説明

電子カメラ、ノイズ低減装置、ノイズ低減制御プログラム及びノイズ低減方法

【課題】 精度よくノイズの発生時間及び発生状況に対応したノイズの低減を行う。
【解決手段】 音声処理ブロック32は、マイクアンプ321、減算器322、ADコンバータ323、オーディオインターフェイス324、電流波形検出回路325、波形合成回路326、疑似モーター音発生回路327を有する。電流波形検出回路325は、ズームモーターに供給される電流波形を検出して、波形合成回路326に出力する。疑似モーター音発生回路327は、疑似モーター音を発生し、波形合成回路326は、前記電流波形と、疑似モーター音とを合成し、これにより得られる合成波形を減算器322に出力する。減算器322は、マイクアンプ321より入力される音声波形から、波形合成回路326より入力される合成波形を減算し、この減算された後の音声波形はCPU13に入力され、エンコードされた後、動画データとともに前記外部メモリ25に記録される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載されているモーター等の動作手段の動作に伴って発生するノイズを低減する電子カメラ、ノイズを低減するためのノイズ低減装置、ノイズ低減制御プログラム及びノイズ低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば撮影画像とともに撮影時の音声を記録するカメラにおいては、ズームモーターの動作に伴って発生するノイズを低減することにより記録音声へのノイズの混入を防止するためのノイズ低減装置を搭載したものが提案されている。このノイズ低減装置は、ズームキーの操作中において、マイクロホンにより検出される音声のレベルを一定レベルに減衰させることにより、ズームキーの操作中に動作するズームモーターの動作ノイズが録音されることを防止する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−292048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ユーザがズームキーの操作を開始してズームモーター回路のスイッチがオンとなり実際にズームモーターが回転を開始するまでの間には、不可避的に始動時のタイムラグが生ずる。また、ズームキーの操作をやめてズームモーター回路のスイッチがオフとなり実際にズームモーターが回転を停止するまでの間には不可避的に終了時のタイムラグが生ずる。したがって、前述した従来技術のようにズームキーの操作中に、マイクロホンにより検出される音声のレベルを一定レベルに減衰させると、ズームモーターの動作ノイズが生じてないのにも拘わらず、音声のレベルが一定レベルに減衰され、必要な音声が欠落し、あるいは、ズームモーターの動作ノイズが生じているにも拘わらず、音声のレベル減衰が解除され、動作ノイズが録音されてしまう。また、ズームモーターの回転速度は動作中において必ずしも一定ではなく変化する場合があり、これに伴ってノイズも変化する。したがって、減衰させる音声のレベルによっては、必要な音声が欠落してしまったり、ノイズが録音されてしまう。
【0004】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、精度よくノイズの発生時間及び発生状況に対応したノイズの低減を行うことのできる電子カメラ、ノイズ低減装置、ノイズ低減制御プログラム及びノイズ低減方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため請求項1記載の発明に係る電子カメラにあっては、動画を撮像する撮像手段と、この撮像手段による撮像時に周囲の音声を検出する検出手段と、前記撮像手段により撮像される動画と前記検出手段により検出される音声とを記録する記録手段と、電流により駆動される動作手段と、この動作手段の動作に伴って発生するノイズの疑似ノイズを発生する疑似ノイズ発生手段と、前記動作手段を駆動する電流波形に前記疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生する合成波形発生手段と、この合成波形発生手段が発生する合成波形ノイズを前記検出手段が検出する音声から減算する減算手段とを備える。
【0006】
