励起光と同一の光源から分光する分光手段を備えることを特徴とする。
【0036】
このように構成することによって、例えば、ハーフミラーなどの分光手段を備えるだけで良いので、装置のコンパクト化を図ることができる。
しかも、第2の励起光を、第1の励起光と同一の光源から分光するので、第1の励起光と正確に、同じ位相の第2の励起光を誘電体部材の上面に形成された金属薄膜に向かって、照射することができ、正確な電場増強度を測定(推定)することができる。
【0037】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法は、前記第2の励起光が、前記第1の励起光の光源とは別の光源に由来する励起光であることを特徴とする。
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定装置は、前記第2の励起光発生装置が、前記第2の励起光を、前記第1の励起光の光源とは別の光源から発生させるように構成されていることを特徴とする。
【0038】
このように構成することによって、第2の励起光が、第1の励起光の光源とは別の光源に由来する第2の励起光とすることができ、容易に第2の励起光の光量を変えることができ、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0039】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法は、前記電場増強度測定用部材が、蛍光物質であり、
前記蛍光物質を励起させ、これにより増強された蛍光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することを特徴とする。
【0040】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定装置は、前記電場増強度測定用部材が、蛍光物質であり、
前記蛍光物質を励起させ、これにより増強された蛍光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するように構成されていることを特徴とする。
【0041】
このように構成することによって、電場増強度測定用部材として、蛍光物質を用いて、例えば、蛍光物質を、塗膜にしてその高さ位置を変えたり、DNAと蛍光物質を結合(標識)させて単分子層を形成して、タンパク分子の大きさを変えることにより高さ位置を変えるなどして、所定の高さ位置で、蛍光物質を励起させることができ、これにより、増強された蛍光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0042】
従って、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップの基板として、測定部材を用いる際に、実際に近い状態の電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0043】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法は、前記電場増強度測定用部材が、近接場プローブであって、
前記近接場プローブの所定高さ位置での干渉光強度を測定して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することを特徴とする。
【0044】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定装置は、前記電場増強度測定用部材が、近接場プローブであって、
前記近接場プローブの所定高さ位置での干渉光強度を測定して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するように構成されていることを特徴とする。
【0045】
このように構成することによって、電場増強度測定用部材として、近接場プローブを用いて、例えば、近接場プローブの先端に蛍光物質を付着して、近接場プローブの高さ位置を変えることにより、所定の高さ位置で、蛍光物質を励起させることができ、これにより、増強された蛍光を近接場プローブにて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0046】
従って、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップの基板として、測定部材を用いる際に、実際に近い状態の電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0047】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法は、前記電場増強度測定用部材が、光散乱物質であり、
前記光散乱物質を励起させ、これにより増強され散乱光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することを特徴とする。
【0048】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定装置は、前記電場増強度測定用部材が、光散乱物質であり、
前記光散乱物質を励起させ、これにより増強され散乱光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するように構成されていることを特徴とする。
【0049】
このように構成することによって、電場増強度測定用部材として、光散乱物質を用いて、例えば、光散乱物質を、金コロイド、酸カルシウム粉末などの微粒子を用いて、塗膜にしてその高さ位置を変えたり、DNAと金コロイド、酸カルシウム粉末などの微粒子を結合(標識)させて単分子層を形成して、タンパク分子の大きさを変えることにより高さ位置を変えるなどして、所定の高さ位置で、光散乱物質を励起させることができ、これにより、増強された散乱光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0050】
従って、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップの基板として、測定部材を用いる際に、実際に近い状態の電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0051】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法は、前記第2の励起光の位相、前記電場増強度測定用部材の高さ位置の少なくとも一方を変更して測定することによって、2次元的または3次元的な電場増強度の絶対値のデータを得ることを特徴とする。
【0052】
また、本発明の電場増強度の絶対値の測定装置は、前記第2の励起光の位相、前記電場増強度測定用部材の高さ位置の少なくとも一方を変更して測定することによって、2次元的または3次元的な電場増強度の絶対値のデータを得るように構成されていることを特徴とする。
【0053】
このように構成することによって、金属薄膜の厚さの影響、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの高さ位置に対応した、電場増強度の2次元的、3次元的な全体的な分布を得ることができ、正確な電場増強度を測定(推定)することがきる。
【0054】