つまり、動作手段は電流により駆動されるものであることから、その動作は電流波形に依存し、また動作に伴って発生するノイズの発生状況も電流波形に依存する。したがって、動作手段を駆動する電流波形に疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生すれば、合成波形ノイズが発生している時間は動作手段の動作、及びこの動作に伴って発生するノイズの発生時間と精度よく一致する。また、動作中に動作手段の動作に変化が生じた場合であっても、これに伴って動作手段を駆動する電流波形が変化することから、動作手段を駆動する電流波形に疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生すれば、発生している合成波形ノイズは動作手段の動作の変化、及びこの動作の変化に伴って発生するノイズの変化と精度よく一致する。
【0007】
したがって、このノイズの発生時間と精度よく一致し、かつ、ノイズの変化と精度よく一致する合成波形ノイズを検出手段が検出する音声から減算すれば、動作手段からノイズが発生していないにも拘わらず減算が行われたり、ノイズが発生しているにも拘わらず減算が行われるようなことはなく、精度よくノイズの発生時間及び発生状況に対応したノイズの低減を行うことが可能となる。
【0008】
また、請求項2記載の発明に係る電子カメラにあっては、前記動作手段はレンズを駆動するズームモーターである。ズームモーターの場合、慣性により回転を開始するまでにライムラグあるいは回転を完全に停止するまでにライムラグが生じやすいことから、このライムラグを考慮して、当該モーターが実際に回転を開始した時点から実際に回転を停止した時点までの時間において、精度よくノイズの低減を行うことが可能となる。
【0009】
また、請求項3記載の発明に係るノイズ低減装置にあっては、周囲の音声を検出する検出手段と、電流により駆動される所定の動作手段とを備えた機器に配置されるノイズ低減装置であって、前記動作手段の動作に伴って発生するノイズの疑似ノイズを発生する疑似ノイズ発生手段と、前記動作手段を駆動する電流波形に前記疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生する合成波形発生手段と、この合成波形発生手段が発生する合成波形ノイズを前記検出手段が検出する音声から減算する減算手段とを備える。
【0010】
したがって、前述と同様に、ノイズの発生時間と精度よく一致し、かつ、ノイズの変化と精度よく一致する合成波形ノイズを検出手段が検出する音声から減算することができ、動作手段からノイズが発生していないにも拘わらず減算が行われたり、ノイズが発生しているにも拘わらず減算が行われるようなことはなく、精度よくノイズの発生状況に対応したノイズの低減を行うことが可能となる。
【0011】
また、請求項4記載の発明に係るノイズ低減装置にあっては、前記検出手段により検出された音声を記録する録音手段を更に備える。したがって、精度よくノイズを低減した音声を記録することができる。
【0012】
また、請求項5記載の発明に係るノイズ低減装置にあっては、前記動作手段は、モーターである。モーターの場合、慣性により回転を開始するまでにライムラグあるいは回転を完全に停止するまでにライムラグが生じやすいことから、このライムラグを考慮して、当該モーターが実際に回転を開始した時点から実際に回転を停止した時点までの時間において、精度よくノイズの低減を行うことが可能となる。
【0013】
また、請求項6記載の発明に係るノイズ低減装置にあっては、前記合成波形発生手段は、前記電流波形と前記疑似ノイズとを積算して合成するものである。したがって、電流波形の電流値がゼロである場合には、合成波形発生手段からは合成波形ノイズが発生せず、ゼロを超えた時点から合成波形ノイズが発生する。一方、前述のように動作手段は電流により駆動されるものであることから、その動作は電流波形に依存する。したがって、合成波形発生手段が動作手段を駆動する電流波形に疑似ノイズを積算合成して合成波形ノイズを発生すれば、合成波形ノイズが発生している時間は動作手段の動作、及びこの動作に伴って発生するノイズの発生時間と精度よく一致する。また、動作中に動作手段の動作に変化が生じた場合であっても、これに伴って動作手段を駆動する電流波形が変化することから、動作手段を駆動する電流波形に疑似ノイズを積算合成して合成波形ノイズを発生すれば、発生している合成波形ノイズは動作手段の動作の変化、及びこの動作の変化に伴って発生するノイズの変化と精度よく一致する。
【0014】
また、請求項7記載の発明に係るノイズ低減装置にあっては、前記動作手段を駆動する電流波形を検出し、その電流値がゼロである場合、前記疑似ノイズ発生手段、前記合成波形発生手段及び前記減算手段のいずれか少なくとも一つをオフにする制御手段さらに備える。したがって、このノイズ低減装置が搭載される装置の動作中において、動作手段の動作時間が短いものである場合には、疑似ノイズ発生手段、合成波形発生手段及び減算手段のオフに維持される時間が相対的に長くなり、消費電力の低減を図ることができる。
【0015】
また、請求項8記載の発明に係るノイズ低減制御プログラムにあっては、周囲の音声を検出する検出手段と、電流により駆動される所定の動作手段とを備えた機器が有するコンピュータを、前記動作手段の動作に伴って発生するノイズの疑似ノイズを発生する疑似ノイズ発生手段と、前記動作手段を駆動する電流波形に前記疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生する合成波形発生手段と、この合成波形発生手段が発生する合成波形ノイズを前記検出手段が検出する音声から減算する減算手段として機能させる。したがって、前記コンピュータがこのプログラムに従って処理を実行することにより、請求項3記載の発明と同様の作用効果を奏する。
【0016】
また、請求項9記載の発明にあっては、周囲の音声を検出する検出手段と、電流により駆動される所定の動作手段とを備えた機器におけるノイズ低減方法であって、前記動作手段の動作に伴って発生するノイズの疑似ノイズを発生する疑似ノイズ発生工程と、前記動作手段を駆動する電流波形に前記疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生する合成波形発生工程と、この合成波形発生工程で発生する合成波形ノイズを前記検出手段が検出する音声から減算する減算工程とを含む。したがって、記載した工程に従って処理を実行することにより、請求項3記載の発明と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明に係る電子カメラによれば、動作手段を駆動する電流波形に疑似ノイズ発生手段から発生する疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生することにより、合成波形ノイズが発生している時間を動作手段の動作、及びこの動作に伴って発生するノイズの発生時間と精度よく一致させることができる。また、動作中に動作手段の動作に変化が生じた場合であっても、これに伴って動作手段を駆動する電流波形が変化することから、動作手段を駆動する電流波形に疑似ノイズ発生手段から発生する疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生することにより、発生している合成波形ノイズは動作手段の動作の変化、及びこの動作の変化に伴って発生するノイズの変化と精度よく一致させることができる。したがって、このノイズの発生時間と精度よく一致し、かつ、ノイズの変化と精度よく一致する合成波形ノイズを検出手段が検出する音声から減算することにより、動作手段からノイズが発生していないにも拘わらず減算が行われたり、ノイズが発生しているにも拘わらず減算が行われるようなことはなく、精度よくノイズの発生時間及び発生状況に対応したノイズの低減を行うことが可能となる。よって、精度よくノイズを低減した音声を動画とともに記録することができる。
【0018】
また、本発明に係るノイズ低減装置によれば、同様にノイズの発生時間と精度よく一致し、かつ、ノイズの変化と精度よく一致する合成波形ノイズを検出手段が検出する音声から減算することにより、動作手段からノイズが発生していないにも拘わらず減算が行われたり、ノイズが発生しているにも拘わらず減算が行われるようなことはなく、精度よくノイズの発生時間及び発生状況に対応したノイズの低減を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態をに係るデジタルカメラ10の回路構成を示すブロック図であり、このデジタルカメラ10は、AE、AWB、AF等の一般的な機能を有するものである。すなわち、レンズブロック11には、ズームレンズ、フォーカスレンズ等の光学系、及び光学系を駆動するための駆動機構が含まれており、前記光学系は、駆動機構に設けられているズームモーター12(DCモーター)によって光軸方向に駆動される。デジタルカメラ10全体を制御するCPU13には、バス14及びタイミング発生器(TG:Timing Generator)15を介してモータードライバ16が接続されており、モータードライバ16は、CPU13の命令に従いタイミング発生器15が発生するタイミング信号に基づき、ズームモーター12を駆動する。このとき、ズームモーター12に供給される電流波形(モータードライバ16の電流波形の電圧)は、後述する音声処理ブロック32に入力される。なお、ストロボ17もタイミング発生器15が発生するタイミング信号により駆動される。また、図示は省略するが、実際には、フォーカスレンズを駆動するためのフォーカスモーター及びモータードライバや、メカシャッターやメカ絞り及びそれらを駆動するための駆動機構等が設けられている。