また、本発明の測定部材の評価方法は、前述のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定方法を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、
誘電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材の評価を行うことを特徴とする。
【0055】
また、本発明の測定部材の評価装置は、前述のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定装置を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、
誘電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材の評価を行うように構成されていることを特徴とする。
【0056】
このように構成することによって、表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を正確に知ることができ、これにより、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップなどの測定部材として使用する場合に、金属薄膜の形成の状態をチェックし、選別することが可能な、工程検査、管理、品質保証用の定部材の評価方法および測定部材の評価装置として使用できる。
【0057】
また、本発明のアナライトの検出方法は、電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材を用いて、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの検出を行う際に、
前述のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定方法を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、検出データを補正してアナライトの検出を行うことを特徴とする。
【0058】
また、本発明のアナライトの検出装置は、誘電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材を用いて、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの検出を行う際に、
前述のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定装置を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、検出データを補正してアナライトの検出を行うように構成されていることを特徴とする。
【0059】
このように構成することによって、表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を正確に知ることができ、これにより、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップなどの測定部材として使用する場合に、基板毎の電場増強度把握することで、後工程である検出工程における検出シグナル測定値を補正して、測定精度を向上することが可能である。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、従来のように、金属薄膜にピンホールやエッジを設ける必要がなく、真の測定したい金属薄膜の平面上(平面方向)の電場増強度を測定することができ、また、金属薄膜の厚さ、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの高さ位置に対応した、電場増強度の3次元的な分布を得ることができ、正確な電場増強度を測定(推定)することができる。
【0061】
従って、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップの基板として、測定部材を用いる際に、実際に近い状態の電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0062】
しかも、第2の励起光を、第1の励起光と同じように、誘電体部材の下方において、誘電体部材を介して同じ方向から照射するので、下方に励起光照射装置を配置して集約できるので、測定装置をコンパクト化することができる。
【0063】
また、第2の励起光を、第1の励起光と同じように、誘電体部材の下方において、誘電体部材を介して同じ方向から照射するので、レーザー光の可干渉距離が短くなり、光路長内でレーザー光を重ね合わせて干渉して干渉縞を発生することができ、干渉性が向上して、より確な電場増強度を測定(推定)することができる。
【0064】
さらに、本発明によれば、金属薄膜の厚さの影響、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの高さ位置に対応した、電場増強度の2次元的または3次元的な全体的な分布を得ることができ、正確な電場増強度を測定(推定)することがきる。
【0065】
また、本発明によれば、表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を正確に知ることができ、これにより、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップなどの測定部材として使用する場合に、金属薄膜の形成の状態をチェックし、選別することが可能な、工程検査、管理、品質保証用の定部材の評価方法および測定部材の評価装置として使用できる。
【0066】
さらに、本発明によれば、表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を正確に知ることができ、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)を用いた、血液検査などの臨床試験のような、高精度の検出が要求される分野においては、電場増強度の絶対値を用いて、検出データを補正することにより、アナライトの検出の測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法を説明する電場増強度の絶対値の測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図2】図2は、図1の部分拡大図である。
【図3】図3は、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法の概略を説明するブロック図である。
【図4】図4は、発光干渉のパターンを示すグラフであり、金属薄膜14の表面14aの第2の下側励起光34の照射ビームエリア内の距離と発光強度との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、干渉縞のコントラストが最大となる時の発光干渉のパターンを示すグラフであり、金属薄膜14の表面14aの第2の下側励起光34の照射ビームエリア内の距離と発光強度との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、干渉縞コントラストを示すグラフであり、横軸は、第2の下側励起光量に対する第1の下側励起光量(電場振幅)の倍率を示し、縦軸は、干渉縞コントラストを示すグラフである。
【図7】図7は、第2の下側励起光量/第1の下側励起光量=0.5の場合の干渉光パターンを示すグラフである。