【0020】
また、デジタルカメラ10は撮像素子としてCCD18を有している。CCD18は、レンズブロック11の光軸上に配置されており、被写体は、レンズブロック11によってCCD18の受光面に結像される。CCD18は、CPU13の命令に従いタイミング発生器15が生成するタイミング信号に基づき垂直及び水平ドライバ19によって駆動され、被写体の光学像に応じたアナログの撮像信号をユニット回路20に出力する。ユニット回路20は、CCD18の出力信号に含まれるノイズを相関二重サンプリングによって除去するCDS回路や、ノイズが除去された撮像信号をデジタル信号に変換するA/D変換器等から構成され、デジタルに変換した撮像信号を画像処理部21へ出力する。
【0021】
画像処理部21は、入力した撮像信号に対しペデスタルクランプ等の処理を施し、それを輝度(Y)信号及び色差(UV)信号に変換するとともに、オートホワイトバランス、輪郭強調、画素補間などの画品質向上のためのデジタル信号処理を行う。画像処理部21で変換されたYUVデータは順次SDRAM22に格納されるとともに、RECスルー・モードでは1フレーム分のデータ(画像データ)が蓄積される毎にビデオ信号に変換され、バックライト(BL)24を備える液晶モニタ(LCD)23へ送られてスルー画像として画面表示される。
【0022】
そして、静止画撮影モードにおいては、シャッターキー操作をトリガとして、CPU13は、CCD18、垂直及び水平ドライバ19、ユニット回路20、及び画像処理部21に対してスルー画撮影モードから静止画撮影モードへの切り替えを指示し、この静止画撮影モードによる撮影処理により得られ、SDRAM22に一時記憶された画像データは、CPU13により圧縮され、最終的には所定のフォーマットの静止画ファイルとして外部メモリ25に記録される。また、ムービー録画モードにおいては、1回目のシャッターキーと2回目のシャッターキー操作との間に、SDRAM22に順次記憶される複数の画像データがCPU13により順次圧縮され、動画ファイルとして外部メモリ25に記録される。この外部メモリ25に記録された静止画ファイル及び動画ファイルは、PLAY・モードにおいてユーザーの選択操作に応じてCPU13に読み出されるとともに伸張され、YUVデータとしてSDRAM22に展開された後、液晶モニタ23に表示される。
【0023】
フラッシュメモリ26には、CPU13に前記各部を制御させるための各種のプログラム、例えばAE、AF、AWB制御用のプログラムや、ムービー録画モードにおいて用いられる動画撮影プログラム等の各種のプログラムが格納されている。
【0024】
また、デジタルカメラ10は、電源スイッチ、モード選択キー、シャッターキー、ズームキー等の複数の操作キー及びスイッチを含むキー入力部27、及びニッケル水素電池等の充電可能なバッテリー28、このバッテリー28の電力を各部に供給するための電源制御回路29、及びこれらを制御するマイコン30を有している。マイコン30は、キー入力部27における前記操作キーの操作の有無を定常的にスキャンしており、ユーザーによっていずれかの操作キーが操作されると、その操作内容に応じた操作信号をCPU13へ送る。なお、ズームキーは「+」部と「−」部とを有するシーソー式のキーである。
【0025】
また、このデジタルカメラ10は、前記ムービー録画モードにおいて、周囲の音声を記録する録音機能を備えており、CPU13には、音声処理ブロック32を介して、スピーカ(SP)33と、マイクロホン(MIC)34とが接続されている。音声処理ブロック32は、ムービー録画モード時には、マイクロホン34から入力された音声波形を処理して、音声波形データをCPU13に入力する。そして、CPU13は、ムービー録画モードにおいて1回目と2回目のシャッターキー操作間に、音声処理ブロック32から入力された音声波形データを圧縮し、この圧縮音声データと圧縮動画データとを含む音声付き動画ファイルを生成して外部メモリ25に記録する。この外部メモリ25に記録された音声付き動画ファイルは、PLAY・モードにおいて動画データが再生される際に、音声データが音声処理ブロック32で音声波形に変換されてスピーカ33により再生される。なお、音声記録を行うタイミングは、動画撮影時に限定されず、音声付き静止画撮影モードにおける録音動作時でもよく、また、録音モードやアフレコモードにおける録音動作時でもよい。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施の形態における前記音声処理ブロック32の詳細を示すブロック図である。