【図8】図8は、第2の下側励起光量/第1の下側励起光量=1の場合の干渉光パターンを示すグラフである。
【図9】図9は、電場増強度測定用部材の高さ位置と電場増強度の関係を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法を説明する電場増強度の絶対値の測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図11】図11は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法を説明する電場増強度の絶対値の測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図12】図12は、図11の部分拡大図である。
【図13】図13は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法の概略を説明するブロック図である。
【図14】図14は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法を説明する電場増強度の絶対値の測定装置の概略を模式的に示す概略図である。
【図15】図15は、図14の部分拡大図である。
【図16】図16は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法の概略を説明するブロック図である。
【図17】図17は、従来の電場増強度を測定する方法を説明する概略図である。
【図18】図18は、図17の従来の電場増強度を測定する方法において観察される干渉縞を模式的に示した概略図である。
【図19】図19は、従来の電場増強度を測定する方法を説明する概略図である。
【図20】図20は、図19の従来の電場増強度を測定する方法による電場増強度の分布を示すグラフである。
【図21】図21は、図17の従来の電場増強度を測定する方法において観察される干渉縞を模式的に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0069】
1.電場増強度測定用部材として、蛍光物質を用いた実施例
図1は、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法を説明する電場増強度の絶対値の測定装置の概略を模式的に示す概略図、図2は、図1の部分拡大図、図3は、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法の概略を説明するブロック図である。
【0070】
1−1.電場増強度の絶対値の測定装置の構成
図1において、符号10は、全体で本発明の電場増強度の絶対値の測定装置を示している。
図1、図2に示したように、電場増強度の絶対値の測定装置10は、略三角形のプリズム形状の誘電体部材12を備えており、この誘電体部材12の水平な上面12aに、金属薄膜14が形成されている。そして、金属薄膜14の上面に、電場増強度測定用部材として、蛍光物質層16が形成されている。
【0071】
そして、これらの誘電体部材12と、金属薄膜14と、蛍光物質層16とで、測定部材18が構成されている。
また、誘電体部材12の下方の一方の側面12bの側には、光源20が配置されており、
この光源20からの光22の一部を透過して、残りの光を反射させる、例えば、ハーフミラーから構成される分光器24が設けられている。
【0072】
この分光器24を透過した第1の励起光である第1の下側励起光26は、減光(ND)フィルター28を介して、その光量が一定量となるように調整された後、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射して、誘電体部材12を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、一定角度(共鳴角度)α1で照射されるようになっている。
【0073】
この金属薄膜14に照射された第1の下側励起光26により、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(粗密波)30が発生することになる。
【0074】
一方、光源20からの光22のうち、分光器24で分光された残りの光32は、ミラー37で反射され、可変減光(ND)フィルター35、位相シフト板36を介して、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射して、誘電体部材12を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14の表面14aに向かって、一定角度α2(臨界角以下の角度)で照射されるようになっている。
【0075】
すなわち、可変減光(ND)フィルター35、位相シフト板36を介して、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射した光は、第2の励起光である第2の下側励起光34として、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aに、一定角度α2で照射されるようになっている。
【0076】
また、誘電体部材12の下方の他方の側面12cの側には、第1の下側励起光26が、金属薄膜14によって反射された金属薄膜反射光38を受光する受光手段40が備えられている。
【0077】
さらに、測定部材18の上方には、後述するように、蛍光物質層16で励起された蛍光による干渉縞のコントラストを検出するために、蛍光物質層16からの蛍光の発光強度を検出する、例えば、CCDなどの光検出手段42が備えられている。
【0078】
なお、光源20、分光器24、減光(ND)フィルター28によって、第1の励起光発生装置として、第1の下側励起光発生装置46が構成されるとともに、可変減光(ND)フィルター35、位相シフト板36、ミラー37で、第2の励起光発生装置として、第2の下側励起光発生装置48が構成されている。
【0079】
さらに、上記の光検出手段42は、コンピュータのCPUなどの電場増強度換算装置50に接続されており、後述するように、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定する演算処理が行われるようになっている。
【0080】
この場合、光源20から照射される励起光としては、特に限定されるものではないが、レーザー光が好ましく、波長200〜900nm、0.001〜1,000mWのLDレーザー、または、波長230〜800nm、0.01〜100mWの半導体レーザーが好適である。
【0081】
また、誘電体部材12としては、特に限定されるものではないが、光学的に透明な、例えば、ガラス、セラミックスなどの各種の無機物、天然ポリマー,合成ポリマーを用いることができ、化学的安定性,製造安定性、光学的透明性の観点から、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)を含むのが好ましい。
【0082】
また、この実施例では、略三角形のプリズム形状の誘電体部材12を用いたが、半円形状、楕円形形状にするなど誘電体部材12の形状は、適宜変更可能である。
また、金属薄膜14の材質としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、金、銀、アルミニウム、銅、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなり、より好ましくは、金からなり、さらに、これら金属の合金から構成しても良い。
【0083】
すなわち、このような金属は、酸化に対して安定であり、かつ、後述するように、表面プラズモン光(粗密波)による電場増強が大きくなるので、金属薄膜14として好適である。
【0084】
また、金属薄膜14の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スパッタリング法,蒸着法(抵抗加熱蒸着法,電子線蒸着法など)、電解メッキ、無電解メッキ法などが挙げられる。好ましくは、スパッタリング法、蒸着法を使用するのが、薄膜形成条件の調整が容易であるので望ましい。
【0085】
さらに、金属薄膜14の厚さとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、金:5〜500nm、銀:5〜500nm、アルミニウム:5〜500nm、銅:5〜500nm、白金:5〜500nm、および、それらの合金:5〜500nmの範囲内であるのが望ましい。
【0086】
なお、電場増強効果の観点からは、より好ましくは、金:20〜70nm、銀:20〜70nm、アルミニウム:10〜50nm、銅:20〜70nm、白金:20〜70nm、および、それらの合金:10〜70nmの範囲内であるのが望ましい。
【0087】
金属薄膜14の厚さが上記範囲内であれば、表面プラズモン光(粗密波)が発生し易く好適である。また、このような厚さを有する金属薄膜14であれば、大きさ(縦×横)の寸法、形状は、特に限定されない。
【0088】
一方、蛍光物質層16を構成する蛍光物質としては、所定の励起光を照射するか、または電界効果を利用することで励起し、蛍光を発する物質であれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「蛍光」とは、燐光など各種の発光も含まれる。
【0089】
このような蛍光物質を単独で、または、基材中に含ませた状態で、金属薄膜14の上面に、蛍光物質層16を所定の厚さに形成されている。
この場合、金属薄膜14の上面に、蛍光物質層16を所定の厚さに形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、印刷、スピンコート、ディッピング、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装などの公知の方法を用いることができる。
【0090】
1−2.電場増強度の絶対値の測定方法について
このように構成される本発明の電場増強度の絶対値の測定装置10を用いた、電場増強度の絶対値の測定方法について、以下に説明する。
【0091】
先ず、光源20から、光22を照射して分光器24を透過した第1の励起光である第1の下側励起光26を、減光(ND)フィルター28を介して、その光量が一定量となるように調整された後、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射させる。そして、誘電体部材12を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、一定角度の入射角(共鳴角度)α1で照射される。
【0092】
これにより、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(粗密波)30が発生する。
なお、この場合、一定角度の入射角(共鳴角度)α1を決定するには、以下の方法を用いれば良い。
【0093】
すなわち、金属薄膜14上に表面プラズモン光(粗密波)30が生ずる際には、第1の下側励起光26と金属薄膜14中の電子振動とがカップリングし、金属薄膜反射光38のシグナルが変化(光量が減少)することとなるため、受光手段40で受光される金属薄膜反射光38のシグナルが変化(光量が減少)する地点を見つければ良い。
【0094】
一方、光源20からの光22のうち、分光器24で分光された残りの光32は、所定の角度で配置されたミラー37で反射され、可変減光(ND)フィルター35、位相シフト板36を介して、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射して、誘電体部材12を介して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14の表面14aに向かって、一定角度α2(臨界角以下の角度)で照射されるようになっている。
【0095】
すなわち、可変減光(ND)フィルター35、位相シフト板36を介して、誘電体部材12の外側下方から、誘電体部材12の側面12bに入射した光は、第2の下側励起光34として、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aに、一定角度α2で別の第2の励起光として照射されるようになっている。
【0096】
なお、この場合、第2の下側励起光34は、第1の下側励起光26と同じ位相の第2の下側励起光34を、金属薄膜14の表面14aに照射するようになっている。
これにより、図2の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおける電場増強度測定用部材の所定の高さ位置において第2の光として伝播光44を発生させるようになっている。
【0097】
なお、この場合、第2の下側励起光34の位相が、第1の下側励起光26の位相と同じ位相となるように、位相シフト板36を調整するようになっている。
または、さらに、位相シフト板36を光軸と直交する方向に移動することで、ある測定点1箇所での干渉縞の明暗の変化をみることができる。
【0098】
なお、この一定角度α2の角度は、金属薄膜14の表面14aにおける電場増強度測定用部材の所定の高さ位置において伝播光44を発生させる臨界角度以下の角度であればよく、特に限定されるものではない。
【0099】
そして、図2の拡大図に示したように、第2の下側励起光34による伝播光44と表面プラズモン光30の、表面プラズモン光30が走る方向である金属薄膜14の平面14aに平行な方向の波数成分が異なることに起因して、干渉光の干渉縞を発生させる。
【0100】
ところで、この干渉縞は、近接場光なので、そのままでは直接見れないものである。このため、本願発明では、金属薄膜14の上面に、電場増強度測定用部材として、蛍光物質層16が形成されている。
【0101】
すなわち、第2の下側励起光34による伝播光44と、第1の下側励起光26による表面プラズモン光(粗密波)30による干渉縞(干渉光)によって、金属薄膜14上の蛍光物質層16の蛍光物質が効率良く励起されることになる。
【0102】
この原理を用いて、第2の下側励起光34の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、電場増強度測定用部材であるの蛍光物質層16の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するようになっている。
【0103】
具体的には、可変減光(ND)フィルター35によって、第2の下側励起光34の光量を変えることによって、金属薄膜14上の蛍光物質層16による蛍光の発光強度を、例えば、CCDなどの光検出手段42によって検出する。
【0104】
この光検出手段42によって検出された蛍光発光干渉パターンは、図4のグラフと図5のグラフに示したようになる。
なお、図4、図5のグラフにおいて、縦軸は、蛍光物質層16による蛍光の発光強度を示し、横軸は、金属薄膜14の表面14aの第2の下側励起光34の照射ビームエリア内の距離を示している。