図示のように、前記マイクロホン34とCPU13に接続された音声処理ブロック32には、マイクアンプ(MIC AMP)321、減算器322、ADコンバータ(ADC)323、オーディオインターフェイス324が設けられているとともに、電流波形検出回路325、波形合成回路326及び疑似モーター音発生回路327が設けられている。マイクアンプ321は、マイクロホン34から入力される音声波形を増幅して減算器322に入力する。電流波形検出回路325は、図3(A)に示したズームモーター12に供給される電流波形a(モータードライバ16の電流波形の電圧)を検出して、波形合成回路326に出力する。疑似モーター音発生回路327は、図3(B)に示した波形からなる疑似モーター音bを常時発生する回路である。この疑似モーター音bは、このデジタルカメラ10のメーカーにおいて、静寂な環境下でズームモーター12を回転させた際に発生するノイズを検出し解析することにより得られた、該ノイズと同一若しくは近似する一定周波数の音である。
【0027】
波形合成回路326は、この図3(A)に示した電流波形aと、同図(B)に示した疑似モーター音bとを積算して合成し、これにより得られる同図(C)に示した合成波形cを減算器322に出力するものである。減算器322は、マイクアンプ321より入力される音声波形から、波形合成回路326より入力される合成波形cを減算するものである。この減算された後の音声波形はADコンバータ323でデジタルデータに変換されて、オーディオインターフェイス324を介してCPU13に入力され、エンコードされた後、動画データとともに前記外部メモリ25に記録される。
【0028】
図4は、図1におけるズームモーター12とモータードライバ16とからなるA部の詳細を示す回路図である。図示のように、モータードライバ16には、直列接続されたスイッチ1、2、及びスイッチ3、4が並列接続された回路を有し、前記ズームモーター12は、スイッチ1、2、とスイッチ3、4間に並列接続されている。そして、ズームキーの「+」側が操作されるとスイッチ1、4がオン状態となり、これによりズームモーター12は正転し、また、「−」側が操作されるとスイッチ2、3がオン状態となり、これによりズームモーター12は逆転するように構成されている。また、これらスイッチ1、4のオン状態、及びスイッチ2、3のオン状態における電流波形がスイッチ2、4と接地間から取り出されて、前記電流波形検出回路325に供給される。
【0029】
以上の構成に係る本実施の形態において、ユーザがムービー録画モードを設定して、1回目のシャッターキー操作を行うと、CPU13には動画撮影プログラムに基づき、録画及び録音を開始し、画像データに関しては順次外部メモリ25に記録していく。一方、周囲の音声は、マイクロホン34により検出されて、マイクアンプ321、減算器322、ADコンバータ323、オーディオインターフェイス324を介してCPU13に入力されて、順次外部メモリ25に記録されていく。
【0030】
このとき、ユーザがズームキーを操作することなく動画撮影を行っていると、電流波形aは生じておらず、電流波形検出回路325から電流波形が出力されることはない。したがって、波形合成回路326が積算を行ってもその出力はゼロであることから、波形合成回路326から減算器322に合成波形cが出力されることもない。よって、減算器322にての減算が行われることもなく、マイクロホン34により検出された音声がそのまま外部メモリ25に記録されることとなる。このとき、ズームモーター12は動作していないことから、ズームモーター12の動作に伴って発生するノイズが、音声とともに記録されることはない。
【0031】
そして、ユーザがズームキーを操作すると、モータードライバ16において、スイッチ1、4、又はスイッチ2、3がオンになりズームモーター12に電源29からの電流が供給され始める。このとき、ズームモーター12への供給電流波形aは、図3(A)に示したように、タイムラグΔtをもって立ち上がり、このタイムラグΔtをもって立ち上がった電流波形aが電流波形検出回路325を介して波形合成回路326に入力される。すると、波形合成回路326はこのこのタイムラグΔtをもって立ち上がった電流波形aに、疑似モーター音bを積算合成して合成波形cを生成し、この合成波形cを減算器322に出力する。減算器322は、マイクアンプ321を介してマイクロホン34から入力された音声波形から合成波形cを減算して、ADコンバータ323に出力する。
【0032】
したがって、減算器322において、マイクロホン34から入力された音声波形は、電流波形aがタイムラグΔtをもって立ち上がった時点から合成波形cが減算される。この電流波形aがタイムラグΔtをもって立ち上がった時点は、ズームモーター12が回転を開始した時点であってズームモーター12の回転に伴うノイズが発生した時点であることから、この時点から合成波形cが減算されることにより、合成波形cの減算開始時点を精度よくノイズの発生時点に一致させることができる。
【0033】
また、図3(A)に示したようにズームモーター12の回転中に電流波形aが変化すれば、同図(C)に示したようにこれに伴って合成波形cも変化する。したがって、減算器322において、マイクロホン34から入力された音声波形は、電流波形aの変化に伴って変化する合成波形cにより減算される。そして、この電流波形aの変化に伴って、ズームモーター12の回転も変化することから、ズームモーター12の回転の変化に伴って発生するノイズも変化する。よって、減算器322において、電流波形aの変化に伴って変化する合成波形cが音声波形から減算されることにより、ノイズの変化に応じて精度よくノイズ低減を行うことができる。
【0034】
そして、レンズブロック11内のズームレンズが限界位置まで移動し、あるいはユーザがズームキーの操作をやめると、モータードライバ16は、例えばスイッチ1、3をONにし、あるいは全てのスイッチ1〜4をOFFにする。これにより、ズームモーター12は制動され、また電流波形aは下降し、やがてゼロレベルに到達する。そして、電流波形aが下降し始めれば、ズームモーター12の回転も低下することから、ズームモーター12の回転の低下に伴って発生するノイズも低下する。よって、減算器322において、電流波形aの低下に伴って変化する合成波形cが音声波形から減算されることにより、ノイズの低下に応じて精度よくノイズ低減を行うことができる。また、電流波形aがゼロレベルに到達すると、ズームモーター12は停止することから、ズームモーター12の動作に伴うノイズも停止する。そして、電流波形aがゼロレベルに到達すれば、電流波形検出回路325から合成回路326への電流波形aの出力もゼロレベルとなって、合成回路326からの出力もゼロレベルとなることから、合成回路326から減算器322への合成波形cの出力もゼロレベルとなり、減算器322にて減算が行われることもない。よって、減算器322にての減算の終了を精度よくノイズの終了に合致させることができる。
【0035】
したがって、ズームモーター12の回転に伴うノイズの発生時点と発生終了時点とを合致させて、ノイズ発生時間に精度よく合致させて減算によるノイズ低減を行うことができるとともに、ノイズの変化に精度よく合致させて減算によるノイズ低減を行うことができる。
なお、ユーザが2回目のシャッターキー操作を行うことにより、外部メモリ25への画像データ及び音声データの記憶は停止されることとなる。
【0036】
(第2の実施の形態)
【0037】
図5は、本発明の第2の実施の形態における前記音声処理ブロック32の詳細を示すブロック図である。本実施の形態においては、オン・オフ制御回路328を有する点においてのみ図2に示した第1の実施の形態と異なる。したがって、同一部分については同一符合を付して説明を省略する。オン・オフ制御回路328は、電流波形検出回路325から入力される電流波形aがゼロレベルである場合には、減算器322の減算機能及び波形合成回路326、疑似モータ音発生回路327をオフ状態にし、ゼロレベルを超えるとオン状態にする制御回路である。
【0038】
以上の構成に係る本実施の形態において、ユーザがムービー録画モードを設定して、1回目のシャッターキー操作を行うと、CPU13には動画撮影プログラムに基づき、録画及び録音を開始し、画像データに関しては順次外部メモリ25に記録していく。一方、周囲の音声は、マイクロホン34により検出されて、マイクアンプ321、減算器322、ADコンバータ323、オーディオインターフェイス324を介してCPU13に入力されて、順次外部メモリ25に記録されていく。
【0039】
このとき、ユーザがズームキーを操作することなく動画撮影を行っていると、電流波形aは生じておらず、電流波形検出回路325から電流波形が出力されることはない。したがって、オン・オフ制御回路328は、減算器322の減算機能及び波形合成回路326、疑似モータ音発生回路327をオフ状態にしている。したがって、これら減算器322の減算機能及び波形合成回路326、疑似モータ音発生回路327の動作に伴う電力消費が防止される。したがって、減算器322にての減算が行われることもなく、マイクロホン34により検出された音声がそのまま外部メモリ25に記録されることとなる。このとき、ズームモーター12は動作していないことから、ズームモーター12の動作に伴って発生するノイズが、音声とともに記録されることはない。
【0040】