【0105】
そして、図5のグラフのように、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量を、表面プラズモン光30の光量である(第2の下側励起光34の光量=表面プラズモン光30の光量)として、この時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、蛍光物質層16の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するようになっている。
【0106】
なお、図4のグラフの場合には、図5のグラフよりも干渉縞のコントラストが小さいので、(第2の下側励起光34の光量>表面プラズモン光30の光量、または、第2の下側励起光34の光量<表面プラズモン光30の光量)の場合を示していることになる。
【0107】
そして、図5のグラフから、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、蛍光物質層16の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定する方法は、例えば、以下のようになる。
【0108】
すなわち、干渉点が金属薄膜14の表面14aの位置にある場合(干渉点高さZ=0μm)には、第2の下側励起光34による伝播光44と、第1の下側励起光26による表面プラズモン光(粗密波)30による干渉縞(干渉光)の2つのビームの干渉縞である。
【0109】
但し、金属薄膜表面では、一般に金属消光があるので、この消光分を加味した電場増強度を推定することになる。
この場合、干渉縞のコントラストが最も大きい時の、第2の下側励起光34の光量と第1の下側励起光26の光量の比から、表面プラズモン光30の電場増強度を推定するための換算係数を周知の波動方程式などを用いて求め、電場増強度を推定する。
【0110】
すなわち、図7、図8のグラフは、上記計算により求めた結果を規格化したものであり、図7のグラフは、第2の下側励起光量/第1の下側励起光量=0.5の場合の干渉光パターンを示しており、この場合は、干渉縞のコントラスト≒0.8であり、図8のグラフは、第2の下側励起光量/第1の下側励起光量=1の場合の干渉光パターンを示しており、この場合は、干渉縞のコントラスト=1である。
【0111】
従って、具体的には、図6のグラフに示したように、干渉縞のコントラストが最大になる時の第2の下側励起光34と第1の下側励起光26の電場(振幅)比率は、換算係数K=1倍となる。但し、第2の下側励起光34は金属薄膜を透過するので、干渉点での光量は金属薄膜の透過率T(%)が含まれているため、その補正((100/T)2)が必要になる。
【0112】
従って、表面プラズモン電場増強度(エネルギー強度)
=K2×(干渉縞コントラストMAX時の第2の下側励起光量/(100/T)2)/第1の下側励起光量
=(干渉縞コントラストMAX時の第2の下側励起光量/(100/T)2)/第1の下側励起光量
となる。
【0113】
この計算式によって、蛍光物質層16の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定すればよい。
なお、図6のグラフは、干渉縞コントラストを示すグラフであり、横軸は、第2の下側励起光量に対する第1の下側励起光量(電場振幅)の倍率を示し、縦軸は、干渉縞コントラストを示すグラフである。
【0114】
また、図6〜図8のグラフ中、θ1は、第2の下側励起光34と高さ方向の垂線のなす角度、θ2は、第1の下側励起光26と高さ方向の垂線のなす角度、n1は、誘電体部材12(この例では、ガラス)の屈折率、n2は、空気などの媒体(この例では:水)の屈折率を示している。
【0115】
以上の電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定する処理は、光検出手段42からの検出データに基づいて、光検出手段42に接続された、コンピュータのCPUなどの電場増強度換算装置50において、所定のプログラムに基づいて演算処理が行われるようになっている。
【0116】
なお、上記の平面上に多数の蛍光体が配置された場合には、励起光と表面プラズモン光の干渉光には、ターゲットの蛍光体からの光だけでなく、周辺にある他の蛍光体からの蛍光が考えられる。
【0117】
しかしながら、この場合には、干渉縞コントラストが最も大きくなる光量比は変化しないので、特に問題は生じない。
また、この実施例では、第2の下側励起光34は、第1の下側励起光26と同じ位相の第2の下側励起光34を、金属薄膜14の表面14aに照射したが、位相シフト板36によって、第2の下側励起光34は、第1の下側励起光26と異なる位相の第2の下側励起光34を、金属薄膜14の表面14aに照射することによって、電場増強度の電場増強度測定用部材の水平位置(金属薄膜14の表面14aと平行な方向)における2次元的な分布を得ることができる。
【0118】
さらに、電場増強度測定用部材の高さ位置、すなわち、蛍光物質層16の膜厚を変更することによって、図9のグラフに示したように、電場増強度測定用部材の高さ位置に対応する電場増強度の2次元的な分布を得ることができる。
【0119】
さらには、上記の組み合わせによって、電場増強度の電場増強度測定用部材の水平位置(金属薄膜14の表面14aと平行な方向)における分布と、電場増強度測定用部材の高さ位置に対応する電場増強度の分布と組み合わさった、電場増強度の3次元的な全体的な分布を得ることができる。
【0120】
この場合、図示しないが、電場増強度測定用部材の高さ位置、すなわち、蛍光物質層16の膜厚を変更する場合に、複数の異なる蛍光物質層16の膜厚を有する測定部材18を用意して測定する他、同一の測定部材18の金属薄膜14の表面14a方向の蛍光物質層16の膜厚を段階的に変えて同時に測定することも可能である。
【0121】
また、DNAと蛍光物質を結合(標識)させて単分子層を形成して、タンパク分子の大きさを変えることにより高さ位置を変えるなどして、所定の高さ位置で、蛍光物質を励起させることもができる。
【0122】
また、この実施例では、第2の下側励起光34を、第1の下側励起光26と同一の光源20から分光した第2の下側励起光34としたが、図10に示したように、第2の下側励起光34を、第1の下側励起光26の光源20とは別の光源52に由来する第2の下側励起光34とすることも可能である。なお、図示しないが、下記の実施例2、実施例3の場合にも、第2の下側励起光34を、第1の下側励起光26の光源20とは別の光源52に由来する第2の下側励起光34とすることもできる。
【0123】
このように構成することによって、第2の下側励起光34を、第1の下側励起光26の光源20とは別の光源52に由来する第2の下側励起光とすることができ、容易に第2の下側励起光34の光量を変えることができ、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0124】
このように構成することによって、本発明の電場増強度の絶対値の測定方法、および電場増強度の絶対値の測定装置によれば、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップの基板として、測定部材18を用いる際に、実際に近い状態の電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0125】
また、本発明によれば、表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を正確に知ることができ、これにより、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいたSPFS装置において使用するマイクロチップなどの測定部材として使用する場合に、金属薄膜の形成の状態をチェックし、選別することが可能な、工程検査、管理、品質保証用の定部材の評価方法および測定部材の評価装置として使用できる。
【0126】
さらに、本発明によれば、表面プラズモン光の電場増強効果の指標である電場増強度の絶対値を正確に知ることができ、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)を用いた、血液検査などの臨床試験のような、高精度の検出が要求される分野においては、電場増強度の絶対値を用いて、検出データを補正することにより、アナライトの検出の測定精度を向上することができる。
【0127】
さらに、本発明によれば、金属薄膜の厚さの影響、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの高さ位置に対応した、電場増強度の2次元的、3次元的な全体的な分布を得ることができ、正確な電場増強度を測定(推定)することがきる。
【0128】
この場合、図示しないが、測定部材18に流路を設けておき、検出対象となるアナライトを含有してなる試料溶液を流すように構成して、金属薄膜14近傍に捕捉したアナライトと結合(標識)した蛍光物質を効率良く励起させ、この蛍光を観察することによって、極微量、極低濃度のアナライトを検出するように構成すればよい。
【0129】
ここで用いられる試料溶液は、検体を用いて調製された溶液であり、例えば検体と試薬とを混合して検体中に含有されるアナライトに蛍光物質を結合させるための処理をしたものが挙げられる。
【0130】
このような検体としては、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液(髄液、腹水、胸水等)などが挙げられる。
また、検体中に含有されるアナライトは、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む。)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などが挙げられ、具体的には、AFP(αフェトプロテイン)等のがん胎児性抗原や腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなどであってもよく、特に限定されない。
【実施例2】
【0131】
2.電場増強度測定用部材として、近接場プローブを用いた実施例
図11は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法を説明する電場増強度の絶対値の測定装置の概略を模式的に示す概略図、図12は、図11の部分拡大図、図13は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法の概略を説明するブロック図である。
【0132】
この実施例の電場増強度の絶対値の測定装置10は、図1〜図3に示した電場増強度の絶対値の測定装置10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0133】
図1〜図3に示した実施例1では、金属薄膜14の上面に、電場増強度測定用部材として、蛍光物質層16が形成され、蛍光物質層16からの蛍光の発光強度を検出する、例えば、CCDなどの光検出手段42が備えられていたが、この実施例では、金属薄膜14の上面には、蛍光物質層16が形成されておらず、電場増強度測定用部材として、近接場プローブ54を用いている。
【0134】
例えば、近接場プローブ54の先端に蛍光物質55を付着して、近接場プローブ54の高さ位置を変えることにより、所定の高さ位置で、蛍光物質を励起させることができ、これにより、増強された蛍光を近接場プローブ54にて検出して、実施例1と同様な原理を用いて、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、電場増強度測定用部材、すなわち、近接場プローブ54の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定するように構成されている。
【0135】
2−2.電場増強度の絶対値の測定方法について
このように構成される本発明の電場増強度の絶対値の測定装置10を用いた、電場増強度の絶対値の測定方法について、以下に説明する。
【0136】
上記実施例1と同様にして、図11に示したように、先ず、光源20から、光22を照射して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、一定角度の入射角(共鳴角度)α1で照射して、図12の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(粗密波)30が発生させる。
【0137】
一方、第2の下側励起光34を、図11、図12の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aに、一定角度α2(臨界角以下の角度)で照射して、金属薄膜14の表面14aにおける電場増強度測定用部材の所定の高さ位置において伝播光44を発生させる。
【0138】
そして、図12の拡大図に示したように、第2の下側励起光34による伝播光44と表面プラズモン光30の、表面プラズモン光30が走る方向である金属薄膜14の平面14aに平行な方向の波数成分が異なることに起因して、干渉光の干渉縞を発生させる。
【0139】
ところで、この干渉縞は、近接場光なので、そのままでは直接見れないので、例えば、近接場プローブ54の先端に蛍光物質55を付着して、近接場プローブ54の所定の高さ位置において、第2の下側励起光34による伝播光44と、第1の下側励起光26による表面プラズモン光(粗密波)30による干渉縞(干渉光)によって、金属薄膜14上の近接場プローブ54の先端に蛍光物質55を励起させる。
【0140】
この原理を用いて、第2の下側励起光34の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、電場増強度測定用部材であるの近接場プローブ54の先端に付着した蛍光物質55の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するようになっている。
【0141】
具体的には、可変減光(ND)フィルター35によって、第2の下側励起光34の光量を変えることによって、近接場プローブ54の先端に蛍光物質55による蛍光の発光強度を、近接場プローブ54によって検出する。
【0142】
そして、上記実施例1の図4〜図9のグラフと同様なグラフ、同様な原理を用いて、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【実施例3】
【0143】
3.電場増強度測定用部材として、光散乱物質を用いた実施例
図14は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法を説明する電場増強度の絶対値の測定装置の概略を模式的に示す概略図、図15は、図14の部分拡大図、図16は、本発明の別の実施例の電場増強度の絶対値の測定方法の概略を説明するブロック図である。
【0144】