そして、ユーザがズームキーを操作すると、モータードライバ16において、スイッチ1、4、又はスイッチ2、3がオンになりズームモーター12に電源29からの電流が供給され始める。このとき、ズームモーター12への供給電流波形aは、図3(A)に示したように、タイムラグΔtをもって立ち上がり、このタイムラグΔtをもって立ち上がった電流波形aが電流波形検出回路325を介して波形合成回路326とオン・オフ制御回路328とに入力される。すると、オン・オフ制御回路328は、減算器322の減算機能及び波形合成回路326、疑似モータ音発生回路327をオン状態にする。よって、波形合成回路326はこのこのタイムラグΔtをもって立ち上がった電流波形aに、疑似モーター音bを積算合成して合成波形cを生成し、この合成波形cを減算器322に出力する。減算器322は、マイクアンプ321を介してマイクロホン34から入力された音声波形から合成波形cを減算して、ADコンバータ323に出力する。
【0041】
したがって、減算器322において、マイクロホン34から入力された音声波形は、電流波形aがタイムラグΔtをもって立ち上がった時点から合成波形cが減算される。この電流波形aがタイムラグΔtをもって立ち上がった時点は、ズームモーター12が回転を開始した時点であってズームモーター12の回転に伴うノイズが発生した時点であることから、この時点から合成波形cが減算されることにより、合成波形cの減算開始時点を精度よくノイズの発生時点に一致させることができる。
【0042】
そして、レンズブロック11内のズームレンズが限界位置まで移動し、あるいはユーザがズームキーの操作をやめ、電流波形aがゼロレベルに到達すると、ズームモーター12は停止することから、ズームモーター12の動作に伴うノイズも停止する。そして、電流波形aがゼロレベルに到達すれば、電流波形検出回路325から合成回路326への電流波形aの出力もゼロレベルとなり、オン・オフ制御回路328は、減算器322の減算機能及び波形合成回路326、疑似モータ音発生回路327をオフにする。よって、減算器322にての減算の終了を精度よくノイズの終了に合致させることができる。
【0043】
(第2の実施の形態の変形例)
【0044】
なお、この第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に波形合成回路326として、電流波形aと積算して合成する積算回路を用いるようにした。しかし、第2の実施の形態においては、オン・オフ制御回路328を用いるようにしたことから、波形合成回路326として、電流波形aと加算して合成する加算回路を用いた場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
(他の実施の形態)
(1)前述した実施の形態においては、音声処理ブロック32内に設けられた電流波形検出回路325により電流波形aを検出し、疑似モーター音発生回路327により疑似モーター音bを発生し、波形合成回路326により合成波形cを発生し、減算器322に減算を行うようにした。しかし、これらを音声処理ブロック32に設けることなく、フラッシュメモリ26に、これら各回路の機能をCPU13の処理により実現するプログラムを記憶しておき、このプログラムに従ってCPU13が処理を実行することにより、電流波形aの検出、疑似モーター音bと合成波形cの発生、及び合成波形cの減算を行うようにしてもよい。
【0046】
(2)なお、実施の形態においては、本発明をズームモーター12のノイズ低減処理に適用した場合を示したが、レンズブロック11に設けられているフォーカスレンズを駆動するAFモーターの回転及びフォーカスレンズの駆動に伴って生ずるノイズのノイズ低減処理に適用するようにしてもよい。この場合、図2におけるモータードライバ16を、AFモータを駆動するドライバとし、疑似モーター音発生回路327からAFモーターの疑似モーター音を発生させるようにすればよい。また、DCモータに限らず、ステッピングモータのノイズ低減処理に適用するようにしてもよい。
【0047】
(3)また、シャッターや絞り機構が電流波形で駆動される場合、あるいは電流波形で駆動されるハードディスクを有するカメラにおいては、同様の置き換えを行うことにより、本発明を適用することができる。さらに、カメラに限らず電流波形で駆動されるハードディスクを有する各種装置や、各種録音装置等に本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態を適用したデジタルカメラの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における音声処理ブロックの詳細を示すブロック図である。
【図3】(A)は電流波形、(B)は疑似モーター音波形、(C)は合成波形を示す波形図である。
【図4】図1におけるA部の詳細を示す回路図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における音声処理ブロックの詳細を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0049】
10 デジタルカメラ
11 レンズブロック
12 ズームモーター
13 CPU
16 モータードライバ
25 外部メモリ
26 フラッシュメモリ
27 キー入力部
32 音声処理ブロック
33 スピーカ
34 マイクロホン
321 マイクアンプ
322 減算器
323 ADコンバータ
324 オーディオインターフェイス
325 電流波形検出回路
326 波形合成回路
327 疑似モーター音発生回路
328 オン・オフ制御回路
a 電流波形
b 疑似モーター音
c 合成波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画を撮像する撮像手段と、
この撮像手段による撮像時に周囲の音声を検出する検出手段と、
前記撮像手段により撮像される動画と前記検出手段により検出される音声とを記録する記録手段と、
電流により駆動される動作手段と、
この動作手段の動作に伴って発生するノイズの疑似ノイズを発生する疑似ノイズ発生手段と、
前記動作手段を駆動する電流波形に前記疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生する合成波形発生手段と、
この合成波形発生手段が発生する合成波形ノイズを前記検出手段が検出する音声から減算する減算手段と
を備えることを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
前記動作手段はレンズを駆動するズームモーターであることを特徴とする請求項1記載の電子カメラ。
【請求項3】
周囲の音声を検出する検出手段と、電流により駆動される所定の動作手段とを備えた機器に配置されるノイズ低減装置であって、
前記動作手段の動作に伴って発生するノイズの疑似ノイズを発生する疑似ノイズ発生手段と、
前記動作手段を駆動する電流波形に前記疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生する合成波形発生手段と、
この合成波形発生手段が発生する合成波形ノイズを前記検出手段が検出する音声から減算する減算手段と
を備えることを特徴とするノイズ低減装置。
【請求項4】
前記検出手段により検出された音声を記録する録音手段を更に備えることを特徴とする請求項3記載のノイズ低減装置。
【請求項5】
前記動作手段は、モーターであることを特徴とする請求項3又は4記載のノイズ低減装置。
【請求項6】
前記合成波形発生手段は、前記電流波形と前記疑似ノイズとを積算して合成するものであることを特徴とする請求項3、4又は5記載のノイズ低減装置。
【請求項7】
前記動作手段を駆動する電流波形を検出し、その電流値がゼロである場合、前記疑似ノイズ発生手段、前記合成波形発生手段及び前記減算手段のいずれか少なくとも一つをオフにする制御手段さらに備えることを特徴とする請求項3から6にいずれか記載のノイズ低減装置。
【請求項8】
周囲の音声を検出する検出手段と、電流により駆動される所定の動作手段とを備えた機器が有するコンピュータを、
前記動作手段の動作に伴って発生するノイズの疑似ノイズを発生する疑似ノイズ発生手段と、
前記動作手段を駆動する電流波形に前記疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生する合成波形発生手段と、
この合成波形発生手段が発生する合成波形ノイズを前記検出手段が検出する音声から減算する減算手段と
して機能させることを特徴とするノイズ低減制御プログラム。
【請求項9】
周囲の音声を検出する検出手段と、電流により駆動される所定の動作手段とを備えた機器におけるノイズ低減方法であって、
前記動作手段の動作に伴って発生するノイズの疑似ノイズを発生する疑似ノイズ発生工程と、
前記動作手段を駆動する電流波形に前記疑似ノイズを合成して合成波形ノイズを発生する合成波形発生工程と、
この合成波形発生工程で発生する合成波形ノイズを前記検出手段が検出する音声から減算する減算工程と
を含むことを特徴とするノイズ低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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