この実施例の電場増強度の絶対値の測定装置10は、図1〜図3に示した電場増強度の絶対値の測定装置10と基本的には同様な構成であり、また、原理も同様であるので、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0145】
図1〜図3に示した実施例1では、金属薄膜14の上面に、電場増強度測定用部材として、蛍光物質層16が形成されていたが、この実施例では、金属薄膜14の上面には、蛍光物質層16の代わりに、電場増強度測定用部材として、光散乱物質層56を用いている。
【0146】
そして、光散乱物質層56の光散乱物質を励起させ、これにより増強され散乱光を光光検出手段42にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、電場増強度測定用部材、すなわち、光散乱物質層56の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するように構成されている。
【0147】
この場合、例えば、光散乱物質を、金コロイド、酸カルシウム粉末などの微粒子を用いて、実施例1の蛍光物質層16と同様に、塗膜にしてその高さ位置を変えたり、DNAと金コロイド、酸カルシウム粉末などの微粒子を結合(標識)させて単分子層を形成して、タンパク分子の大きさを変えることにより高さ位置を変えるなどして、所定の高さ位置で、光散乱物質を励起させ、これにより、増強された散乱光を光検出手段42にて検出して、実施例1と同様な原理を用いて、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定するように構成されている。
【0148】
3−2.電場増強度の絶対値の測定方法について
このように構成される本発明の電場増強度の絶対値の測定装置10を用いた、電場増強度の絶対値の測定方法について、以下に説明する。
【0149】
上記実施例1と同様にして、図14に示したように、先ず、光源20から、光22を照射して、誘電体部材12の上面12aに形成された金属薄膜14に向かって、一定角度の入射角(共鳴角度)α1で照射して、図15の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aにおいて、金属薄膜14の表面14aに平行な方向に、表面プラズモン光(粗密波)30が発生させる。
【0150】
一方、第2の下側励起光34を、図14、図15の拡大図に示したように、金属薄膜14の表面14aに、一定角度α2(臨界角以下の角度)で照射して、金属薄膜14の表面14aにおける電場増強度測定用部材の所定の高さ位置において伝播光44を発生させる。
【0151】
そして、図11の拡大図に示したように、第2の下側励起光34による伝播光44と表面プラズモン光30の、表面プラズモン光30が走る方向である金属薄膜14の平面14aに平行な方向の波数成分が異なることに起因して、干渉光の干渉縞を発生させる。
【0152】
ところで、この干渉縞は、近接場光なので、そのままでは直接見れないので、本願発明では、金属薄膜14の上面に、電場増強度測定用部材として、光散乱物質層56が形成されており、第2の下側励起光34による伝播光44と、第1の下側励起光26による表面プラズモン光(粗密波)30による干渉縞(干渉光)によって、金属薄膜14上の光散乱物質層56を励起させる。
【0153】
この原理を用いて、第2の下側励起光34の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、電場増強度測定用部材であるの光散乱物質層56の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するようになっている。
【0154】
具体的には、可変減光(ND)フィルター35によって、第2の下側励起光34の光量を変えることによって、光散乱物質層56による散乱光の発光強度を、例えば、CCDなどの光検出手段42によって検出する。
【0155】
そして、上記実施例1の図4〜図9のグラフと同様なグラフ、同様な原理を用いて、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の下側励起光34の光量に基づいて、電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を正確に換算して推定することができる。
【0156】
なお、この場合、図4、図5のグラフにおいて、縦軸は、光散乱物質層56による蛍光の発光強度を示している。
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの検出において用いる、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)を一例として挙げたが、高精度の検出が要求される分野において、表面プラズモン光を用いて、電場増強度の絶対値を用いて、検出データを補正する分野であれば、例えば、光学検査のような工業分野などにおいても使用可能であり、何ら分野を限定されず、適用可能であり、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)を用いた、血液検査などの臨床試験のような、高精度の検出が要求される分野において、電場増強度の絶対値を用いて、検出データを補正することにより、アナライトの検出の測定精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0158】
10 測定装置
12 誘電体部材
12a 上面
12b 側面
12c 側面
14 金属薄膜
14a 表面
16 蛍光物質層
18 測定部材
20 光源
22 光
24 分光器
26 第1の下側励起光
28 フィルター
30 表面プラズモン光
32 光
34 第2の下側励起光
35 フィルター
36 位相シフト板
37 ミラー
38 金属薄膜反射光
40 受光手段
42 光検出手段
44 伝播光
46 第1の下側励起光発生装置
48 第2の下側励起光発生装置
50 電場増強度換算装置
52 光源
54 近接場プローブ
55 蛍光物質
56 光散乱物質層
100 誘電体
101 プラズモン光
104 ピンホール
104a エッジ部分
106 励起光
108 励起光
110 近接場プローブ
200 誘電体
201 プラズモン光
204 エッジ部分
206 励起光
210 近接場プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体部材を介して、誘電体部材上に形成された金属薄膜に向かって、光源より励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させて、金属薄膜上の電場を増強する際に、電場増強度の絶対値を測定する測定方法であって、
前記金属薄膜表面の所定の高さ位置に、電場増強度測定用部材を配置して、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記光源より第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させるとともに、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に伝播光を発生させ、
前記表面プラズモン光と前記伝播光とによる干渉縞を発生させ、
前記第2の励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することを特徴とする電場増強度の絶対値の測定方法。
【請求項2】
前記第2の励起光が、前記第1の励起光と同一の光源から分光した励起光であることを特徴とする請求項1に記載の電場増強度の絶対値の測定方法。
【請求項3】
前記第2の励起光が、前記第1の励起光の光源とは別の光源に由来する励起光であることを特徴とする請求項1に記載の電場増強度の絶対値の測定方法。
【請求項4】
前記電場増強度測定用部材が、蛍光物質であり、
前記蛍光物質を励起させ、これにより増強された蛍光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定方法。
【請求項5】
前記電場増強度測定用部材が、近接場プローブであって、
前記近接場プローブの所定高さ位置での干渉光強度を測定して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定方法。
【請求項6】
前記電場増強度測定用部材が、光散乱物質であり、
前記光散乱物質を励起させ、これにより増強され散乱光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定方法。
【請求項7】
前記第2の励起光の位相、前記電場増強度測定用部材の高さ位置の少なくとも一方を変更して測定することによって、2次元的または3次元的な電場増強度の絶対値のデータを得ることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定方法。
【請求項8】
誘電体部材を介して、誘電体部材上に形成された金属薄膜に向かって、光源より励起光を照射し、金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させて、金属薄膜上の電場を増強する際に、電場増強度の絶対値を測定する測定装置であって、
前記金属薄膜表面の所定の高さ位置に配置した電場増強度測定用部材と、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記光源より第1の励起光を照射し、前記金属薄膜表面に表面プラズモン光を発生させる第1の励起光発生装置と、
前記誘電体部材を介して、前記金属薄膜に向かって、前記第1の励起光とは別の第2の励起光を照射して、前記金属薄膜表面に伝播光を発生させる第2の励起光発生装置と、
前記表面プラズモン光と前記伝播光とによる干渉縞を発生した際に、
前記第2の励起光の光量を変えながら、干渉縞のコントラストが最大となる時の第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定する電場増強度換算装置とを備えることを特徴とする電場増強度の絶対値の測定装置。
【請求項9】
前記第2の励起光発生装置が、前記第2の励起光を、前記第1の励起光と同一の光源から分光する分光手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の電場増強度の絶対値の測定装置。
【請求項10】
前記第2の励起光発生装置が、前記第2の励起光を、前記第1の励起光の光源とは別の光源から発生させるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の電場増強度の絶対値の測定装置。
【請求項11】
前記電場増強度測定用部材が、蛍光物質であり、
前記蛍光物質を励起させ、これにより増強された蛍光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するように構成されていることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定装置。
【請求項12】
前記電場増強度測定用部材が、近接場プローブであって、
前記近接場プローブの所定高さ位置での干渉光強度を測定して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するように構成されていることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定装置。
【請求項13】
前記電場増強度測定用部材が、光散乱物質であり、
前記光散乱物質を励起させ、これにより増強され散乱光を光検出手段にて検出して、干渉縞のコントラストが最大となる時の前記第2の励起光の光量に基づいて、前記電場増強度測定用部材の所定の高さ位置における電場増強度を換算して推定するように構成されていることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定装置。
【請求項14】
前記第2の励起光の位相、前記電場増強度測定用部材の高さ位置の少なくとも一方を変更して測定することによって、2次元的または3次元的な電場増強度の絶対値のデータを得るように構成されていることを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定装置。
【請求項15】
請求項1から7のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定方法を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、
誘電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材の評価を行うことを特徴とする測定部材の評価方法。
【請求項16】
請求項1から7のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定装置を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、
誘電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材の評価を行うように構成されていることを特徴とする測定部材の評価装置。
【請求項17】
誘電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材を用いて、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの検出を行う際に、
請求項1から7のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定方法を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、検出データを補正してアナライトの検出を行うことを特徴とするアナライトの検出方法。
【請求項18】
誘電体部材と、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜とを備えた測定部材を用いて、金属薄膜近傍に捕捉したアナライトの検出を行う際に、
請求項8から14のいずれかに記載の電場増強度の絶対値の測定装置を用いて得た電場増強度の絶対値のデータに基づいて、検出データを補正してアナライトの検出を行うように構成されていることを特徴とするアナライトの検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−42280(P2012−42280A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182343(P2010−182343)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】